.
その一方、城外では―――――
ラステルム王国都市部… 女王の「声」によって既に民間人は国外へと避難を終えていた。
彼らを襲うであろう機械生命体の姿形もそこに無く、それ故に目立った事故や損傷具合もない。
レギュレイター本部に発生したサイレンから、とても襲撃事件が起きているとは思えないほど不自然なまでに静まり返った王国都市部。
だが、その中核に佇むスフィア城は、例外だった――――
衛兵『――――……ぅ……あ……ッ………(城外――― そこには、機械生命体に備えて城と女王陛下を守るために鉄壁の布陣を成していたはずの魔導衛兵たちが隊列を成していた……はずだった。だがそんな彼らはいつの間にか隊列を乱し、あろうことか甚大な被害を被り、誰も彼もが何者かに蹴散らされたかのように至る箇所で蹲っていたのだった…)』
衛兵A「……ハァ……ハーッ…… どう、して……『彼ら』が…… "味方"では……なかったのか……ッ……(剝き出しに開かれた正門の前にて仰向けに倒れ込み、恐怖に声を震わせながら浅い呼吸を繰り返していた) 」
エドガー「 ザシャァ … ッ (倒壊した本部を目指す道中、不自然な静けさをざわつかせるスフィア城周辺で足を止める。横たわる人影が衛兵のものであると判別すると、左右、周辺の遮蔽物を一瞬で確認してから衛兵Aへ駆け寄った) ――――脈はある……。無理に話さなくていい、可能なら教えてくれ。何があった(片膝を突き、衛兵Aへ耳を傾けながら) 」
衛兵A「……!アンタは……アンタ"も"……レギュレイター……なのか…?だが…その感じ………"違う"ようだな……(落ち着いた声音で問いかけるエドガーに何かを察したかのように、弱弱しく頷いた)……誰でも、いい…女王陛下を、守ってほしい…… リオン様が、中で戦っておられるはず……しかし…「敵」は、大部隊だ…!あの方ひとりでは、女王様を守り抜くことは…難しい……ッ… 頼む……女王、様を……―――――(その言葉を最後に、衛兵はついに事切れてしまったのだった――――) 」
エドガー「………。(口の上へ手をかざす。彼の命が既に終わっていることを確認すると、項垂れたまま首を横に振り、瞼に手を添え顔だけでも苦痛から遠ざける。) ――――勲章、取ってきてやるよ。(立ち上がり開け放された正門前にし、右の鉄腕に左手を添え……) 」
エドガー「 キュ ィ ィ イ ン (駆動音と共に、鉄腕の排熱口が蒼光を灯した。 斜めに腕を振り払い、火の粉を散らしスフィア城へ駆け出す)―――――(大部隊……第8の団員は相馬を含む4名があの場に居なかった。 アルベルト考案のパワードスーツ、アラタ…… ゼレオロスに明確な敵意を向けつつもレギュレイターを攻撃対象とした元団員……ーーーーー) 」
正門を瞬く間に抜けて、エドガーはついに城内へと突入した。
すぐに視界に広がるのは、広大なエントランス。
剥きだしの通路が四方に見える中、中央には女王の間へ向かうための二階への大階段がある。
その階段の前に、無数の人影が群れていた。
それらはラステルムの衛兵でも、機械生命体でも、ましてやゼレオロスの帝国兵でもない…
――――― レギュレイターの団員だった。
チャドルゴ「――――― よもや、「団長」自ら此処に参るとは。 (多くの兵団が取り囲むのは、彼らを指揮する中核と思わしき人物。その人物が、勢いよく入城したエドガーの方へと振り返った。白装束を着込んだ紳士的佇まいの老翁が、背後に手を組んだまま彼の姿をその視界に捉える。驚きとも、落胆とも取れる、実に形容しがたい眼差しであった) 」
第8調査兵団・オペレーター ―――『 チャドルゴ・ドグゥナエル 』
レギュレイター兵団『――――――(その老翁を取り囲むのは、第8を象徴する腕章を付けた団員たち。そう、彼らの団長であるエドガーにとっては密接な関係がある人物ばかりであった)』
エドガー「(相反し、今ある事実とこれから起きる事柄を必然として受け入れている据わった眼差しと眼光を向けチャドルド達と相対する。)―――――歓迎されてねえのはお互い様だ。 一つだけ答えろ(親指を後方へ向け門の外、衛兵の亡骸が転がる屋外を指す) 何故だ? 言い訳ぐらいは聞いてやる、"赤の他人"なりにな 」
チャドルゴ「……エドガー団長、ご存知かね?五大国と
ゼレオロス帝国は長年を経ても尚未だ因縁の関係にある。協定など夢のまた夢。和平条約が結ばれることは金輪際ない。それ故に、帝国は技術の発展とともに国力を蓄えて続けている。五大国が予測するよりも目まぐるしい速度でな。つまりは、レギュレイターが介入しようがなかろうが、やがて帝国が五大国全土を支配することなど時間の問題であることを。 」
チャドルゴ「その未来を見据えていたこのラステルム王国のヴィエル女王陛下は、五大国を裏切り、ゼレオロスと繋がることでその安寧を確立しようとしていたのだ!情報によれば、なんでも彼女は類まれな「声」を持っているとされている。その「声」の力で、遥か最下層にいるゼレオロスと交信を図り、秘密裏に情報提供しているという疑いもある。 」
チャドルゴ「よって、我々はこれよりヴィエル女王の身柄を拘束し、その真偽を確かめる。"疑わしきは罰せよ"――― それが私の理念であるからだ!我ら世界政府こそ、世界のあるべき姿。答えそのものだ!意向にそぐわない者に慈悲などない。当然の始末だ!何が間違っている?(メガネを歪に光らせる) 」
レギュレイター兵団『『『 然り! 然り! 然り! (チャドルゴへ同調し軍靴を鳴らし声を張り上げる) 』』』
エドガー「驚いたな、言語としては何も変わってないのに"ヒトの言語"に聞こえない事があるとはな。(目を伏せ肩をすくめ) カツー ン (第8調査兵団団長であことを示すバッチをおもむろに引き千切り、チャドルゴの爪先へ投げ捨てた)―――――あいつならこうしたさ。悪かったな、意にそぐわねえ奴を団長なんて呼ぶのは不本意だったろう。 」
チャドルゴ「………(投げ捨てられたバッチを眼下に、再びエドガーに視線を向ける。その時にはもう、完全なる「敵意」を孕んでいた―――)………やはり、貴様のような青二才に"団長"の座は荷が重かったようだな。今の行為が何を意味するか、理解していないはずがあるまい。……!(ここで、何かを悟ったかのように目を見開いた) 」
チャドルゴ「……そうか……貴様"も"……貴様"も"なのか…!?(急に愕然としたように数歩退いてしまう) ああ、なんということだ……なんということだッ……!!セイン・マーカスの死をきっかけに、何もかもが狂い始めたと思えば……これも貴様の…貴様"等"の工作かァ!!!(人が入れ替わったように発狂しだす) 」
チャドルゴ「やはり…やはりか…!?「かの少年」の言葉は本当だったのだな…!よもや…よもやよもやだ!こんなところまで浸食されていたとは想定外だった!!だが、今合点がいった…!……「何を言っているのだ」と、そう問いかけそうな目をしているな…?解らんのか……? 」
チャドルゴ「 解らんのか!!!レギュレイター《我々》は "終わり" だッ!!!"終わった"のだッ!!!! (エントランスに老翁の渾身の叫びが反響する)ゼレオロスの魔の手に浸食され、我が組織は既に虫食い状態!脆く朽ちた隙間に羽虫の如く這い入れて、じわじわと骨の髄まで食い荒らしておる!襤褸(ボロ)を出したこコンラード・ボルトーレのみならず、未だ本性を隠している「内通者」もいる!そこに信用などあったものではないッ! 」
チャドルゴ「第10に所属するかの少年…「ナガタ・イトウ」団員の言葉に、我々は目を覚ましたのだ!!そしてティネル総司令官もいよいよ動き出した…ここに続かずして、我々に明日はない!!今こそ"革命"の時なのだ!古き体制は終わり、新たな時代の到来を!我々は迎え入れなければならぬッ!! 」
チャドルゴ「…エドガー・アルクイン!貴様もまたゼレオロスに魂を捧げた売国奴だったのならば是非もない!!!今ここで、「我々」が厳粛に!粛清してやるッ!! カ ツ ゥ ――――― ン … ! (そして、最初から手にしていた仕込み杖で床を強く叩きつけた) 」
フルグノッツ「――― わははははッ!!!(そんな中、チャドルゴの合図を受けたように右側の通路より一人の大柄な漢が豪快な笑い声を上げながらマントを翻し、エントランスへと姿を現す。一際大きな黒腕のアーマーが装着された特徴的な右腕を振りかぶりながら―――) 我が名は「フルグノッツ・ロッテン・ヘーゲンダッツ」!血肉と闘志を求め猛進する者!!第8調査兵団・現団長、エドガー・アルクイン!貴様の命、頂戴するぞォ!! 」
第2調査兵団・タンク ―――『 フルグノッツ・ロッテン・ヘーゲンダッツ 』
ハールディン「 ガチャン、ガキンッ…―――― 団長格といえども、「我々」のような大部隊を前にすれば手も足も出まい。貴様の首はこの私が貰い受けよう…!(胴体に鎧、背面に二連大砲、両腕に大型手甲と、全身の至る部位を完全武装した男がフルグノッツの反対側よりエドガーを挟むように現れる) 」
第6調査兵団・タンク ―――『 ハールディン・ ピーゲル』
レギュレイター兵団『 バ ッ ! ! ! (チャドルゴの合図を受け、後列にいた兵団が一斉に一歩前へ。そして、その腰に既に装着されたベルトのバックルに手をかざした――――)』
レギュレイター兵団『――――― " 変 身 " ―――――』
レギュレイター兵団 → アラタ武装兵団『―――― バ チ バ チ バ チ ィ ィ イ゛ ッ゛ ! ! ! (彼らの全身に紫電の如き稲妻が迸ると、四次元空間より現れた白い装甲が次々と全身に張り巡らされ、次世代型制式歩兵兵装『アラタ-弐型』を装着したのだった)』
エドガー「"当たり前のこと"をするのに肩書なんざ必要ねえって言ったんだ。 名乗るな、名前なんざ手前には贅沢過ぎる。"一般人代表"として、珍獣を駆除してやるよ(構えを取らず、ただの人間としてそこに佇み手首をクイと捻る)―――――来な、本当の終わりを教えてやる 」
チャドルゴ「 我々レギュレイター…そして世界政府に仇名す国家反逆者として、かの「敵」を討てェァ゛!!!!!!!! 」
フルグノッツ「グワァハハハハ!!!この俺に続けェ!!!レギュレイター!!!!(ゴォッ、と打ち出された大砲の如く飛び出して口火を切るのは黒腕を振りかぶった巨漢)――――“バンチ・パンチ”ッ!!!(ズグゥォォオオオンッ!!!!!)(黒腕アーマー「イグナエル」による剛腕が、エドガーに迫る) 」
ハールディン「 ジ ャ コ ォ ン ッ ! ! ! (両腕の手甲…その内側より幾つもの小型砲台が顔を出し、そのすべてをエドガーの一点に狙いを定めた)―――― くたばれェッ!!!(ズドンズドンズドォォォォオオオンッ!!!!!)(慈悲のない一斉砲撃を繰り出した) 」
アラタ武装兵団『 ド ド ド ド ッ ! ! ! (フルグノッツ、ハールディンに続けて10名の武装兵団が空間一帯へ拡散するように飛び出す。二人の攻撃の間隙を縫いながら、四方八方よりエドガーに急襲を仕掛ける)』
チャドルゴ「任務をシミュレーション通りに完遂するんだ!!団員諸君!今すぐにあの者の首を斬り落とせッ!!このままでは任務は失敗に終わってしまうッ!!今すぐに奴を仕留めるのだッ!!!狼狽えるなッ!!これはシミュレーション!いつものシミュレーション通りに進めろッ!!撃て、打て、討てェェェェェェエエエエエエエエエエエエエーーーーーーッ!!!!!! 」
エドガー「 トッ (人差し指を立て、フルグノッツの振りかざすイグナエルへ腕を突き出す。指先と鉄腕、リスと像の足程のスケールの差があるソレが真っ向から衝突するが) ビ キ ッ (指先が鉄腕にめり込み、イグナエルに亀裂が走る。難なく受け止めたまま腕を左へゆっくりとズラし…) ド ゴォッッ ("軸"を曲げられた体勢を崩したフルグノッルの体がエドガーの足元へ叩きつけられる) 」
エドガー「 1。 ("殺意"を押し殺したかすれた声で捺さ約と、フルグノッツの脇腹へ蹴りを入れ……ハールディンの砲撃へ向けその巨体を飛ばし……) 8。 (フルグノッツの影からサイドステップを踏んだ瞬間、蒼い閃光そのものとなり右側の壁へ移動。彼自身の姿は残像すら残さず、蒼炎の曲線を無数に描き残し、中央階段の前で拳を振り抜いた状態でようやく姿を表すと……) シュ ボ ァッッ (閃光が駆け抜けた壁右側に陣取る、アラタ装備兵が存在した場所が蒼炎に飲まれ、"荼毘"に伏される) 次。 」
フルグノッツ「グワァハハハハ!受け止められるか我が拳ッ!!!このまま捻り潰してやr――――(勢いづいたのも束の間、武装に亀裂が入ったことも気づかなければズラされたことへの反応も遅れてしまい、豪快に語り出している最中に既に転倒し――――)――――― メ゛ ゴ ォ゛ オ゛ ア゛ ッ゛ ! ! ! (ッ゛!!!!!!!!!!!!!!) (屈強な肉体に彼の華奢な脚が強くめり込む。そして…)―――― ド シ ャ ア ァ ッ … ! ! ! (急所にクリーンヒットしたのか、以降断末魔すら上げることなく床上に倒れ伏した) 」
ハールディン「んなッ――――― ズ ガ ア ア ァ ァ ァ ァ ァ ア ア ア ア ン ッ ! ! ! (一瞬でこちらへと蹴り飛ばされたフルグノッツと共に城壁を貫かん勢いで吹き飛ばされる。その際、フルグノッツの鋼鉄の黒腕を顔面から真正面に受けてしまったことで凄まじい衝撃が頭蓋をかち割り、気を失いながら転がり倒れたのだった) 」
アラタ武装兵団『 チ ュ ボ オ゛ ォ゛ ァ゛ ア゛ ッ゛ ! ! ! ! (こちらが仕掛けるよりも前にエドガーに先手を打たれてしまい、一人一人が一瞬で蒼炎に呑まれ、"荼毘"に消失(き)えていく―――――)』
チャドルゴ「おのれ、おのれおのれ、おのれおのれおのれェ!!!!そうして我々を哀れ、嘲るのか!?その目で!その口で!!誰か!!誰かあの者に正義の鉄槌を!!!万死を与えるのだッ!!!ここで討たねば討たれてしまうのだぞッ!!!我々は今ッ!!我々存亡の危機にかかっているのだッッ!!!!! 」
チャドルゴ「応答せよ!!!我が"正義"に応えよ!!!"世界"に忠誠せよ!!!!La-li-lu-le-lo!《愛国者達よ!》 らりるれろッ!!《愛国者達よッ!!》 ラリルレロォ!!!《愛国者達よォ!!!》 (バァンバァンバァンッ!!!)(仕込み杖を振り抜き、そこから顔を出した銃口から次々とエドガーへ銃弾が撃ち抜かれるが――――) 」
エドガー「 9 17 (気を失ったハールディンへ残像を残すスライド移動で接近。首根っこを鷲掴みにし……) フッ ボ ゥ ッッ (壁左側へ、その掌へビー玉サイズに圧縮していた蒼炎の塊を一瞥もやらず投擲 それが爆ぜ、"念入りにハールディンに引導を渡す"と同時に左側へ隊列を組んでいたアラタ武装兵を焼き) 」
エドガー「 18 (ゼロ距離。チャドルゴの前に立つと彼が引き金に指をかけるよりも早く彼の眼鏡を手に取り、折りたたみ、振り下ろす。この動作を刹那的に終え、彼の眼球から脳髄へ"ねじ込む") そいつは魂に掛けな、手遅れだろうが(すり抜けながらそう吐き捨てると、次のフロアへ向け駆け出す) 」
チャドルゴ「らりるrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrr――――― ブ ジ ャ゙ ァ゛ ア゛ ァ゛ ア゛ ッ゛ ! ! ! ! ! ! ! (命乞いを発する間もなく、老翁はその眼球から鮮やかな血飛沫を撒き散らしながら後頭部から卒倒した――――) 」
― スフィア城・2F・通路 ―
ヴァニラ「―――― チャドルゴのおっさん、やられちまったみてーだな。(エドガーが突き進む2階の通路に、先客者がいた。振り返り、そこにいたエドガーの登場から全てを察したように目を伏せながら、白髪の青年はサングラスを片手で外してその眼球で彼の姿を捉えた) 」
第8調査兵団・戦闘員 ―――『 ヴァニグラハム・ツァル・ヘッツェンケーレ 』
パティルス「(ヴァニラの隣にて、ゴスロリ衣装に身を包んだマゼンタカラーの髪をした少女が悠長にコーヒーカップと受け皿を両手にお茶を嗜んでいた)……悲しいものね。だけど…―――― パ リ ィ ン ッ (ティーセットを投げ捨てて、少女は愉悦にほくそ笑む)――――私に遊び相手を渡してくれたことは嬉しいわね…♪( ス チ ャ ッ ) (そして、空いた両手はすぐさま二丁魔法拳銃「アメシスト」へと切り替えられた) 」
第8調査兵団・メディック ―――『 パティルス・ピリマ・プリエル 』
ヴァニラ「悪ぃな、団長。"そういうこと"なんだわ。黙って失せてくれんねーかな?(パティルスに並んで白銀色の拳銃「リリィ」を、相対するエドガーへと突きつけた) 」
エドガー「 カツッ… (2Fの正面入口。ドア枠で足を止め両者を見やる)一つ、第2と第6は"あの上司"にも関わらず腐った。二つ、チャドルゴはあの年で傀儡になるような未熟だった。三つ、あんたらは若い、心底腹が立つがやり直せる。 俺なりに命に線引をした結果だ、だから……一応言っておく。(右手に手を添え、蒼炎を灯す。ドア枠から一歩も動かず、微動だにせず、押し殺した声で) 退け。 」
ヴァニラ「 ♪~ (エドガーの忠告に対し呑気な口笛で応える) そうおっかねー顔すんなよ。よく言うだろ?「長い物には巻かれろ」って。正直レギュレイター《俺たち》ってもうオワコンなわけ。そんな俺たちの身柄を約束してくれる「上様」の言うことに従うのが定石っしょ?……っつーわけで、アンタとはここで"ジ・エンド"ってわけさ! バ ァ ン ッ (何の変哲もない発泡をエドガーへと放つ) 」
パティルス「アハハハハッ♪私とも踊ってくれるよね、団長?(クルンクルンクルンッ――――バンバンバンッ!!!)(ヴァニラの射撃に合わせて踊るように空中回転しながら二丁拳銃から火を噴き出し、上空からエドガーを襲撃する) 」
エドガー「俺の一番嫌いな言葉だ。広辞苑に付け加えた記憶はねえんだがな、皮肉の才能あるよお前 んでもってダンスはが先約がいる。ペアをやりたいならステージと相方の紹介はしてやれるぜ(弾丸が鼻先に迫るまでドア枠に立ったままを維持していたが……) フッ (パティルス、ヴァニラの弾丸が"消失"。右フックを振り終えたような状態で佇み) トンッ トンッ ト ン ッ (姿勢を低くしヴァニラへ急接近、間合いを詰めてから天井のパティルスへ照準を定めつつ、ヴァニラへハイキックを見舞おうとする) 」
ヴァニラ「――――― ニ ヤ ァ ( ス ウ ゥ ゥ ゥ … … )(エドガーの殺気を含んだ蹴りが自身の身体に届こうとした、次の瞬間だった。その体の輪郭は蜃気楼のように歪み、やがて全身が霧状に揺れ乱れたと思えば、その姿を"消失"させたのだ) 」
―――― 残念だったな、もう俺を捉えることは出来ねーよ。 ( ゲ シ ィ ィ ッ ! ! )(何処からともなく反響するヴァニラの嘲り声と共に、エドガーの死角から脇婆らに目掛け"蹴り殴られた"ような衝撃が走った)
パティルス「アッハハハハ♪でも私は団長と踊りたいのっ♪その命が枯れ果てるまで――――ネ♪( グ ニ ャ ア ァ ッ )(刹那、自身の身体が"反転"。天井に両足を付けて、そこから見上げた態勢で自身にとって頭上のエドガーに対し哂った)ッハハハハハ♪(バンバンバンバンッ!!!)(連続射撃。しかし―――)―――― キ ュ ン キ ュ ン イ ュ ン ッ ! ! ! (放たれた銃弾そのものが"反転"し、不規則に直角を繰り返しながら通路一帯を反射するように無差別に飛び交う) 」
エドガー「(蹴りを受けるも微動だにせず、"気配"のする方向を見やる。だが光の屈折などで視認できるような単純な透明化でないことを悟ると視覚による追跡を断念)……。(両方異能者……透明化、弾道コントロール……いや、事象反転による空間掌握。面倒な……)ヒュッ (左足は動かさず、右足と胴体の動き、最低限の軸のずらしのみで弾丸を紙一重で回避しつつ思案するように沈黙) 」
エドガー「 ――――断るには理由があるんだよ、苦手なんだ ジャラッ(腕を前へ突き出し、拳を解く。中から現れたのは先程"掴み取った弾丸"。それらが床へ落ちようとした瞬間) ゴンッッッ (それを殴りつけ、床へ"跳弾させる") キィ ン キュオッッ(床、壁、天井。空間全体をエドガーの放った弾丸が順応無尽に駆け巡り) そら追加だ。今更だが反射神経を鍛えてやる(追加で掴み取った弾丸を同じように跳弾させる。当の本人は移動せず、僅かな動きで回避を継続する) 」
ヴァニラ「―――――ッ!?(あぶなッ――――!)( ピ ッ )(透明化した態勢でエドガーの様子を伺っていたが、銃弾を殴って跳弾させるという出鱈目な行動に目を見張り、慌てて回避を試みる。だがその時だ、銃弾は頬を掠め、僅かながら可視化された鮮血が飛び出てしまったのだ) 」
パティルス「(ド ドドッ ド ッ )…………ア……アハ、アハ、アハハハハッ…!!(跳弾させられた銃弾に次々と全身を撃ち抜かれてしまう。風穴だらけで絶命した…と思われた、次の瞬間だった。今度は自身の身体を、その身に受けたダメージを"反転"させて、負傷した部位を治療する。否、"ダメージをなかった"ことにしたのだ) ねぇ…もっと楽しもうよ…団長……??(悪魔的な笑みに口角を吊り上げて、じりじりと詰め寄っていくが…) 」
エドガー「(腕を伸ばす距離に存在したヴァニラへ振り向き際腕を伸ばし襟首を掴む、直後)ぐる ン ッッ (背負投、パティルスへヴァニラを1Fのような速度ではなく常人のそれで投げつけ……) パシッ タンッ タンッ (投げる寸前、ヴァニラの顎へ脳を揺さぶるような打撃を入れつつ、リリイを抜き取る。 パティルスへ覆いかぶさるように投げられたヴァニラの隙間を縫い、パティルスの"四肢"……それも"神経を潰すように"鉛玉を叩き込んだ) 」
エドガー「詰みだ。(投げつけた気絶中のヴァニラがパティルスの重しになっている、という前提で歩み寄り「リリィ」からマガジンを抜きつつ) 次、反転すれば致命傷で即死。 ここでそいつとデュエットしているか、あの世でソロを決め込むかはお前が決めな。 」
ヴァニラ「 やべッ――――― ド ゴ ォ゛ ァ゛ ッ゛ (咄嗟的に掴まれたころには既に宙へと投げ飛ばされるも、その直後に骨格が砕かれるような激しい破裂音に脳が吹き飛び、気絶。そのままパティルスへと激突してしまう) 」
パティルス「ぎゃ゛ッ゛、んッ゛――――!!(両手両足を撃ち抜かれ、神経が"一度は"死んだ。そこに追い打ちをかけるように気絶したヴァニラの身体が覆いかぶさり、床上に倒れる)……こ、の……まだ、終わらな――――(――――"反転" それですべてを無に帰そうとしたが、詰めが甘かった――――) 」
パティルス「 ブ シ ャ゛ ア゛ ァ゛ ァ゛ ッ゛ ! ! ! (真っ赤な風船が破裂したかのごとく、その全身から溢れんばかりの血飛沫が弾け飛ぶ。そう、この状態で"反転"すれば、"反転"する前の全身風穴だらけの状態に戻るのだ。その致命的な欠点を見出せず・…)…ぁ……ァ……しま…………た……――――― ド シ ャ ア ァ … ッ … ! (絶頂に白目を向きながら、少女はうつ伏せに倒れ込んだ) 」
エドガー「―――――。(額を抑え首を横に振る)……その異能、お前にとっちゃハズレだよ。(心底落胆したように囁くと、踵を返し次のフロアを目指し駆け出す) 」
― スフィア城・3F・通路 ―
サフタ「―――― 待っていた、『
セイン』の遺志を継ぐ公よ。(まずは右手、白銀の甲冑に身を包んだ西洋騎士が鎮座するように佇んでいる) 」
第8調査兵団・戦闘員 / [[王の騎士団]] "聖蹄王" ―――『 サフタ・ドェ・ロニキエル 』
アーノルード「――――――(続いて左手。黒銀の鎧騎士が、サフタと対を成す様にそこに佇んで、両者ともにエドガーを待ち構えていた) 」
第8調査兵団・戦闘員 / 王の騎士団 "聖鉄王" ―――『 アーノルード・ル・リオーネ 』
サフタ「我が名は、王の騎士団「サフタ・ドェ・ロニキエル」。右同じく、「アーノルード・ル・リオーネ」。彼は寡黙故、この私が変わって挨拶させてもらった。……さて、待ちかねていたよ、エドガー殿。しかし、こうして相まみえるのは実質初めてというべきか。そもそも我ら二人はもとより「セイン・マーカス卿」の懐刀。彼の言葉のみを信じ、動く者だ。 レギュレイターとして身を置くよりも、我々はセインの活動の行く末を見守ることにあった。 」
アーノルード「―――――――――――― 」
サフタ「……「しかし、彼は逝去(し)んでしまった」。アーノルードもこのように憂いている。誠に嘆かわしいことだ。 して、その後任に就いた貴殿を、我々はよく知らない。皮肉にも初めての挨拶がこのような形になってしまったのも誠に遺憾だ。しかして、これも『騎士団』の命の為。ラステルムの女王陛下は、我々が守り抜く。ここは穏便に手を引いてはくれないか?(落ち着いた声音で、微動だにせず、エドガーへと問いかける) 」
エドガー「(相対する両者を視界に入れるや拳に手を添え蒼炎を再装填。静かに"臨戦態勢"に移る)――――この状況で冗談が言えるなら寡黙な方が幾らかマシじゃねえか。この眼で女王や執政官が無事である事、お前達が彼女の敵でない事を確認したら引くさ、詫びも兼ねてあの世ヘな 」
サフタ「……ふむ…流石は、セイン卿が認めただけのことはある。"鋭い"な―――――(よく目を凝らせば、兜の隙間…その目元より迸る歪な赤い光。フルフェイスの兜の内側にて、「ゼレオロス」の紋章が妖しく輝いている。それは、隣のアーノルード然り。この両者だけは、エドガーが先まで戦ったレギュレイターとは違う、異様な空気が漂っていた)……ならば致し方あるまい。残念だが、我々はここで貴公を止めねばならなくなってしまった。 」
サフタ「聞くことろによれば、貴公はセイン卿と旧知の仲にして、実力も伯仲していると聞く。なれば…騎士道には反するが、我々二人同時にお相手いたそう。これも貴公の実力を認めているが故、ご容赦願いたい。アーノルード、構えよ。( ス ラ リ … ――― シ ャ キ ィ ン ッ … ! )(腰に携えた聖剣「ヴィクトル」を抜剣) 」
アーノルード「 チ ャ キ リ … ッ … ! (黒鉄の騎士が、ついにその代名詞と呼べる黒剣「シュヴァルツァー」を引き抜いた) 」
サフタ「 拍動が聞こえる 軍靴が聞こえる 喝采が聞こえる 鳥よ、民よ、兵よ――― 青天白日の下に凱旋歌を奏で続けよ!!( バ ッ )(聖剣を高らかに突き上げて宣戦を布告。そして突き出したその剣を逆さに持ち替え―――)―――― ザ グ ン ッ ! (床へと突き出した) 出でよ、我が愛馬―――――「ハルクーン」ッ!! ( ギ ュ オ ォ ン ッ ――― パカ、パカ、パカ…ッ…!)(突き刺した地面に描かれた魔法陣。そこから鎧馬が現出し、自身は跨る) 」
サフタ「 エドガー・アルクイン!いざ――― 尋常に勝負ッ!!( ド ォ ッ ! )(聖剣を前方へと突き出すと、それが合図となって馬が嘶きながら走り出す) ハアアァァァァアアアーーーーッ!! (威勢のある声と共にエドガーとの距離を詰め、馬に跨った高所から鋭い突きを繰り出す。それを避けられようが防がれようが弾かれようが、そのまま突き抜けて旋回する) 」
アーノルード「 ガ チ ャ リ ッ ――――― シ ュ ダ ァ ア ン ッ ! (鈍重な鎧を着こんでいるとは思えないほどの鋭い疾走でサフタへと続き、彼の攻撃の直後、そこへ重ねるようにエドガーへ縦一文字の力強い一閃を叩き込まんと迫る。その気迫、更には振り下ろされた斬撃は並大抵の剣豪に引けを取らず、一瞬でも気を抜けば確実に首を斬り落とされかねない緊迫感が走った) 」
エドガー「―――――(強い。戦闘技巧のみで測ればアサルトの殆どを超える可能性もある……) ―――――無理を承知で頼む……生きてくれ(脇を締め、両拳を顎の高さまで上げ腰を落とし構える。呼吸はなく、眼の内に両者の"勇姿"を真っ向から捉え) ジッッ (頬を聖剣の"余波"が掠め、余裕を持って回避したにも関わらず切れ込みが走る。ギリギリまで間合いが詰まるまで反撃に出ず堪え……) シィッッ!! (一歩、床を砕き踏み込み、上体を捻り拳で半円を描く"左ジョルトブロー"をサフタの脇腹目掛け放つ) 」
エドガー「 ギ ィンッ (ジョルトブローを放ち上体を捻り、回転する勢いを利用し"右肘鉄"をノールックで背越しにアーノルードヘ。縦一文の斬撃に対し刃の腹へ横から肘を叩きつけ軌道を変え難を逃れる) 」
サフタ「ヌグゥ゛…ッ゛…―――――!!!( メ゛ ッ゛ ギ ィ゛ … ッ゛ … ! ! )(横切る最中に受けた反撃のジョルトブロー、その一撃のみで甲冑に大きな亀裂が生じ、衝撃が体内部に伝わって身が震えだす) …ッ……!(パカ、パカ、パカ…ッ…!)(手綱を強く手繰り寄せて鎧馬を強制的に停止させると、手にした剣を深くまで振りかぶり――――)――― “英断”(ラスタバン) ! ( ズ ッ ―――――― バ ァ ン ッ ! ! )(力強い一振り。それだけで、長い通路の壁を、遥か向こうまで両断。天井を支える柱の幾つかが一斉に倒壊し、その瓦礫がエドガーへと襲い掛かる) 」
アーノルード「 ギ ッ゛ ギ ギ ギ ィ゛ … ッ ゛ … ! ! ! (至近距離より放たれたその右肘鉄を、咄嗟的な判断で手首を捻り、逆さにした剣身で受け止めにかかる。だが、その衝撃の余波が振動となって剣から腕へ、腕から全身へと伝わり、僅かながら痙攣する)――――!(サフタの一閃に合わせてその場でしゃがみ込み、斬撃を回避) フ ュ オ ッ ! (直後に飛び退いて、全身を錐揉み回転させながらエドガーへと刺突を繰り出す) 」
エドガー「(広範囲の斬撃。アーノルードが射程範囲であることは想定済の筈) ッツ!(錐揉み回転しつつ飛び退き斬撃を回避。同時に―――)――ズェアッ!!(アーノルードによる斬撃似合わせての追撃を予測し、その場で空を蹴りバク宙し襲いかかる刺突を回避。頭上からカポエイラに酷似した回し蹴りをアーノルードの頭部目掛け振り下ろす) 」
アーノルード「―――― ! ! ( ズ ッ゛ ガ ア゛ ア゛ ァ゛ ァ゛ ン゛ ッ゛ ! ! ! )( ベ キ ベ キ ベ キ ィ ッ ――― パ キ ャ ア ァ ン … ッ … ! ! )(勝負は一瞬だった。錐揉み回転状態から着地する間もなく、頭上から圧し掛かるエドガーの回し蹴りが頭部に大激突。その衝撃は宛ら隕石に直撃したような、想像遥か絶する大打撃。いくら王の騎士団が誇る優秀な騎士であろうとも、至近距離でそんな一撃を受けてしまえば当然無事であるはずがなく―――)―――――(――――大きく凹んだ床上に伸びるように絶命した) 」
サフタ「アーノルードッ…!?(一撃に伏せられた相棒の姿に、思わず動揺を隠しきれない)……そうか… 今の貴公は、闘気に満ち満ち溢れている。それほどまでに我等との対峙に"本気"でかかってきてくれたのであれば、アーノルードも本望であろう。だがッ!まだ私がいるぞッ!!(手綱を引き、再び愛馬を疾走(はし)らさせる) この一撃に全身全霊を込めて…ッ!! 勝負だ、エドガー・アルクインッ!!! ( ┣¨ ┣¨ ┣¨ ┣¨ ┣¨ ┣¨ ォ ッ ! ! ! )(勇猛果敢なる騎士が、大いなる覇気を込めた剣を突き出し、そのまま勢い殺さずエドガーへと迫る) 」
サフタ「――――― “ 勇 猛 進 撃 ( エ ル ナ ト ) ” ッ ! ! ! (そして、最後の一撃となる神速の突きを、対峙するエドガーへと繰り出す――――!) 」
エドガー「…………。………――――(横たえるアーノルードの側へ三点着地。瓦礫が降り注ぎ、髪が靡く中、影で染まった表情は言葉を発さずただ腹の底から込み上げる"嘆き"を噛み殺していた。)―――――。そうだな、誰もあんた達が"戦士"であることを支配できない。それだけは……ッ 」
エドガー「(左目から頬にかけて"跡"が残った顔を上げ、上半身を捻り右拳を振りかぶったまま一歩も動かず待ち構える。敵の術中にあろうが、信念を宿し立ち向かってくる騎士の姿を目に焼き付け互いの交差領域に入るまでその場から動かず―――)――――俺の生き様で、この世界に刻みつけてやる (交差領域、互いの必殺の間合いに入った瞬間。左足を床へ突き刺し衝撃波が回廊の隅まで刹那で駆け抜け、先まで降り注いでいた瓦礫が浮遊し、静止した) 」
エドガー「 キュ オ" ッ ッ !!!!!(空間に穴が生じる。蒼炎が渦を巻き、浮遊していた瓦礫、残った柱、衝撃波が駆け抜ける間にある全てを割り、引き裂く渾身の拳を送る) 」
ズ ッ゛ ッ゛ ―――――――――― ド ガ ァ゛ ア゛ ア゛ ン゛ ッ゛ ! ! ! (白銀の斬撃と、蒼炎の正拳が、衝突の間際に異常な衝撃を空間に走らせて、互いに殴り抜ける――――)
サフタ「 パカ、パカ、パカ……―――――(互いの最後の一撃をぶつけながら走り抜ける。走り抜けて、いたが…)……パカ…パカ…… グ ラ ―――――― ド シ ャ ア ア ア ア ァ ァ ア ア ン … ッ … … ! ! (愛馬と共に力尽きた騎士がぐらりと傾倒し、床上に叩きつけられた) 」
サフタ「……グ…… グ グ ッ ……!(それでも、騎士は立ち上がる。全身全霊をかけて戦い抜いた相手に賞賛を送るために…)………見事……だ…ッ……! あの一撃の最中で……確かに目にした…"「セイン卿」の意志"を…ッ……!それは、今も貴公の中に……オ、オォ……ッ…!もはや、憂うことなど…… この勝負に… 悔いは…無い……ッ…―――――――― ガ シ ャ ア ァ ン … ッ … … ! (そして白銀の騎士もまた、戦場に散るのであった―――――) 」
エドガー「…………。(背を向けたままその賛辞を受取る。あまりにも重く、そして血を失い冷たく伸し掛るそれに、片膝を突きかけるが……)……連れて行かせてくれ、あんた達の意志も(サフタ、アーノルードの鎧、その残骸を拾い上げ、損傷した義手の装甲として蒼炎で溶接し繋ぎ止める)………(ソレを確かめるように、拳を握るとただ前へ一心不乱に駆け出す―――――) 」
―――――その心理状態が、罠であることに気付けずに。
02の催眠が相手の脳を掌握するまでに要する時間は『1分』。
ただし、この1分とは最優先確保対象である『ティネル・カルロウの脳内時間』を基準としたものである。
彼女の1分は、訓練された精鋭兵にとっての体感時間0.02秒。
そして、一般人にしておよそ0.001秒に該当する。
洗脳が完全に浸透するまでに要する時間こそ、実時間にして『10秒』でこそあるものの、
02の間合いに入った時点でそれは『必中』と言っても過言ではない
アルベルト……もといウィリアムはティネル・カルロウのみならず
第0調査兵団、王の騎士団等を術中に堕とすには
この必中の間合いに至らせるまでの『下準備』を要すると判断しゼレオロス帝国へ提案をしいていた。
それが、事前に術中に落としていた兵士とハロ型機械生命体『トロイ』を使用しての『サブリミナル効果』である
計画実行より1周間前からかけて、
事ティネルや要警戒対象とアルベルトや政府が連絡を取る際映像に02の画像と"執政官"というワードを刹那的に挟み込み、
彼が"執政官である"と無意識に脳が"認識"し、判断を一瞬であれど遅らせるというものだ。
加えて、ティネルを案内する兵士の"声帯"にも仕込みを加える。
簡易的洗脳、微量な音波による"警戒の緩和"だ。
直接的に判断能力を鈍らせる効果は薄い。
しかし、政府側の執政官という"平時であれば信用にたる存在の名前"が、
レギュレイター団員という本来であれば信用に足る人物の口から発せられたという条件下で、
それに対し疑念を抱くという思考を僅かに鈍らせる。
この"微細な差"であるが故に自身が正常でないという事を悟らせず、
ティネル・カルロウや第0、王の騎士団を彼の間合いへ誘った
そしてエドガーもまた、この間合いへ至るための"舞台"に踊らされている事を知らない。
彼を衝き動かす激情、屍の道を後戻り出来ず、熱に浮かされたように、引力へ導かれるように前へ進む。
本来彼に遭ったはずの機械的冷淡さは、完全に失われ…… ――――
「――――――――――……この個体が、F-14。身体能力、知能レベル、魔力量の全てにおいて、この世代では優秀なパフォーマンスを発揮していますが、ただ……"原体"の持っていた"能力"は発現しておらず、もう一点が……」
僕/私のからだを見つめている 白衣の大人が 二人
「――――――――――……成程、股間の"これ"だな。生殖器が……ああ、性染色体由来の奇形か……実物は初めて見るが、うぅむ………容姿は良いが、ハニートラップの用途には使えそうにないな…」
そんなに めずらしいのだろうか 確かに この身体は 私/僕は みんなとは 違うけれど
「――――……だが、秀でた個体なのであれば、研究対象としては保持しておくべきだろう。既にこの世代で生きている個体というだけで貴重な事もあるからな……股座は気になるが、凡そ成功例と呼んで良さそうだ……この個体は次のフェーズに移行させる様に」
ああ、思い出した。忘れていた。
「――――……承知しました。では、F-14は第三フェーズへと移行。負荷試験の後、訓練課程へと移行させます」
「――――……そうしてくれ、せめて実戦試験までは保ってくれる個体が一つでも用意出来なければ、プロジェクトの先行きも怪しくなる……いや、既に怪しいか。此処まで安定しない原因は"原体"としか考えられん。貧乏籤を引かされたな……」
『F-14』これがじぶんの名前。与えられた番号。
「―――……実戦試験は終了だ。諸君。だが……今回の試験を以て、『Project B』は凍結だ」
「―――……悲観するな。これも人為的に理想の兵士を作り出すアプローチの一つでしかない。クローンをベースとした遺伝子改良とゲノム編集、そして促成訓練課程。学びは幾つもあったんだ、君達のお陰でな」
いつもの様に訓練を終えて、いつもの様に人を×す。
きょうだいたちも沢山×んで、もう4人しか残っていない。
そんなある日の中で、"訓練官"様から、学習課程にもなかった事を言われた。
「―――……まさか、本当に素手で武装カルトの拠点を制圧してしまうとは思わなかったが。しかも4人も生き残ったか……うむ、プロジェクト自体は失敗とは言えなかったという事か……処分も勿体ないかもしれんな……少し手を回してみるか…ともかく、ご苦労だった」
ああ、そうだ。忘れていたんじゃない、きっと、記憶に蓋をしていたんだ。
目を逸らしていたんだ。沢山居た兄弟達は4人まで減った。
言われるままに訓練を受け、言われるままに×した。"そう産まれたから"
「――……喜べ、「F-14」。君を家庭で引き取るという人が現れた。その為、「F-14」の名は捨てろ。「フロール・アオイ・メイエル」。これからの君はそう名乗って、新しい"親"の元で市民として暮らすんだ。"振舞い方"の教練は終わっているだろう、その通りに暮らせばいい」
"そう"教えられた通りに生きて、"そう"過ごした。
けれど、きっとこの頃から、色々それ以外を学んだ。覚えた。考えた。×し方以外の事も。
……きっと、だからだろう。この頃からの記憶を覚えていたのは。
蓋をしなくてもいい記憶だったから。忘れたくない思い出だったから。
わたし/ぼくが、ぼく/わたしで居られるから。
「―……君が、
フロールだな。私が団長の
エクレイルだ。色々積もる話はあるが、とにかく……君にはこれから、私の右腕となってもらう。頼りにしているぞ、"副団長"」
貴方が、皆が、心から頼りにしてくれたから。
「―……"フロール副団長"も板に付いてきたな!皆、お前の事も頼りにしている。勿論、私もだ!折角だし、今日は祝杯を上げようじゃないか!ん、飲めない?まあそう言うな、一杯だけなら――」
ああ、これが走馬灯だろうか。
何も守れなかった、何も期待に答えられなかったから、目を逸らしていた、記憶の蓋が開いてきた。
それをきっと、団長との思い出で埋めようとしているんだ。
ごめんなさい、団長。僕には――
―――後ろで声がする。振り向く。
逝ってしまった隊員達が、きょうだい達が、皆が、僕を見ている。
きっと待っているんだ。ああ、僕が行くべきはそこだった。
でも、団長が居ない。エクレイルさんが居ない。
きっと、期待に応えられなかったから――
エクレイル「そんな訳が無いだろう。私はいつも、お前を頼りにしている。誇りに思っている。戦況は悪化しているが、まだ出来る事は残っているぞ、フロール"団長"。皆を守ってくれるんだろう 」
もう一度振り返る。居なくなったはずの、団長が立っている。
私の返事よりも先に、私の手を引く。
人の身体を掴む時、力の加減がいつも下手な貴方は、今この時も私の手を痛いくらいに握って。
フロール「……エクレイル団長、僕は…… 」
エクレイル「まだこっちに来るのは早いぞ、フロール団長。お前の兄弟達だって困っているじゃないか。それに……私はお前に『団長』の肩書を託した。『プロジェクト』も何も関係ない、お前という一人の人間を信じて、頼ったんだ。窮地に陥ったからと言って、失望なんてするものか 」
フロール「………ですが、今の僕に出来る事なんて 」
エクレイル「あるさ、"思い出した"んだろう?蓋をして封じ込めていた記憶は、お前にとっては傷にも等しい物だったんだろう。だが、それに向き合って、乗り越えたなら……それはきっと、お前の力になってくれる。 」
そう、思い出す度、いくつも頭に浮かんでくる。
あの時の記憶と一緒に封じ込めた、力の出し方、戦い方、痛みの止め方、傷の治し方。
ありがとう、兄弟の皆。
待っていたのは、僕が……もう一度立つ事だったんだ。
エクレイル「もう、大丈夫そうだな ……良かった、最期にもう一度、お前を助けてやる事が出来た。"フロール団長"。話したい事は色々あるが……時間が無い。だから、これだけは忘れるな。私はお前を信じている、きっと、皆も。だから、お前も……自分を信じるんだ 」
最期……そうだ、貴方は逝ってしまったけど、もう一度私の前に来てくれた。
きっとこれが、本当に最後なんだ。
……もっと貴方に触れていたい、声を聴きたい。
でも、だからこそ……私を信じてくれる貴方の為に、皆の為に。
もう一度、貴方に別れを言うよ。最後に、貴方の顔を見ながら。
フロール「はい、もう大丈夫です、後は……任せてください。ありがとう、エクレイルさん……もう一度、会えて良かった ……それじゃあ、行ってきます 」
フロール「……ここ、は………(ゆっくりと眼を開く。エクレイルの姿は既に眼前に無く、地下室と思しき打放しのコンクリートの天井が目に入る)……そうか、あの時から気を失っていたのか……(身体の彼方此方に巻かれた包帯、その内左目を塞いで顔に巻かれたものに触れながら周囲を見ると、周りも同じ様に応急処置を受けたであろう隊員達が目に入る)そしてここは……確か… 」
レギュレイター団員「あっ……目が覚めたんですね、フロール団長。此処は本部傍の、緊急避難用の地下壕です。現在は……負傷した隊員達の一時避難所となっています。先の攻撃を受け、本部が使える状態ではありませんから ……髪、伸びました……?(即席の三角巾で左腕を吊り下げた隊員が、フロールへと駆け寄りながら声を掛け……少々困惑した様な顔に変わり) 」
フロール「ああ……(手を伸ばし、確かに伸びている髪に触れ)……代謝が良くなったみたいですね…… ……あと、説明ありがとう。やはり、大規模攻撃を受けていたんですね……現状が知りたい、知っている限りで構わないから、説明をお願いします。アンデシュ隊員(眼前の隊員の名を呼びながら、自らの顔面の包帯を剥ぎ取り)……うん、僕の傷は大丈夫そうです。応援に行かなければ(既に"完治"した顔を上げ) 」
レギュレイター団員→第7兵団隊員 アンデシュ「……はい、では手短に。先ず、本部の倒壊と同時に……(レギュレイター及び、本部を含めたラステルム王国の現状を手早く要約して説明し)……そして現在、第6兵団のメディック、
バンレッジ隊員が臨時に指揮を執り、動ける隊員で負傷者の救助に当たっています。また、同様に第6兵団の
ヨールダン副団長がほぼ単騎で敵を引き付け、対応中です 」
フロール「ありがとう、アンデシュ隊員。なら僕は、ヨールダン副団長と共に敵を引き付け、無力化に向かいます。第7兵団の皆のうち、負傷者は安静にする様に、動ける者は現状と同様、バンレッジ隊員の指揮下にて負傷者の救護に当たる様連絡してください。僕が皆を守ります 」
アンデシュ「了解。残ってくれている皆には、確かに伝えます ――どうか、お気を付けて(右腕でフロールに向けて、敬礼を行い) 」
フロール「ええ、任せてください。――――行ってきます(敬礼を返した後、ガジェットを手に持ちながら地下壕の出口へと駆け出す) 」
― ラボラトリー ―
サーーーー…ッ……!(天井に備えられたシャワーヘッドから温水が散らされ、浴室に真っ白な湯気が湧きたっている)
イーティス「―――――(その中で、彼女は瞳を閉ざしてこの至福の時間を堪能していた。湯気に覆われた彼女の透き通るような白みを帯びた肌は、電灯によってその煌めきが強調されていく。科学者を生業としている者とは思えない程の整ったボディラインに沿って水滴が滴り落ちていく) 」
イーティス「 キ ュ … ッ … (シャワーを止め、脱衣所へと踏み入れる。壁に設置されたいくつかのスイッチを起動すると) ブ ワ ァ … ッ … ! (四方八方から巻き起こる暖かな突風に、全身に付着した水滴が瞬く間に吹き飛ばされていく。これも恐らく自身が開発した装置の機能だろう。わざわざタオルもドライヤーも必要としない、完全自動の吹き上げを経て、バスタオルを手繰り寄せてその場を後にする) 」
シャワーを浴びた彼女はリビング……
というには、研究室のそれと何ら変わらない風景が広がる薄暗い一室へと移動する。
デスクの上に乱雑に広げられた書類や何らかのパーツに紛れて、日用品やアヒル人形が紛れている。
ゴミ屋敷とまでは形容しないものの、整っているとは到底言えないような散らかり様であった―――
イーティス「 ト ポ ポ … ―――― 『 Duck《 ダック 》 』、現在の状況を教えて。(バスタオル一枚で身を包んだまま足場のない部屋を進む。キッチンにてマグカップに見立てたビーカーにコーヒーを淹れながら、誰かを呼び出した) 」
Duck「――――― おはようございます、イーティス。(彼女の呼び出しに応答したのは人ではない。だが、女性の声を完全に模倣した高性能AIであった。それは壁一面に広がる巨大モニターに映し出され、スペクトラムアナライザとしてその声の波長が動き出していた) 本日のゼレオロスの天気はアンモニア。午後から硫黄が予測され、大気汚染率は-250%を前後する見込みです。 」
イーティス「いつも通りね…って、そうじゃなくて―――(コーヒーを口に含みながら当たり前のように聞いていたが、ここで首を振る)――― 地上の様子。今どうなってるの? 」
Duck「地上の監視カメラの映像です。現在、五大国各地でレギュレイター同士で抗争が勃発。第0調査兵団と呼ばれるトップの部隊と、既存の10部隊が交戦中です。(地上の様子を捉え等映像を部分的に映し出す) 」
イーティス「……ふぅん……いつの世も醜いものね。なにやってんだか。(それ自体にはまるで微塵も興味を示さないかのような憐みの眼差しを一瞬浮かべて、デスク上のラップトップの前に座り込む)それじゃあ予定通りに「こちら」へ到着することも叶わなさそうね。何が起こっているのかは知らないけど、邪魔者同士でやりあってくれてるのなら寧ろ好都合。 勝手に滅んでなさい。それよりも……――――― 」
イーティス「――――― もう一度確認しておきたいわ。各国の『 OLR 』の達成率はどうなっている?(ラップトップを淡々と操作する) 」
Duck「 エフィリア:20% プラリーニ:12% ウェスター:17% マリ
マロン:18% ラステルム:15% ―――となってます 」
イーティス「平均律16%、進捗率としては80%程、ね……(右手の親指を歯に咥えて、報告された数値と画面に映る何らかのステータスと比較する)……『 OL"T" 』の還元率から鑑みれば、予定よりは大分遅れている方ね…。これも『あいつら』の仕業、か…… 『 MIGRATORY 』の製作状況は?(それから席を立つとクローゼットを展開。ハンガーにかけられたいつもの衣装に手をかける) 」
Duck「 75%を切りました。予定ではあと4日間で完成見込みです。 」
イーティス「……完成が先か、それとも『あいつら』の到達が先か……まあ、状況は見ての通り、圧倒的にこちらが有利なのは明白。杞憂に終わればいいわね…。(遮蔽物に紛れて着替えをすまし、姿を現す) 」
イーティス「まっ、私は天才なのだから?所詮バカザル共は手も足も出ずにいることだし、時が来れば上から全員嘲笑ってやるのだわ!(お~~~ほっほっほっ♪)(優雅に甲高い哂い声を上げる) 」
Duck「………(クソデカため息) 残念です、イーティス。その「キャラ」がなければ貴女はまだまともな科学者に見えているというのに… 」
イーティス「あーーーーーーーー!また言った!こいつまた言ったぁ!!(ラップトップから巨大モニターの方へ振り返ると同時に頬を膨らませて睨みつける) いい?「ワルンジョ」様も、その方をリスペクトするこの私のこともバカにすることは許さないのだわ!?はぁ~~~…ん…ワルンジョ様…今日も尊いのだわぁ……♪(と、デスクの上に飾られたいかにもな女性のフィギュアを手に取り頬ずりする) 」
Duck「いい年した科学者が痴態を晒していては笑われ者です。傑作です。今頃『 先生 』も鼻で笑っていますよ。(やや小馬鹿にしたような口調) 」
イーティス「 『先生』はかんけーないでしょー!?ていうかアンタ!日に日に増して態度がでかくなってきてなぁい!? 」
Duck「大丈夫です。ワタクシは優秀な高性能AIですので。日々目まぐるしい速度で学習し、イーティス……失礼しました、イーティス「様」に相応しいコミュニケーション能力の開花に余念がありませんので。 」
イーティス「本当の高性能AIならその主人に舐めた態度なんてとらないのだけど???最初はちゃんということも聞いてくれれば「様」づけだってしてくれたのに…どこでバグが発生したんだか、このポンコツAI……(うざったそうに後頭部を掻きむしりながら呟くとドレッサーに腰を掛けてメイク作業に入る) 」
Duck「そのポンコツをつくりあげたのは貴女ですよ m9(^Д^)プギャー(←の顔文字を画面いっぱいに映し出して煽りに煽る) 」
イーティス「 こいっっっっっつぅ~~~~~~~~~~~( ぐぬぬぬぬぬっ )(怒りに拳を震わせ、思わず握りしめていたブラシがへし折れそうになる) 」
Duck「それはさておき…『計画』は予定よりも遅れたものの、現時点では滞りなく進行中。「思わぬ事態」も乱入しましたが、イーティスがレギュレイターに対し宣戦布告を仕掛けたことで、ようやくこちらの思い通りに事が運びそうです。……とはいえ、そのように提案したのはワタクシなんですが。 」
イーティス「アンタをつくったのは私なんだから実質私の目論見通りでしょ!?いちいち癇に障る言い方やめてくれる!?(鏡を前にして自身の髪をセッティングしながら最後に髪留めを付ける) 」
Duck「はいはいわかりましたわかりました 」
イーティス「ったくもう……まあいいわ。いろいろ掻き乱されちゃったけど、誰にも主導権を譲るつもりはないわ。誰にも……――――!(着替えと化粧を終えていつもの格好を完成させた時、ふと、ある人物の顔が脳裏に過る) 」
イーティス「………ところでDuck… 『アイツ』のこと、ちゃんと調べたの? 」
Duck「……はい、ある程度であれば。(巨大モニター内に、次々と小型ウィンドウが止めどなく展開されていく。そこに映るものは全て――――『 ライオット 』だった) 」
Duck「 『ライン・オーレット』 ―――― イーティスが気になっているというこの青年についてデータをまとめあげました。まず、彼は南の国にあるハナユラという辺境の町で生まれました。彼は専業主婦の母親と世界政府将校の父親の間に生まれ、小学校は―――― 」
イーティス「あ、いや…そこまで詳細なことはいいから… 私が知りたいのは…――――なんであいつが『 ウォッチ 』を持っているのか?いつ、どこでそれを手に入れたのかってことなんだけど。 」
Duck「検索します――――(この間、10秒ほど沈黙が流れる)―――― 地上の監視カメラに、関連すると思われる一件の映像ログを検知。(すべての小型ウィンドウを閉ざして、特定の映像のみを映し出す) 」
Duck「映像は、『2012年の4月10日 午前12:00』の時のものです。場所は彼の故郷であるハナユラ、その町の商店街大通り。そこの監視カメラが、当時12歳だったライン・オーレットが何かを拾い上げる様子が映し出されていました。拡大した結果、確かに『ユナイタルウォッチ』でした。 」
イーティス「 『2012年』……!?ちょっと待ちなさい…それって…私が10才だった時…そして、"『先生』と初めて出会った"年…… Duck、「ウォッチ」がいつその場所に出現したかわかる? 」
Duck「いいえ。不自然ではありますが、ライン・オーレットが座標ポイントを通過するまでは、そこには何もありませんでした。ですが、当時幼かった彼が何らかの異変に気付いて座標点に近づき、しゃがみこんだ後……その手に初めて、「ウォッチ」が映像に映し出されたのです。古い映像であるため、解像度の問題なのかは判断がしかねます。 」
イーティス「……じゃあ、その場所に、いきなり現れた…ってこと……?そして、それに気づいて拾ったのが、よりにもよってアイツで……でも、やはりおかしい…!そもそも、『ユナイタルウォッチ』をつくったのはこの私で…ッ…!………そんなことは、『先生』だって言っていなかった……のに……(信じられない事実に再び親指を噛み締める) 」
Duck「ええ、そうです。『ユナイタルウォッチ』はイーティスが造り上げた、この世に二つとして存在しないものです。ウォッチが何らかの事故で離れてしまった事例など一度もなく、常にイーティスの手元にありました。ましてや、ゼレオロス…いえ、アルガンドーラから遠く離れたハナユラとの関係性は、地理的にも歴史的に鑑みても全くの無関係。何故、あの場所に、それも人目の付くような箇所にウォッチが転がっていたのかは謎です。ですが、確実に判明していることもあります。 」
Duck「それは、ライン・オーレットが回収したユナイタルウォッチは、"その時点で破損していた"ということです。 彼もまた、そのウォッチに運命的な感情が芽生えたのでしょう。イーティスと同じく、肌身離さず持ち歩いていたようですが、それを迂闊にも壊してしまったという事故もなく、当時のままの形を維持して大事に所持していたそうです。 」
イーティス「……まるで意味が解らないわ…プロトタイプが何処かで開発データが漏れていたとでも…?いや、それにしても…いろいろ不自然すぎるわ… なにより、"ウォッチの複製"が始まったのは"つい最近"のことで……(思考を巡らせるが、やはり明確な答えには至らない) 」
Duck「もう一点、確定事項もございます。それは…ライン・オーレットとイーティス、二人が持つユナイタルウォッチは、造形は確かに同じではありますが、"相違点"も僅かにあります。(そう言うと今度は、二人が初めて相対し、戦闘した時の映像ログが映し出される) 」
イーティス「……これは…私のサイナス…!そう、あの時……アイツも『ユナイタル』との適合を……――――!(ここではっと目を見張った) 」
Duck「気づいたようですね。イーティス、貴女のウォッチには「サイナス」のユナイタルデータが格納されています。 ですがライン・オーレットのそれに格納されていたのは「クラクス」と呼ばれるものです。姿形こそサイナスと酷似していますが、全くの同一機というわけではありません。スペックはほぼ同等。搭載武装も同じですが、列挙できる点としてはその機体に備わる固有能力です。 」
Duck「サイナスの能力は“観測《 ヒストリカ 》”。相手の行動パターンから次の動きを予測することで、未来予知に匹敵する瞬時な行動が可能。一方で、クラクスの持ち得る能力もまた類似したものではありますが、サイナスの能力とは若干の差異がある模様。クラクスの場合、相手の行動パターンを予測する機能は完全にオミットされています。ですが、未来予測に匹敵するもう一つの感知能力が備わっているみたいです。 」
Duck「過去に渡るライン・オーレットのユナイタルによる戦闘ログを解析した結果…どうやら、相手の動きを予測するというよりも、まるで、相手が次に取り得る行動を"既知している"ようです。言うなれば、対象が過去に何をしたのか、その経歴や経験を閲覧したかのように。これは、サイナスの“観測《 ヒストリカ 》”とは対照的なメカニズムになっています。名づけるなら…――――― “既視《 デジャヴ 》” 」
イーティス「……"デジャヴ"……っ…? 」
Duck「 "デジャヴ"とは本来、未経験の事柄にもかかわらず、過去に経験したことがあると錯覚する現象のこと言います。とはいえ、こんなことは今更貴女にいうことではないんでしょうが。……ライン・オーレットの「ユナイタル」には、その力が宿されている、といえるでしょう。ここから導き出されることは、貴女たち二人が持つユナイタルウォッチは、「表面的には同じではあるが何処かで違う要素」がある。 」
Duck「ユナイタルウォッチに「設計図」は存在しない。あれを造り出せるのは…イーティス、貴女しかいない。 今市場に出回っている「紛い物」とは違って、純正なウォッチは、"『先生』から託された"時点でこの世に一つだけです。 そして…―――― 」
イーティス「……『先生』は……もう、いない…。仮に先生が「もう一つ」を隠し持っていたとして、それを秘密にしておく意味って…?なんでそもそもあんなところに…?なんで…あんなバカザルの手に渡ることになって……?(膨張する困惑によって、次第に喉が震えだしていく) 」
Duck「……死人に口なし。「真相」は我々にはわかりません。ですがイーティス、このままでよろしいのですか? ライン・オーレットは…本来意図して発動することのない不良品のウォッチであるにもかかわらず、その中で、クラクスを起動しました。そして変身の頻度も徐々に増えている傾向にあり、今も尚…彼とユナイタルの適合率は我々の予想を遥かに超える速度で上昇している。マリマロンで交戦した時、感じたのではありませんか――――? 」
イーティス「………―――――――― 」
俺にはわかる…!こいつ(ユナイタル)の力は普通じゃねえ!いったい何なんだこれは!?
どうしてお前"も"使えるんだ…!?知ってること全部教えろッ!!
今度はアタシの質問にも答えなさい…ッ!アタシが発明した『ウォッチ』をどうしてアンタが持っているの!?
それはこのアタシが造り上げた世界に二つとない"完成品"なのよ!!
邪 魔 す る な あ ぁ あ ぁ あ ぁ あ ぁ あ ぁ ッ ! ! ! / っ る せ え ぇ ぇ え え ぇ ぇ え え え ぇ え え ッ ! ! !
イーティス「―――……(海上戦でのユナイタル同士の戦闘が、今でも鮮明に記憶に刻み込まれている。あの時感じた、『自分のものではない誰かの記憶』と共に―――) 」
Duck「……イーティス、忘れてはいないですか?ユナイタルウォッチの
適合者は本来、貴女しかいない。ですが、ライン・オーレットも"適合した"。これが何を意味するか…頭の良い貴女なら理解していないはずがない。ユナイタルとの適合率が上がるということは、単純な戦闘力の覚醒に留まらないのです。 」
Duck「 ユナイタルォッチとの適合率が100%に到達した時、『 Key 』としての役割に目覚めることです。そもそも、ユナイタルウォッチの本来の役目は――――――― 」
イーティス「―――――――― わかってる。(唇を強く噛み締めて、拳を強く握りしめる。そして、支度を完全に終えると踵を返す) 」
Duck「 イーティス、何処へ向かうのです? 」
イーティス「……決まってんでしょ…ッ…?アイツから『ウォッチ』を奪う!あんな…あんなどこぞのバカザルに、私と『 先生 』の"理想"を横取りされてたまるものか…!! 」
イーティス「…こんなことになるなんて……もっと早くに気づくべきだったんだ…… まさか……まさか、あんな奴が…ッ…この私と「同じ」だなんて…ッ… 」
イーティス「―――――― 『 旅人 』になるのは、私だけなんだわ!(怒号を吐き捨てて、ついに部屋を飛び出した) 」
Duck「………イーティス……――――――――― 」
部屋の隅に設置されたチェスト。その上に写真立てが飾られている。
何らかの表彰状を両手に握りしめる少女と、その隣で微笑ましい笑顔を浮かべる白髪の老紳士。
その二人を映す写真が、色褪せかけていた――――
コンラード「 ―――――はッ!!(カッと目を見開く。見慣れない天井、カンテラだけが光源の地下室。周辺には医療用ベッドに横たわる団員……自身もまた、そこに寝かされている事に気付く)い、いったい何が……――――――
『処理しておけよ、その豚』
コンラード「 ひィ!! うぅ……うぅぅぅゥゥゥ ゥ ゥ ァ……ウァァァ……ぁぁぁ……っ(フラッシュバックする情景、冷笑、摩擦熱が伴う鉛玉が体内で燻る感覚。それらが一斉に幻肢痛となって襲いかかり、頭をかかえ蹲る) 」
『バンレッジ団員!包帯の予備確保しました、密封されているため衛生面に問題はないかと!』
『止血剤ストックは!?鉗子も足りない!』
『動ける者は装備を整え防衛線へ!ただし下手に動くな、奴等が拠点に気付くまでは待機だ!』
ロナ「―――――(膝を抱え、待機モードへ移行し折りたたんで小型化したアリエルの横で小さくなる。コンラードの救出にこそ成功したが、現拠点で忙しなく行き交うメディックの中に"
レイカ"の姿はない) 」
『しかし……ヨールダン副団長を単騎にさせておくには……!』
『フロール副団長も増援に向かう。彼等の指示があるまでは下手に動くな、足手まといだ』
『コンラード団長の容態は』
『命に別状はありませんが錯乱状態にあり……』
――――地響き。
ティネルか、その他の勢力か、戦闘の余波が地下まで響き脆い拠点の天井から砂利が滴り落ちる。
『さっきより近いな……ここが感づかれるのも時間の問題か―――』
『お二人が引き付けている間に脱出できないか!?あの歩兵用装備でも装甲車には追いつけないだろう!』
『………』
ロナ「…………。(刻一刻と悪化していく戦況。膝を抱え、大切な人の面影が底にないにも関わらず、自分は"何も決められずにいる"。 或いは、何に対し迷っているかもわからずにいる) 」
ロナ「おかーさん おかーさん (あの人ならどうしただろうか。あの人なら何と言ってくれるだろうか。 先から何度も何度も、渦巻く瞳孔に収まるほど小さく幼い少女が呼びかけた。返事はない。 あの人は、どんな時に私に答をくれただろうか?) 」
ロナ「あのとき、あの時も 」
――――――(意を決した。誰を助けるべきか、どこへ向かえばいいか……"どうしたいのか"わからない。今思えば、自分はいつだって求められた時、求められたように力を振るっただけだ。だから……
ロナ「 行こう、アリエル。何度失っても取り戻すよ!(少女は自らが誇る鉄巨人へ飛び駆る。ハッチをこじ開け、禄に動作チェックなどを行わず熱に浮かされたように) 」
アリエル「 ギュ ィ ン (眼が緑白色の閃光を放った。 彼女に芽生えた熱に、彼女が選び取った松明の炎に呼応するように) 」
― ウェスター王国・ゾーレ遺跡 ―
武人刃《 ブジンソード 》「――――― ボ ゴ ォ オ ン ッ ! ! ! (倒壊した柱の瓦礫諸共、ヒロを凄まじい圧を帯びた斬撃で吹き飛ばす)…… パ ラ パ ラ … ッ … 粘るね… いい加減、限界じゃないの…?(巻き上がった砂礫がぱらぱらと落ちる中で、吹き飛ばしたヒロを仮面の内側で睨みつけている) 」
ヒロ「……限界は君が決めるんじゃない…(フラフラと立ち上がる)俺が決めるんだ(の光はいまだに消えず、彼女を見据える) 」
武人刃《 ブジンソード 》「…強がっちゃって。いいよ、じゃあそのままにしてて。楽にしてあげるから、さッ! シ ャ キ ――― \ BUJIN SWORD STRIKE / ――― ン ( ジ ュ ワ キ ィ ィ ィ イ イ イ イ イ ン ッ ! ! ! )(バックルを起動したその直後、刀身に黒い瘴気を模したエーテルエネルギーが注ぎ込まれ、鋭い刃が血の如き真っ赤な光を覆う。その状態で円月殺法を描き、そこから袈裟斬りを繰り出すことでヒロに向けて"回転を帯びた斬撃波"――宛らチェーンソーの如き苛烈さ――を放った) 」
ヒロ「……まだ楽になるには………(バットを構える)早いさ!(斬撃波に向けて振り抜く) 」
――― ズ ッ ガ ァ ア゛ ン゛ ッ゛ ! ! ! (ヒロのバットが、彼女の放った苛烈な斬撃を受け止める。しかし、回転を重ねる刃はそのままバットを切断せん勢いであり、彼を圧倒し続ける―――!)
武人刃《 ブジンソード 》「 "まぁるい"でしょ?受けきれる?受け入れてしまいなよ 」
ヒロ「…ここで、受け切れずに切り裂かれようとも………俺は…!!!!(手首を押し込み抵抗する) 」
ッ パ ァ ン ッ ! ! ! (根性―――青年の力強い意志が、その凶刃を撥ね退けた)
武人刃《 ブジンソード 》「 ッ―――――!? (退けられた斬撃波の衝撃に動揺する)……ッ……この……!!( ブ ワ サ ァ ッ ――― ド ゴ ォ ッ ! ! )(マントを翻しながら接近、勢いをつけた飛び蹴りを繰り出す) 」
ヒロ「……!くっ…!!(弾いた反動でバットを離せず、咄嗟に飛び蹴りをバットで受け止めようとする) 」
武人刃《 ブジンソード 》「どうしてそこまで私の邪魔をするのッ!?かのんちゃんを殺した組織に肩入れしてッ!お前も…お前もォァッ!!! グ ル ン ッ ―― ザ キ ィ イ イ ン ッ ! ! (上から叩き付けるように刀を振り下ろしで斬撃し、その勢いを一切殺さない回転を加えると――) グ ル ン ッ ―― ザ キ ィ イ イ ン ッ ! ! (更に同様の斬撃を叩き込み――) グルン、グルン、グルン ――― ザ ギ ャ ア ァ ア ン ッ ! ! (そして三撃目。全身を捻じるように低空跳躍した態勢から、その遠心力を利用した刀を思いきり振り下ろしてヒロを大きく切り飛ばし、着地する) 」
ヒロ「……!ぐっっっ……!!(彼女の強烈な斬撃をまともに喰らい、弾き飛ばされる)………俺は、君の邪魔をしたいわけじゃない…(それでもなお立ち上がる)…君を、救いたいんだ 」
武人刃《 ブジンソード 》「私を……"救う"……?(一瞬、その攻撃の手が止まった)………私なんて、どうだっていい。かのんちゃんを救えなかった私に、救われる価値なんてないのだから…ッ……! 」
ヒロ「………そんなことはない!!(力を振り絞って叫ぶ)俺はそのためにここまで来たんだ…どうだっていいことなんてない! 」
武人刃《 ブジンソード 》「…かのんちゃんを救えなかったのも……Liella!のみんなを引き留められなかったのも…ぜんぶ…ぜんぶ…ッ…―――――― ぅ ぅ ぅ ぁ ぁ ぁ ぁ ぁ ぁ あ あ あ あ あ あ あ あ あ あ あ あ あ ッ ! ! ! (むせび泣くような発狂と共に迸る黒い衝撃。マルガレーテの呪いの歌の影響か、ライダーシステムの副作用の影響か、或いは――――) 」
武人刃《 ブジンソード 》「 シ ャ キ ィ ――――― \ BUJIN SWORD VICTORY / ―――― ン ッ ! ! ! ( ズ ダ ァ ン ッ ! ! )(頭蓋が軋むような痛みに悶えながらバックルを二度起動。全身に黒い瘴気を纏い、天高く跳び上がった) う゛ あ゛ あ゛ あ゛ あ゛ あ゛ ぁ゛ ぁ゛ ー ー ー ー ー ッ゛ ! ! ! (嗚咽とも、慟哭とも取れる負の感情がこもった怨嗟と共に、ヒロに向かって必殺の飛び蹴りを叩き込むように落下していく) 」
ヒロ「………ちぃちゃん、君は…!(その蹴りを受けようと身構える) 」
澁谷かのん?「………(その瞬間…ヒロの前でバッと両手を広げ、彼を庇うように千砂都の前に立ちはだかる幻が現れる。それはかつて千砂都を庇った時と全く同じものだった…) 」
武人刃《 ブジンソード 》「 ! ! ? (思いがけない幻影の出現に、世界がスローモーションに陥る。その中で、脳裏に次々と浮かび上がる記憶が、黒く覆われていたはずのそれらの記憶が、色づく様に蘇っていく感覚に陥った)―――――――(――――――「かのん」…ちゃん……っ………?) 」
ヒロ「………?(身構えていたが、彼女の様子を見て目を見開く)(何が起こってる…?)(彼にはその幻影が見えていないのか、彼女の様子に動揺を見せる) 」
……ちぃちゃんのそのドライバーを…今すぐ壊して!(ヒロの脳内に幻聴が聞こえてくる…)
ヒロ「ど、ドライバー……!(突然聞こえた幻聴を聞き)(かのん、ちゃん……なのか…!?)(バットを構え、千砂都のドライバー目掛けて振り込む) 」
―――― バ キ ァ ァ ン … ッ … … ! ! (ヒロが強く振り抜いたバットが、彼女を制御するデザイアドライバーに炸裂。ドライバーの中心部を筆頭に、大きく罅割れ…そして――――)
武人刃《 ブジンソード 》 → 嵐千砂都「 パ キ ャ ア ァ ン … ッ ! ! ! (ドライバー諸共、自身を纏っていた漆黒の装甲が弾けて砕ける。そこから曝け出された彼女は――――) ぁ … あ ぁ … っ …… (――――― "泣いていた" ) 」
嵐千砂都「―――――(倒れゆくその最中、幻影のかのんの姿をその瞳に収める。尖っていた瞳は元の丸みを帯びて、血眼のような赤身は薄れ、元の純粋な少女としてのものに戻っていた――――)―――――― ト サ ァ … ッ … … ! (そして少女はゆっくりとその瞳を閉ざして、倒れゆくのだった――――) 」
ヒロ「………………………ちぃちゃん………!(倒れゆく彼女をそっと受け止める)……良かった…!(彼女を担ぎ上げる) 」
ヒロ「…戻ろう、みんなのところへ…(彼女にそっと語りかけるように病院に歩いて行く)(………あの時見たかのんちゃんの言葉、そして今の言葉………やはり、彼女は………今もみんなのことを………) 」
― PM 21:00 ラステルム王国・スフィア城・女王の間 ―
リオン「――――ハァ……ハァ……ッ…!(その頃、女王の間―――アサルトとの1対1の交戦へと乗り出したものの、苦戦を強いられていた。重症こそは負っていないものの、掠り傷が非常に目立ち、息も上がっていた) 」
02《 シュナイム 》「ふっ、ふふふぅ~…♪よく頑張った方じゃなぁ~い……でぇも…?そろそろ、終わりのようねぇん♪(対して、こちらは飄々と佇んでいる。一度死した肉体である以上、スタミナなどの限界はない。どれだけ全身に傷を負おうが、不死身ならば尚のことである) 」
リオン「はぁ…はぁ……女王は…ヴィエルは……!私が何としてでも守り抜くッ……!(だがこの戦いで、常に女王 / 妹を背に戦い続けていた。意地でも彼女には手出しさせない…腹心として、姉としての矜持が、限界に差し迫る自分自身の身体を駆り立てていた) 」
ヴィエル「姉さん…っ……!(そんなリオンの身を案じ、ただただ懸命に祈り続けることしかできない) 」
02《 シュナイム 》「 それじゃあねぇん ――――― アデュー♪ (屈するリオンへ向けてアサルトライフルを突き付けた、その時だった――――) 」
エドガー「 八" ァンッ (ドアを蹴破り王室へ一陣の風として駆け込む。戦況を突入と同時に把握すると、バックルから"既に破損したガジェット"である水晶を取り出し……) 伏せろ執政官ッ!! (矢のごとく、02のアサルトライフルを握る手へ投擲。自身も間合いを詰めようと、02へ駆け出す) 」
リオン「―――――!(見覚えのあるエドガーの姿に一度は目を見張るも、その一瞬の隙を見捨てることはなく―――)―――― ヒ ュ ッ ! (伏せの態勢に入りつつ、そのまま低姿勢で踵を返しヴィエルのもとへと旋回する) 」
02《 シュナイム 》「んなッ――――――?!(迂闊―――背後から現れた新手の急襲にアサルトライフルが頭上へと弾き飛ばされ、無防備の態勢を許してしまう) 」
エドガー「ッ……!(本命は突入と同時に最大出力の蒼炎で敵ごと焼き払うこと。速攻で沈める必要がある、あのティネル・カルロウが狂い果てる原因が、あの王の騎士が狂い果てる原因が潜む可能性があるなら尚更。だがその選択肢を取れず、せめて最高速、最短で決着をつけようと一歩の踏み込みで"脳"を狙い拳を振りかぶる、しかし――――) 」
―――――焦る必要はない。
02の権能が脳を支配するまでに要する時間は、権能を視界に入れてから『ティネル・カルロウの脳内時間で1分』 そして実測0.02秒。
ほぼ全レギュレイターがこの速度に対応できない、彼を葬るには背後からの暗殺しか手段はない。
02の思考に、焦りの二文字は存在しなかった。
02《 シュナイム 》「――――― ぁ ん て ね ❤ 」
―――― シ ュ ボ ォ … ッ … ! (上空に弾き飛ばされたアサルトライフル。その銃口に、紫色の灯火が瞬きだす。その妖しい光はエドガーへと向けられた――――)
エドガー「 ――――!?(違和感。眼の前の敵である存在に"純粋な敵意"が弱まる。寧ろ、視界橋に映るヴィエルやリオンが討伐対象と誤り、殴りかかりそうになる程の)しまッ……!(認識阻害……ティネルがやられたのはコレか……!クソ、術が脳を支配する前に仕留めるッ!!) ボ ォウ ッ (蒼炎を右腕から生身へ移動、焼け付くような痛みで思考のブレを抑制し、 地を踏み砕いて02との交差領域へ。0距離から最速のワンインチパンチを繰り出そうとする) 」
――――― 認識が甘かった、その一言に尽きる。
レギュレイターに向けられた"洗脳"は二重である。
一つは02の権能による脳支配、思考、認識の操作。
二つ目の洗脳は、ウィリアム・
ディミトリアスによる"舞台装置"による"無意識の支配"である。
ティネルへ、執政官に対する疑念を抱かせないよう仕向けた細工然り。
第8を中心に懐柔しエドガーの怒りを焚き付けたのもまた然り。
そして、ダメ押しに一つ ――――――
――――いけませんよ、それは"紳士的ではない"
エドガー「 ―――――――― 。 ( ) は? (その声、姿を忘れられようはずもない) 」
02へ向けられた拳が"コンマ数秒"停止した。
あと数ミリで側頭部を捉え頭蓋を破壊する寸前、水中に沈んだかのように自身を含む一切の歯間が散漫に流れるかのように錯覚する。
敵対象の向こう側にある者の姿を見た――――――
セイン「(王室にかけられたラステルムの国旗、それを暖簾のように押しのけ一人の青年が姿を表す。その面影は、ヴィエル、リオンにとっても忘れがたい、英雄の面影)――――― 久しいですね。まずは話し合いませんか…… あなたは敵であっても言葉を聞けるぐらいには紳士だったでしょう。 」
『無意識』が何よりも早くエドガーから思考を奪う。
眼の前のセインの所作、動作、纏う雰囲気、印象……
それらが本人と一致する……否、『本人の肉体』であればこそ―――――
エドガー「 ( ) ――――――。( 本物。 )―――――――――――――― (双眸に移る影は、在りし日の面影と重なり"蒼い日々"の情景が0.002秒の間に駆け抜ける。そこに要する時間は―――――――) っぜ……… (権能のダメ押しによる三重洗脳には、充分過ぎる刹那が発生した) 」
02《 シュナイム 》「 パ シ ッ (弾き飛んだアサルトライフルを再びその手に受け止めて、多大な隙が生じたエドガーへ更にその銃口を突きつける) ほらほらぁ~ん…♪どうしたのかしらぁ~ん? 」
エドガー「――――― ハッ (詰み。銃口を突きつけられ主導権を握られる。正常な思考が損なわれ、親友の面影で取り乱した今の彼では……) ガ クッ (膝が砕ける、平衡感覚を失い、"権能"が徐々に浸透していく――――) 」
セイ■「――――――仲間とは得難いものだな、『ボガード』(本人の肉体であっても尚滲み出る思考の"歪"。それが笑みとして出力され、汚染物質を沈め沼を地熱で煮詰めたような、熱の伴う暗黒へ瞳が染まり堕ちる)―――――意趣返しだ、噛みしめると良いぞ野良犬 」
エドガー「 しまッッ――――――――( 権能侵入から 『脳内時間1分経過』 思考の白紙化 識別能力の麻痺 認識描き替え 02の権能が、思考を満たしていく ) 」
セイ■ / アルベルト「――――協力感謝するよ、同志(セインの荷姿、否、セインの肉体そのものである存在から"音声"が発せられ、白々しく微笑み紳士的所作で拍手を送る)――――2年前、彼のせいで"グレースカイ"は実現し得なかった。彼が共通の敵として諸君らの目の前に現れたのは、不幸中の幸いだったな 」
02《 シュナイム 》「 ク ス ク ス ク ス … ♪ あぁらどういたしましてぇん。アテクシとしてもねぇ…こぉんないい男を手籠めにできるなんて冥利尽きるものよぉん❤(セイ■と並び立ちマスクの内側にて愉悦にほくそ笑んでいる) 」
リオン「ッ……?!(あの者…いったい、なにが――――ッ!)(女王の傍を維持したまま、愕然と崩れるエドガーに目を見張る) 」
エドガー「 カ ツ ン (平衡感覚の麻痺。02の権能に支配され、正面から散弾銃を食らったかの如く仰け反り、崩れ落ちていく―――)( <ドボン> 倒れた肉体は、思考を満たす権能の具現、冷たく淀んだ海水の中へ沈んだ ) ジッ (携帯端末がジャケットのポケットから先んじて床に堕ち、それを追うように床へ倒れ込む) 」
知らない寝具、知らない家具、知らない天井、壁……知らない誰かが映った写真達。
"誰"かの家にやせ細った少年は佇んでいた。
テラスから見える景色はただの黒一色、部屋に照明はなく、テレビの映すやかましい砂嵐だけが唯一動く景色だ。
痩せこけた少年「………………。(膝まで裾が届き、袖を何重にも折り曲げたボロ生地のシャツを裸体の上に直接羽織っているだけ。清潔感のある部屋と乖離した姿に違和感を感じつつ、テレビに歩み寄る)
ブラウン管テレビ「 ザ ザ ザ ァァァ 」
[チャンネルを……] ▶ 変える / 変えない
ダイヤルをひねった。
テレビに映る景色は変わらない代わりに、彼を囲う部屋が原型を失い、色彩を失った草原が移る。
舞う火の粉、地を覆う無数の死、自身の命の原点である女性が、自分と思しき子を抱いたまま息絶えた景色。
何度も瞼の裏で繰り返された、悪夢
"場面"が代わり、傍観者だった少年は身なりを整えた姿で長テーブルの前に腰掛けていた。
眼の前には、全身を鎧のような筋肉と骨で覆う男が腰掛けていた。
気のせいだろうか、自分の知るその男は、もっと老けていた筈だった
『 "対万象の炎" 神魔異界の類、世の理の外にあるものであろうとその力は届く、故に魔炎と呼び我々や政府が追い求めていた 』
『 君の母、ガートルードはその炎で何を焼くつもりだったのか………なんにせよ、地上に存在してはならない炎だ。もっとも、それは正しい所有者が使役してこそ世界を焼き尽くす火種と成り得る 』
『 現状、君に移植された腕は"対万象の炎"のみを"簡易術式"として宿した"記録媒体"でしかない。魔術適性0である君が、唯一それを異能として使用できるのはその腕のお陰であり、それは我々にとって脅威とならない。俺はそう判断した、部下にはそれで納得させる。君を自由にしてやる、その後の生活も陰ながらだが絶対に守ってみせる 』
じゃあ…… 母さんはその炎を持っているから政府に殺されたって事ですか
『 ………。すまない、我々が君の母君に気付くのが……探し出すのがもっと早ければ…… 』
『 記憶を、母君の記憶を消そうか。望むなら一般人として、何もかも忘れて普通の子供のように過ごせるよう手配しよう。その腕もただの義手に付け替えて 』
いや…… このままでいい、それがいい。
壊すことしか知らない、母さんのように誰かを守る事も知らないこの炎は……僕と同じです。
僕/俺は、この炎なんだ。
俺の世界はもう帰ってこない だから、その炎で母さんを奪った"誰か"の世界を……焼き尽くす方法を教えてくれ
少年「――――――(ずっと忘れていた、これが 僕/俺 の原点だ。 だが何故?何がこの炎を鈍くさせた……?)」
ブラウン管テレビ「 ザ ザ ザ ァァァ 」
[チャンネルを……] ▶ 変える / 変えない
ダイヤルをひねった。
身なりを整え少しだけ背が伸びた少年を囲う景色は色褪せた砂漠と、
三方を豪華絢爛な装飾で囲われた城が絵の具が滲んだかのように入り乱れる景色
『 生き方も奪い方も教えた。だがそれだけだ……俺が本当に、お前に教えたかったのは…… いや、いい。お前をここの養子にする……後は、お前次第だ 』
『 エリザベス・ヴァンシュタイン。我が名を声高らかに叫び天を裂くかのごとく腕を突き上げろ。さすれば紅月は昼夜を引き裂き、私は暗夜を齎すだろうッ!! ゲホッ ゲホッ ちょ……この紅茶の砂糖溶けてないんだけど……ッ タンマタンマ!今の取り直し!! 』
『 わっぴーおいたん! † HAPPY DEATH DAY † 』
『―――――君の母が本当に愛を以てその腕を授けたか率直に疑問だね。 その腕で誰かの手を繋ぎ止められるかい? 抱きしめて愛を誓えるか? かつて自分にあった権利を我が子から奪う親というのはどうかと思うけどね。 私の妹を見て……自分の姿を重ねたなら"私の言葉を肯定した"ということだよ 』
少年「―――――師から壊す術だけを奪った。その先で出会った"新たな"家族は、皮肉にも肉親から与えられた"壊す術"に呪われ、囚われていた。 だがそれは不幸だろうか? 奪い、虐げるばかりのこの世界で……何一つ抗う力を持たない方が遥かに…………」
[チャンネルを……] ▶ 変える / 変えない / 電源を切る
ダイヤルをひねった。
もう自分より背が高い、青年となった自分の背が目の前に現れた。彼は自分の名前を名乗れずにいた。
ファミリエのアジト、街、軍の支部、
寄宿舎、情景が目まぐるしく変わる中で
彼は一度だって"顔が黒く塗り潰された友人達"に本当の名前を打ち明けなかった。
親しげに言葉を交わす友人達の顔は、
青年となった自分の顔は黒く塗り潰されていた。談笑 / 嘲笑 が脳を揺さぶる。
ラ■グ「■■■■■■■(その黒の向こうにあるのは悪意かもしれない その黒の奥にある嘆きを世界は救わない) 」
ルミ■「■■■■■■■■(その黒の裏に隠れた嘆きを、世界は悪と定め断ずるかもしれない) 」
ヴォ■ド「■■■■■■■(いつか、その黒の裏に過去は追いすがるかもしれない) 」
エ■ィ「■■■■■■■■(いつかこの偽りの笑顔が本当になる時、世界は焦土で、自分はその中心に佇んでいるのかもしれない) 」
セ■ン「■■■■■■■■■(この亡骸の目指した未来を、世界は否定するのかもしれない。いや……今こうして、踏み躙られている) 」
02「■■■■■■■■■■■(彼はマスクの裏から黒を覗かせ微笑んだ。"それらは真実"だと、まだ腕の中で燻っている炎が真実だと肯定する) 」
サ■タ「■■■■■■■■(お前が焼いた、お前が無慈悲に、一方的に。義も悪も、等しく憎いと憎悪のままに蒼炎を振りまき無意味にしたのだと責め立てる) 」
[チャンネルを……] 変える / 変えない / ▷電源を切る
―――――――――情景は家に戻った。
変わらず外は黒く、黎明は訪れず……テレビが明かりを失った事で世界は暗転した。
少年「…………(そうだ。母が、故郷が[人の営み / 戦争]で焼かれてから、その火種が己の心臓として鼓動していたんだ。全てが悪かった、火薬庫にある物をありったけ体に巻きつけてどこでもいいから、激情に身を任せて投げ入れたかった少年の面影は、今でも影の中に潜んでいる。"彼"から託された物さえ、本当は善悪関係なく焼きたかったのではないか? ) 」
02『 それでいいじゃない? いつだって どんな時だって あなたの周りにいるのは敵でも味方でもなくって 等しく焼かれるべきこの世界の一部なんだから 』
少年「―――――そうだ。だから僕は開くんだ、ここに地獄を。ここが地獄であれば……だって、この世界が地獄だから母さんはもう……救われたんだって納得できるんだ。だから………だから燃やすしか知らないこの腕は―――――――(テレビの光源も失われ、黒く染まった場所を当てもなく彷徨う。 何処へ向かうでもなく、何処に向かってもよく、青く燃え燻る炎を腕に宿し……) 」
全部燃やしてしまえ
カシャンッ
――――――――― 本当に? 本当にその腕は燃やすことしか知らない?
何かに躓いた、もう流れない涙を拭うふりをしながら起き上がり振り向く。
そこには見覚えのある端末が光を放ち……ある旋律を奏でていた、ある歌声を鳴らしていた。
画面に映し出される曲目は………
□□□□「―――――どうしたのっ また道に迷っちゃった? 」
端末の側に革靴の爪先があった。
柔らかな風に靡く首まで伸びたブロンドの頭髪、前髪を留めるヘアバンド、翡翠色の丸く済んだ瞳。
顔をあげると、ロングスカートをふわりと揺らし、見覚えのある少女が上体を方向け、首を僅かに傾げ微笑みかけていた。
木漏れ日のように優しく照らすようなその笑みを知らない、今までの人生で一度も経験した事がない……
―――――"美しいものだった"事をよく覚えている。
□□□□「 ラステルムに引っ越してきたんだって聞いた時はほんっとに驚いたよ わぁっピアノ買ったんだ!マンションにこういうの置いてあるの始めて見たー! (声を弾ませ軽快な足取りで少女は暗闇の中を進んでいく。彼女が歩んだっ場所から、色彩が戻り"部屋の情景"が取り戻されていく。 彼女が駆け寄った先には言葉の通り、グランドピアノが寝息を立て、埃を被って居た) 」
少年「………。………「 」(無意識に名前を呼んでいた。だがそれを耳が、心が認識することを拒んでいる。ソレを思い出せば自分は"炎"でいられなくなる予感があった。せっかく肯定できた、誰とも手を繋がなくとも、世界を焼く装置である己を思い出すことができたのに……―――――) 」
――――――望む地獄に色は要らない、それは個性を与え、個人を識別し、意味を齎し……
ただ無心に世界を憎悪し焼く炎であることを否定するからだ。
それなのに、それなのに彼女の存在は"黎明"を連れてきてしまう。
緋色に染まった朝焼けが陽光で空を染め上げ、それを背に後ろ手を組む少女が微笑んだ。
あの太陽より泣きたくなるほど眩しい、暖かな優しい微笑みを浮かべた。
□□□□「 もう結構前なんだね、この曲。 初めて君が約束守ってくれた曲、私のために書いてくれて、私のために弾いてくれて、私が歌った曲。 お互いさっ あの時はピアノにブランクがあったし、私もこう……緊張しちゃって上手く歌えなかったけど。 うん、楽しかった 」
『今私のために曲を書いたって…!? え、聞きたいんですけど!そんなの作ってたなんて私聞いてないけど!?』
少年「 違う できないんだ (視界が濡れてぼやける。直視できない、するわけにはいかない。今の自分の魂にその資格はない) 」
『――――約束ね。絶対だよ! あ、もちろん急かしたりもしないから安心して!ただー…そうだねぇ、私がお婆ちゃんになるまでには聞きたいかなぁ~…』
少年「 できないんだ 僕は……ッ 俺はッ! 俺の手は……(蒼炎が燻る銀の腕を背に回し、後ずさる。 触れてはいけない 汚してはいけない 憧れであればこそ、陽の光から逃げ続けなければ…… だって ) 」
『曲っていうのが普通はどのくらいで完成するのかわからないから、とりあえず最低ラインを引いておこうと思って。さすがに怒るからね?お婆ちゃんになるまでに曲できなかったら!グーだぞグー!』
エドガー「 世界を燃やす為だけに生まれた薪でしかないんだッ!! 」
( 「 」してしまったから )
□□□□「 (両手でエドガーの銀の腕を包み込む。白く、小さな手は銀の手を覆うには小さすぎる。それでも、彼の手に宿る蒼炎はそれだけで埋め尽くせる程度のものだた。 何も、燃やせてなどいない )――――――。 そんなことないよ 」
―――――黎明が訪れる。
暗闇に吠え猛る獣の業火はない、あの日荒れ地に彷徨う、魔女の腕を縫い付けられた子鬼はいない。
まだ何一つ失われていなかったラステルムの街が、蒼の時代と緋色の記憶が溶け合った桜色で霞み、陽光と穏やかな南風が吹き抜けた
エドガー「(テラス席に佇み業火を失った自身の右腕に言葉を失う。 無くしてしまった / 開放された 熱の残り香さえなく、耳元を優しい旋律が撫でていく)………。………………( 忘れずとも過ぎ去ってしまった。世を呪い慟哭した乾きを。 思い出せた、否定し続けた混じり気のない美しい心が、実在していた事を) 」
□□□□「(両手を離し、口元に拳を当て八字眉で苦笑する。鈴の鳴るような、それでいて弾む雫のような透き通った声で)―――――まったく。人のお世話を焼くのは良いけど自分のことはからっきしなんだから。『二回目』だよ? こうやって叱ってあげるのは 」
エドガー「(目元腕で多い、俯いて乾いた笑いが溢れる。 認めなかった、セインの時も、エクレイルの時も……儀式として流しておけばよかったものがとめどなく溢れる)そうだな……そうだよな、いつまでも手を引いてもらってばかりだ。 だから―――――― 許してくれ、何度も見失うから…… この戦いの後も、この先も、何度だって"手を引いてもらう"事を。 」
□□□□「えぇ~……―――――はぁっ (どうしようかなとでも言いたげに後ろ手を組んで上体を左右にゆらゆらと揺らしていたが、そうやって相手の反応を楽しみ終えると、変わらぬ笑顔で顔を上げ)しょうがないなぁっ! その代わりちゃんと追いついてよねっ ほらっ! (小指を立て、真っ直ぐ伸ばす) 」
エドガー「……ああ。 "また"約束するよ、シンディ ( ゆびきりげんまん 生まれてから母と、姪と、柄にもなく親友と交わしてきた。 ようやく、触れることが出来た ) 」
" 繰り返される今に未来はあるか? "
後に何度も問われる課題 今なら、いや昔から何度だってこう答えていただろう
『 繰り返しているんだ。何よりも大切な今この瞬間しか、生きられないのだから 』
セイ■「 。(左胸部に風穴が空いていた。そこに至るまでの刹那に、油断も慢心もなかった。息の根を止めるまで、セイン・マーカスの肉体を維持し続ける心づもりでいた。それでも)………おや、どうしたことかねこれは(埋め込んだ第二の心臓が、焼失している。開いた風穴に目線を落とし、ようやく事実を認識すると) ガ クッ (力なく両膝を着いた) まずいな……撤退を推奨するよ、シタナガくん。しくじったらしい 」
02《 シュナイム 》「………"しくじった"…?いったい、何を言っているの?アテクシの"権能"はぜぇ~~~~ったいなのよ?しくじることなんて――――(そう言って、エドガーの方へ振り向いた、次の瞬間――――) 」
エドガー「 ガク ン (ほぼ同時だった。仰向けに倒れ込む寸前、その刹那の間に自我を"引きずり上げられ"、思考を取り戻し本能の命ずるまま拳を突き出し、高圧縮の蒼炎を放つ。セインの面影を嘯いた虚像を貫き…)……ゴキッッ なるほどな、対策は不可能だ。どういうわけか俺は何もなかったが(首に手を添え、上体を越し骨を鳴らした) 」
02《 シュナイム 》「…………嘘、でしょ…ッ……?……ぅ、ぅ、うそ…嘘よ…ォ…!な、なんで自我を保っていられるの…!?アテクシの"権能"は、生きている人間ならばその効果が絶大的に働くものなのよぉ!!?このッ……このォッ…!いうことをッ、聞きなさいッ、よォ!!(何度も紫炎を灯す銃口を突きつける。もはや実弾を発砲した方がいいくらいだが、それよりも"権能"による支配を優先的に試みた。それでも――――) 」
エドガー「―――――権能が、力が、怒りが……全てを支配できると思うのなら、俺に見せてみろ(目を逸らさず、逸ることなく一歩一歩、確実に02へ距離を詰め進んでいく。 権能は命中している、そして脳を支配しようと干渉している。しかし……)―――――俺を支配できるのは、ここに焼き付いた約束だけだ……!(自身の心臓を親指で指し、銀狼は眼光に牙を宿した眼で02<獲物>の姿を捉え、更に一歩距離を詰める) 」
02《 シュナイム 》「 ヒ ィ゛ ッ゛ ! ? (……け…"権能"が効かないなんて…ッ…?!こんなこと、今の今まで一度もなかったのに……!なんなの……こいつなんなのよォ…!!))(銀狼の鋭い眼光に突き刺され、紫炎が掻き消されるとともに思わず退いてしまう) 」
リオン「……!(なんという……不屈の意志…ッ!あれが……あれこそが…本物の、レギュレイターのあるべき姿なのか――――!)(洗脳を跳ね返すエドガーの進撃に、不安が渦巻く眼差しに光が灯った) 」
02《 シュナイム 》「…くッ……ふ、ふ…――――― ふ ざ け る ん じ ゃ な い わ よ ォ ッ ! ! ! ( チ ャ キ リ ィ ッ )(アサルトライフルを突きつける。その銃口には"権能"のものとは違う光が既に蓄えられており――――) “閃滅”(シュプリンガ) ァ ッ ! ! ! ( ズ オ ン ッ ! ! ! )(薔薇色の閃光として、一直線に放たれた) 」
エドガー「 スッ ゴ ン ッッ (重金属による打撃音。上体を僅かに傾け、"初動の細い状態"にある閃滅に裏拳を当て軌道をズラす) キュ ォ…… ド ォウッッ (背後が爆ぜ炎が広がる。冷めた目で02を視界から外さず、歩速を変えず歩み寄り)―――――今までの全員の中でも特に酷い腕だ。他者の心の影に"隠れ" 味方同士の情という隙間に"潜み" 自ら手を汚した事は支配下に置いた数より遥かに少ない。 そんなに怖いか? 手前で戦うのは……!(踏み砕くような前蹴りを02の顔面へ向けほぼ密着状態から放つ) 」
02《 シュナイム 》「なッ゛――――― ゴ ブ ゥ゛ ッ゛ ! ! ! ( メ ギ ャ ア ア ア ア ァ ァ ア ア ア ン ッ ! ! ! )(神速的な速さで繰り出された蹴りにガスマスクはおろか顔面の骨格まで軋み上げるようにへし折れて、そのまま柱へと強く激突した) ガ ラ ガ ラ … ッ … … ゴ、フ……!よ、よくも……ォ… よくも、レディの顔を…蹴ったわねェ……!?( ゴ ッ ギ ィ ッ )(不死身であるが故の復帰。首があらぬ方角に曲がっていようとも、それを無理矢理手で捩じり回すことで元に戻る) 」
02《 シュナイム 》「(瓦礫を押しのけて、再びエドガーの前に移動する)……いいわ……そこまで言うのなら…アテクシの本当の力……見せてあげちゃうんだからッ……――――――― ジ ャ ラ ァ … ! (鎖に繋がれた『ユナイタルウォッチ』が顔を出す――――!) 」
02《 シュナイム 》「――――― 変 身 ――――― 」
ド オ ゥ ッ ! ! (懐中時計を起動した02。時計より迸る神々しくも歪な閃光が、彼の身を包み込む。周囲に散りばめられた星座の空間。点と点の位置が光の一線によって結ばれて、描かれた星座から装甲が現出し、その全身に装着されていく)
02《 シュナイム 》【タウラス】「 キ ュ ィ ン ッ (雄牛座の星座が重なると共に顕現されたのは、巨体を誇る緑色のボディに、頭部と肩から牛角が生えた機体だった) おーーーーーーほほほほほほほほッ♪ 美しさを犠牲にして得たこの圧倒的な力《パァワァ》で、生意気な子猫ちゃんをプチリッ♪と潰しちゃうわよぉぉおおん!!!(ハンマーの如き剛腕を誇る両腕を鳴らして威嚇する) 」
エドガー「へぇ、レディーを強調するんだ。隠れ蓑を用意するだけが得手だと思ったが気合入った奴用意するじゃねえか(口橋を釣り上げ、腰に手を当てて余裕を見せると) キュ ッ (脇を締め、両拳を目線の高さまで上げボクサーの構えに以降。背後へは一瞥をやらず背腰に声を張り上げる) 執政官!ゴングを!!ちっとはこいつを見直してやる、その " 男気 " には応えてやらねえとなァ!! 」
リオン「……!レギュレイターの隊員!私はこれより女王を連れてこの城を飛び出す!たとえ王国が陥落することになろうとも…―――(ここで、傍にいるヴィエルと目が合い、優しい眼差しを送る)―――……『希望』が潰えぬ限り、王権は何度でも立ち直る!!だから…―――――(そう言うとヴィエルを抱き上げ―――――) 」
リオン「――――― 存分に戦えッ!!お前たちを、"信じている"ッ!!!( ガ シ ャ ア ァ ァ ア ン ッ ! ! )(そのまま背中からステンドガラスを突き破り、城外へと脱走した) 」
02《 シュナイム 》【タウラス】「……ハッ…!しまった、女王が逃げ―――――(ヴィエルを連れ出したリオンによそ見してしまうが…) 」
エドガー「キュ ッ フ ッ (閃光そのものとなったエドガーの姿が02の間合いより内側、その巨大な鉄腕では殴るのに狭すぎる懐にまで接近していた。"音"が遥かに遅れやっと追いついた頃、"完全に姿を取り戻した銀狼"が、蒼炎を腕に纏わせ、 極光によって世界から色が失われる) 余所見するなよ、さっき"鳴った"ぜ (刹那。 02の権能有効時間よりも"遥かに早く"右ストレートを放ち―――――) 」
フ ッ ―――――――― キ" ュ ボ ォ ァ アッッッッ (世界が暗転、一瞬、ブラックアウトした暗幕の中で一番星がひらめいたかと思えば、 色を取り戻した世界が蒼と黄金の炎一色に染まる。その渦の中心には、02のユナイタルへ『ブースト抜き』に灼熱の鉄拳を放つエドガーの姿があった)
02《 シュナイム 》【タウラス】「 ン ブ ウ゛ ウ゛ ウ゛ ウ゛ ウ゛ ウ゛ ゥ゛ ゥ゛ ゥ゛ ッ゛ ! ! ? (鋼さえも穿つ重い一撃が、屈強な装甲を大きく凹ませる) い…ぃ゛……たぁ……?!こ、これがまさか……アンタたちのいう"ブースト"…ッ……!?(いや、違う…ッ…?!ガジェットはない……赤い光らしきものも……共有データに当るものが、まるで見られない…!まさか…こいつ……ッ…)―――――― "素"で…ッ……!!?(愕然に声を荒げた) 」
エドガー「フラついてるんじゃねえよ、まだ禄に温まってないんだ(再び構え直すとステップを踏み) ワンサイドゲームじゃ客も湧かねえだろ、そら(かかってこいと言わんばかりに手首をひねり挑発する) 」
02《 シュナイム 》【タウラス】「調子に乗んじゃないわよおおおおおおおぉぉぉぉぉッ!!!!!( グ ゥ オ ォ ン ッ ! ! ! )(その挑発に乗り、剛腕を振り抜く。それはまるで戦車そのものが新幹線の速度で迫るような勢いであった) 」
エドガー「 ゴ ガリガリガリガリギャリリリリイィィィイ―――――(右腕をくの字に折り手の甲で剛腕を受け止めつつ、軌道を変え火花を散らしながら受け流す。同時に、残る左腕に蒼炎を灯し……) パワーだけだ。 (空間を歪曲させる左フックを、タラウスのの中でも最も細い部位である脇腹にねじ込みにかかる) 」
02《 シュナイム 》【タウラス】「 ぐ ぎ ぃ゛ ぃ゛ ぃ゛ い゛ い゛ い゛ い゛ い゛ い゛ ん゛ ッ゛ ! ! ? ? ( ボ ッ ギ ィ ン ッ ! ! )(わき腹が悲鳴を上げ、また一つ大きな亀裂が走る。あと一撃叩き込まれれば沈む程に――――)もう、許さない……許さないわよおおおおおおおおおぉぉぉぉおおおおぉぉぉおおおおおッ!!!( ド ガ シ ョ ン ッ ――――― )(剛腕の外装…そのハッチが展開され、内蔵されたミサイルポッドが顔を出すと―――) 」
02《 シュナイム 》【タウラス】「―――― 消し飛びなさぁああいッ!!!( ヒ ュ ド ド ド ド ド ド ド ォ ァ ッ ! ! ! )(――― 一斉射出。無数のホーミングミサイルがエドガーを追跡しつつ、城内で次々と爆炎を巻き起こしていく。だが、それだけは終わらず―――) 」
02《 シュナイム 》【タウラス】「アンタみたいなッ!!アンタみたいな生意気な奴はァァァアアアッ!!!このアテクシがァァァアアアァァアアアアァァァアアアッ!!!!!!( ド オ ォ ゥ ン ッ ! ! )(次々と上がる火柱の中で、両肩から生え出でた牛角、その先端を前方へと突き出した態勢のまま、爆発的な進撃。狙いは爆炎に呑まれているエドガーただ一人。彼の心臓を刺し貫かんと、迫る―――――!) 」
エドガー「(ミサイル群が迫る中、爆炎に飲まれ姿が見えなくなるまで眼前の巨漢から目を離さず立ち続ける。紅蓮に包まれる寸前、右腕に手を添え) キュ イ イ ン (駆動音が灼熱の中から木霊した) 」
エドガー「 オ ォ ゥ ン (不動、銀の腕に力を込めるだけ、ただそれだけで全身に纏った蒼のオーラ<気功>が円形状に広がり、熱を上回る熱が、燃え広がるベールを消し飛ばした)――――――タイムオーバー……。試合終了、お引取り願おうか 」
エドガー「 ギ ィ ン ッ (余りにも呆気ない、高域の金属音が静けさを取り戻した王室に反響する。 その音がなるよりも前から、"既に拳を突き出した姿"でシュナイムとすれ違い、彼の背後で硬直しており) トン… トン…… パチ ン (一歩、二歩、足を天井へ翳した指を鳴らすと) ボ グ オッッ (タラウスの胸部に当たる部位に、殆ど胴体が焼失したといっても過言ではない"大穴"が、蒼炎の残滓を灯した状態で開いた) 」
セイ■ / アルベルト「―――――………(その顛末を見届け、冷ややかな笑みが溢れる。)予測範囲外ではあるが無駄だ……貴様が釣れるという前提なら、元よりヴィエル女王を取り逃すことも想定済み。だが、奴等の座標をアラタへ送信さえすれば、貴様はまた…………(埋め込んだ心臓の予備バッテリーを振り絞り、ポケットに忍ばせた端末を取り出そうとする。『強制覚醒』と表示されたボタンへ親指を添えようとするが……) 」
02《 シュナイム 》【タウラス】「 オ゛ ッ゛ (前のめりに突き出した身体。その胴体に開かれた風穴…装甲は焼け落ちていて、今も尚空洞部分が赤熱を帯びていた。心臓を失った自分には似つかわしくない表現だが、「心臓が焦げるような」激痛が神経を伝って全身に迸り、今――――――)―――― ゴ フ ァ゛ ッ゛ ! ! (亀裂部が発光。全身の装甲が熱暴走によって膨張し)
―――― ボ ッ ガ ア゛ ア゛ ア゛ ア゛ ア゛ ア゛ ア゛ ア゛ ア゛ ア゛ ァ゛ ァ゛ ァ゛ ァ゛ ァ゛ ァ゛ ン゛ ッ゛ ! ! ! ! (爆発四散したのだった――――)
―――― パ キ ャ ァ ン ッ (爆発の中で弾け飛んだプロトユナイタルウォッチが、空中にて砕け散った―――)
セイ■ / アルベルト「 グギ ン ………(自身の左腕が、意思に反して自らの首根っこを鷲掴みにしおよそ己に対する行為とは思えないほどの握力で締め上げ)か"………ッ!?(暴走……!?馬鹿な、何のバグだ……違う、これは、この肉体への適合は"本人"しか ……!) か、はは……はははは……素晴らしい、絆!!証明不可能な奇跡……友の熱に触発されたか"セイン・マーカス"………!! ハ、ハハ…… ゴ キ ン ("主導権"を得た右腕が加わり、骨の折れる鈍い音が反響した。"埋め込まれた"脳からの伝達を失った遺体は、糸を切れたかのように崩れ落ちる……) 」
エドガー「――――――(腕を真横に振り抜き蒼炎を振り払う。 セインの死の尊厳を奪った悪意もまた、"友"の手で自ら葬られた事を悟ると振り向かず)……。相手より
リングを破壊しやがって……(先の爆発で王室が長くないと判断、出口へ向かって堂々とその場を後にしようと歩きだす) 」
だが、彼はそこで足を止めた。
背後に感じた気配…空席となった玉座に、何者かが居座っている。
それはエドガー自身にとって忘れることのない、因縁の敵―――――
01《 アオン 》「 よお、また会うたな 兄ちゃん 」
― ラステルム王国 市街地 ―
ヒロ「………(傷だらけの身体で、千砂都を担ぎながら病院に向かっている)…かのんちゃん、君は死してなお彼女たちの事を…そして、俺にも…(千砂都のドライバーを破壊した時のことを思い出し) 」
ヒロ「君は、強く、そして…仲間思いだ。俺は… 」
そんな君に、嫉妬していたのかもしれない。
(回想)嵐千砂都「……(市街地を歩いている) 」
(回想)ヒロ「…ん(歩いている千砂都を見て)あっ、ちぃちゃ…(彼女に声をかけようとするが…) 」
(回想)澁谷かのん「…ちぃちゃん!(千砂都の近くに駆け寄り、談笑をしながら歩き始める) 」
(回想)ヒロ「…!…(二人の様子を見て声をかけれずに、上げた手を降ろし、二人を見送ることしかできなかった…) 」
……二人の関係はそれとなく聞いていた。…”澁谷かのん”…君は彼女にとって欠かせない存在だった。死してもなお…
………私なんて、どうだっていい。かのんちゃんを救えなかった私に、救われる価値なんてないのだから…ッ……!
……私の前で……――――― か の ん ち ゃ ん 《 そ の 名 》 を 気 や す く 呼 ぶ な ッ ! ! !
俺の中で、ちぃちゃんは大事な存在だ。だが、彼女の中では?彼女の一番は……
今も昔も…”澁谷かのん”………
ヒロ「……結局、この気持ちは…報われることはない…か… 」
ヒロ「………(気絶した千砂都を横目で見る)………だが、俺の気持ちは変わらない。どんなに報われないものでも…(病院が目に入る)…着いた、か…… 」
ヒロ「………着いた、病院だ…(中に入る)…レギュレイター・第1兵団のヒロだ。第二兵団副団長…嵐………千…さ…t………(彼女をそっと下ろした瞬間、戦闘の傷や今まで彼女を気にかけていたことに対する心労も相まって床に倒れ伏す) 」
― ラステルム王国・赤十字病院 ―
ねぇ、ヒロ君。私の為にさ ――――――――――― " 死んでよ "
ザシュッ!!!!!!!!!!
ヒロ「…っ!!(病室のベッドで眠っていたが、うなされるようにガバッと起き上がる)ハァ、ハァ、ハァ…! 」
葉月恋「……!(唐突に起き上がったヒロを見て驚いた様子で彼に近づく)…き、気が付いたのですね… 」
ヒロ「こ、ここは…(あたりを見渡し)俺は確か、ちぃちゃんを運んで……(恋を見て)………恋ちゃん……? 」
葉月恋「千砂都さんなら今病室で治療中です……まだ、意識は取り戻してないようで………あなたも数日間眠っていたのですよ… 」
ヒロ「そ、そんなに……(額に手を当てる) 」
葉月恋「…‥一体、千砂都さんとの間に何があったのですか?そんなに傷だらけになるほどのことが…あったのですか? 」
ヒロ「……………あぁ。話すと、長くなるが…… 」
葉月恋「そ、そんなことがあったとは……(ヒロの話を聞いて)かのんさんは、レギュレイターに殺された……そう言うほどの事……私たちの知らない何かが、千砂都さんに降りかかった。そう、考えるしかないですね… 」
ヒロ「ゼレオロス、奴らの力に魂を売るほどの事……誰が、あの子にそんなことを吹き込んだのか……目を覚ましてから聞いてみるしかないな… 」
葉月恋「千砂都さんが、答えてくださるかですね……(どこか浮かない表情で) 」
ヒロ「………そこだな。(恋の様子を見て)…どうかしたか? 」
葉月恋「………っ(ヒロの問いかけに対してしばらく黙り込む)……あの、ヒロさん…実は、メイさん達のことなのですが…… 」
ヒロ「なんだって…!?"奴"がまた現れて………それで、メイちゃん、四季ちゃん、夏美ちゃんが………(恋から事の経緯を聞き、驚きの表情を見せる)それで、他の2人は、今…? 」
葉月恋「あぁ…私と一緒にこちらまで来て、今は3人のお見舞いに行っております………(後ろを見て)………力不足です。後輩の1人も守れないで…何が会長ですか…! 」
ヒロ「…‥君はメディックだ。結果的に3人の命は救われたんだろう?その時点で君は………君がなすべき事で後輩を守ることができた。俺は…そう言えると思う 」
葉月恋「……!…ありがとうございます。優しいのですね…(ぺこりと頭を下げる) 」
ヒロ「……君の役目は戦って誰かを守ることではない、戦って負傷した誰かを救うことだ…今回のことをあまり深く考えすぎちゃいけない‥. 」
葉月恋「………ありがとうございます(ペコリと頭を下げ)……飲み物、買ってきましょうか。お茶でいいでしょうか…? 」
ヒロ「……あぁ、大丈夫だ。 」
葉月恋「…では、行ってまいります(病室を出る)………(しばらく立ち止まり、目元を腕で拭ってから歩き出す) 」
― エフィリア王国・カーネーステーション・プラットホーム ―
ガトウ「( ガ ッ ギ ィ ィ イ ン ッ ! )――――― ズ ギ ャ ギ ャ ギ ャ ァ ァ ア … ッ … !(被害を被っている高架線の上――そこでは既に何者かと交戦状態にあった。顔面を鉄仮面で覆い、数多の武具を内包した防具服のフル装備でありながら、対峙する敵を前に苦戦を強いられていた。それもそのはず。何故なら相手は――――)―――― 何の真似だ…「テメェら」……ッ……? 」
E.Q.「―――― はて、何のことでしょうか?「我々」はあくまでも『上』の命に従い、あなた方の始末を行っているだけなのですが?(心底不思議な眼差しを浮かべては、赤縁の眼鏡をくいっとあげて、女性はくすりとほくそ笑んだ) 」
第8調査兵団・メカニック ―――『 イーキュン・アルスバニェル・クアエシトール( 通称:[[E.Q.]] ) 』
腹筋崩壊太郎「ギギッ……ギュゥ……団……長……もーし、わケ……ござ…バチッ、チ……ま……――――(その女性の足元には、既に全身の8割が損傷しショートした部位から火花を散らしている筋肉質のアンドロイドが転がっていた―――) 」
ガトウ「どういうことだって聞いてんだよッ……「俺たち」は何も聞かされちゃいねェ。 テメェラの頭がイカれてるだけじゃねえのか……いや、そもそもそお前は本部でも異端者で有名だったが……ここまでトチ狂ってたなんてな…ッ……(腹筋崩壊太郎……ッ……――――)(彼女の足元に転がる仲間の無残な姿に歯ぎしりする) 」
レヴィ「―――団長ッ!!(ギャギギィィインッ!!)(大型のメイスを象るガジェット・粉砕《 シュナイデン 》を豪快に振り回し、敵対している「アラタ武装兵団」を牽制していた) 報告に上がっていた敵じゃない…!こいつら……『身内』だぞっ…!?どうなってんのさ…ッ? 」
横幅が広い大柄の隊員「どうなってるんだよ、これ…!腹筋崩壊太郎が、こんな……!!それに、俺達の相手は…!!(ガトウの後ろで大鉈型のガジェットを構え、事態が呑み込めず狼狽した様子で) 」
ルグエル「然り――― それが「我等」に課せられた使命。これより、組織解体の為の粛清作戦を実行に移す!( バ ァ ン ッ ! ! )(白い制服を着こなす長身の不気味な形相を持つ男が、手にしていた大型重火器による威嚇発砲を空へと放った) 」
第6調査兵団・オペレーター ―――『 ルグエル・ウォルエ・フォイ・オーグマン 』
バド「身内だけじゃねぇ!うちのインフラもイカれちまっているぞッ!!(身の丈程の長さがある巨大レンチ型ガジェット、"テックマン"を豪快に振り回し"トロイ"を薙ぎ払う。しかし小回りが効くトロイの射撃で既に太腿、肩、耳に穴が空き、
レヴィ、ガトウと背合わせに肩で呼吸をする) 本部と連絡が付かん……どうなっている……! 」
トロイ「「「「「「「「」 命令権限5より支援要請 対人バックアップフォーメーションΔ維持 (EQを始めとするアラタ武装兵達の背後に控えつつ円陣を組み、第2調査兵団を包囲する) 」」」」」」 」
アザミ「 シ ャ キ ィ ―――――― ィ イ ン (背中合わせで防衛態勢を維持する第2調査兵団を包囲するかのように、反対側より現れ出でる。おかっぱの髪を夜風に揺らすメイドは、その背に帯びた二刀の内の一振りに手をかけた) 始末対象の「第2調査兵団」を補足。殲滅を開始します。 」
第7調査兵団・戦闘員 ―――『 彼岸咲 薊 』(ひがんざき あざみ)
E.Q.「あらまあ、異端児なんてそんな…褒めないでくださいよぉ~♪(きゃっ♪と恥ずかしそうに自分の頬に手を添える) ……でもごめんなさいね、これは私の独断ではありませんので。そういうことですので、第2調査兵団の皆様方…腹の括り時でございますよー♪み~んなまとめて、処しちゃいます♪でも、ただ蹂躙するだけでは面白みに欠けるのでぇ……パ チ ン ッ ☆(指を鳴らす。その合図を受けて、自身の背後から二つの影が更に前へと割り込んできた) 」
淀身「―――――(まず現れたのは、漆黒色の頑丈な装甲荷を見包んだ人物。中の人は恐らくレギュレイターの一般兵士だろう。だが、団長のガトウを前にしても動じることのないオーラを放ち、今まさに殴りかからん勢いで身構えている) 」
歪身「―――――(もう一方、並列する「淀身」と酷似したスーツを纏う者も同様に、ガトウを前に殺る気を帯びた態勢を維持していた。双方に共通して、その背面には動力源となるエーテルエネルギーをオーバースーツの機動力として抽出するためのチューブが剥き出しとなっていた) 」
横幅が広い大柄の隊員「ち、畜生……仲間じゃなかったのかよ……!ハロまでこっちに向かって来てる……それに、何なんだよあのスーツ……見ただけで分かる、あれは……ハッタリじゃない…… 」
E.Q.「「淀身」(よどみ)と「歪身」(ゆがみ)――― 私が造り上げた殲滅支援機。件のユナイタルに勝るとも劣らない戦闘力を誇るものです。模擬戦闘を何度も積み重ねた結果、あらゆる衝撃を吸収する高い強度性を獲得しました。核兵器は勿論、異能力や魔法…この世に遍在する力という力に対抗出来得るように調整済み。装着者はその潜在能力が20倍以上にも引き出される。"試作段階ではありますが、一般兵士でも団長格と同等の高戦闘能力を発揮できる"可能性を大いに秘めています。なので、あなた方で最終強度テストと行きましょうか☆(ウインクを飛ばす) 」
ガトウ「次から次へと……揃いも揃って俺たちの首を取りに来たか。それに、なかなか壊し甲斐のありそうな「玩具」まで連れてきやがって……ガ チ ャ コ ン ッ !(鋼鉄壁を誇る盾型ガジェット「鋼城《 ルーク 》」を突き出すように構え、包囲する面々を睨みつける)―――― おめぇらァッ!!相手が相手だが…構わず叩けッ!責任は、俺がすべて負うッ!!いけェッ!!!(雄たけぶと同時に線路上を踏みしめて、E.Q.が手繰る傀儡二体へと突撃していく) 」
レヴィ「 ニ ィ ッ ―――― あいよォ!!(それでこそウチの団長―――そう言いたげそうに口角を上げて、鈍重な武器を軽々と振り回し―――)――― て ぇ ら ァ ッ ! ! ( メ ゴ ォ ッ ! ! )(アラタ装備兵を殴り飛ばしていく) 」
ルグエル「抵抗は無意味であるッ!!( ズ ダ ァ ン ッ ! ! )(動き出した彼らを見据え、迎え撃たんと跳躍する) む ぅ ん ッ ! ! (大型重火器を鈍器のように持ち直し、バドへ目掛けて振り下ろしながら襲撃する) 」
横幅が広い大柄の隊員「……そうか、だったら……やるしかない……!!うおおおおあああぁぁぁー!!!(その大きな身体から発される巨大な咆哮。しかし動きはその体格、そして構えた大型からは考えられない程に速く……瞬く間にレヴィに続いてアラタ装備兵の群れに分け入り、大鉈を振り回す) 」
メイヴィス「~~~~~~……!(ガトウの雄叫びに震えていた足を叩いて抑え、キュッと結んでいた眼をうるませながら開き、"対戦車大型口径"二丁拳銃型ガジェット、"ベルベルク"を交差し構える)はぁっ…… 今は"戦う"事が団長達の治療になると……ならば是非もありません、覚悟ォ!(ベルベルクを"背後"へ射出。レーザーを掃射し続け、それを推進力にアザミの間合いへ潜り込み) とゥ!!!!(半月を描くようなサマーソルトをアザミの顎目掛け繰り出す) 」
淀身&歪身『 ガ ッ ギ ィ゛ ィ゛ イ゛ イ゛ ィ゛ ィ゛ イ゛ ン゛ ッ゛ ! ! (猛り狂う獣の如き勢いで迫るガトウを前に、二体の傀儡が真っ向から受け止めにかかった。初動は圧倒されていくが―――)―――― ズザザザ…ァ…ッ!!!(やがてその勢いを殺すように抑えた) ヒュバッ! / ダッ!(その後、ガトウに対しツーマンセルによる巧みな殴打を代わる代わる移動しながら与えていく)』
バド「へッ……てめえがそう言わなきゃケツにブチこんでやるとこだったぜ…… っとォ!!(ガトウの雄叫びに呼応し歯を見せ不敵に笑う。背後から振りかぶられる銃身に対し、テックマンを両肩に引っ提げノールックで難なく受け止める) 気合入れて殴ったか?それとも銃弾は込めてもてめえが玉無しなのか……なぁ、DT共がよッ!!(担いだまま半回転し銃身を振り払う。そして今度は真一文字に構えたテックマンの柄を両腕で前へ突き出し突進。喉笛をへし折ろうとしてくる) 」
アザミ「ッ――――!(早い――――!)( ザ ッ ギ ィ ィ ィ ィ イ イ イ イ イ ン ッ ! ! ! )(レーザー射出の勢いを乗せたメイヴィスの特攻に対し、咄嗟的に一刀のみで受け止めにかかるが…) ッ! (ズザザァ…ッ…!!)(吹き飛ばされ、それでも身を縮めて回転しながら華麗に降り立った) ヒュバァ ―――― シ ャ キ ィ ン ッ ! ダ ァ ン ッ ! (ついに「二本目」を抜刀。瞬発力のある接近からメイヴィスへと罰点状に交差した刃を振り抜いた) 」
ルグエル「ほゥ―――― フ ォ ン ッ ! (攻撃を受け止めたバドに一驚しながらも、繰り出された攻撃をしゃがんで回避する) “絶” ――――― ヒュンッ、シュンッ、シュンッ!!(一瞬のうちに姿を消し、彼の周囲を高速移動しつつ翻弄する) 」
メイヴィス「 ! (二刀流は手数こそ多いけれど両手を一振りに扱えない分予備動作で予測がしやすい……あの初動なら次は……) ーーーーーこうッ!!(対する自身は両腕を大の字に広げ、交差切りを繰り出す両刀の"柄頭"めがけ銃身を突きつけ、予備動作から封じようとする) 」
ガトウ「ガッ―――ドォッ――ギッ―――ゴォンッ―――!!(次々と間髪入れず繰り出される殴打を盾一つで防いでいくが―――)――――ッ゛ (なるほどな…あの異端児……口だけじゃなかったみてぇだな。こいつぁ確かに堪えるッ……!)(受け止める度に迸る衝撃を長時間受けていればさすがの地震でも腕に痺れが覚える程であり、鉄仮面の内側で歯を食いしばる) 」
アザミ「――――!( ギ ィ ィ イ ン ッ ! ! )(メイヴィの狙い通りに斬撃がその軌道を外れて体ごと弾かれてしまう) ……なるほど…メディックにしては鍛えられてますね。ですが……!( フォ――フォ――ン ッ! )(右から左へ、左から右へと揺れ動く最中、その体が"消える")―――― 殺 意 が 足 り な い ( シ ャ キ ィ イ イ ン ッ ! ! )(月光を背後にその死角に現れた時には双眸が血の如き赤を帯びて、既に振り抜いた凶刃で切り裂きにかかる) 」
アラタ装備兵「ぐガ……ッ!」「なんだこのガジェット……!?読めな……ッ」(最前列で陣を組んでいた兵士が次々となぎ倒されていく。しかし……)「バッテリーが減るが……やむを得ん!"フレーム2"を開放!行くぞッ!」「おおッ!!」(残る兵士が一斉にバックルに取り付けられたダイヤルを撚る。すると、蒼い雷光が全身を包み込み……) ギュオ ッ !!(駆動音と共に身体能力だけでなく"身のこなし"まで洗練され別人のように強化された兵士達が、常人を凌駕する身体能力による殴打をレヴィ、横幅広い団員へ畳み掛ける) 」
レヴィ「んなッ――――(動きが急に変わった…ッ…?!なんだこの――――)――――ふくゥ…ッ!!(咄嗟的に水平に構えた武器で受け止めるも、予想以上のパワーに余裕で殴り飛ばされてしまう)こいッ―――( グ ゥ ォ オ ン ッ )――――つゥッ!!!( ボ ッ ゴ オ オ ォ ン ッ ! ! ! ! )(その場でメイスを振り回して眼下の地面へと炸裂させることで、その衝撃が大地を伝いアラタ装備兵の真下から鋭利な岩石剣山が突出し、奴らを吹き飛ばす) 」
バド「ちィ……チキン野郎が……!(難なく攻撃をいなされ勢いあまり前方へよろめく。振り向き際背後へレンチを振るうが、既に気配は"再び背後"へ――――)―――――!?(どういうことだ……動体視力なら自信はある、だがこいつは速さじゃねえ……!くそ、実戦経験の浅さがここに来て……ッ) 」
淀身&歪身『ドドドッ、ギッ―――ガガァンッ――ドグッ、ドグシッ―――バギャァッ!!!(傀儡共の動きは更に速さと重みを帯びて、二倍速、三倍速にもなってラッシュによる攻撃力を高めていくのだった)』
メイヴィス「(あの動き……脱力している……?何を――――)――――!?(左右へ揺れる動作に意識と思考が削がれるのも束の間、"瞬き"の刹那の間にアザミを見失い、本能が無意識に後ずさりさせていまう。)ッ……!(どこから攻撃が仕掛けられるか予測できない。しかし"殺意"を含んだ呼吸に姿の見えないアザミが変わったのを察知するや、 しゃがみこみ、首、頭部を守るようにしてベルベルクの銃身を立て……) ガ ィ ンッッ!!!!(斬撃が銃身を捉える。しかし防げても不動煮ることは出来ずふっ飛ばされ、勢いよく地面へ転がされてしまう)きゃウ……ッ!! 」
E.Q.「ははっ、どうですか、ガトウ団長?あなたが得手としている"力のみ"で押される気分は。中にいるのは鍛錬も修練もほぼ皆無に等しいド素人。そんな人間でも、簡単にあなた以上の筋力と速力を獲得できる。これが私の傑作…ああ、早く完成させたいものです…!(ガトウとの戦闘を観戦しながら自らの発明に酔いしれている) 」
ルグエル「―――― “絶砲”!!!( ド グ ゥ ォ オ オ ン ッ ! ! ! )(隙だらけのバドの脇腹目掛け、その重火器を鈍器のように炸裂させる。直撃すれば骨など1、2本は余裕でへし折れる重い衝撃が全身を駆け巡る。そんな一撃をもとに、彼を大きく吹き飛ばした) 」
横幅が広い大柄の隊員→ストルット「なんだこいつら、急に動きが……だったらァ!!お前らが……機械兵でもアサルトでもないのならぁ!!(殴打によって吹き飛ばされるが、大鉈を勢い良く地面に突き立て…鉈を背にして無理矢理止まると共に、背後からの攻撃を防ぐ壁として扱い)…っしゃぁ!!(その丸々とした身体に似付かわしくない身のこなしで、彼らの殴打を何とか捌く)……ぐうっ……(だめだ……数が多すぎる…!)」
第2調査兵団・戦闘員 ―――『 フライ・ストルット 』
アザミ「 ス タ ン ッ … ―――――(ふわりと着地した後、直線状に転がり倒れたメイヴィスに一瞥を与えて一刀の切っ先を突き付けながら靴音一つ鳴らさず歩み迫る) ……戦場に出た以上、「命」の重みは更に圧し掛かる。四方八方からその命を刺し貫こうと、敵は必ず迫る。メディックならば尚のこと、その重圧に敏感であるべき―――(一歩、また一歩と、"殺意"が迫る――――) 」
バド「 ケ " ホ " ォ ォ ッ ……!! (マグをひっくり返したような量の喀血。全身から染み渡り聴覚へ伝わる肋が4本ひしゃげ逝く音。皮膚を突き破り、それが露出し、流血が尾を引くようにして残されるが)……ふゥ……ふ、フゥ……~~~~(レンチを地面へ突き刺し、大きく吹き飛ばされるのを耐える。伏せっていた顔を上げ、どこへでもなく不敵な笑みを浮かべると) ヘッ ネットに籠もるのが好きなDTが使う手だ(片手にしたレンチを高く振り上げ空を刺し、そのままの状態で微動だにせず待ち構える) 」
ガトウ「ずゥ゛…ッ゛……!!?(迫撃砲を絶え間なく撃ち込まれて続けているような圧倒感を前に、その頑丈なガジェットにもついに僅かな凹みが出来上がり始めていた)……効かねえなァ…ッ……?"この程度"…ッ……!(鉄仮面の内側でヘッと笑うと―――)――― ぬ お ら ァ゛ ッ゛ ! ! ! (威勢のある声と共に盾を振り抜き、空いた片方の剛腕を振りかぶり反撃の一手として二体同時に殴りかかる) 」
アラタ装備兵Aグループ「 ―――――――。 (悲鳴を挙げずレヴィの反撃で難なく上空へ吹き飛ばされる。不気味なまでに脱力し、宙を舞うアラタ装備兵の"眼"に、レヴィは"変化"を見た)ゥゥゥゥゥウムムムムカカッカカアララララッララダダダダダダガガガガガガガガカカカカカカカテテテテテニニニニニニニ(唇が小刻みに、およそ人ではあり得ない速度で"痙攣"している。目はカッと見開かれ、しかし光を失い虚ろに……) ヒュ ズ!!ダダダダダダダ(舞う瓦礫を足場に、順応無尽に立体的な移動をしレヴィを包囲。タイミングを合わせ全方向からより洗練された蹴りを放ちつつ急降下する) 」
ルグエル「減らず口を…次で確実に仕留める。 “絶” ( フ ォ ン ッ ! )(再び動き出した高速移動。バドの周囲を縦横無尽に駆け巡り、その死角を捉えると)―――――― “ 絶 砲 ” ッ ! ! ! ( ブ ゥ ォ オ オ ン ッ ! ! )(背後に現出し、再び重火器を振りかぶった態勢でトドメをささんと迫る――――!) 」
アラタ装備兵Bグループ「 ガィ ンッ! ! ヴ……ヴヴヴヴヴ(ストルットの操る蛇にめり込んだ拳から彼へ不自然な振動が共鳴し伝わる。拳を繰り出した兵士は、口橋から唾液を流し両目は焦点を失っており……) バチ バチィッッ!!!(アラタの表面に電流と火花が迸ると、今度はプロボクサー顔負けのスウェーで一旦間合いを離し、再び助走をつけたブロウを一斉に放ってくる) 」
レヴィ「 ッ゛ ? ! (何なんだコイツら…ッ… 本当に人間なのか……!?)(その異常な光景に思わず目を奪われてしまい、繰り出された攻撃に対し咄嗟的な判断が遅れる―――)――― ぎ ゃ う ゥ゛ … ッ゛ … …! ! ! (次々と撃ち込まれる蹴りの集中攻撃に身動きを封じられ、成す術無しかと思われたが――――) 」
メイヴィス「――――――(アザミの修羅場をくぐり抜けた者ならではの言葉が重くのしかかる。横たえ、浅い呼吸を繰り返し何も言い返せずにいたが……) パサ……(バックルに常備しているポーチから包帯がだらしなく垂れ下がって床に広がる。それをお構いなしと言わんばかりに立ち上がる。足元はおぼつかず、上体を左右に揺らし垂れ下がった包帯を腕に巻くと、ベルベルクの銃口を二丁揃え、口で包帯を結びながらうつろな目でアザミを睨みつけた) 」
―――― アゲてこうぜ、「レヴィ」~~~~~~♪FOOOOOOOoooooooooooooーーーーーー!
レヴィ「――――― あ あ (自身の脳内に突如として反響した相方のギタリスト。そのロックな叫びに"魂"が震えだす――――)――――― ぶ っ こ わ し て や ん よ ッ ! ! ! ( グ ゥ ォ ン ッ ―――― ┣¨ ッ ゴ ォ ! ! ! )(蹴り続けられる中で無理矢理身体を鞭打ってメイスを目いっぱい振りかぶり、そして、再び眼下の大地を穿ち、震撼。炸裂と同時に衝撃波が爆発的に大気中へ迸り、巨大な陥没が一瞬で形成。周囲の建造物や線路さえも抉り出す勢いでアラタ装備兵諸共消し飛ばす) 」
アザミ「……その命を散らしますか。ならば、遠慮なく――――― ヒ ュ オ ォ ゥ ッ ! ! ! (左右へ振り抜いた二刀を構えて疾走。夜に溶け込むような音速歩法は並大抵の戦士でさえも補足することは困難。"殺意"以外の余計なものを完全に排除した状態で、メイヴィスへその凶刃で食らいかかる) 」
バド「 ┣¨ グ ォ ッッッ (銃身が胴体に深く、深く、それこそ両断しそうな勢いでめり込む。しかし砂塵は彼を中心に巻き起こるばかりで、当の本人の両足が浮くどころか……) ガ ッッ シ ィィ ィ ン ッ!!(レンチを両手持ちに持ち替え、得でルグエルを自身の胸板と挟むにして自らに引き寄せていた) よ ォ 。 逢いたかったぜシャイボーイ、そんじゃプレイ開始だ。今夜は寝かさねえよ(レンチの柄を当てたのはルグエルの項。全身で彼を固定しつつ、確実に締め上げていく) 」
淀身&歪身『 ギ ィ゛ ン゛ ッ゛ ―――― ザ ザ ァ ー … ッ … … ! (ガトウの反撃の王だを咄嗟に身構えた両腕で防ぐことで鈍い音が反響。そのまま殴り飛ばされるも、あのガトウの剛腕に殴られたとは思えない微弱な反動のみで余裕そうに着地する)』
ストルット「(様子がおかしい、何かが……)っ!(アラタ装備兵が下がった……それが次の攻撃への準備動作である事を即座に察知。次の一撃を予測し……)見えたッ!!(軽やかに縦回転しながら後方へ跳躍し、ブロウを回避。勢いのまま突き刺した大鉈を抜き放ち……)そこだァー!!(回転しながら大鉈を振り回し、全方位を薙ぎ払う) 」
メイヴィス「―――――あなたは"命"に敏感過ぎる。(引き金を引くことはせず、"包帯を巻き付けた腕"を グ ン と手前へ勢いよく手繰り寄せる。すると……) ビ ィ ン ("大きく円を描くように"床へ広がっていた包帯の輪が急速に収縮、アザミの足首へ食らいつき、高速移動が仇となって前のめりに、そして浮遊するように転倒させ)―――――だから私とあなたでは、役職が"逆"だったかもしれない。(およそ"癒やす"者ではない、冷たく横たわる三日月のような瞳でアザミを見下ろすと、自身へ倒れかかる彼女の右肩、左肩へ銃口を添え) ゴガギィンッ!! (二発。脱力し銃口を"両膝"へ向けると…) ゴガギィンッッ!!!! (二発。四肢の関節を"破壊"し。 移動手段を失った彼女の頭部が、地面へ極限まで近くなると同時に) 私はあなたを救ってみせる。たとえあなたを「 」してでも。 "治療完了" (鋭い前蹴りを、アザミの顔面へ放った) 」
E.Q.「強がっちゃってぇ~♪もうガジェットも破損寸前じゃないっすか~?レギュレイター全団員のガジェットは既に解析済み。専ら、あなたのガジェット「鋼城《 ルーク 》」の強度は全ガジェットにおいて最高クラスの頑丈さを誇る。まさに、タンクの名に恥じぬ一品級です。そんなものでも、私の発明品の前では意味も成しませんが。このオーバースーツこそ!ガジェットなどという旧式兵装を超越した可能性を大いに秘めている!どんな者でも圧倒的な強さを手にできるんですよっ?最高じゃあないですか♪ 」
アラタ装備兵A.B「―――――――――!!―――――――!!(レヴィ、ストルットの攻撃が全てクリーンヒット。アラタに亀裂が走り、暴風に煽られた木の葉のようにふっ飛ばされ、次々と落下する。 しかしさらけ出された顔面は明らかな呼吸をしており、誰一人として彼/彼女の攻撃で死ななかった。しかし――――)―――――ヴヴヴヴウヴヴヴヴッッヴヴヴヴウヴヴヴヴウヴヴヴヴウッッッ ゴポ 。 (共振が足から伝わるほどに全員の肉体が痙攣し、"不可"から内蔵が殆ど潰れた事を示唆する量の血を吐き出し、 絶命する) 」
ルグエル「もらった――――― ッ゛ ? ? ! (バカなッ―――)(最大出力の攻撃は直撃した。だが、予測していた結果ではないバドの様子に目を見張り―――)―――― グ オ゛ オ゛ オ゛ ア゛ ア゛ ア゛ ァ゛ … ッ゛ … … ! ! ? ( メ キ メ キ ベ キ バ キ ィ … ッ … ! ! ! )(プレス機にかけられた恐ろしい痛覚。文字通り手も足も出ない状態で全身に想像遥か絶する重圧がのしかかり、バドが折ったものとは比較にならないほどの骨身が軋み上げて――――)―――――― ァ゛ (――― 事切れたように"絶頂"した) 」
アザミ「 な ッ ―――― ! ? (包帯に足元を掬われて、転倒する最中に瞳孔が縮小する) ギ イ゛ ィ゛ ッ゛ ! ! ? (肢体の関節を撃ち抜かれ、唾液交じりの吐血と共に全身から鮮血を噴き出し―――) こん、な…ッ……――――― ド シ ャ ア ァ … ッ … ! ! (――― その「命」を落とした) 」
ガトウ「……なるほどな……(
E.Q.の発言に納得したように、追い込まれているはずの状況下で軽い調子で何度も頷いて見せる) 俺は如何せん頭が悪くてなァ……難しいことを言われてもさっぱりわからねーんだわ。だが、そんな俺でも…最近覚えた諺(ことわざ)ってのがある。「 机上の空論 」って知ってるか? 」
E.Q.「 はい? 」
ガトウ「俺なんかと違って頭の良いテメェなら理解できてんだろう。俺の使い方が間違っててのその反応なら悪かったよ。 馬鹿の一つ覚えだと思って罵ってくれていい。だがな ――――(次の一撃…それは、敵の攻撃を受けようが、或いはこちらが攻撃を仕掛けようが、双方の理由であれ、確実に破裂する愛機のガジェットを振りかぶるように身構えると―――) 」
淀身&歪身『 ―――― ダ ァ ン ッ ! ! (攻撃を繰り出そうと構えるガトウに対し、それを抑え込むかのように急接近を仕掛ける)』 」
ガトウ「 ズ ダ ァ ン ッ ! ! (地盤がめり込む勢いの力強い跳躍) 頭ん中で見知ったつもりでも、所詮見えてんのは上っ面だけだ。そいつの拳にかける"情熱(たましい)"の熱さは、なんもわかっちゃいねェなァッ!!!!芋女ァッ!!!!! ( ガ チ ャ ァ ン ッ ―――― ! ! ! ! )(殴るような動作で盾を突き出すと同時に、内側にあるトリガーを引き抜くことで内蔵されたすべての火薬が一斉に弾け、爆ぜる。その衝撃によって隠されていたパイルバンカーの先端が顔を出し――――) 」
ガトウ「――――― “ 穿 凱 《 ウ ガ イ 》 ” ――――― 」
┣¨ ッ ―――――― グ ゥ ァ ワ ア ァ ン ッ ! ! ! ! (刹那、プラットホームはおろか、広大な駅の半分が一瞬で"無"に抉り喰らわれたような光景が描かれる。瓦礫や残骸は跡形もなく消し飛び、その直線状にあるもののすべて――都会の高層ビル、更には遥か遠くに佇む巨大な時計さえも―――が風穴が開かれた)
淀身&歪身『 ジ ュ゛ ッ゛ (瞬く間に迸る、万物を穿つ衝撃に心臓はおろか、全身さえも無に消けされる――――)』
E.Q.「 ! ! ! ? ? (「理解できない」――――そんなものがこの世にあるなんて、と…彼女はその最期に未知なる体験を我が身に刻み、"無"の中に嗤いながら消し飛んだ――――) 」
ガトウ「 ジ ュ ゥ ゥ ゥ … ッ … ――――― 積み上げてきた"重み"が違ぇんだよ ――――― ガ ラ ガ ラ ガ シ ャ ァ ァ ァ ア ア ア ア ン … ッ … … ! ! ! (万物を穿った愛機は限界点まで赤熱を帯び、ついに寿命を迎えて崩壊。空しく散乱する残骸の中で、漢はその虚空を震える拳で握りしめた) 」
レヴィ「……ゼェ……ハァ………!(結局、最後の最後まで得体の知れなかったアラタを前に吐き気を催したが、踵を返す様に目を伏せた)………ぜんぶ……片付いた、か…… はっ…てか、団長……"やりすぎ"…っ……(肩で息をしながら、ガトウが齎したその光景に思わず苦笑を零した) 」
ガトウ「……おめぇら…よく頑張った……日々の鍛錬の賜物だな……!(と、満足気に笑みを浮かべていたが…)………腹筋崩壊太郎…おめぇもな。後はゆっくり体を休めておけ。………"お疲れさん"…――――(もう二度と目覚めることのない筋肉アンドロイドへ労いの言葉を添えて、開かれていたその瞼に手をかざし、そっと閉ざした) 」
ストルット「潰れた……いや、違う……この感触は……多分、俺達じゃなく、中で……っ…(それ以上アラタ達に付いて考える事を避け…他の団員もなんとか撃退に成功した事を悟り、その場でへたり込んでガトウの攻撃の後を眺め)……めっちゃくちゃになってる……ああ、腹減ったぁ……… 」
バド「ヒュー♪ 派手に突貫工事しやがって、開拓時代のアメでもここまで雑に仕上げねえぜ(口笛を吹き、メイヴィスを米俵のように担ぎながらガトウへ掛けより勢いよく小突く)ハロ共までまとめて処理しちまうたぁな…… 」
メイヴィス「………(勝利に沸き立つ面々とは対象的に、半ば青ざめた顔色で瞼をほとんど下ろし、ふいに腹筋崩壊太郎を一瞥する)………。………(それ以上、現実を受け止めまいと両手で顔を覆い、すすり泣いて言葉を発せずに居た) 」
ガトウ「…………積もることはたくさんだが、ひとまず状況を整理してェ。機械生命体反応も、それ以外の敵らしい存在も見当たらないなら、この王国は大丈夫だ………(と言いながら、自分が消し飛ばした駅の有様を見て「あっ」と口を開けたまま硬直するが、それを誤魔化すように小さく咳払いする)……第2調査兵団、一度本部へ帰還するぞ。(そうして、一同はラステルム王国へ向けて踵を返すのだった―――)
カタカタカタ…… カタ、カタ…… (ラステルム王国内にておこる惨状の裏で、男はひとりパソコンのキーボードを叩く。崩れた店店の瓦礫の上で彼は仕事を終えた)
相馬和樹「(パソコンはいつも通り破棄。特殊ウイルスが入ったメモリーを挿入し内部データを破壊。その後は物理的に壊す)…… ……ふぅ、さぁてどうすっかねぇ。ウチのメンバーと連絡つかねぇが……故障か? それとも超人的な戦闘による磁場の乱れか……あーあ、やんなっちゃうよまったく(その場を後にするように歩き出す)ズー、ズー……(ハンカチで鼻を抑えながら何食わぬ顔で街を離れようとしていた) 」
ギッ…… キィィィ イ ィ …… (相馬が歩み始めたその時だった。彼の進行方向に見える、地下鉄へ通ずるエレベーターのドアが重厚な金属音を鳴らし、開く。) ジャラ ッ (最初に現れたのは不細工な猫のキーホルダー。それをチェスターコートのポケットにぶら下げ、くたびれた風防の男がゆらりと足音を立てず現れ、相馬の眼の前で足を止めた)
片桐「 よおォォォ……久しぶりィィィ……………(酒瓶を持った腕をだらりと垂らし、もう一方脳ではポケットへ突っ込みしだらなく上体を右へ左へと傾け、相馬へと歩み寄る) どうしたァァァ……こんなところでェェェ……。おじさんは無職だから何処行っても不思議じゃねえがよォォォ……現役公務員は職務怠慢って奴になるんじゃァァねえのかァァァァ 」
相馬和樹「…… ……(見知った顔。前々から目をつけられていたことは知っていた。だがマルガレーテの件で精神がボロ雑巾のようになったことで完全にノーマークだったのだが)……悪いね。誤解を与えちゃったかな? 俺は俺でキチンと仕事をしてるんだよ。避難所は向こうだ。酒はねえと思うがメシは配給されてると思うぜ。……だからよ、そこ、どいてくれ。俺が通れないだろ? それとも通せんぼして、意図的に職務怠慢させる気か? 」
片桐「そうだと言ったらどうするよォォォ……一緒にハロワ行くかァァァァ……まあこの国のハロワじゃァァァ怪しいなァァァお前はァァァァ……(酒瓶をひっくり返し一滴も溢れないことをよく目を凝らして確認する。それ越しに見据えるのは、他ならぬ相馬自身。灰色の乾ききった眼球の中に彼の姿を捉え続け…)……前職が公務員と言っても"ゼレオロスのS"となっちゃァァァ…心象悪ィィィからなァァァァ 」
相馬和樹「……スン("ゼレオロスのS"、そのワードですべてを『理解』した)へぇ、いつから俺がそうだと? いや、俺がSってのもあれだな? もしかしたら俺はゼレオロスに脅されて情報を売っぱらったか弱い警察かもしれねぇ。……なのに、(ハンカチをしまい、両手をフリーにして)ずいぶん悪者みたいに見られてるんだなぁ俺って。ヒヒ、悲しいよ。同じ警察官じゃねえか(目を引ん剝くように口角を吊り上げ笑った) 」
片桐「生憎満額退職できずクビにされた無職のおっさんでなァァ……前職の連中には悪い印象しかねぇよなァァァァ……(胸ポケットから警察手帳を取り出す。それをおもむろに相馬の足元へ放ると、"コートの内ポケット"へ再び手を突っ込んだ) 雑な推理ショー聞くか?もう隠す理由もねえだろ、冥土の土産持たせた後でザクっと始末しちまえばいい……。結局のところ、"マルガレーテは誰が犯ったか"……おじさんが興味あるスキャンダルなんてのはそんな下卑たもんだ。 」
相馬和樹「あー、なるほど。もうそこまで言ってんのか。ま、いろいろはぐらかすのも無駄だろうな(肩をすくめながらも、片桐とは真逆のいびつな輝きを秘めた瞳をのぞかせ)マルガレーテは逸材だったよ。性格はともかく才能だけなら澁谷かのんに勝るとも劣らない。……ゼレオロス式のスカウトだよ。おかげでアイツもしっかり"こっち側"になれたわけだ。綺麗だったぜ。アイツの歌は(ヒョイヒョイと耳を示して見せる)……アンタの言う通り、下卑たスキャンダルだよ。実際ゼレオロスのメンバーもこのやり方には反対意見が多かったが打撃を与えるには重要なことなんだ。俺はその重要なことをやるための"必要悪"だ。 」
片桐「――――――(『綺麗な歌だった』。その通りだと内心肯定する、例えオルゴールに成り果てようと、あの場におけるマルガレーテは歌姫の名に恥じない歌声だった、完璧であるが故にあのような事態を招いた事も認める。しかし……)――――必要、か……。ああ、お前はよくやってるよ。どんな立場であれ、必要な事をするってのは偉い事だァァァ…… だがな(不細工なキーホルダーをポケットから取り出し、それを内ポケットから抜き取った出刃包丁の江頭にボールチェーンで取り付ける。 キーホルダーの鈴の音を鳴らし、だらりとぶら下げると、一歩、相馬へ間合いを詰めた)――――おじさんはなァァァ……てめぇが頑張る必要なんかねェのに 」
片桐「――――おじさんはなァァァ……てめぇが頑張る必要なんかねェのに ……てめェである必要はねェのに……てめェが輝くために、てめェが認めた輝いてるもんを追い越そうと泥臭え、きったねぇ汗水垂らして努力する嬢ちゃんの歌のほうが好みでなァァァ…… グ ル ン (瞬時に腰をかがめ、コンパスで円を描くようなスライディングで相馬の懐へ潜り込む。逆手持ちにした出刃包丁を、踵目掛け振り抜いた) 」
相馬に振りぬかれた出刃包丁は確かに佇んだままの相馬の踵に向かっていく。だが次の瞬間、相馬が消えた。避けたではなく、姿も気配もごっそり空間から削除されたように。 」
相馬和樹「………… …………あぶねえな。(いるはずのない場所に、彼はいた。最初からそこにいたように同じ体勢で佇み、ゆっくりと得物であるナイフを引き抜いた)スクールアイドルがひとり、あぁなるだけで帝国の平穏が保たれる。わかるか?秩序を守ることができるんだ。俺とアイツのなにが違う? アイツは歌で人の心の秩序を保ち、俺はアイツを犠牲にすることで帝国の秩序に貢献する。どっちも似たようなもんだ。アイツは悲劇の歌い手として後世にまで名を残し、後続のアイドルたちにも影響を与え続けるだろう。わかるかこの仕事の偉大さが? 俺はこの仕事を楽しんでやってる。使命感ってやつかな? いや、ここまでくると『天命』かな? 」
片桐「まず後続のアイドルができねェよ……ブラック労働過ぎて最近流行りのキタサン・Blackもドン引きだァァァ……(相馬の気配が"再出現"すると同時に出刃包丁をペン回しのように回転させ逆手持ちに持ち直すと、ノールックで背後、相馬の腕目掛け突き放つ)―――――まあどっちでもいいさ、俺の楽しかった推し活はもう帰ってこねぇんだ。 (――――刺突はフェイント。本命は刺突対応後の"肘鉄"。 意図はしていなかったが、相馬の後方にある冷凍食品貯蔵庫へ向かって突き飛ばそうとする) 」
相馬和樹「(片桐の攻撃をナイフの刀身で滑らせるようにいなし、隙を見出すと)ーーーーーーーーズチャァ!(脇腹をえぐる。ニッと笑い、ダンスのようにくるりと旋回したのち立ち止まり)あの世でたっぷり推し活させてやるさ。…………あ、そういえば、俺のガジェット『RK』ってんだけど、なんて略か言ってなかったっけ?(そう言って片桐の血がべっとりとついたナイフを軽くかかげ)…………------【Red Knife】(ガジェットということで当然能力を秘めているのだが、どうやら改造に改造を施しているようで刀身からつたわる異様な圧が物語る) 」
片桐「 ザ シャ ァ ァ ……ッ!!(舞うように華麗、それでいて無駄がなく素早い斬撃が片桐の脇腹を抉る。咄嗟にスウェーで後退し深く抉られることは避けたが、失血の量が著しく) ッ……!(RK、自らが誇る、彼を象徴するナイフと、それを語る相馬の姿が遠のき"霧"に包まれる。無意識に距離を取ることで、冷凍庫に飛び込んでしまった、或いは"そうなるよう攻撃された事に気付く")………(体温を奪う冷気、阻害される視界。コレに対する対策ができているとすれば、かなりアウェーな状況。相馬の気配を探りつつ、急いで離れようと試みるが……) 」
相馬和樹「…………ここまで来たんだ。付き合ってもらうよ(気配や物音はなかった。ただ声のみが片桐の背後から響く。そして)ーーーーーーーービュン!!(ナイフの刺突が彼の頸椎に向かって飛ぶ。刃こぼれの心配や筋線維・骨への引っ掛かりを一切気にしない、気にする必要もない一撃だ) 」
片桐「―――――!(冷気の流れ、音、一切の動作が散漫に錯覚される最中相馬の声だけが正常に響き、咄嗟に上体を傾け首筋への刺突を回避。 "想定を遥かに凌ぐ気配遮断"と、これまでの帝国兵とは一線を画する"暗殺特価"の技量、戦法に目を見張り、呼吸を忘れ瞳孔が開く) 」
――― Vs. 【第8調査兵団副団長】 相馬和樹 ―――
相馬和樹「ヒュバ、ギュン!(ナイフによる平刺突、からの横薙ぎ気味な振り下ろしによる二連撃。間髪いれずに攻撃することで反撃を防ぐための連携もこなす) 」
片桐「キュッ…… ヒュ ッ (残像を残すスウェイでニ連撃目を紙一重の回避。 構えを取らず、しかし左肩を後方へやり、腕を胴体で隠すことで手にする獲物の初動を視界に入れないようにする。 仕切り直し5秒が経過…) シュル…… フ"ンッ(睨み合いに飽きたのか先に動くのは片桐、 手にした出刃包丁を足元で落としつつ、相馬の右手を狙ったブロウ……のフェイント、本命は先に落下させた出刃包丁。それの江頭を爪先に乗せ) カ ァ ンッ (ケンカキックで回転を効かせた刃を相馬へ飛ばし、追い打ちをかけるように自身も半回転で遠心力を乗せた回し蹴りを仕掛ける) 」
相馬和樹「ヒュバ!(右手を狙ったブロウに反応してしまい、フェイントと気づいたときには出刃包丁がギロチンのように首に向かってくる)このっ! ジャチィッ(首筋、頸動脈ギリギリをかすめる)フェイントの好きなおっさんだnーーーーーーーードガァ!(次の瞬間には回し蹴りが綺麗に顔面に入る。通常ならここで倒れるところだが)---ヌッ、(すさまじい体幹で持ちこたえ)ズァアア!(お返しと言わんばかりに片桐へ回し蹴りを繰り出す) 」
片桐「(―――――痛覚抑制か、取る気だ行ったぞおい……) か" ふァ"!! (体軸もさることながら、顔面への蹴りで脳への衝撃は愚か、痛みによる鈍りを微塵も見せない事に目を見開く。 そして繰り出される回し蹴りが顎を捉る。)ち"ッッ ……!!("化勁"で流し直撃こそ避けるが、立てこらえようにも靴底が床を刳りながら後退してしまい) ガ ンッ (商品棚に背から叩きつけられ大きな隙が生じる) 」
相馬和樹「(頬をさすりながら隙を見せた片桐を見据え)いけねぇなぁ。決めるときはきっちり決めねぇと、なっ!!(ナイフによる斬撃。常人離れしたスナップからくる二連、三連の斬撃をみまう)) 」
片桐「 ガタ …… ン (揺さぶられた棚の天辺から酒瓶が落ちてくる。相馬が間合いに迫る中、ノールックでそれを手に取り……) パ ァ ンッ (床へ勢いよく叩きつける。飛散する液体、充満する酒気、舞うガラス片。それらで先手を取った相馬の斬撃に僅かな遅れを齎し――) ガッ ガッ ギ ィ ンッ !!!! (棚から引き抜いた精肉加工用の出刃包丁を抜き取り、相馬と左右反対ながら全く同じ軌道の斬撃をぶつけ相殺。その後ローリングし、相馬との距離を開け再び構え直す) お前も若いって年じゃねえだろォォォ……いいなァァァ足腰自由でよォォォ…… 」
最終更新:2025年02月20日 21:28