プッチは思考する。この状況で自分はいかなる行動をとるべきかを。
視界に入るのは、頭を抱え一人自分の世界に入り込む少女と傍に佇む男。更にその奥で戦いを繰り広げる二人の参加者。
プッチは少女を懐柔したいとは思っているが、危険な参加者ならば排除の方を優先しようとしている。
だが今の彼には、視界にいる少女が危険かどうかを判断しかねていた。
なにせ、彼女は何もしていないのだ。横にいる男を放置してただ頭を抱え、何かをブツブツ呟くことしかしていない。
しかしいつまでも手をこまねているわけにもいかない。
なにせ、彼を取り巻く現状は何一つ変わっていないどころか、悪化しているからだ。
具体的に言うと、未来の悪魔がいつの間にかいなくなっていることを確認した。
視界に入るのは、頭を抱え一人自分の世界に入り込む少女と傍に佇む男。更にその奥で戦いを繰り広げる二人の参加者。
プッチは少女を懐柔したいとは思っているが、危険な参加者ならば排除の方を優先しようとしている。
だが今の彼には、視界にいる少女が危険かどうかを判断しかねていた。
なにせ、彼女は何もしていないのだ。横にいる男を放置してただ頭を抱え、何かをブツブツ呟くことしかしていない。
しかしいつまでも手をこまねているわけにもいかない。
なにせ、彼を取り巻く現状は何一つ変わっていないどころか、悪化しているからだ。
具体的に言うと、未来の悪魔がいつの間にかいなくなっていることを確認した。
「ついてくるのが勝手なら、去っていくのも勝手ということか」
いざというときに頼られる相手はいなくなった。
こうなると最早なりふりは構っていられない。
流石に明らか殺し合いに乗った参加者と組もうとは思えないが、危険は覚悟するしかない。
こうなると最早なりふりは構っていられない。
流石に明らか殺し合いに乗った参加者と組もうとは思えないが、危険は覚悟するしかない。
「3……5……7……
覚悟は幸福だ。そうだろう?」
覚悟は幸福だ。そうだろう?」
素数を数え、己を鼓舞するプッチ。
そして彼は一歩一歩、少女と男の二人組へと近づいていく。
幸いと言うべきなのか、二人はまるでプッチを意に介していない。
だが彼はあることに気づいてしまう。
そして彼は一歩一歩、少女と男の二人組へと近づいていく。
幸いと言うべきなのか、二人はまるでプッチを意に介していない。
だが彼はあることに気づいてしまう。
(男の方に首輪がついていない……!?)
そう、男の首には参加者なら誰もがつけている筈の物がなかった。
なんらかの方法で首輪を外したのか、と一瞬考えるも、それなら隣の少女の首輪も外しておくだろう。
ならばおそらく、彼はNPCだ。未来の悪魔は首輪をしていなかったことから、おそらくNPCは首輪の枷がない。
自分が未来の悪魔と行動を共にしていたように、何らかの理由で少女とNPCが講堂を共にしているのだろう、とプッチは推測した。
なんらかの方法で首輪を外したのか、と一瞬考えるも、それなら隣の少女の首輪も外しておくだろう。
ならばおそらく、彼はNPCだ。未来の悪魔は首輪をしていなかったことから、おそらくNPCは首輪の枷がない。
自分が未来の悪魔と行動を共にしていたように、何らかの理由で少女とNPCが講堂を共にしているのだろう、とプッチは推測した。
実のところ、首輪の枷があるNPC森近霖之助が存在しているのでプッチの推測は間違っているのだが、それを彼が現段階で知ることはできない。
「少し、いいかね?」
「っ!?」
「っ!?」
プッチは少女、シャドウ茜に声をかける。
いきなり記憶のDISCを抜き取ることも考えたが、もし気づかれた場合交渉の余地は一切なくなるだろう。
なので彼は捻ったことはせず、素直に交渉を臨むことにした。
すると声をかけられた彼女は、ここにきて初めてプッチに気づき男、『マイ・ディア・スカル』と共に手にある武器を構える。
茜はタガーをプッチに向けながら、震えるような声を出した。
いきなり記憶のDISCを抜き取ることも考えたが、もし気づかれた場合交渉の余地は一切なくなるだろう。
なので彼は捻ったことはせず、素直に交渉を臨むことにした。
すると声をかけられた彼女は、ここにきて初めてプッチに気づき男、『マイ・ディア・スカル』と共に手にある武器を構える。
茜はタガーをプッチに向けながら、震えるような声を出した。
「あ、あなたもどうせ『悪党』なんでしょ……! 改心させてやるんだから……!!」
「ふむ、私が悪党か。
私はあれだけ隙だらけだった君に手を出さず、こうして話し合いを申し込んでいるのだがね。
少なくとも、殺し合いに乗っていないと証明できているはずだ」
「う、うるさい! 私を今殺さないってだけで、どうせ騙し討ちするんでしょ!!
騙されない! 私は騙されたりしないんだから!!」
「ふむ、私が悪党か。
私はあれだけ隙だらけだった君に手を出さず、こうして話し合いを申し込んでいるのだがね。
少なくとも、殺し合いに乗っていないと証明できているはずだ」
「う、うるさい! 私を今殺さないってだけで、どうせ騙し討ちするんでしょ!!
騙されない! 私は騙されたりしないんだから!!」
プッチの言葉に茜は聞く耳を持たず、スカルに鉄パイプで攻撃させる。
「ホワイトスネイク!!」
プッチは己のスタンドを出現させ、スカルの攻撃を防ぐ。
ここで彼はスカルがNPCではなく、スタンドかそれに類するものだと感じた。
NPCというには自我が薄いうえに、命令を素直に聞いている。
もしかしたら茜にNPCを自在に操る能力がある可能性も一瞬だけ考えたが、スカルの攻撃を受け止めた時に、感触が物体ではなくスタンドと同類だと直感したのだ。
ここで彼はスカルがNPCではなく、スタンドかそれに類するものだと感じた。
NPCというには自我が薄いうえに、命令を素直に聞いている。
もしかしたら茜にNPCを自在に操る能力がある可能性も一瞬だけ考えたが、スカルの攻撃を受け止めた時に、感触が物体ではなくスタンドと同類だと直感したのだ。
「だったら!!」
一方、スカルの攻撃を受け止められた茜は即座に『マイ・ディア・スカル』を解除し、『マイ・ディア・ジョーカー』を己の傍に顕現させる。
骨の仮面で顔を隠した髪以外漆黒の少年は、ドミノマスクで目元を隠した赤い髪と漆黒の少年へと切り替わった。
骨の仮面で顔を隠した髪以外漆黒の少年は、ドミノマスクで目元を隠した赤い髪と漆黒の少年へと切り替わった。
「何ィィィィ――――――ッ!?」
攻撃を受け止めていた筈の相手が姿を消したかと思うと、次の瞬間には別の姿となり茜の傍に移動していることに驚くプッチ。
スタンドと似たような物であり、同じではないと考えていたとはいえ、ここまで姿をガラッと変えてくるとは思っていなかったのだ。
スタンドと似たような物であり、同じではないと考えていたとはいえ、ここまで姿をガラッと変えてくるとは思っていなかったのだ。
ダッ
茜によって顕現したジョーカーは、目にもとまらぬ速さでプッチへと駆け寄り、そのまますれ違いざまに足を切りつける。
そのままジョーカーは再びプッチへと迫っていく。
今度ナイフで狙うのは体。このまま心臓を貫けば即座に絶命するだろうし、失敗しても体のどこかを刺せば十二分に無視できないダメージとなるだろう。
だがそうはいかない。
そのままジョーカーは再びプッチへと迫っていく。
今度ナイフで狙うのは体。このまま心臓を貫けば即座に絶命するだろうし、失敗しても体のどこかを刺せば十二分に無視できないダメージとなるだろう。
だがそうはいかない。
ガシッ
ジョーカーのナイフを、ホワイトスネイクは受け止めた。
いくら素早くてもジョーカーの動きは単調だ。最終的にこっちに迫ってくるのは分かっていた。
手には銃を持っているが、ホワイトスネイクで攻撃を受け止めるところを見ているのだ。防がれて決定打にならないと判断し、本体狙いに徹しているのだろう、とプッチは推測していた。
いくら素早くてもジョーカーの動きは単調だ。最終的にこっちに迫ってくるのは分かっていた。
手には銃を持っているが、ホワイトスネイクで攻撃を受け止めるところを見ているのだ。防がれて決定打にならないと判断し、本体狙いに徹しているのだろう、とプッチは推測していた。
「うおおおおおおおおおおおおお!!」
プッチが雄たけびを上げながら、ホワイトスネイクはジョーカーを茜へと投げ飛ばす。
投げ飛ばされたジョーカーは空中で回転しながら体勢を整え、ホワイトスネイクに数発発砲した。
その弾丸をホワイトスネイクは両拳で弾き飛ばすが、それは目晦まし。
弾丸に構っている間にジョーカーは消え、代わりに猫の仮面を被ったSMの女王様のような服をし、鞭を携えた少女『マイ・ディア・パンサー』が顕れた。
投げ飛ばされたジョーカーは空中で回転しながら体勢を整え、ホワイトスネイクに数発発砲した。
その弾丸をホワイトスネイクは両拳で弾き飛ばすが、それは目晦まし。
弾丸に構っている間にジョーカーは消え、代わりに猫の仮面を被ったSMの女王様のような服をし、鞭を携えた少女『マイ・ディア・パンサー』が顕れた。
(くっ、一体こいつはいくつ形態を持っているというのだ!?)
プッチが内心で憤るも、茜がそれを勘定する義理はない。
パンサーが鞭を振るうと、プッチの足に絡ませる。
そして鞭を引っ張ることで体勢を崩し、転ばせた。
パンサーが鞭を振るうと、プッチの足に絡ませる。
そして鞭を引っ張ることで体勢を崩し、転ばせた。
「ホワイトスネイク!!」
プッチはホワイトスネイクに手刀で鞭を切り裂かせようとするが、そこにズガガガガガガガとパンサーのマシンガンが叩き込まれる。
それだけでホワイトスネイクは大きくダメージを負い膝をつき、本体であるプッチもまた体に大きく傷がつく。
当然、その隙を見逃す茜ではない。
彼女はプッチの体にのしかかり、手にあるナイフを振り上げる。
これを振り下ろせばそれで彼はおしまい。
一度で足りなければ幾度でも振り下ろせばいい。ここから助かる道など、茜は用意しない。
それだけでホワイトスネイクは大きくダメージを負い膝をつき、本体であるプッチもまた体に大きく傷がつく。
当然、その隙を見逃す茜ではない。
彼女はプッチの体にのしかかり、手にあるナイフを振り上げる。
これを振り下ろせばそれで彼はおしまい。
一度で足りなければ幾度でも振り下ろせばいい。ここから助かる道など、茜は用意しない。
「これで終わりよ『悪党』。私が『改心』させてやるんだから」
「待ってくれ」
「待ってくれ」
だがプッチはここで待ったをかける。
この絶体絶命の追い詰められた状況にも係わらず、まるで怯むことなく茜を見つめながら問いかける。
この絶体絶命の追い詰められた状況にも係わらず、まるで怯むことなく茜を見つめながら問いかける。
「冥土の土産という奴だ。一つだけ聞かせてくれ。
私が悪党だと言うのなら、君は正義なのか?」
「そうよ! 私は『悪党』を『改心』させる正義!」
私が悪党だと言うのなら、君は正義なのか?」
「そうよ! 私は『悪党』を『改心』させる正義!」
プッチの問いに対し、茜は強く断言した。
彼女の声は徐々に高らかになっていく。
彼女の声は徐々に高らかになっていく。
「悪い大人も、それを見てるだけで何もしない人間なんていらない!!
私が、私の怪盗団が正義を実現するのよ!!」
私が、私の怪盗団が正義を実現するのよ!!」
視界の先には殺し合いに乗った二人が戦っている筈なのに目もくれず、眼下に倒れ伏すプッチへと勝ち誇る茜。
しかし彼女の姿に真の誇りは感じられない。
代わりに見えるのは虚勢。自身が正義であって欲しいと、あらねばならないという、ただの張り子の虎。
しかし彼女の姿に真の誇りは感じられない。
代わりに見えるのは虚勢。自身が正義であって欲しいと、あらねばならないという、ただの張り子の虎。
「君の正義では、世界は何も変わらないぞ」
そんな虚ろな正義に、プッチは冷や水を浴びせた。
彼はここまでのやり取りで、ある程度茜の性格を読めていた。
神父として幾人もの人間を見てきたので、彼女に似たような話などいくらでも知っている。
彼はここまでのやり取りで、ある程度茜の性格を読めていた。
神父として幾人もの人間を見てきたので、彼女に似たような話などいくらでも知っている。
プッチにとって、茜はただ人間不信をこじらせただけの思春期の少女でしかない。
不信に至る過去はあるのかもしれない。
悪を殺したい理由も存在するのだろう。
それがなんであれ、目につく悪を排除すればいいという考えは、はっきり言って稚拙だ。
おまけに加えて、彼女はおそらく己の正義の不具に気づいている。
気づいていて、目をそらしている。
そう断じていた。
不信に至る過去はあるのかもしれない。
悪を殺したい理由も存在するのだろう。
それがなんであれ、目につく悪を排除すればいいという考えは、はっきり言って稚拙だ。
おまけに加えて、彼女はおそらく己の正義の不具に気づいている。
気づいていて、目をそらしている。
そう断じていた。
「己の目につく範囲で何かしたところで、世界の裏に潜む真の悪は消えはしない。
適当な相手に罪を押し付けて、自分は何も変わらず生きていくだろうな」
適当な相手に罪を押し付けて、自分は何も変わらず生きていくだろうな」
だからプッチは茜の正義を根本からへし折る。
適当におだてて肯定してもよかったが、それではこちらに矛先が向きかねない。
ならば徹底的に打ちのめし、そのうえでこちらに依存させるしかない、と決断した。
適当におだてて肯定してもよかったが、それではこちらに矛先が向きかねない。
ならば徹底的に打ちのめし、そのうえでこちらに依存させるしかない、と決断した。
「そんな……そんなわけない!!」
一方、茜は必死にプッチの言葉を否定する。
そもそも彼女の根本には、政治家である大和田純のひき逃げを証言したにもかかわらず、警察の圧力で握りつぶされた挙句秘書を替え玉にして逃げ出されたことがある。
真の悪を見逃す腐敗した警察組織と、替え玉にさせられた罪なき秘書の家族が加害者家族のレッテルを張られる理不尽を許せないのが、彼女の正義。
まさしくプッチの言ったことそのままであり、それを否定するために正義を志しているのに切り捨てられれば、己の全てを否定されるに等しい。
そもそも彼女の根本には、政治家である大和田純のひき逃げを証言したにもかかわらず、警察の圧力で握りつぶされた挙句秘書を替え玉にして逃げ出されたことがある。
真の悪を見逃す腐敗した警察組織と、替え玉にさせられた罪なき秘書の家族が加害者家族のレッテルを張られる理不尽を許せないのが、彼女の正義。
まさしくプッチの言ったことそのままであり、それを否定するために正義を志しているのに切り捨てられれば、己の全てを否定されるに等しい。
「私の怪盗団は……」
だが否定の言葉が茜から出てこない。
それも当然だろう。彼女が正義に縋ってから何をした。
元の世界では『偽物の』怪盗団をジェイルに引き込もうとしたが、それより先にコンペロワに呼ばれてしまった。
そしてコンペロワでは『悪党』を一体殺した。
無抵抗の女性を助けるため、怒りを携えて自分に向かってきた、ナイフとパイプで打ちのめされ、幼子のように泣きながら命を終えた『悪党』を。
それも当然だろう。彼女が正義に縋ってから何をした。
元の世界では『偽物の』怪盗団をジェイルに引き込もうとしたが、それより先にコンペロワに呼ばれてしまった。
そしてコンペロワでは『悪党』を一体殺した。
無抵抗の女性を助けるため、怒りを携えて自分に向かってきた、ナイフとパイプで打ちのめされ、幼子のように泣きながら命を終えた『悪党』を。
「そもそも」
当然、その隙を見逃すプッチではない。
相手が揺らいでいるとはいえ、未だ彼の生殺与奪の権は茜に握られているのだから。
彼は言葉を更に重ねる。
相手が揺らいでいるとはいえ、未だ彼の生殺与奪の権は茜に握られているのだから。
彼は言葉を更に重ねる。
「君の正義は悪を滅ぼすことのようだが、君にとっての悪は何を基準にしている?
人を殺すことか? 物を盗むことか?」
「そ、それは悪いことに決まってるでしょ!!」
「そうだな。どこの国であろうとも平時であれば裁判で有罪となり、刑務所に行くだろう」
人を殺すことか? 物を盗むことか?」
「そ、それは悪いことに決まってるでしょ!!」
「そうだな。どこの国であろうとも平時であれば裁判で有罪となり、刑務所に行くだろう」
プッチの問いに対する茜の返答を肯定しながらも、しかしと反語を口にする。
「それが平時でなければどうだ?
極限まで飢えた貧乏人がパンを盗むことは、裁かれなければならないほどの悪行か?
戦場に立った兵士が敵兵を殺すことが、悪と裁かれる道理はあるか?」
極限まで飢えた貧乏人がパンを盗むことは、裁かれなければならないほどの悪行か?
戦場に立った兵士が敵兵を殺すことが、悪と裁かれる道理はあるか?」
プッチの言葉に茜は返す言葉が出てこない。
無視してナイフを振り下ろせばいい。屁理屈だと怒ればいい。
だがどちらもできない。
今の彼女の精神状態で振り払うには、プッチの態度は強すぎる。
無視してナイフを振り下ろせばいい。屁理屈だと怒ればいい。
だがどちらもできない。
今の彼女の精神状態で振り払うには、プッチの態度は強すぎる。
正義感が強く、強い不安や孤独を抱いている人はカルト宗教に嵌りやすいとされる。
今の茜のように。
自分の考えを疑わない、自分に絶対的な確信のあるカリスマ性の持ち主は、カルト宗教の教祖に向いているとされる。
今のプッチのように。
今の茜のように。
自分の考えを疑わない、自分に絶対的な確信のあるカリスマ性の持ち主は、カルト宗教の教祖に向いているとされる。
今のプッチのように。
それを知ってか知らずか、プッチの語りは続く。
「人の法を基にした正義など、時と場所と場合で簡単に変わる。
世界には飲酒可能年齢すら統一された規格がないのだ。所詮人間に、決して揺るがぬものだと作り出すことなどできはしない」
「なら、どうすればいいのよ……!?」
世界には飲酒可能年齢すら統一された規格がないのだ。所詮人間に、決して揺るがぬものだと作り出すことなどできはしない」
「なら、どうすればいいのよ……!?」
プッチの言葉に、茜は縋るように問い詰める。
彼女が本当に自分の正義を盲信していれば、殺し合いが始まった直後の状態なら、こんなことは言わなかったに違いない。
だが今は日和とブースカ、そしてリンリンの思いが茜を揺らがせている。
その揺らぎをプッチは更に強くしたのだ、ならば思わず問うても仕方ないだろう。
彼女が本当に自分の正義を盲信していれば、殺し合いが始まった直後の状態なら、こんなことは言わなかったに違いない。
だが今は日和とブースカ、そしてリンリンの思いが茜を揺らがせている。
その揺らぎをプッチは更に強くしたのだ、ならば思わず問うても仕方ないだろう。
それこそがプッチの狙い通り。彼は更に畳みかけた。
「人の正義に限界はある。だが、神の正義は違う」
「神の正義……?」
「そもそも人の世はいくらでも移り変わる。
かつては空すら飛べなかった人間が、今は空の上すら超えて火星までたどり着く。
不治の病だった天然痘は、1980年にWHOが根絶したと発表している。
世界とは不変ではいられない。良くも悪くもな」
「神の正義……?」
「そもそも人の世はいくらでも移り変わる。
かつては空すら飛べなかった人間が、今は空の上すら超えて火星までたどり着く。
不治の病だった天然痘は、1980年にWHOが根絶したと発表している。
世界とは不変ではいられない。良くも悪くもな」
プッチの語りに、茜は何が言いたいのか今一つ掴めず、どこか訝し気な目で見つめている。
もっとも、その程度で怯むようであれば、刑務所の中で神父などできはしない。
もっとも、その程度で怯むようであれば、刑務所の中で神父などできはしない。
「だからこそ人には決して揺るがぬ不変の何かが必要なのだ。
それこそが信仰であり、神である」
「神様……」
「神が定めたご意志ならば、正義ならば未来永劫変わることはない。
そして私は神の正義のもとに、すべての人類を幸福にするために行動しているッ!!
この殺し合いの中でもだッ!!」
それこそが信仰であり、神である」
「神様……」
「神が定めたご意志ならば、正義ならば未来永劫変わることはない。
そして私は神の正義のもとに、すべての人類を幸福にするために行動しているッ!!
この殺し合いの中でもだッ!!」
囁くような茜の声に対し、プッチは反比例するかのように声を荒げていく。
「神のご意志を理解しない者もいる。
時には人道に背くこともある。犠牲が出ることもある。
それを人の法では悪と呼ぶこともあるのかもしれない。
だが――」
時には人道に背くこともある。犠牲が出ることもある。
それを人の法では悪と呼ぶこともあるのかもしれない。
だが――」
ここでプッチは、これまでの言葉の中で一番力強く、迷うことなく茜にあることを言い放った。
「私は正義の為ならば、どのようなこともする覚悟があるッ!
どんな試練も犠牲も乗り越え、全人類を幸福な世界、『天国』へと導く覚悟が!!」
どんな試練も犠牲も乗り越え、全人類を幸福な世界、『天国』へと導く覚悟が!!」
プッチは茜をギロリと睨む。
彼の瞳は決意に満ちていた。背けてばかり、逃げてばかりの彼女と違って。
彼の瞳は決意に満ちていた。背けてばかり、逃げてばかりの彼女と違って。
「ここで君が私を悪を断じて殺すのなら、それもまた主の思し召しかもしれない。
ならばこれも運命と、受け入れる覚悟を決めよう。
だが私を殺すというなら、私の代わりに人類を幸福に導いてもらう。その覚悟はあるか?」
ならばこれも運命と、受け入れる覚悟を決めよう。
だが私を殺すというなら、私の代わりに人類を幸福に導いてもらう。その覚悟はあるか?」
プッチの瞳と言葉に、茜は目を背ける。
そんな覚悟、あるわけがない。
幸せにしたい誰かもいない。己が生み出した『本物』の怪盗団しか寄る辺のない今の彼女には、プッチの言葉は重すぎる。
そんな覚悟、あるわけがない。
幸せにしたい誰かもいない。己が生み出した『本物』の怪盗団しか寄る辺のない今の彼女には、プッチの言葉は重すぎる。
長谷川茜というただの少女にとって、エンリコ・プッチという男は劇毒すぎる。
グラグラ
茜の意志の現れかのように、一瞬だけ体すらも揺れ動く。
「覚悟がないのならそこをどけ。私は何もない小娘の相手などしてられん。
しかし、ここで君と合ったのも引力によるものだろう。
もしそうであるならば、君にその気があるのなら、これまでのことは水に流して私と共に天国を目指さないか?」
しかし、ここで君と合ったのも引力によるものだろう。
もしそうであるならば、君にその気があるのなら、これまでのことは水に流して私と共に天国を目指さないか?」
そんな茜に対し、プッチはさっきまでの厳しい態度から一転して、優し気な声色で茜に勧誘をかける。
実のところ、彼は必死だ。
いくら言葉を積もらせ相手を揺るがしたところで、手にあるナイフを振り下ろせばそれですべてご破算なのだから。
実のところ、彼は必死だ。
いくら言葉を積もらせ相手を揺るがしたところで、手にあるナイフを振り下ろせばそれですべてご破算なのだから。
カラン
「……いいの? こんな何もない、あなたを殺そうとした私を許してくれるの?」
神は神父に微笑んだ。
茜はナイフを手から零れさせ、涙を瞳に浮かべながら、縋るようにプッチに尋ねる。
茜はナイフを手から零れさせ、涙を瞳に浮かべながら、縋るようにプッチに尋ねる。
「神は悔い改めるなら寛容だ。私は君を全ての罪から赦す。
そして今一度問おう。
そして今一度問おう。
君は引力を信じるか?」
プッチの問いに対し、茜はその場から立ち上がって彼の上から動く。
言葉はなくてもこれが彼女の答え。彼女は神父の正義に同調した。
全ての人類を幸福にする、天国に導くという言葉を信じた。
言葉はなくてもこれが彼女の答え。彼女は神父の正義に同調した。
全ての人類を幸福にする、天国に導くという言葉を信じた。
それがどういうことなのか、プッチの言う『天国』がどんなものか、知ることもないままに。
だが状況は茜やプッチの事情など関係なく動く。
プッチが動けるようになり、起き上がったと同時に一陣の風が吹く。
否、正しくは二人の横を一つの人影が通り過ぎていた。
否、彼らがよく見ていれば一つの人型が茶髪の少年、桐山和雄を背負った姿だと分かったかもしれない。
しかし、今の彼らにそれを知るすべはない。なぜならば、桐山を追ってきたのか、リンリンがこの場にやって来たからだ。
プッチが動けるようになり、起き上がったと同時に一陣の風が吹く。
否、正しくは二人の横を一つの人影が通り過ぎていた。
否、彼らがよく見ていれば一つの人型が茶髪の少年、桐山和雄を背負った姿だと分かったかもしれない。
しかし、今の彼らにそれを知るすべはない。なぜならば、桐山を追ってきたのか、リンリンがこの場にやって来たからだ。
◆
時は少し遡る。
ヴィータの死を皮切りに始まった二体の怪物の戦いは、リンリンのナイフから始まった。
桐山を狙うという意思はあれど、リンリンのナイフ捌きに洗練されたものは一切ない。
ただ徒に腕を振るその様は正しく子供の喧嘩。あるいは、眼前を飛び回る虫を追い払おうとしてる様にも見えるだろうか。
もっとも――
ヴィータの死を皮切りに始まった二体の怪物の戦いは、リンリンのナイフから始まった。
桐山を狙うという意思はあれど、リンリンのナイフ捌きに洗練されたものは一切ない。
ただ徒に腕を振るその様は正しく子供の喧嘩。あるいは、眼前を飛び回る虫を追い払おうとしてる様にも見えるだろうか。
もっとも――
ブンブンブンブンブン!!
三メートル大の人間が、それも一トンはある車の走行を正面から受け止められる胆力の持ち主が行えば、人を切り刻む竜巻へと姿を変えるが。
「死ぃ~~ねぇぇ~~~~!!」
ナイフを振り回しながら殺意を込めて叫ぶリンリン。
それがさっき、彼女を殺そうとしたパワーの言葉と同じものだと、自身は分かっていない。
サバイバーの効果か、元々胸に宿しているものか、リンリンの膨大な殺意が桐山に襲い掛かっていく。
いくら今はまだ六歳の少女とはいえ、後の四皇が向ける極大の殺意に、並の人間なら生を諦めることだろう。
それがさっき、彼女を殺そうとしたパワーの言葉と同じものだと、自身は分かっていない。
サバイバーの効果か、元々胸に宿しているものか、リンリンの膨大な殺意が桐山に襲い掛かっていく。
いくら今はまだ六歳の少女とはいえ、後の四皇が向ける極大の殺意に、並の人間なら生を諦めることだろう。
だが桐山和雄という人間は並ではない。
自ら望んで殺戮の法の檻へと飛び込み、数多の死を作り出し、最期には己の死すら一度体験し、
それでもなお、このコンペ・ロワイアルで殺戮を臨んで繰り広げる彼にとって、リンリンの殺意に恐怖を感じる道理はない。
彼は獰猛な笑みを浮かべながら、槍を構え一直線にナイフの竜巻へ飛び込んだ。
自ら望んで殺戮の法の檻へと飛び込み、数多の死を作り出し、最期には己の死すら一度体験し、
それでもなお、このコンペ・ロワイアルで殺戮を臨んで繰り広げる彼にとって、リンリンの殺意に恐怖を感じる道理はない。
彼は獰猛な笑みを浮かべながら、槍を構え一直線にナイフの竜巻へ飛び込んだ。
シュシュシュシュ
リンリンのナイフが鳴らす無数の風切り音を間近に聞きながら、桐山は竜巻を掻い潜り槍を振るう。
カッ
そして桐山は槍でナイフを弾き飛ばした。
いくらリンリンが人外じみた胆力の持ち主と言えど、獣の槍の力で妖力を得ている今の彼もまた人外。
おまけに槍が持つ膨大な経験値が流れ込んできている今の彼からすれば、リンリンの攻撃など正しく子供の癇癪。いなせない理由など何ひとつ存在しなかった。
いくらリンリンが人外じみた胆力の持ち主と言えど、獣の槍の力で妖力を得ている今の彼もまた人外。
おまけに槍が持つ膨大な経験値が流れ込んできている今の彼からすれば、リンリンの攻撃など正しく子供の癇癪。いなせない理由など何ひとつ存在しなかった。
「あァ!?」
ナイフを弾かれ驚くリンリンを尻目に、そのままの勢いで桐山は槍で彼女の右脇腹を貫く。
槍は肉を抉り、容赦なく血を噴出させ、一度距離を取る。
リンリンに槍を掴まれ動きを止められ反撃される可能性を危惧したのだ。
槍は肉を抉り、容赦なく血を噴出させ、一度距離を取る。
リンリンに槍を掴まれ動きを止められ反撃される可能性を危惧したのだ。
もしリンリンの参戦時期が僅かでも前ならば、獣の槍は彼女の肉体をすり抜けていっただろう。
なぜならば、風体を見れば信じがたいかもしれないが、彼女は人と人の間に生まれた純粋な人間。槍の憎しみが穿つ妖怪ではないのだから。
しかし今の彼女はマザー・カルメルの肉体を食べたことで、マザーが体内に収めていた悪魔すらもその身に宿している。
そして獣の槍は妖殺しの槍。ならば、妖怪と悪魔という違いはあれど同じ人外。傷を負わせられるのが道理というものだろう。
事実、コンペロワではランプの魔人にも通用しているのだから。
なぜならば、風体を見れば信じがたいかもしれないが、彼女は人と人の間に生まれた純粋な人間。槍の憎しみが穿つ妖怪ではないのだから。
しかし今の彼女はマザー・カルメルの肉体を食べたことで、マザーが体内に収めていた悪魔すらもその身に宿している。
そして獣の槍は妖殺しの槍。ならば、妖怪と悪魔という違いはあれど同じ人外。傷を負わせられるのが道理というものだろう。
事実、コンペロワではランプの魔人にも通用しているのだから。
「うぎゃああああああああああ!!」
しかし桐山の予想に反し、刺された痛みに思わず叫ぶリンリン。
コンペロワにおいて艦娘の砲撃ですら小さなダメージで収まる彼女にとって、刃物で刺され血を流すなど異常事態。
否、物心ついてから初めてかもしれない痛みに彼女は絶叫していた。
コンペロワにおいて艦娘の砲撃ですら小さなダメージで収まる彼女にとって、刃物で刺され血を流すなど異常事態。
否、物心ついてから初めてかもしれない痛みに彼女は絶叫していた。
当然、その隙を見逃す桐山ではない。
彼は再び槍を構え、リンリンへと向かっていく。
サバイバーの光の導きなど必要ない。さっき刺した脇腹こそが一番の弱点であることなど、誰の目にも明らかだ。
もしこのまま傷を責め立て続け殺せてしまうなら、幾分か拍子抜けだと思う程に。
彼は再び槍を構え、リンリンへと向かっていく。
サバイバーの光の導きなど必要ない。さっき刺した脇腹こそが一番の弱点であることなど、誰の目にも明らかだ。
もしこのまま傷を責め立て続け殺せてしまうなら、幾分か拍子抜けだと思う程に。
だがあえて断言しよう。シャーロット・リンリンはここで終わりはしない。
もしこの程度で潰える程度の存在ならば、彼女は本来の未来において四皇と呼ばれる程に上り詰めることなく、どこかで朽ち果てていただろう。
当然、その素養は今この場においても発揮される。
もしこの程度で潰える程度の存在ならば、彼女は本来の未来において四皇と呼ばれる程に上り詰めることなく、どこかで朽ち果てていただろう。
当然、その素養は今この場においても発揮される。
ズガァァァァァァン
突如、コンペロワの会場H-5において、小規模に地響きが鳴り渡った。
何をしたかは震源を見れば分かる。リンリンが迫りくる桐山を狙ってカウンターをすべく右手を地面に叩きつけたのだ。さながら、辺りを飛び回る蚊を落とすように。
しかし、そんな攻撃は桐山には見え見えだ。少し移動する軌道を変えれば簡単に回避できる。
そしてそのまま槍で追撃すれば、更にダメージを与えられる。
何をしたかは震源を見れば分かる。リンリンが迫りくる桐山を狙ってカウンターをすべく右手を地面に叩きつけたのだ。さながら、辺りを飛び回る蚊を落とすように。
しかし、そんな攻撃は桐山には見え見えだ。少し移動する軌道を変えれば簡単に回避できる。
そしてそのまま槍で追撃すれば、更にダメージを与えられる。
その考えは別に間違っていない、普遍的な物だろう。
相手がシャーロット・リンリンでなければ。
相手がシャーロット・リンリンでなければ。
ガッ
リンリンが地面を叩いた影響でごく小規模な地震が発生し、その影響で僅かながら地面にヒビが入り、少しだが地面に段差が生まれた。
これがさっき生まれたものだと認識していなければ、小さな階段くらいにしか思えないものだ。
もし今が戦闘中でなければ、桐山は気にも留めない光景だろう。
だが一瞬の隙が形勢を大きく変えかねないこの場では、決して無視できないものだ。
これがさっき生まれたものだと認識していなければ、小さな階段くらいにしか思えないものだ。
もし今が戦闘中でなければ、桐山は気にも留めない光景だろう。
だが一瞬の隙が形勢を大きく変えかねないこの場では、決して無視できないものだ。
唐突だが、これを読んでいる皆様は階段を上がっている時に、まだ段数があると思って勢いよく地面を踏み込んだことはあるだろうか。
あるいは逆に、降りている時にまだ一段あるにも関わらずもう地面だと思って階段を踏み外した経験はないだろうか。
平時なら少々己の迂闊さを呪うだけの光景も、戦場では死に直結しかねない隙となる。
桐山はそれを避けたかったのだ。
あるいは逆に、降りている時にまだ一段あるにも関わらずもう地面だと思って階段を踏み外した経験はないだろうか。
平時なら少々己の迂闊さを呪うだけの光景も、戦場では死に直結しかねない隙となる。
桐山はそれを避けたかったのだ。
なので桐山は跳躍した。
獣の槍の力ならば、小さな階段くらい楽に飛び越えられる。
その勢いのまま槍を貫けば、今度こそリンリンは終わりだろう。
獣の槍の力ならば、小さな階段くらい楽に飛び越えられる。
その勢いのまま槍を貫けば、今度こそリンリンは終わりだろう。
再三述べるが、獣の槍には槍の使い手の経験を担い手に流す力がある。
だが槍が経験してきたのは、あくまで元の世界の妖怪退治のみ。
他の世界のことなど、露とも知らぬのだ。
だが槍が経験してきたのは、あくまで元の世界の妖怪退治のみ。
他の世界のことなど、露とも知らぬのだ。
ビュゥッ
戦場に一つの風切り音が鳴る。
それがリンリンの投げた短刀が裂く空気の音だと、今の桐山の身体能力ならば見抜くくらいは容易だ。
短刀は一直線に彼の頭へと向かっていく。
彼は咄嗟に手にある槍で撃ち落とそうとするが、それでは間に合わないと判断。
なので左腕を頭の前に翳し、短刀を腕に突き刺して受け止めた。
短刀は腕に深々と刺さったが、この体の彼には大した意味を持たない。リンリンの抵抗も無意味である。
それがリンリンの投げた短刀が裂く空気の音だと、今の桐山の身体能力ならば見抜くくらいは容易だ。
短刀は一直線に彼の頭へと向かっていく。
彼は咄嗟に手にある槍で撃ち落とそうとするが、それでは間に合わないと判断。
なので左腕を頭の前に翳し、短刀を腕に突き刺して受け止めた。
短刀は腕に深々と刺さったが、この体の彼には大した意味を持たない。リンリンの抵抗も無意味である。
短刀がただの刃物であれば。
ズザザザザザザザ!!
リンリンの投げた短刀が桐山の左腕に刺さった瞬間、彼の強化がいきなり解除され、更には彼女の腕力で投げられた短刀の勢いに乗せられ、彼女とは反対の方向へと飛ばされ、そのまま地面を滑る。
なぜなら彼の腕に刺さった短刀はとある世界の天逆鉾。
刀身に触れた術式を強制解除させる特級呪具。
天照大神という太陽を冠する神から下賜された神宝の名を冠する短刀には、一人の鍛冶師の壮絶な憎悪という闇では太刀打ちできない。
なぜなら彼の腕に刺さった短刀はとある世界の天逆鉾。
刀身に触れた術式を強制解除させる特級呪具。
天照大神という太陽を冠する神から下賜された神宝の名を冠する短刀には、一人の鍛冶師の壮絶な憎悪という闇では太刀打ちできない。
獣の槍の力を失い、腕に短刀が突き刺さった今の桐山はただの男子中学生。
必死に天逆鉾を引き抜こうとする桐山だが、深く突き刺さっているうえに、まっすぐではなくいくつも角のある刀身は、意図してか偶然か巨大な返りとなり、そう簡単には抜けなくなっていた。
当然、その隙を見逃すリンリンではない。
彼女は両足の力のみでその場から跳躍し、腹ばいに桐山のもとへと落下する。プロレスでいうところのフライングボディアタックである。
身長が3メートルはあるリンリンならば、体重はどう計算しても200キロを超えるだろう。
その重量を余すところなく受け止めれば、今の桐山ならばプレス機で押しつぶされるようなものだ。
必死に天逆鉾を引き抜こうとする桐山だが、深く突き刺さっているうえに、まっすぐではなくいくつも角のある刀身は、意図してか偶然か巨大な返りとなり、そう簡単には抜けなくなっていた。
当然、その隙を見逃すリンリンではない。
彼女は両足の力のみでその場から跳躍し、腹ばいに桐山のもとへと落下する。プロレスでいうところのフライングボディアタックである。
身長が3メートルはあるリンリンならば、体重はどう計算しても200キロを超えるだろう。
その重量を余すところなく受け止めれば、今の桐山ならばプレス機で押しつぶされるようなものだ。
なので桐山は天逆鉾を引き抜くのを一旦諦め、両足で立ち上がりその場から離れようとする。
腕に短刀が刺さり、激痛とダメージで満足に立ち上がれなくとも、最低限二本足で移動するくらいはなんとかなった。
おかげでリンリンの落下の直撃を避けることはできたが、衝撃によって起きたものまでは防げない。
地面は更に陥没し、衝撃風が辺りに吹き荒れる。
踏ん張ることもできず再び地面を転がる桐山。
更には持っていたデイパックも彼の手から離れることはなかったが、中からある支給品が飛び出す。
腕に短刀が刺さり、激痛とダメージで満足に立ち上がれなくとも、最低限二本足で移動するくらいはなんとかなった。
おかげでリンリンの落下の直撃を避けることはできたが、衝撃によって起きたものまでは防げない。
地面は更に陥没し、衝撃風が辺りに吹き荒れる。
踏ん張ることもできず再び地面を転がる桐山。
更には持っていたデイパックも彼の手から離れることはなかったが、中からある支給品が飛び出す。
その支給品を見て、誰であれ最初に思うことは顔、だろうか。
人間、それも端正なイケメンの男性の顔。
殺し合いの外で見る者が見れば、その顔はとある世界のプロサッカー選手、東山源次だと知る者はいるかもしれない。
人間、それも端正なイケメンの男性の顔。
殺し合いの外で見る者が見れば、その顔はとある世界のプロサッカー選手、東山源次だと知る者はいるかもしれない。
もっとも、その評価は東山源次の全身を見れば変わるだろうが。
なぜならば彼の体、手足は彼の顔で構成されているからだ。
もう少し詳しく言うなら、顔の下に顔を並べて、さながら棒人間のように体と手足が構成されていた。
果たしてこれは何なのかについては、まず東山源次について説明しなければならない。
なぜならば彼の体、手足は彼の顔で構成されているからだ。
もう少し詳しく言うなら、顔の下に顔を並べて、さながら棒人間のように体と手足が構成されていた。
果たしてこれは何なのかについては、まず東山源次について説明しなければならない。
東山源次とは、2018年にサービス終了した携帯恋ゲーム『今夜アナタと眠りたい』に登場する人物である。
30歳のプロサッカー選手、ポジションはゴールキーパー。性格は俺様系ではあるが、これはこの際あまり関係ないので省略。
彼は2016年頃、突如ネット上でゲームのCMで彼の発したセリフ「結婚したのか、俺以外のヤツと……」がミームとして流行し、おおいにイジられたのだ。
その過程でニコニコ動画に例のアレカテゴリで投稿されたのが、『東山源次BB詰め合わせ』である。
それが何か、平たく言うと東山源次の顔と、顔で構成された手足を歩かせたり走らせたり、サザンドラにしたBB素材であり、斬真狼牙に支給され今この場に現れたものである。
30歳のプロサッカー選手、ポジションはゴールキーパー。性格は俺様系ではあるが、これはこの際あまり関係ないので省略。
彼は2016年頃、突如ネット上でゲームのCMで彼の発したセリフ「結婚したのか、俺以外のヤツと……」がミームとして流行し、おおいにイジられたのだ。
その過程でニコニコ動画に例のアレカテゴリで投稿されたのが、『東山源次BB詰め合わせ』である。
それが何か、平たく言うと東山源次の顔と、顔で構成された手足を歩かせたり走らせたり、サザンドラにしたBB素材であり、斬真狼牙に支給され今この場に現れたものである。
「結婚したのか、俺以外のヤツと……」
源次がミームと化したセリフを、神谷〇史ボイスで呟く。
BB素材である彼は、代表的なセリフなので意味もなく言わされているのである。鳴き声のようなものだと思っていただいて構わない。
BB素材である彼は、代表的なセリフなので意味もなく言わされているのである。鳴き声のようなものだと思っていただいて構わない。
ガシッ
源次は桐山の体を抱え、上半身は動かすことなく下半身だけで凄まじいスピードで疾走する、いわゆる十傑集走りでリンリンから逃げ出す。
これが支給品としての彼の役割。デイパックから取り出したものを抱え、逃がすだけの支給品がコンペロワで与えられた東山源次の扱いである。
これが支給品としての彼の役割。デイパックから取り出したものを抱え、逃がすだけの支給品がコンペロワで与えられた東山源次の扱いである。
「待ぁ~~てぇぇぇ~~~!!」
突如現れた源次に呆気に取られている間に、桐山を逃がしてしまうリンリン。
逃げ出すのを見て慌てて追いかけるが、時すでに遅し。
彼女は桐山と源次をあっという間に見失ってしまった。
それでも去った方向はかろうじて見ていたので、追いつけるかどうかなど関係ない。彼女はその方向へ向かって走り出した。
そして走り出して一分もしないうちに、一組の男女と出会う。
誰であろう、プッチとシャドウ茜である。
逃げ出すのを見て慌てて追いかけるが、時すでに遅し。
彼女は桐山と源次をあっという間に見失ってしまった。
それでも去った方向はかろうじて見ていたので、追いつけるかどうかなど関係ない。彼女はその方向へ向かって走り出した。
そして走り出して一分もしないうちに、一組の男女と出会う。
誰であろう、プッチとシャドウ茜である。
二人を視認したリンリンは即座に拳を握り、腕を無造作に突き出す。
何だか知らないが突如現れた邪魔な参加者相手に、殺しを躊躇する理由などどこにもない。
パンチを繰り出すというなら、足を踏ん張ったり上半身を振りかぶるという動作がなければ大した威力は出ないはずだが、彼女ほどの大きさと胆力があれば話は別。
ボクシングでいうところのジャブのようなものが、彼女にかかればボクサーのストレートを通り越し、最早砲弾へと変わる。
何だか知らないが突如現れた邪魔な参加者相手に、殺しを躊躇する理由などどこにもない。
パンチを繰り出すというなら、足を踏ん張ったり上半身を振りかぶるという動作がなければ大した威力は出ないはずだが、彼女ほどの大きさと胆力があれば話は別。
ボクシングでいうところのジャブのようなものが、彼女にかかればボクサーのストレートを通り越し、最早砲弾へと変わる。
「ジョーカー!!」
茜は咄嗟にパンサーを解除し、代わりにジョーカーを呼び出して自分とプッチを抱えさせ飛びのかせる。
これで距離を取ることはできた。しかしここからどうするというのか。
戦うというのか。それも選択肢だろう。向こうが殺しにかかってきているのだから、咎められる云われはない。
だが――
これで距離を取ることはできた。しかしここからどうするというのか。
戦うというのか。それも選択肢だろう。向こうが殺しにかかってきているのだから、咎められる云われはない。
だが――
「お母さんがいなくなるのは、辛いよね……」
シャドウ茜は戦いたくなかった。
彼女はプッチを『悪党』ではないと受け入れたことで、他の参加者を問答無用で『悪党』だと断じるのをやめたのだ。
そしてリンリンのマザーと泣き叫びながら呼ぶ声を聞き、自分と同じ境遇だと推測した茜は、なんとか慰めてあげたかった。
故に彼女は言葉を紡ぐ。
彼女はプッチを『悪党』ではないと受け入れたことで、他の参加者を問答無用で『悪党』だと断じるのをやめたのだ。
そしてリンリンのマザーと泣き叫びながら呼ぶ声を聞き、自分と同じ境遇だと推測した茜は、なんとか慰めてあげたかった。
故に彼女は言葉を紡ぐ。
「私もね、少し前にお母さんが死んじゃったから、きっと、気持ちは分かると思う。
凄く辛いし、お母さんを殺したやつを私は絶対に許さない。だから――」
「……ちがう」
凄く辛いし、お母さんを殺したやつを私は絶対に許さない。だから――」
「……ちがう」
一人で泣かないで、と続けようとしたシャドウ茜の言葉を、リンリンは遮る。
彼女の言葉に込められているものは絶望。
桐山と対峙している時には見せなかった感情だが、これは偏にサバイバーの影響である。
ただでさえヴィータを殺されて怒っていた上に、サバイバーで増幅されていたのだ。絶望を感じる暇などない。
しかし桐山が逃げたことにより、サバイバーの効果もまた消える。
更に言うなら、今話しかけているのはリンリンに何かしたわけでもないどころか、逆に殺されかかってなお優しい言葉をかけてきている茜だ。
更に言うなら彼女自身意識的に運用しているわけではないので、無自覚な見聞色の覇気の効果で人間ではないことに心の奥底で気づいた、シャドウの茜である。
人間ならば黒の章の影響で憎悪を向けたかもしれないが、黒の章で惨い目に遭っていた人外の同類に、憎悪など抱きようがない。
彼女の言葉に込められているものは絶望。
桐山と対峙している時には見せなかった感情だが、これは偏にサバイバーの影響である。
ただでさえヴィータを殺されて怒っていた上に、サバイバーで増幅されていたのだ。絶望を感じる暇などない。
しかし桐山が逃げたことにより、サバイバーの効果もまた消える。
更に言うなら、今話しかけているのはリンリンに何かしたわけでもないどころか、逆に殺されかかってなお優しい言葉をかけてきている茜だ。
更に言うなら彼女自身意識的に運用しているわけではないので、無自覚な見聞色の覇気の効果で人間ではないことに心の奥底で気づいた、シャドウの茜である。
人間ならば黒の章の影響で憎悪を向けたかもしれないが、黒の章で惨い目に遭っていた人外の同類に、憎悪など抱きようがない。
「マザーを、皆を殺したのは、おれだ」
「……えっ?」
「……えっ?」
だがそれは、憎悪や怒りという外向きの感情で逃げることが許されなくなった、ということでもあるが。
突如リンリンの発した言葉を思わず聞き返す茜。
それが聞こえてかそうではないのか、リンリンは叫んだ。
突如リンリンの発した言葉を思わず聞き返す茜。
それが聞こえてかそうではないのか、リンリンは叫んだ。
「おれはマザーを、みんなを、食べちまったんだァァァァァアアアアア!!!
だから、せめてみんなを生き返らせなきゃいけねえんだ!!」
だから、せめてみんなを生き返らせなきゃいけねえんだ!!」
嘆き叫びながら茜とプッチに向かって突進し始めるリンリン。
食いわずらいのような暴走、外付けの憎悪、敵討ちという怒り。そのどれでもない、彼女自身の意思で振りかざす、初めての身勝手な殺意。
優しい少女を、マザーの理想の一部の筈の相手を、リンリンは己の意志で殺しにかかる。
激情に駆られ選んだ攻撃は単純極まりないが、彼女程の体躯での突撃にどれほどの衝撃があるか、想像に難くはないだろう。
食いわずらいのような暴走、外付けの憎悪、敵討ちという怒り。そのどれでもない、彼女自身の意思で振りかざす、初めての身勝手な殺意。
優しい少女を、マザーの理想の一部の筈の相手を、リンリンは己の意志で殺しにかかる。
激情に駆られ選んだ攻撃は単純極まりないが、彼女程の体躯での突撃にどれほどの衝撃があるか、想像に難くはないだろう。
「何言って……」
「説得は無理だ!!」
「説得は無理だ!!」
リンリンの言葉が理解できず、恐怖以前に戸惑いを隠せない茜。
一方、ここまでの推移を黙って見ていたプッチは、リンリンを取り込むのは無理だと決断した。
元々殺し合いに乗っているわけではないのだ。味方が増えるに越したことはないと思い傍観することにした。
しかし彼は理解した。あの三メートル大の怪物は、決して人と相いれることはできない存在なのだと。
戦うか、逃げるかしかない化物だと。
一方、ここまでの推移を黙って見ていたプッチは、リンリンを取り込むのは無理だと決断した。
元々殺し合いに乗っているわけではないのだ。味方が増えるに越したことはないと思い傍観することにした。
しかし彼は理解した。あの三メートル大の怪物は、決して人と相いれることはできない存在なのだと。
戦うか、逃げるかしかない化物だと。
とはいえ、茜は戦う以前の精神状態で、プッチはさっきの戦いで消耗している。
なので彼の作戦はこうだ。
なので彼の作戦はこうだ。
「ホワイトスネイク!!」
プッチは己のスタンドを呼び出し、即座にDiscを生成。
それを向かって来ているリンリンの頭へと投げつけた。
それを向かって来ているリンリンの頭へと投げつけた。
「な、なんだあっ!?」
突如飛んできたDiscを反射的に首を傾けて避けるリンリン。
しかしそれはプッチも織り込み済み。そもそもいくらこっちに向かって来ているからと言って、常に動いている人間の頭に物などそうそう当たるものか。
しかしそれはプッチも織り込み済み。そもそもいくらこっちに向かって来ているからと言って、常に動いている人間の頭に物などそうそう当たるものか。
「私の狙いはお前ではない、突撃娘。
お前の後ろにいるNPCだ。そのNPCに命じたいことがあるのでDiscを投げさせてもらった」
お前の後ろにいるNPCだ。そのNPCに命じたいことがあるのでDiscを投げさせてもらった」
ドヒャァァァ
プッチの投げたDiscが、リンリンの背後のNPCへと吸い込まれる。
彼女が慌てて振り向くと、そこにいたのは彼女と同じくらいの大きさのフクロウ。
名を、ケポラ・ゲボラと言った。
彼女が慌てて振り向くと、そこにいたのは彼女と同じくらいの大きさのフクロウ。
名を、ケポラ・ゲボラと言った。
「そのフクロウに私はこう命令させてもらった。『お前を掴んでどこかに運べ』とな」
ケポラ・ゲボラはプッチの命令通り、リンリンの腕を掴み、宙へと浮かび上がる。
プッチとしてはNPCに戦わせて、その隙に逃げることも考えた。
しかし所詮は参加者同士の殺し合いの添え物にしかすぎないはずのNPCに、主催者は目の前の怪物を殺せるだけの力を持たせるだろうか。
プッチとしてはNPCに戦わせて、その隙に逃げることも考えた。
しかし所詮は参加者同士の殺し合いの添え物にしかすぎないはずのNPCに、主催者は目の前の怪物を殺せるだけの力を持たせるだろうか。
実のところ、コンペロワのNPCには打擲の剛激手という、並の人間なら殲滅できるだけの存在もいたので彼の推測は微妙に的を外している。
だがケポラ・ゲボラにリンリンの相手をさせるのは酷、という意味なら正解だ。
だがケポラ・ゲボラにリンリンの相手をさせるのは酷、という意味なら正解だ。
そしてケポラ・ゲボラにリンリンを運ぶことができるのか、という懸念については心配していなかった。
元々彼の作る命令Discは、カエルをある程度飛ばしたうえで破裂させるといった、物理法則を無視して行動をさせることもできる。
なので物理的に運ぶことができない可能性については、彼は考えていなかった。
元々彼の作る命令Discは、カエルをある程度飛ばしたうえで破裂させるといった、物理法則を無視して行動をさせることもできる。
なので物理的に運ぶことができない可能性については、彼は考えていなかった。
「は、はなせ~~~~~~!!」
ケポラ・ゲボラに掴まれたリンリンは必死になって暴れ、放させようとする。
だが元々ケポラ・ゲボラは、子供とはいえ人間一人を火山の頂上から麓の町まで送り届けられるくらいの力の持ち主。
しかし、だからと言って、いくら幼いとはいえあのシャーロット・リンリンが、ケポラ・ゲボラを振り払えないなどありえるのだろうか。
にも拘わらず今こうして苦戦しているのには訳がある。
だが元々ケポラ・ゲボラは、子供とはいえ人間一人を火山の頂上から麓の町まで送り届けられるくらいの力の持ち主。
しかし、だからと言って、いくら幼いとはいえあのシャーロット・リンリンが、ケポラ・ゲボラを振り払えないなどありえるのだろうか。
にも拘わらず今こうして苦戦しているのには訳がある。
それは、リンリンの右脇腹の傷だ。
彼女は脇腹の痛みで動きに精細を欠き、疎外されているのだ。
このコンペロワの彼女の軌跡を追っているのであれば、戦艦の砲撃すらも小さな傷で耐えられることは承知しているだろう。
そんな彼女が刃物に刺される、ましてや脇腹を槍で抉られるという経験をこれまでにしてきただろうか。
しているわけがない。生まれて初めての傷だろう。
ならばこそ、この痛みは他の誰よりも彼女を苛む。
桐山が近くにいたならば、サバイバーの効果で痛覚を無視もできた。
しかしいないのなら、心の傷と同じく体の傷も無視できず、痛みは体を蝕む。
彼女は脇腹の痛みで動きに精細を欠き、疎外されているのだ。
このコンペロワの彼女の軌跡を追っているのであれば、戦艦の砲撃すらも小さな傷で耐えられることは承知しているだろう。
そんな彼女が刃物に刺される、ましてや脇腹を槍で抉られるという経験をこれまでにしてきただろうか。
しているわけがない。生まれて初めての傷だろう。
ならばこそ、この痛みは他の誰よりも彼女を苛む。
桐山が近くにいたならば、サバイバーの効果で痛覚を無視もできた。
しかしいないのなら、心の傷と同じく体の傷も無視できず、痛みは体を蝕む。
故に、いくらシャーロット・リンリンであろうとも、動きに多大な制限を掛けられた今この場では、運ばれる道しか選べなかった。
「た、助かったの……?」
飛んでいくリンリンを見て、安堵感のあまり地面に膝をつく茜。
彼女に、さっきまでのリンリンへの優しさを振りまこうという意思は薄まっていた。
態度から見て故意ではないのかもしれないが人間を、それも母親を食べたと告白する相手に対し、茜は恐怖を隠せなかった。
彼女に、さっきまでのリンリンへの優しさを振りまこうという意思は薄まっていた。
態度から見て故意ではないのかもしれないが人間を、それも母親を食べたと告白する相手に対し、茜は恐怖を隠せなかった。
「今だけだ。いつ戻ってくるともわからん」
一方、プッチは未だ心を張り詰めさせていた。
いくら遠ざけたとはいえ、一時的なもの。相手が執念深ければ戻ってきてもおかしくない。
ならば、向こうが自由に動けるようになる前にこちらも動くべきだろう。
いくら遠ざけたとはいえ、一時的なもの。相手が執念深ければ戻ってきてもおかしくない。
ならば、向こうが自由に動けるようになる前にこちらも動くべきだろう。
「色々積もる話はあるが、まずは移動するぞ」
「は、はい。私バイクを支給されてるのでジョーカーに運転を頼んで、いやそれじゃ三人乗りに……」
「運転は私がやる」
「は、はい。私バイクを支給されてるのでジョーカーに運転を頼んで、いやそれじゃ三人乗りに……」
「運転は私がやる」
デイパックからバイクを出しながら悩む茜に向けて、プッチはすげなく言い放ちながらバイクに乗り込む。
それを見て彼女はプッチの後ろに乗り、二人は出発するのだった。
それを見て彼女はプッチの後ろに乗り、二人は出発するのだった。
◆
プッチと茜が出発したのと同じころ、リンリンはケポラ・ゲボラの爪から解放された。
いくらケポラ・ゲボラと言えど、三メートル台の人間が暴れ続けているのをいつまでも拘束できる程の力はない。
あえなく彼女はコンペロワ会場の地上へと落下する。
落下した時に衝撃音を辺りに響かせるが、彼女はどこ吹く風で辺りを見回し、こう呟いた。
いくらケポラ・ゲボラと言えど、三メートル台の人間が暴れ続けているのをいつまでも拘束できる程の力はない。
あえなく彼女はコンペロワ会場の地上へと落下する。
落下した時に衝撃音を辺りに響かせるが、彼女はどこ吹く風で辺りを見回し、こう呟いた。
「あれ、ここどこだ?」
リンリンは解放される為に抵抗することに必死で、今ここがどこで、どの方向に飛んでいたかをまるで把握していなかった。
【???/午前】
【桐山和雄@実写版バトルロワイアル】
[状態]:ダメージ(大)、左腕に天逆鉾@呪術廻戦 が刺さっている、走る東山源次BB@例のアレ に抱えられている
[装備]:獣の槍@うしおととら、サバイバーのスタンドDISC@ジョジョの奇妙な冒険、マイクロUZI@実写版バトルロワイアル、
[道具]:基本支給品×3(自分、アキネイター、狼牙の物)、何かの骨@出典不明、寝袋×3@ファイナルファンタジー
[思考・状況]基本行動方針:バトルロワイアルを楽しむ
1:ひとまず逃げる。できればこの短刀(天逆鉾)を腕から抜きたい
2:快楽のままに殺し続ける。
3:殺し合いサイコー!
4:褐色の男(シャガクシャ)は次に会ったら殺す。
[備考]
※もしかしたら、見張り場のトイレや見張り部屋で何らかの物品を調達しているかもしれません。(後続の書き手にお任せします。)
※サバイバーのスタンドが僅かに強化され、相手が濡れていなくともほんの僅かに怒らせることが出来るようになりました。
これは本体が桐山和雄であることの影響なのか、コンペロワの会場が影響したのかは現状不明です。もしかしたら主催者の仕込みかも。
※天逆鉾が刺さっている限り、獣の槍の力は使えません。
※どこまで移動したのかは、次の書き手氏におまかせします
[状態]:ダメージ(大)、左腕に天逆鉾@呪術廻戦 が刺さっている、走る東山源次BB@例のアレ に抱えられている
[装備]:獣の槍@うしおととら、サバイバーのスタンドDISC@ジョジョの奇妙な冒険、マイクロUZI@実写版バトルロワイアル、
[道具]:基本支給品×3(自分、アキネイター、狼牙の物)、何かの骨@出典不明、寝袋×3@ファイナルファンタジー
[思考・状況]基本行動方針:バトルロワイアルを楽しむ
1:ひとまず逃げる。できればこの短刀(天逆鉾)を腕から抜きたい
2:快楽のままに殺し続ける。
3:殺し合いサイコー!
4:褐色の男(シャガクシャ)は次に会ったら殺す。
[備考]
※もしかしたら、見張り場のトイレや見張り部屋で何らかの物品を調達しているかもしれません。(後続の書き手にお任せします。)
※サバイバーのスタンドが僅かに強化され、相手が濡れていなくともほんの僅かに怒らせることが出来るようになりました。
これは本体が桐山和雄であることの影響なのか、コンペロワの会場が影響したのかは現状不明です。もしかしたら主催者の仕込みかも。
※天逆鉾が刺さっている限り、獣の槍の力は使えません。
※どこまで移動したのかは、次の書き手氏におまかせします
【シャーロット・リンリン@ONE PIECE】
[状態]:ダメージ(中)、火傷(小)、脇腹に刺し傷、満腹、憎悪、絶望(極大)、リンリンを責め立てる幻聴
[装備]:
[道具]:基本支給品、ランダム支給品0〜2、輝子のデイパック(基本支給品、ランダム支給品0~2)
[思考・状況]基本行動方針:優勝してマザーと皆を生き返らせる。そしてマザーの夢を叶える。
0:ここどこだ?
1:あいつ(桐山)を殺す。あいつ(ヴィータ)の仇を討つ
2:おれがマザーや皆を食べたのなら、おれはもう皆と一緒にはいられない……
3:人間は殺しつくす。特にあいつ(桐山)
[備考]
※参戦時期は六歳の誕生日直後、シュトロイゼンに出会う直前より参戦です。
※ソルソルの実の力の封印はなくなりましたが、リンリンは未だ気づいていません。
※第一回放送を聞き逃しました。
※どこで落下したのかは、次の書き手氏におまかせします
[状態]:ダメージ(中)、火傷(小)、脇腹に刺し傷、満腹、憎悪、絶望(極大)、リンリンを責め立てる幻聴
[装備]:
[道具]:基本支給品、ランダム支給品0〜2、輝子のデイパック(基本支給品、ランダム支給品0~2)
[思考・状況]基本行動方針:優勝してマザーと皆を生き返らせる。そしてマザーの夢を叶える。
0:ここどこだ?
1:あいつ(桐山)を殺す。あいつ(ヴィータ)の仇を討つ
2:おれがマザーや皆を食べたのなら、おれはもう皆と一緒にはいられない……
3:人間は殺しつくす。特にあいつ(桐山)
[備考]
※参戦時期は六歳の誕生日直後、シュトロイゼンに出会う直前より参戦です。
※ソルソルの実の力の封印はなくなりましたが、リンリンは未だ気づいていません。
※第一回放送を聞き逃しました。
※どこで落下したのかは、次の書き手氏におまかせします
【H-5/午前】
【シャドウ茜@ペルソナ5 スクランブル ザ ファントム ストライカーズ】
[状態]:健康、精神的動揺(極大)、リンリンに対する恐怖(大)、『マイ・ディア・ジョーカー』の顕現
[装備]:アサシンダガー@ドラゴンクエスト3
[道具]:基本支給品、岸部露伴のバイク@ジョジョの奇妙な冒険、ランダム支給品0~1
[思考・状況]:基本行動方針:『悪党』を全員殺す。
1.この人(プッチ)は悪党じゃない。あの怪物(リンリン)だって悪党じゃないとは思うけど……
2.人を食べるあの怪物(リンリン)が怖い。
3.この人(プッチ)の言う天国に私も行きたい
[備考]
※心の怪盗団を京都ジェイルに誘い込むまで待っている時からの参戦です。
※認知の怪盗団は、複数体同時に顕現させることはできません。
彼らは支給品とは別に茜がそれぞれ連想した武器を所持しています。
(例:マイ・ディア・ジョーカーの場合、初期装備のアタックナイフとトカチェフ)
怪盗団が所有しているペルソナ能力を把握していないのでペルソナは使用できません。
[状態]:健康、精神的動揺(極大)、リンリンに対する恐怖(大)、『マイ・ディア・ジョーカー』の顕現
[装備]:アサシンダガー@ドラゴンクエスト3
[道具]:基本支給品、岸部露伴のバイク@ジョジョの奇妙な冒険、ランダム支給品0~1
[思考・状況]:基本行動方針:『悪党』を全員殺す。
1.この人(プッチ)は悪党じゃない。あの怪物(リンリン)だって悪党じゃないとは思うけど……
2.人を食べるあの怪物(リンリン)が怖い。
3.この人(プッチ)の言う天国に私も行きたい
[備考]
※心の怪盗団を京都ジェイルに誘い込むまで待っている時からの参戦です。
※認知の怪盗団は、複数体同時に顕現させることはできません。
彼らは支給品とは別に茜がそれぞれ連想した武器を所持しています。
(例:マイ・ディア・ジョーカーの場合、初期装備のアタックナイフとトカチェフ)
怪盗団が所有しているペルソナ能力を把握していないのでペルソナは使用できません。
【エンリコ・プッチ@ジョジョの奇妙な冒険】
[状態]:ダメージ(小)、精神的疲労(小)、ナツキ・スバルへの尊敬と興奮(大)
[装備]:スタンド『ホワイト・スネイク』
[道具]:基本支給品、初夏5才のおやつ@こじらせ百鬼ドマイナー、のどナオール@呪術廻戦 東京都立呪術高等専門学校
[思考・状況]基本行動方針:天国への到達を目指す。殺し合いには乗らないが、必要とあれば手段は選ばない。
1:この少女(シャドウ茜)と行動する。使い捨てにはちょうどいいだろう
2:未来の悪魔はもうアテにしない
3:異なる世界や能力についてもっと把握しておきたい。
4:機会があればスタープラチナのスタンドDISCをとり戻したい。承太郎の記憶DISCもあればいいが…
5:スバルと行動を共にしたかったが……これが彼との出会いが運命ならばまた機会はあるだろう
6:スバル…君はまさに『天国』そのものだッ!
[備考]
※参戦時期は承太郎の記憶DISCを得た後の時間軸。
※ホワイト・スネイクにより、スバルの『死に戻り』の記憶を一部把握しました。
※デンジ・クッパ姫・野崎春香の情報交換内容を把握しています。
※制限によりホワイト・スネイクのDISCで物理法則を無視した命令は出来ません。
※異なる時間軸や世界からの参戦について把握しました
[状態]:ダメージ(小)、精神的疲労(小)、ナツキ・スバルへの尊敬と興奮(大)
[装備]:スタンド『ホワイト・スネイク』
[道具]:基本支給品、初夏5才のおやつ@こじらせ百鬼ドマイナー、のどナオール@呪術廻戦 東京都立呪術高等専門学校
[思考・状況]基本行動方針:天国への到達を目指す。殺し合いには乗らないが、必要とあれば手段は選ばない。
1:この少女(シャドウ茜)と行動する。使い捨てにはちょうどいいだろう
2:未来の悪魔はもうアテにしない
3:異なる世界や能力についてもっと把握しておきたい。
4:機会があればスタープラチナのスタンドDISCをとり戻したい。承太郎の記憶DISCもあればいいが…
5:スバルと行動を共にしたかったが……これが彼との出会いが運命ならばまた機会はあるだろう
6:スバル…君はまさに『天国』そのものだッ!
[備考]
※参戦時期は承太郎の記憶DISCを得た後の時間軸。
※ホワイト・スネイクにより、スバルの『死に戻り』の記憶を一部把握しました。
※デンジ・クッパ姫・野崎春香の情報交換内容を把握しています。
※制限によりホワイト・スネイクのDISCで物理法則を無視した命令は出来ません。
※異なる時間軸や世界からの参戦について把握しました
※H-5のどこかの地面が陥没しています。もしかしたら何らかの影響があるかもしれませんし、何もないかもしれません。
【走る東山源次BB@例のアレ】
斬真狼牙に支給。
顔と顔でできた手足と体で構成された東山源次が走り続けるBB。
十傑集走りも歩くもできるが、流石にサザンドラになったり無差別殺戮兵器にはならない。
斬真狼牙に支給。
顔と顔でできた手足と体で構成された東山源次が走り続けるBB。
十傑集走りも歩くもできるが、流石にサザンドラになったり無差別殺戮兵器にはならない。
本ロワではデイパックから出てくると、持ち主を抱えて疲れるまで猛スピードで走り続けるので、うまく使えば楽に移動できるかもしれない。
疲れたら動きが止まるので、その隙にデイパックにしまっておこう。一定時間経つと疲労が回復して再び走り出す。
デイパックの外にいる間は「結婚したのか、俺以外のヤツと……」などCMのセリフでちょくちょく鳴く。
疲れたら動きが止まるので、その隙にデイパックにしまっておこう。一定時間経つと疲労が回復して再び走り出す。
デイパックの外にいる間は「結婚したのか、俺以外のヤツと……」などCMのセリフでちょくちょく鳴く。
【ケポラ・ゲボラ@ゼルダの伝説 時のオカリナ】
少なくとも3mくらいはありそうなフクロウ。
色んなところに出現し、子供時代のリンクに助言をしてくれたり、リンクを移動させたりするが、本筋には関わらず正体は不明。
少なくとも3mくらいはありそうなフクロウ。
色んなところに出現し、子供時代のリンクに助言をしてくれたり、リンクを移動させたりするが、本筋には関わらず正体は不明。
本ロワでは会場を飛び回っているが、参加者には基本的には干渉しない。もっとも、存在はしているので参加者サイドから利用することはできる。
もしくは、参加者次第では助言をしてくるかもしれない。
もしくは、参加者次第では助言をしてくるかもしれない。
最後に唐突だが、悪魔の実にはこんな学説がある。
それは、ある世界において頂点の頭脳を持つ天才科学者、ベガパンクが提唱した『悪魔の実とは、誰かが望んだ『人の進化』の"可能性"でありこんな姿になりたい、こうなったらいいなという未来の願望が能力として現れた物。能力者とは誰かが思い描いたいくつもの異次元を生きる者達』というもの。
この説が事実かどうかは現在の我々では観測できないが、もしこれが事実なら今ここにいるリンリンは『人間の進化系』であり、我々が想像している『悪魔』ではないのだ。
にも拘わらず獣の槍はすり抜けることなく、刃は悪魔の実の能力者の体を抉った。
これが何を意味するのかを、現段階で知る者など、参加者にも主催者にも居はしない。
それは、ある世界において頂点の頭脳を持つ天才科学者、ベガパンクが提唱した『悪魔の実とは、誰かが望んだ『人の進化』の"可能性"でありこんな姿になりたい、こうなったらいいなという未来の願望が能力として現れた物。能力者とは誰かが思い描いたいくつもの異次元を生きる者達』というもの。
この説が事実かどうかは現在の我々では観測できないが、もしこれが事実なら今ここにいるリンリンは『人間の進化系』であり、我々が想像している『悪魔』ではないのだ。
にも拘わらず獣の槍はすり抜けることなく、刃は悪魔の実の能力者の体を抉った。
これが何を意味するのかを、現段階で知る者など、参加者にも主催者にも居はしない。
| 115:悲しくて前向きになれないなら横でも見て | 投下順 | |
| 109:連鎖破壊 | シャーロット・リンリン | |
| シャドウ茜 | ||
| - | エンリコ・プッチ | |
| - | 桐山和雄 |