2013.07.16
憲法第9条については擁護派と否定派がいますが、その「理念」について語ったり、「押し付け」について語るのは、歴史における第9条の本質を見失わせると思います。
玉音放送を聴いて、旧日本軍は末端部隊単位で自主解散しました。軍隊を持たない日本は、憲法第9条によって作り出されたものではありません。旧日本の兵士たち自らが軍隊を持たないことを選択したのです。兵士たちの多くは徴兵された国民でしたから、自主解散は国民の選択と云っていい。GHQが9月に正式の解散命令を出したときには、旧日本軍は既に存在しなくなっていました。
憲法第9条は、少なくともその成立当時、軍隊を持たない日本の現状への追認という意味買いが強く、実際、日本共産党のみを例外として、日本の議員たちからもほとんど反対の声はなかったのです。日本国憲法にはいくつか押し付けられた部分もあるかとは思いますが、第9条は押し付けられていません。
日米安全保障条約が締結、批准されると、憲法第9条の実質的な意味合いには、日米関係における日本の既得権益が含まれるようになりました。少なくとも、アメリカの政治ではそういう見方が強くあります。日米安保は明文にて双方の憲法より下位に置かれる珍しい条約で、第9条のおかけで、日本はアメリカが主導する戦争に戦闘要員を派遣せずに済みました。
憲法を改変して国防軍を持とうという提案が自民党から出されていますが、これがアメリカとの関係をさらに深めることとセットになっていれば、第9条の改変は既得権益の1つを失うことを意味すると思われます。
第9条の改変が長い目で見て妥当であると仮定しましても、その前に、陸海空および宙の軍事力の比率調整を行い、近隣諸国との多国間安全保障の枠組みを構築すべきでありましょう。憲法を変えずにできることです。