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― 何処かの世界・白玉楼? ―
やぶれたせかいより何処かの世界へと辿り着いた
「あなた」たち。
驚くことにそこは、彼らが知る白玉楼だった。
だが、その空気は何かが違っていた…
その異変を決定付けるものが、真っ先に三人の目に飛び込んできた。
この地に初めて踏み入れた時からずっと目立っていたあの巨大な枯れ木が―――
盛大な"満開"を迎えていたのだ。
あなた「……!(見たことのある場所…けれども、先程ザ・ソローに促されて目にした枯れ木が満開していることに驚愕を覚える) 」
ホムラ「……ここって…白玉楼…?戻ってきたのかしら……?…それに、あの大きな樹…確かさっきまでは花をつけていなかったはずでは……(信じられない、と唖然そうに口を開けて巨大樹・西行妖を眺める) 」
メディ「………もしかすると、先程紫様がおっしゃっていたように、ここは私たちがよく知る世界とは似て非なる、もう一つの世界…並行世界なのかもしれません。かの樹木がこんな短時間であれほどの開花を果たすなど、幾ら未知の妖術が漂うこの地でさえ…… 」
白銀の剣士「―――――(三人が満開の妖桜に見惚れている中、その前方…一本道の中央にて背を向けたまま佇んでいる者ががいた。白銀色の髪を揺らす少女の風貌をしたその者はその身に二刀を携えている)……(「あなた」たちの気配を察した彼女は振り返る) 」
あなた「……!!(満開の桜に見惚れていたところに、前方の少女に気が付いた「あなた」は目を丸くした。何故ならその少女が、メディが見せてくれた「魂魄妖夢」と瓜二つの姿をしていたからだ) 」
メディ「……! 見つけました…あの方が、「魂魄妖夢」様…(「あなた」から一歩下がった箇所から剣士の姿を見据える) 」
白銀の剣士 → 魂魄妖夢「……満開を遂げた「西行妖」の妖力のせいでしょうか、こうも亡霊などの移ろい揺らぐ者たちが継続的に集まってくるなんて…(まるで独り言のように呟いては「あなた」たちを睨むように見据える)…ここは冥界―――亡霊たちの住まうところ。命ある人間たちよ、疾くお前たちの顕界に引き返すがよい。(強かな敵意の眼差しを向けた少女は番人のような佇まいでその場から微動だにせず、三人と対峙する)」
ホムラ「ちょ、ちょっと待ってください…!私たちはただ―――」
魂魄妖夢「――― 問答は無用!二度も忠告する気はありません。退かぬというのなら…… ス ラ リ …―――(携える二刀のうちの一振り「楼観剣」を水平に構え、徐に抜刀する) 」
メディ「……相当警戒しているようですね。本来ならば推奨いたしかねますが、ここは少し荒業に打って出ましょうか。(オーソライズバスターを構える) 」
あなた / ホムラ『……わかりました…。 / ……!(メディの提案に従い、不本意ながらも妖夢と対峙を示すかのように聖杯の剣を引き抜いた)』
魂魄妖夢「…私と剣を交えるというのですか。……よかろう、ならば斬り捨てるのみ!―――いざッ!!(小さな両手で柄を握りしめて疾駆―――大きく振りかぶった動作から袈裟斬りを繰り出さんとした) 」
あなた / ホムラ『―――!(一度の踏み込みでこちらの間合いへ瞬時に詰めてきた剣士に驚嘆する間もなく寸でのところで跳び退いた)……! / はああぁーっ!!(ホムラからのエネルギーに注力され熱を帯びる剣を手に「あなた」は妖夢へと斬りかかる)』
メディ「……参ります!(オーソライズバスターを斧型に変形して振りかぶり、「あなた」に次いで妖夢へと斬りかかる) 」
魂魄妖夢「ギッ、ガキィンッ!! ギャッギィンッ!! (初手「あなた」の燃ゆる剣を鋼刃で払いのけ、二手メディの鉞の如き一撃を咄嗟に水平に構えた刀で受け止めると、刀を斜めにずらして斧武器の軌道をずらし地面へと炸裂させる)――― ブ ォ ン ッ ! (直後、隙の生じたメディの首を掻き斬ろうと刃を振り抜く) 」
メディ「―――! ピロリ、ピロリ…♪ (妖夢の予備動作から演算処理による複数の行動パターンを予見。その中の一つを選択)――――はっ!(空ぶって地面へ炸裂した武器を一度手放すと同時に後方へとバク転。彼女の刃が胸元を掠め、緩慢化された時空の中で刀が頭上を過ぎていくのを確認すると同時にサマーソルトキックを行い、彼女と距離を取った) 」
魂魄妖夢「なっ――― く…っ…!(薙ぎを交わされた挙句反撃の蹴りを浴びせられ二歩退く) 」
あなた / ホムラ『……! / これなら、どうですッ!?(「あなた」は剣から斬撃波を、ホムラは掌より火炎弾を幾つも放ち、遠距離攻撃にて妖夢を翻弄しようとここと見る)』
魂魄妖夢「(―――!) ス ラ リ …―――― ガッギッギギンッ、ギャギィンッ、ギンギンキィンッ ! ! ! (前方から飛んでくる二つの攻撃をその瞳に捉えると咄嗟に二振りの刀「白楼剣」を振り抜き、エネルギー弾や火炎弾を正確無比に弾き返していく。鮮やかな剣舞から鋼の音と火花が飛ぶ中、二人の攻撃を完全にいなした) 」
メディ「…なんという太刀筋…!まさしく剣豪であるかのような剣裁き……油断大敵です…! 」
魂魄妖夢「妖怪の鍛えたこの桜観剣と白楼剣に…断てないものなど、あまりないッ!!(二刀で虚空を一度薙ぎ払うと一気に跳び出し、それぞれの刀を鮮やかに振り回しながら三人に苛烈な剣舞を叩き込んでいく) 」
あなた / ホムラ『……!! / …くっ…うぅ…っ…!(ホムラが展開する光の膜を、「あなた」が剣で支えることで防御力の増した障壁で次々と迫る斬撃を受け止めるが)……あ、うぅ…!やばい、です…!このままだと破られてしまいます! / ……!(光の膜に僅かながらも亀裂が生じていた)』
メディ「……!(地面に突き刺さっていた武器を引き抜き、盾にするように構えたそれで防御を試みる)……凄まじい攻撃力です…!(防御と同時に物理演算によるダメージ計算を行い、妖夢が披露する剣術の危険性を説く) 」
魂魄妖夢「人間風情が土足でこの地に踏み入れることなど、あってはならない!ここは「幽々子」様が愛した故郷…何人たりとも穢させるわけにはいかないッ!!(二刀を十字に交差)――――畜趣剣“無為無策の冥罰”(振り抜かれるとともに刻まれる剣閃より、幾重にも及ぶ米粒状の弾幕が拡散される) 」
あなた / ホムラ『―――! / ひゃんっ…!(一閃より繰り出された弾幕に、ついに光膜が破壊されて吹き飛ばされる)』
メディ「主様!ホムラ様! ッ……! グ ォ ン ッ ――― ズ ギ ャ ア ア ァ ン ッ ! ! (勢いよく石畳の地面へ一撃を見舞うと、弾幕から三人を守る岩壁を地中から盛り上げるように出現させる) 」
魂魄妖夢「 ク ル ン … ザ グ ン ッ ! (右手の一刀を回して地面に突き刺し、もう片方の手に握られた一振りに妖力を注ぎ込むように身構える)あなたの命を絶つ剣―――断命剣“冥想斬”ッ!!(一刀が怪しく光り輝く。その光を纏う刃を振り抜くと、分厚い岩壁さえも優に断裂する強烈な一閃を描き、障壁を斬り崩す) 」
あなた / ホムラ『―――!/ “ブレイズエンド”ッ!(岩壁が斬り崩されたその直後、この機会を待っていたと言わんばりに陰から勢いよく身を乗り出した二人が妖夢へと迫る。遠心力をかけた剣を投げつけると、その回転により空気中の酸素を蓄えて剣は更に燃え上がり、直線状の妖夢へと突き進む)』
魂魄妖夢「なッ―――!? ガッギギギギギギギィンッ !!! (死角から飛んできた焔色の剣に驚愕。瞬発的に突き刺さった刀を引き抜き、交差するように構えた二刀で回転する斬撃を必死に受け止め続ける) くッ……うううぅ…ッ……!!(苛烈な斬撃を抑え込むだけで精一杯なのか、吹き飛ばされまいと歯を食いしばりながら両脚に力を込め耐え凌ごうと試みる) 」
メディ「 ヒ ュ ン ッ ――― はっ!! ズッドドドド! (いつの間にか妖夢の真横へと遷移。片手の人差し指を突きつけ、活殺点を狙った連続怒涛の急所突きを見舞う) 」
魂魄妖夢「うううぅッ…!! ガ ギ ャ ァ ン ッ ――――!?(ようやく回転する剣を頭上へ弾き飛ばしかと思えばメディの接近を許してしまい…)――― かッ…ふぅ…ッ……!!?(全身の至る部位を強打され、よろりと後退を余儀なくされる)……こ、この程度の攻撃――――ッ…!?(すぐに前線へ復帰しようとするも、急所突きによる内部へのダメージが深刻化し、片膝をついてしまう) 」
メディ「……たとえ貴女様が冥界の使者だとしても、同じ人の姿形を成しているのであればその内部構造はただの人間と同じはず。その推測を狙った経穴抜きです。(人差し指を天へ突きつけたまま妖夢を見据える) 」
魂魄妖夢「…くッ、うぅ……ここで尻込みしては、幽々子様に会わせる顔が……!(悔しさの色を表しながら立ち上がろうと試みるも全身に走る痺れのような痛みに苦悶の顔を浮かべる) 」
ホムラ「…私たちは、その幽々子さんの為に、貴女を探しに来たんですよ…妖夢さん!(これ以上の戦いに意味はないと訴えかけて) 」
魂魄妖夢「―――!?(ホムラの言葉に大きく開眼する)……何故、あなたたちのような人間が幽々子様のことを…?それに、その口ぶり……まさか、あなたたちも、私と同じように……この世界に誘われた…というのですか……っ…?(混迷の眼差しに瞬きが早くなる) 」
メディ「…とあるお方が仰っていました。妖夢様…貴女はあの彗星が落ちた日、主の幽々子様を庇って…何の因果か、この世界へと迷い込んだと…。……幽々子様は、妖夢様の帰りを心待ちにしています。ここは一度剣を引き、我々とご同行願えないでしょうか? 」
魂魄妖夢「………め……っ…(メディの発言を聞き、少女の双眸が泳ぎ始める)―――― だめです……っ… 私は……あの人の元へは戻れない…っ……!(ぎゅうと両の眼を瞑り、責苦の表情を浮かべる) 」
ホムラ「どうしてです…!?(妖夢の否定に一歩詰め寄る)聞きましたよ…お二人は長い間ずっと同じ時間を過ごしてきたと…!貴女は主である幽々子さんのために尽くし、そして幽々子さんもまた妖夢さんのことを信じていたと…!それなのに、なぜ…っ……? 」
魂魄妖夢「だからこそ…――― "だからこそ"なんですッ!!(両手を地に項垂れたまま悲痛の声を張り上げる) 」
あなた「………?!(そんな妖夢にただただ困惑の眼差しを向ける) 」
魂魄妖夢「はぁ……はぁ……っ… 私があの方のもとへ帰ってしまえば…――――― 今の幽々子様は完全に消滅(き)えてしまう…っ…!!」
ホムラ「……!? ……いったい、どういうことなんですか…っ……? 」
魂魄妖夢「………視てしまったんです……"幽々子様が消えてしまったこの世界"で、あの方に纏わる過去を…――― 」
夜空に舞う幾千の桜が仄かの桃色の光を帯び、互いが互いに反射し合うことで、
天辺に輝く満月に映像のようなものが映し出されていく―――
ホムラ「……!(あれは……ひょっとして、妖夢さんが視たという……)(満月に映し出される映像のようなものに目を向ける) 」
魂魄妖夢「………数千年以上も前の出来事です。それはまだ、私も生まれていなかった頃……そして、「生前の幽々子様」がこの世を絶つ前のことです……―――(自分の語りと共に、満月に誰かの記憶を描いた像が断片的に映し出されていく―――) 」
遠い昔…穏やかな春が流れる村。その外れに大きな館「白玉楼」が立っていた。
暖かな日差しが照らす縁側に、春颯の音を枕に転寝している一人の若い娘「西行寺幽々子」がいた。
西行寺幽々子(生前)「……厭離穢士 欣求浄土 ――― 仏には桜の花を奉れ 我が後の世を人とぶらはば(舞い散りゆく桜を呆然と見つめながら、囁くような声音で詩歌を詠う)…願わくは 花の下にて 春死なむ その如月の望月のころ…―――」
彼女の父は有名な歌聖であった。
彼は桜をこよなく愛し、死ぬときは立派な桜の木の下で死にたいと願い、その望みの通りに立派な桜の下で生涯を終えた…
しかし、彼を慕っていた多くの民人が彼の後を追う様にその桜の下で命を落とし続けたため、いつしかその桜は人の生気を吸って妖怪となる。
花をひとつ咲かせる度に、また多くの人々を死へと誘(いざな)うようになってしまった…
西行寺幽々子(生前)「―――― はっ…!! …っは……はぁ……はぁ……! (血の色に染まる春…その悪夢から覚めた少女は置いてきた呼吸を取り戻すかのように大きく息を吸いながら胸元をぎゅうと強く握りしめる) 」
最初に桜の木の下で死んだ「歌聖の娘」・西行寺幽々子もまた、
この影響から"死"を司る妖力に目覚めてしまい、あの妖桜と同じく人を死に誘うだけの存在となってしまった。
西行寺幽々子(生前)「……花見ればそのいはれとはなけれども心のうちぞ苦しかりける(夥しいほどの死骸が転がる桜の木を前に、少女は短刀を振り抜く) あくがるる心はさてもやま桜ちりなむのちや身にかへるべき…―――― 」
彼女は父が愛した桜が人を殺すだけの妖怪になってしまっていること、
自分も同じ人を殺めるだけの存在になってしまっていることを嘆き疎んじ、その桜が満開の時に桜の下で自害を決意する。
西行寺幽々子(生前)「 ブ ワ ア ァ ッ … ! ! ! (短刀で掻き切った手首を宝に夜空へと突きつけると、そこからあ鮮血色の桜吹雪が盛大に舞い上がる。幾千の桜は互いに身を寄せ合いて反魂蝶となり、満開だった妖桜の花を悉く枯らしていく)…もろともに我をも具して散りね花うき世をいとふ心ある身ぞ。 」
――― メ キ メ キ メ キ ィ ッ … ! ! ! (美しくも怪しい花が枯れていく中、桜の木の根元から太い根っこが幾つも飛び出し、まるで自分に歯向かった少女を道連れにせんと彼女のたおらかな体を包み込んでいく)
その力がある限り転生しても同じ苦しみを味わい続けるだろう。故に、幽々子はその我が身を鍵として桜の木に封印を施す。
これにより妖桜「西行妖」が再び花を咲かせて人を殺す事は無くなり、同時に幽々子という人間が転生する事も無くなった。
西行寺幽々子(生前)「……仏には桜の花をたてまつれ我がのちの世を人とぶらはば……―――(少女は誰の手も届かない深い深い深層の中にて眠りにつく―――)」
やがて時を経て、亡霊となった富士見の娘は生前の記憶を全て捨て、
もう悩む事無く冥界で暮らすこととなったそうな…―――
魂魄妖夢「―――………そして、千年の安穏な日々の後のある日、今の幽々子様は書架で古い書物を見つけられました。そこに記されていた「富士見の娘」にまつわる記述を見て…死者のみがあるこの冥界に実体のある亡骸があることに興味を持たれたのです。 」
魂魄妖夢「それから、開かぬ桜木である西行妖の元に封じられているという「何者か」を復活させようと思い至った…他者を死へと誘うことしかできない幽々子様が、初めて死者を復活させようとしたのです。 」
魂魄妖夢「……そう…幽々子様が復活させようとしていた「何者か」は、紛れもなく「幽々子様ご自身」だったんです。 」
魂魄妖夢「…もし、「春」を集めて西行妖を満開にしてしまえば、かつての幽々子様が施した封印が解けてしまい…あの方の死体が解き放たれる。そうなると、今の幽々子様を亡霊として維持する力も失われ…結果的に、"今の幽々子様ご自身が消滅してしまう"事を意味するんです…っ……! 」
あなた「――――!? 」
魂魄妖夢「…そんなことを知る由もなく、私はただ従者として幽々子様に命じられるままにこれまで「春」を集めてきた… そして彗星が落ちたあの日―― 幽々子様とはぐれてしまったあの日 ―― 私はこの世界で、すべてを知ってしまったのです…っ…… 」
魂魄妖夢「……視えますか…?あの、満開になった桜の木を。(一同へ、背後にそびえ立つ満開の西行妖へ促す)…今の話を聞けば解ると思います…… ここは西行妖が満開を遂げた並行世界 ―― 「幽々子様がこの世から完全に消えてしまった世界」 ――なんです…… 」
魂魄妖夢「主である幽々子様を失ったこんな世界など、私には耐えられないッ…!!生きる術も、生きる意味もないこんなまやかしの世界で…!冥界よりも地獄よりも苦しいこんな場所でただ一人…生きていける自信がない……っ…(身を震わせ、声を震わせる) 」
魂魄妖夢「だから私は…ッ…!!幽々子様のもとへ帰ることはできない!あの方が消えてしまった苦しみをここで味わったから…ッ!!幽々子様のために尽くしてきたことが、かえってあの方を消してしまうことになると理解(わか)ったから…ッ…!! 」
魂魄妖夢「…私が幽々子様の傍にいたら…!西行妖を開花させるためにより多くの「春」を集めてしまう!従者として、主には逆らえない性(さが)である以上は尚のこと…!でも…そんなことをすれば……今の幽々子様は……っ……―――そんなことは…あってはならないのです……あの方は…あの方は…!私にとっても、何にも代えがたい大切な人だから…ッ!! 」
メディ「……だから、妖夢様はこの反転世界に留まることを決意されたのですね。これまでのように…主の身を守るために… 」
ホムラ「…とても、哀しい運命ですね……妖夢さんの気持ちを、ようやく理解できました… けれど……あちらの世界でも、幽々子さんは哀しい顔をしておりました…きっと、貴女がいなくてとっても寂しい思いをされているのだと思います。…一度元の世界へ戻って、幽々子さんに本当の"想い"を話してみませんか?きっと、幽々子さんも分かってくれるはず―――」
魂魄妖夢「――― 黙 れ ッ ! ! ! (剣士の怒号に、地に積もる桜が舞い上がる)…はぁ……はぁ……ッ……!分かってくれるはずなどない…っ……私だって、今でもこんな事実を信じたくないと思っているのに…!(白銀色の髪が、身を纏う衣が、次第に鴉色に染まっていく) 」
あなた「……!?(黒く変貌を遂げ始めていく妖夢に対し、咄嗟に身構えてしまう) 」
魂魄妖夢「はぁ……はぁ……もう何度も、あの方を消させたりなんかしない…っ……私が……守らなくては…ッ……(重い身を起こして地に横たわる二刀を握りしめると、その刀身が血染めの如き紅色に帯び始めていく) 」
魂魄妖夢 → 幽玄の剣聖「 ギ ュ オ ン ッ … (紺碧の瞳が紅蓮に渦巻き、剣聖は深淵たる幽玄に堕ちる) 」
幽玄の剣聖「―――――― 【 卍 解 】 " 千 本 桜 景 厳 " ――――――」
―――― ブ ワ ア ア ァ ァ ッ … ! ! ! (剣聖を包み込む竜巻の如く荒れ狂う桜吹雪が渦を巻く。そして咲き乱れる、幾千の白桃色の刃として。淡い桃色に染まる夜空に、千本桜の刀の群れが春を詠う様に行進し、剣聖の黒少女の盾となり剣となる―――)
幽玄の剣聖(卍解)「 桜の木 ―― 幽々子様は ―― 私がお守りいたします 」
――― Vs. 【BOSS】 幽玄の剣聖 ―――
あなた「……!(堕ちた剣聖を前に「あなた」は意を決し前へ踏み込む)……(そして、背後にいるホムラとメディに対し、剣聖と一騎打ちをしたいと強い眼差しを向ける) 」
ホムラ「……!(「あなた」の強い眼からその意を汲み取り、不安ながらも一歩引いたところで留まるのだった) 」
メディ「主様…!? ………かしこまりました…っ……(不本意ながらも「あなた」に剣聖を託し、自身もまたホムラと共に数歩引き下がる) 」
幽玄の剣聖(卍解)「私と一騎打ちを臨みますか。いいでしょう…ですが容赦はしない。 」
―――― ブ ワ ア ア ア ァ ァ ァ ッ ! ! ! (桜を象った刃が吹雪の様に吹き荒れ、向かい風と共に「あなた」へと襲い掛かる)
あなた「……!(燃ゆる紅色の剣の腹部に空いた手を当てながら盾として刃を防御しようと試みるが)―――!(次々と襲い来る無数の刃に頬や肩、腕など全身を掠めていく) 」
幽玄の剣聖(卍解)「黄泉の国に眠れる大いなる魂の力を秘めた刀を前に、人間如きが立っていられるなどあり得ることのない話。春の終わりと共に散りゆく桜と等しく、塵となりなさい。(花嵐が吹き付ける中で睨みを利かせる) 」
ホムラ「……!(流石に黙って見過ごすことができなくなったのか、「あなた」に向かって掌を伸ばし、その身に聖杯の力をエーテルに乗せて送り届ける) 」
あなた「……!……!!(ホムラに届けられた力が剣へと宿ったのか、刀身が聖なる焔を灯し、自身に迫る桜刃を燃やし尽くしていく) グ ゥ オ ン ッ ―――― ボ ア ア ア ァ ッ ! ! (聖杯の剣を振るい回し、湧き起る業火に桜刃を無に消していく) 」
幽玄の剣聖(卍解)「……やりますね。ですが、これならどうです?(散り散りになっていた桜の刃がそれぞれに集約を始めると一本の刀を形作っていく) ジ ャ キ ィ ン ッ (空に浮かぶ幾重の桜刀、それらすべての切っ先が「あなた」へと向かれる)――― フ ッ (攻撃の合図を下すと、刀群は一斉に「あなた」に向かって飛んでいく) 」
ホムラ→ヒカリ「―――ホムラ、代わって!(咄嗟にヒカリへとチェンジされる)―――“因果率予測”!(ホムラがそうしたように、自分もまた「あなた」に聖杯の力を注ぎ込む) 」
あなた「――――!(ヒカリの影響により、因果率予測の効果がリンクされる)……!!(矢の様に飛んでくる大量の刀を前に、その軌道を先読みしつつ回避を行い、剣聖へと果敢に飛び出した) 」
幽玄の剣聖(卍解)「―――!?(馬鹿な…この攻撃を見切ったというのか…!?)……だけど…―――私の太刀筋は見切れない!!(刀が飛んでいく最中、こちらへと迫る「あなた」を迎え撃たんと二刀を振り抜いて駆け抜けていく)――――幽鬼剣“妖童餓鬼の断食”!(右から左へ、左から右へ、宛ら振り子のように揺れながら前進し、二刀による横一文字斬りを繰り出す) 」
あなた「……! ガ ッ キ ィ ィ イ イ ン ッ ! ! (幽霊のように翻弄しながら移動する妖夢に惑わされることはなく、因果率予測…ヒカリが導くままに妖夢へと迫り、業火から輝煌へと変わった剣を振りかぶり、剣聖の一撃を食い止める) 」
幽玄の剣聖(卍解)「…ギチ……ギチ、ギチチ…ッ…!(鍔迫り合いに火花を散らしていく)――― フ ォ ン ッ (その最中、剣聖の姿が瞬間的に消え失せる) フ ォ ン ッ ――― 天星剣“涅槃寂静の如し” (上空に現出したと思えば一寸の隙もない挙動から刀を振るい、無数の白い斬撃の礫を雨のように降らせる) 」
あなた「……!?(両腕に力を込めて圧倒しようとしたため、瞬間的に消えられたことで転倒しかける)―――!(その隙を突かれ、頭上から降り注ぐ鋭い礫に斬り裂かれてしまうが、一歩遅れて剣を傘にすることで何とか致命傷は免れる) 」
幽玄の剣聖(卍解)「大切なものを失うことの怖さを知っていますか…?それがわからぬような輩に、私の心を理解するなど――― 六道剣“一念無量劫” (「あなた」が攻撃を防ぎ続けている間にも、剣聖は空に一閃を次々と描いていく。自身の周囲に刻まれた八芒星の剣閃軌跡から先程の比にならない無数の楔弾が放たれた) 」
あなた「――――(気が付けば、空から降り注ぐ無慈悲の弾幕に囲まれていた。回避はほぼ不可能ともいえるその絶望的な状況を前に、「あなた」はふとあることを思い出した―――) 」
(回想)お面屋「そうだ。お近づきの印に………こちらの面を差し上げましょう。そのお面をどうするか否かは、アナタ次第。アナタの思いがそのお面に力を与え、お面もまた力を貸してくれるでしょう。記憶も出生もわからないアナタだからこそ、その面で周りを映し出してみるのもいいかもしれませんね。 」
(回想)お面屋「お面を侮るなかれ、人は必ず、心に勇ましくも切ない面を宿すもの。そしてその中で本当の自分が呻き声を上げるもの……信じなさい、信じなさい――――」
あなた「―――……!! バ ッ ―――!(お面屋から譲り受けた鏡のようなお面を取り出して見つめると、躊躇うことなく装着する。お面に触れた「あなた」は、その心に誰かを"想う"―――) 」
あなた「――――!(その"想い"が届いたのか、アグネスタキオンの像が「あなた」へと重なりタキオン粒子をその身に纏う。光速で空間を駆け抜け、空へと跳び上がった) 」
幽玄の剣聖(卍解)「……!!?(そんな…ッ…!今ので避けられるはずが―――)―――!!(圧倒的な速さで上空に佇むこちらへと接近する「あなた」に対し、剣聖は二刀を交差し身構える)私に斬れぬものなど…殆ど無い―――人鬼“未来永劫斬”ッ!!(爆発的な脚力をもって虚空を蹴り上げ、天より「あなた」へと迫り、荒れ狂うような豪快な剣裁きから乱雑軌道の剣閃を刻みながら進撃する) 」
あなた「――――(更に強く"想う"。すると今度はテリーの像が「あなた」の傍に現れ、共に空を舞い上がりながら稲妻を纏う剣で剣閃を弾き返していく) 」
幽玄の剣聖(卍解)「 ガ キ ィ ン ッ ――― ガ キ ャ ァ ン ッ ――― ギ ィ ン ッ、 ギ ィ ン ッ、 ギ ィ ィ イ イ ン ッ !!! (宙を舞うように互いに斬り合い、白桃の空に交える刃の残響が届く) ッ゛……!!(何故…何故……ッ…!?こうも私の剣が退かれる…!?幽々子様の為に振るい続けてきた、この剣が…!こんな、素人の剣に…… 何故…)―――何故だッ!!?(焦燥混じりの絶叫を上げ、その悔しさに唇を強く噛み締める) 」
あなた「―――(消滅するテリーの稲妻を受け継ぐように、背合わせる様に誘われた葦名弦一郎の像が剣聖に強烈な雷撃“雷返し”を見舞う) 」
幽玄の剣聖(卍解)「 はぐぅッ…!!! (迸る雷撃がその身を貫き感電する)――――(…守らなくては…私が……私が、幽々子様を……)……っ……はぁ……はぁ…――― ッ゛……!!(痛みを噛み殺すようにギリギリと歯を食いしばる)―――人界剣“悟入幻想”ッ!!(時雨のような鋭い礫を解き放ちながら距離を取りつつ、二刀を納刀し妖力を込める) 」
メディ「あれは……!(お面を被り、新たな力にまた一つ覚醒した「あなた」に目を見張った) 」
あなた「―――(アスナの像が過り剣が光瞬く―――)――― ザグザグザグッ、ザギッ、ザグンッ、ザギャアァンッ!!!(十字を描くように神速の十連続突きによる進撃で礫を弾き返し、十字の交差点に一番強烈な十一撃目の突きで最後の礫を屠る) 」
幽玄の剣聖(卍解)「――― たとえこの身が成仏(ほろ)びようともッ!魂に賭けて守りたいものがあるッ!!そのために私は剣を振り続けるッ!!!(―― 天上剣“天人の五衰” ――)(空に漂う飛花の様に、数億枚以上からなる桜色の濁流とも捉えられる無数の桜刃を手繰り、広範囲に及ぶ凄まじい斬礫を放った) 」
あなた「―――!!(千本桜の花弁からなる大津波を前に、臆することなく、ただ当然のことであるかのように心に"想い"続ける)―――― ブ ワ ァ ッ ! ! (傍に現れたキリトの像と互いに剣を構え、真っ向からその濁流へと飛び込んだ) 」
あなた「――――(剣を振るい一連撃、先頭の桜刃を斬り拓き、ニ~四連撃で斬撃の奔流を斬り払う。五~十連撃で勢いを増し、重なる刃群を瞬く間に斬り進み、十一~十五連撃にて豪快に身を捩りながら衝斬にて斬り崩した。そして―――) 」
幽玄の剣聖(卍解)「――――― 剣伎“桜花閃々” ―――――(〆の段 ――― 桜色の剣閃が伸び、桜の花弁を模した大いなる斬撃を刻む) 」
あなた「――――!!!(最後の十六連撃“スターバーストストリーム”――― 星屑のように煌き飛び散る白光の剣は空間を灼くかの如き破壊力を齎し、剣聖の最後の剣とぶつかり合った) 」
――――― ズ ギ ャ ア ア ア ア ア ア ア ァ ァ ァ ア ア ア ン ッ ! ! ! (二人が放つ最後の一撃が衝突し合い、桃源郷の空に桜が一斉に舞い上がった)
あなた「 ! ! ! (刃が激しく拮抗する中、「あなた」は剣聖…「魂魄妖夢」の瞳へ訴えかけるように彼女を見つめる) 」
幽玄の剣聖(卍解)「 !! (「あなた」の目に、剣聖は大切な何かを思い出されたかのように大きく目を見開く―――) 」
Song♪:【東方】【Aqua Style】 Callme
♪ ♪ ♪
"繰り返し繰り返す、音の中 振り返る、省みた、足跡を それぞれ 違う色 それぞれ……"
………ああ、そうか……私が守っていたものは…これまでの日々…その過去だった…
…永い刻(とき)の中で紡いできた、あの方と過ごしてきた記憶を閉じ込めていただけだったのか…
私が本当に守りたかったのは……――――
♪ ♪ ♪
"繰り返し繰り返す、音もなく 振り返り、省みた、足跡を 涙は奇跡を知らず 時に埋もれて解けた 深く消えた "
「あら~、妖夢~♪こっちにきて一緒にお茶にしましょうよ~」
「妖夢ぅ~…お腹空いたぁ~……」
「あらあら…妖夢ったら、稽古に励み過ぎて怪我しちゃって…ほーら、痛いの痛いの、飛んでけー♪…なんてね~♪」
「……綺麗な彗星ね…そう思うでしょう、妖夢?」
♪ ♪ ♪
"始めよう 交差した、空の果て 愚かしくも、泣いて笑いあえれば 歩き出す その果ての、夢の先 君が呼ぶのならば、すぐに行くよ"
―――……そんな、実に他愛もない、ありふれた、いつまでも繰り返されるような、変わり映えのしない…
けれど、ずっと大切にしていたかった…そんな、これからも続いていくような、貴女との日常―――
♪ ♪ ♪
"繰り返し繰り返す、人々の 振り返り、省みた、傷跡を 愛すら、形を変えて 意味をなくして、壊れ 深く消える また"
幽玄の剣聖「―――――――(静止した刻に流れる白昼夢で、少女の瞳から桜色の涙が零れ落ちる――) 」
♪ ♪ ♪
"どうして、涙は溢れる? 無くし物要らない物 それが全てと、これまでを生きてきたはずだと なのにどうして"
…私が寂しい思いをしていたら、あの方はそっと抱きしめてくれたのに…
…どうしてあの方が寂しい時に、私は傍にいてあげられなかったのだろう…
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"始めよう 交差した、空の果て 愚かしくも、泣いて笑いあえれば 歩き出す その果ての、夢の先 君が呼ぶならば"
幽玄の剣聖 → 魂魄妖夢「――――(その涙で黒く歪んだ心が洗い流され、彼女を染めていた黒が再び白に変わっていく―――)」
♪ ♪ ♪
"始めよう 閉ざされた、闇の中 瞳閉じず、前をむいて歩いた 続くはず 果ての先、その場所で 君が呼ぶならば"
…あの桜(はな)を一緒に眺めながら、笑いあいながら、そして…
…ずっと閉じ込めていた貴女への"想い"を…いつか、打ち明けるのなら…
…今、伝えに行きたい…
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"すぐに行くよ"
…幽々子様に、会いたいよ…
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"会いに行くよ"
魂魄妖夢「―――――……ん………っ……(閉ざされた瞳を開けると、そこに広がる花明かりの空と桜の枝木。どうやら桜木の下で気を失っていたらしく、朝焼けに目覚めるように上半身を起こす)……(ふと、頭上を仰ぎ見る。そこに広がる風花雪月を描いたような幻想風景に、少女はどこか懐かしくも真新しい感情を芽生えるのだった) 」
あなた「……(いつの間にか、目覚めた妖夢の隣で座り込んでいた。同じようにその風景を眺め、きっと同じような思いを抱いていることだろう)……? ……! (そして、目が合った彼女に"瞳で笑う") 」
魂魄妖夢「 ぁ……っ……(その瞳に少女は何故か見覚えがあった。大切だった人が自分によく向けてくれたものと、まったく同じだったから)………不思議な人間ですね、「あなた」は…(その目に、剣士はしてやられたように小さく噴き出した) 」
ホムラ「…私たちは、ここまで旅をしてきたんです。きっと幽々子さんと妖夢さんが過ごしてきた日々に比べれば、とてもとても短い時間です。…けれど、そこで得られたものは、長い時を過ごしてやっと手に入れたもののように…そのどれもがかけがえのないものばかりだったんですよ…?(意識を取り戻した妖夢のもとへ歩み寄っていく) 」
メディ「…主様は、多くのものを失ってきました。言葉、感情、記憶…きっと、私たちが知らない以上に多くの大切なものを失っているはずです。だからこそ主様は、失うことの恐怖を知る妖夢様のお気持ちを誰よりも理解できたのだと…私はそう思います。故に、貴女との一騎打ちを臨んだのでしょう。主様が自分の"想い"を行動に強く表した時こそ、主様が絶対に成し得たかったことなのですから。 」
魂魄妖夢「……!(ホムラとメディの言葉に耳を傾け、改めて横に居座る「あなた」に視線を配った)……本当に、不思議な人間ですね… でも、私も一つだけ分かったことがあります… 「あなた」が私にしてくれたことは、きっと…今の私に必要だったことなんだと…(瞳を閉じる) 」
魂魄妖夢「面と向かって、互いの気持ちをぶつけあって…そこに躊躇などなく、ただひたらすらに相手を"想い"ながら言葉や刃を交わすことで、はじめて通じ合えるのだと…。 」
魂魄妖夢「……幽々子様の前では決して強気には言えなかった…けれど、今なら……今ならきっと、あの方に、本当の"想い"を告げられそうな気がする…(ふっと口の端を吊り上げ、再びその瞳を開く)……感謝します、名も知らぬ人間よ。「あなた」に出会えて、よかった。 」
あなた「……! ……♪ (妖夢に手を伸ばし、その手を取って共に立ち上がった) 」
ホムラ「…そう、"想い"は届くのです。今まで出会った人たちのものをも繋いで、何処までも果てしなく遠くへと続いていく… 」
メディ「…私も…妖夢様の様に、誰かに仕える者として、またひとつ志を固めていきたいと思いました。貴女様や幽々子様との出会いも、わたくしたちにとって意味のあるものになっていくでしょう。 」
八雲紫「 コ ッ … … コ ッ … … (輪を結ぶあたたかな空気の中、花桜が散りゆく道を辿りながらかの女性が一同のもとへと赴いた)……やはり、私の見込んだとおりだったわね。あなたたちは変えられないとされた運命を変えてくれた。それは決して容易ではないこと…すごいわね。(ふふっと妖艶に微笑みながら) 」
魂魄妖夢「……!?紫様…?何故、貴女までこのような場所に……いえ、愚問でしたね…。神出鬼没のスキマ妖怪である貴女に、踏め込めない領域などありませんから… 」
ホムラ「……え…?えええぇっ!?なんだか不思議な方だと思っておりましたが…まさか、妖怪だったのですか…?(びっくりしたように口を開け、まじまじと紫を見つめる) 」
八雲紫「ふふっ…♪世にも珍しい唯一無二のスキマ妖怪よ。よろしくね。(改めてホムラたちに笑う。そして、改まった表情で向き合った) 」
八雲紫「……あの「はじまりの朝」に落ちた「12彗星」を、それにより齎された非日常な日常を。私たちはきっと忘れはしない。…けれど、あれはいつか、幾つもの素晴らしい世界を消し去るでしょうね。その歪みは、私たちの想像を遥かに絶する早さで進行している。もしかすると、もはや手遅れなのかもしれない… それでも……私からひとつだけ…ささやかなお願いよ。 」
八雲紫「――――― あなたのいる「世界」から目を逸らさないで ――――― 」
あなた「………! 」
八雲紫「だって世界は、「あなた」が生まれるのを待っていた。あなたと一緒に旅をした仲間も、あなたの親しいお友達も、これから更に繋がる人たちも、みんな世界に望まれて生まれてきたのだと私は思う。」
八雲紫「あなたが何かを大切に"想う"気持ちがあればこそ、世界もまたあなたに"想い"を託す。 そうすれば、現実世界も、この破れた世界も、そして…「あなた」や彼らが生まれた故郷(ふるさと)の世界も消えたりしない。」
八雲紫「―――― さあ、お行きなさい。夜が明ける前に。(目を向けた先の空間に黒い一線が迸り、左右に開かれたそれはいつか見た異空間の穴となる。その先は闇…けれど、そこにはもう不穏はない。彼らの進むべき未来(みち)が広がっているから――) 」
あなた「…… …… ……――――――!!(そして「あなた」は、ホムラとメディ、妖夢たちとその穴へ飛び込む。まだ終わることのない未来(みち)へと突き進むために―――) 」
前田慶次「―――…… …… ………っ……?(桜の木の下で気を失っていたところ目が覚める)……いっつつ……俺は…こんなところで何を……?(半ば寝ぼけたような顔をし、全身に走る僅かな痛みを噛み締めながらその身を起こしはじめる) 」
前田慶次「………――――!(ふと、青年は何かを感じ取ったかのように西行妖の方角へと振り返る)………――― ダ ッ (そして、妖なるその樹に向かって駆けだしていくのだった) 」
― 白玉楼・西行妖 ―
西行寺幽々子「………(華胥の幽姫は、未だ花を付けない西行妖を前にふわりと浮いている。目の前にそびえ立つ殺風景な樹を見て、何かを想うようにその麗しい目を細める……)……もう少しよ… きっと、もう少し……だから…――――」
ベール「―――― いいや、"全然"。(幽々子の独り言を遮るように、彼女を追ってきた魔法使いが颯爽と現れる) ……貴女、本当は分かっているんでしょ?どんなに「春」を集めたとしても、その樹が桜を咲かせることはないってことくらい。(春とは程遠い、冬のような冷ややかな目を向けながら) 」
天王寺璃奈「はっ、はっ……!(
ベールに続くように幽々子のもとへと現れる)…はぁ……はぁ…… ……幽々子さん……(開花の兆しを見せない枯れ木を背にする幽々子を見上げ、どこかもの哀しげな瞳で彼女を見つめる) 」
ザ・ソロー「――――――(幽々子を邪魔するわけでもなく、ただ西行妖を眺めている。そしてベールの言葉にも耳を傾けているようでもあった) 」
西行寺幽々子「………(魔法使いの少女の言葉に背中を刺され、少女は静かに振り返る)………何を言っているのかしら?(不思議ね、と滑稽そうに微笑みながら、開いた扇子で口元を覆い隠す) 」
ベール「…貴女が待っているのはその樹の開花でも、春の到来でもない。もっと他にあるんじゃないかってことよ。…そうね…例えば……貴女の傍にいた誰かさん、とか―――」
マーニャ「―――――――もう逃げられないわよ、お幽々ちゃん。いい加減、観念しちゃいなさい。(同じく幽々子のもとへ現れる) 」
ヒロ「幽々子ちゃん…(彼女の姿を見て)……(どうしようもないと言わんばかりに唇を噛み締める) 」
西行寺幽々子「 ピ ク ―――(ベールの発した「誰かさん」に反応する)……面白いことを言うのね、貴女。まるで私の考えていることを見透かしているような口ぶりね。…けれど、私が求めているものは初めから変わらない。「春」を失ったこの幻想郷のために、私は主としてその"天命"を全うするだけよ。遮る者あらば、生者も死者も等しく…冥府へと送ってあげるわ。 」
ベール「………(幽々子の瞳と睨み合い、これ以上の問答は無意味化と言わんばりに防止の鍔に手をかけ目深に被る)…そうかよ。…じゃあ、本題に戻りましょうか。とっとと「春」を返すか、あたしらに痛い目に遭わされてから「春」を返すか、好きな方を選びな!」
お面屋「……ふむ(旅館の内部で西行妖の方角を見る。しばらく様子を見ていたが、物事が佳境に入りあることを決断する) 」
――― Vs. 【BOSS】 西行寺幽々子 ―――
―――― ズ ゥ ン ッ (突然、西行妖より歪な光が放たれる。その光は幽々子を守る様に強く光を放ち、地に積もる桜の葉をも巻き込む衝撃波として放たれ、彼女に歯向かう生者たちへと襲い掛かった)
西行寺幽々子「――― ここに留まって亡霊となるか、亡霊となってからここに留まるか…お好きな方をお選びなさい。(―― 桜符“西行桜吹雪” ――)(背後に展開された魔法陣より青と黄の二色に染まる無数の弾幕が螺旋状に描かれるように緩やかな速度で解き放たれていく) 」
ベール「―――っ…!?(対峙を決意したその時、西行妖から飛んできた衝撃波に吹き飛ばされまいと地に足を踏み込んで耐え凌ぐ)……そういうの、選択って言わないのよ…!(手繰り寄せた箒を手にすると、上空より飛来する弾幕から飛び退くように回避していく) 」
天王寺璃奈「……!(突風のような衝撃波に吹き飛ばされまいと、近くの桜の木に掴まる)……ヒロさん…!幽々子さんを…お願い……! 」
ミネア「―――――――「バギクロス」!(風の上級呪文を唱え、襲いかかる衝撃波に複数の強力な竜巻を放ち迎撃) 」
ヒロ「おう、任された…!!(吹き飛ばされまいと地面で足を巻き付け固定。そのまま腕を突き出し…)でやぁ!!(衝撃波に対し、土弾を連射する) 」
ベール「…っ……!“瞬き落る星《 フォールアウト 》”!(箒を鮮やかに振り回すとその軌跡に星屑が散らばり、魔法弾となって弾幕を相殺していく) 」
お面屋「~♪(旅館内部の一室。巨大な鞄に取り付けられたスイッチを押すと巨大なパイプオルガンへと変形する。軽く調律し、旋律が外へと届きやすいようにした) 」
マーニャ「そう来るなら………これよ!「メラマータ」!(火炎呪文を唱え、無数の弾丸に無数の火球を降らせる) 」
西行寺幽々子「(自身の放つ弾幕が相殺されていくのを見やり、その目を細める)…嗚呼、諸行無常… 死の香りに誘われて、生きとし生ける者は、必ず死ななければならない。死からは逃れられないわ。どうせ逃げられないなら…楽しみましょう?(―― 冥符“黄泉平坂行路” ――)(複数の淡く輝く菫色の魂魄を模した大きな弾幕が幽々子の身体から飛び出し、地上の者たちへ解き放つ) 」
ベール「…"死"…ねぇ…―――(少女の脳裏に一瞬だけ、自分ではない「他の誰か」―― 血まみれの金髪少女 ――が過る…)……きっとそうなんだろーな。逃げられやしないのなら、限りある"生"の中で藻掻いてやるだけよ。(「やってやろーじゃん」と口の端を僅かに釣り上げて好戦的な笑みを浮かべると、挑戦的な瞳で頭上の幽々子を睨みつける。魂魄型の弾幕を華麗な大跳躍で受け流し、地面へ着地する前に箒に跨り空へと舞う) 」
お面屋「……ンフフフフフフ(そして、鍵盤を撫でるようにその歌をすべてに捧げる――――「いやしの歌」を) 」
西行寺幽々子「 死への誘い、遊離する命、魂を吸う蝶の群れ…冥府への案内を今ここに届けましょう ――― 死符“ギャストリドリーム” (どこからともなく飛来してきた大量の光の蝶「反魂蝶」が幽々子を中心に大きく拡散。触れる者を爆撃する大群の蝶が舞い、彼らへと襲い掛かった) 」
お面屋の演奏が始まる。
悲し気な旋律の中にすべてを許してくれるかのような優しさがあった。
心に溜まった妄執の澱みを綺麗にしてくれるようなそんなメロディ。
「全て諦めて休んでしまえ」という諦観と休息を諭すようにも聴こえれば、
「哀しみや苦しみはここに置いていけ」とそっと背中を押して送り出すような曲にも聴こえる。
それはまさしく西行寺幽々子と、元凶である西行妖に向けられていた。
その音色はもはや生者も死者も分け隔てなく、彼等彼女等の心を解きほぐしていく。
声なき歌は自然と涙を誘う。
涙は死者のために、だがそれ以上に生者のために……。
まさしく鎮魂歌のような、生者と死者のための子守唄。
ベール「あっ…くぅ…ッ…!(反魂蝶の爆撃に迎撃されながらも、何処からともなく流れてくる「いやしの歌」の音色によってその火傷の痕が瞬く間に癒えていく)燃ゆる涙は泉にて水泡に消え、深き底で藍の目に染まれ――――“燃え尽る星《 バーンアウト 》”!!(反魂蝶の群れを掻い潜りながら幽々子へと突撃する中、前方へと掌を突きつけて放射状に灼熱の火炎を放ち、蝶の群れを焼き払っていく) 」
マーニャ「…!(大群の蝶を見て、何かを思いつく)あらあら……それなら、こっちのはどうかしら?――――「アゲハ乱舞」!(無数の蝶を呼び出し、幽々子の大群の蝶へと向かわせて攻撃させる) 」
ヒロ「死………(今まで出会ってきた者の"死"が一瞬彼の頭を過ぎる)………とことん、足掻いてやるよ…!(弾幕を土の膜で受け止める) 」
西行寺幽々子「ふふふ……――――!?(突然、それまで余裕の笑みを浮かべていた少女の顔が一変する。夜風に乗って流れくる鎮魂の音色を聴き、頭痛にも近い異変に僅かな狼狽の色を露わにする)………(この音色……どう、して……どうして、こんなにも…―――)――――!(感傷に浸りかけていた時、反魂蝶を焼き払われ、今まさにこちらへと向かってくるベールたちを目に我に返る) 」
西行寺幽々子「…身のうさを 思ひしらでや やみなまし そむくならひの なき世なりせば ――― …死を恐れても、逃げるのは無駄なことよ。死蝶からは、決して逃れられない。死蝶“華胥の永眠” (相殺されてもなお、交差弾のように全方位へ蝶を象った弾幕を発射する) 」
ベール「――― にゃろう…っ!!(箒の先端を両手で強く掴み上げてその軌道をズラし、第二波の蝶群を避けていく)…ちッ……奴の攻撃範囲が広すぎて思った以上に近づけない!攻撃を打ち消すだけで手いっぱいだわ…(どうしたものか…と考えあぐねる) 」
マーニャ「…なに、まだやろうっていうの?懲りないわね~……「アゲハ乱舞」!(再び蝶を複数呼び出し、死蝶へと向かわせる) 」
天王寺璃奈「……綺麗……でも…なんだか、哀しい感じがする…(幽々子が巻き起こす、七色に輝く反魂蝶の輝きに見惚れながらも、そこから感じるものになんだか胸を締め付けられる感覚に陥る) 」
ヒロ「ち、蝶が……!(土弾で蝶を狙い撃ちするも全ては落としきれない)…どうしても、近づけねえってのか…! 」
いやしの歌の音色は風に乗り、花びらに乗り、広く静かに響き渡っていく。
次元を超え、空間を越え、西行妖の奥深くや破られた世界にまで水のように浸透していく。
ベール「………――― しゃーねぇ、"アレ"をやるか。(帽子の内側で、その翡翠の目に決意の火を灯す) ――― 時間を稼いでッ!!(地上にいるヒロたちに向けて叫ぶと、反魂蝶から遠ざかりながらその右手を真横へと突き出す。彼女の手が、徐々に黒く染まっていく―――) 」
西行寺幽々子「………っ―――(いやしの音色に思考を掻き乱され、ぎゅうと目を瞑る。瞑目するその中で、少女は"想う"。今は隣にいない「誰か」のことを…―――)……針無き、毒無き、蝶なれど、この幻惑は霊魂に効く――― 蝶符“鳳蝶紋の死槍”(閉ざされた扇子を突き出すと、その先端に霊力を込めた淡い光が集い、極細閃光となって地上にいるヒロたちに向けて解き放たれた) 」
ヒロ「ベールちゃん…!?その腕は………わかった!(土の幕を傘のように展開し、死蝶に向けて突っ込んでいく) 」
ミネア「この数……姉さんも蝶を呼び出せるとはいえ、さすがに対処が追い付かない…… …!ベールさん……!何かを思い付かれたのですね…わかりました!では………「フバーハ」!(補助呪文を唱え、ヒロ達味方全員に炎や吹雪ダメージを和らげるあたたかな護りを付与する) 」
ヒロ「まだまだぁ………!!!!その魔法………よし…!(ダメージが和らいだのを感じ、閃光を受けつつ幽々子に接近しようと試みる) 」
西行寺幽々子「…嗚呼、可愛い…なんて可愛いのかしら…。まるで芽吹いたばかりの若い桜の様。おいで、最後の戯れを楽しみましょう。ここまで楽しめたのなら、きっと私はその果てに自分の企みが叶わなかったとしても、満足して笑っているわ。(必死の抵抗を示すヒロたちに、亡霊少女は不敵に笑う。だが、その笑みは束の間に消える。今も尚聞こえてくる音色に、まるで後悔の念を噛み締めるかのような歪んだ表情になっていく) 」
マーニャ「…! …はっ! そ~れっ!(極細閃光を華麗な舞踊の如くひらりと躱していく) 」
ベール「……ッ゛……――― ギ ュ ポ ン … ッ … (その右手に黒い水泡が沸き上がる度、そこに走る痛みに歯を食いしばる) 」
お面屋「……――――(ただ柔らかくその音色を奏で続ける。何度も何度も繰り返し。その歌はかつてあらゆる人々の無念や涙を癒し、浄化へと導いた。それはある少年が証明している。心に封じ込められた想いへ、優しく手を差し伸べるようでもあった。 」
マーニャ「ふふ…♪ ……いいわね。こ~んなに踊っていられるんだもの、わざわざこんなところまで来た甲斐があるってもんだわ。(躱した後もしばらく舞い踊り続け、お面屋の奏でる音色と相俟っていく) 」
西行寺幽々子「あなたたちの攻撃もまた、西行妖に「春」を渡してくれるのよ?さあ…もっと、もっと咲き誇りなさい。すべてはこの幻想郷のため…「妖夢」のため―――――!?(……今、私は何を……?)(ありもしない言葉を無意識に放ち、その口元を扇子で制するように覆った)………っ……――――(霞んでいく思い出に少女は首を振る) 」
西行寺幽々子「……残念だけど…ここまでかしらね。(これ以上の戯れは無用、そう言い聞かせるように手にした扇子を天高く突き上げ…) ―― ラストワード“西行寺無余涅槃” ―― (自らの背後に大きな扇の紋が開放。そこから前方位へと拡散する小弾幕、大玉のような礫、ひらひらと舞いながら進行する反魂蝶、そして最果てまで届くかのように突き進む五つの閃光が順番に解き放たれる。それは対峙する生者を全力で葬らんとする、幽姫が放つ最終奥義であった) 」
天王寺璃奈「……!(ダメ…あんなすごい攻撃…誰も避けられない……!)(幽々子が放つ最終奥義の弾幕の嵐に目を伏せる) 」
ヒロ「………っ!(璃奈の様子を後ろで見て横に飛び上がり、巨大な土の盾を発現させる) 」
ベール「ッ゛――――!!(魔力を溜め込んでいた矢先、切り札を持ち掛けてきた幽々子に先手を打たれ驚いたように目を見開く)…くそッ!まだ未完成だって時に…!ああっ、もうっ!どうにでもなれぇーーーーッ!!!(璃奈の言う通り、誰にも避けられはしない弾幕劇を目前に、半ばヤケクソ気味にその黒く染まった手を突き出した) 」
ベール「――――― “ 黒 く 歪 む 星 《 ブ ラ ッ ク ア ウ ト 》 ” ―――――」
幽々子が放った最後の弾幕を前に誰もが度肝を抜かれたその瞬間―――
魔法使いの少女の手から離れた"黒"が、夜空一面を覆い尽くす死霊の弾幕のすべてをその色で塗りつぶす。
弾幕は夜に同化したように瞬く間に消失し、激しい光に覆われたはずの白玉楼に再び穏やかな桜吹雪が舞うのだった…
西行寺幽々子「―――――!!?(まさしく全身全霊の最後の切り札。それが一瞬で消え去り、亡霊少女も何が起きたのか理解できずぽかんと口を開けて、ただただ呆然と宙に浮いていた) 」
天王寺璃奈「…………っ……? ……ぁ…! (恐る恐る目を開けると、視界一杯に広がったあの死へと誘う閃光が消え去ったことを見やり仰天するように目を丸くした) 」
ヒロ「…………桜…吹雪………?(状況が飲み込めない中、そっと呟く) 」
ベール「……ぜぇ………はぁ……っ……(黒く染まる右手がその手中へ吸い込まれるように消えると、元に戻ったその手が痙攣しだす)……ざまぁ…みろ…―――(魔力を使い果たしたためか、フッと脱力して箒と共に空からヒロのもとへと落下していく) 」
ミネア「―――――! あっ………まさか……あれだけの一撃を、退〔しりぞ〕けるだなんて…… ベールさん、あなたは………。 」
ヒロ「お、おっ……!(落下したベールを受け止める)すごいな…まさかあれを止めたなんて… 」
西行寺幽々子「……ちょっと、驚いちゃった…(心底信じられない光景を目にし、少女は面白可笑しそうに笑みを浮かべながら地上へと降り立つ)……けれど、惜しい惜しい。貴女のとっておきの攻撃も、私には届かなかった。 …さあ、受け入れなさい。黄泉の国への誘(いざな)いを―――(扇子を突き出し、更に攻撃を加えようとするが―――) 」
前田慶次「 ザ ッ ―――! (その途端、幽々子の前に颯爽と飛び出してくる)………(現れた青年は何も言わず、ただ幽々子と向き合う)」
天王寺璃奈「……ベールちゃん…すごい…っ…(慌ててヒロたちのもとへ駆け寄ってくるが…)……!慶次さん……(ひょっとして、まだ…)……?(突如現れた慶次に対し、先程の様に再びこちらと対峙するものかと思わず身をすくめる。だが、こちらではなく、幽々子と向き合った彼の姿から何かを察し、それが杞憂だと気づく) 」
お面屋「……ザッザッザッザッ(演奏を止めて旅館をでる。そしてゆっくりと西行妖の方角へと向かう)ホホホ、永らく溜め込んだそれをいやすには、歌だけでは足りませんか。……まぁ、それはそうと。(ヒョコヒョコ歩く) 」
マーニャ「やれやれね……まったく、無茶もいいとこよ。……ま、あんたが無茶してくれなかったら、今頃私達が出ていくとこだったんだけどね。(ベールに) 」
西行寺幽々子「……あら、慶次さん。ちょうどいいところに来てくれたのね。さあ、あなたの手で…―――?(だが、対面する青年の瞳に生気を感じ、彼に食べさせた黄泉戸喫の効果が切れていることに気づき破顔する) 」
ミネア「姉さん…?それって…… 」
前田慶次「……通りすがりのお侍さんから話はぜんぶ聞いたよ。……幽々子さん…あんた…――― "春(こい)を失った"んだってな…(大きな溜息と共に、不愍に想うかのような瞳を浮かべる) 」
西行寺幽々子「………(慶次の言葉に、かの音色を感受した時のような顔色を窺わせる) 」
前田慶次「……恋はいいもんだよ。あったかくてさ、人として生きることの意味を教えてくれる。(舞い落ちる桜を優しくその手で受け止める) 」
前田慶次「…俺には親友(とも)がいた…かけがえのない親友がな。そいつぁ、俺と同じ女に惚れて、恋をしたんだ…そして二人は結ばれた。俺は心から親友の恋を称えた…けれど、ある日そいつは人が変わっちまったように、恋したはずの女をその手にかけたんだ… そいつは言ったんだ…「愛は己を弱くする、ならば弱さなどいらない」ってな…怒り心頭した俺はそいつと初めて大ゲンガをしたさ。結局…分かり合えないまま、親友はその生涯を終えた… 」
前田慶次「……確かにみんな言うんだよ、恋だの愛だののたまってもそれだけじゃあ生きていけねえって。でも俺は知っている… 真(まこと)の愛を知ってる奴はみんな強かったし、恋をしている奴等だって生き生きと輝いていたんだ! 」
天王寺璃奈「……慶次さん……(彼の言葉に耳を傾け、その辛い過去を感じ入りながらも、彼自身の強さを思い知る) 」
前田慶次「……幽々子さん…あんたは、あんたが愛した人のことを想ったことはあるかい?男じゃなくたっていい。友達とか、家族とか…そんな、かけがえのない大切な人を…そいつのことを、心から"想った"ことはあるのかい…!?当たり前の日々を共に過ごしてきた…いつだってその傍にいてくれた人のありがたみを!感じたことはあるのかよ!? 」
ヒロ「…………(ベールを安全なところへやるように離れながら話を聞いている) 」
西行寺幽々子「…………―――(脳裏に過る穏やかな春の日々。白玉楼の縁側で陽の光を浴び、団子を頬張りながら少女は何かを見つめている。庭で刀を振り続ける、白銀色の髪をした少女のことを――――)――……人間(ひと)の子が面白いことを言うのね… でも、私にとっては…「春」こそがすべて… 従者も友達も、私のその願いに異を唱えることなんかなくて…だから、受け入れてくれていると思って…信じてやまなかっただけ―――― 」
前田慶次「 こ の 分 か ら ず 屋 が ァ ッ ! ! ! (青年の強い叫びに、花桜が舞い上がる)……ほんとはもう気づいてんだろ…?あんたにとって大事なのは花よりも団子よりも―――それを一緒に楽しんでくれる思い人だってことをッ!!だからあんたは、その人に良い顔をさせてやりたくて…あの珍妙な桜木に花を咲かせようと躍起になっていたんだろ…? 」
天王寺璃奈「……!!(慶次の鋭い言葉に、思わず幽々子の方へ視線を配る)……そう、だったの……?幽々子さん… 」
前田慶次「…たとえ、世に忌み嫌われようとも…前世のしがらみがあろうとも…自分だけ罪を背負い込んででも、「大事な人に笑顔でいてほしい」…その本心が、今のあんたを突き動かしたんだ…――――……違うかい…? 」
西行寺幽々子「――――!!(青年の叫びに言葉を失う。本心を見抜かれた子どものように黙り込んだかと思えば…)……っ……(そのか細いからだが、小刻みに震えだす)……そう、ね……っ…ふ、ふふっ……(扇子を閉じ笑みを零す。だが、その笑い声には震えがあった。ずっと心の奥底に閉じ込めていた感情が溢れ出したかのように、唇が震え、紡ぐ言の葉にもぎこちなさが表れる)」
Song♪:幽閉サテライト / 『永遠に君、想う』
♪ ♪ ♪
"サクラ、咲く君が遺した夢をひとり紡ぎゆく 胸に残る身勝手な孤独は 溢れた雨が揺らす"
西行寺幽々子「………はじめは、ただの好奇心だった…けれど……そんな私のひょんな思いつきに、嫌な顔せず…『あの子』はずっと私のために春を集めてきた… 」
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"蘇るは 優しい 痛みへの誘い 続く未来を見守る どうか幸せになって…なんて"
西行寺幽々子「…あの大きな桜の木が花を付けたら、それはそれはとても美しいものになるはず…… だから、約束したの…西行妖が満開になったら、あの桜の木の下で…二人で春の宴を楽しみましょうって… 」
♪ ♪ ♪
"サクラ、咲く君が遺した夢をひとり紡ぎゆく 嗚呼 胸に残る身勝手な孤独は天に還さぬように"
西行寺幽々子「……けれど、あの子は忽然と消えてしまった… …きっと、いつまでたっても花を付けない西行妖を、そして…もうすぐ、もうすぐ…ってあきらめなかった私に愛想を尽かしたのだと… 「彗星」が彼女の想いを体現したものだと…思い込んでしまったの… 」
♪ ♪ ♪
"永遠を誓った二人だって静かに舞い散る 瞳から溢れた熱い雨が淡い記憶を揺らす"
西行寺幽々子「だから私は…!なんとしても西行妖を開花させたかった…っ…!でなきゃ……でなきゃ、きっと…あの子は戻ってこない………そんな気がして…不安が、止まらなかったの……っ…(扇子がその手からすり抜け、震える手で瞳を覆う) 」
♪ ♪ ♪
"恋に落ちた 二人を誇らしくも思う 果たせないあの誓いを責めるつもりなんてない…けれど"
西行寺幽々子「……ええ…そうね……あなたたちの言う通り…本当は、既に気づいていたのかもしれない……どんなにやったって、妖怪の木に花を咲かせることなんかできないって……!気が付けば私も心の何処かで諦めかけていたこともあった…こんなことで、私の願いは…あの子への"想い"は届かないかもしれないって… 」
♪ ♪ ♪
"サクラ、散る君は何処に消えゆく止まぬ雨の中 嗚呼 分かってる泣いてばかりの日々じゃきっと叱られるね"
西行寺幽々子「……ふ、ふふ……もう、どうしたらいいかわからなくなっちゃった……―――(涙に歪んだ瞳の中で、霞んでいた思い出が浮かび上がる―――) 」
♪ ♪ ♪
"永遠に二人触れる事なくても変わらない想い 巡り巡るはまたこの世界へ 君を見つけ出すから 嗚呼…"
「ああっ!幽々子様ー!食べ歩きははしたないですよ~…! 」
「 幽々子様…またこんなに間食をなされて…!当分はもう少し量を制限させていただきますからね!! 」
「 もう…幽々子様ったら…またみょんなところでお昼寝なんかして… 風邪ひきますよ…? 」
「……美味しい… 幽々子様、また一段と上達されましたね…♪ 」
♪ ♪ ♪
"サクラ、咲く君が遺した夢をひとり紡ぎゆく 嗚呼 胸に残る身勝手な孤独は天に還さぬように"
――― 葉隠れに散りとどまれる花のみぞしのびし人に逢ふ心ちする ―――
西行寺幽々子「―――……やっぱり……独りで見る桜は…寂しいわ……っ… 」
♪ ♪ ♪
"サクラ、散る君は何処に消えゆく止まぬ雨の中 芽生え朽ちる儚き定めでも 永遠に君だけ想う"
西行寺幽々子「 もう春なんていらない… お願い…私のもとへ帰ってきて……――― 『 妖夢 』…っ…… 」
―――― … … ピ キ … パ キ ン … ッ … … (泣き崩れる少女とその背を静かに見守るように佇む巨大な桜の木…その間隙の空間に、黒い亀裂が入る―――)
あなた「―――― パ キ ャ ア ア ァ ァ ン ッ … ! ! ! (亀裂が砕け、空間の裂け目から飛び出してくる。その傍らには―――) 」
魂魄妖夢「―――――― 幽々子様っ……!!!(「あなた」と共に現世へと舞い戻るな否や、片時も忘れることのなかった主へ向かって両手を伸ばしながら落ちていく) 」
西行寺幽々子「――――― ! ! ! ――――― 」
カズヤ「(ペニーワイズを気絶に追い込んで担いでいき、マンホールに放り込む) 」
ヒロ「グソクムシ~グソクムシ~(関羽監督に蹴っ飛ばされたため洗脳されてしまった) 」
ペニーワイズ「(ちゃちゃまるのぴえん斬で丸坊主になる) 」
カスタマーザービス「(ソーラ・レイをちゃちゃまる宅の上にスタンバイ) 」
愛宕「食っってみせろよマシュティ!! 」
赤城「(これぐらいの量)なんとでもなるはずさ! 」
浜風「盛るペコだと!?(震え声) 」
盛るティ「₍₍(ง🎃)ว⁾⁾鳴らない言葉をもう一度描いて₍₍ᕦ(🎃)ᕤ⁾⁾ ₍₍ʅ(🎃)ว⁾⁾₍₍🙏⁾⁾₍₍🎃⁾⁾赤色に染まる時間を置き忘れ去れば₍₍₍(ง🎃)ว⁾⁾⁾哀しい世界はもう二度となくて₍₍ᕦ(🎃)ᕤ⁾⁾ ₍₍ʅ(🎃)ว⁾⁾🙏🎃荒れた陸地が こぼれ落ちていく₍₍ ʅ(🎃) ʃ ⁾⁾一筋の光へ (熱々のメガ盛りカツ丼数十杯を完食するまで浜風の顔面を叩きつけつつ提督に反省を促すダンスを踊り続けたという おしまい) 」
ヒロ「……!? 」
― 白玉楼・高台 ―
八雲紫「………(片手に傘を、もう片方に開かれた菫色の扇子を持ちながら、高台より西行妖を眺めていた) 」
アコール「……貴女には視えていたのではないですか?この分岐が、「
特異点」によって遷移される瞬間を。(アタッシュケースを両手に紫のもとへと赴く) 」
八雲紫「…そうね……そうかもしれないわね。(アコールの方へは振り返らず、依然桜木を眺めながら、どこか愉快そうに朗笑を零す) 」
アコール「……どう思いますか、この世界。 」
八雲紫「………―――――――――(アコールの問いかけに、少女の中でかつての記憶が過る―――) 」
― 数千年前・白玉楼 ―
八分咲きの西行妖がその花を夜空へと散らす中、二人の少女が仲睦まじい様子で語り合っている―――
西行寺幽々子(生前)「…ふふっ…ねえ、紫。今日はどんな未来を見せてくれるのかしら?(青く茂る芝生の上に腰かけ、少女は隣に立つ金髪の妖怪に嬉々たる瞳を輝かせる) 」
八雲紫「……そうねぇ…(妖艶に微笑みながら傾げていると、何かを閃いたように顔を上げる) 」
紫の施す妖術により、夜空に投影される境界。
そこに映し出されるのは、12の彗星が緩やかな速度で流れていく光景だった―――
西行寺幽々子(生前)「……! ……綺麗ね……(天の川をゆっくりと流れる12の彗星に見惚れてしまう) 」
八雲紫「……貴女はいつかあの12もの彗星を見ることになる。それは明日かもしれないし、来年かもしれないし、あるいは…もっと遥か先かもしれない。けれど、あれを目にした時…貴女はきっと絶望し…でも同時に希望を抱くわ。あの青く輝く光こそが、私自身が垣間見たことのなかった貴女の可能性の未来の一つなのだから。(彗星が流れる夜空を共に見上げながら) 」
西行寺幽々子(生前)「ふぅ~ん…… じゃあ、楽しみに待っているわ♪(桜色の髪を揺らしながら少女は心の底から幸せそうに笑う) 」
八雲紫「――――……混沌世界は全てを受け入れるのよ。それはそれは残酷な話ですわ。(いつか過ごした記憶を思い出し笑いするように口の端を緩める)」
八雲紫「……それでも…―――― この世界は、きっと美しい。(ふふっ、と嬌笑をそこに残すと、開かれた境界の中へ踏み込んで観測者の女性と共に消え去った) 」
― 西行妖 ―
魂魄妖夢「――――………!(砕かれた境界から抜け落ちる様に落下する中、愛しき主へ両の手を目いっぱいに伸ばしていく) 」
西行寺幽々子「――――!!(こちらへ手を伸ばす愛すべき従者を受け止める様に、自分もまた手を伸ばし…)―――― ガ バ ッ … ! (その胸で受け止めるように、強く強く抱きしめた) 」
魂魄妖夢「……っ……っ…!……幽々子様ぁ……幽々子様あぁ…っ……!!(半身半霊の少女は華胥の姫君の胸の中で淡い青の雫を零しだす) 」
西行寺幽々子「……もうっ……主人をほったらかして…従者として失格よ……っ…?(我が子を愛でる母のように、胸の中ですすり泣く少女を抱きしめながらその白銀色の髪を優しく撫でおろす。一度(ひとたび)撫でる度に、自分の瞳からも零れるものがあった) 」
魂魄妖夢「――――! ……う゛っ……ぁ…… うわあああぁぁん…っ…!!幽々子様ぁ゛ぁ゛~っ゛…!!(すべてを抱擁するような優しい彼女に顔を埋(うず)め、大粒の涙でその身を染めるのだった…) 」
あなた「………(ついに再会を果たした二人を「あなた」はその瞳に収める。感情こそは失っているものの、いつかは自分も誰かのために涙を流す日が来るのだろうかと、そう感じ入る…) 」
天王寺璃奈「…璃奈ちゃんボード…うるうる…っ…〖 இωஇ 〗(感動の再開を果たした二人にもらい泣きする)…よかったね、二人とも…本当に… 」
ホムラ「……はい…っ…(璃奈にそう応えながら、自分もまたほろりと流れる涙を人差し指で拭う) 」
前田慶次「……(抱きしめ合う二人にうんうんと強かに頷くが…)……うおおおおぉぉぉっ!!やっぱだめだあああぁぁぁぁぁ~~~…っ!!!(耐えきれず号泣する←) 」
ミネア「この人が……魂魄妖夢さん。ならば、これでもう…… 」
メディ「……妖夢様、幽々子様…お二人が無事で会えてよかったですね。(少し離れたところから二人の様子を温かく見守っている) 」
魂魄妖夢「ぐす、ぐすっ……―――!(ここでふと、やぶれせかい…幽々子が消えた並行世界で見た西行妖の真相のことが過る)……っ……ぐす…幽々子様… ……ごめんなさい……「春」を集めることができなくて……で、でも…―――」
西行寺幽々子「――― もういいのよ…もう、いいの……っ… だって、妖夢が帰ってきてくれたから…(真相を語ろうとする妖夢の身を離し、改めて面向かい合い、涙で紅潮した顔で優しい微笑みを送った) 」
魂魄妖夢「……! ……幽々子様……(その優しさに、従者はやられた。再び幽々子の胸に顔を埋め、静かにすすり泣くのだった…) 」
西行妖から暖かな光が四方八方へと飛散するように飛んでいく。
雪が積もる山村の木に花が芽吹き、凍てついた川からせせらぎの音が鳴り始め、
どこからともなく小鳥のさえずりが聞こえてきた―――
ベール「……(ヒロの胸の中で目が覚め、霞んだ視界が定かになっていく中で空を漂う光を静かに見上げる)……エーテルが、帰るべき場所へと戻っていく、か……―――!?(自身の目的を果たし安堵の笑みを浮かべた直後、今更になって自分の状況に気が付き)―――なにしてんだこのスケベが~~~~っ!!!(ヒロの目に無慈悲な目潰しを繰り出して離れる) 」
メディ「ともあれ、これにて一件落着ですね。みなさん、ありがとうございました。これできっと、この国を覆う雪はすぐに溶けていくことでしょう。 」
マーニャ「はぁ~……是非そう願いたいもんだわ、まったく。(メディの言葉に) 」
ヒロ「…ああ、そうだな……うぎゃあああぁ!!?ど、どうして…(目潰しで悶絶する) 」
西行妖へと続く桜並木の路…そのうちの一本が、いつの間にか枯れ果てていた。
よく見るとその樹の表面に器用なまでに彫り込まれたものがあった。
あの「混沌文字」である―――
あなた「……!(すべてが落ち着いて安堵したのも束の間、ふと目が付いたその枯れ木に彫り込まれた文字に仰天する)……(彫られた文字にそっと手を触れて解読すると、取り出したメモ帳にその翻訳文を書き記す)……(メモ用紙を璃奈へと手渡し、代わりに読んでもらうようにアイコンタクトを送る) 」
天王寺璃奈「…ぁ…これって……!(あなたと同じように表情を強張らせるも、手渡されたメモ用紙を静かに受け取る)……君の思っていること、わかるよ。私も、同じだから。……でも、うん…きっと大丈夫。もう、怖気立ったりなんか、しないから…(深呼吸を一つし、そのメモに記された文字を言葉に発しようと唇を動かす―――) 」
――― 「 沈黙を破る者、閊(つか)える虚無に屠られて、その想い沈黙に破られる Alan Smithee 」 ―――
「あなた」が解読した文字を璃奈が読み終えたその瞬間、空間が音もなく光に包まれた。
― 空白の劇場 ―
光が途絶えた後、一行はかつて目にしたことのある、あの「劇場」に再び誘われていた。
劇場の幕が上がっていくと、その舞台上には、白い蓮の花が顔を出す泉。
その果てに、あの西行妖にも似た大きな桜の木がそびえ立っていた。
ホムラ「……また、この劇場に…。ここはいったい、何なのでしょうか…(今回で四度目となる劇場への招待に、やや不安げな表情を浮かべてその舞台上の光景を見やった) 」
メディ「……例の「混沌文字」。あの文字を主様が解読すると、決まってこの地へと誘われる。これは何の因果でしょうか…(広がる劇場に警戒を配る) 」
前田慶次「……おわっ!?なんだなんだ…どでけぇ~とこだなぁ~…!歌舞伎座か…?それにしては、ちょっと異様な雰囲気もするが…(初めて目にする劇場に興奮している) 」
ベール「………(一同に紛れて再び劇場へと引き込まれ、怪訝そうにその舞台を見つめる) 」
バ サ バ サ バ サ … ! (桜の木の下に数羽の鴉(カラス)が飛んでくる。カラスの群れは人の形を成し、やがてその黒から一人の少女が生まれ出ずる―――)
ヒロ「いつつ…ひっでえ目にあった(両眼を押さえつつ)…また飛ばされたってやけかい… 」
桜坂しずく?「――――(鴉色の羽が舞い散る中、そこに立っていたのはかつて出会った少女。黒い衣装とペルソナマスクにその身を包んだ彼女は、静かに「あなた」たちの方角へと振り返る) 」
天王寺璃奈「――――!? ……しずくちゃん…っ……! (久しく再会を果たした少女を目に、思わず身を乗り出すように一歩出る) 」
あなた「……!(踏み出す璃奈を横目に、冷静に舞台上のしずくに目配せする) 」
桜坂しずく?「……夜はまだ明けない。故に十二星夜はあの空に輝く。その演舞は止まることなど知らず、その美しい散り様を遺して観客を魅了する。拍手喝采は鳴りやまない。(遠い果てに立っているにもかかわらず、その声は至近距離で「あなた」たちへと響き渡る) 」
桜坂しずく?「嗚呼、なんて素晴らしき劇場。誰もが皆、「箱庭」を求めている。ならば私も応えましょう。彼らを夜明けへと導くため。私が『私』であるために。」
天王寺璃奈「……しずくちゃ―――!(淡々と言葉を紡ぐ少女に詰め寄ろうとしたその瞬間、その言葉から感じた異様な空気に思わず制止した)……違う……君は、誰…?本当に、しずくちゃんなの…? 」
ホムラ「…璃奈ちゃん…?(何かに気づき青褪めた表情をする璃奈を心配そうに見守る) 」
ヒロ「…!しずくちゃんじゃ、ない?(璃奈の言葉を聞き) 」
マーニャ「――――!? ちょっと、今度はいったい何だっていうのよ!次から次へと… 」
お面屋「ホッホッホッホッホ、ここが例の「箱庭」ですかぁ。ん~中々に乙な場所で。(いつの間にか紛れており)おや、語り部の方でしょうかね(しずくを見て)……いや、そのお面(かお)。(そう言って璃奈同様まじまじと) 」
天王寺璃奈「……なんとなく、だけど……違う、気がする… これは…しずくちゃんの声じゃない…っ……?(困惑に双眸が僅かに泳ぐ) 」
桜坂しずく?「……………(観衆の視線をその身に浴びる。少女の身体が、一瞬だけ別の何かと重なっているように"ブレた"―――) 」
桜坂しずく? → "黒幕"「―― 私は『 黒幕 』 古き悲劇の幕を引く者 そして 新たなる喜劇の幕を上げる者 ――」
"黒幕"「真白な庭の内側で、きっと『私』は感動の涙で啼(な)いている。その雫は雨となり、この空白を満たすのでしょう―――(少女の肉体は再び濡れ羽色に染まり、無数の鴉となって飛散する)」
ヒ ラ ヒ ラ … ―――― メ キ … … メ キ … ッ … … メ キ メ キ メ キ ィ … ッ … ! ! !(空より舞い散る黒き羽が桜の木に触れたその時、桜は灰となりてその枝木も腐食するように枯れ果てていく。やがて、あの美しい面影の一切を捨てた樹木は呪いの樹とでも言うような不気味な相貌へと堕ち、骸骨の大手を思わせる枝木が左右へと延びていく)
天王寺璃奈「……!待って…!君は――― きゃっ…!?(消えていく少女に手を伸ばそうとするが、それを遮るように現れた枝木に驚き退いてしまう) 」
ヒロ「………あれは…一体………(璃奈の横に立ち、枝木と相対する) 」
あなた / ホムラ『璃奈ちゃん…! / ……!!(璃奈を庇う様に前線へと滑り込み、剣を構えて戦闘態勢に入る)』
沙羅葬樹「 メ キ メ キ メ キ ィ … ッ … ! ! (呪樹を起点に泉が泥沼の如く黒く染まり、枯れた蓮が底無しの闇へと沈んでいく。青空もまた曇天よりも濃くなっていく中、その樹は自らを奮い立たせながら蠢き始める―――)」
お面屋「皆さまお気を付けを。ここから先は、亡者の見る悪夢。その集合体とも言えるものでしょう。光があれば影がある。影で蠢く死者たちの春は、まだ芽吹いたばかり(ンフフフフフ) 」
ベール「……オーケー、オーケー…ようやく視えてきたよ、あたしにも。進むべき路が…ブッ倒すべき真の障害が。(真剣な眼差しを眼前の呪樹へと突きつけながら、手繰り寄せた箒をぐるりと回して身構える) 」
前田慶次「…そういうことかい…(事情はよく分からないが、今己が何をすべきか、その答えだけははっきりとした様にほくそ笑んだ)……絆と縁(えにし)を守るためだ。いっちょ ――― 力比べと洒落込もうかァッ!!!(大太刀を引き抜き、威風堂々と身構える) 」
メディ「…璃奈様、ここはわたくしたちにお任せを…!(オーソライズバスターを両手に前線へと立つ) 」
そして、「あなた」たちは対峙する。
未だかつてない大いなる存在の、その一端―――「 黙想 」の名を象った化身と。
沙羅葬樹「 ギ、ギギ、ギギギギッ…――― メ キ メ キ メ キ ャ ァ ッ ! ! ! (呪われた大樹はその根を伸ばし、対峙する者たちを絞殺さんと伸ばし、ついに襲い掛かる―――) 」
――― Vs. 【 空白の箱庭 】 黙想の劇団員《 沙羅葬樹 》 〖 Section 1 〗―――
ヒロ「…よし(刀を構える)なかなかの、大物だな… 」
マーニャ「ああもうっ、こうなったら…全部焼き払ってやるわ!―――「メラゾーマ」!(火炎上級呪文を唱え、沙羅葬樹に大きな火球を放つ) 」
あなた / ホムラ『行きますッ! / ……!(意志を持つ根の進撃に臆することなく真っ向から飛び出す)はああッ!! / ……!!(赤熱する剣身から溢れる炎を振るい飛ばしながら、根を焼き払っていく)』
ベール「汚物は消毒だァーーーーッ!!!(マーニャと共に根っこへ向けて火炎弾を幾つも放射する) 」
沙羅葬樹「 ボ ッ グ ォ ォ オ オ オ ン ッ ! ! (根を焼き払われ、本体にもマーニャの火球が直撃する) シ ュ ゥ ゥ ゥ … ッ … (しかし、樹は焼失することなく、ただただ天に向かって伸び進めていく)…ギジュ…グジュル…ッ…――― ド プ ン ッ … ! (枝木に垂れ下がる果実のような物体を、気味の悪い音を立てながら腐食する地に落としていく) 」
果実 → 人の果て『ァ゛ァ゛~…ッ゛……!!(落ちた果実が地に弾け気色の悪い液体が飛び散ると、そこから無数の人の形をした「何か」が生まれ出ずる。まるでゾンビのように蠢く化物たちは、触れるものを溶かす酸性雨のような体液をその身に纏い彼らへと襲い掛かる)』
メディ「……!…あの者たちの体液…触れた地面が腐食している…っ…?強い警戒が必要です!(一同に注意喚起しながら押し寄せる化物らを砲撃で迎え撃つ) 」
ヒロ「…………こいつは、触れない方が良さそうだな…!(土弾を人の果てに向けて放つ) 」
前田慶次「あ^~、そこのけそこのけ!慶次が通るッ!!(すべてを溶かさんとする液体を纏う者たちに対し、臆するどころか「かかってこいや!」と言わんばりに前進しながら豪快に大太刀を振り回して吹き飛ばしていく) 」
ミネア「―――――それっ!(後方から化物へタロットを投げつけてマーク)――――「悪魔のカード」!(マークした化物にダメージを与え、守備力を下げる) 」
沙羅葬樹「 シ ュ ル リ … ッ … ――― シ ュ オ ァ ッ ! ! (亡者たちと小競り合いをしている中、呪樹の根元から飛び出した幾重の鋭利な根。その先端は鉄板さえも容易く貫かん鋭さを帯び、槍の如き勢いで突き刺そうと彼らに迫る) 」
人の果て『ダァ゛ァ゛~~~…ッ゛……!!(ミネアに投擲されたカードによって亡者たちの身動きにぎこちなさが現れ、その間隙を突かれるようにメディとヒロの砲撃に体を貫かれたり、慶次の斬撃に薙ぎ払われていく)』
ベール「―――はッ!!(呪樹が伸ばす鋭い根に向けて掌を突きつけると、手中から星が散らばる閃光を解き放ち、迫りくる根を葬り去っていく) 」
あなた / ヒカリ『―――“因果率予測”!!(すべての根がこちらへ迫ろうとしたその時、咄嗟にヒカリへとチェンジされる。ヒカリの能力によって迫りくる根の軌道を先読みし、その間隙を潜り抜けるように駆け抜けていく)合わせて―――“ライトニングバスター”! / ……!!(光輝く聖杯の剣で袈裟斬りから3連斬りへと繋ぐ怒涛の連続攻撃を呪樹本体へと炸裂させる)』
ザ・ソロー「これが、この世界の、俺の最後の任務。(ヌラリと現れ)―――(両腕に次元が歪むほどのエネルギーを溜め)ズバァァァァァンッ!!(両手をかざして放つのはサイコウェイブ。魂や精神そのものにダメージを与え破壊していく波動を呪樹に放った) 」
沙羅葬樹「――― ッ ド ゴ オ オ オ ォ ォ ン ! ! ! (交わる二つの閃光に、大樹が大きく傾倒する) グ ゥ ォ ン ――― ズ シ ャ ア ア ア ア ァ ァ ァ ァ ア ア ア ア ッ ! ! ! (だが、その反動を返すように大樹が突然回転し、その枝木であなたちヒカリを薙ぎ払う) ボ ゴ ォ ン ッ ――― ボ ゴ ォ ン ッ ―――― ボ ゴ オ オ ォ ン ッ ! ! ! (地中深くへと根を伸ばし、後方にいるヒロたちにの真下から鋭い根が突出し、串刺しにせんと襲い掛かる) 」
あなた / ヒカリ『ふふん、どう?これは効いたはず―――!?ひゃんッ…! / ……!?(大樹に薙ぎ払われるも、落下寸前で光の膜を張って軽傷へと抑え込む)』
メディ「ピロリ、ピロリ…―――!? ズサァァ…ッ…!! (地中に感じる僅かなエネルギー反応に気づき、刺される寸でのところで緊急回避する) 」
前田慶次「へへっ、これで雑兵は片付いて―――どわあぁッ!!?(咄嗟に水平に構えた太刀で串刺しは免れるも、そのまま上空へと吹き飛ばされて高所から尻もち落下してしまう)ってぇぇぇ~~~~~…!! ……!あぶねッ!! (痛みに悶える間もなく、次々と飛び出してくる根っこを大道芸人のような軽快なステップで回避していく) 」
ヒロ「…………!(地中から迫る根に気づき、璃奈を庇うように飛び込み回避する) 」
沙羅葬樹&人の果て『 バ キ バ キ バ キ ィ ッ ! ! ! (ザ・ソローが放ったサイコウェイブによって、右半分の枝木がこと如きそぎ落とされていく) ボチャ…ボチャ……グヂャァ…ッ…!(削ぎ落された枝木に実る果実が地に叩きつけられ、グロテスクな音を立ててまた弾けていく。そうすることでまた生まれる亡霊の群れ…)』
天王寺璃奈「わっ―――!?(突然ヒロに庇われたことで難を逃れる)…あ、危なかった……ありがとう、ヒロさん…… 」
マーニャ「――――!? はっ…!(咄嗟ながら舞い踊るような華麗なステップで鋭利な根を躱していく)ちっ……「ベギラゴン」!(呪文を唱え、ふたつの蛇行する高熱の炎を地面に走らせ鋭利な根を迎撃) 」
お面屋「おやおや、皆さんピンチですかねぇ。できれば生きて返して欲しいのですが(ホッホッホッホッホ)(かなり遠くに離れながら)……ですが、これはまたもう一度弾いた方がいいですかねぇ。(よいしょっと荷物を下ろして準備をしようとする) 」
ベール「ッ―――!!(箒へ跨り宙へと逃れる。呪樹の頭上を旋回する中、亡霊たちのいる箇所に向けて何度か人差し指を突きつけると、そこに星型のマーキングが施される)―――“点と繋ぐ星《 サインアウト 》”ッ!!(再び掌より放つ閃光。すると今度は直線状には飛ばず、マーキングされた箇所に向かって光は突き進み、点から点へと繋ぐようにその軌道を旋回。最後に呪樹本体へ届くように差し向けた) 」
ミネア「あっ…!(マーニャほどの動きはできないものの、鋭利な根から必死に逃れていく) 」
前田慶次「恋も喧嘩も、押しの一手よ!今を時めくバサラ者ってね!ならば焦がれてみせましょ、命のままに! それが茨の道とてもッ!! ガ ッ チ ン ッ ! ! (大太刀を鞘と合体させ薙刀「朱槍」に変形。豪快に振るってから大地へと叩きつけ、そこに生じた衝撃波で亡霊たちを吹き飛ばしていく) 」
ヒロ「怪我がなかったようで何よりだ…君は絶対にやらせはしない(璃奈にそう言い、再び亡霊の群れに向けて土弾を放つ) 」
沙羅葬樹「 チ ュ ゴ オ オ オ ォ ォ ォ ン ッ ! ! (蛇行するベールの閃光、マーニャの放つ高熱の炎が同時に直撃し、ただでさえ原形を留めない樹木がさらにその姿形を崩していく) 」
お面屋「ワタクシ、ただのお面屋であって戦場のピアニストではないのですが……この状況では仕方ありませんね。(そうしてまたいやしの歌を引き始める。その音色は満たされない妄執に囚われた魂を癒す音色。箱庭の劇場にゆるりと響いていく) 」
――― 華霊“バタフライディルージョン” / 獄界剣“二百由旬の一閃” ―――
フ ワ ア ァ … ッ … ――――― ザ キ ザ キ ザ キ ザ キ ィ ィ イ イ ン ッ ! ! ! (お面屋がメロディーを奏で始めたその時、何処からともなく七色に光り輝く反魂蝶の群れが飛来し、亡霊たちにまとわりつく。その直後、蝶に身動きを封じられた亡霊たちに鋭い一閃が幾つも刻まれていく)
西行寺幽々子&魂魄妖夢『――― あらあら…随分楽しそうね。私たちも混ぜてくださらない? / 及ばずながら、助太刀いたします!(幽玄の姫君は扇子を手に、半身半霊の剣士は二刀を手に、颯爽と「あなた」たちのもとへと参上する)』
天王寺璃奈「……!お面屋さん…!それに、幽々子さん、妖夢さんまで…!(駆けつけてきた者たちをその目に、ぱあと瞳に輝きが灯る) 」
沙羅葬樹「ジュ…グ……メキ……メキメキメキィ……ッ……!(お面屋の奏でるいやしの歌の旋律に枝木が悶えるようにくねくねと屈折。そこに、幽々子と妖夢が放つ弾幕が直撃し、呪樹の動きが緩やかなものに落ちていく。そして――――) 」
沙羅葬樹 → 彼岸桜花「―――― ブ シ ャ ア ア ァ … ッ … ! ! (衝撃に耐えきれなくなった呪樹から血飛沫が盛大に湧き起る。血に染まる樹は横たわるように枯れて果てて血溜まりを遺していく。すると、その血泉より一本の彼岸花がゆるやかな速度で咲いた。赤い花は徐々にその数を増やし、更に天へと延びていく。無数の花が瞬く間に絡み合い、宛ら繭のような姿を形作っていく) フ ワ ァ … ッ … ! ! (それは地獄に咲き誇る鮮血色の妖花。奇奇怪怪な紅の妖光を放つ)」
――― Vs. 【 空白の箱庭 】 黙想の劇団員《 彼岸桜花 》 〖 Section 2 〗―――
あなた / ヒカリ『みんな…! / ……!(駆けつけてきた仲間たちの援護を受けて一縷の希望を見出す)……!?(だが、その希望をかき消すかのように本性を剥きだした地獄の花と対峙し、改めて意識を集中し警戒を剥きだす)』
彼岸桜花「 シ ュ ル シ ュ ル リ … … ―――― オ ゥ ン ッ (数多の彼岸花が絡み合う中、妖しい発光を繰り返す内部から強い光が放たれた) 」
人の果て「……維摩一黙 ――― 彼は云った、自らの聲(こえ)で。然し、其れに耳を傾ける者は居らず。返ってくるは沈黙。それでも彼は言の葉を紡ぎ続けた。(彼岸花が咲き乱れる地獄のような舞台の隅で、生き残った亡霊が一同へ怨嗟の声で語り出した)」
マーニャ「ま~だあるわけ!?どんだけしぶといのよまったく… こうなったら…………… 」
ザ・ソロー「地獄の花、か。あぁ……「君」との戦場を思い出すよ(薄くした双眸には人間の頃の思い出と大切な人への憧れに満ちていた)かつて渡り歩いた戦場も、こんな様相だったか。だがそれでも……君は任務を全うした。そうだろう、ボス。(そしてまた亡霊の様相へと変わる)任務を、遂行する……役割を果たす(サイコウェイブの準備をしながらも、亡霊召喚の儀を行う) 」
ベール「…あれが本体ってこと?軽く焼き払ってあげるわ!(手中に練り上げた灼熱の炎を頭上から解き放つ。だが…―――その矛先は彼岸花ではなく、何故かヒロたちに向けられた) 」
前田慶次「ほ~…!こいつは立派なもんだな……不気味なほどにな!(朱槍を頭上で振り回し、桜葉をまき散らしながら斬撃波を飛ばしていく。だが、それは彼岸花ではなく、「あなた」へと突き進む) 」
メディ「――――!?(あの光…何か…―――)―――お気を付け下さい、何かを仕掛けて…ッ……!?(ベールの炎に同行が開き、腕を交差しながら灼熱に耐え忍ぶ)なっ…ベール様、一体何を…!?(炎の渦に囚われてしまう) 」
あなた / ヒカリ『……!? / ちょ…っ…!?いきなりなにすんのよアンタ…!?(彼岸花に向かって駆けだそうとしたその時、突如飛来してきた慶次の斬撃波を剣で弾き返す)相手は"あっち"!どこ見てるのよ…! / ……!(二人同時に彼岸花へと掌を突きつけ、光弾を幾つも発射していく……と思われたが、その先にはマーニャたちがいた)』
天王寺璃奈「…えっ……?待ってみんな…!なにを、しているの……っ…?(突然仲間割れのように味方を攻撃し始めた一同に動揺する) 」
人の果て「杜黙詩撰 ――― 彼は残す、自らの眼で射抜いた独白を。もはやこの地に彼と均しき気魂を持つ者は居なかった。何故なら誰もが皆、既に聲を捨てて現世へと逝ったのだ。どれ程叫んでも響くことの無き鬼哭は、蜘蛛の巣の如き臍の緒を絶たれ、泥梨(ないり)へと転落(お)ちて逝く赤子のよう。世は正に、謬錯の理の導くままに。」
ヒロ「なっ…幽々子ちゃん、妖夢ちゃん…!よし!…ってうわっ!(炎の渦に巻き込まれる)な、何を…(慶次やヒカリの様子を見て)まさか、これは…! 」
ヒロ「………なんかの暗示がなされてる…?(炎による火傷を土を塗って修復)(動揺する璃奈に対し) 」
前田慶次「何って…決まってんだろ!あの花を叩き切ってやるんだ!ボケッとしてちゃあ駄目だぜ!(振り上げた薙刀を彼岸花―――ではなく、ヒカリへと振り下ろした) 」
マーニャ「―――――!! ……ミネア!(妹の名を呼び、あなた/ヒカリの攻撃を避けるべく天高く跳躍) 」
ベール「……あれ?巻き添え喰らっちゃった…?(地上から聞こえてくる悲鳴のような叫びに「やべ…」と人差し指で頬を掻く)悪ぃ悪ぃ~…!💦 次は気を付けるよ…それッ!!(彼岸花に狙いを定めて星型魔弾による一点集中砲火を行う。だが、魔弾はヒロとメディに向かって落下していく) 」
ミネア「――――姉さん!(マーニャに呼応するように同じく天高く跳躍し、マーニャと隣り合い…) 」
彼岸桜花「 オ ゥ ン … … オ ゥ ン … … (紅華はただ咲き乱れる。歪な輝きを放ちながら…―――) 」
彼らの目には、倒すべき敵の彼岸花が確かに写っている。
だが、そこに向けて攻撃を繰り出す度に仲間たちの叫びだけが返ってくる―――
佐々木小次郎「——————ほう、妖の桜の次は妖の彼岸花と来たか。スゥー……私としては花の品格を貶めるというのはいただけないなぁ(ソローの亡霊召喚術式に便乗して現れ、顎に手を添えて彼岸桜花を見上げる) 歪な輝き……"空間歪曲"のようなものか。無駄だ無駄だ、各々一度矛を納めるとよかろう(ヒロ、メディに降り注ぐ星形弾を残像すら残さぬ抜き打ちで払い除ける) 」
西行寺幽々子&魂魄妖夢『……妖夢、これは…――― / ―――……はい、わかっています。間違いなく、あの花が施した妖術に違いありません……(背合わせる二人の目には幾つもの彼岸花が広がっている)』 」
マーニャ&ミネア「――――― 『〝 クロスマダンテ 〟』 ―――――(天高く飛び上がった姉妹は、声を揃えて呪文を唱えた。2人のすべての魔力を合わせて敵味方すべてを巻き込む一撃を解き放つ) 」
メディ「待って下さ―――!(降りかかる魔弾を対処しようと武器を構えるが、寸前のところで小次郎に助けられる)……ありがとうございます、小次郎様。……はい、どうやらそのようです。あの光…人間が持つ感覚に強烈な幻覚作用を齎し、敵と味方の認識を誤認させ同士討ちを狙うものなのでしょう。(ヒューマギア故にメディ自身は全員の姿が視認できているものの、互いに対峙し合う一同に狼狽の色を伺わせる) 」
人の果て「沈黙寡言 ――― 彼は謂った、自らの咮(くち)で。然し、やはり耳を貸す者は居らず。還ってくるは沈黙。やがて彼は言の葉を紡ぐのを諦めた。」
ヒロ「やっぱり、視覚面への攻撃ってわけかい……(サングラスをかける)こいつでなんとかなんねえかな…?(土刀を構えながら) 」
あなた / ヒカリ『……!! / うぅ…ッ……!どうして…っ……!(慶次の斬撃に続き、姉妹の強力な魔法をしのぐように剣を振るうだけで疲労困憊する)』
ザ・ソロー「(すでに亡霊ゆえ、全員の様子を一望できる)幻で哀しみを欺けると思ったか。真実の眼より流れし涙に。(そう呟きつつサイコウェイブを放つ) 」
お面屋「―――――(今度はいやしの歌ではなく、『嵐の歌』を奏で始める。かの歌と雨は怒りの涙。呪いを洗い流し、魂を鎮める激しいメロディ) 」
マーニャ「(魔力を使い果たし、着地)う……っふぅ………この際、なりふり構っちゃいられなさそうね。 」
彼岸桜花「 ヒ ュ ル リ … ――― ズ ガ ガ ガ ガ ガ ガ ガ ッ ! ! ! ! (事態が混乱に陥っている中、一方に動く気配のなかった彼岸花がついに動き出す。刺々しい花弁を槍のように伸ばし、彼らを串刺しにせんと襲い掛かる) 」
佐々木小次郎(Fate)「なんっ……とぉ!?(マーニャ&ミネアの無差別攻撃に驚愕しつつも慌てず扇状のなぎ払いを放ち一人でも多くを巻き添えから退けようとする) ふ———— やはり一農民には誤った意味合いで"役不足"というものだな……。 「誓いを果たすとしよう」(何か一つ、常より秘めて居た思いを新たに決意したように、清々しい笑みを浮かべ「妖夢」を見やり、彼女へ一歩、歩み寄る) ————————「真実は眼では見えない、耳では聞こえない、真実は斬って知るものだ」(彼岸花咲き乱れ、狂乱の宴の渦中、 彼女自身が語り、そして彼女が「師」よりなんども聞かされた言の葉をそのまま紡ぐ) 」
メディ「サングラスですか…思わず「バ〇ス!」って叫びたくなりますね(ぇ …と、戯れている場合ではございませんでし―――た!\ バスターボンバー ! / (彼岸花から伸びてくる棘の如き花弁に対し武器をオーソライズ。エネルギー刃を纏う回転斬りで花弁を斬り落としていく) 」
ミネア「…はぁ………どうやら、そのようね。 」
佐々木小次郎(Fate)?「 フ ッ ( 『一閃』 桜の花を纏う白桃色の残光が駆け抜け、妖夢・幽々子に襲いかかっていた花びらの棘を砂塵に変えた)——————時を斬れる様になるには二百年は掛かると言う。先は長いぞ、たかだか怨嗟の雨ごときに遅れを取る暇はないだろう?妖夢よ 」
魂魄妖夢「――――!(耳元に囁かれた小次郎の声が、かつて何度も聞かされた教えに瞑目する)…………(そうだ…幽々子様を守るために授かったこの白楼剣と楼観剣に――――)―――斬れないものは、あんまりないッ!!!(―― 符の弐“心眼迷想斬” ――)(瞳を閉ざして守るべき人の姿を黙想すると、無我のままに二閃を振るった) 」
人の果て「熟思黙想 ――― 彼は遺す、自らの瞳で視抜いた独語を。もはやこの地に彼と斉しき野心を持つ者は居なくなった。ならば我も逝こう、聲を潰して、言の葉を踏み殺して。どれだけ嘆いても届くことの無き慟哭は、暁鐘に間に合わず息絶えた親鳥の行方も知らず、殻の内側(なか)にて未だ孵らぬ醜い雛鳥のよう。世は正に、沈黙の春が開花を鳴らすままに。」
彼岸桜花「―――― ズ ッ バ ア ア ァ ァ ァ ア ア ア ン ッ ! ! ! (サイコウェイブと二閃が絡み合い、その強烈な一閃が幻惑を貫いて彼岸花に届く。真っ二つに切断された赤き繭の内側より、現世惑わす光球…花の本体が顔を出す―――) 」
人の果て「神会黙契 ――― そして彼は知る、自らを手を掛けたその先で。言葉など不毛。声など雑音。神が与えられた唯一にして無二の駄作。この沈黙こそが我が求めていた平穏なのだと。いざ語り合おう。目を伏せ、耳を塞ぎ、鼻を劈き、口を紡ぎ、心を閉ざして。きっと分かり合える、分かり合えることなど無いことを。想いとは、そういうものだと。」
魂魄妖忌(佐々木小次郎)「(砕けゆく花弁の矛。その破片の嵐が晴れると、そこに涼やかな無銘の剣士の姿はない。あるのは、佐々木小次郎の羽織はそのままに「中身」のみが挿げ替えられ現れた初老の男。 嘗ての「白玉楼の守り人」)——————あまりない、か……奢りなく、しかして曇りもない。晴天を裂く陽光のよう……良い、剣士になったな(英霊、佐々木小次郎の「交ざり物」彼の霊基を借りた守護霊であった)——————(正しく五行、「上段の構え」 無念無想の果てにたどり着いた一閃の構えを取り、敵を見据え時を待つ) 」
マーニャ「……あら、ごめんなさいね。今は何が何でも、私達は私達で生き延びなきゃいけないの。こんなところで、おかしな子供騙しなんかにやられるわけにはいかないのよ。(あなた/ヒカリ達に言い放つ)……とは言ったものの……これで私達ももう、スッカラカン。お手上げだわ。 」
お面屋の奏でる「嵐の歌」によって、彼岸花の幻術が晴れていく―――
西行寺幽々子「……――――(目を閉じて、耳をすませば聞こえてくるあの日の春の歌―――)(背後に感じる存在―― 片時も忘れもしない「剣」 ――に絶対の信頼を寄せるかのように、ただ悠然と待ち構える)……ふふっ、流石妖夢ね…♪(花の妖術が晴れ、ようやく本来の姿が見えた彼女へにこやかに微笑む) 」
あなた / ヒカリ『……! / ……視えた!(ようやく仲間たちの姿を視認し、改めて武器を構え直す)決めて、ホムラ! (ホムラへと切り替わり、聖杯の剣が燃え盛る)』
天王寺璃奈「……言いたいことがあっても、言い返されちゃうかもしれない怖さや、誰にも聞いてもらえないかもしれない寂しさに、結局心に押し込めて言えず終いになること、あるかもしれない。それでも私は、自分の"想い"をちゃんと口に出したい。 」
天王寺璃奈「たとえそれが間違っていたとしても、無視されたとしても…きっと誰かに届くはず。そんな小さな言葉が届いて、誰かの心を少しでも動かせたなら…って、そう信じたい。 」
メディ「…人間には沈黙を恐れる心理があります。それはごく自然のことです。沈黙を恐れては返って沈黙の重圧に押し潰されてしまう…ですが、悩むことなどありません。人と人を繋ぐ最たるものは言葉ではなく、「心」ですから。 \ プログライズダスト ! / (オーソライズバスターをガンモードへと切り替え、黄色い稲妻のようなエフェクトを帯びたエネルギー弾を放った) 」
あなた / ホムラ『任せて、ヒカリちゃん!(「あなた」と共に剣を握り、大きく振りかぶる) 伝えることを放棄すれば楽だと感じますよね。それでも私は伝えたい、自分の"想い"を。誰かを悲しませたら「ごめんなさい」って、誰かに良いことをされたら「ありがとう」って。たとえ「この子」のように言葉に出なくても…言葉以外の方法で、言葉以上に伝えたい…!(そして二人同時に駆け出し、最後の一撃の焔刃を振り落とした)』
ベール「チッ…やってくれたな糞花がよぉ~…!そりゃああたしにだって、場面緘黙っつーもんがあったわ。身内には打ち明けられるけど他所だと黙り込んでしまうっていうアレね。言葉なんで煩わしいなと思ったことはある…けど…――(脳裏に過る金髪の少女が、こちらへ微笑みかけながら何かを語っている)―― そんな、他愛もない「言葉」に支えられたから、もう口を紡ぐのは止めだと大声を張り上げられるようになったんだよッ、あたしはッ!!(怒りの炎の槍に変えて、花の本体へと勢いよく投擲した) 」
ザ・ソロー「これが―――最期だ(最後の一撃、サイコウェイブを放つやその姿がユラユラと原形を留めなくなっていく) 」
ヒロ「百人中九十九人に届かなくても…ただ一人でも聞いてくれるなら俺は…!自分の想いを伝え続ける!!(土弾を放つ) 」
前田慶次「悪い悪夢(ゆめ)でも見ちまってたのか、俺は…?(参ったなあと後頭部を掻きむしりながらも、覚悟を剥きだした漢の眼差しに切り替わる)……知ってるかい?言葉じゃ通じないこと、通じないのはそれが言葉じゃないからだ。言葉だけが伝える手段じゃない。寂しい奴の傍にいてやること、一緒に笑ってやるだけで、人には通じるもんがあんだ…――――― それが、「愛」って奴なんだよ!(桜色に染まる朱槍の刀身を叩きつけ、強烈な衝撃波として放つ) 」
魂魄妖忌(佐々木小次郎)「「妖」よ……叶わぬな、先永き新芽の輝きには。 どうだ、私の孫は『強い』だろう(歯を見せて老獪に笑う。一生涯をかけて得た一つの答え、究極の一、一振りの斬撃を送る) 」
魂魄妖夢「……! ……―――― はいッ!!(顕現された偉大な祖父の姿に動揺しながらも、その言葉を受け止めて剣士は二刀を携え空間を駆け抜ける)―――(幽々子様と離れ、分かりました。互いの姿が見えなくとも、言葉が交わされることがなくなっても、私が幽々子様を想うように、幽々子様もまた私を想ってくれていた…。その魂魄(たましい)の鼓動が波長し合って、掛け離れてしまった私たちを繋ぎとめてくれるものこそが、"想い"だということを!) 」
西行寺幽々子「…そうねぇ…私はこれからもきっと"想い"続けるわ。たとえ愛したあの桜樹から最後の一枚が散ってしまっても ―― 再会を誓い合った想い人と別れても ―― 「春」はまた巡るのよって。(扇子を開くとその背後に扇の紋が開かれる。真っ先に駆け抜けていく従者を後押しするように、最後の「春」を送る―――) 」
西行寺幽々子&魂魄妖夢『――――― 奥義“西行春風斬” / 桜符“西行桜吹雪” ―――――』
彼岸桜花「 シ ュ ア ア ア ア ア ァ ァ ァ ァ ァ ァ ァ … ッ … ――――――(決して想う心を棄てなかった「あなた」たちの最後の一撃に、心無き妖花は朽ち果てていく―――) 」
「 黙想 」
目を閉じて静かに深く沈思し、その者の思いや人生、生きることの意味について思いを巡らすこと
黙想の化身を退けた次の瞬間、世界は白い光に包まれる―――
あなた「―――――…… …… ……!(そして、誰もいなくなった劇場に取り残される。だが背後に感じる気配に 振り返る) 」
オスカー「……誰かが言いました、「言葉は呪いだ」と。…確かにそうかもしれませんね。(観客席に居座っていた青年は、何処となくもの哀しげな瞳を浮かべている) 」
オスカー「かつて、私はある人と約束を交わしました。それこそ言葉を介して。けれど、その約束は今も果たされることはなく、延延と思い出の中を泳いでいる。もう忘れてしまったのかもしれない。そう思うと、どこか心に少し穴が開いたような気分になる。 」
オスカー「皮肉なことに、私は望まぬうちに大人になってしまったのです。願わくば、無邪気な子どものまま、信じてあげられていたならば幸せだったのかもしれません。交わした言葉も素直に受け入れられていれば幸せだったのかもしれません。(自嘲気味に目を伏せながら) 」
オスカー「言葉の呪いに縛られていたが故に、心は今も苛まれることがある。それでも私は信じたい。身勝手だと思われても、もう過ぎたものと嘲られても… 」
オスカー「ただ静かに、心の中で想い続けます。いつかきっと、この"想い"が届く、その日まで―――― 「 黙想 」とは、そういうものなのではないかと、私は思います。(伏せた顔を天へと仰ぎ、ふっと和らな笑みを浮かべる) 」
あなた「………(一瞬、悲しげな眼を浮かべたオスカーを不思議そうに見つめる) 」
オスカー「……ええ、大丈夫です。「あなた」との約束は、きっと果たされる。だから私は待ち続けます。その旅路の先で―――」
金髪の青年が指を鳴らしたその時、舞台はホワイトアウトする――――
― 白玉楼・宴会場 ―
西行妖を巡る異変は解決され、あの劇場で過ごした時間も過ぎた後、
一同は春の宴を謳歌していた―――
前田慶次「いよぉ~~…!ほいさ、ほいさっ!よいさよいさっ!!酒に酔い、桜に舞い、「人よ恋せよ」ってな!!(宴会場でマーニャと一緒に桜吹雪を散らしながら踊っている) 」
リリーホワイト「ハルデスヨー!私の春を聴けぇぇぇぇぃ!!(カラオケを熱唱し始める) 」
ホムラ「ん~~~~っ…♪ この桜餅…とっても美味しくって…いくつでも食べられそうです~~~♪(大皿に乗った桜餅を幸せそうに頬張っている) 」
お面屋「(宴会の雰囲気にいつも通りの笑みを零す。その傍らには一個のお面がある。これはあのザ・ソローの想いを形にした『スピリットのお面』。元々は降霊術に使われていたお面だったが、このお面にかの戦士の魂が憑りついたことで変形した)……今回は中々いい思い出となりましたね。これもあなたのおかげですよ(「あなた」に微笑みながら) 」
天王寺璃奈「なんだかとっても賑やかになった気がする…璃奈ちゃんボード、わくわくっ♪〖*╹▿╹*〗(室内に舞い散る桜吹雪とその中で踊る慶次らを見ては楽しんでいる) 」
佐々木小次郎(Fate)「ベベンベンベンベンベンンベンベン(舞に合わせ、即興ながらノリだけでそれなりにモノになっている三味線を引く)いやいやいやはっはっは……立ち直り早すぎはしないか其方ら。まあ私は構わんが……こう、あるだろう!?桜には侘び寂びというものがだな!(————嘗てこの地を守護した老人の姿はない。名も無き、佐々木小次郎という存在を借りた剣聖があるのみ) 」
ヒロ「…(周囲を見渡しながら甘酒をクイッとあおる) 」
あなた「……?……♪(三食団子を片手にお面屋と向き合っていたが、その微笑みに応える様に団子を握る手をくるりと回した) 」
マーニャ「ひゅう~♪ あなた、なかなかやるわね~!(優雅に舞い踊りながら前田慶次に) 」
西行寺幽々子「あらぁ~、いいじゃありませんの~♪せっかくの楽しい楽しい宴ですもの~。ところで桜餅食べます?(大皿に盛られた山盛りの桜餅をスナック感覚で食べながら小次郎にも一つ差し出す) 」
お面屋「……アナタには人を惹きつける魅力がある。ですが、それが少し強すぎるようなきらいがあるように感じられますねぇ。……お気をつけください。絆は心を繋ぎ合う黄金の輪であると同時に、心を蝕む邪悪な蜘蛛の巣にもなりうるのです。願わくば、アナタの旅路にこれからも光り輝くものがありますように。(そう言葉を告げると酒を注ぐような仕草で、「あなた」にお茶を注ぐ) 」
魂魄妖夢「あーーーーっ!幽々子様ーっ!また勝手に棚から全部おやつ用のお餅を卸してきたのですか!?食べ過ぎると喉を詰まらせますのでおやめください!>< 」
ベール「うぉ~~~~い、ヒロの字ぃ~~~~!ひっく…!あたしゃ酔ってないよなぁ~~~????なぁぁぁぁ~~~~~????(甘酒で泥酔しているのか、真っ赤な顔をしながらヒロにぐいぐいと詰め寄っていく) 」
あなた「……? …… (お面屋の言葉に傾げながらも、空になったお茶を注いでもらうように湯飲みを差し出しながら会釈する) 」
佐々木小次郎(Fate)「生憎と私は山育ち故な、花と月と酒、そして静粛を好む。こう……町にあるような宴には生前も今も馴染みがなかったのでな。といいつつもいただくのであった、忝い(演奏の傍刹那的に三味線から手を離し桜餅を掴み取るとまた演奏に戻る)——————妖夢殿が居た『あの世界』での話だ。当てもなく異界を渡り歩いていた私は妖忌殿の『思念』に出会うた。『お手合わせ仕ろう。その代わり、私の未練を一つ晴らしていただきたく』……自らの技と引き換えにしてま私という存在に憑依し、果たしたかった願いとはなんだったのか……ついぞわからず終いだった。心当たりはないかな、幽々子殿 」
お面屋「あぁ、これは失敬。宴席で話すようなことではありませんでしたね。それにしても、ホッホッホッホッホ、中々楽しい席だ。ワタクシも音楽のひとつ奏でたいところですが、生憎辛気臭い旋律しかしらなくてですね。(ホッホッホッホッホ) 」
ニュースキャスター「ではここで天気予報です。先日雪で覆われていたレストルムは、急激に活発化した温暖前線によって気温が上昇し、従来通りの真夏日となる平均温度となりました。暴風雪の原因は依然不明で、専門家によれば――― 」
ヒロ「……おわっ!?酔って……る!?思いっきり酔ってるぞ!(詰め寄ってきたベールを見て)そ、そんなに近づかれると、その… 」
――― 己の想いに忠を尽くせ。さすればいずれ『時』をもお前は斬るであろう 幽々子様を任せたぞ ―――
メディ「………(*´ `*)(どんちゃん騒ぎな宴会場の真ん中で一人静かに正座して佇んでいる) 」
西行寺幽々子「えぇ~…(ぶーぶーと頬を膨らませながら妖夢に対抗)……さあねぇ~…?私には何のことだかさっぱりだわ~。……けれど、わかることがあるとすれば―――(ぐいっと妖夢の腕を抱き寄せる)――― 私たちはやっぱり隣り合うべきだった、てことかしらね~♪(ふふふと妖艶に微笑む) 」
魂魄妖夢「わっ……!?// ゆ、幽々子様…っ……???///(唐突に抱き寄せられて、困惑気味に頬を赤らめてしまう) 」
ベール「なぁ~~~にぃ~~~…?あたしの貧相な体じゃ満足しないってわけぇ~~~?(いじいじ)こ~~~見えてもベールちゃんはグラマラスなんですけどぉ~~~…?そうは思いませんかぁ~~~?…ひっく…!(べろんべろんに酔ってる) 」
前田慶次「いいねぇ~♪ 踊る慶次に見るあんた! 同じ人なら踊らにゃ損々!(尚も桜を散らしながらマーニャと踊り続ける) 」
ミネア「まあ……!おふたりは本当に、仲が良いんですね。おふたりを見ていると、まるで……自分のことのように思えてきます。私と姉さんも…これまでずっと、二人三脚でやってきましたから。(幽々子と妖夢を見て) 」
ヒロ「ひ、貧相なんて言ってないって!いや、むしろその方がい……いや、こっちの話…(目を逸らす)グラマラス…(ベールを見て) 」
天王寺璃奈「……ヒロさん、鼻の下伸びてる…〖 ˙-˙ 〗(ベールに弄られてるヒロに) 」
佐々木小次郎(Fate)「——————フッ まあ察するに、年老いた者のいらぬお節介だった……そういうことにしておこう(腰を上げ、仲睦まじい二人の光景を流し目に身薄く笑む) 桜の樹の根には死体が埋まっている。誰の言葉であったか…… 桜は今も生きているさ、このように思い人をその腕に抱いて(そう、この事件を自らの中で締めくくると軽い足取りで『あなた』へ歩み寄る)そなたか、アサシンの語って聞かせた異邦の旅人は。『バーサーカー』より伝言がある 『"先"にて帝王はお前を待つ。愉快な土産話と"イチゴ"を用意せよ。』……だそうだ。面倒な者に好かれたものよな…… 」
お面屋「あ、そうだ。宴席で言うのもなんですが――――そろそろレンタル商品を返していただければと。さぁこちらへ(璃奈たちに) 」
メディ「ハレンチですね。始末いたしましょうか?(ヒロに向けて注射器を突きつける) 」
天王寺璃奈「あ、そうだった……ありがとうございました。(借りていた二つのお面をお面屋へ返却) 」
あなた「……??(歩み寄る小次郎からの伝言に何度も疑問符を浮かべる) 」
ベール「殺っちゃえ殺っちゃえ~♪(ぇ(メディに便乗するようい拳を突き上げる) 」
ヒロ「…………いや、待ってくれ!話せばわかる!(メディを見て) 」
お面屋「はい、確かに。たまにいらっしゃるんですよ。ネコババしてワタクシから逃げようとする愚かも……コホン、お客さんがね。まったくそういうのを見ると、ホホホ。(ニコニコとしながらもせこせこと荷物の中へ)あぁ、そう言えば、アナタに差し上げたお面。使い心地はいかがですか?実はそのお面、ある人物からの貰い物でしてねぇ。もしかしたら、この先出会うことになるかもしれませんねぇ。そのときは、このお面屋のこともお伝えください(「あなた」に) 」
あなた「……? …… (お面屋から貰ったあの鏡のお面を取り出して見つめると、「わかった」と小さく頷いた) 」
かくして、彼らは夏に溶け行く春を満喫する。
白玉楼に咲く西行妖は依然枯れ木のまま…
けれど、桜は"想い"に応えてまた咲き誇る。春はまた巡るのだから―――
そして、白玉楼での一泊を終えたその日―――
ホムラ「……それでは、大変お世話になりました。(幽々子たちへ深々とお辞儀する) 」
魂魄妖夢「いえっ…!お世話になったのはこちらの方です…っ…💦 本当に、なんとお礼を申し上げたらいいのやら…… 」
西行寺幽々子「うふふっ…♪ そうねぇ…あなたたちにはとっても感謝しているわ。私からも礼を言わせてちょうだい。……あっ、そうだわ…♪お土産と言っては何だけど……はいっ…♪(手のひらサイズの小さな包み紙を璃奈に差し出す)…あの世名物「黄泉戸喫」♪食べるとそのおいしさに昇天するわよ~♪死にかけている時に食べるとなお美味しく感じるわっ♪是非とも召し上がれ♪(悪意のない満面の笑みを浮かべる) 」
前田慶次「……!?(黄泉戸喫の包み紙にんげっ!?と蒼白する)は、ははは…よ、よかったなぁ~…!幽々子さんから美味しそうなお菓子貰って…もったいなさ過ぎて俺なら食べられそうにないぜ…あははは…(遠回しに「下手に口にするなよ」と璃奈たちへ密かに釘を打つ) 」
天王寺璃奈「わあ、お土産――――!? ……あ、ははは……ありがとう…ございます……〖 ╹▿╹;〗(慶次の視線を感じながら渋々と黄泉戸喫の包み紙を受け取る)………(捨てたら罰が当たりそうだからお守りとして持っておこ……) 」
お面屋「えぇ、えぇ、実に、楽しい一日でしたよ。出来うるのなら、ここでも珍しいお面に出会いたかったのですが、また別の場所に期待するほかなさそうですね(ホッホッホッホッホ)……では皆様、お先に失礼しますよ(そう言って踵を返して階段を降りていく―――次の瞬間)スゥゥゥーーーーー(まるで霧のように、彼の姿は消えた。跡形もなく) 」
ベール「ん~~~~っ…すっかり疲れも取れちゃったし、あたしもそろそろ行くかね~…。(背伸びをしながら白玉楼から出てくる)…じゃっ、君たちとはまた別れるけども、今度こそ元気でね~。ばいび~☆(てっきり「あなた」たちに同行するものかと思われたが、さも当たり前のように我先に一人で立ち去っていった) 」
あなた「……――――?!(去っていくお面屋に手を振ろうとするが、忽然と消えたことに仰天する)………???(まるで亡霊でも見ていたのだろうか?と何度も目元を腕で擦ってみせた) 」
マーニャ「さ~てと、私達は………もうしばらく、ここに残ることにするわ。 」
メディ「…ありがとうございました。皆さま、とても快適に過ごされたみたいで何よりです。また必ず宿泊に参りますので、その際はよろしくお願いします。……ベール様…また行かれましたね…(別れの挨拶をかける間もなく去っていく魔法使いの少女の背を見送りながら)……慶次様たちはこれからどうされるのです? 」
前田慶次「…俺かい?俺もマーニャたちと同じさ。もうちょっとだけここに留まるよ。何せここには別嬪さんがたくさんいるもんでね…へへっ…♪旅館のお手伝いがてら、宴会の賑やかし役として踊ってやるさ!……あんたたちの恋路を、ここから見守ってやっからよ。 ヒロも達者でな。(にかっと笑いながら) 」
ヒロ「おおっ、旨そうだな!ありがとう!(幽々子に)…またな(ベールを見送り)まぁ、きっとまた次のとこに現れる…と思う(惜しむようにその背を見ながら) 」
ヒロ「…あんたもな。あんまりはしゃぎすぎるなよ?(別嬪さんと聞いて慶次に) 」
西行寺幽々子「ええ、また来てね。いつまでも待っているわ~♪ 」
ミネア「皆さんとご一緒したい気持ちもありますが、この場所には…いろいろ思うところもありますから。それに………『来たるべき迎え』を待たなければなりません。 」
ホムラ「……では、行きましょうか…次の冒険へ…♪ 」
天王寺璃奈「そっか……みんなも、元気でね………?(「来るべき迎え」―――その響きに小首を傾げながらも、残る者たちに手を振りながら白玉楼を後にする) 」
あなた「……♪(幽々子たちに見送られながら、花桜が散りゆく階段を下っていった) 」
メディ「それでは、また…―――(幽々子やマーニャたちに深くお辞儀をした後、一同に続くように階段を下っていった) 」
鴉「…………(一匹のソレが「あなた」たちを枝の上から見下ろし)バサバサバサッ!!(そのまま遠方へと飛び去って行った。すくなくともその鴉の瞳は生き物のそれではなかった)」 」
前田慶次「元気でなあああぁぁ~~~~!!(ぶんぶんと大手を振りながら、その姿が見えなくなるまで見送り出す) 」
ヒロ「(慶次の振りに返すように手を上げながら階段を下っていく) 」
西行寺幽々子「……ねえ、妖夢。(一行が旅立った後、花の咲かない西行妖を仰ぎ見ながら、隣立つ彼女へ静かに呼びかける) 」
魂魄妖夢「…幽々子様…? 」
西行寺幽々子「……―――― もう、離れちゃダメよ?剣士の手を優しく、それでも強かに繋ぐ。春のような暖かな微笑みを送りながら) 」
魂魄妖夢「……! ……―――― はいっ…!(忠誠を誓った主に、これ以上とない満面の笑みを浮かべるのだった) 」
たとえ掛け離れることがあろうとも、同じ空の下にいる誰かを感じる「黙想」に、旅人はその背を押されて歩き続ける―――
― ××× ―
クラウス「……時は来た…――――(暗転した空間の中で、男は肘をついて両手を絡める。目元を覆うバイザーが不気味に点滅する―――) 」
クラウス「――― 今こそ、『 聖杯 』を賜る時が来たのだ ―――」
最終更新:2023年10月28日 21:41