欲しいと思った。
だから手に入れたいと思った。
手に入れられないなら飛び込めばいいと思った。
結果、中国と四国の同盟が成立した。
同盟など二の次だった。
元就が欲しかった。
宝のように側に置いておきたかった。
だから手に入れたいと思った。
手に入れられないなら飛び込めばいいと思った。
結果、中国と四国の同盟が成立した。
同盟など二の次だった。
元就が欲しかった。
宝のように側に置いておきたかった。
元就にとって、同盟こそ重要なのだろう。
美しい訳でも内助となる訳でもない女など、元就にとって同盟の象徴以外の何物でもないのかもしれない。
「馬鹿みてぇ」
布団を頭まで被った。二つ並んでいた枕の一つを放り投げ、拒絶の意思を示す。
四国に帰ろう。そしてもう二度と中国には戻らない。
陸に上がって男の妻になろうとしたのが間違いだったのだ。人は、宝物ではない。意志を持ち、意のままに飾ることなどできない。
自分の幼さが、間違いを起こさせたのだ。
鬼は鬼らしく、海を荒らしていればいいのだ。
ぺたりとした足音が聞こえる。騒がしさが遠くなってから納まり、元親は布団を占拠して丸くなった。
足音が近づく。
「譲れ」
布団をはごうとする元就の手を払い、元親は布団にしがみついた。
「お前はあっちで寝てろ!」
布団を体に巻きつけ、適当な方向を指差して叫ぶ。今日は絶対に一緒に寝ない。そんなことをしたら離れられなくなる。
「我は怪我人なのだ。怪我人に床で寝ろというのか」
「俺は女だ。お前こそ、女を床に落とすのか」
ふむ、と元就は思案する。放り出された枕を拾い、どうしてくれようかと見下ろしてくる。
そして枕を置くと、元親の隣に並んで寝転んだ。
「一刻で起こせ」
「一刻って……お前怪我してるんだから、もっと寝た方がいいって。ちゃんと布団被って……って、あああっ、もう!」
元親は布団をはねのけた。降参だ。
「入れよ」
元就が寝転んだまま見上げてくる。氷の眼がわずかに緩む。
「では遠慮なく」
元就は布団に潜り込んできた。元親は背中を向け、せめてもの拒絶を見せた。
拗ねた妻という姿は可愛いものなのだろうが、元親がやると本気で拒んでいるようにしか見えない。哀しいかな、
元親は夫婦間の駆け引きがど下手くそだった。
「寒い」
「あ?」
「冷える。ああ、お前は行火(あんか)として丁度よいな」
背中に元就の体温を感じる。指が元親の背中から腰にかけて探る。
肌を求めるというより、掴むところを探しているような動き。
元就の指は元親の手を探り当て、軽く握ってきた。
「元就?」
「いつ、四国から戻る」
「いつって……重機の具合見てからじゃねぇとはっきりしたことは……」
「長くなるか」
「多分」
「そうか。……ならば、有能な技師を共に送ろう。そうすれば、早く帰ってこられるであろう」
「……え?」
「技師を吟味する。出立を遅らせろ」
一方的に告げると、元就はすうと寝息を立てた。
「元就?」
「行火が口を利くな」
ぴしゃりと氷の一言。元親は口を閉じ、とろとろとまどろんだ。
先ほどまで影すら見せなかった眠気が急に襲ってくる。
四国に帰るのはもう少ししてからでいいだろう。
重機の仕組みを理解できるだけでなく、四国の荒くれ者と対等に渡り合える技師となると吟味に時間がかかる。
誰がいいか。そしてどんな技術を中国に持ち帰らせよう。
考えるだけで幸せだ。
元親は目を閉じた。近くに愛しい人の体温があるというだけで、なんと心地いいのだろう。
美しい訳でも内助となる訳でもない女など、元就にとって同盟の象徴以外の何物でもないのかもしれない。
「馬鹿みてぇ」
布団を頭まで被った。二つ並んでいた枕の一つを放り投げ、拒絶の意思を示す。
四国に帰ろう。そしてもう二度と中国には戻らない。
陸に上がって男の妻になろうとしたのが間違いだったのだ。人は、宝物ではない。意志を持ち、意のままに飾ることなどできない。
自分の幼さが、間違いを起こさせたのだ。
鬼は鬼らしく、海を荒らしていればいいのだ。
ぺたりとした足音が聞こえる。騒がしさが遠くなってから納まり、元親は布団を占拠して丸くなった。
足音が近づく。
「譲れ」
布団をはごうとする元就の手を払い、元親は布団にしがみついた。
「お前はあっちで寝てろ!」
布団を体に巻きつけ、適当な方向を指差して叫ぶ。今日は絶対に一緒に寝ない。そんなことをしたら離れられなくなる。
「我は怪我人なのだ。怪我人に床で寝ろというのか」
「俺は女だ。お前こそ、女を床に落とすのか」
ふむ、と元就は思案する。放り出された枕を拾い、どうしてくれようかと見下ろしてくる。
そして枕を置くと、元親の隣に並んで寝転んだ。
「一刻で起こせ」
「一刻って……お前怪我してるんだから、もっと寝た方がいいって。ちゃんと布団被って……って、あああっ、もう!」
元親は布団をはねのけた。降参だ。
「入れよ」
元就が寝転んだまま見上げてくる。氷の眼がわずかに緩む。
「では遠慮なく」
元就は布団に潜り込んできた。元親は背中を向け、せめてもの拒絶を見せた。
拗ねた妻という姿は可愛いものなのだろうが、元親がやると本気で拒んでいるようにしか見えない。哀しいかな、
元親は夫婦間の駆け引きがど下手くそだった。
「寒い」
「あ?」
「冷える。ああ、お前は行火(あんか)として丁度よいな」
背中に元就の体温を感じる。指が元親の背中から腰にかけて探る。
肌を求めるというより、掴むところを探しているような動き。
元就の指は元親の手を探り当て、軽く握ってきた。
「元就?」
「いつ、四国から戻る」
「いつって……重機の具合見てからじゃねぇとはっきりしたことは……」
「長くなるか」
「多分」
「そうか。……ならば、有能な技師を共に送ろう。そうすれば、早く帰ってこられるであろう」
「……え?」
「技師を吟味する。出立を遅らせろ」
一方的に告げると、元就はすうと寝息を立てた。
「元就?」
「行火が口を利くな」
ぴしゃりと氷の一言。元親は口を閉じ、とろとろとまどろんだ。
先ほどまで影すら見せなかった眠気が急に襲ってくる。
四国に帰るのはもう少ししてからでいいだろう。
重機の仕組みを理解できるだけでなく、四国の荒くれ者と対等に渡り合える技師となると吟味に時間がかかる。
誰がいいか。そしてどんな技術を中国に持ち帰らせよう。
考えるだけで幸せだ。
元親は目を閉じた。近くに愛しい人の体温があるというだけで、なんと心地いいのだろう。




