2013.08.20
エスペラント語は少なくともヨーロッパの言語学上の一つの革新でした。根気強く一つ一つ覚えなければならないと考えられていた単語のかなりの部分を、語根と接辞の組み合わせで規則的に作り出せることを示したからです。
see -> sight
think -> thought
speak -> speech
英語では、動詞と名詞の形に規則性がありません。
vidi -> vido, vidito
pensi -> penso
paroli -> parolo
エスペラント語では、動詞を覚えれば、名詞を規則的に作り出せます。しかも、英語の"sight"が「視力」「視野」つまり「見ること」以外に、「光景」つまり「見られるもの」の意味を持つ多義的な単語であるのに対し、エスペラント語では"vido"と"vidito"という2つの名詞で弁別できます。
こういう規則性のおかげで、エスペラント語では他の言語になかなか見られない動詞も生成することができます。
La ĉielo estas blua. (The sky is blue.)
"blua"は「青い」という意味を持つ形容詞ですが、これから、「色が青い」という意味の動詞"blui"を作ることができます。"blui"の現在形は"bluas"ですから、エスペラント語では"The sky is blue."をもっと簡潔に云えます。
La ĉielo bluas.
こういう表現は増加傾向にあります。
関係性の叙述を考えてみましょう。
Li estas mia patro. (He is my father.)
英語を逐語的にエスペラント語に訳した分です。
しかし、エスペラント語では"patro"(父親)から動詞"patri"(父親である)を生成できますから、もっと簡潔な表現も可能です。
Li patras min.
ところで、"犬小屋"は「犬が住む小屋」を意味しますが、"山小屋"は「山が住む小屋」を意味しません。多くの単語を規則的に生成する日本語でも、慣用で意味が決まることがあります。
エスペラント語にもそういう単語があります。"krokodillo"は「ワニ」を意味しますが、"krokodilli"は「エスペラント語を使うべきところで母国語を使ってしまう」を意味します。