緋月の夜叉姫 ログ2

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———二日前———
————水の国レサーティア分島三番『[[大和国]]』中央ホテル菊の間


————豪華絢爛、俗世の人間が見れば『趣味が悪い』と一笑に伏すだろう高級ホテルの最上階。赤と金を基調にした内装、埃ひとつない純白のテーブルクロスを重ねた長テーブル、上には湯気を吹くコース料理の品々。絵に描いたような上流階級の食卓がそこには実現していた。ガラス張りの窓からは『大和』の海岸全体が見渡せる

クイント「(食卓に列席し、借りて来た猫のように縮こまって眼球の上でメダカのような瞳を泳がせ歯を浮つかせていた)入国して早三日。役所で戸籍云々の手続きをしてたら入国管理局に連行されて、なんと辿り着いた先は冷凍食品の倉庫。そこからバスに乗り換えましてヤクザの事務所ですもん。どう思いますこの流れ

リズ「(クイントの隣に座し、彼女とは至って対象的に目を伏せ落ち着き払い、並べられた料理には手をつけずワイングラスのみに手をつける)そもヤクザ自体が政府主導の元結成されたというケースも別段珍しくない。国家所属の武力行使は法律に則らなければならない。この辺りは政治に疎い君でも昨日のシンゴジラで把握しているだろう。まぁつまるとこ、今私がこうして座っている食卓は政府御用達のヤクザの事務所ってわけだ

ガチャ……

初老の男「(たった二人しかいない食卓の沈黙を破るようにして、白髪に金の細縁フレームの眼鏡、オーダーメイドで仕立のスーツを纏い、老体にしては機敏な所作で歩を進めて大広間に足を踏み入れた)遅くなり申し訳無かったね。おや、皿の上ですっかり冷たくなっているが口に合わなかったのかな

眼鏡の男「————失礼致します。(初老の男に続くようにして四人目が食卓に足を踏み入れた。初老の男とは違って高級スーツには違いないが味も色気もない、営業的な黒字のスーツを羽織った黒髪、黒縁フレームの彫りが深い顔立ちの東洋人である)

リズ「(伏していた目を開き、柄にもなくその男の姿を確認するや姿勢を正し席を立って一礼した)主役をさておいて箸を進める程無作法者でもないつもりです。首を長くしてお待ちしておりました

初老の男「ははは、聞いていたよりも律儀だが、聞いていた通り義に拘るお方のようだ。せっかく遠方までご足労いただいたにも関わらずろくなもてなしも出来ず申し訳なかったね(彼もまた、リズの礼には例を持って返すと言わんばかりにお手本のような会釈を返す)時にヴァンシュタインさん、そちらのお嬢さんは

クイント「あ、どもども。一応部下のウサ公です。しがないウサ公なので空気のように扱っていただいて結構ですうへへ(唯一、彼女だけがこの空間において緊張感のかける浮いた存在となっていた。しまりのない苦笑いを浮かべ繰り返しゴムまりのように頭を下げている)あの、おじさま。あなたはいったい……

初老の男「申し遅れました。————(彼女の頭を下げるだけの一礼にも軽い会釈を返し、長テーブル中央の席に座し)————。(彼を取り巻く穏やかな老紳士の空気感が変わった。一瞬で張り詰め、心なしか彼にかかる影が濃くなった気がした)——————私『大和造船』代表取締役、堂本源三と申します

クイント「(大和造船?)……。(『ボス?』と声がけするかのように隣に座すリズへ一瞥をやり詳細を促す)

リズ「(クイントに横目を流し、張り詰めた空気の中で囁くように)————水の国、いや、大和における経済活動を支える大黒柱だ。大和造船は世界政府にも優れた船、とりわけ軍艦を多く提供しているお偉い様方御用達にして、この閉ざされた大和において唯一外界と強い繋がりを持つ経済面・外交面共に要と言っても過言ではない大企業だよ。そちらのご老人はそこの長老であらせられるというわけさ

クイント「いやあの……それはまぁはい、ガイドブックで読んだんですけどなんでそんな大物がヤクザの事務所に?

リズ「————僅か一代で造船業界の大物に上り詰めた怪物だが、本当の意味で彼は『怪物』としての顔があるんだ————(そう告げると堂元へ視線を移し)———『劉 王 <ラウ・ワン>』。白鬼統合暴利組織『瑠璃』の頭領。私がこの国で何度も何度も互いに潰し合った仇敵の元締めって話さ

初老の男→劉王「(薄く、底の知れない笑みを浮かべリズの紹介を肯定するようにして軽く頷いてみせた)


——  瑠 璃 会 長    劉  王  ——


劉王「(リズの紹介に付け加えるようにして手を隣に座す眼鏡の男へ向け)こちらは大和造船の社長を務めております『堂本龍夫』……もとい、私の息子の『嚨魏 』と申します

スーツの男→嚨魏 「(依然として機械的な、鉄仮面を被ったかのような表情のままにリズ、クイントへ一瞥をやり一礼した)———以後、お見知り置きを


——  大 和 造 船 社 長  嚨 魏  ——


クイント「えぇー……っと?あのコミックゴリラの元ボスってことになるんです?   え、えぇー!?普通に船は沈めるは部下は引き抜くは私ら完全に目の敵にされてるあれじゃないですかちょっとボス!?

劉王 「その節は私の部下が大変なご迷惑をおかけしたと聞き及んでおります。元はと言えば、私が掟と厳しく定めた筈の『薬』に部下が教育至らず手を出したのが発端、責任は我々にあります。あなたさえよろしければ、過去の怨恨は文字通り水に流していただけるとありがたい(一切の服見なく過不足なく謝罪し、柔らかな物腰ままにリズへ問いかける)

リズ「(面食らったかのように沈黙するが、しばらくして目を伏せ腕を束ねた)————あなたがそう仰るならそれ以上にありがたい話はない。ただ、それでは収まりが悪い。何より私個人の感情として納得がいかない。ここは何かしらの形で埋め合わせをさせていただければと考えているのだが

劉王 「西洋のマフィアというのは、基本は利を重んずるものとばかり考えその心算で臨んでおりましたが……。(心底愉快そうに苦笑いを浮かべ目を伏せる)まぁ、その件は追々機会があればお茶でもしながら話し合いましょう。幸い、私達は共通の目的を持って末長いお付き合いをさせていただくことになりそうだ

リズ「ええ、まぁ……言い訳にはなるが、私としてもアレは不可抗力という自覚もあります。不本意な衝突を避けられるならばそれに越したことはない。ただ、『末長いお付き合い』というお話なら、当然話も変わってくる。会長、率直にお尋ねするが『落とし前』以外に、我々に何の御用だろうが

劉王「そうですな、お食事も間に合ってらっしゃるようですし本題に入りましょうか。ああ、その前にヴァンシュタインさん。『トキワ姫』というお方をご存知で

リズ「(黙して首を横に振り知らないと答える)

劉王「(それを受け頷き、ワンオクターブ置いて)この大和を収める老中の一人です。正確には、頂点に『将軍』と名乗る人物がおりますが、彼か彼女かは長らく表舞台に姿を見せず、四人の老中がこの大和を実質取り仕切っておられるのです。その中の一人、徹底して利益と合理性を追求するのがこのトキワ姫という方であらせられる

リズ「————なぜ、今その名が?

劉王「————ヴァンシュタインさん。我々『瑠璃』は『トキワ姫』の率いる勢力の傘下に降り、以後は『大和造船』として彼女と盃を交わすつもりでいるのです。あなたにはその後見人を担っていただきたい

リズ「—————。—————(全く予想だにしなかった回答。それを受ける心当たりもなく全くに腑に落ちなかったのか、ワイングラスを持つ手が緩みそうになありらしくもなく瞬きをして硬直していた)話が見えないな。それはつまり、平たく言えば組織規模で足を洗い、政治主導の元クリーンな企業として立て直すという解釈でよろしいのだろうか

劉王「(ワインを口含み、アルコールを含んだ吐息を零すと至って落ち着き払い)構いません。実質『瑠璃』は解散します。組員は余すことなく『大和造船』の社員として雇用します。我々白鬼の再就職先といえば結局のところ、身内の庇護下にある企業以外に現状あり得ませんから

リズ「そうすることに何の利があるのです。あなたが立ち上げた組織だ、それを支えるための企業だった筈だ。外交に弱いこの国に、超法規的にその存在を認めさせるほどに強いカードを持っていただろう。なのになぜ、今になってそれを放棄するような真似を……(明る様な戸惑い、ある種の憐憫すら含んだ瞳を震わせ問いをぶつけようとするが…)

嚨魏「(劉王に変わるようにして口を開きリズへ目を向け相も変わらず機械的に口を開く)ヴァンシュタインさん、そもそも我々がなぜ、白鬼ではなく人間の……東洋人としての名前を、堂本の性を名乗るかご存知でしょうか

リズ「……(知らない。彼女は瑠璃と何度か交戦したが、現地の暗黙の了解等、住まねば理解の及ばないことにはまだ手が及んでおらずただ黙して目を見開いた)

嚨魏「我々白鬼は過去に、種族規模で、同胞が一人余すところなく海賊行為に奔走しこの大和にも多大な損害を及ぼした歴史があるのです。結果、『鬼退治』という名目上の内乱に発展し我々は多くの剣豪を前に敗北し多くの白鬼が路頭に迷いました。自業自得と言えばそれまで。ですが、この中で唯一海賊に参加しなかった会長は行き場を失った彼らに居場所を与えようと、共に生きようと『瑠璃』を創立しました

嚨魏「今日まで瑠璃が、ヤクザまがいの暴利を続けたことには、例え法的に白鬼を含む亜人種の人権が認められたとしても、大和やレサーティアの民、それと繋がった国際世論、それらを継承した人々の集団無意識が我々の安寧を許さず迫害をが続き、働き口もないという背景があります。大和造船や瑠璃は、白鬼のよりどころなのです

嚨魏 「ですが時代は変わりました。ITの発展、英雄と呼ばれる国家に帰属しない抑止力の出現によるテロの減少、武器を用いた物理戦争から数字を追う架空経済戦争への移行。瑠璃や大和造船は、白鬼全員を養う程の利益の継続が保証されていないという厳しい現状に晒されている。だがその代わりに、歴史は時の経過と共に人々の記憶からは薄れ、『歴史解釈』の見直しを行い相互理解を深めることで白鬼が、人と友好関係を築き、暴利や造船業に依存しない社会を実現する機会が訪れているのです

劉王「(嚨魏 の言葉に区切りがつくと沈黙を破り)—————トキワ姫は、我々にその『歴史解釈の相違』による対立からの改善を提案し、私との対談の場を設けてくださった。私は、彼女の提案する共存に前向きに臨むつもりです

リズ「————— 。—————(納得はできていないなぜなら)事情は把握しました。しかしなぜ我々を後見人に?(彼女が真っ先に抱いた疑問、それが払拭されていないから)確かに、過去にこの隔絶された小国に領分を弁えず殴り込み抗争にまで発展したのは我々だけだろうが……それならマフィアなどではなく、何か他にあっただろうに

劉王「—————大和も一筋縄ではない。トキワ姫はあくまで、人権は認められ国民として扱われるが健全な労働力として活躍の機会を得られない白鬼がいることが経済的損失と見て率先的にこの交渉を持ちかけている。しかし、それをよく思わない老中、政治勢力等が存在し、会談には彼らの武力介入による妨害が想定されるのです。ともすれば、あなた方のように実力が伴い、国家に帰属でず、ある意味マフィアとしては三流かもしれませんが他組織を潰すことでしのぎを得て、表社会には手を出さない信頼の置ける方々こそが適任であると考えたのです

リズ「…………。確認の為、お伺いするが本当に承諾されつもりか。『瑠璃解散』を前提条件とした『白鬼全体の人権改善』。確かに、この法案が通れば迫害されたあなた方の種族は法的に人権を認められ社会へ受け入れられる。だが、それはあくまで『法的』な問題だ。民意に、集団無意識に根付いた概念は法で変えることはできない。裏社会から身を引いたあなた方、いや、あなたの部下達が路頭に迷わないという保証はないぞ

劉王「—————あなたは私を買い被っておられる。もはや私なぞ角の折れた老いぼれ、人よりかは長く生きただけの人の老人と大差はありません。老兵は死なずただ去るのみ。後は息子の嚨魏に任せます

リズ「——————。理解はした。しかしこれは一つ間違えればこの国の一政治勢力を敵に回しかねない事案だ。私としても可能な限りの協力はさせていただきたいが、部下の合意を得なければならない。どうか時間をいただけないだろうか

劉王「無論、構いません。トキワ姫もこの件には慎重な姿勢をとってます、時間は十分に確保できます。まずは一週間程ご検討いただきたい。

リズ「承知した、一週間後に必ず連絡しよう

劉王「良いお返事をお待ちしております。  ささ、お食事が途中でしたな。嚨魏、私の蔵にあるコレクションをお持ちしなさい。 大和のお酒は初ですかなヴァンシュタインさん。是非お召し上がりになってください

リズ「(戸惑いを隠せぬまま、ワインの鏡面世界に酷く動揺した自身の顔を見つめたどたどしく返答する)……。ありがたく、頂戴します




——現在——
———サンレスガーデン [[グラナートファミリエ]]出張所



クイント「(張り詰めた空気の中酸素すらろくに吸えない環境に晒された反動がきたのかソファへうつ伏せに溶けてクッションを抱いていた)あ〜〜〜んなっ かしこまったボス初めて見ましたよ。考えてみればうちの組織ってボスが気に入ったあれな連中だけを拾ってボスが食わしてるようなとこじゃないですか。ああいう一族全員を背負ってる人っていうのに出くわしたりするとなんかこう……スケールデッケェなぁ!ってなりますよね〜〜

エディ「それ、口をメスで開かれてもリズに言うなよ。ああ見えて組織を背負う責任感は狂人のそれだ、家族一人と自身の首を天秤にかけたなら躊躇なく首をちぎって投げつけるからな。あの一夜でそれはお前も知ってるだろ(出張所に足を運んだのは2回目、ろくに身辺整理をする暇もなかったのか玄関前に積み上がった段ボールから自身の私物を取り出しては部屋へを繰り返しつつクイントへ相槌を打った)

クイント「う”っ……確かに。この案件はちょっと地雷っすわ……。はぁ〜〜でもどうなっちゃうのかねーこれ、絶対ボスあれ乗り気でしたもん。きっと私らを郊外に待機させて自分一人で臨みますよ

エディ「家族の過ちを正すのもまた家族の仕事だ。自身を省みないようなら足をへし折ってでも止めればいい(すれ違いざま、そこに一切の躊躇のない目をシャフ度気味にクイントへ向け、再び部屋へ荷物を運び込む作業に戻る)

クイント「うっわ、エドガーさんの場合マジでやりそう真顔だし……。あ、そうだそうだ、ボスからこれ聞いとけって……。もう『対象』とは良好な関係気づけたんです?

エディ「—————(部屋から玄関へ向かう途中の足を止め、咄嗟に無言で顔を反らす)

クイント「なんでやねん(全ギレ)こんな可愛い美少女と普通にタメ効いてるんだ余裕のよっちゃんっしょ女の子一人と仲良しこよしなんざオラァおおん?

エディ「…………よくわからないんだけど、あの人苦手だ。調子狂う……(踵を返し背を向けたまま厨房に向かい調理器具一式をシンクに並べ、体重を支えるように腕を台についた)調子狂うんだよ……ああ言う人は、まぁいたかも知れないけど別段関係が良好になろうがなかろうが俺は構いはしなかった。ただ、今回はこれが『仕事』だ、自然体でやれって言う方が無理な話なのに作為的に立ち回れそうな相手じゃない

クイント「うーわ目が死んでる、今日の晩御飯はエドガーくんの開きかなってぐらいに乾いてやがるぜ。 ツーか考えすぎじゃん?(後なんで私が美少女云々は華麗に流すんですかねこいつ)—————一応念押ししますけど。私らがバスカヴィル連中相手に太刀打ちする唯一無地のカードですからね、彼女。くれぐれもお願いしますよほんとに、にんじんあげるからマジ頼みますね

エディ「プレッシャーかけるなってんだよ(いつになく声を荒あげまな板に拳を叩きつけた)………。ハァ……悪い、寝不足なんだ(その反動がきたのか動揺気味にがっくりと肩を落とし背を向けたままそう付け加える)


クイント「おぉ、おおう……まぁクイントさんはブラックホール並みに根に持つが同時に奥深く無限大に広い心の持ち主だ許してやる。ん〜……まぁ私ら裏社会の人間からしたらさっさと拉致して四肢切断して確保しちゃえって案件なんですけどね。まぁボスもあんたも私も誰もかれもが納得しないからこうするって話ですし……あそうだヴォイドさんとかラングさんとかに相談するのは?あの人達職業柄意識して好感度稼ぐの得意っしょ

エディ「———考えとく(と短く返事し刻み終えた野菜を冷蔵庫に均等に並べ)バサッ(おもむろに衣紋掛けからコートを抜き取り流れるような所作でそれを羽織った)

クイント「あれー?もう言っちゃうんです?キャロルちゃんにも顔合わせてないじゃないっすかー

エディ「一応家族とは連絡は取り合ってる。機材を取りに来ただけだしわざわざ顔合わせすることもない、目を離した隙にバスカヴィルが彼女に仕掛けるかもわからないからな。と、言うわけで……。(と、告げるとリュック一つを軽々と背負い込んで玄関で丁寧に磨かれた靴を履き)行くわ、またな(手をひらりと振ると足早にその場を後にした)

クイント「は????おいちょっと待て私は既読スルーしたよなおおいちょっとぉ!?ゴリラとだって連絡取り合うくせに!ゴリラとだって!!ちくしょうゴリラに負けた!!


シェン「ピッザーッ!!(キャップ帽にレザージャケットにTシャツにジーンズという80年代アメリカにありがちな出で立ちに染まり、箱買いしたピザを両手いっぱいと言うおまけ付きで意気揚々とこの界隈では比較的広い邸宅に帰ってくる)いやぁ楽しみだったんだよネ、サンレスガーデンのピッザ。かれこれ6年ぐらい?ここのジャンクなシーフードの香りがんもぅたまんねぇのなんのって。

シェン「ほら、ご当地グルメってヘルシーじゃん、都会のジャンクフードってジャンク味しかないじゃん。ところがここのシーフードピッザはすごいぞ。ご当地の海の幸を踏んだんに、安っぽいけど量はあるチーズの上に敷き詰めてマヨネーズドバー!ケチャップドバー!……って、あら?

クイント「————ボスとジゼルさんは先にご近所へ挨拶回りへ行きましたよ(一回のダイニングに配置されたソファーを陣取り気だるげな半目でテレビを形だけは見ながら抱えた駄菓子の袋から入れ替わり立ち替わりトルティーヤチップスを引っ張り出しては貪る)

クイント「ついでに言うとお師匠様『こんな狭いとこに同居とか冗談じゃない』って言って仮住まいの寄宿舎へ。アニマートさんには今日の晩御飯の食材を買い出しに行ってもらって、ラウニさんには市役所へ書類一式を持って行ってもらっておりまして、イガルクさんと吉永さんとコンキリオさんは後々合流って感じです。おいたんはまだ片付けてない案件があるのと例のお姫様の件もあってしばらくは外勤なんだそうっす

シェン「へぇ、あぁ、そう……(何気に用意していたレンタルビデオ一式を渋々バッグにしまいがっくりと項垂れる)あれ、キャロルたそは?て言うか君何してんのよさ

クイント「私はあれ、あのあれ……お留守番です。誰もいないって言うのも不安じゃん?(もっきゅもっきゅ)お姫ちゃんは颯爽と近所へ感性の赴くままに出掛けちゃいました。悪い友達ができてもすぐ首が飛ぶでしょうしまぁ大丈夫でしょう(もっきゅもっきゅ)

シェン「OH MY GOD!!なんでそこは引き止めとかないんだこのウサ公ッ!年長者の僕が毎回責任問題問われるってのにッ!!

クイント「いや……まぁ……うぅん、大丈夫ですよ大丈夫。元いたとこと違って勝手が違うんですしそこまでハメ外さないってヘーキヘーkキャーッ!!なにこの韓流俳優!メガネ男子、一昔前のメガネ男子じゃんレットロォー!!





―――大和国、港街―――






―――外洋と繋がる海もやや遠く、風が運ぶ潮の匂いも薄くなっている……サンレスガーデンへと向かう道を、一台の中型トラックが走っている――― 」


白鷺「ゲッホ…ゲホ、ケホ…(緩い着付けの和装に、恐らくは同乗者の物であろう分厚いモッズコートを羽織った小柄な女性…白鷺清華が、トラックの助手席で口元を手で押えながら咳き込んでいる)寒っ……車だし着込めばセーフだと思ってたんですけど…ゲホッ…ッケブォッ!!(咳が収まり話始めた最中、再び咳き込んだと思えば突然喀血する) 」

ラウニ「いやお前…今は外でも普通の人間はちょっと着込んでりゃそこまで寒くねえし、そもそもこの車乗ってから40分くらい?ずっと暖房掛けてんじゃねえか、こっちは暖かい通り越して暑いわ……(冬物の長袖シャツを着た、中世的な容姿の女性…ラウニ・レア・ルオデネンが、トラックの運転席でハンドルを握りながら呆れ気味に白鷺に口を開き)久々に会ったらこれだもんなぁ…薬飲んだか?体調最悪じゃねえか……あー……やっぱり血吐きやがった……服に付いてねえだろうな、こっち来て初日から血糊付けたくねえよ 」

白鷺「ブフゥ-…いやぁ、最近はすこぶる調子が良かったので大丈夫だと思ったんですけど……東の国から密輸船に乗っての大移動はちょっと堪えますねえ……あっ今は寒くないです、ラウニさんの分厚いコートと今の暖房で丁度良いくらいです(いつの間にやら手に持って居たハンドタオルを口元から離さないまま、さりげなくコートの裾を捲り上げ) あー汚れてないです、大丈夫ですよー……"あの日"から行方知れずだった貴女から、突然用心棒なんて大役を任されたんですから、これぐらいならどうって事はありませんよ。…色々我儘も聞いて貰う約束ですし…(窓の外をキョロキョロと見渡し始め) 」

ラウニ「……だから、そりゃ悪かったって……こっちも事情があったとは言え、お前にはもうちょっと早く無事位伝えとくべきだったよ……今度からは連絡もちゃんと取るし我儘も聞いてやるから……(ハンドルを握りながらも、ばつが悪そうに白鷺に)……なんだ、寄り道か? 」

白鷺「そうそう、寄り道……大和本場の菓子を久しぶりにと思いまして……確かサンレスガーデンの手前に有名なお店が…(眼を細め、やや身を乗り出して遠くを見) 別に怒ってる訳じゃ無いですよー、行き成り玄関先に貴女が現れて手伝ってくれーなんて言われた時は驚きの次にイラつきが来ましたけど……でも貴女には沢山助けられて来ましたし、何より深ーい仲ですから…(意味有り気に呟き) 」

ラウニ「あの時説明した通り、こうやってボスから離れたルートで密輸ルートで物資を運び込む私に、ボスが信用出来る人間を割きたくないってのがあってな…ボスとお前は面識が無いからアレだけど、私にとって一番信用出来る内の一人がお前だからさ……  何回か一緒の部屋で寝た時も咳が煩くて寝れなかったのとお前が風呂場でゲロ詰まらせて死に掛けて大騒ぎになったとかそんな記憶しか無いんだけどな…(呆れた様に白鷺に言い、運転しながら片手でナビを軽く操作し)……この先…この先…?あーあるな、和菓子屋…すぐそこだわ… 」

白鷺「……確かに同衾とは言えませんけど……所でこのトラックの積み荷の内容って何なんでしょう?やっぱり銃?(自らが隠し持っている短刀と、コンソールと運転席の間に挿し込まれて固定されている拳銃を交互に見) 」

ラウニ「まあ銃だな、アサルトライフル、諸々の狙撃銃にサブマシンガン、弾も…特にマッチグレードはそうそう用意出来ないから多めに持ち込んでおきたいし、後はプラスチック爆弾もあると便利だし……お前の刀だって後ろの積み荷の中だし、後他の面子の武器も用意しとかないとだし……あの量は正規のルートじゃあ持ち込めないしな……あー、言ってる間に着いたじゃねえか、車止めるスペースは……あーあるな ―――…よーし適当に止め…て…(減速もそこそこに少々強引に駐車場に入り、手早く車を止め) 」

白鷺「私はなんなら竹光一本でもあんまり困りませんけど、色々要ると大変ですね……  運転も停車も上手なんでしょうけど、相変わらず停めるのは本当に雑ですね……まあ、これはこれで久しぶりで面白いから良いとして……(車を降り、駐車場から和菓子屋へと歩き始め)……さぶっ…! …でも、いやあ本当に久しぶりですねえ、一緒にこうやってお店でお菓子を食べるのも……確かあんみつが有名だったんですよね、折角だし一緒に食べましょ…っとそうだ、ぜんざいも久々に良いかも…(虚弱な体質らしく寒がったのは一瞬で、テンションが上がって足取りが軽くなり) 」

ラウニ「適当に選んでこ……って一緒に?私もか……(拳銃を服の内側に隠し、白鷺に続いて車を降り)……此処で食っていく気か……早めにもう一回ボスと合流したいんだけどな…(我儘付き合うって言っちまったしなあ……)……食べるのは良いけど腹壊すなよ、頼むから…連絡だけ入れとくか、遅れて届く荷物と護衛はもう直ぐ無事にそっちに着きそうってメール入れて、後電話も……拠点なら誰かしら出るだろ(携帯電話を取り出して手早くメールを送信し、次にグラナートファミリエ出張所の番号へ電話を掛けた―――) 」







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最終更新:2020年10月04日 19:14