山はあれども多くが更地となっていて、
生命を感じられなければ、人がいた痕跡も見当たらない荒野。
海馬乃亜によって始まった殺し合いの舞台と言う盤上において、
生き足掻こうとする少年が一人いた。
生命を感じられなければ、人がいた痕跡も見当たらない荒野。
海馬乃亜によって始まった殺し合いの舞台と言う盤上において、
生き足掻こうとする少年が一人いた。
「ハァ、ハァ……」
例えるならば、それは狐が人に化けた姿と言われたら信じる人が多いだろう。
黄金色のフサフサな尻尾や頭部から生える獣の耳はそう受け取れる姿をしている。
背中を大きく露出させた衣装は幼いながらも何処か妖しい色香を醸し出す。
脱兎の如く走る姿は、常人を優に超えた身のこなしをしている。
手には一振りの刀。乱雑に持っている風には感じられず、
寧ろ使い慣れているかのように構えながら後方の空へと振るう。
黄金色のフサフサな尻尾や頭部から生える獣の耳はそう受け取れる姿をしている。
背中を大きく露出させた衣装は幼いながらも何処か妖しい色香を醸し出す。
脱兎の如く走る姿は、常人を優に超えた身のこなしをしている。
手には一振りの刀。乱雑に持っている風には感じられず、
寧ろ使い慣れているかのように構えながら後方の空へと振るう。
「ッ!」
迫るは月を覆うように迫る無数のコウモリ。
ただのコウモリであればどれだけ良かっただろうか。
一般的なコウモリと違い、これは人の肉を容易に抉る咬合力を持つ。
太刀筋はとても洗練されているとは言え、数の物量には負けてしまう。
全てを払うことはできず、露出した腕に少なくない噛み痕が残る。
ダメージとして無視できるものではないが、今はそれどころではない。
ただのコウモリであればどれだけ良かっただろうか。
一般的なコウモリと違い、これは人の肉を容易に抉る咬合力を持つ。
太刀筋はとても洗練されているとは言え、数の物量には負けてしまう。
全てを払うことはできず、露出した腕に少なくない噛み痕が残る。
ダメージとして無視できるものではないが、今はそれどころではない。
即座に少年がバックステップをすると、
先ほどまで彼の頭部があった場所を横切る、素手の薙ぎ払い。
当たらなかったが彼は確信している。離れなければ首が飛んでいたと。
少年のような細腕からはありえない威力に冷や汗をかきつつ相対する。
コウモリは人の形を作っていき、形成する途中でもミドルキックが飛ぶ。
刀を挟むことで致命傷は避けるが、威力は大きく勢いで軽く地面を転がる。
直ぐに起き上がろうとするも、倒れる少年の背を追いつくとともに踏みつけられてしまう。
先ほどまで彼の頭部があった場所を横切る、素手の薙ぎ払い。
当たらなかったが彼は確信している。離れなければ首が飛んでいたと。
少年のような細腕からはありえない威力に冷や汗をかきつつ相対する。
コウモリは人の形を作っていき、形成する途中でもミドルキックが飛ぶ。
刀を挟むことで致命傷は避けるが、威力は大きく勢いで軽く地面を転がる。
直ぐに起き上がろうとするも、倒れる少年の背を追いつくとともに踏みつけられてしまう。
「全く、手こずらせないでくれないかな。」
コウモリが集合して人の形を完成させると、
黄金色の髪と赤い瞳に、黒のマントをたなびかせた少年が立つ。
少年から見た相手の姿は、さながら人形のようにも思えた。
人の視線を釘付けにさせる外見とは、こういうの指すのかと。
一方で、その少年から繰り出されたのが先の攻撃でもある。
見た目と強さは比例するわけではないのは理解してることだが、
此処まで一方的にやられていることについては余り想像したくなかった。
黄金色の髪と赤い瞳に、黒のマントをたなびかせた少年が立つ。
少年から見た相手の姿は、さながら人形のようにも思えた。
人の視線を釘付けにさせる外見とは、こういうの指すのかと。
一方で、その少年から繰り出されたのが先の攻撃でもある。
見た目と強さは比例するわけではないのは理解してることだが、
此処まで一方的にやられていることについては余り想像したくなかった。
遡ること、殺し合いが始まって間もない頃。
殺し合いの舞台における果て、即ち端のエリア。
崖の先は海なのか、それすらも判断つかない黒い靄で覆われている。
空に浮かぶ島なのか、水辺に浮かぶ島なのか。いずれもわかることはなく。
近くにあった小石を投げても水の音はなく、地面に落ちた音すらも聞こえず。
この静寂こそが返事だと判断し、事故で落ちないよう崖から離れる少年が一人。
顎に手を当てながら、一人この荒野が多い舞台で思考を巡らせている。
殺し合いの舞台における果て、即ち端のエリア。
崖の先は海なのか、それすらも判断つかない黒い靄で覆われている。
空に浮かぶ島なのか、水辺に浮かぶ島なのか。いずれもわかることはなく。
近くにあった小石を投げても水の音はなく、地面に落ちた音すらも聞こえず。
この静寂こそが返事だと判断し、事故で落ちないよう崖から離れる少年が一人。
顎に手を当てながら、一人この荒野が多い舞台で思考を巡らせている。
(瘴流域とは違うことは分かった。でも、これ以上調査の進展のしようがない。)
少年、コウは今の状況を整理した末に溜息をつく。
彼の所属する騎空団はことあるごとに事件に巻き込まれる。
多くの国に関わったり、多くの災厄と立ち向かったりの波乱万丈。
加えて十二歳と言う幼さはあれども、一時は一人で旅をした経験がある。
場数も踏んだ身ではあるので、こういうことが起きても普段通りに近い。
とは言え気分のいいものではない。殺された二人が自分の知る人物ならば、
同じような行動をしていた可能性があったことは想像に難くないのだから。
彼の所属する騎空団はことあるごとに事件に巻き込まれる。
多くの国に関わったり、多くの災厄と立ち向かったりの波乱万丈。
加えて十二歳と言う幼さはあれども、一時は一人で旅をした経験がある。
場数も踏んだ身ではあるので、こういうことが起きても普段通りに近い。
とは言え気分のいいものではない。殺された二人が自分の知る人物ならば、
同じような行動をしていた可能性があったことは想像に難くないのだから。
(九尾なら、嬉々として愉むのが想像できるな……)
コウの血筋が関わる失われた王家と密接な関係を持つ、意志を持つ人造の魔獣九尾。
狡猾、残忍。それらの言葉だけで性格を理解できる怪物がこの催しにいたのであれば、
さぞ堪能していたのだろうことは想像するに難いことではない。既に倒したと言えども、
乃亜と名乗る少年は死霊術等の不完全な形ではなく、完璧に人を蘇生した。
もしかしたら、九尾さえも復活させているのではないかと思えてならない。
狡猾、残忍。それらの言葉だけで性格を理解できる怪物がこの催しにいたのであれば、
さぞ堪能していたのだろうことは想像するに難いことではない。既に倒したと言えども、
乃亜と名乗る少年は死霊術等の不完全な形ではなく、完璧に人を蘇生した。
もしかしたら、九尾さえも復活させているのではないかと思えてならない。
(とは言え、流石に九尾はいないはず。)
九尾の身体はかなり巨躯になる。
暗がりで人の姿は殆ど把握できなかったが、
それだけの体躯をあの会場で見かけないのはまずありえない。
なので九尾についてはいない扱いにするとして、今後どうするかを考える。
乗るか乗らないかで言えば乗るつもりはないとしても、自分にできることは何か。
殺し合いを打破するのであればまず破綻させること。首輪を何とかする他ない。
彼は礼節を弁え、物腰柔らかな態度で話すことからも年不相応の聡明さはある。
しかし機械知識については乏しい。騎空団には機械技師を筆頭に多くの人がいたので、
余り喜べることではないにしても、その人達がいてくれることを願うしかない。
加えて、星晶獣が関わるようなことがあれば自分の強さも限界が見える。
全体的に中途半端。だからこそ参加者に選ばれたのもかもしれないが。
暗がりで人の姿は殆ど把握できなかったが、
それだけの体躯をあの会場で見かけないのはまずありえない。
なので九尾についてはいない扱いにするとして、今後どうするかを考える。
乗るか乗らないかで言えば乗るつもりはないとしても、自分にできることは何か。
殺し合いを打破するのであればまず破綻させること。首輪を何とかする他ない。
彼は礼節を弁え、物腰柔らかな態度で話すことからも年不相応の聡明さはある。
しかし機械知識については乏しい。騎空団には機械技師を筆頭に多くの人がいたので、
余り喜べることではないにしても、その人達がいてくれることを願うしかない。
加えて、星晶獣が関わるようなことがあれば自分の強さも限界が見える。
全体的に中途半端。だからこそ参加者に選ばれたのもかもしれないが。
「君、こんなところで何をしてるんだい?」
音もなく忍び寄られたことで、
思わず腰に携えたていた支給品の刀を抜きつつ距離を取る。
仕込み傘が主武器であったため、刀剣類の心得自体はある。
できれば仕込み傘であれば望ましかったが、背に腹は代えられない。
思わず腰に携えたていた支給品の刀を抜きつつ距離を取る。
仕込み傘が主武器であったため、刀剣類の心得自体はある。
できれば仕込み傘であれば望ましかったが、背に腹は代えられない。
「身構えないでよ。敵対するつもりはないから。」
微笑みかける少年の姿はこの場では似つかわしくない。
刃物や警戒心を前にしてもその余裕の態度を崩すことはなく。
不変。この少年を一言で表すのであればそれが正しいだろうか。
いくら思考に耽っていたとは言えこうも近づかれるのか。
刃物や警戒心を前にしてもその余裕の態度を崩すことはなく。
不変。この少年を一言で表すのであればそれが正しいだろうか。
いくら思考に耽っていたとは言えこうも近づかれるのか。
「……そうですね。すみませんでした。」
少しばかり疑問や不審には思うが、事実相手は攻撃を仕掛けなかった。
寧ろ武器を構えるコウの方がこの絵面的には危険な人物に見える。
一息ついてから冷静さを取り戻し、刀を納めて相対する少年と向き合う。
寧ろ武器を構えるコウの方がこの絵面的には危険な人物に見える。
一息ついてから冷静さを取り戻し、刀を納めて相対する少年と向き合う。
「ひょっとして、ヴァンパイアの方ですか?」
以前コウはある理由でヴァンパイアとの交流を持っており、
頭部に翼に似た触角のようなものはないものの雰囲気や容姿については、
その交流のあったヴァンパイアの少年と類似したものを感じさせる。
尖った耳、彼の世界にはない呼び方だがエルフ耳も同じ特徴だ。
頭部に翼に似た触角のようなものはないものの雰囲気や容姿については、
その交流のあったヴァンパイアの少年と類似したものを感じさせる。
尖った耳、彼の世界にはない呼び方だがエルフ耳も同じ特徴だ。
「そうだけど……ああ、警戒してる?」
「いえ、知り合いにいたものなので。
ヴァンパイアであったとしても気にしませんよ。」
ヴァンパイアであったとしても気にしませんよ。」
ヴァンパイアはその伝承から人から畏怖され、
同時に強いが故に人を傷つけることを危惧し人との交流を避けた種族。
だから人を信用することに懐疑的だったり、蔑視したりすることもある。
今はある程度改善されたとはいえヴァンパイアと指摘されるのは、
余り良いものではないだろうと早々にそのことの話は切り上げる。
同時に強いが故に人を傷つけることを危惧し人との交流を避けた種族。
だから人を信用することに懐疑的だったり、蔑視したりすることもある。
今はある程度改善されたとはいえヴァンパイアと指摘されるのは、
余り良いものではないだろうと早々にそのことの話は切り上げる。
「そう? それで何をしてるんだい?
エリアの端に人はいないと思うけど。」
エリアの端に人はいないと思うけど。」
「簡単な調査ですよ。」
コウは此処にいた経緯を軽く説明する。
と言っても何か進展したわけでもなく、漠然とした状態だが。
と言っても何か進展したわけでもなく、漠然とした状態だが。
「へぇ、結構考えてるんだ。次は人探しと言ったところかな。」
「はい。できる範囲で敵となる人も倒しておきたいですが。」
話がスムーズに進む。
ヴァンパイアともなれば長い年月を生きる。
外見の幼さとは裏腹に状況の理解や呑み込みも早い。
時間との勝負になる部分もある状況において一つの強みと言える。
ヴァンパイアともなれば長い年月を生きる。
外見の幼さとは裏腹に状況の理解や呑み込みも早い。
時間との勝負になる部分もある状況において一つの強みと言える。
「良かったら僕も一緒に行動してもいいかな?」
「ええ、構いませんよ。」
特に状況に物怖じしない様子から、
戦いの経験も多いようではあるのも強みだ。
戦力や協力者が増えればそれだけ今後に繋がっていく。
戦いの経験も多いようではあるのも強みだ。
戦力や協力者が増えればそれだけ今後に繋がっていく。
「ですが───」
「その殺気については説明してもらえますか?」
コウの発言にきょとんとした顔をする少年。
大きな溜め息を吐きながら顔を伏せると同時に、
風を切る音と共に繰り出される鋭利な爪を用いた貫手。
得物はしまったが警戒を怠っていたわけではないため、
素早く身を逸らすことでその一撃を難なく躱すことに成功する。
大きな溜め息を吐きながら顔を伏せると同時に、
風を切る音と共に繰り出される鋭利な爪を用いた貫手。
得物はしまったが警戒を怠っていたわけではないため、
素早く身を逸らすことでその一撃を難なく躱すことに成功する。
「ああ、やっぱり隠しきれてなかったんだね。
普段なら隠せていたんだろうけど……流石に今は無理だ。」
普段なら隠せていたんだろうけど……流石に今は無理だ。」
あどけない少年らしさは彼方へと消えた。
顔に手を当てた指の隙間から伺える表情は、
どす黒い憎悪と殺意に満ちた表情で八重歯をギラつかせる。
以前そういった感情を向けられることはあったものの、
視線は視界に入れるだけで寒気が全身を伝うかのような冷たさを持つ。
顔に手を当てた指の隙間から伺える表情は、
どす黒い憎悪と殺意に満ちた表情で八重歯をギラつかせる。
以前そういった感情を向けられることはあったものの、
視線は視界に入れるだけで寒気が全身を伝うかのような冷たさを持つ。
「今の反応、気付いてた割には友好的だったじゃないか。
ひょっとしてある程度誤魔化してたら許していたとか?」
ひょっとしてある程度誤魔化してたら許していたとか?」
「僕の出会ったヴァンパイアは人と友好的でしたから、
なるべく信じたかったんですが……そうはいかないと。」
なるべく信じたかったんですが……そうはいかないと。」
「友好的? 面白いことを言うね。
散々人間を僕にしてきた僕達を善良だなんて。」
散々人間を僕にしてきた僕達を善良だなんて。」
コウの言うヴァンパイアと彼は異なるヴァンパイアだ。
名をプラム・バトリー。魔界孔の影響を受けた結果変質し、
ヴァンパイアとなった人間の一人であり、崩壊した日本において北国を制圧した、
ナイトメアアイズの真なる総長……と言った肩書きなのも今となっては過去の話。
百年前にも滅ぼされたザンマの者に敗北し、復活してもある男に滅ぼされた敗北者。
九死に一生を得た彼としては、何としてでもこれをものにしなければならなかった。
だが、本来ならば甘いマスクで容易に通せたそれも、屈辱を味わっては別だ。
外見上は取り繕えたものの結局は見てくれだけ。聡かったり経験者なら気付ける。
激しい憎悪や殺気を嘗て仲間のヨウにぶつけられたコウにとっては、特に。
名をプラム・バトリー。魔界孔の影響を受けた結果変質し、
ヴァンパイアとなった人間の一人であり、崩壊した日本において北国を制圧した、
ナイトメアアイズの真なる総長……と言った肩書きなのも今となっては過去の話。
百年前にも滅ぼされたザンマの者に敗北し、復活してもある男に滅ぼされた敗北者。
九死に一生を得た彼としては、何としてでもこれをものにしなければならなかった。
だが、本来ならば甘いマスクで容易に通せたそれも、屈辱を味わっては別だ。
外見上は取り繕えたものの結局は見てくれだけ。聡かったり経験者なら気付ける。
激しい憎悪や殺気を嘗て仲間のヨウにぶつけられたコウにとっては、特に。
「人間は利用するための道具さ。だから君を使おうじゃないか。
魔族に連なる君なら、血を吸っても眷属にしても使えそうだからね。」
魔族に連なる君なら、血を吸っても眷属にしても使えそうだからね。」
プラムの言う魔族とは、魔界孔の影響を受けた者のことだ。
自分が花嫁役として求めた天楼久那妓が獣の姿や力を得たように、
彼もまた人外となる容姿を持っているためそう思っただけの事。
……ただコウはエルーンと呼ばれる、その世界の基本となる四種族の一つ。
コウに限らずユエル等、失われた王家に連なる者達には尻尾があるので、
単なるエルーンとは違うのだが、とりあえず結論を言えば人類のくくりだ。
つまるところ、ただの勘違いである。
自分が花嫁役として求めた天楼久那妓が獣の姿や力を得たように、
彼もまた人外となる容姿を持っているためそう思っただけの事。
……ただコウはエルーンと呼ばれる、その世界の基本となる四種族の一つ。
コウに限らずユエル等、失われた王家に連なる者達には尻尾があるので、
単なるエルーンとは違うのだが、とりあえず結論を言えば人類のくくりだ。
つまるところ、ただの勘違いである。
「魔族? 何を言って───」
その誤解を解くだけの説明をする暇などない。
高速で飛来する薙ぎ払いを前に回避以外の選択肢はなく。
続けざまに来る徒手空拳を持ち前の経験で何とか被弾を避ける。
はっきり言えば技術だけで見ると、その徒手空拳は児戯のようなもの。
拳や足で戦う団員もいたので目は肥えている。粗雑で洗練されたものには程遠い。
だが、人外となったヴァンパイアの能力であれば、たとえ児戯でも兵器の類になる。
直撃すれば死は免れない必殺の一撃。洗練されてない粗雑な攻撃は、
裏を返せば洗練する必要すらない強さを誇ると言うことでもある。
事実、戦い慣れた格闘家を相手するかのように反撃に回る暇がない。
高速で飛来する薙ぎ払いを前に回避以外の選択肢はなく。
続けざまに来る徒手空拳を持ち前の経験で何とか被弾を避ける。
はっきり言えば技術だけで見ると、その徒手空拳は児戯のようなもの。
拳や足で戦う団員もいたので目は肥えている。粗雑で洗練されたものには程遠い。
だが、人外となったヴァンパイアの能力であれば、たとえ児戯でも兵器の類になる。
直撃すれば死は免れない必殺の一撃。洗練されてない粗雑な攻撃は、
裏を返せば洗練する必要すらない強さを誇ると言うことでもある。
事実、戦い慣れた格闘家を相手するかのように反撃に回る暇がない。
「ほら、さっきみたいに刀を抜きなよ。」
ヒュン、と音と共に頬に赤い筋が刻まれる。
簡単に言うなと内心で軽くごちる。もし反撃をした瞬間、
隙を突いて首を落とされることが容易に予想できてしまう。
隙だらけだがその隙で仕留められるとは到底思えない。
かといって、このまま続けたところでじり貧なのは目に見える。
このまま戦っても勝ち目が薄いと確信するには時間はかからない。
確信を持った瞬間コウは地面の砂を蹴り上げることで軽い目潰しをしつつ、
逃げに徹することを選択したものの、結果は見てのとおり容易に追いつかれた。
コウが遅いとかプラムが速いとかは、ひょっとしたらあるのかもしれない。
だがそれらはさほど問題ではない。根本的な問題は場所の方だ。
簡単に言うなと内心で軽くごちる。もし反撃をした瞬間、
隙を突いて首を落とされることが容易に予想できてしまう。
隙だらけだがその隙で仕留められるとは到底思えない。
かといって、このまま続けたところでじり貧なのは目に見える。
このまま戦っても勝ち目が薄いと確信するには時間はかからない。
確信を持った瞬間コウは地面の砂を蹴り上げることで軽い目潰しをしつつ、
逃げに徹することを選択したものの、結果は見てのとおり容易に追いつかれた。
コウが遅いとかプラムが速いとかは、ひょっとしたらあるのかもしれない。
だがそれらはさほど問題ではない。根本的な問題は場所の方だ。
(身を隠す場所が少なすぎる……)
二人のいる場所は殆どが更地となっていて、視界が余りにも開けた場所。
身を隠すなどしてやり過ごそうと言う手段が取れず、純粋な脚や速度の勝負になる。
多少距離を取れたあったところで解決のしようがないことだ。
身を隠すなどしてやり過ごそうと言う手段が取れず、純粋な脚や速度の勝負になる。
多少距離を取れたあったところで解決のしようがないことだ。
「抵抗されても困るし、腕でも斬り落とすか。後で眷属にすればくっつくよね。」
大したことのない相手とは言え多少の腕は立つ。
血を吸いつくすよりは眷属にして使い倒す方が有益だろう。
殺し合いも始まったばかりだ。頭数を揃えていくのは大事だ。
ナイトメアアイズでも偽りの姉のカミラに任せていたように、
人を使い倒すことについては慣れたものだ。
血を吸いつくすよりは眷属にして使い倒す方が有益だろう。
殺し合いも始まったばかりだ。頭数を揃えていくのは大事だ。
ナイトメアアイズでも偽りの姉のカミラに任せていたように、
人を使い倒すことについては慣れたものだ。
そうはさせまいとコウも全力で足掻くが、
満足に身動きできない状況では抵抗も虚しいものになる。
水底へ沈むように、絶望を前にできることなど何もなく。
鋭利な爪を月夜に光らせる光景を最後にコウは目を閉じる。
満足に身動きできない状況では抵抗も虚しいものになる。
水底へ沈むように、絶望を前にできることなど何もなく。
鋭利な爪を月夜に光らせる光景を最後にコウは目を閉じる。
「おや、面白いことをやってるじゃないか。」
手が切断される寸前、
近くから少女の声が聞こえた。
二人の動きは止まり、声の方へと顔を向ける。
淡いピンク色の服を纏った、十歳にも満たない姿をした幼い少女。
全体的に赤よりの色合いの中、水色のウェーブヘアーがよく目立つ。
支給品を詰め込んだ赤いランドセルが、悪い意味で似合う幼い少女。
プラムと同様に、ランドセルを度外視すれば人を魅了する端麗さが目立つ。
幼さはあるものの、彼女が人間でないことについてはすぐに察せた。
コウモリのような翼が広がっており、悪魔やその類だと連想ができる。
近くから少女の声が聞こえた。
二人の動きは止まり、声の方へと顔を向ける。
淡いピンク色の服を纏った、十歳にも満たない姿をした幼い少女。
全体的に赤よりの色合いの中、水色のウェーブヘアーがよく目立つ。
支給品を詰め込んだ赤いランドセルが、悪い意味で似合う幼い少女。
プラムと同様に、ランドセルを度外視すれば人を魅了する端麗さが目立つ。
幼さはあるものの、彼女が人間でないことについてはすぐに察せた。
コウモリのような翼が広がっており、悪魔やその類だと連想ができる。
「おや、同族みたいだね。君も味見してみる?」
「ふむ、悪くない提案だ。無理矢理パーティに招待され、
あの乃亜と言う小僧に業腹を抱えていたところだったからな。」
あの乃亜と言う小僧に業腹を抱えていたところだったからな。」
もしかして助けなのでは、
なんて淡い期待をしたが一抹の望みは絶たれる。
助けになってくれる人だと思ってみれば敵が余計に増えただけだ。
そんな不運の連鎖があっていいのかとコウの表情は青ざめていく。
元々現状ではどうにもならないものをさらに詰みへと追い込まれてしまう。
何も成すことなく、ただヴァンパイアにいいように利用されるだけで終わる。
いかに年不相応の経験をしているコウでもこの状況には心が折れかけていた。
なんて淡い期待をしたが一抹の望みは絶たれる。
助けになってくれる人だと思ってみれば敵が余計に増えただけだ。
そんな不運の連鎖があっていいのかとコウの表情は青ざめていく。
元々現状ではどうにもならないものをさらに詰みへと追い込まれてしまう。
何も成すことなく、ただヴァンパイアにいいように利用されるだけで終わる。
いかに年不相応の経験をしているコウでもこの状況には心が折れかけていた。
(また、なのか……!!)
生贄の為だけに育て上げられた。
死ぬことが存在意義とされていた昔を思い出す。
九尾とそう変わらない邪悪な存在によって使い倒される。
そんなものに納得などできるわけがないが、現状はどうすることもできない。
死ぬことが存在意義とされていた昔を思い出す。
九尾とそう変わらない邪悪な存在によって使い倒される。
そんなものに納得などできるわけがないが、現状はどうすることもできない。
「妖狐の類なら溜飲が多少下がるかもしれないが……それはそれとしてだ。」
だが、想像してた展開とは大分違った。
一度真紅の瞳を伏せた後、開くと同時に右手に赤い槍を生成し投擲。
弾丸のような速度で飛来したそれをプラムが躱し、拘束から逃れた。
一瞬コウは戸惑うも、即座に状況を理解し起き上がり態勢だけは整える。
一度真紅の瞳を伏せた後、開くと同時に右手に赤い槍を生成し投擲。
弾丸のような速度で飛来したそれをプラムが躱し、拘束から逃れた。
一瞬コウは戸惑うも、即座に状況を理解し起き上がり態勢だけは整える。
「……どういうことかな? 独り占めが御所望かい?」
露骨に不機嫌そうな顔をするプラム。
相手はただのヴァンパイアでないことはわかる。
眷属になる形でのヴァンパイアではない、純正な存在。
なので対等に接したつもりだが、予想外の攻撃をされては別だ。
相手はただのヴァンパイアでないことはわかる。
眷属になる形でのヴァンパイアではない、純正な存在。
なので対等に接したつもりだが、予想外の攻撃をされては別だ。
「何、同族がこんなつまらん催しに乗り気なのが気に入らん。故に潰す。」
結果的に助けてもらったものの、
戦う理由が気に食わないだけのもの。
それだけで潰される相手はたまったものではない。
敵ではあるのだが、少しだけコウは相手に同情してしまう。
戦う理由が気に食わないだけのもの。
それだけで潰される相手はたまったものではない。
敵ではあるのだが、少しだけコウは相手に同情してしまう。
「ああ、そう。じゃあ死になよ。」
不機嫌そうな表情にさらに眉間に皺を寄せながら爪の斬撃。
同じように少女もまた、爪を用いた斬撃がぶつかり合う。
相殺した瞬間空いた手の方での斬撃が交差する光景は、さながら剣戟の如く。
同じように少女もまた、爪を用いた斬撃がぶつかり合う。
相殺した瞬間空いた手の方での斬撃が交差する光景は、さながら剣戟の如く。
「っと。」
剣戟を中断すると少女が高速で飛翔し、背後に回り込みながら再び槍を生成。
槍による刺突をプラムも身を翻しながら躱し、地上へ着地しても続ける刺突。
華麗に躱し、大きく距離を取ったところにそのまま槍を投擲するがこれも避ける。
反撃のためプラムが肉薄し貫手を放つが、逆に少女が距離を取るように空を舞い手を翳す。
槍による刺突をプラムも身を翻しながら躱し、地上へ着地しても続ける刺突。
華麗に躱し、大きく距離を取ったところにそのまま槍を投擲するがこれも避ける。
反撃のためプラムが肉薄し貫手を放つが、逆に少女が距離を取るように空を舞い手を翳す。
「ならこれはどう?」
手から刃のついた鎖が飛び出し、プラムを襲う。
当然射程外へと逃げるように距離を取るが、追撃は終わらない。
伸ばされた鎖は生物の如くそのまま追尾を始めて攻撃をやめない。
逃げは無意味と分かり、鎖同士の隙間を素早く掻い潜りながら接近していく。
当然射程外へと逃げるように距離を取るが、追撃は終わらない。
伸ばされた鎖は生物の如くそのまま追尾を始めて攻撃をやめない。
逃げは無意味と分かり、鎖同士の隙間を素早く掻い潜りながら接近していく。
「流石同族ね。それぐらいはできないと面白くないわ。」
鎖を掻い潜りワンインチまで迫ると、
互いにヴァンパイアの膂力に物を言わせた拳がぶつかり合う。
当たれば必殺だったであろうそれを受け止める少女の姿は、
コウからすれば(既に戦いの中で察したが)無茶苦茶な存在だ。
互いにヴァンパイアの膂力に物を言わせた拳がぶつかり合う。
当たれば必殺だったであろうそれを受け止める少女の姿は、
コウからすれば(既に戦いの中で察したが)無茶苦茶な存在だ。
「残念だよ、君なら彼女以上の花嫁に向いていたのに。」
「お誘いどうも。妹のサンドバッグぐらいの価値はあるし嫁ごうかしら。」
契りを交わすなどといった高潔さや甘い関係は一切なく。
あるのは一方的に使い倒す。それ以外の魅力も価値もなし。
プラムも同じだ。花嫁とは言うが自分の力を高めるための生贄に過ぎない。
無論ある程度の選り好みはしている。それ相応の強さを秘めてなければ。
当然、彼女はそれに向いている。ことと次第では天楼久那妓よりも上だ。
互いに皮肉を口にした後、互いに殺意満点の顔で攻撃を再開する。
あるのは一方的に使い倒す。それ以外の魅力も価値もなし。
プラムも同じだ。花嫁とは言うが自分の力を高めるための生贄に過ぎない。
無論ある程度の選り好みはしている。それ相応の強さを秘めてなければ。
当然、彼女はそれに向いている。ことと次第では天楼久那妓よりも上だ。
互いに皮肉を口にした後、互いに殺意満点の顔で攻撃を再開する。
(駄目だ、二人の間に割り込む暇がない!)
二人の少年少女の戦いと書くと可愛らしさを感じるが、
やってることはヴァンパイアのパワーを用いた全力のステゴロ。
互いの拳が、脚が、爪が、肉体が衝突しては相殺を空中で繰り返す。
外見だけならば、絵物語の主要人物になりそうな麗しい姿との正反対の光景。
コウも彼女の援護しようとは思うも、ダメージを抜きにしても加勢できる状況ではない。
戦いのレベルが既に上の段階だ。いつもの武器であるならいざ知らず、
折れず欠けない刀と言うだけではそれは簡単なことではなかった。
やってることはヴァンパイアのパワーを用いた全力のステゴロ。
互いの拳が、脚が、爪が、肉体が衝突しては相殺を空中で繰り返す。
外見だけならば、絵物語の主要人物になりそうな麗しい姿との正反対の光景。
コウも彼女の援護しようとは思うも、ダメージを抜きにしても加勢できる状況ではない。
戦いのレベルが既に上の段階だ。いつもの武器であるならいざ知らず、
折れず欠けない刀と言うだけではそれは簡単なことではなかった。
「ならこれはどうだい!」
「!」
永遠に続くかのような攻防は終わりを告げる。
突如プラムの周囲を落雷の柱が降り注いだからだ。
空が明るければ青天の霹靂と呼ぶべきだろうそれは、
退避が遅れた少女の左腕を黒焦げに焦がしており、
少しばかりきょとんとした目でその腕を眺めてながら地に降り立つ。
突如プラムの周囲を落雷の柱が降り注いだからだ。
空が明るければ青天の霹靂と呼ぶべきだろうそれは、
退避が遅れた少女の左腕を黒焦げに焦がしており、
少しばかりきょとんとした目でその腕を眺めてながら地に降り立つ。
本来ブラムに雷を扱う力はない。
これは彼の所持する光の主霊石(マスターコア)によるバックアップだ。
ある世界で王を選定する力によって、その世界における光の魔法を会得している。
人間を支配しようとするブラムにとって、これほど相応しいものはないと思えてならない。
光と言うのは癪に障るが、雷に寄っているのでそれほどの不快感でもなかった。
これは彼の所持する光の主霊石(マスターコア)によるバックアップだ。
ある世界で王を選定する力によって、その世界における光の魔法を会得している。
人間を支配しようとするブラムにとって、これほど相応しいものはないと思えてならない。
光と言うのは癪に障るが、雷に寄っているのでそれほどの不快感でもなかった。
「ふむ、ウェルダンを通り越してるわ。客に出す料理としては論外な出来栄えだ。」
腕を一本やられたと言ってもヴァンパイア。
人間と違いその内再生するものだからなのか、
芸術品でも眺めるかのように様々な角度から眺める。
自分の腕さえも他人事のような状況だ。
人間と違いその内再生するものだからなのか、
芸術品でも眺めるかのように様々な角度から眺める。
自分の腕さえも他人事のような状況だ。
「それにしても面白い芸を使うな。さっきまで使わなかったのは遊びか?」
「必要ないと思ったからさ。君の後ろにいる彼程度の実力者ならね。
けど君が登場。参加者の水準を見直す必要ができたんだ。
人間から貸し与えられたものを使うのは、確かに業腹ではあるけどね。」
けど君が登場。参加者の水準を見直す必要ができたんだ。
人間から貸し与えられたものを使うのは、確かに業腹ではあるけどね。」
「案外臨機応変だな。」
「膂力だけの存在に王は務まらない。そこは同じ意見じゃないかな?」
「同感だ。さて、治るとはいえだ。
此処までされたなら仕返ししたいのはやまやまだが……」
此処までされたなら仕返ししたいのはやまやまだが……」
「え?」
チラリと、少女は背後にいるコウを見やる。
何の視線なのか分かりかねない視線に軽く身構えた。
何の視線なのか分かりかねない視線に軽く身構えた。
「……はぁ、仕方ないな。」
めんどくさそうに目を逸らしながら溜め息を吐く。
まだ無事な右手の方で何度か拳を作った後、
まだ無事な右手の方で何度か拳を作った後、
「じゃあ雑に、ギュッとしてドーン!!」
先ほどまでの高圧的な態度は何処へ行ったのか、
子供のような語彙と共に右腕を大地へと叩き込む。
力任せの一撃だが、力任せだからこそ威力もすさまじい。
コウの時の比較ではない。砂が派手に飛散することで視界を遮る。
目にも僅かに入り、今回ばかりは防御に徹することを余儀なくされた。
距離を取りつつ周囲を警戒するも何も起きず、視界が戻れば既に二人の姿はない。
子供のような語彙と共に右腕を大地へと叩き込む。
力任せの一撃だが、力任せだからこそ威力もすさまじい。
コウの時の比較ではない。砂が派手に飛散することで視界を遮る。
目にも僅かに入り、今回ばかりは防御に徹することを余儀なくされた。
距離を取りつつ周囲を警戒するも何も起きず、視界が戻れば既に二人の姿はない。
「……ヴァンパイアの癖に人間を庇って逃げたのか。」
或いは独り占め目的か。
何を考えてるかは分からないが、
コウに受けた目くらましと違って今度は逃げ足が速い。
流石に追うのは一苦労だろうし、追跡はやめにする。
二人と出会ったことで参加者の水準はある程度高いのは分かった。
だったら無理に拘ることはせず、他の参加者も狙えばいい。
ヴァンパイアは歩む。自分を受け入れなかった世界を滅ぼす為。
何を考えてるかは分からないが、
コウに受けた目くらましと違って今度は逃げ足が速い。
流石に追うのは一苦労だろうし、追跡はやめにする。
二人と出会ったことで参加者の水準はある程度高いのは分かった。
だったら無理に拘ることはせず、他の参加者も狙えばいい。
ヴァンパイアは歩む。自分を受け入れなかった世界を滅ぼす為。
【プラム・バトリー@大番長―Big Bang Age-】
[状態]:健康
[装備]:光の主霊石@テイルズオブアライズ
[道具]:基本支給品、ランダム支給品×0~2
[思考・状況]基本方針:乃亜含めて皆殺し
1:適当に放浪する。
2:ザンマがいたら確実に殺す。
3:必要なら眷属も増やしておく。
[備考]
※参戦時期は死亡後。
※光の主霊石により雷に関する光魔法が使えます。
慣れないとは言え特体生なので中級ぐらいまでは楽に使えるかも。
[状態]:健康
[装備]:光の主霊石@テイルズオブアライズ
[道具]:基本支給品、ランダム支給品×0~2
[思考・状況]基本方針:乃亜含めて皆殺し
1:適当に放浪する。
2:ザンマがいたら確実に殺す。
3:必要なら眷属も増やしておく。
[備考]
※参戦時期は死亡後。
※光の主霊石により雷に関する光魔法が使えます。
慣れないとは言え特体生なので中級ぐらいまでは楽に使えるかも。
ブラムから大分離れた場所。
そこには高速で飛行する少女と、脇に抱えられたコウ。
追ってくる気配がないため、地上へと降りると乱雑に放り投げる。
即座に受け身を取りながら手に持ったままの刀を構えて相対するが、
相手は肩をすくめながら笑う。
そこには高速で飛行する少女と、脇に抱えられたコウ。
追ってくる気配がないため、地上へと降りると乱雑に放り投げる。
即座に受け身を取りながら手に持ったままの刀を構えて相対するが、
相手は肩をすくめながら笑う。
「そう構えるな。確かにさっきはああ言ったけれど、
別に食べやしないわ。連れて逃がしたのは利用目的はあるけどもね。」
別に食べやしないわ。連れて逃がしたのは利用目的はあるけどもね。」
あのまま戦ってもよかったのだが相手は雷を用いて、かつ広範囲。
戦闘を続ければまず彼はその余波で死ぬことは想像に難くなかった。
別に死んでもさほど心は痛まないが、見捨てたとかで後に面倒ごとは困る。
誰が相手でも負けるつもりはないにしても、結局首輪の解除は必須条件。
ある程度友好的な関係でいられるように気にしておくべき案件だ。
戦闘を続ければまず彼はその余波で死ぬことは想像に難くなかった。
別に死んでもさほど心は痛まないが、見捨てたとかで後に面倒ごとは困る。
誰が相手でも負けるつもりはないにしても、結局首輪の解除は必須条件。
ある程度友好的な関係でいられるように気にしておくべき案件だ。
「とまあ、そう言うことだから助けたわけ。
それに納得がいかないのであれば振るいなさい。
死ぬのを覚悟の上で、と言う注釈はつけるけれど。
それに納得がいかないのであれば振るいなさい。
死ぬのを覚悟の上で、と言う注釈はつけるけれど。
「そう、なんですか……それでしたらすみません、疑って。」
「別に気にしないでいいわ。
じゃあ、私行くから後は好きにしなさい。
この通り殺し合いには乗らない善良な存在だからよろしく。」
じゃあ、私行くから後は好きにしなさい。
この通り殺し合いには乗らない善良な存在だからよろしく。」
コウは生きてるし、ダメージの割には動ける様子だ。
だったら無理に面倒を見る必要もないだろう。
後は好きに行動してもらえば都合がいい。
だったら無理に面倒を見る必要もないだろう。
後は好きに行動してもらえば都合がいい。
「あの、待ってください!」
「同行させてほしい、なんていうつもり?
腕は立つみたいだけど、正直足手纏いよ。
山にでもこもって終わるまで待つ方が賢明ね。
と言うより、私を顎で使えると思うなら殺すけど?」
腕は立つみたいだけど、正直足手纏いよ。
山にでもこもって終わるまで待つ方が賢明ね。
と言うより、私を顎で使えると思うなら殺すけど?」
身を強張らせるには十分な殺気。
利用すると言う点はお互いさまではあるが、
別に使い倒すと言った下に見ているつもりはない。
利用すると言う点はお互いさまではあるが、
別に使い倒すと言った下に見ているつもりはない。
「いえ、そんなつもりは。
確かに同行はしたいですが、
貴女の言う通り限界は見えます。
かといって何もしないつもりもありません。
なのでよければですが、僕の知り合いにヨウと言う、
青藤色の髪のエルーンがいたら保護をお願いできますか?」
確かに同行はしたいですが、
貴女の言う通り限界は見えます。
かといって何もしないつもりもありません。
なのでよければですが、僕の知り合いにヨウと言う、
青藤色の髪のエルーンがいたら保護をお願いできますか?」
もしユエルやソシエ、団長がいたとしても実力はよく知っている。
だがまだ人付き合いが得意ではなく、不安なところがあるヨウだけは別だ。
最悪先程の少年と出会えば、騙されたりする可能性だって十分にありうる。
できるだけ安全圏にいてほしく、それなら彼女の強さであれば適任だろうと。
だがまだ人付き合いが得意ではなく、不安なところがあるヨウだけは別だ。
最悪先程の少年と出会えば、騙されたりする可能性だって十分にありうる。
できるだけ安全圏にいてほしく、それなら彼女の強さであれば適任だろうと。
「家族かしら?」
「妹みたいなものです。ヨウも僕と同じで戦えますが、やはり心配で……」
「ふーん、妹ね。
だが悪魔に頼みごとをするなら、
供物を用意するのが道理じゃなくて?」
だが悪魔に頼みごとをするなら、
供物を用意するのが道理じゃなくて?」
心証を良くするのであればその頼みは引き受けるべきだが、
初対面の、対等でもない相手に二つ返事で受け入れるほど寛容でもない。
彼は数十年来の親友でも、長年仕えてきた従者でも、血の繋がった妹でもないのだから。
初対面の、対等でもない相手に二つ返事で受け入れるほど寛容でもない。
彼は数十年来の親友でも、長年仕えてきた従者でも、血の繋がった妹でもないのだから。
「先程の方と同族、とのことですからヴァンパイアですよね。悪魔とは?」
「質問に質問を返すのは礼儀に反するって知らないの?
細かいことは気にしない。こういうのはノリよ、ノリ。
それで、態々訪ねるってことはOKなんでしょ?何をくれるの?」
細かいことは気にしない。こういうのはノリよ、ノリ。
それで、態々訪ねるってことはOKなんでしょ?何をくれるの?」
「───僕の血を払います。」
ヴァンパイアであるなら、
血を糧にして生きる生物であるはず。
だったら一番払いやすいのはそれだろう。
血の味などコウにとってはさっぱりではあるものの、
プラムからある程度興味を持たれたのを考えるに、
それなりの味は保障されてる可能性は高い。
血を糧にして生きる生物であるはず。
だったら一番払いやすいのはそれだろう。
血の味などコウにとってはさっぱりではあるものの、
プラムからある程度興味を持たれたのを考えるに、
それなりの味は保障されてる可能性は高い。
「おや、随分と気前がいい。私が致死量を吸えば死ぬが、
妹がそんなに大事か? それとも自殺願望でもあるとか?」
妹がそんなに大事か? それとも自殺願望でもあるとか?」
「……ヨウは、以前の僕のようなものです。」
九尾の為に死ぬことを定められた過酷な環境にコウはいた。
だがヨウはそれ以上で、人として扱われないような環境にいて、
コウが舞の継承者になったことで用済みとなった空っぽの影法師。
嘗ての自分と同じだ。自分の立場を呪い、わが身可愛さに誰かを傷つけて。
そんな自分が許されたように、誰もが敵になるとしても自分だけは許すと。
そう決めた相手だ。悪魔と相乗りするぐらいの覚悟は既に持っている。
だがヨウはそれ以上で、人として扱われないような環境にいて、
コウが舞の継承者になったことで用済みとなった空っぽの影法師。
嘗ての自分と同じだ。自分の立場を呪い、わが身可愛さに誰かを傷つけて。
そんな自分が許されたように、誰もが敵になるとしても自分だけは許すと。
そう決めた相手だ。悪魔と相乗りするぐらいの覚悟は既に持っている。
「できればこんなところで死ぬつもりはありません。
貴女が死なない程度に血を持っていくことを信じるしかないです。
ですが、その代わり必ずヨウのことをお願いします。」
貴女が死なない程度に血を持っていくことを信じるしかないです。
ですが、その代わり必ずヨウのことをお願いします。」
「ハッ、対価を此方に委ねるなんて面白いじゃない。
少しまけてもよさそうだけど、その覚悟を見せた相手にそれは不敬か。
良いわ、その提案乗った。じゃあ噛ませてもらうから、首を出しなさい。」
少しまけてもよさそうだけど、その覚悟を見せた相手にそれは不敬か。
良いわ、その提案乗った。じゃあ噛ませてもらうから、首を出しなさい。」
不安な表情と共にコウはしゃがみながら髪を抑え、首を傾ける。
日に当たってないかのような白い肌は穢れを感じさせないもので、
少しばかりそそられながら少女は肩を掴み、尖った牙を首筋へ突き立てる。
日に当たってないかのような白い肌は穢れを感じさせないもので、
少しばかりそそられながら少女は肩を掴み、尖った牙を首筋へ突き立てる。
「ッ、ァ……アッ……」
最初は肉を抉られる不快感と痛みはあったが、思ったよりも痛みはないと感じた。
血が抜けることによって力が抜けるような感覚のはずが、どこか浸っていたい。
快楽にも似たようなこの感覚をどれだけ耐えれば済むのだろうか。
或いは、これが最後の時なのかと不安に思っていると、
思いのほか短い時間でその吸血行為は終わった。
血が抜けることによって力が抜けるような感覚のはずが、どこか浸っていたい。
快楽にも似たようなこの感覚をどれだけ耐えれば済むのだろうか。
或いは、これが最後の時なのかと不安に思っていると、
思いのほか短い時間でその吸血行為は終わった。
「ケプッ。めずらしい味だ。人間とは違って品質がいいな。
たまに飲むといいかも……ってなんだその顔は。魔性の類か?」
たまに飲むといいかも……ってなんだその顔は。魔性の類か?」
力が抜け、肩で息をするコウの表情は何処か色っぽい。
思わぬ表情を見て、彼女は一瞬だけドキッとしてしまう。
思わぬ表情を見て、彼女は一瞬だけドキッとしてしまう。
「あの、これだけでいいんですか?」
想像よりも短いし、軽い貧血になった程度だ。
回復の術に関する心得はあるので止血も割と容易にできた。
死からは程遠いどころか、意識も普通に保てるものになっている。
回復の術に関する心得はあるので止血も割と容易にできた。
死からは程遠いどころか、意識も普通に保てるものになっている。
「私は少食だから別にこの程度でいいのよ。
眷属にもならないし死にもしない。貧血はあるから少し大変か。
さて、その覚悟と捧げた血の対価を今度は私が払うとするわ。
払わせてから言うのもなんだけど、その妹がいるとも限らない。
払い損になったとしても血は返せないから、そこは理解して頂戴。」
眷属にもならないし死にもしない。貧血はあるから少し大変か。
さて、その覚悟と捧げた血の対価を今度は私が払うとするわ。
払わせてから言うのもなんだけど、その妹がいるとも限らない。
払い損になったとしても血は返せないから、そこは理解して頂戴。」
「構いません。いなかったとしても、傷の足しにはなるかと。」
「違いない。あの乃亜がやったことか、
傷の再生が遅いのも気掛かりだからな。」
傷の再生が遅いのも気掛かりだからな。」
強すぎる人物に対する制限。
これがそう言うことなのかと察する。
事実血を飲んだおかげで回復速度は上昇していた。
余りおいそれと他人の血など受け取れないだろうが、
手段の一つとして覚えておくことにする。
これがそう言うことなのかと察する。
事実血を飲んだおかげで回復速度は上昇していた。
余りおいそれと他人の血など受け取れないだろうが、
手段の一つとして覚えておくことにする。
「さて、そろそろ行くとするわ。」
契約も終えた、相手の体調も問題なし。
此処にいる意味は本当になくなり、翼をはためかせる。
此処にいる意味は本当になくなり、翼をはためかせる。
「あ、待ってください。
「まだ何か?」
「最後に名前を伺ってもよろしいですか。僕はコウです。」
名前を知らないと後で困る。
そのことに気付き『ああ、そうだったな』と呟く。
月をバックに空を舞いながら、少女はこう答えた。
そのことに気付き『ああ、そうだったな』と呟く。
月をバックに空を舞いながら、少女はこう答えた。
「───レミリア・スカーレット。レミリアでいいわ。」
名乗りを上げるとレミリアは空を舞い、
それをコウは見届けた後別の方角へ歩き出す。
ヴァンパイアは飛び立つ。自分を受け入れた幻想の世界へ戻るために。
それをコウは見届けた後別の方角へ歩き出す。
ヴァンパイアは飛び立つ。自分を受け入れた幻想の世界へ戻るために。
【コウ@グランブルーファンタジー】
[状態]:上半身に多数の噛み痕、首筋に噛み痕、貧血、ダメージ(中)
[装備]:千鳥@刀使ノ巫女
[道具]:基本支給品、ランダム支給品×0~2
[思考・状況]基本方針:殺し合いを止める。
1:団長さん達の知り合いを探す。できればヨウやスイを優先
2:彼(ブラム)はなんとかしたいが、今はどうしようもない。
3:殺し合いに乗らない人を探したいが、見極める必要がある。
[備考]
※参戦時期は少なくとも『荒るる旻天、帛裂く調べ』エンディングでスイと再会する前。
※吸血量が少なすぎるので眷属にはなりません
[状態]:上半身に多数の噛み痕、首筋に噛み痕、貧血、ダメージ(中)
[装備]:千鳥@刀使ノ巫女
[道具]:基本支給品、ランダム支給品×0~2
[思考・状況]基本方針:殺し合いを止める。
1:団長さん達の知り合いを探す。できればヨウやスイを優先
2:彼(ブラム)はなんとかしたいが、今はどうしようもない。
3:殺し合いに乗らない人を探したいが、見極める必要がある。
[備考]
※参戦時期は少なくとも『荒るる旻天、帛裂く調べ』エンディングでスイと再会する前。
※吸血量が少なすぎるので眷属にはなりません
【レミリア・スカーレット@東方project】
[状態]:左腕が黒こげ(再生中)
[装備]:なし
[道具]:基本支給品、ランダム支給品×1~3
[思考・状況]基本方針:むかついたので乃亜を殴り飛ばす。
1:ヨウと言うエルーン? がいたら保護する。エルーンってなんだ。
2:あいつ(ブラム)は必ず倒す。同族で乗り気な奴もついでにしばく。
3:身内はいたら探すが優先度は低め。
[状態]:左腕が黒こげ(再生中)
[装備]:なし
[道具]:基本支給品、ランダム支給品×1~3
[思考・状況]基本方針:むかついたので乃亜を殴り飛ばす。
1:ヨウと言うエルーン? がいたら保護する。エルーンってなんだ。
2:あいつ(ブラム)は必ず倒す。同族で乗り気な奴もついでにしばく。
3:身内はいたら探すが優先度は低め。
[備考]
※参戦時期は少なくとも緋想天以降。
※飛行能力にどの程度制限があるかは後続の書き手にお任せします
※再生能力は低下してますが吸血、食肉等の行為次第で上がるかもしれません。
※参戦時期は少なくとも緋想天以降。
※飛行能力にどの程度制限があるかは後続の書き手にお任せします
※再生能力は低下してますが吸血、食肉等の行為次第で上がるかもしれません。
【光の主霊石@テイルズオブアライズ】
ブラムに支給。主霊石と書いてマスターコアと読む。
領将(スルド)の証となる霊石で、元々はガナベルトが持っていたもの。
ダナ人の奴隷の霊石を通じて集霊器に集められた星霊力が貯蓄されており、
戦闘の際には主霊石から星霊力を引き出し、同じ属性術を行使することもできる。
本来は領将にしか使えないが、本ロワでは誰が使っても力を行使することは可能。
ゲーム上ではガナベルトの戦闘以外での使用の描写がないので、
使うとどうなるかは書き手任せ。
ブラムに支給。主霊石と書いてマスターコアと読む。
領将(スルド)の証となる霊石で、元々はガナベルトが持っていたもの。
ダナ人の奴隷の霊石を通じて集霊器に集められた星霊力が貯蓄されており、
戦闘の際には主霊石から星霊力を引き出し、同じ属性術を行使することもできる。
本来は領将にしか使えないが、本ロワでは誰が使っても力を行使することは可能。
ゲーム上ではガナベルトの戦闘以外での使用の描写がないので、
使うとどうなるかは書き手任せ。
【千鳥@刀使ノ巫女】
コウに支給。珠鋼という特殊な金属で出来た日本刀。
基本的には錆びず刃こぼれもすることはない。
御刀に選ばれた者は刀使として写シなどの能力が使用できる。
元は衛藤美奈都の御刀だが、娘の衛藤可奈美が受け継いだ。
作中通りアニメ本編でも雷を斬ったこともあるにはあるが、
雷に対して絶対的な耐性、メタ性能を持っているわけではない。
刀使以外には折れない錆びない剣と、それはそれで強い武器。
コウに支給。珠鋼という特殊な金属で出来た日本刀。
基本的には錆びず刃こぼれもすることはない。
御刀に選ばれた者は刀使として写シなどの能力が使用できる。
元は衛藤美奈都の御刀だが、娘の衛藤可奈美が受け継いだ。
作中通りアニメ本編でも雷を斬ったこともあるにはあるが、
雷に対して絶対的な耐性、メタ性能を持っているわけではない。
刀使以外には折れない錆びない剣と、それはそれで強い武器。