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― ラステルム王国・赤十字病院 ―
鬼塚夏美「………(病室のベッドで窓を眺めている。入院着からは包帯がチラチラと見えている) 」
コンコンコン……(ノックの音)
鬼塚夏美「…開いてますの〜 」
ヒロ「…(病室の扉を開けて入ってくる。ブジンソードで切られた後の傷や包帯があちこちに見える)…流石に大人しくしてるようだな、いつもみたいに配信してるかと思ったが……… 」
鬼塚夏美「…冬毬に止められてますの。(ヒロの方に向き直る)なんとなく話は聞いてますの。千砂都先輩が色々と大変だったとか… 」
ヒロ「…らしい。‥まだ目を覚ましていないから詳しいことは聞けていないが…座ってもいいかな(ベッドの横側に座る) 」
鬼塚夏美「………ダメだと言ったらどいてくれますの?(ジト目で)…あの刀は
ゼレオロス帝国による力だったと聞きますの。かのん先輩の仇でもある国の力を借りようなんて……… 」
ヒロ「誠意次第だ(何 聞いたかもしれないが…「かのんちゃんはレギュレイターに殺された」そう言っていた…それを含めて目を覚ましたら聞き出すつもりだ… 」
鬼塚夏美「(なんやそれ) レギュレイターに…?かのん先輩が…??(訝しむような表情で)それで…そんなに浮かない顔をしているんですの(ヒロの表情を見て) 」
ヒロ「……っ(夏美の指摘を受けて俯く)‥それも、ある。(含みのある言葉で返す)……… 」
鬼塚夏美「嫌なら無理には聞かないですの。‥どうせ千砂都先輩のことでしょうけど。(ジト目で) 」
ヒロ「…! 」
………私なんて、どうだっていい。かのんちゃんを救えなかった私に、救われる価値なんてないのだから…ッ……!
ヒロ「………あぁ(沈んだ表情で)叶わんな、君には… 」
鬼塚夏美「………(ヒロの背中に手を添える)あまり思い詰めることはないですの、千砂都先輩が助かったけど何かあったのは明白…話を聞いてあげるだけでも違う‥そう、思いますの。 」
ヒロ「…………まずは話を聞くこと…それから…だな(背中に手が添えられたからなのか、若干表情が和らぐ) 」
数時間後――――
嵐千砂都「―――――………………ん…………(あれから、どのくらい寝込んでいたのだろう。少女は病室のベットの上で静かに目覚め、視界に広がる白天井から自分の居場所を把握する)………ガサ……(ゆっくりと上半身を起こす。目覚めたばかりで意識が朦朧としているためか、なぜ自分がここにいるのか、思い出せずにいる―――) 」
ヒロ「……………!(ベッドのそばの椅子に座り、千砂都の様子を見ていた)‥‥気が付いたか! 」
嵐千砂都「………?(うすぼんやりとその声のする方へと振り返る)…………ヒロ……く…ん………?(意識がまだ覚め切っていないぼんやりとした眼差しと声音で応える) 」
ヒロ「……(千砂都の様子を見て)あぁ、ヒロだ。ここは病院‥君は数日間眠っていたんだ… 」
嵐千砂都「………そう、か……私……ずっと………(その言葉でようやく今の自分の立場を理解したのだろう。静かに納得したように溜息と共に肩を下ろした)………?その、ケガ……―――――!(そして、ヒロの治療中の全身を見てようやく声を上げた。まだかすかに記憶が混濁しているが、自分が行ったものであることは思い出したようだ) 」
ヒロ「………っ(千砂都の目線、様子を見て)あ、あぁ…大した怪我ではない。気にしないでくれ……… 」
嵐千砂都「…っ…………ごめんね…ヒロ君…… 今、少しずつ…思い出してきたんだ…。私、ヒロ君にものすごく酷いことをしたんだってこと…。とても考えられないようなひどい言葉を投げつけて、たくさん気付付けて……なのに、私は……何も見えなくて、聞こえなくて……何かから逃げるように、ふり払うことで精一杯だったのかもしれない…。 」
ヒロ「………(そっと千砂都の手に手を重ねる)いいんだ、君がこうして…正気を取り戻してくれただけで…(優しい表情で語りかけるが、手の震えが伝わってくる)…かのんちゃんの、ことか? 」
嵐千砂都「……!………うん……っ……(背けるように答える)………私…知っているようで、何も知らなかった……かのんちゃんが、私たちが知らないところで一人で戦っていたこと… 私たちレギュレイターの為に奔走していたこと…… 」
ヒロ「………!俺たちのために…かのんちゃんが……!… 」
嵐千砂都「………そう…… かのんちゃんは……――――― 」
少女は語り出す。明かされることのなかった「渋谷かのん」に纏わる真実を。
Zラボのこと。その在処を突き止めていたこと。
そこで次々と明かされたゼレオロスと五大国の因果関係、帝国の思想、エーテル
ベールの抜け道、開発兵器。
そして…レギュレイター内部に潜む「内通者」のことを―――――
嵐千砂都「―――……それが、私たちの知らなかったかのんちゃんの本当のこと。かのんちゃんは、チーム・Liella!だけじゃなくて、"レギュレイターという組織"そのものを守るために、たった一人で十字架を負ったんだ。 」
ヒロ「……「内通者」、それを突き止めた瞬間に彼女は……(レギュレイターに殺された………そう表現したのはそういうことか!) 」
ヒロ「……(…なぜ、それらの事を今になって君に話したのか、そして君を纏ったあの兵器…何を、企んでいる…?) 」
嵐千砂都「……その話を聞いた時、私の中でも気持ちがいっぱいいっぱいだった。どうして誰よりも組織や人々のために貢献してきたかのちゃんだけが犠牲にならなければならなかったのか。かのんちゃんの功績を誰もたたえないし、そもそも誰も彼女が何をしてきたのかさえ気づいていない。私も含めて。あの日…機械生命体が五大国で初めて観測されたあの日よりもずっと前から、
ゼレオロス帝国の計画は始まっていたんだ。そして今、事態は目に視える形で過激化した。早かれ遅かれこうなることは分かっていた。 」
嵐千砂都「分かっていた、はずだったのに……かのんちゃんは…私たちが混乱しないように、それをたった一人で押し留めて、隠して、"自分だけが背負い込めばいい"って…。かのんちゃんの自己犠牲が、ついに限界を迎えてしまった…。それを知って、私ももう…気が気でいられなかったんだ…。(顔を両手で覆う) 」
ヒロ「………………っ!(顔を覆っている千砂都の肩にそっと手を回す)それで、あんなことに………俺も、同罪だったかもしれない。かのんちゃんが今まで何をしてきたのか知らずに………彼女の重責、苦しみ………全く気が付かなかった…!1番大事に思っていたかのんちゃんがそんなことになっているのも知らずにいてしまった…その苦しみはわかる。 」
嵐千砂都「……そしたらもう、目の前が真っ暗になって……ただ、ただ、かのんちゃんに報いようって。その為に自分にできることをしようって。たとえ…世界を敵に回すことになろうとも……この身が朽ち果てようとも……大好きだったかのんちゃんがしてきたことを、無駄にしない為に。かのんちゃんが戦い続けてきたあかしを、私がちゃんと遺す為に……。 」
ヒロ「…それで、あの力か…(ブジンソードの姿を思い出し)自分を犠牲にしても、それでも…君は、かのんちゃんの事を……(そんな事を、本当に…かのんちゃんは望んでいたわけがなかった………なんて言っても………) 」
嵐千砂都「…………でもね…――――(ヒロが言い淀みかけた時、何か吹っ切れたようにフッと軽い笑みがこぼれた)……その必要は、なかったみたい。あの時…ヒロ君に斬りかかろうと暴走した私の前に、「かのんちゃん」が現れたんだ。きっと幻覚かもしれないけれど、あの顔…あの眼差しは、どこか本物に似ていて…。かのんちゃんに止められてようやく目が覚めたんだ。かのんちゃんの遺志は、確かに私や…私たち「Liella!」に託されていたんだって。かのんちゃんは、いなくなってもまだどこかで私たちのことを見守ってくれている。そのことに、気づけたんだ。(どこか嬉しそうに表情を綻ばせる) 」
ヒロ「…もしかして、動きが止まったあの時…か!("かのんちゃん"を感じたのは、俺だけではなかった‥ちぃちゃんもまた、それを感じた‥と言うことか……!)(自身に何度も聞こえてきた彼女の声を思い返し)かのんちゃんのおかげで、君は…取り返しのつかないことにならずに済んだ。……皆の和を、なんとしても取り戻さないといけないな… 」
嵐千砂都「……!うん…… ヒロ君……その……ありがとう……。私を連れ戻す為に、君も頑張ってくれたことに気づかなくて…。でもお陰で、踏みとどまれた。これで、もう…―――――!(そう安心しかけた時だった。肝心なことを思い出したかのように目を大きく見開いたのだった)……そうだ……!こうしちゃ、いられないんだった……!"行かなくちゃ"…っ……! 」
ヒロ「………!あ、焦っちゃいけない!君はまだ…!(千砂都の様子を見て) 」
嵐千砂都「はぁ……はぁ………!ダメ、なの……このままだと……ラステルムは、まもなく"陥落"する……!「内通者」の思惑に則って、もうすぐとんでもないことが起こる……!急いで、ここを離れなくちゃいけない……っ……!そうなる前に「内通者」を見つけて排除するはずだったけど……もう、そんなこと言っている場合じゃないから、ね…。とにかく、ヒロ君、みんなを連れて…この国を離れよう…!」
嵐千砂都「そして向かうんだ…「地下」へ……!いつか、必ず、「内通者」はそこに現れる…!ゼレオロスと五大国を結ぶ「地下鉄国《アンダーホーム》」へ行けば、きっと……! 」
ヒロ「…「内通者」が現れる………そしてその「内通者」を…待ち構えて迎え討とうと言うのか……! 」
嵐千砂都「……!(コクリと強かに頷く)……かのんちゃんだけじゃなく、私たち全員を陥れた人…。その人物こそが、ゼレオロスが再び五大国を攻める機会を与えた…!お願い、ヒロ君…私と一緒に……! 」
ヒロ「……!(千砂都の言葉を聞き)君1人に無理はさせられない。俺も…………………………行くよ(強い表情で千砂都に) 」
相馬和樹「(頬をさすりながら隙を見せた片桐を見据え)いけねぇなぁ。決めるときはきっちり決めねぇと、なっ!!(ナイフによる斬撃。常人離れしたスナップからくる二連、三連の斬撃をみまう)」
片桐「 ガタ …… ン (揺さぶられた棚の天辺から酒瓶が落ちてくる。相馬が間合いに迫る中、ノールックでそれを手に取り……) パ ァ ンッ (床へ勢いよく叩きつける。飛散する液体、充満する酒気、舞うガラス片。それらで先手を取った相馬の斬撃に僅かな遅れを齎し――) ガッ ガッ ギ ィ ンッ !!!! (棚から引き抜いた精肉加工用の出刃包丁を抜き取り、相馬と左右反対ながら全く同じ軌道の斬撃をぶつけ相殺。その後ローリングし、相馬との距離を開け再び構え直す) お前も若いって年じゃねえだろォォォ……いいなァァァ足腰自由でよォォォ…… 」
相馬和樹「どう見たって俺の方が若いお兄さんって感じなのに、無粋だねぇ。だが………(クルクルとナイフを指で器用に回しつつ)もうアンタは俺の『術中』にハマった。RKからは逃げられない(不敵な笑みを浮かべるや再度斬りかかる。だが先ほどより少しセーブした動きで余裕のある連撃を片桐に) 」
片桐「(ガジェットは"変形機構"によって形状・戦術を変更する武器だ。奴さんのナイフに仕込めるのは精々針、殺傷力の低い小型口径の銃、少量だが即効性のあるガス程度。よしんば変形しても十徳ナイフ程度の筈……) パッ クンッッ(首を捻り斬撃を回避→間合いの内側に飛び込んで肘を相馬の腕に押し当て、軌道をズラしつつ自身の拳の間合いへ→右足を踏みつけ身動きを封じようとしつつ、逆手持ちにした出刃包丁を脇腹へねじ込もうとする) 」
相馬和樹「ヒュン、ヒュバ────ッ!(さすがにセーブした動きのためか読まれに読まれ、攻撃は当たらず。さらに)グッ! …スン(古武道めいたいなしをされ、肉薄を許してしまう)────!(脇腹へ出刃包丁が向かう。このままでは同じように抉られてしまう、が…………)ニヤ…(相馬は笑う。そしてナイフの柄元にあつ小さなスイッチをカチリ) 」
相馬のスイッチに共鳴するように、片桐の背中に鋭い痛みを走らせる。
────それはまるで『ナイフに刺されたかのような"痛み"』。
幻覚やまやかしの類ではない。
片桐がこれまで培ってきた経験と知識で100パーセント本物と合致する痛みだった。
相馬和樹「…………ッ!!(隙をついて距離を離す)さっき脇腹抉ったろ。これでRKの刀身から排出されたナノマシンが痛覚にアクセスした。…………俺は好きなタイミングで、お前の痛覚を刺激してダメージを与えられる。 」
片桐「 ヅッッ……!! (文字通り"刺すような激痛"が背から全身の神経を駆け抜け痙攣し、脇腹への刺突はスーツに切れ込みを走るだけに終わり空振る) ッダァッッン……(前方には相馬、後方からは正体不明の攻撃。前進も後退も許されず、前のめりに倒れる"フリ"をし、相馬の視界から外れるようにして側転、ローリングし間合いを離す。)………。(背に触れ感触を確かめる。相馬の言動を裏付ける、血濡れていない乾いた感触)幻肢痛<ファントムペイン>かァァァ…… 嫌がらせ技だが軽視はできねえなァァァ……大技っていうのはこういうのの積み重ねで活きる。よくわかってるじゃねえかァァァ 」
相馬和樹「だろ? わかってくれてなによりだよ。(ナイフをかかげるようにしながら片桐のほうにからだを向け)痛そうだなぁ。……いや、痛ぇか。痛ぇよな? そう、これが一番効くんだよ。まず『痛み』、それから恐怖。痛みを目いっぱい感じてもらってから恐怖を感じてもらう。ゼレオロスの連中ですらドン引きしてたけど、アンタはどうやら違うみたいだ。嬉しいよ。同類殺しってのも、悪くないなぁ(再びナイフを構える)さあ、もっと痛みを感じてもらおうか。恐怖はそのあとでいい。時間はまだたっぷりある。(その表情はまさしく"楽しんでいる"。使命感はもちろん、正義に感情、趣向も合わさるだろう) 」
片桐「…………―――――("恐怖"。その言葉を耳に入れた時片眉が僅かに上がり反応を示す。明確にそれに対し"覚え"があり、敏感であるような反応だった。 だが ) ヘ……ヒヒ……(伏見がちになり、口元を抑え肩を震わせる。失笑していた、くたびれた、乾いた笑いを抑えきれない分だけ溢れさせていた) カッ カ カカカカ…… よォォォォ……恐怖がどうこうって抜かしたなァァァ(ゆらり、脱力し上体を右へ左へと揺らしながらしだらない足取りで相馬へ徐々に間合いを詰める。続けざまに―――――) 」
片桐「 グニャぁ ク ンッ (上体を前のめりにしつつ、腰から踵まではしかりと固定し、胴体から指先までむちのようにしならせ、流麗な曲線を描く斬撃を相馬の肩へ縦一文字に振り下ろす → 刃がクロスレンジに入る寸前、短くコンパクトな曲線を描き斬撃がUターン、さながらブーメランのように軌道を変え、腰から胸にかけて切り裂きに掛かるアッパー気味の斬撃を見舞う) 」
相馬和樹「なんだ?もう気がふれたか? はっ、意外に脆いんだなぁ。でも大丈夫、俺の手にかかれb────(次の瞬間にはその異様な気配に飲まれ言葉を詰まらせた。そして)なっ!?(まるで別人、いや、なにかが憑依したのではないかと思うほどに神がかりな斬撃軌道)キィン!(一度は弾くが)っぶねぇなコノ!(アッパー気味の斬撃を後方へ転がるように回避する)ガシャアアン!(とてもではないがクールな避け方ではない。受け身を考慮にいれないほどの勢いで転がり、牽制とばかりにナイフを構えてじりじりと間合いを取る)────(相馬自身驚いていた。あんな無様に自分が転がるとは)そんな動きも出来るとは、驚いたよ(眼光を鋭利にし) 」
片桐「知ってるか相馬ァァァ……人間の記憶に、深いトコまで刻まれて離れない記憶はなァァァ……"恐怖"なんだァァァ…… 恐怖こそが記憶であり、記憶によって"恐怖を覚える"ってハナシィィィィ……(脱力。両腕を左右に振り子のようにゆらしつつ、深く腰を落として相馬を見上げる。)お前のくれるもんが"恐怖"ならこれほど"ありがてぇ"ハナシはねェェェ……マルガレーテの奴も、俺の恐怖にはなってくれなかったからなァァァァァ…… 」
片桐「―――― 俺の恐怖を上塗りしてくれよ、相馬ァァァァァ……!! (倒れ込むように駆け出す。そして右へ大きく、左へ大きく、出刃包丁をステッキ代わりに持ち、舞台上でステップを踏んで複数のフェイントを仕掛けつつ相馬へ間合いを詰め……) ヴ ンッッ (正面。両サイドのどれか死角からの不意打ちを装いつつ、正面から低空飛行をするようにして突っ込み、彼の頭蓋目掛け"砕こう"と出刃包丁を振り下ろそうとする) 」
相馬和樹「…なんだと?(恐怖を上書きを懇願する。マゾヒストでもこんなお願いはしない。彼の異常性に警戒しつつも迫る片桐の攻撃をかわしつつ)ホォラ(スイッチ、オン。今度は足を中心に5ヶ所。足には神経が集中しており、その痛みはより壮絶なものとなるはず)シュババ!(縮地めいた瞬間移動で背後に回り、片桐の頸部を斬りにかかる) 」
片桐「!―!ッヅ――!―――― (当然、ただの人間に痛みを無視できるはずもない。神経を直接刺激するものであれば、その頑強性や屈強制という盾の内側から槍で抉るようなソレに"身体"が屈する。 空振っただけでなく、激痛は平衡感覚を奪いうつ伏せに倒れ込んでしまう。しかし) カンッッ カンッ ガ ンッ (手から滑落ちた出刃包丁が、うつ伏せに倒れ込んだ片桐の足付近にバウンド。すかさず踵を柄頭に当て……) ヒュ ルッ (回転を効かせたそれを、頭部を狙いに来た相馬の顔面目掛け蹴り飛ばしつつ逆立ちになり、カポエイラ染みた動作で遠心力の乗った蹴りを相馬の腹減撃とうとする) 」
相馬和樹「終わりだ!(数秒先のイメージは斬撃によって迸る片桐の血。だが)────!(飛んできた出刃包丁に驚くも)ヒュン!(首を傾け回避。だがそのぶん行動のリソースをさいたため、せりあがってきた蹴りに反応が遅れ)ぐっ!(直撃。変幻自在のスタイルからなる強烈な一撃によって壁まで飛んで激突した)がはっ! て、テメェ…。(痛みで顔をしかめ甘いマスクに憎悪がにじむ。片桐の秘める異様な気配、それは『未だかつてない闇』と言うべきか。少なくとも興味本位でこじ開けてはならないなにかが心を支配している。こういう敵に自分の力は逆効果だったかと今になって奥歯を嚙み締める) 」
片桐「(一歩、また一歩と脱力しきった男が幽鬼であるかのように相馬へ歩み寄る。その眼は……) カタ カタ カ タ (震えていた。相馬の読み通り、彼がもたらす恐怖が通じないのではない、"痛み"がイコール恐怖に値しないのでもない。彼の心の中枢に根付くより巨大な"恐怖"が"凡人"を奮い立たせ、獲物を持つ手が小刻みに震えながらも、その細かい振動が"頭のネジを緩め"ていた。) 」
片桐「何も見たくねェ。そう言って目を閉じても、視界ってのは眼球に映る映像ではなく、脳に送られた映像だァァァ……逃げられねえんだよォォォ……乗り越えられねえのさァァァ(逆手持ちにしたそれを振り上げ、シンプルな"突きたて"による刺突を相馬の肩目掛け振り下ろし) ら"ァ"!!(回避を前提とした横薙ぎを振るう) 」
相馬和樹「ったく、どういう生き方してんだお前。…ふっ!(逆手の振り下ろしを回避し)ギャリギャリギャリィ!(続く横薙ぎをナイフで受け流す。その際に弾き飛ぶ火花の奥で苛立ちに歪んだ瞳を片桐に向ける)──カチ(鶏冠にきた彼はこれ以上長引かせまいと勝負に出る。スイッチを押すとともに次の痛みを与える。────それは頭部。脳血管にまつわる神経に痛みを味わわせる)貰ったぁ!!(出刃包丁から避けるように背後から斜め方向へ心臓へ突きにかかる。狙うはあばら骨の合間。平刺突による突進で今度こそ絶命を狙う) 」
片桐「 ―√~~~Z____√z――――――……・・・・(脳神経への強力なショック。軽くて戦意喪失、普通なら麻痺からの意識の消失、最悪ショック死、或いは植物人間。どうあれ、相馬の想定以上にその攻撃は"暗殺特化の枠を超えた"万死の権能。片桐も例外でなく、頭部の脳波が激しくブレ、そして停止した―――――) 」
『ガジェットの製造ラインは確保済み。時期に全団員へ支給されるようになるら。』
『グビッッ あ"~… この期に及んで社畜させんのかよォ…もう少し酔狂に浸りたかったんだがなァ~~くそがよォ~~~ だいいち』
『"調査兵団"だろうがァァァ……お巡りさんがどうすんだ、そんな物騒なもんチラつかせてよォォォォ……』
『モチーフ?なんでいい…………。いや……』
『なあ"戦士の母よ"。あんた、最強の生物ってなんだと思う? 港町でガキの時代を過ごした俺からすれば……』
『MAG【クソ映画】でいこう。鮫っぽい配色でよォォォォ……
ジョーズは普段姿を見せねえんだァァァ……ジョーズが顔を出す時ってのはもう、
獲物が"食われた"時って相場が決まってるもんでさァァァァ……』
片桐「 ガ ンッッ (袖から滑り下ろした"刀身が青銀のナイフ"。刃先はジッパーのように加工されており、さながら)――――――そうだ、俺もオモチャみっけたんだったァァァァ……(鮫の歯のようだった。うつ伏せに倒れ、懺悔し神に祈るようにして両手を重ね懐から振り上げた拳には、その"ナイフ"が握られ、RKの刃とかち合い……) ギ チッッ (凸凹にRKの刃が挟まった瞬間、それらの感覚が狭まり、片桐のナイフがRKに"噛みついて"離さない) ――――ガジェット・アクティベート 」
相馬和樹「(ザックリいく。このまま終わりで、心臓を穿った片桐は地面に倒れ伏せ、脳のダメージによって動くことすらもままならず死ぬ。そうしてまた自分は次の仕事へ行く。そう確信していた。だが)──な、にぃ?(思わず素っ頓狂な声を漏らす。突然現れた珍妙なナイフに自身の未来を阻まれたこと。そして)ナイフが、離れないッ!?(ギチギチと音を鳴らしながら引き離そうとするも、万力で抑え込まれたような感覚に、完全に武器を封じられた) 」
片桐「(小型軽量化したこいつにパワーを埋め込むのには限界がある。"真価"を発揮できるのは一本につき一回まで。まァァァいいかァァァァ……)キュ ィ ィ ィ ィ ィィィィ…… (火花を散らしながらギミックに掛かる負荷が強くなっていく。RKに食らいついた鮫の歯は脆く、その顎は……) 八 " キ"ャ ァ"ッ (RKに内蔵された"ギミック"のみを破壊し、それと相打つ形で刃が自壊、 砕けたソレが床に散乱した)後々何度見てもよォォ……クソ映画新鮮な驚きをくれるのは一回だけなんだなァァァァ……(ふらつき、喀血しながら立ち上がる。呂律の違和感。口橋の赤、舌を噛み激痛で先の脳支配を乗り切っていた) 」
相馬和樹「ぬおお!(突然解き放たれたように勢いよくふらつきながら後退)こ、これは!(RKをみやると少しばかり軽くなっている)カチ、カチ、カチ、…パキン(スイッチが壊れた。ナイフから解き放たれたように余分なものがパージされ儚く部品が落ちていく)…………ここまでやられるとはな。思ってもみなかった。まさかそんな切り札があったとは……(ナイフを握りしめ再び構える)ガジェットがぶっ壊れたのはテメェも同じだ。そして、脳にはダメージを受けている。ここでズタボロにしてやるよ!! 片桐ィィィィイイイ!!(迎え撃つのではなく、今度は自らが討ちにかかる。内に秘めた獰猛な意志を剥きだしながら 」
片桐「(崩れ落ちた部品。それらが互いに"立場というメッキが削げ落ちた"暗示であるように感ぜられ、朦朧とする意識の中で皮肉めいた運命を感じ取り、口橋を釣り上げた)ああァァァ……、これでようやくお前のステージまで"堕ちた"ぜェェェ……なァ!!(出刃包丁を蹴り上げて手元へ手繰り寄せ、逆手持ちにし懐へ忍ばせつつ、真っ向から肩同士をぶつけ合いゼロ距離の白兵戦に持ち込む)相馬ァァァァァアアアア"ア"ア"ア"!! 」
相馬和樹「ヒュン!シュバ!(出刃包丁よりも小さく軽量な分、攻撃速度と連鎖性、そして小回りがよく効く。片桐のドロリとした動きを要所要所で見切りながら蜂のように鋭い一撃をいれていく) 」
片桐「 ヒュッ…… ビスッ(初手、顎を引き"両断"を避けるも首筋に切れ込みが走り頸動脈を"削られる"。致命傷こそ避けたが放っておけば致死量に至る出血→ 二手、バックステップを踏み回避するも脇腹に深く抉られ"内蔵"に外気が触れる感触を味わう → 三手、これを肘、膝で挟んで受け止め) ン"ラ"ァッッ!!!(頭突きを繰り出し反撃→逆手持ちにした出刃包丁を振るい、ナイフを握る相馬の"手首"を狙う) 」
相馬和樹「ガスッ! ──んぬぅ!?(頭突きに形相をかえながら耐え忍ぶも)ヒュン! ────!(連動攻撃。自らの手首が狙われているのを察し)バッ!(右回転気味にナイフから手を離し、左手でナイフの柄をキャッチ。遠心力のままに挟まれたナイフを引っこ抜いた)ズザザザザザザ!(また縮地めいた動きで背後をとる)いい加減終わっとけ!(右に持ち直し抉りこむようなスクリュー状の刺突を繰り出す) 」
片桐「 ハッ ハッ ハ………… ヒュ…… コ ヒュ……――――(首、脇腹の出血とそれに伴う呼吸器の異常、RKのギミックで受けた脳へのダメージ。ただでさえ"ブレ"て見える上、こと暗殺においてレギュレイターの最上位に類するであろう相馬の歩法を目で追えても、肉体が対応しきれるはずがない。 立ち尽くし―――――) ス " ッ (刺突が背から"左胸部"を貫通した。)―――――。(突出する刃先を"見る"。瞳の色が薄らぎ、灰色に霞んだ眼球がそれを視認し、動作が停止した) 」
片桐「 チャ コ ッ (―――――が、その頃には既に自身の"右胸部へ"ベレッタの銃口を押し当てており、その射線が"背後に立つ人物の左胸部"へ向かうよう調整しつつ……) ゴガギィンッッ (引き金を引く) 」
相馬和樹「───ニヤ(片桐の気配からあのおぞましい覇気が消えた。思わず笑みが零れる)………やっとわかってくれたみてぇだな。そうだよ。これで終わったんだ。アンタはもうここで野垂れ死んでりゃそれでいい。それが最後の、仕事だ(勝利の確信は彼に心の隙を与えた。それは安堵であり、余裕。)────ズガァァァア!(それを撃ちぬくが如く、弾丸が左胸部へ被弾した)──ガクン(ほんの一瞬の痙攣。なにが起きた?と表情がひきつる)…………? …………?? 」
片桐「―――――――。―――――――――――――――…………(『殺った。』 即死に至らないまでも、ここから支援が得られるポイントまで移動するのには時間が掛かり過ぎる。どうあれ、この一撃で全て終わりだ。 これで少しは…… ガキに土産話ぐらい持って帰れる…… いいおっさんに……――――――)」
『副団長っていうポスト、指揮能力、歌唱能力に依存したガジェットへの適正。どれを取ってもお前は"五分"だァァァ……。
現状、成果や評価の差が第二と第四に隔たりがあるのは"個人の能力"に起因しない。
戦闘・防衛特化の第二と、各国考案組織への連携・民間人保護を委任される第四。
部隊の性質の違いそのものが、こと軍隊という組織の点数付けに不利なだけだ』
『渋谷かのん。[[ガトウ]]のとこの嬢ちゃんだっけかァァァ…… 別にいいんじゃねえかァァァ……
だいたいおっさん共にケツ引っ叩いて仕事させたり、雨宮みたいな優秀な人員のポテンシャルを最大限活かしているのは他ならねえ"お前"だァァ………
あんま他所の嬢ちゃんを悪く言うつもりはねえがァァァ……チームり……りえら?とかの連携能力あってこそみたいなとこもある』
『"お前が"勝負する理由事態が、そもそもねえんじゃねえか』
『―――――――――――。』
その言葉があったから、らしくもなく"真面目に"生存戦略を練った。
"シバリング"。人が体温を維持するため筋肉を小刻みに動かす"生理現象"。
特定条件下で、これを"意図的に"発生させる技術を"師から体得した"片桐が取った行動――――
刺突の際に小刻みに体を動かし、刃を心臓の表面を滑るようにズラす。
これにより即死を回避し…… 後の反撃への猶予を与えた
片桐「―――――――――。そうだよなァァァァ…… ぶちのめすからには、勝利宣言しなきゃだよなァァァ…… 」
『勘違いしないで。私にとって"勝敗"は[[第三者]]目線で引かれる線、"過程に過ぎないの"。
私は澁谷かのんを侮蔑しないし、澁谷かのんが唯一"本当の歌"に近いから、彼女を超えるの。
そのためには"参った"って言わせないとダメ。だから……』
『 勝利宣言をして勝ち誇るのは、必要なこと 』
――――振り返る。そこに立っているのは、相馬和樹という個人ではない。
澁谷かのんというマルガレーテが超えられなかった"過去"。
ウィーン・マルガレーテという、片桐が彼女を"勝ち誇らせることができなかった"という過去。
そして、その元凶である相馬和樹という現在。
片桐が"マルガレーテにくれてやりたかった土産"が、そこに全て揃っていた。
後はただ、ラッピングをしてやるだけ。
片桐「 俺の勝ちだ…… ざまァァみろォォォ、クソガキィ共ォォォォ (口端を釣り上げ、いつものようにしだらない笑みを浮かべ、既に割れた酒瓶を掲げる。この上なく"生きて"勝ち誇り、先に死にゆくものへ敗北を突きつけるために) 」
相馬和樹「ぁ…………が…………(よろよろと後じさりする。左胸から流れる血が身体から熱を奪っていく)そんな、こんなくだらねぇ、奴、に…………オレがっ…………(ずしゃりと両膝をついてと荒い呼吸を繰り返す。自分の敗北が信じられない。使命に動き、使命の名のもとに動いてきた自分が名誉ある死ではなく、今まで見下してきた相手に誅されるという受け入れがたい展開に身も心も苛まれていた。だがそうしていく間に体から力と意識が抜けていく。手放すまいと踏ん張っても、言うことを聞いてくれない。生存本能が警鐘を鳴らし、そこに焦りが生まれる) 」
片桐「最後に教えてやるよォォ……俺が"勝った"んじゃねェェェ…… 相馬ァァァ……誰よりも勤勉で、クソマジメに必要悪に準じた崇高なお前に勝ったのはなァ"ァ"ァ"……―――(割れた酒瓶を逆手持ちに、勝利を示すようにして腕を高く掲げ…… その拳を"落とす"ようにして、相馬の後頭部へ一直線に振り下ろす) 」
片桐 / ■ルガレーテ「 『 歌 の 力 だ / よ 』 」
相馬和樹「 ガ ツ ン !(最期に見た光景。いるはずのない少女の幻影とともに後頭部に鋭い衝撃が走る)かは…………(肺から空気が抜けたように声を漏らし血だまりの上に倒れ伏した) 」
片桐「――――(お前も、かのんも、手前を殺った連中相手にかましてやる歌はなかった。だが…… お前の歌の力が、俺を勝たせた。 )これで"澁谷かのん"への『勝利宣言』ってことでいいよなァァァ………・・・ ・ ・ (先まで肩を並べていた、そんな気がする"副団長"へ"任務報告"を終えると、満足げな笑みを浮かべ…… ) ガッ コ ォ ン……(倉庫に積まれていたコンテナの山にもたれかかり、力なく倒れ伏す) 」
『 灰色の荒野に立ち、無数の獣に囲まれる星の国境に黄昏と黎明を見る。
その時お前は、松明を渡しに返すだろう 』
片桐「――――――…… ザリ(爪がコンクリを削り、拳を握りしめる。蜘蛛糸を手繰り寄せるようにして腕を前へ伸ばし、這って前へ進む。百足のように)――――ま……だ ……"火は……消えてねェ…… ここも灰になってねェ…… まだ…… 命の使い時じゃ…… ―――――― 」
『たった今だ。彼は正義を全うする為悪に堕ちると言ってここを出た 。
正しいと信じたことを死ぬまで成し遂げたなら、私が彼という悪を裁く。
そう盟約を結んだ上で力を得てから、私は彼の行く末を知ってる、何度も"繰り返している"。
きっとすぐ、私は彼に引導を渡す。 それでもいいと、私は彼の在り方を肯定する。』
―――――― 今際の際、その時なのだろう。
家族の顔が浮かんでは消えてゆく、だがそこに愛おしさは感じなかった。
母の事はよくわからない、中学に入学した辺りから会話を拒絶していた。
どちらがそうし始めたのかは覚えていない。
ただ、小学校の時『将来の夢』をテーマに作文を書いてから何かがおかしくなったと思う。
父とはよく衝突していた。
家業を継がせようとか、何かを矯正しようという厳格な父ではなかった事は確かだ。
だが、それでも俺を酷く叱り、何かを拒絶していた事は確かだった。
それでも、母よりは長く顔を突き合わせていたと思う。
兄は学者の道を進んだ。年は6つ程離れていて、
プラリーニ王国の宮廷に仕えるほどの著名な歴史学者になったらしい。
最後に会話したのは……やはり中学校の頃だろう。
衝突はなかったが、どこかで俺に対する目線が冷ややかになった、そう思う。
弟は食いしん坊だがその分勤勉で、将来は農大に進学し、
過酷な環境下でも育つ作物を育てる事を志していた夢想家だ。
彼は今頃、呑気にじゃがいもの育て方でも考えて、睡眠を貪っているのだろう。
ああ、いいなあ。大勢の人のために戦ってかっこよく死ぬ。
憧れた未来。それがこんなに……
ナガタ「ハッ………ハッ………(呼吸が定まらない、脈が安定しない、心臓が張り裂けそうになっては消えそうな程に収縮してゆく) 誰、か……いないか………誰か…… 生存者は……… 」
壁を床代わりに、手を前足に、崩れかかった建物と建物の間を手探りで足場を確認しながら進んでゆく。
右足は辛うじて動く。左足は龍を模した怪物が暴れた際に吹き飛んできた鉄筋に潰された。
爪先膝から先は原型を留めておらず、痛覚もない糸くずのようなそれを引きずってゆく。
アラタ装備兵「……………(暗がりの中、白を基調とした脚部装甲が見えた。二人の兵士が、梱包された新品の兵士の玩具のように棒立ちしている。眼球だけが動き、こちらへ向かってくるナガタを補足した) 」
ナガタ「―――――!(五体満足の護衛兵……!助かった……)いいところに、来た……!一旦離脱し体制を立て直す…… マリ
マロンのVSへ急行……ハァ…………
サナトリーさんの補給支援を受ける……ハァ……い、今頃……彼女なら制圧、している、はず……… 」
アラタ装備兵「―――――ヴヴヴヴ(モーターの駆動音のような それを発し、首が痙攣する。眼球は虚ろで不揃い。意識が定かでなく、眼球の塗装が粗雑なブリキ人形のような形相のそれは、おもむろにlifullを取り出し) カチャコ…… ズ ┣¨ ゥ ッ (ナガタへ銃口を向け、引き金を引いた) 」
ナガタ「―――――!!(咄嗟に倒れ込み弾丸を予測回避。その際の衝撃で口いっぱいに鉄の味が染み渡るが、それを意に介さないほどに思考が乱れた。冷や汗が吹き出し、呼吸を忘れそうになる)なッ………お、い……!?何を…… 」
アラタ装備兵「ヴヴヴウヴ、ヴヴウッヴウヴヴヴ(首を時計の振り子のようにして振り回し、まだ重みのある弾倉を捨て、リロードする動作を無駄に、そして高速で繰り返す。そうして再び、ナガタが『立っていた際に定めた照準に従って』引き金を引く) 」
ナガタ「 ッ! 条件反射で頭を両手で抑え、匍匐で後ずさる。唇は動揺と、孤軍で直面した"死"への恐怖から痙攣し焦点が定まらなくなる) や、止めろ……俺だよ、ナガタだ!ナガタ・イトー二等兵!! 味方だッ!!(明らかに普通じゃない……!何が起きている……?あのランプはフレーム2を開放していることを表す奴だ……それが原因か? なら何故、"同じように開放した"俺には異常が起きない!?) 」
アラタ装備兵「ヴヴヴウヴ、ヴヴ ガッ ガガガガガガガガ(リロード、リロード、リロード。そしてエイム、今度は匍匐状態のナガタへ照準を合わせ、引き金に指をかける) 」
ナガタ「 ヒッ……!(敗走。その二文字が正しく、身体を転がして向きを変え背を向けたまま両腕をひたすら前へ、犬かきのようにして前後させ遠ざかろうとする)止めろ、止めろォォォォオオオオオ!!!!!俺は味方だァァァァァァ!!!!同士に銃を、弾丸を向けるなァァァァァァァ!!!!! 」
アラタ装備兵「ヴヴヴ識別ウヴ、ードヴヴダー7 ガッ 非認証ガガガガ敵ガガガ 射殺許可ガ――――― 」
―――― パチン ッ (乾いた音が木霊する。誰かが指を鳴らし……)
アラタ装備兵「 ガクンッ (それを合図に首を直角に曲げ、脱力した腕がぶらんと垂れ下がり銃を下ろした) 」
■■■■「―――――助けてあげようか、ナガタくん。(立ち尽くすアラタ装備兵を押しのけ、暗がりからもう一人の陰が姿を表した。闇に同化していた黒髪、黒の隊服、"黒に着替えたパーカー"が輪郭を得て) 」
ナガタ「うぁ ぁ……ぁ……?(兵士が動きを止め、両手を付き、後ずさる。聞き覚えのあるその声に当惑しつつも顔を上げ……)――――ゔぁにたす?(間の抜けた、上ずった声を発した) 」
ヴァニタス「 せいかーい。(ピースサインを自身の頬に付け首を傾げる。細まった目は山羊のような横たわる月の瞳孔称えて歪み、軽快な笑みを浮かべていた) 」
ヴァニタス「助けるって言っても、いやなんでそうなったかな――――ああ、そっか君いい感じにアラタ負傷したんだ。どーりで……運が良かったねー。(腰をかがめ、彼と目線を合わせナガタの項に手を回す。黒いタイルのような部位、電波信号を受信するよう設計されているそれに 」
ナガタ「…………?(状況が飲み込めない。ただ瞬きし、されるがまま豆のような眼球を震わせている。ただ上下する開いたままの口は、言葉にならない疑問符を声にして発し、ヴァニタスの顔を目で追っていた) 」
ヴァニタス「――――別に、身体能力を底上げしたところで新兵上がりがベテラン率いる"真っ当な部隊"に勝てるなんて思ってなかったよ。あんだけ前情報で『強いことしか書いてないですぅぅぅうぅぅ><』って感じでイキリ散らかしてた"第0があの有り様"なんだ、君達みたいな木端が変身ヒーローごっこしたところでたかが知れてるってば。"ウィリアムもゼレオロス"もそーんなバカじゃないって。君達の活躍は期待どーりってわけ、よかったね! (にっこりと、年下の子をなだめるような口ぶりで饒舌に語り、ナガタの頭を乱雑に撫でる) 」
ナガタ「 さ、さっきから、何、を………… 」
ヴァニタス「――――察しが悪いなぁ、君モテないだろ。ああいや、女の子って自分の話聞いてる風装って適切な言葉選びできてればいいのか、そういうの得意そ―だもんね君。(ペンペンとナガタの頭を叩いてから立ち上がり、腰に手を当て肩を落とす) 反乱とか暴動はまあ、ついで?かな。別に反乱軍にならなくたって、レギュレイターの40%以上が"アラタを装備していればよかった"んだ。 」
ヴァニタス「まあつまり―――――――(腕を上げ、拳を握る。戦闘服越しでも浮き上がって見える直線の線が発光し………) 【フレーム" 5 "】強制権限 」
アラタ装備兵「 ウィ ィイ イ イ イ ン ン (駆動音を徐々に強め、関節という関節、胴体や首が"アラタ"による外部圧力で強制的にネジ曲がり) ブヂ ギ チ パ ァ ン ★ (四肢、首、それらが破裂するかのように赤を撒き散らして爆ぜ、残骸が散らばる) 」
ヴァニタス「―――――ゴミとして処理するためにゴミでドレスアップしてもらってたワケ。 うわ汚ッ(爆ぜた鮮血が頬に付着し、一瞬だけ嫌悪感剥き出しに腕で拭う。すぐに笑みを浮かべ、転がる腕や足を蹴り退かし) スリッパでぶっ叩いたゴキブリみたいでウケるっしょ(それらを指さして、親友と談笑するような笑みをナガタへ向けた) 」
ナガタ「 う"ぁ"…… ぁ ブチッ(狂気で押し留めた理性が結界する。血と吐瀉物が混じったヘドロが、両手で抑えた口から溢れ、這いつくばり自身の顔がそれにまみれても尚流し続けた) ハ……!! う、嘘だ………!ウィリアムさんと、ゼレオロス……!デタラメを言うな、これは罠だ……!指揮系統を混乱させようとする策略……ッ 」
ヴァニタス「うっわだからばっちーって!キッショ!なんで吐くんだよ信じらんないって!何、昨日しこたま飲んでた?あり得ないって作戦前に!危機管理どうなってんの!(足元に吐瀉物が掛かる前に飛び退きまくしたてる。心底不快なのか目線を切り、あらぬ方を見やりながら乱雑に答えた)――――あーなんだっけ?ウィリアムはゼレオロスのお友達でぇ、僕はあいつの下っ端だよ。あーっと……そうそう、これ見れば納得するかな(取り出したのはナガタにとって既視感のあるスマートフォン。それを慣れない手つきで操作すると、おもむろにナガタの前へ放り投げた) 」
端末の画面にはナガタにとって既視感のある、
コンラードがどこかの倉庫で会話する様子が映っていた。
だが見覚えのない情報がいくつか見受けられる。
日付、日時。それらは『彼がレギュレイターに所属する前』のデータである事を示していた
コンラード『ああ!五代国と交渉の糸口がつかめるかもしれない! 私は、さんざん……っ さんっざん悩んだ!これが社会的善に該当するのかはもうわからんッ!!』
コンラード『―――――だが国家である以上人が生活し、そしてそこには子供が生まれ、社会が存続している筈なんだ!!それはこれからも続いていく!!子供に生きる場所を選ぶ力はない、ゼレオロスの過酷な環境下で活きることを余儀なくされる、エリア7という隔絶された世界で死を待ち続ける事になる!』
コンラード『やがて幼い可能性の塊が口にしてはならない呪いを吐き出すのだ!『苦しむために生まれたのだ』などと……ッ 例え敵対国家だろうが、それを許容するなど……人としての善に反するッ!!』
コンラード『レギュレイターへの参加は私の私情によるところが強いのは百も承知だ!!だがこの無謀を許してくれ……頼むニコラ、もし私に何かあったなら……GATEとして、せめて非戦闘員に、子供たちに!!温かい食事と安らかな眠りを約束できるよう尽くしてくれ……!!』
コンラード『どうか……ッ どうか……助けてくれ……ッ!!』
ヴァニタス「―――――ちょー泣けるね。(ハンカチで涙を拭う。そんな"パントマイム"で、震えた声で同意を求めるように潤んだ目をナガタへ向ける) ディープラーニングって流行ってるでしょ。音声の切り貼り、改変元の葉像データさえあればそれっぽい状況と照合していくらでも真実を作り出せるってわけ、メディア好きそうだねこういうの。 まぁ、君程度ぐらいしか騙せそうにないお粗末な出来でさ、正直焦ったけどね(笑) 」
ナガタ「―――――――――うそ、だ……… そん、な…… だって、だっていったもん。てぃねる そーだんちょうは…… おれ、に きたいしてるって…… 」
ヴァニタス「君が彼女と直接話したわけじゃないじゃん、どうしたの?頭湧いてるの? あ、そうそうティネルならさっき死んだよ、他の第0も全滅だってさ。(両腕を広げ肩を竦める。その口ぶりは世間話、雑談でもするかのようで……) 」
ナガタ「 は? 」
ヴァニタス「まいっちゃうよね、結構食残しが出ちゃってさぁ。"レギュレイター掃滅"の"先"まで"僕"は温存しないといけないのに、ほんとタハーって感じ。ほんっと、こっちの仕事が増えて嫌になるよ。君代わってくれない? あーこれ笑うとこね(腰を屈め、目線を合わせる。 ナガタを覗き込むその眼には何も映っていない。尽くが"虚無"だった) 」
ヴァニタス「 せっかく生き残ったんだ。この先も死なないでおくれよ、そうすれば……―――――― 何も無い空を見せてあげられる。 おめでとう、ナガタくん!君は味方殺し数最多の勤勉な裏切り者だ!帰還できたらゼレオロスから勲章がもらえるかもね! あれ、君の母国ってそっちだったっけ。 」
ナガタ「 (その虚無に映る自分の姿を見た。何も無い、何も無い。自分の行動は勝利へ導く栄誉も、壊滅的な打撃を与えるような反逆も、なにもない。ただ無為に使い古された消耗品でしかない。) ―――――あっ あっ…… ぁぁ…… っ あ ゃ ゃ やぁぁ……ああああ、あああああああ~~~~~……アアアア アア ア ア …・・・・・・ 」
ナガタ「 や ャャ ヤァ ァ ぁ ァ ダだダ ァ ア 了 ァァ ぁぁぁぁぁァァァ――――――!!!!ああっ、あ、うぇあ、あ、ああ!!やぁぁっぁぁぁああああああああああああああ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"!!!!!!!(嗚咽。敵も味方も、誰も彼の価値を認めない、誰も彼を恐れない。何者でもない空っぽの英雄は、言葉にならない叫びをあげた) 」
ヴァニタス「――――――――――。 きっも~~………(うずくまるナガタを横目に鼻で笑うと、一瞥もやらずすれ違い路地から外へ、『噴水広場』の方向へ歩みだす) 」
― 地下鉄国《アンダーホーム》・中層 ―
ズ ズ ゥ ン … ッ … … ――――― ! (暗晦たる地下世界にて、微かに小さな地響きが空間を震わせていた)
ライオット「………!(劉狼と
ラタリアに促されるままに下降して数十分以上が経過。いよいよ中層まで到達したであろう若い青年少女二人組が、響く地均しに振り返る)………この揺れ…近いな。つーことは……(何かを察するように、細めた目で暗がりの天蓋を見上げる) 」
アサギ「……師匠と博士…っすかね…… 大丈夫…っすよね……? 」
ライオット「なぁに言ってんだ。仮にも俺たちの団長と副団だぜ。大丈夫に決まってんだろ。だから俺たちだけここまで来たんだ。今更ビビってやっぱ帰るなんてナシだぞ? 」
アサギ「ななななななっんなわけないじゃないっすか~~~~~~~!ヤだなも~~~~~!(アセアセ) ……まあ、あの二人がいなくなると急に心細くなるといえば嘘ではないんすけど…あたしもやる時はやるって決めたんで。ここまできたらとことん落ちてやりますよ。いつもやってるホラゲに比べりゃあまだマシな暗さですし…? 」
ライオット「やっぱビビってんのか?(ニタニタ) 」
アサギ「ビビってねーですしおすし!!!!(クワッ) 」
ライオット「っはは、そんだけデケー声出りゃあ幽霊の方がビビって逃げていくわな。(アサギの寂しさを払拭させるような軽い笑みを零し、進むべき方角へと振り返る)……っしゃ…行くか。俺たち二人が限りなく敵の本陣に近づいているはずだからな。ここまで来たら…意地でも近づいてやるさ……『真相』…って奴にな……(顎で先へ行くように促し、二人は進行を再開する) 」
カン ッ ヒタッ
爪先に鉱物が接触した感触と同時に、乾いた音が木霊する。
それなりに重量があったが為か、何かを蹴ったライオットは一瞬躓きそうになった。
続けざまに何かが液体の上を跳ねる音がする。
ここまで浮浪者などが生活した痕跡はなく空気は常に乾燥していた、にも関わらずだ。
何かの正体は、『腕』だった。
正確には腕の形《ナリ》を偽った、細くしなやかな女性の腕をモデルにした義体の腕。
それが切断面からオイルを垂れ流し続けているのだった。
ライオット「っと…―――――― ! ? (爪先に感じた衝突、そして苦痛等を水音が染まる音に違和感を覚えつつ体勢を戻しかけた、その瞬間。上がりかけた視線が腕…否、義手であるのを目撃して一瞬凍り付くような表情を浮かべた)……これは……機械生命体の…腕か……?いや、違う……なんだってこんなところに……(切断面から滴るオイルの方角を恐る恐る見据える) 」
アサギ「……この感じ…ずっと前から放置されている感じとかじゃないっすよ。割と直近なのでは……?(垂れ流れるオイルの光沢具合に目を光らせながら冷静に分析している) 」
足元の非常灯、進行方向奥で"ひしゃげ半開きとなっている鉄製のドア"上の電光案内板のみが光源であるため視界が悪い。
だがライオット達程の"歴戦"の兵士であれば、多少の暗がりも状況を視認する障害にはならない。
"靴裏型に埋没した床"、焼け焦げた壁と床、一部崩壊しむき出しになった鉄筋、無数の弾痕や、簡易的クラスター爆弾の破片……。
士官学校時代の資料で見たであろう、反政府ゲリラの籠城戦跡と似た光景が目の前に現れる。
ここが先程まで穏やかでなかった事は、真新しい"火薬の匂い"から明らかだ。
何よりもその事を証言してているのは、通路奥のひしゃげたドアまで即席を残す"赤い点"だ。
ライオット「(ここまで平坦且つ武骨だったコンクリート空間に生じる明らかな異変。戦闘の痕跡が広がる現場に緊張感が走る)……(この臭い…あの爆弾の破片…何処かで視た記憶が……あれは…―――)――――!(視線の先、半壊したドアの方角まで伸びた赤い点の微かな光を睨みつける)……アサギ、俺が前に出る。支援頼むぞ。(忍び足で突き進む) 」
アサギ「おかのした(砕けた表現ながらもその手元では既にライフル型ガジェットが装備されており、ライオットと距離感を保ったまま前方視認を意識する) 」
ドアを押し開けたライオット、アサギが足を踏み入れたフロアは先までの通路と打って変わり、比較的広く開放的な空間だった。
複数の柱が碁盤の目状に規則正しく配置された地下駐車場のような空間だった。
光源は大空洞へ通ずる窓と、瞬きする瀕死の非常灯のみ。
壁や床、柱など、全方位に弾痕、斬撃痕、焼け跡などの"戦闘"の痕跡が余す所なく刻まれている。
火薬の異臭がむせ返す程に充満し、最も忌避すべき「悪臭」を幸いにも和らげていた。
だがその悪臭の正体は進行方向に存在している。視界までは欺けない……――――――
イシス「ー ー ー ーーーー。ーーーーーーー 」
――――――人の心を持った虫螻の成り損ない、虫のように脆弱な人の成り損ない、そんな義体のスクラップが、体液《オイル》に沈んで横たえている。
ガラス玉の眼球は砕け、右手、左足は第二関節から先が配線をだらりと下げ火花を散らしている。
悪趣味なことに、心臓部と大脳を内包するフレームはそのままに、移動手段や五感を司るパーツを徹底して「半壊」させられている。正しく半殺しの状態だった。
ライオット・アサギはそのガラクタに見覚えがある。
マリマロン王国でエデ女王が資料を開示した人物、生命を冒涜する混沌の七罪を犯した研究者、レギュレーターの裏切り者。
第5調査兵団団長・オアシム・ハペコラの本体……
イシス・ローシャである。
人工血液の役割を果たすオイルの色は無彩色だ。しかし義体の血池には鉄分を含む赤い彩色が滲み始めている。
目線を奥の暗がりへ移せば、その赤がより濃く鮮明になっていくことがわかるだろう。
その先には、別の"血池"が床石の上に広がり……
――――柱へ、翼を折られた天使《無垢なる者》が貼り付けにされていた。
柱にもたれかかり背を丸め両腕、頭を力なく垂らす少女の目は虚ろだ。
瞳孔は開いたまま、口元は乾き、煤だらけの皮膚は童心と共に忘れ去られた人形を彷彿とさせた……。
だがその比喩も実態と差異はない。彼女"ら"は世に黙殺されたに等しい。
少なくともこの場においてはライオット・アサギの二人という例外を除いて―――――
ライオット「―――――――――――(視界に映る凄惨たる光景を理解するのにかなりの時間を要した。激しい損傷の痕跡、その先に横たわる既視感のあるガラクタ人形の正体に、かつてマリマロンにてエデ女王より提供された情報に映る人物のことを思い出すと――)……オアシム……団長なのか…っ……?(静かに歩み寄り、横たわる人形を、形容しがたい表情で舐めるように眺めだす。事実、目の前にいるこの人形がその正体であるかは面識のない自分には少なくとも確証はない。だが、為人の姿形をしたそれは機械生命体のような不気味さよりも、どこか微かに感じる人間らしい横顔に、少しずつ確信へと変わっていく) 」
アサギ「……先輩……っ…… 『あれ』……(横たわる人形のもとに跪くライオットの横で、絶句した面構えでその眼前を目線で促す) 」
ライオット「――――――― ! ? (傍にある人形に手を伸ばしその身を起こそうとした次の瞬間、アサギに促されるまま見上げた先の方角に、青年は激しく驚嘆する。泳ぎだす双眸に映る堕天使の姿に、はっきりとした既視感がある。忘れもしないその正体に言葉を失いながらも静かに立ち上がり、貼り付けにされた天使のもとへとおぼつかない足取りで歩み寄る) 」
――――あなた《アサギ》は知っている。"これ"が繰り返されるが故に自身が属する組織があるのだと。
あなた《ライオット》は知っている。"これ"が繰り返されるが故に、彼女のような消耗品が生み出されるのだと。
だからこれは教訓ではない、認識だ。 より鮮明に、事実を認識しただけのことだ。
ロジェスティラ「………。 …‥ ・ ・ ・ 」
――――虚無だった。
呼吸は辛うじてしている、生命の灯火は残っている。
だがその乾ききった眼球に映るのは、虚無でしか無い。
灰に根を下ろせなかった花の種のように虚しく横たえている。
憎悪はない、あなた達を責め立てる事さえない。
彼女らが救える暇があるとするならば、彼女らが生まれるよりも以前に、この繰り返される現実を覆す奇跡を齎すより他に仕方がなかった。
だから、彼女は誰も責める言葉を知らない。
ライオット「――――― ロ ジ ェ゛ ッ゛ ! !(虚無に塗れた天使に縋るように迫り、変わり果てたその姿に酷く狼狽する。どうしてこんな目に?誰がやった?生きているのか?そんな怒りや悲しみ、あるいは分類できないような感情が入り乱れながら、ただただその相貌を見上げるしかできなかった) 」
アサギ「………うそ…… なんで、こんな……っ……(失意の果てに武装の構えが項垂れるように自然に解かれていく) 」
~~♪ カツ――ン…… ~~♪ カツ――ン…… ~~♪ カツ――ン…… ~~♪
靴底が軽やかに床石を叩く音、口笛を交えて響き、次第に大きく近くなる。
黒衣、黒髪、その容姿から暗闇が人の形を成して蠢いているかと錯覚をさせる。
だが次第にそれは、性別の判別が難しい中性的な人物の形を、既視感のある同僚の荷姿を取った。
ヴァニタス「―――――や、おっひーでーす。どしたんです?ドカドカと私有地にお揃いで、お手洗いならここよりずぅーーーーっと上ですよーーーー。 」
ひらり。手を振り悲痛な面持ちの二人と対象的に陽気な笑みを、その人物は虚無の仮面の上に浮かべる。
その有り様はむしろ、この輪廻を愉しんでいるかのようだった。
ライオット「―――――(失意に項垂れていた青年が、この殺伐にして寂寥な空気と相反する快活さを浮かべる中性的な人間へ静かに振り返る。ハイライトの無い、負の感情を全面に向きだした眼(まなこ)をもって)………(なぜお前がここにいる? そう言いたげそうな鋭くも強い眼光で、ヴァニタスの次の言の葉を伺う) 」
アサギ「………(あれ……確か、研修制度でウチ(第3)に来ていた子じゃ… なんでこんなとこに……?)(現れた人影の正体が敵ではなく、かつて同じ部隊に所属した同僚だと気づいて咄嗟に身構えたガジェットを静かに降ろす。感情に囚われているライオットと比較するとまだ理性は辛うじて保っているが…) 」
ヴァニタス「テンッッッ ションッッッ wwwwwひ っ く……ッッッッッいッッ じゃないッ……っすかパイセェーン!!どしちゃったんですかちょっとー!こんなロケーションなんだからいつものアレやってくださいよっ なんだっけ? 俺の右腕がなんとかー(低温イケボ) 制御できない力が(低温イケボ)かんとかってやっつwwwwwww(まるで水を得た魚のようだ。元々快活な青年ではあったが、あらゆる枷を取っ払い、素でこの状況を楽しみ、心の底から喜んであざけるようにして目尻に涙を浮かべ、身振り手振りを加えて嘲笑う) 」
ヴァニタス「――――っで、本当どうしたんです?そのいっぱいいっぱいの顔ォ……もう今日で見納めかと思うとびみょーーーーーーっに辛いんですけど、あんま引っ張ってもウケるネタじゃないんでぇ……興ざめっていうか。(腰に手を当て、さけずむような眼差しを向けつつライオットへ歩み寄り) いてっ (ロジェスティラへ近寄ったためライオット達から距離が空いたオアシムの体に爪先が当たる)あーこれ……原型残ってたんだ?涙ぐましい努力するねぇロジェェ…… 」
ライオット「………なのか………?(目元が前髪で隠れるほどに前のめりに項垂れた姿勢の最中、か細い声でヴァニタスの方角へ囁くような声音で何かを問いかける) 」
ヴァニタス「――――はい?なんです?(笑みを貼り付け、耳元に手を当て首を傾げる) 」
ライオット「 グ ィ ン ――――――――――― ズ ガ ァ ン゛ッ゛ ! ! (近づくヴァニタスの胸倉を咄嗟的に掴み上げ、付近の柱へアッパーカットのような挙動で叩きつける)……「テメェなのか」って聞いてんだよ……ッ…!オアシム団長を……ロジェを……んな目にしたのはッ゛ ! ! (激昂の衝動が、ハイライトを失った瞳の中で激しく鼓動を帯びる。今にもその首を貫かん勢いでヴァニタスの胸倉をギリギリと柱に押し付ける最中、食いしばった歯がギリリと軋みを上げていた) 」
アサギ「ちょッ、先p―――――!?(ここまで激怒を覚えた横顔を見たのは初めてである。いつもの様子と一変したライオットのただならぬ様子に思わず硬直してしまう) 」
ヴァニタス「――――。(胸ぐらを捕まれる一瞬、鋭利な刃物に火を灯したかのような目と眼光でライオットを見下ろす。"今この場"で爆発した彼の怒りとは対象的に、それこそライオットが"産まれるよりも以前"から静かに燻っていたかのような憎悪を顕にし) ちょっ……タンマタンマ!そう怖い顔しないでぇっ。確かに任務っていうか?ケジメとして実行したのは僕ですけど……―――――(八字眉、狐目で苦笑し両手を挙げ降参の意を示すが……) 」
ヴァニタス「―――――命は平等に扱えよ、正義の味方。アサルト《マスクの出来損ない》も、木偶人形供《帝国兵》も……あんたらも俺やロジェと大差ない。皆で無い頭を揃えてこんな状況を作り出したんだ、連帯責任って奴でしょ(胸ぐらを掴み上げられるがまま、冷淡に言葉を紡ぎ冷たい炎を宿した碧眼がライオットを見下す) 」
ライオット「平等…連帯責任…?どの面が言ってやがる…?「これ」を見てそうだって言えんのかよッ!!(横たわる人形、貼り付けにされた虚無の天使…否、こうなるよりも遥か以前より、理不尽で不条理に命を切り捨てられた者たちの最期の顔が、脳裏に鮮明に焼き付いていた邂逅と乖離が、現在(いま)に取り残された自分自身の躍動・感情を大きく揺さぶり出す) 」
ライオット「……ああ、そうだ。俺は俺の正義を貫いてきたつもりだ。だがな…師匠が言っていたんだ。正義の在り方は掲げる奴ら一人一人にあって、決まったモンなんかこの世に在りはしねェ。自分が「そうだ」と決めたもんが「正義」だ。だから…時には悪と罵られてもしょうがねえくらい乱暴に乗り出すことも、俺は躊躇わねェ。今ここでお前を差し違えることになってもな…ッ!(深く、深く、掴んだ拳でその胸倉を貫きにかかる程に、逆上の眼差しが鋭さを帯びていく) 」
アサギ「……っ……(第三者として止めるべきだと冷静な判断を決行しようとするが、それを良しとしないほどの熱を帯びたライオットの憤慨を前に尻込みしてしまう) 」
ヴァニタス「ああ、それそれ。そーいうやつぅ……熱血漢っていうのかな。頭に血がイっちゃって、事実を正しく受け止めたら逆にアクセル切っちゃうの。そんなのにトップやらせてみな?どうなるか、ナガタクンが上で実例を披露してくれたよ(肩を竦め脱力し、目線を"斜め下"へ流す。足元の何かを確認すると片足を挙げ……――――) 」
フレーム【5】
ヴァニタス「(刹那的だった。緑白色の雷光を全身に纏ったかと思えば、足元に横たえるイシスの義体の腕を踏み千切、その"余波"で飛んだ腕を掴み取る。 彼の手に収まった義体の腕は、まるで懐柔されたかのようにその意に従い『ガジェットとしてのギミック』を解禁、腕が二つに割れて開閉し『チェーンソー』を十徳ナイフのようにして展開。 この一連の動作が0.08秒程で完了し) 必殺ぅ……故・オアシム団長ゥーッッッ!!(スライド移動で間合いを取りつつターン、半円を描いた薙ぎでライオットを切り払う) 」
ライオット「―――――― ッ゛ ! ? ( ズザザザァー…ッ…!! )(刹那的に迸る雷光に思わず掴んだ手を解くと同時に、振り払われた凶刃が胸部を掠める寸での所で咄嗟的に後退した)―――――アサギッ!ロジェを頼むッ!!(水平に広げた両腕の手中に赤光が棒状に伸び出す。自身のガジェット「閃光《グリント》」を槍型に瞬間変形させその切っ先を、本性を露わにしたヴァニタスへと突きつける) 」
アサギ「……!っす…!!(ライオットに合図し慌ててロジェスティラのもとへと駆け抜ける) 」
ヴァニタス「ウィーーーーーン(嘲笑)(自身で濁音を発しつつ勢いに任せ一回転。ふざけた動作だが牽制しつつライオットとの間合いを図り直し、回転を止めるとチェーンソーの刃先をライオットへ向ける。その一連の動作は無駄がないばかりか、余裕さえ感じさせた) 二人掛かりでも構いませんよパイセン方ー!"俺もロジェ"もそう軟な作りしてないんで、そんなナリでもくたばっちゃいない筈だ。なんせ戦争屋が作った自慢の商品だ!耐久力は軍のお墨付き、あんたら生身と一緒にされちゃブランド力が落ちちゃうって奴ぅ! 」
ロジェスティラ「―――――ヒュ ヒュ コヒュ…… (皮肉だがヴァニタスの言葉の通りだ。生身、並の人間なら早くてショック死、耐えても失血死しているであろう損傷を負っているにも関わらず呼吸をし、僅かながら意識もある) 」
ライオット「……"違ェ"よ………(嘲笑交じりに言い放つヴァニタスに異を唱える強かな一声が響く)……あいつは…商品でも、兵器でもねェ… 俺たちと同じ「人間」で……俺たちの…―――――『 仲間 』だ ッ ! ! (躊躇が介在しない揺るぎのない眼差しに、ようやくハイライトが灯る。それは眼前の敵に向けられたものではない。背後で虚無に囚われた少女への、絶対的な信頼感によるものだった) 」
ヴァニタス「やだなぁ自分達だけは別枠みてぇな扱い、傷ついちゃうぞ★(ウィンクをしつつチェンソーを生やした腕という猟奇的な造形であるオアシムのガジェットを見せびらかすように掲げ) ガ ンッッ (残像は愚か、風圧を感じる魔もない速度で"投げ捨て"、イシスの義体の脚部へ突き刺す。それを一瞥する事もなく、無造作に前髪を払い)――――社会じゃさ、人間って書いて消耗品て読むんだよ、一人の例外もなくな。"場数が足元にも及ばない餓鬼"が知ったっような口効くなって……チリチリしちゃうだろ。 」
ヴァニタス「(咄嗟に袖をまくり腕時計を一瞥。全ての脳処理が早いのか、それらも隙を与える事なく終え、ライオット達に目線を戻し)―――――ウィリアムもくたばったか。やるね、おたくらのボス。おかげで"助かった"よ……。あいつが逝ってからが僕のターンなんでね 」
ライオット「……テメェとは一目会った時から直感的に肌が合わねえとは思っていたが… 今、合点がいった。テメェの御託が正しいかどうかなんて俺にはどうだっていい…だがな…ッ…!仲間《 ロジェ 》を冒涜したことのケジメはつけてもらうからな…ッ…!(ポケットの中の懐中時計は、未だ指針は動かず。「その時」ではない。) 」
ヴァニタス「そーっすか?"俺"としては"トチ狂ってる"同士うまくやってけると思いましたし…… 今これ以上にないほど意思疎通できてるじゃないですか。(嘲笑う。嘲笑う、繰り返し何度でも。自分が擦り切れるまで世界のすべてが消耗されるまで、 全部全部を、傷つけてやりたいと懇願するかのように笑みを浮かべ) フレーム【 6 】 エーテル拘束 (両腕を前に突き出し、収束されたエーテルが緑白色のエネルギーで構成される十字剣を逆手持ちにする。ライオットの武装と同系統の物だ) さあ楽しい代理戦争だ。レギュレイターと外界の楽園……残党同士仲良く踊ろうじゃないですか。 」
ヴァニタス「 世界《オママゴト》しましょか、パーイセンッ 」
ライオット「お前にこの世界《ステージ》はぜってー譲らねェ…!大事な仲間たちがこれから先の路へ突き進めるように…俺が正義も悪もぜんぶまとめてブチ壊してやるよ…ッ!止めてくれるなよ。こっからが俺の…――――― 」
ライオット「 暴走時間《 ワンマンライブ 》だ ッ゛ 」
最終更新:2025年06月18日 23:55