「……見えない」
視界が戻った時に感じた違和感は、破壊の目が見えなくなっていたことだった。
梨沙は瞼をパチパチと開閉しながら、何度もやり直すように暗闇と光の中を行き来する。
だが、駄目だった。ガタガタと視界が揺れるだけで、何も見えない。
装甲車を駆るネモを、梨沙は不安そうに一瞥する。
梨沙は瞼をパチパチと開閉しながら、何度もやり直すように暗闇と光の中を行き来する。
だが、駄目だった。ガタガタと視界が揺れるだけで、何も見えない。
装甲車を駆るネモを、梨沙は不安そうに一瞥する。
ネモの推測では、一度潰された目が再生した時に、異物であるフランの目ではなく梨沙の本来の眼球が復活したために、
『ありとあらゆるものを破壊する程度の能力』が消失してしまったのではないか、と仮説を立てていた。
真偽は分からず、確かめる術もない。あるのは、フランから受け継いだ力が一個消えてしまったというだけだった。
『ありとあらゆるものを破壊する程度の能力』が消失してしまったのではないか、と仮説を立てていた。
真偽は分からず、確かめる術もない。あるのは、フランから受け継いだ力が一個消えてしまったというだけだった。
「ねえ……そろそろ、聞いてもいいかしら。ネモ君」
助手席に座るルサルカが口を開いた。
首輪の解析はどうなったのか?
首輪の解析はどうなったのか?
カルデアは壊滅した。
あそこほど設備の揃った施設は、ネモの知る限りない。
またルサルカの目線でもあれだけ、魔術としても科学としても様々な技術が結集した機関は見たことがなかった。
元の世界で黒円卓以外の神秘を狩り尽くしたというのもあるが、久しく忘れていた魔術師としてのルサルカの好奇心を刺激するような豪勢な設備だった。
もっともそれも、今は火の海の中なのだが。
ゆえに、首輪を外す手段は尽きてしまったのか、ルサルカが知りたいのはそれだ。
カルデアを破壊された以上、今すぐ殺し合いに乗る気はないが、脱出の目途は低い。
願わくば、せめてあの光にメリュジーヌも飲み込まれて、一緒に死んでいてくれればまだマシなのだが。
そして、悟空とも再度合流したいところでもあった、……生きてさえいれば。
あそこほど設備の揃った施設は、ネモの知る限りない。
またルサルカの目線でもあれだけ、魔術としても科学としても様々な技術が結集した機関は見たことがなかった。
元の世界で黒円卓以外の神秘を狩り尽くしたというのもあるが、久しく忘れていた魔術師としてのルサルカの好奇心を刺激するような豪勢な設備だった。
もっともそれも、今は火の海の中なのだが。
ゆえに、首輪を外す手段は尽きてしまったのか、ルサルカが知りたいのはそれだ。
カルデアを破壊された以上、今すぐ殺し合いに乗る気はないが、脱出の目途は低い。
願わくば、せめてあの光にメリュジーヌも飲み込まれて、一緒に死んでいてくれればまだマシなのだが。
そして、悟空とも再度合流したいところでもあった、……生きてさえいれば。
「分かっているさ……君達に伝えなきゃいけな────」
ネモの声が途切れ、車体が大きく揺さぶられる。
ハンドルを切りバランスを保とうとするが、横からトラックが突っ込んだかのような衝撃に押し負ける。
装甲車は横転して、タイヤを地べたから放して転がっていく。
すぐさまドアを開き、ルサルカと梨沙を抱えたネモが飛び出す。
ハンドルを切りバランスを保とうとするが、横からトラックが突っ込んだかのような衝撃に押し負ける。
装甲車は横転して、タイヤを地べたから放して転がっていく。
すぐさまドアを開き、ルサルカと梨沙を抱えたネモが飛び出す。
「し……お……?」
襲撃者と対峙した時、ネモは声の震えを止められなかった。
そこにいたのは、左腕を失い、胸に風穴を空け、右目を潰された。
亡霊のような容姿になった神戸しおだったのだから。
血に塗れた姿と痛々しさは、ネモですら目を背けてしまう程だった。
亡霊のような容姿になった神戸しおだったのだから。
血に塗れた姿と痛々しさは、ネモですら目を背けてしまう程だった。
「は……ぁ……は、ッ……」
持ち上げた手から光が収束する。
ブック・オブ・ジエンドによって、悟空に過去を挟んだことで取得した副次的な能力だ。
彼女と悟空の中でのみ、師弟であったという過去が存在し、現代に反映されている。
ブック・オブ・ジエンドによって、悟空に過去を挟んだことで取得した副次的な能力だ。
彼女と悟空の中でのみ、師弟であったという過去が存在し、現代に反映されている。
(最後に……ネモさんは、殺さなくちゃ……)
首輪の情報を握るネモは、生かしておけば殺し合いを破綻させる。
ここで、確実に殺しておきたかった。
ここで、確実に殺しておきたかった。
「ぐ、ッ……あああああああああああぁッ!!」
掌に集まった気弾、それが発射される寸前、454カスール弾が、右腕ごと食い千切った。
「は、ぁ……ぐ……ぅ……!!」
しおは膝を負って、前のめりに項垂れる。
不意を突かれた事で、装甲車を横転こそさせられたが、いくら修行を積んでもしおの力でネモには届かない。
不意を突かれた事で、装甲車を横転こそさせられたが、いくら修行を積んでもしおの力でネモには届かない。
「終わりだよ、しお」
膝を折っても、まだ倒れないのは彼女を愛が支えているからだろうか。
その精神性だけは、決して行いを肯定こそしないが、ネモは脱帽していた。
だからこそ、悟空と悟飯の関係を更に歪ませた憎むべき敵であるしおに対して、ネモは優しく言い放つ。
その精神性だけは、決して行いを肯定こそしないが、ネモは脱帽していた。
だからこそ、悟空と悟飯の関係を更に歪ませた憎むべき敵であるしおに対して、ネモは優しく言い放つ。
「君の……負けだ」
優しく、だが冷たい声色で。
神戸しおはここで終わりだと、告げる。
神戸しおはここで終わりだと、告げる。
「まだ、負けて……な、い……」
しおに医療や人体の知識などないが、肉体の損傷が取り返しの付かないものであるのは分かっていた。
子供でも一目瞭然の死に体だ。
子供でも一目瞭然の死に体だ。
それでも、肉体が朽ちても……しおはまだ負けていないと、信じていた。
想いを、願いを、祈りを。
託したから。
託したから。
「……わ、た……し……は……ッ」
──────誰に、託したんだっけ?
しおはその時、言葉に詰まった。
体の負傷から声が出なかったのではなく、頭の中で呼ぶべき誰かの名前が分からなかったのだ。
確か……そう、ブック・オブ・ジエンドで誰かに過去を挟んで……誰に、だっけ?
確か……そう、ブック・オブ・ジエンドで誰かに過去を挟んで……誰に、だっけ?
ごくう……じゃなくて、あれ……?
「短時間に連続で使い過ぎたんだ」
目の前の、ずっとこの島で自分を守ってくれた少年の名前すら、急に出てこなくなる。
ネモはやはり冷たい優しい声で、哀れむように言葉を口に出す。
「ブック・オブ・ジエンドの過去改変は偽りじゃない。
本当にあったことなんだ……分かるかい? 植え付けた記憶なんて、そんな生易しいものじゃない。
過去にあった現実なんだ……!」
本当にあったことなんだ……分かるかい? 植え付けた記憶なんて、そんな生易しいものじゃない。
過去にあった現実なんだ……!」
その穏やかな口調も最後には抑えきれず、ネモは激しい感情を乗せていた。
「君が過去を挟む度、それぞれの別の過去が……成立しない筈の矛盾した、本当に起きた過去が共存していく。
普通は耐えられない。何処かで気が狂う、僕も経験したから分かる。
彼女とは初対面のはずなのに……意識していても、本名のアンナと呼んでしまっている」
普通は耐えられない。何処かで気が狂う、僕も経験したから分かる。
彼女とは初対面のはずなのに……意識していても、本名のアンナと呼んでしまっている」
横のルサルカを一瞥する。
ネモはルサルカが、マリーンをタイムコピーで作ったブック・オブ・ジエンドで過去を挟んだ影響で、名簿にある名ではなく、アンナの名で認識していた。
また、ロートスの事を思い出させた記憶旅行もだ。
あの世界では、水銀以外の神秘は尽く否定されているというのに、外世界の神秘であるネモが存在することはありえない。
なのに、その場にネモが立ち会っているという事実が成り立っていた。
常人の精神ではないネモですら、その矛盾に苦しまないかといわれれば嘘だ。
正面から取り合えば、何が本当の記憶かも疑心暗鬼になりかねない。
だから、ネモも……そしてルサルカも割り切って、深く考えていないだけだ。
これ以上、乱用すれば精神が耐えられないとも分かっている。
また、ロートスの事を思い出させた記憶旅行もだ。
あの世界では、水銀以外の神秘は尽く否定されているというのに、外世界の神秘であるネモが存在することはありえない。
なのに、その場にネモが立ち会っているという事実が成り立っていた。
常人の精神ではないネモですら、その矛盾に苦しまないかといわれれば嘘だ。
正面から取り合えば、何が本当の記憶かも疑心暗鬼になりかねない。
だから、ネモも……そしてルサルカも割り切って、深く考えていないだけだ。
これ以上、乱用すれば精神が耐えられないとも分かっている。
「……あ、れ……なん……で……」
彼女が実のところネモとルサルカより、ブック・オブ・ジエンドの適性が高かったのも不幸であったかもしれない。
最初に使用した段階で、通常の精神性を持つものなら使用は憚られるものだ。
だが、しおはその後何度も使って、多くの過去を挟んだ。
それは、才があったから。
最初に使用した段階で、通常の精神性を持つものなら使用は憚られるものだ。
だが、しおはその後何度も使って、多くの過去を挟んだ。
それは、才があったから。
元の担い手である月島秀九郎は、過去を挟みそのフィードバックによる矛盾を銀城空吾との記憶以外をガン無視して踏み倒すという手段で、デメリットを克服している。
しおにも、同じように奉仕対象以外の思い出を、無視するという方法を無意識に実践していた。
愛か絆か……形は違えども、奇妙なことにしおと月島の精神性は似通っており、
だからこそ、初見であってもしおは、ああまでにこの完現術を使いこなせていたのかもしれない。
愛か絆か……形は違えども、奇妙なことにしおと月島の精神性は似通っており、
だからこそ、初見であってもしおは、ああまでにこの完現術を使いこなせていたのかもしれない。
だが、経験と技量は月島と比較して、浅く拙い。
しっかりと時間を掛けて、完現術の本質を掴んで、手になじませれば違っただろう。
しかし、しおは僅か2分にも満たない間に、乱雑に過去を挟み過ぎた。
本当の記憶がいくつも脳内に送り込まれ、それら一つ一つが一人の人生分の厚みを持つ。
無数の記憶の中で、しおの記憶は反発し合い、記憶障害を引き起こしてしまった。
しかし、しおは僅か2分にも満たない間に、乱雑に過去を挟み過ぎた。
本当の記憶がいくつも脳内に送り込まれ、それら一つ一つが一人の人生分の厚みを持つ。
無数の記憶の中で、しおの記憶は反発し合い、記憶障害を引き起こしてしまった。
「……ま……だ……」
「言っただろ。……僕の勝ちとも言えないけど、君の負けも確実なんだ。
……過去を挟めても、それを対象に本物だと認識させられる時間は限られている。
乃亜の……ハンデなんだよ」
……過去を挟めても、それを対象に本物だと認識させられる時間は限られている。
乃亜の……ハンデなんだよ」
追い打ちをかけるような事実。
ネモはこれを言うべきか、逡巡し、意を決して言った。
神戸しおの愛を否定する気はない。
だが、彼女のせいでこの先大勢が犠牲になるのは避けられない。
だから……敢えて、最期に辛い現実を話した。
神戸しおの愛を否定する気はない。
だが、彼女のせいでこの先大勢が犠牲になるのは避けられない。
だから……敢えて、最期に辛い現実を話した。
望みを託した孫悟飯は、しおの為に戦うことは絶対にない、と。
しおは愕然とし、とうとう倒れた。彼女を支える気力が完全に途切れたのだろう。
「…………そ、か……」
負けた。
しおは何処までも残酷な現実を聞いて、自嘲気味に笑った。
やれるだけはやったのに、それでもしおではネモと悟空の二人には勝てなかった。
やれるだけはやったのに、それでもしおではネモと悟空の二人には勝てなかった。
悔しさはない。ただ、申し訳なかった。
恨みもなく。しおは……心の中で、謝ろうとする。
「…………おも……い、だせ……な……」
ネモが慌てて、しおを抱き上げて腕の中に寝かせる。
そのまま怪訝そうに顔を覗き込む。
そのまま怪訝そうに顔を覗き込む。
まさか……と、ネモの予感が刺激され、彼は口を開く。
過去を挟んだ悟飯の事を思い出せないように、
本来の正しい記憶である、元の世界の記憶……彼女が愛したその人の名前すら忘却しているのではないか。
その予想は正しく、しおは虚空を見つめながら必死に、偽りの記憶に埋もれる中で、たった一個の愛を探し続ける。
けれども、彼女の脳内には余計なノイズが多すぎた。
まるで、砂漠の中で一粒のダイヤを探すようなもの。
本来の正しい記憶である、元の世界の記憶……彼女が愛したその人の名前すら忘却しているのではないか。
その予想は正しく、しおは虚空を見つめながら必死に、偽りの記憶に埋もれる中で、たった一個の愛を探し続ける。
けれども、彼女の脳内には余計なノイズが多すぎた。
まるで、砂漠の中で一粒のダイヤを探すようなもの。
「君が愛した人は────」
この少女が許されないことをしたとしても、その愛を無慈悲に奪い去る事まではしたくなかった。
彼女らの関係性が間違っていたかもしれなくとも、神戸しおを救い、愛を与えたのは紛れもなくその少女だ。
これだけは、否定してはいけない。しおの記憶をエーテライトで覗き見た時に、決意していた。
この先、自分達がどのような決着を迎えたとしても。
彼女らの関係性が間違っていたかもしれなくとも、神戸しおを救い、愛を与えたのは紛れもなくその少女だ。
これだけは、否定してはいけない。しおの記憶をエーテライトで覗き見た時に、決意していた。
この先、自分達がどのような決着を迎えたとしても。
ネモは後悔していた。
藤木茂は、しおやフランに肩入れしたと言っていたが、少なくともしおに限って言えば違う。
ネモは一切、彼女に対してだけは公平に接していた。
フランについては、私情を挟んだことは認めてもいい。
けれど、しおは別だ。元の世界に返すべき子供として、その他多くの参加者と同列に扱っていた。
ネモは一切、彼女に対してだけは公平に接していた。
フランについては、私情を挟んだことは認めてもいい。
けれど、しおは別だ。元の世界に返すべき子供として、その他多くの参加者と同列に扱っていた。
扱っていたからこそ、このような結末になった。
しおの過去を知り、彼女の想いを理解して、その愛を見ていたのにもかかわらず。
ネモは不干渉であり続けたのだ。
ネモは不干渉であり続けたのだ。
しおの敵であることを選び、その終わりがこんなにも惨いものとなってしまった。
他の関わり方もあったかもしれない。
しおを救う方法も、変えられるかもしれなかったやり方も。
しおを救う方法も、変えられるかもしれなかったやり方も。
(思い……だせ、な……い……大切な、ひと……なのに……わた、し……)
ネモはその名を伝えようとする。
既にしおの命は風前の灯、この世に留まれる時間は数秒も残されていない。
既にしおの命は風前の灯、この世に留まれる時間は数秒も残されていない。
(ひとり……ぼ、ちは……)
その名は、届かない。
誰を愛していたのかも分からないまま、しおは体が冷たくなるのを感じていた。
死ぬことは怖くなかった。
誰を愛していたのかも分からないまま、しおは体が冷たくなるのを感じていた。
死ぬことは怖くなかった。
怖いのは、ひとりになること。
(……いやだ……よ……)
ネモの声を聞き入れる前に、しおは重そうに瞼を閉じていた。
この結末は、神戸しおという人間にとって、考えうる限り最悪の結末であっただろう。
この結末は、神戸しおという人間にとって、考えうる限り最悪の結末であっただろう。
天使のような悪魔の少女は、全ての願いを否定され、そして誰を愛したのかすらも忘れて。
その存在意義、全てをまっさらに漂白され。
その存在意義、全てをまっさらに漂白され。
苦みも甘さもない。
何も感じない暗闇の中に、ひとりぼっちで無造作に投げ出され、
何も感じない暗闇の中に、ひとりぼっちで無造作に投げ出され、
永久の眠りについた。
【神戸しお@ハッピーシュガーライフ 死────】
────令呪を以て命ずる。
────その者が愛する者の名を伝えよ。
「さと……ちゃ、ん……?」
きらきら ぽろぽろ。
甘くて柔らかい、愛の色。
甘くて柔らかい、愛の色。
私達の世界の色。
漂白された世界に色が付く。
ぜんぶ、あなたが教えてくれた。
大好きな人。
「…………あ、り……が、……と」
その死の間際、はっきりと響いた。
愛する人ではなく、家族でもない……きっとそれは、友達に向けるような穏やかな声が。
【神戸しお@ハッピーシュガーライフ 死亡】
【キャプテン・ネモ 100ドミノ取得】
【キャプテン・ネモ 100ドミノ取得】
ああ……なんて、馬鹿な事をしているのだろう。
令呪とはサーヴァントを統べ、絶対遵守の命令を下せる限りのある聖痕である。
使い方によっては、ネモ君の戦闘をフォローして強化させることもできる。
例えば、絶対に勝てと命じれば、それに応えるためにネモ君と私、そして令呪分の魔力が上乗せされ、命令前とは見違えるような戦闘力を発揮するかもしれない。
『来い』と命じれば、距離を無視して瞬間移動染みた、魔法まで発動するかも。
だから、これは貴重なのよ……私の物ではなくても、組んでいる以上は残しておかなければいけない。
使い方によっては、ネモ君の戦闘をフォローして強化させることもできる。
例えば、絶対に勝てと命じれば、それに応えるためにネモ君と私、そして令呪分の魔力が上乗せされ、命令前とは見違えるような戦闘力を発揮するかもしれない。
『来い』と命じれば、距離を無視して瞬間移動染みた、魔法まで発動するかも。
だから、これは貴重なのよ……私の物ではなくても、組んでいる以上は残しておかなければいけない。
「……ルサルカ、あんた……?」
梨沙とかいう娘、左腕を斬り飛ばされながら、令呪のある右腕を残しておいたのは素人にしては中々やるわね。
だから、こうして私が無理矢理干渉することが可能なんだけど。
令呪に触れて、マスターでなければ命じられない、令呪の縛りを私は強制発動させている。
仕組みを完全に解析できなかったけど、メルクリウスを除けば私だって、魔術師としては魔道の深淵に立つ者。
自分の物でなくとも、それこそ魔術の概念すら知らない素人の令呪なら、こうして侵食して勝手に使うなんて朝飯前だ。
だから、こうして私が無理矢理干渉することが可能なんだけど。
令呪に触れて、マスターでなければ命じられない、令呪の縛りを私は強制発動させている。
仕組みを完全に解析できなかったけど、メルクリウスを除けば私だって、魔術師としては魔道の深淵に立つ者。
自分の物でなくとも、それこそ魔術の概念すら知らない素人の令呪なら、こうして侵食して勝手に使うなんて朝飯前だ。
きっと……伝わるはず。
令呪のブーストと私達の魔力があれば、あんな死に掛けの女の子に一時的にパスを繋げて、念話で直接声を届けるなんて、簡単。
ええ、だって聞こえるもの。
松坂さとう。
そう……それが、あなたの愛した人の名前なのね。
……だからって何にも変わらないわ。
死ぬ間際に、そんなものを聞いて、奇跡的に復活するわけでもない。
この娘は敗者で、結局死んでいく事に変わりはない。
何の願いも叶えられずに、このまま朽ち果てて消えていく。
置き去りにされていくだけだ。
この娘は敗者で、結局死んでいく事に変わりはない。
何の願いも叶えられずに、このまま朽ち果てて消えていく。
置き去りにされていくだけだ。
ネモ君にお礼を伝えて、なにやら満足したような顔で、今度こそあの娘は眠るように息を引き取った。
馬鹿みたいだわ。あの娘は何も勝ち取れず、一人で独りぼっちで沈んでいくだけなのに。
松坂さとうに、まるで会いに行けるかのような顔をしていた。
ありえない。人は死んだらそこで終わりよ。
松坂さとうに、まるで会いに行けるかのような顔をしていた。
ありえない。人は死んだらそこで終わりよ。
なのに……どうしてかしら。
「アンナ……君は……」
こんな負け犬の、汚いゴミのようなナリの娘に。
私は、こんなにもムキになって……。
私は、こんなにもムキになって……。
「礼を、言うよ」
私はたまらず、苦笑した。
「……そこは、頭を下げるんじゃなくて……怒るところでしょ」
貴重な魔力リソースを無断で、無駄打ちしたというのにお礼まで言われるのが、アホらしかった。
「こんなのは、意味がないわ」
そう、意味はない。
余命幾ばくもない、流れる川のように散っていく彼女を、これ以上、一秒たりとも見ていたくなかっただけ。
だって、あんまりにもそっくりだったから……ダラダラと永く時だけを重ねて、本当に求めていた刹那すら忘れていた私に。
欲しかったものすら分からなくなって、置き去りにされていた私を見ているようで、酷く……不愉快だったから……。
意味もなく、馬鹿な真似をした。
余命幾ばくもない、流れる川のように散っていく彼女を、これ以上、一秒たりとも見ていたくなかっただけ。
だって、あんまりにもそっくりだったから……ダラダラと永く時だけを重ねて、本当に求めていた刹那すら忘れていた私に。
欲しかったものすら分からなくなって、置き去りにされていた私を見ているようで、酷く……不愉快だったから……。
意味もなく、馬鹿な真似をした。
保って、三日で忘れると断言した。あんな儚い記憶に魂が揺蕩ってしまった。
「お礼なんかより……早く、本題に移ってくれる?」
「……ああ、分かってる」
ネモは小さく頷く。
私は、もうこの話をしたくなかった。だから、ネモ君に首輪の事を促す。
大事なのは大切なのは、こっちだ。あんなどうでもいい娘なんて、私には関係がない。
大事なのは大切なのは、こっちだ。あんなどうでもいい娘なんて、私には関係がない。
「……、」
ほんと、眠っているような顔をしている、しおという娘の顔が視界に入った。
「きっと、しおは……最期、君にも……」
そしたら、ネモ君が何か世迷言を吐いてくる。
何を勘違いしているのか分からないけど、笑いを堪えるのに必死だった。
何を勘違いしているのか分からないけど、笑いを堪えるのに必死だった。
「どうでもいいわよ」
ああ、こんなにも可笑しく聞こえるんだもの。
やっぱり……私には関係ない。そう思った。
やっぱり……私には関係ない。そう思った。
【一日目/夕方/D-2】
【キャプテン・ネモ@Fate/Grand Order】
[状態]:仮面の者、しおに対する不安(極大)、梨沙と契約中、塩化進行
[装備]:.454カスール カスタムオート(弾:7/7)@HELLSING、
、神威の車輪Fate/Grand Order
[道具]:基本支給品(タブレット破壊)、13mm爆裂鉄鋼弾(30発)@HELLSING、
ソード・カトラス@BLACK LAGOON×2、エーテライト@Fate/Grand Order、
110mm個人形態対戦車(予備弾×4)@現実、オシュトルの仮面@うたわれる者 二人の白皇、
ネモに指示され龍亞が集めた火薬液解除液に必要な物品、首輪×5(割戦隊、勝次、かな)
[思考・状況]基本方針:殺し合いを止める。
0:首輪の解析について……。
1:リルトットとの情報交換やルサルカに対する対応はプロフェッサーと悟空に任せる。
2:魔術術式を解除できる魔術師か、支給品も必要だな……
3:首輪のサンプルも欲しい。
4:カオスは止めたい。
5:しおとは共に歩めなくても、殺しあう結末は避けたい。
6:エーテライトは、今の僕じゃ人には使えないな……
7:藤木は次に会ったら殺す。
8:リーゼロッテを警戒。
9:悟空と一刻も早く合流したい。
10:ドラゴンボールのエラーを考慮した方が良いかもしれない。悟空と再会したら確認する。
11:ルサルカに対しては…彼女にも心を通じ合わせた人物がいた、という所に賭けたい。
12:皆無事でいて欲しい。
13:しお……。
[備考]
※現地召喚された野良サーヴァントという扱いで現界しています。
※宝具である『我は征く、鸚鵡貝の大衝角』は現在使用不能です。
※ドラゴンボールについての会話が制限されています。一律で禁止されているか、
優勝狙いの参加者相手の限定的なものかは後続の書き手にお任せします。
※エーテライトによる接続により、神戸しお、ルサルカ・シュヴェーゲリン、リルトット・ランパードの記憶を把握しました。
※仮面装着時に限り、不撓不屈のスキルが使用可能となります。
※現在装着中の仮面が外れるかどうかは、後続の書き手にお任せします。
※梨沙と悟空と契約を結びました。現在は梨沙から魔力供給を受けています。
※正規契約により『我は担う、聖夜祭の鸚鵡貝』が使用可能となっています。
※アクルカの反動による塩化が進行しています。
[状態]:仮面の者、しおに対する不安(極大)、梨沙と契約中、塩化進行
[装備]:.454カスール カスタムオート(弾:7/7)@HELLSING、
、神威の車輪Fate/Grand Order
[道具]:基本支給品(タブレット破壊)、13mm爆裂鉄鋼弾(30発)@HELLSING、
ソード・カトラス@BLACK LAGOON×2、エーテライト@Fate/Grand Order、
110mm個人形態対戦車(予備弾×4)@現実、オシュトルの仮面@うたわれる者 二人の白皇、
ネモに指示され龍亞が集めた火薬液解除液に必要な物品、首輪×5(割戦隊、勝次、かな)
[思考・状況]基本方針:殺し合いを止める。
0:首輪の解析について……。
1:リルトットとの情報交換やルサルカに対する対応はプロフェッサーと悟空に任せる。
2:魔術術式を解除できる魔術師か、支給品も必要だな……
3:首輪のサンプルも欲しい。
4:カオスは止めたい。
5:しおとは共に歩めなくても、殺しあう結末は避けたい。
6:エーテライトは、今の僕じゃ人には使えないな……
7:藤木は次に会ったら殺す。
8:リーゼロッテを警戒。
9:悟空と一刻も早く合流したい。
10:ドラゴンボールのエラーを考慮した方が良いかもしれない。悟空と再会したら確認する。
11:ルサルカに対しては…彼女にも心を通じ合わせた人物がいた、という所に賭けたい。
12:皆無事でいて欲しい。
13:しお……。
[備考]
※現地召喚された野良サーヴァントという扱いで現界しています。
※宝具である『我は征く、鸚鵡貝の大衝角』は現在使用不能です。
※ドラゴンボールについての会話が制限されています。一律で禁止されているか、
優勝狙いの参加者相手の限定的なものかは後続の書き手にお任せします。
※エーテライトによる接続により、神戸しお、ルサルカ・シュヴェーゲリン、リルトット・ランパードの記憶を把握しました。
※仮面装着時に限り、不撓不屈のスキルが使用可能となります。
※現在装着中の仮面が外れるかどうかは、後続の書き手にお任せします。
※梨沙と悟空と契約を結びました。現在は梨沙から魔力供給を受けています。
※正規契約により『我は担う、聖夜祭の鸚鵡貝』が使用可能となっています。
※アクルカの反動による塩化が進行しています。
【的場梨沙@アイドルマスター シンデレラガールズ U149(アニメ版)】
[状態]継承、不安(小)、有馬かなが死んだショック(極大)、将来への不安(極大)、吸血鬼化、ネモと契約、左手欠損(ずっとくっつけていれば回復可)、ありとあらゆるものを破壊する程度の能力消失
[装備]フランの眼球×2@東方project、令呪[残り一画]@Fate/Grand Order、
しんちゃんがフランに渡した傘、シャベル@現地調達、ハーピィ・ガール@遊戯王5D's、
[道具]基本支給品、テキオー灯@ドラえもん、改造スタンガン@ひぐらしのなく頃に業、マリーンの腕章@Fate/Grand Order、自分の左手
探偵バッジ×5@名探偵コナン、大地鳴動ヘヴィプレッシャー@アカメが斬る!、ランダム支給品×0~1
[思考・状況]
基本方針:ゲームから脱出する。
1:ネモやシカマル達を守る。
2:この場所でも、アイドルの的場梨沙として。
3:でも……有馬かなみたいに、アタシも最期までアイドルでいられるのかな。
4:桃華を探す。
5:戦うわ、私に命をくれたファンの分まで。
6:左手、くっつくかしら……。
[備考]
※参戦時期は少なくとも六話以降。
※吸血鬼化しました。今後梨沙が吸血鬼を増やす事は不可能です。
※悟空とネモの血の摂取により能力が向上しました。
※フランから能力を継承しました。ありとあらゆるものを破壊する程度の能力は使えません。
※ただし、弾幕やスペルカードは以前使用不能です。
※ネモと契約しました。現在魔力供給を行っています。
[状態]継承、不安(小)、有馬かなが死んだショック(極大)、将来への不安(極大)、吸血鬼化、ネモと契約、左手欠損(ずっとくっつけていれば回復可)、ありとあらゆるものを破壊する程度の能力消失
[装備]フランの眼球×2@東方project、令呪[残り一画]@Fate/Grand Order、
しんちゃんがフランに渡した傘、シャベル@現地調達、ハーピィ・ガール@遊戯王5D's、
[道具]基本支給品、テキオー灯@ドラえもん、改造スタンガン@ひぐらしのなく頃に業、マリーンの腕章@Fate/Grand Order、自分の左手
探偵バッジ×5@名探偵コナン、大地鳴動ヘヴィプレッシャー@アカメが斬る!、ランダム支給品×0~1
[思考・状況]
基本方針:ゲームから脱出する。
1:ネモやシカマル達を守る。
2:この場所でも、アイドルの的場梨沙として。
3:でも……有馬かなみたいに、アタシも最期までアイドルでいられるのかな。
4:桃華を探す。
5:戦うわ、私に命をくれたファンの分まで。
6:左手、くっつくかしら……。
[備考]
※参戦時期は少なくとも六話以降。
※吸血鬼化しました。今後梨沙が吸血鬼を増やす事は不可能です。
※悟空とネモの血の摂取により能力が向上しました。
※フランから能力を継承しました。ありとあらゆるものを破壊する程度の能力は使えません。
※ただし、弾幕やスペルカードは以前使用不能です。
※ネモと契約しました。現在魔力供給を行っています。
【ルサルカ・シュヴェーゲリン@Dies Irae】
[状態]:疲労(大)、ダメージ(大)全身に鋭い痛み (大)、シュライバーに対する恐怖、キウルの話を聞いた動揺(中)、
メリュジーヌに対する妄執(大)、ブック・オブ・ジ・エンドによる記憶汚染、ロートスとの記憶復活、それによる複雑な感情。
[装備]:血の伯爵夫人@Dies Irae
[道具]:なし
[思考・状況]基本方針:今は様子見。
0:……アホくさ。
1:シュライバーから逃げる。可能なら悟飯を利用し潰し合わせる。
2:ドラゴンボールに興味。悟飯の世界に居る、悟空やヤムチャといった強者は生還後も利用できるかも。
3:メリュジーヌは絶対に手に入れて、足元に跪かせる。叶わないなら殺す。
4:ガムテからも逃げる。
5:キウルの不死の化け物の話に嫌悪感。
6:俊國(無惨)が海馬コーポレーションを調べて生きて再会できたならラッキーね。
7:どんな方法でもわたしが願いを叶えて───。
8:首輪の解析についてネモから聞き出す……やっぱり、失敗したのかしら。
[備考]
※少なくともマリィルート以外からの参戦です。
※創造は一度の使用で、12時間使用不可。停止能力も一定以上の力で、ゴリ押されると突破されます。
形成は連発可能ですが物理攻撃でも、拷問器具は破壊可能となっています。
※悟飯からセル編時点でのZ戦士の話を聞いています。
※ルサルカの魔眼も制限されており、かなり曖昧にしか働きません。
※情報交換の中で、シュライバーの事は一切話していません。
※ブック・オブ・オブ・ジ・エンドの記憶干渉とルサルカ自身の自壊衝動の相互作用により、ブック・オブ・ジ・エンドを使った相手に対する記憶汚染と、強い執着が現れます。
※ブック・オブ・ジ・エンドの効果はブック・オブ・ジ・エンドを手放せば、斬られた対象と同じく数分間で解除されます。
※ブック・オブ・ジ・エンドを手放した事で、多分これ以上記憶障害と執着は悪化せず、徐々に元に戻ると思われます。
でも自壊衝動のせいで、やっぱり悪化するかもしれません。
※バルギルド・ザケルガの解呪に成功しました。それをネモに目撃されています。
※ブック・オブ・ジ・エンドによりロートスのことを一時的に思い出しました。
なお、自壊衝動により遅くとも三日ほどでまた忘れるでしょう。もっと早いかもしれません。
[状態]:疲労(大)、ダメージ(大)全身に鋭い痛み (大)、シュライバーに対する恐怖、キウルの話を聞いた動揺(中)、
メリュジーヌに対する妄執(大)、ブック・オブ・ジ・エンドによる記憶汚染、ロートスとの記憶復活、それによる複雑な感情。
[装備]:血の伯爵夫人@Dies Irae
[道具]:なし
[思考・状況]基本方針:今は様子見。
0:……アホくさ。
1:シュライバーから逃げる。可能なら悟飯を利用し潰し合わせる。
2:ドラゴンボールに興味。悟飯の世界に居る、悟空やヤムチャといった強者は生還後も利用できるかも。
3:メリュジーヌは絶対に手に入れて、足元に跪かせる。叶わないなら殺す。
4:ガムテからも逃げる。
5:キウルの不死の化け物の話に嫌悪感。
6:俊國(無惨)が海馬コーポレーションを調べて生きて再会できたならラッキーね。
7:どんな方法でもわたしが願いを叶えて───。
8:首輪の解析についてネモから聞き出す……やっぱり、失敗したのかしら。
[備考]
※少なくともマリィルート以外からの参戦です。
※創造は一度の使用で、12時間使用不可。停止能力も一定以上の力で、ゴリ押されると突破されます。
形成は連発可能ですが物理攻撃でも、拷問器具は破壊可能となっています。
※悟飯からセル編時点でのZ戦士の話を聞いています。
※ルサルカの魔眼も制限されており、かなり曖昧にしか働きません。
※情報交換の中で、シュライバーの事は一切話していません。
※ブック・オブ・オブ・ジ・エンドの記憶干渉とルサルカ自身の自壊衝動の相互作用により、ブック・オブ・ジ・エンドを使った相手に対する記憶汚染と、強い執着が現れます。
※ブック・オブ・ジ・エンドの効果はブック・オブ・ジ・エンドを手放せば、斬られた対象と同じく数分間で解除されます。
※ブック・オブ・ジ・エンドを手放した事で、多分これ以上記憶障害と執着は悪化せず、徐々に元に戻ると思われます。
でも自壊衝動のせいで、やっぱり悪化するかもしれません。
※バルギルド・ザケルガの解呪に成功しました。それをネモに目撃されています。
※ブック・オブ・ジ・エンドによりロートスのことを一時的に思い出しました。
なお、自壊衝動により遅くとも三日ほどでまた忘れるでしょう。もっと早いかもしれません。
140:この儚くも美しい絶望の世界で(前編) | 投下順に読む | 142:[[]] |
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136:ノーチラス浮上せよ | 孫悟空 | |
キャプテン・ネモ | ||
的場梨沙 | ||
リルトット・ランパード | GAME OVER | |
鈴原小恋 | ||
ルサルカ・シュヴェーゲリン | ||
133:道の先、空の向こう | 鬼舞辻無惨 | |
神戸しお | GAME OVER | |
龍亞 | ||
孫悟飯 | ||
134:幸運を。死にゆく者より敬礼を。 | メリュジーヌ | |
ゼオン・ベル |