イド語なるものがあります。これはもともと、エスペラント語の改修案で、対格(目的格)の"-n"を多くの場合で省略可能にするという提案が入っていました。しかし、イド語は不人気です。
母国語を日本語とする人にとって、対格の"-n"は便利です。
Knabo renkontis belan knabinon. (少年が美しい少女に出会った。)
"knabino"(少女)に"-n"が付き、"bela"(美しい)にも"-n"が付いています。この規則のおかげで、エスペラント語では語順がかなり自由です。語順の自由度は、国際語の使用において、語族間の平等性を高めます。この点で、エスペラント語は後発で注意深く作られたロジバン語よりも優れています。
語順を日本語と同じにもできます。
Knabo belan knabinon renkontis.
こういう文の場合、"-n"をしっかりつけるように気をつけねばなりません。"belan"をうっかり"bela"にしてしまいますと、主語を修飾するようになり、文の意味が変わります。名詞の後に形容詞を付ける言語も少なくないので、エスペラント語でもそうしてもよいことになっているからです。
Knabo bela knabinon renkontis. (美しい少年が少女に出会った。)
創始者ザメンホフが思っていた以上に、エスペラント語は良くできています。