2013.08.26 R 2013.08.26
経済浮揚策には、大きく分けて、3つあるように思われる。
金融緩和: やって無意味ということは決してない。構造問題を生じさせにくいし、借り入れ資金に需要があるならば、大いに有効だ。しかし、借り入れ資金はやがて返済期限を迎える。資金需要が長期にわたって継続しない限り、金融緩和による一時的なインフレ圧力は、将来のデフレ圧力を予約することになる。
財政出動: 政府が借り入れるのだから、民間に資金需要が乏しい場合でも、景気を浮揚させることができる。研究開発に投入すると、大きな税収を生むこともある。ヒトゲノム解読にアメリカ政府が投じた38億ドルは、約5300億ドルの税収を生んだ。しかし、需要のないものを作り続け、根深い構造問題を生んでしまうこともある。利権や特権を持つ旧富裕層に有利で、新富裕層に不利であることが多いため、新富裕層の国外流出にもつながりやすい。もっとも、こういう問題は、同じ出動額でも細かく分割して広く配ることで軽減される。個人単位にまで分割すると、財政出動は各種社会福祉や基礎所得になる。
政府通貨発行: 管理通貨制度では、中央銀行が通貨を管理し、誰かが債務返済の努力を続けることで、通貨の購買力が維持されている。債権が利子付きで回収されれば、市場に出回るお金は利子の分だけ減ってしまう。純粋な管理通貨制度で誰も返済しなくてよいお金が生じるのは、債権回収が失敗した場合のみである。極長い目で見れば、経済がデフレに陥ることを防いでくれるのは、ある程度の数量の破産と債権の回収の失敗である。しかし、回収の失敗は短中期で金融システムを委縮させてしまう。それならば、管理通貨制度の管理性を弱め、政府が通貨を発行し、破産の代わりに純額インフレ圧力をかけてもよさそうに思える。金本位制では、新たな金鉱脈の発見がそういう役割を担っていた。クルーグマンの«IT’S BAAACK! JAPAN’S SLUMP AND THE RETURN OF THE LIQUIDITY TRAP»にすら、〝monetary policy will be effective after all if the central bank cancredibly promise to be irresponsible, to seek a higher future price.〟という記述があり、管理性を弱めるという手があることを認めている。
そろそろ、3つを適切な配分で組み合わせて実行することを議論してはどうだろうか? 例えば、100兆円の量的緩和につき、5兆円の新たな公共投資と2500億円の政府通貨発行を組み合わせてはどうだろうか?