2013.08.04 R(2013.08.19)
日本語は複数の意味を持ちえる動詞の文脈上の意味を即座に確定できるという点で優れている言語の一つです。
彼は子供を守った。
彼は法律を守った。
「守る」には「保護する」と「従う」という意味がありますが、目的語である「子供」や「法律」が動詞の前に来ていますから、文意は伝達途中でも曖昧になったりしません。このため、日本語は思考の道具としての効率で優れています。
英語では、動詞の文脈上の意味が文の伝達途中でなかなか確定しないことがあります。
She drew the veil ... -> 彼女はベールを描いた(?) She drew the veil over ... -> 彼女はベールを最初から再び描いた(?) She drew the veil over her face. -> 彼女はベールを顔に被った。
日本語話者は英語話者より考えることが得意なのです。考えることが得意なので、思考の雛形として哲学を意識する必要もほとんどありませんから、インドやヨーロッパほど大きな哲学の体系が日本にはありません。
一方、日本語はちょっと非定型的な表現になると、文が急に長くなります。
I am reading the book I bought yesterday. -> 私は昨日買った本を読んでいる。
I am reading the book you bought yesterday. -> 私はあなたが昨日買った本を読んでいる。
英語では音節数が変わらないのに、日本語では4つも増えています。政治や社会について突っ込んだ議論をすると、日本語ではとても効率が悪くなります。
日本語話者は伝えるのがうまくありません。それゆえ、人間関係においての雛形が体系的に発達します。
思考効率と伝達効率はどうも両立しないようです。
思考効率: 日本語 > ドイツ語 > イタリア語 > 英語 > 中国語
伝達効率: 中国語 > 英語 > イタリア語 > ドイツ語 > 日本語
思考効率で下り順に並べると、自動車作りがうまい国が先頭集団に入ってますね。
一方、伝達効率で下り順に並べると、先の大戦時の枢軸国の降伏順であるイタリア、ドイツ、日本とぴったり重なります。
それぞれの語族には得意なことと苦手なことがあります。
日本語話者やドイツ語話者は単体で機能する自動車をうまく作りますが、ハードウェアメーカーをはじめとする膨大な数の関係者との意見調整が必要なWindowsなど汎用OSをうまくは作れません。集団の意思を素早く切り替える必要がある金融にもあまり向いていません。もちろん、政治もうまくはありません。
日本とドイツは物作りを捨ててはいけないのです。