20世紀の経験と常識は、21世紀の今では通用しない。
マネタリズムは20世紀後半、とりわけ最後の1/4において、大いに有効であったことを私は認める。生活に自動車、テレビ、洗濯機、冷蔵庫、電子レンジなどが新たに入り込み、新しい市場ができた。そういう時期には、ほとんどマネタリズムだけで経済を駆動できるのだ。
しかし、21世紀に突入したあたりから、人類は技術停滞期に入っている。スマートフォンもタブレット端末も、本質的に新しい発明品ではないので、古いフィーチャーフォンやデスクトップ型とノート型のパーソナルコンピューターを駆逐しながら普及している。アップルやグーグルが肥えれば、誰かが痩せるのである。
歴史を振り返ると、人類は17世紀から18世紀にかけて、技術停滞を経験した。その時期には、ニュートンら傑出した科学者が様々な発見を成したが、それらが技術と製品に反映されたのはずっと後のことである。今でも科学の進歩は目覚ましいが、技術は科学に対して大きく遅れている。
21世紀初頭の現在の経済は、17世紀の終わりごろのそれにに近い。とりわけ、現在の日本が手本の一つとすべきなのは、マネタリズムではなく、17世紀フランスを生きた辣腕政治家ジャン·バティスト·コルベールの諸政策であろう。コルベールは国家による産業育成を指揮し、関税率の引き上げで労働者と国内産業を保護し、18世紀における繁栄の基礎を築いた。
2013.09.10