Scene:AE
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cielenica
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たとえば、すべてが終わったとして。
終わるその寸前で、最後のチャンスを差し出されたとして。
終わるその寸前で、最後のチャンスを差し出されたとして。
火の、肌を焼く嫌な匂いが漂いながら、そんなことを考える。見上げれば綺麗な夜空か明けた朝が広がっていたかもしれないが、劫火に包まれたこの城内では生憎と星も日の明かりもすべてが届いてくれない。
そもそも視界はとうに焼け潰れていたし──いや、あるいはただ血が足りなくて見る力が尽きているだけかもしれないが、とにかく暗くて何も見えない。ごうごう、ごうごうと重く風の奔る音のような炎上を聞きながら、端から感覚をなくしていく四肢について乾いた恐怖を覚える。聴覚だけがまともに機能している、ということがこんなにも心細いものだと知れたのがこの終だったのは、よかったのかもしれない。
いずれは肉も骨も、燃えた瓦礫に呑まれていく自分の身体。きっとそのときに魂も消えてしまう。だからだろうか、もう言うまいと思っていた負け惜しみをこんなふうに内心吐露して、ああ、悔しいなと思い出していくのは。
結局のところ。
積み重ねてきた歴史書の厚さに織り込まれてきた過去の人物たちと、それは同じような話。
俺は戦って、負けて、これから死ぬ。変えられない現実というのは至極シンプルで、息ができているかも定かでない喉を動かしながら、かろうじて残る酸素を手繰り寄せて考えている。
そもそも視界はとうに焼け潰れていたし──いや、あるいはただ血が足りなくて見る力が尽きているだけかもしれないが、とにかく暗くて何も見えない。ごうごう、ごうごうと重く風の奔る音のような炎上を聞きながら、端から感覚をなくしていく四肢について乾いた恐怖を覚える。聴覚だけがまともに機能している、ということがこんなにも心細いものだと知れたのがこの終だったのは、よかったのかもしれない。
いずれは肉も骨も、燃えた瓦礫に呑まれていく自分の身体。きっとそのときに魂も消えてしまう。だからだろうか、もう言うまいと思っていた負け惜しみをこんなふうに内心吐露して、ああ、悔しいなと思い出していくのは。
結局のところ。
積み重ねてきた歴史書の厚さに織り込まれてきた過去の人物たちと、それは同じような話。
俺は戦って、負けて、これから死ぬ。変えられない現実というのは至極シンプルで、息ができているかも定かでない喉を動かしながら、かろうじて残る酸素を手繰り寄せて考えている。
これから、すべてが終わったとして。
終わるその寸前で、最後のチャンスを差し出してくれるのは。
終わるその寸前で、最後のチャンスを差し出してくれるのは。
当然だが、もちろん、世迷言だ。そういうことをしてくれそうな奴はとうに死んだか、いなくなった。
みんな、俺が決めた方針に付き従った。おそらくそれに逆らいたい奴もいただろうに、結局大した謀反が起きたわけでもない。ひっそりといなくなることはあったが、それは最善だったと俺は思う。戦力が削れるということを痛いとするのなら、俺は、そいつが悔いのない人生を歩んでくれるなら全然だとも思う。自分自身悔いのある人生しか歩めなかったから、そう、選べる人が羨ましいというのが本音かもしれない。
振り返ってみればなんとも不運の連続だった。恵まれてはいただろう、幸せだったのだろう。俺はきっと、誰かに愛されていたんだろう──そう、そうなんだろう と不確かな物言いになってしまうほどに、俺は誰かによって奪われてきたし、何かによって喪ってもきた。それ以上に多くの物を奪い、無価値に消費したという事実もあるにはあるが、俺個人の人生に焦点を当てるというのならきっと、総評としては間が悪い男だったに違いない。
いつだかに言われた言葉をふ、と思い出す。
『お前は今、生まれてきてはならなかった』
笑いそうになった。ああ、確かにその通りだった。どこぞとも知れなかった人間の怨嗟の声は、的確なほど的を得ていて深く深く傷をえぐるように突き刺さる。生まれるべきではなかった。今、生まれてきてしまったからすべてが悪い方向に転がり落ちたのだと。
つまり、俺が端から息をしていなければ、たぶん、そういうことにはならなかったという話で。
恵まれて、幸せで、愛されていても、ただ存在からして呪いだというのならば、そうするしかない。そうであったことを、ここまできた以上俺は受け入れざるを得ない。
哀しく思う。資格があるかどうかは分からないが、自分で自分のことを憐れむ。馬鹿だ、と口に零す。それすらも炎に溶けていく。
みんな、俺が決めた方針に付き従った。おそらくそれに逆らいたい奴もいただろうに、結局大した謀反が起きたわけでもない。ひっそりといなくなることはあったが、それは最善だったと俺は思う。戦力が削れるということを痛いとするのなら、俺は、そいつが悔いのない人生を歩んでくれるなら全然だとも思う。自分自身悔いのある人生しか歩めなかったから、そう、選べる人が羨ましいというのが本音かもしれない。
振り返ってみればなんとも不運の連続だった。恵まれてはいただろう、幸せだったのだろう。俺はきっと、誰かに愛されていたんだろう──そう、
いつだかに言われた言葉をふ、と思い出す。
『お前は今、生まれてきてはならなかった』
笑いそうになった。ああ、確かにその通りだった。どこぞとも知れなかった人間の怨嗟の声は、的確なほど的を得ていて深く深く傷をえぐるように突き刺さる。生まれるべきではなかった。今、生まれてきてしまったからすべてが悪い方向に転がり落ちたのだと。
つまり、俺が端から息をしていなければ、たぶん、そういうことにはならなかったという話で。
恵まれて、幸せで、愛されていても、ただ存在からして呪いだというのならば、そうするしかない。そうであったことを、ここまできた以上俺は受け入れざるを得ない。
哀しく思う。資格があるかどうかは分からないが、自分で自分のことを憐れむ。馬鹿だ、と口に零す。それすらも炎に溶けていく。
もしくは、すべてが終わったとして。
終わるその寸前に、最後のチャンスというものがある場合。
終わるその寸前に、最後のチャンスというものがある場合。
願い事があるならば、そのときに叶えてもらうのがいいだろう。
でも、いったい何を願えばいい?この場にいる俺の生存?それとも死んでいった彼らの蘇生?戦争に巻き込んでいった無辜の民への酬い?あるいは。
あるいは、そう。
敵対した手前、お互いに退くことはもうできないと拒絶した彼らのことについて浮かぶ。
知らない人たちだった。あくまでも報告書を通して、それか戦火を交えてのものでしか俺は彼らを知らない。ただそこには強烈な戦意だけがあって、個人の事情を顧みることなどできなかった。因縁は確かにあったのだろう。彼らを率いる少女が当初は復讐のために武器を取り、最後には王の表情を見せたように、何か変わるものが見えていたのだろう。
それから、そう。
俺は、何も知らなかったのだろうと思い到る。彼らのことも、彼らのことも。敵も味方もまとめてしまえば、俺の理解が及ぶ前に過ぎ去ってしまった。理解しないと拒絶したから、いらないと思ってしまったから、最後まで誰一人として分からないまま終わった。
だから俺はひとりぼっちで死ぬのだ。孤独という報いを受けて、当たり前のように死ぬ。
そうであるならば、確かに願えることがひとつだけあるのだ。
でも、いったい何を願えばいい?この場にいる俺の生存?それとも死んでいった彼らの蘇生?戦争に巻き込んでいった無辜の民への酬い?あるいは。
あるいは、そう。
敵対した手前、お互いに退くことはもうできないと拒絶した彼らのことについて浮かぶ。
知らない人たちだった。あくまでも報告書を通して、それか戦火を交えてのものでしか俺は彼らを知らない。ただそこには強烈な戦意だけがあって、個人の事情を顧みることなどできなかった。因縁は確かにあったのだろう。彼らを率いる少女が当初は復讐のために武器を取り、最後には王の表情を見せたように、何か変わるものが見えていたのだろう。
それから、そう。
俺は、何も知らなかったのだろうと思い到る。彼らのことも、彼らのことも。敵も味方もまとめてしまえば、俺の理解が及ぶ前に過ぎ去ってしまった。理解しないと拒絶したから、いらないと思ってしまったから、最後まで誰一人として分からないまま終わった。
だから俺はひとりぼっちで死ぬのだ。孤独という報いを受けて、当たり前のように死ぬ。
そうであるならば、確かに願えることがひとつだけあるのだ。
ここから、すべてが終わって。
それでも、すべてが始まったとしよう。なあ、お前 は何を願う?
それでも、すべてが始まったとしよう。なあ、
過去の人々と同じ、死の淵に立たされたから湧き上がる。俺の望みは、否、担うべき役目 は。
こんな結末 を拒絶すること、だったのかも、しれなかった。
こんな
「運命っていろんな意味が含まれていると思わないか。運命的な出会い、というとポジティブだが、これは運命だったと称するときにはネガティブな要素も含まれる。
デスティニー、ドゥーム、フェイト、フォーチュン、ロット、ポーション……まあ言い方もそれぞれだが、とにかくひとは運命に特別な意味を求めているとは思うんだ。
ここでひとつ話は変わるが、たとえば物語の結末は何が好ましいと思う?完全無欠のハッピーエンド?非の打ち所がないバッドエンド?どちらともつかない終わり方?どちらとも受け取れる終わり方?ここについては人の好みに依存するだろうから、多くを聞くことはしないがそうだな。
少なくとも俺は、ハッピーエンドが好きだよ。たとえどんなに残酷な脚本だったとしても、最後にはメインキャラの誰も彼もが報われる話がいい。なるべく言うなら、生存していってほしい。もちろん、幻覚とかそういう姑息な手段でない、正しい幸せを掴み取った上でのことだ。そしてそこには、キャラクターたちの熱が息衝くものであるといい。注文が多いかもしれないが、なに、大したことはないよ。
だから、――そうだな。
お前が、俺と鼓動を合わせられるものであるのなら。こんな結末を拒絶すると願うのなら。
取引がしたいんだよ。
利害の一致というやつだ。お前も俺も、最高の結末を迎えたがっていた奴なんだから」
デスティニー、ドゥーム、フェイト、フォーチュン、ロット、ポーション……まあ言い方もそれぞれだが、とにかくひとは運命に特別な意味を求めているとは思うんだ。
ここでひとつ話は変わるが、たとえば物語の結末は何が好ましいと思う?完全無欠のハッピーエンド?非の打ち所がないバッドエンド?どちらともつかない終わり方?どちらとも受け取れる終わり方?ここについては人の好みに依存するだろうから、多くを聞くことはしないがそうだな。
少なくとも俺は、ハッピーエンドが好きだよ。たとえどんなに残酷な脚本だったとしても、最後にはメインキャラの誰も彼もが報われる話がいい。なるべく言うなら、生存していってほしい。もちろん、幻覚とかそういう姑息な手段でない、正しい幸せを掴み取った上でのことだ。そしてそこには、キャラクターたちの熱が息衝くものであるといい。注文が多いかもしれないが、なに、大したことはないよ。
だから、――そうだな。
お前が、俺と鼓動を合わせられるものであるのなら。こんな結末を拒絶すると願うのなら。
取引がしたいんだよ。
利害の一致というやつだ。お前も俺も、最高の結末を迎えたがっていた奴なんだから」