ゴブリンスレイヤーは途方に暮れてしまいそうだった。
レミリアがソルティ・スプリングへと向かった後、ゴブリンスレイヤーはドラえもんを起こそうと幾度も声をかける。
だがドラえもんは目を覚まさない。
否、起きてはいる。ただ茫然自失しているためにゴブリンスレイヤーを認識していないだけで。
そんな状態が既に随分と続いている。
だがドラえもんは目を覚まさない。
否、起きてはいる。ただ茫然自失しているためにゴブリンスレイヤーを認識していないだけで。
そんな状態が既に随分と続いている。
ゴブリンスレイヤーはドラえもんの事情をレミリアから聞いている。
気持ちが分からないとは言わない。
親しい者が亡くなることがどれほど辛いかなど、彼は痛いほど知っている。
その様を直に見続けるしかないことか、まるで与り知らぬところでいなくなることのどちらがより辛いかまでは分からないが。
気持ちが分からないとは言わない。
親しい者が亡くなることがどれほど辛いかなど、彼は痛いほど知っている。
その様を直に見続けるしかないことか、まるで与り知らぬところでいなくなることのどちらがより辛いかまでは分からないが。
だがいつまでもこの場にいるわけにはいかない。
彼がさっきまで戦っていた怪物はレミリアとぶつかっているだろうが、他の参加者やNPCが襲ってこないとは言えないのだから。
もっとも、それを分かっているのはゴブリンスレイヤーだけではなかった。
彼がさっきまで戦っていた怪物はレミリアとぶつかっているだろうが、他の参加者やNPCが襲ってこないとは言えないのだから。
もっとも、それを分かっているのはゴブリンスレイヤーだけではなかった。
「もう放っておいてよ……」
ゴブリンスレイヤーのこの様を、反応こそしていなかったが認知はしていたドラえもんが、擦り切れた声を出す。
彼の精神は限界だった。
ペニーワイズ襲来による西片の死亡と、それによって生じたレミリアとの僅かな亀裂
そこに追い打ちで告げられた、親友の死亡。
止めにレミリアの、こちらを見限った言動。
ドラえもんが匙を投げるには、十二分だった。
彼の精神は限界だった。
ペニーワイズ襲来による西片の死亡と、それによって生じたレミリアとの僅かな亀裂
そこに追い打ちで告げられた、親友の死亡。
止めにレミリアの、こちらを見限った言動。
ドラえもんが匙を投げるには、十二分だった。
「そうはいかん」
一方、ゴブリンスレイヤーとしては放置する気はなかった。
心が折れた者なら幾度も見てきた。
だからドラえもんが心折れたとしても、ゴブリンスレイヤーは悪く思うことはない。
しかしそれは命を見捨てることにはならない。
もしドラえもんが今にも死にそうで、ゴブリンスレイヤーに助ける手立てがないなら、楽にすることもあったかもしれない。
だが生きているなら、動けるなら彼は助ける。
なぜならば、彼は冒険者だからだ。
どんな理由があれど、助けられる命を見捨てるなど、冒険者のすることではないからだ。
心が折れた者なら幾度も見てきた。
だからドラえもんが心折れたとしても、ゴブリンスレイヤーは悪く思うことはない。
しかしそれは命を見捨てることにはならない。
もしドラえもんが今にも死にそうで、ゴブリンスレイヤーに助ける手立てがないなら、楽にすることもあったかもしれない。
だが生きているなら、動けるなら彼は助ける。
なぜならば、彼は冒険者だからだ。
どんな理由があれど、助けられる命を見捨てるなど、冒険者のすることではないからだ。
なればこそ、ゴブリンスレイヤーはドラえもんをせめて安全な場所までは送らねばならない。
このコンペロワの会場内で真に安全な場所などあるのかという疑問はあるが、こんな開けた草原よりは街中や施設の方がまだマシだろう。
このコンペロワの会場内で真に安全な場所などあるのかという疑問はあるが、こんな開けた草原よりは街中や施設の方がまだマシだろう。
「……」
しかし動かすにしてもどうするのか。
普通に考えるなら説得だろう。
だが言葉で説得するのは、ゴブリンスレイヤーにとって正直不得手な部類である。
こんな時、最近連れ合いとなった女神官、もしくは古くからの顔見知りと言ってもいい槍使いがいてくれれば、と思わざるを得ない。
しかし世界はそんなに都合がいいわけがないことを、彼はよく知っている。
いつだって結局のところ、何をするにしても己の今手にあるものでやるしかないのだ。
普通に考えるなら説得だろう。
だが言葉で説得するのは、ゴブリンスレイヤーにとって正直不得手な部類である。
こんな時、最近連れ合いとなった女神官、もしくは古くからの顔見知りと言ってもいい槍使いがいてくれれば、と思わざるを得ない。
しかし世界はそんなに都合がいいわけがないことを、彼はよく知っている。
いつだって結局のところ、何をするにしても己の今手にあるものでやるしかないのだ。
「ドラえもん」
ゴブリンスレイヤーは声をかける。
何を言うべきか必死に頭を悩ませながら、それでも言葉を続ける。
何を言うべきか必死に頭を悩ませながら、それでも言葉を続ける。
「お前がこの後何を選び、どうするかを決める権利は俺にはない。
だが俺はレミリアに怪物退治を依頼した身だ。その間に同行者であるお前に何かあったら申し訳が立たん」
「……レミリアさんはもうぼくに何があっても気にしたりしないよ」
だが俺はレミリアに怪物退治を依頼した身だ。その間に同行者であるお前に何かあったら申し訳が立たん」
「……レミリアさんはもうぼくに何があっても気にしたりしないよ」
ゴブリンスレイヤーの言葉にドラえもんは諦観と共に反論する。
彼が思いだすのは霧の中の怪物、ペニーワイズにより西片が殺された後にレミリアに告げられた言葉。
彼が思いだすのは霧の中の怪物、ペニーワイズにより西片が殺された後にレミリアに告げられた言葉。
『貴方は現場を見ていないからそう言えるのよ。それに、私が奴と戦っている間貴方は何をしていたのかしら? 一目散に場を離れた癖に死を嘆くだなんて虫がいいにも程があるんじゃない?』
あの時、ドラえもんは三メートルの巨大なネズミを見て逃げ出した。
もし四次元ポケットがあるなら地球はかいばくだんなど、持てる限りの武器を用いて戦いに臨んだだろう。
だが逃げ出した。
それでも、一度は戦う決意を固めたはずなのに、今はまた心が折れている。
これでは、見限られてもおかしくはないだろう。
もし四次元ポケットがあるなら地球はかいばくだんなど、持てる限りの武器を用いて戦いに臨んだだろう。
だが逃げ出した。
それでも、一度は戦う決意を固めたはずなのに、今はまた心が折れている。
これでは、見限られてもおかしくはないだろう。
「ん、ここは……?」
するとここで写影が目を覚ます。
起きた彼は状況を理解するべく辺りを見回す中、ドラえもんが目に入り思わず呟く。
起きた彼は状況を理解するべく辺りを見回す中、ドラえもんが目に入り思わず呟く。
「青いタヌキの化け物……!?」
「……ぼくはタヌキじゃないよ。耳は昔かじられたけど、これでもネコ型ロボットなんだ」
「……ぼくはタヌキじゃないよ。耳は昔かじられたけど、これでもネコ型ロボットなんだ」
写影の言葉に力なく反論するドラえもん。
普段ならば烈火のごとく怒り狂う物言いをされているにも関わらず、この力のなさ。
とはいえ写影にそんなことは伝わらない。
彼はゴブリンスレイヤーの背から勢いよく飛び降り、そのせいで転ぶが気にもせず問い詰める。
普段ならば烈火のごとく怒り狂う物言いをされているにも関わらず、この力のなさ。
とはいえ写影にそんなことは伝わらない。
彼はゴブリンスレイヤーの背から勢いよく飛び降り、そのせいで転ぶが気にもせず問い詰める。
「ゴ、ゴブリンスレイヤーさん! 黒子は!? 豆銑さんはどうなったの!?」
「……マメズクは、あの怪物の足止めの為に残った。それきりだ」
「……マメズクは、あの怪物の足止めの為に残った。それきりだ」
一応行く先は伝えたがな、と小さく付け加えられたゴブリンスレイヤーの言葉も聞こえないほどに、ショックを受ける写影。
彼の言葉の意味が分からないほど、写影は馬鹿じゃない。
豆銑は自分の生き残りを優先していた。だから、黒子が生きているなら連れて帰ることを優先するはずだ。
あるいは、考えたくないが黒子が死んでいたとしたら、足止めになる何かをしてから帰ってくるだろう。
それがないということは、おそらくどっちも死んだのだろう。
彼の言葉の意味が分からないほど、写影は馬鹿じゃない。
豆銑は自分の生き残りを優先していた。だから、黒子が生きているなら連れて帰ることを優先するはずだ。
あるいは、考えたくないが黒子が死んでいたとしたら、足止めになる何かをしてから帰ってくるだろう。
それがないということは、おそらくどっちも死んだのだろう。
「黒子……!」
己の辿り着いた推測に、写影は思わず拳を強く振るわせながら握りしめる。
知らず血がにじみ出て、そこに涙が上塗りされるがそんなことに意識は向かない。
彼はただ己が許せなかった。
どんなことをしても命を守りたかった友達を死なせた自分が。
それどころか、逆に守られてのうのうと生き残っている自分が。
知らず血がにじみ出て、そこに涙が上塗りされるがそんなことに意識は向かない。
彼はただ己が許せなかった。
どんなことをしても命を守りたかった友達を死なせた自分が。
それどころか、逆に守られてのうのうと生き残っている自分が。
「シャエイ、歩けるな? ならひとまず街のあるG-8まで行くぞ」
「そんな言い方……!」
「そんな言い方……!」
ゴブリンスレイヤーは写影に移動を促すも、その言い方が冷たく聞こえたドラえもんは思わず食って掛かろうとする。
しかしそれを、当の写影が止めた。
しかしそれを、当の写影が止めた。
「いいんだ。ゴブリンスレイヤーさんの方が正しい」
「でも……」
「でも……」
写影はドラえもんの気遣いに感謝しながらも、自らの意志で前に進もうとしている。
それが、ドラえもんには痛ましく見えた。
親友の野比のび太と同い年くらいの少年が、気丈に振舞っているのが、とても辛かった。
それが、ドラえもんには痛ましく見えた。
親友の野比のび太と同い年くらいの少年が、気丈に振舞っているのが、とても辛かった。
「僕もなんだ」
写影はドラえもんに視線をやりながら、小さく呟く。
その言葉にドラえもんが疑問を口にするより早く、写影は言葉を続ける。
その言葉にドラえもんが疑問を口にするより早く、写影は言葉を続ける。
「僕も、ネコ型ロボットの君と同じく、友達が死んだんだ」
「えっ」
「えっ」
写影の言葉に驚くドラえもん。
ゴブリンスレイヤーとレミリアの情報交換を聞いていなかった写影がなぜ、ドラえもんがのび太という親友を失ったことを知っているのかということと、同じ苦しみを背負いながら歩こうとできる強さを持っていることに対してだ。
思わずドラえもんは問いかける。
ゴブリンスレイヤーとレミリアの情報交換を聞いていなかった写影がなぜ、ドラえもんがのび太という親友を失ったことを知っているのかということと、同じ苦しみを背負いながら歩こうとできる強さを持っていることに対してだ。
思わずドラえもんは問いかける。
「じゃあ、なんでそんな風に頑張れるの……?」
「僕は、その友達を守りたかったんだ。
ヒーローみたいに皆を助ける友達を助ける僕になりたかったんだ」
「僕は、その友達を守りたかったんだ。
ヒーローみたいに皆を助ける友達を助ける僕になりたかったんだ」
ここで写影は一度言葉を区切る。まるで泣くのをこらえるかのように。
されど涙は流さず、ただ話を続ける。
されど涙は流さず、ただ話を続ける。
「でも逆に助けられてしまった。
正直凄く辛いよ。でも、だからこそ、僕は生きなきゃいけない。
死んでなんて、やれない。
死んだら、黒子の死が無駄になるから」
正直凄く辛いよ。でも、だからこそ、僕は生きなきゃいけない。
死んでなんて、やれない。
死んだら、黒子の死が無駄になるから」
写影の決意を秘めた言葉に、ドラえもんは圧倒された。
それと同時に共感もした。
ぼくだって、そうだと。
それと同時に共感もした。
ぼくだって、そうだと。
「そうだね。ぼくも、のび太くんを忘れるわけにはいかないよ。
それに、ぼくにはまだ生きている友達がいるんだ。
ちゃんと、伝えなきゃいけない」
それに、ぼくにはまだ生きている友達がいるんだ。
ちゃんと、伝えなきゃいけない」
ドラえもんは立ち直ろうとしている。
それは決して前向きではないかもしれない。
自分の友達であるジャイアン達に、のび太のパパとママに、彼のことを報告しなければならないという義務感。
そして、未だこのコンペロワの会場で戦っているかもしれない、リルルのこともある。
正直何故生きているのか分からない彼女だが、それでも自分の知るリルルのままならば、会いたいと思った。
それは決して前向きではないかもしれない。
自分の友達であるジャイアン達に、のび太のパパとママに、彼のことを報告しなければならないという義務感。
そして、未だこのコンペロワの会場で戦っているかもしれない、リルルのこともある。
正直何故生きているのか分からない彼女だが、それでも自分の知るリルルのままならば、会いたいと思った。
「出発するぞ」
「でもレミリアさんが……」
「でもレミリアさんが……」
話はまとまったと見て進めにかかるゴブリンスレイヤーだが、ドラえもんは一人で行ってしまったレミリアを心配していた。
彼女が一人を選んだのは自分のせいだ、と考えていたドラえもんは、とれるか分からないが責任を取ろうと追いかけることを考えていたのだ。
しかし――
彼女が一人を選んだのは自分のせいだ、と考えていたドラえもんは、とれるか分からないが責任を取ろうと追いかけることを考えていたのだ。
しかし――
「やめておけ」
ゴブリンスレイヤーはそれをせき止めた。
どんな理由であれ、一人で怪物と戦うことを選んだのは彼女当人。
忠告はしよう。もし他から強要されているのなら止めもしよう。
だけどそれでも選ぶのなら、悪徳ならいざ知らず、彼は他者の意志を捻じ曲げることを好まない。
どこまで行っても、やるのは己だからだ。
少なくとも、彼は己の師と呼べる者からそう教わった。
だからゴブリンスレイヤーは、レミリアを見送ったのだ。
どんな理由であれ、一人で怪物と戦うことを選んだのは彼女当人。
忠告はしよう。もし他から強要されているのなら止めもしよう。
だけどそれでも選ぶのなら、悪徳ならいざ知らず、彼は他者の意志を捻じ曲げることを好まない。
どこまで行っても、やるのは己だからだ。
少なくとも、彼は己の師と呼べる者からそう教わった。
だからゴブリンスレイヤーは、レミリアを見送ったのだ。
いつか彼が見送った、四方世界の外へと旅立つ孤電の術士と同じように。
「……」
ゴブリンスレイヤーの言葉を聞き、ドラえもんは押し黙る。
彼の言い分に納得できたわけではない。
ただ、彼が戦っていた怪物相手に四次元ポケットもなしに自分がどこまで役に立てるかが分からない。
彼の言い分に納得できたわけではない。
ただ、彼が戦っていた怪物相手に四次元ポケットもなしに自分がどこまで役に立てるかが分からない。
それでも行くと押し通せば、ゴブリンスレイヤーは道を開けるだろう。
だがそこまでの勇気をドラえもんは、未だ取り戻せてはいない。
もし拒絶されたなら、もし足手纏いとなったらと、そんな可能性ばかり考えてしまう。
だがそこまでの勇気をドラえもんは、未だ取り戻せてはいない。
もし拒絶されたなら、もし足手纏いとなったらと、そんな可能性ばかり考えてしまう。
結局、ドラえもんはレミリアを信じてこの場を去ることにした。
これを信頼と呼ぶには歪な気もするが、彼女なら大丈夫だと、そう思うことにした。
これを信頼と呼ぶには歪な気もするが、彼女なら大丈夫だと、そう思うことにした。
こうして三人はソルティ・スプリングスに背を向け、フェイタル・フィールドを目指す。
この選択で後悔するかしないかなど、誰も知るすべはない。
この選択で後悔するかしないかなど、誰も知るすべはない。
◆
「何で!? 何でカエデが生き返らないのよ!?」
G-8のかつて酒場であった跡地にて、一柱の神が泣きそうな声で叫んでいる。
シャガクシャ、そしてノトーリアスB・I・Gを取り込んでいた■■■■との戦いを終えたアクアは、銀時と共にノトーリアスB・I・Gを片付けていたが、すんなりと終わらせる。
というか、さっさと終わらせたくて二人とも必死になってやった。
そしてひとまず脅威を取り除いたところで、アクアは仲間の楓を蘇らせるべく魔法を行使する。
仮にも水の女神。回復魔法のエキスパートアークプリーストである彼女ならば、死者の蘇生すらも可能である。
本来ならば。
シャガクシャ、そしてノトーリアスB・I・Gを取り込んでいた■■■■との戦いを終えたアクアは、銀時と共にノトーリアスB・I・Gを片付けていたが、すんなりと終わらせる。
というか、さっさと終わらせたくて二人とも必死になってやった。
そしてひとまず脅威を取り除いたところで、アクアは仲間の楓を蘇らせるべく魔法を行使する。
仮にも水の女神。回復魔法のエキスパートアークプリーストである彼女ならば、死者の蘇生すらも可能である。
本来ならば。
「リザレクション!」
だが楓は蘇らない。
肉体だけなら既に治っている。
彼女の胸に深々と刺さっていたメタルキングの槍は引き抜かれ、傷跡はアクアの魔法で全て治された。
残った血痕と服に空いた穴を見れば、刺されたことは分かるかもしれないが、とても死んでいるとは思えないだろう。
それほどまでに、完璧に治っていた。
肉体だけなら既に治っている。
彼女の胸に深々と刺さっていたメタルキングの槍は引き抜かれ、傷跡はアクアの魔法で全て治された。
残った血痕と服に空いた穴を見れば、刺されたことは分かるかもしれないが、とても死んでいるとは思えないだろう。
それほどまでに、完璧に治っていた。
「おい大丈夫かよ」
「うっさいわね!!」
「うっさいわね!!」
それを傍で見ていた銀時が、思わず心配そうにアクアに声をかけるも、当人は苛立ちを隠さず跳ね除けてしまう。
正直なところ、彼は楓が生き返るとは思っていなかった。
別に、彼がアクアを女神だとまだ疑っているわけではない。
女神であることも、死者を蘇生させることができるのも、フカシではないのだろうと判断していた。
正直なところ、彼は楓が生き返るとは思っていなかった。
別に、彼がアクアを女神だとまだ疑っているわけではない。
女神であることも、死者を蘇生させることができるのも、フカシではないのだろうと判断していた。
しかし、それでも楓を蘇らせることができるとは考えていなかった。
だってそうだろう。
今、ここで行われているのは殺し合い。
死者が増えていくことを是とする邪悪な遊戯。
にも関わらず、それに相反する事象を起こせる存在を参加者として置いている。
ならば、対策の一つもしておくべきなのはどんな馬鹿にも分かる理屈だ。
だってそうだろう。
今、ここで行われているのは殺し合い。
死者が増えていくことを是とする邪悪な遊戯。
にも関わらず、それに相反する事象を起こせる存在を参加者として置いている。
ならば、対策の一つもしておくべきなのはどんな馬鹿にも分かる理屈だ。
「アクア様、そろそろやめましょう。
おそらくですが、この殺し合いの会場の中で蘇生魔法は使えません」
「うぅ……カエデぇ……」
おそらくですが、この殺し合いの会場の中で蘇生魔法は使えません」
「うぅ……カエデぇ……」
その理屈を理解しているのは銀時だけではない。
さっきまでは氷漬けになっていた理愛を溶かしていたが、その作業を終えたアルスがアクアを止める。ちなみに理愛は今氷漬けで冷えた体を温めるために、メラで起こした焚火の傍で寝かされている。
これ以上無駄に魔力を使うべきではないという理性的な判断と、辛そうに仲間の遺体に向かい続けるアクアを見てられないという思いを込めて。
さっきまでは氷漬けになっていた理愛を溶かしていたが、その作業を終えたアルスがアクアを止める。ちなみに理愛は今氷漬けで冷えた体を温めるために、メラで起こした焚火の傍で寝かされている。
これ以上無駄に魔力を使うべきではないという理性的な判断と、辛そうに仲間の遺体に向かい続けるアクアを見てられないという思いを込めて。
アルスの心遣いが分からないアクアではなかった。
彼女は泣きながらもアルスに引き連れられ、楓から離れていく。
すると彼女はふと、何か異物が床に落ちていることに気づく。
彼女は泣きながらもアルスに引き連れられ、楓から離れていく。
すると彼女はふと、何か異物が床に落ちていることに気づく。
「何これ?」
アクアが落ちているものを拾い上げてまじまじと見つめると、それが何かはすぐに分かった。
彼女のみならずこの場にいる、否会場にいる参加者全てが必ず認知しているもの。
コンペ・ロアイアル参加者の象徴。首輪である。
彼女のみならずこの場にいる、否会場にいる参加者全てが必ず認知しているもの。
コンペ・ロアイアル参加者の象徴。首輪である。
「何でこれが落ちてるのよ……?」
アクアが拾い上げた首輪を見て、アリスが呟く。
彼女の呟きに対し、アルスが少し頭を捻り、考察を提示した。
彼女の呟きに対し、アルスが少し頭を捻り、考察を提示した。
「おそらくだけど、さっき襲ってきたあの男の首輪なんじゃないか?
ほら、あの化け物が出てきたときに変形してたし、その時に邪魔だと思って吐き出したんだと思う」
「成程……」
ほら、あの化け物が出てきたときに変形してたし、その時に邪魔だと思って吐き出したんだと思う」
「成程……」
アルスの考察を聞き納得しながら、思わず首輪をまじまじと見つめるアリス。
殺し合いに抗うなら立ちはだかる関門の一つに、首輪の解除がある。
それをするなら、首輪のサンプルがあれば大きく目標に近づくだろう。
殺し合いに抗うなら立ちはだかる関門の一つに、首輪の解除がある。
それをするなら、首輪のサンプルがあれば大きく目標に近づくだろう。
ならば一つだけでなく、楓に付いている首輪も取ればいいのではないか、という考えにこの場で生きている参加者の誰もが一瞬辿り着く。
サンプルの数は多いに越したことはない。一つだけだと万が一奪われたり壊されれば取り返しがつかない。
そんなことは誰でも思いつく理屈だ。
しかし――
サンプルの数は多いに越したことはない。一つだけだと万が一奪われたり壊されれば取り返しがつかない。
そんなことは誰でも思いつく理屈だ。
しかし――
「埋めてやろうぜ」
「そうね」
「そうね」
銀時はそんな理屈を蹴飛ばした。
死体から物を漁って生きてきた過去のある彼だが、それでも死体を玩ぶような真似はしたくなかった。
アクアもまた自身が掲げるアクシズ教の教義、嫌な事からは逃げればいい。逃げるのは負けじゃない。逃げるが勝ちという言葉があるのだから、に従い、楓の首が斬り落とされるところを見たくないという気持ちに沿った。
眠っている理愛も含めた残りの四人もまた、首を斬り落としたい訳ではない。
なのでひとまずサンプルは一つあればいい。もし何かあったらその時はその時で、と結論付けた。
しかし埋めるという行動には、まみかがストップを掛ける。
死体から物を漁って生きてきた過去のある彼だが、それでも死体を玩ぶような真似はしたくなかった。
アクアもまた自身が掲げるアクシズ教の教義、嫌な事からは逃げればいい。逃げるのは負けじゃない。逃げるが勝ちという言葉があるのだから、に従い、楓の首が斬り落とされるところを見たくないという気持ちに沿った。
眠っている理愛も含めた残りの四人もまた、首を斬り落としたい訳ではない。
なのでひとまずサンプルは一つあればいい。もし何かあったらその時はその時で、と結論付けた。
しかし埋めるという行動には、まみかがストップを掛ける。
「待って、その人を埋めるのはダメかも」
まみかは銀時達に対し、放送前に出会ったNPCアンテン様について説明をする。
祠に捧げものをすることで願いが叶うこと。
願いを叶える為の捧げものには、願いと同じだけの思いが詰まっている物ではないとならないこと。
この殺し合いの中に限り、参加者の死体でも構わないこと。
神社の境内に長くいすぎる、暴力行為を働く、アンテン様に危害を加えようとするとペナルティを与えること、などなど。
祠に捧げものをすることで願いが叶うこと。
願いを叶える為の捧げものには、願いと同じだけの思いが詰まっている物ではないとならないこと。
この殺し合いの中に限り、参加者の死体でも構わないこと。
神社の境内に長くいすぎる、暴力行為を働く、アンテン様に危害を加えようとするとペナルティを与えること、などなど。
この中で重要なのは、死体を捧げれば願いが叶うということ。
すなわち、楓の遺体が埋められていることに気づいた者が掘り起こして持っていく可能性があるのだ。
特にそれを行いそうなコーガ様が、まみか達から逃げ出しているので真面目に検討しなければならないことも彼女は付け加えた。
すなわち、楓の遺体が埋められていることに気づいた者が掘り起こして持っていく可能性があるのだ。
特にそれを行いそうなコーガ様が、まみか達から逃げ出しているので真面目に検討しなければならないことも彼女は付け加えた。
「じゃあどうすんだよ?」
「……これに入れて、楓さんの遺体を持ち歩くとかですかね」
「……これに入れて、楓さんの遺体を持ち歩くとかですかね」
銀時の疑問に、アルスがデイパックを掲げながら己の考えを提示する。
確かにこっちで持ち歩けば持ち去られることはない。
だけどそれ、週刊のジャンプだと許されるか怪しいくらいかなり猟奇的な絵面になるな、と銀時は率直な感想を抱いた。
だがやらないとどこかの誰かに持っていかれるやもしれないのなら、と言い出しっぺのアルスが楓の遺体を己のデイパックに入れようとする。
しかし――
確かにこっちで持ち歩けば持ち去られることはない。
だけどそれ、週刊のジャンプだと許されるか怪しいくらいかなり猟奇的な絵面になるな、と銀時は率直な感想を抱いた。
だがやらないとどこかの誰かに持っていかれるやもしれないのなら、と言い出しっぺのアルスが楓の遺体を己のデイパックに入れようとする。
しかし――
「あれ? 入らない」
アルスが楓の遺体を入れることはできなかった。
そう、このコンペロワでは首輪がつけられた参加者をデイパックに入れることはできない。
これは第一回放送前にここから東のI-8にて、真人が確認されたルールである。
よって首輪のついた楓の遺体をデイパックに入れることはできない。
首輪が外されれば分からないが、それを確かめようとは誰も思わなかった。
そう、このコンペロワでは首輪がつけられた参加者をデイパックに入れることはできない。
これは第一回放送前にここから東のI-8にて、真人が確認されたルールである。
よって首輪のついた楓の遺体をデイパックに入れることはできない。
首輪が外されれば分からないが、それを確かめようとは誰も思わなかった。
「じゃあ、大丈夫なのでは?」
デイパックに入らなければ死体を持ち歩くことはできない。
単純に数十キロある人間の死体など、普通に考えて持ち歩けるはずがない。
もちろんそれができる存在はこの場にいる一同の元の世界におり、また未知の世界からの参加者ならばできる可能性もある。
だが一人殺したくらいで殺し合いが脱出できるというのは、いくらなんでも条件が軽すぎる。
人数は不明だが、恐らく最低でも数人分の死体を持っていかないと脱出はできないだろう、と一同は考えていた。
そして人間の死体など、そうそう持ち歩けるものではない。そんな真似をしていれば目立つ。
そして死体を集めて脱出を狙うなら、目立つのは避けるべきだ。
ならば集め始めるのは今からではなく、参加者が大きく減ってからだろう。
ならば、楓の遺体の位置を隠して埋めておけばひとまずは取られないだろう、とアルスは口にした。
単純に数十キロある人間の死体など、普通に考えて持ち歩けるはずがない。
もちろんそれができる存在はこの場にいる一同の元の世界におり、また未知の世界からの参加者ならばできる可能性もある。
だが一人殺したくらいで殺し合いが脱出できるというのは、いくらなんでも条件が軽すぎる。
人数は不明だが、恐らく最低でも数人分の死体を持っていかないと脱出はできないだろう、と一同は考えていた。
そして人間の死体など、そうそう持ち歩けるものではない。そんな真似をしていれば目立つ。
そして死体を集めて脱出を狙うなら、目立つのは避けるべきだ。
ならば集め始めるのは今からではなく、参加者が大きく減ってからだろう。
ならば、楓の遺体の位置を隠して埋めておけばひとまずは取られないだろう、とアルスは口にした。
「とにかく埋めてあげていいのよね!?」
「おそらくですが……」
「おそらくですが……」
アクアの懇願めいた問いに、アルスはおずおずと肯定する。
それを聞いた彼女は即座に走り出し、近くの瓦礫をどかしながらちょうどいい場所を探し始めたので、アルス達も慌ててそれに続く。
幸いすぐに丁度良さそうな場所は見つかったので、一同は楓をそこに埋葬した。
そうして一段落付いたところで
それを聞いた彼女は即座に走り出し、近くの瓦礫をどかしながらちょうどいい場所を探し始めたので、アルス達も慌ててそれに続く。
幸いすぐに丁度良さそうな場所は見つかったので、一同は楓をそこに埋葬した。
そうして一段落付いたところで
「……どうやら殺し合いに乗っている参加者ではなさそうだな」
「これだけ集まってるしね」
「これだけ集まってるしね」
E-8から歩いてきた、ゴブリンスレイヤーと美山写影。それからドラえもんが酒場跡地に現れた。