2013.08.27
平成天皇曰く、〝なお大日本帝国憲法下の天皇の在り方と日本国憲法下の天皇の在り方を比べれば,日本国憲法下の天皇の在り方の方が天皇の長い歴史で見た場合,伝統的な天皇の在り方に沿うものと思います。〟
自民党の憲法改正案では天皇を元首とすることを提案していますが、日本の歴史において、足利尊氏が外国から「日本国王」と呼ばれるようになって以来、明治維新直前まで、天皇は長らく象徴的な存在でした。日本限定ではあれ、一国の元首よりさらに上位の存在、つまり、中世のフランスやイタリアのようなカトリック教国における国王よりさらに上位にあったローマ教皇のような存在でした。
日本と仲の良いイギリスにも、元首である国王よりさらに上位の存在として、王冠があります。王冠こそがイギリスおよびイギリス連邦を統合する大権の象徴であり、国王は王冠を載せる頭を提供しています。英語で「元首」を意味するのは「head of state」です。云いえて妙ですね。(王冠が大権の象徴であるため、イギリスは外国人を招いて国王にすることがあり、今のウィンザー家ももともとドイツのハノーヴァー家から国王として招いた人の子孫で、ドイツを敵とした戦争が起こる前は、ハノーヴァーの名をそのまま名乗っていました。)
自民党の提案は、イギリス王冠や中世ローマ教皇と同じところにいる天皇を、一段下げて、イギリス国王やアメリカ大統領と同じところに立たせようとすることです。この提案が通ったら、天皇制の終わりが始まることになるかもしれません。政治は無常なものであり、元首は無常なる政治の一部なのですから。
ちなみに、イギリスは、今、共和国化を可能にするために、とてつもない速さで走っています。ブレア当時政権は、貴族院議員の90%から世襲議員の地位を剥奪し、王室の政治上の外堀を埋めました。必要とあらば共和国にもなれるように、イギリスは身構えようとしているのです。