気がついたら不機嫌な顔の■■がいた。
『旦那は血の道が重いほうだったんだね』
…血の道?この、流れ出る生暖かな血のことか。
『ほら薬湯、飲んだ飲んだ、子供じゃないんだから苦いだの飲みにくいだの、泣き言は聞かないからね。鼻つまんででものむの!』
薬湯の匂いを嗅いだら吐き気がした。無理に飲み下すと、不安と恐怖が消えた。
■■の薬湯を飲んだのだから、もう大丈夫だ。
『……ん?なに、泣きそうな顔しちゃってぇ』
何の病なのだ。
『え。もしかしてこうなったの初めて?えー…遅いよ旦那ー…』
普通はどのくらいなのだろう。皆、幼い頃にこの不気味な病を迎えるのか。
『ううん、遅くても初陣の頃には済ませてるものかな。ていうか旦那、無知にも程があるでしょ?病じゃないんだよ』
具合が悪くなって、血が流れ出るのだ。世にも怪しい奇病だ。
■■は幼い頃よく見せた笑顔になって、歌うように説明した。
『ちーがうって。それはね、旦那の体が大人になったって知らせだよ。やっと大人になったでござるー、って、腹の中が勝ち鬨あげてんの。これからはどんどん体つきも女らしくなってくよ、きっと。だから赤飯炊かなきゃね』
まるきり子ども扱いの説明に、それでも安堵する。
そんなもの、今は食べたくない。
『なーに、好きでしょ赤飯。お祝いだから、明日でも明後日でも、一口は食べてよ。どうしようかな、あんまりの旦那っぷりに忘れてたけど、そろそろ縁談纏める時期なんだよねー…』
はあ、と返すと呆れた視線がくる。
『一応旦那年頃でしょ。うーん、武田の武将たちよりも外のがいいんだけどねー、でも戦国だからなあ。俺様としたことが即座にこれってのが浮かばないんだよね、うーん、でも考えたら旦那の妹達も、旦那が片付いてからって思ってるっぽいし。真田の次女以下総出で嫁き遅れって訳に行かないしー』
婚姻の相手かと問うと、ほかに何なのかと返される。
『武田以外…なら、某は政宗殿がいい』
■■の目がみひらかれる。
誰かの名を言い出すとは思っていなかったのだろうか。
■■が考えを表に出すのは初めてで、思わずその顔を見つめ返した。
どうしたのだ、■■、と。
『旦那は血の道が重いほうだったんだね』
…血の道?この、流れ出る生暖かな血のことか。
『ほら薬湯、飲んだ飲んだ、子供じゃないんだから苦いだの飲みにくいだの、泣き言は聞かないからね。鼻つまんででものむの!』
薬湯の匂いを嗅いだら吐き気がした。無理に飲み下すと、不安と恐怖が消えた。
■■の薬湯を飲んだのだから、もう大丈夫だ。
『……ん?なに、泣きそうな顔しちゃってぇ』
何の病なのだ。
『え。もしかしてこうなったの初めて?えー…遅いよ旦那ー…』
普通はどのくらいなのだろう。皆、幼い頃にこの不気味な病を迎えるのか。
『ううん、遅くても初陣の頃には済ませてるものかな。ていうか旦那、無知にも程があるでしょ?病じゃないんだよ』
具合が悪くなって、血が流れ出るのだ。世にも怪しい奇病だ。
■■は幼い頃よく見せた笑顔になって、歌うように説明した。
『ちーがうって。それはね、旦那の体が大人になったって知らせだよ。やっと大人になったでござるー、って、腹の中が勝ち鬨あげてんの。これからはどんどん体つきも女らしくなってくよ、きっと。だから赤飯炊かなきゃね』
まるきり子ども扱いの説明に、それでも安堵する。
そんなもの、今は食べたくない。
『なーに、好きでしょ赤飯。お祝いだから、明日でも明後日でも、一口は食べてよ。どうしようかな、あんまりの旦那っぷりに忘れてたけど、そろそろ縁談纏める時期なんだよねー…』
はあ、と返すと呆れた視線がくる。
『一応旦那年頃でしょ。うーん、武田の武将たちよりも外のがいいんだけどねー、でも戦国だからなあ。俺様としたことが即座にこれってのが浮かばないんだよね、うーん、でも考えたら旦那の妹達も、旦那が片付いてからって思ってるっぽいし。真田の次女以下総出で嫁き遅れって訳に行かないしー』
婚姻の相手かと問うと、ほかに何なのかと返される。
『武田以外…なら、某は政宗殿がいい』
■■の目がみひらかれる。
誰かの名を言い出すとは思っていなかったのだろうか。
■■が考えを表に出すのは初めてで、思わずその顔を見つめ返した。
どうしたのだ、■■、と。
仮縫いの衣装を、器用な指先が着せ付ける。
『何で俺様が女中の仕事するのかな~』
女中よりずっと器用だろう、誰よりも器用ではないか。
『あーそりゃそうでしょうとも!この■■■■を舐めないで下さいよ。けどね旦那、俺は奥州にいけないんだからね?仮合わせの方が本番よりキレイに仕上がってどうすんの』
来られないのか。
『旦那、新妻が元領地の忍び頭と連絡取り合ってたら不穏なのもいいとこでしょうが』
感心していたら額をかるく叩かれた。
なぜそんなに怒っているのだろう。
何か、しただろうか。
『してないよ旦那は。でなかったらちーさい頃からしまくってたの旦那は』
訳がわからない。
盛大なため息をつく目を見た。本当のところは呆れても、疲れてもいないしんしんとした目を。
着せ付けられた衣装が重い。
伊達では、何か問題があるのか。お館様も賛成してくださったのだぞ。
『ないよ。ああもー、従兄弟と結婚して雛人形のがよかったかなあ』
外にでた方がいいと言ったはず。
『まあ、こっちにいたって、旦那の事情分かってる程度の利点しかないしさあ…』
■■の視線が青い羽織に流れる。
『伊達さんもサバけてるよね。フツーだったらどんなに騒いでも客間に押し込められてたし、急いでるって言っても取り合わないでしょ』
『何で俺様が女中の仕事するのかな~』
女中よりずっと器用だろう、誰よりも器用ではないか。
『あーそりゃそうでしょうとも!この■■■■を舐めないで下さいよ。けどね旦那、俺は奥州にいけないんだからね?仮合わせの方が本番よりキレイに仕上がってどうすんの』
来られないのか。
『旦那、新妻が元領地の忍び頭と連絡取り合ってたら不穏なのもいいとこでしょうが』
感心していたら額をかるく叩かれた。
なぜそんなに怒っているのだろう。
何か、しただろうか。
『してないよ旦那は。でなかったらちーさい頃からしまくってたの旦那は』
訳がわからない。
盛大なため息をつく目を見た。本当のところは呆れても、疲れてもいないしんしんとした目を。
着せ付けられた衣装が重い。
伊達では、何か問題があるのか。お館様も賛成してくださったのだぞ。
『ないよ。ああもー、従兄弟と結婚して雛人形のがよかったかなあ』
外にでた方がいいと言ったはず。
『まあ、こっちにいたって、旦那の事情分かってる程度の利点しかないしさあ…』
■■の視線が青い羽織に流れる。
『伊達さんもサバけてるよね。フツーだったらどんなに騒いでも客間に押し込められてたし、急いでるって言っても取り合わないでしょ』




