エルンスト・ユンガー(1895年3月29日 - 1998年2月17日)は、ドイツの作家・思想家。第一次世界大戦の体験を記録した戦争文学から出発し、その後は技術文明、ニヒリズム、主権、個人の自由をめぐる思索へと展開した。20世紀ドイツ思想における特異な存在とされる。
第一次大戦に志願兵として参加し、激戦を経験する。その体験をもとに執筆された『鋼鉄の嵐の中で』は、戦争を単なる悲劇としてではなく、極限状況における意識の覚醒として描写し、戦間期ドイツで大きな影響を与えた。1920年代には保守革命的思想と接近し、『労働者』では近代技術社会における新たな人間類型を提示した。
ナチズムとは距離を保ちつつも完全な反対者ではなく、複雑な立場をとった。第二次世界大戦中は将校としてパリに駐在し、その日記は占領下ヨーロッパの精神史的証言として読まれている。
戦後は思想的転換を示し、『森の道』『ガラス玉』などで個人の内面的自由や抵抗の可能性を探究した。彼の思索は、技術文明の支配のなかで主体はいかに自律しうるかという問いを中心に展開される。長命を保ち、20世紀のほぼ全体を通過した証人として、その思想と政治的立場をめぐる議論は現在も続いている。