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«農耕革命の話»
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cosmichistory
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2010.10.29
R 2013.08.23
R 2013.08.23
紀元前10000年ごろ、人類は植物を栽培し、動物を飼育するようになり、農耕革命が起こった。おそらく、当時の人類にとっての農耕革命は、現代の人類にとっての情報革命のようなもので、生活に良い方向への大きな変革をもたらすように思われ、後戻りはできないことだったはずだ。ただし、そのころの考古学資料は乏しく、農耕革命が引き起こした生活の変化をつまびらかにするのは困難である。
しかし、南北アメリカ大陸の文明の起源は比較的新しい。アメリカ原住民がトウモロコシの栽培を始めたのは、西暦1000年ごろである。そして、そのころの人骨についての調査から、興味深いことがいろいろとわかってきた。
- トウモロコシ栽培以前には、成人の虫歯の数は平均1本未満だったが、トウモロコシ栽培が始まると、虫歯の数は7本近くまで上昇した。
- トウモロコシ栽培が始まると、結核などの病気がはやるようになった。
- トウモロコシ栽培以前には、人口の5%が50歳を超えるまで生きていたが、トウモロコシ栽培が始まると、50歳を超えるまで生きているのは人口のたった1%になった。
狩猟と採集の生活を送っていたころのほうが、アメリカ原住民の栄養状態は優れていて、十分な量のタンパク質、ビタミン、ミネラルが摂取されていた。農耕革命で摂取できるカロリーは大幅に増えたが、栄養状態は悪くなってしまった。農耕革命で人口密度は10倍になったが、栄養状態が悪い人々が集団生活を送ったため、疫病には悩まされるようになった。
人類が環境との調和の中に生きることを志向するならば、まずは個体数を減らすことを考えねばならないだろう。それに、極々長期の視点から見ると、人類が抱えている社会的な問題の大半は、源を辿っていくと農耕革命にあり、農耕への依存度が下がれば解決しやすくなるだろう。
人類の個体数が今の1/10、つまり、6億人くらいになると、農耕への人類の依存度は大きく下がる。もともと農耕への依存から始まった国家は次第に解体され、中核機能のみ残す最小形態になり、人類は狩猟と採集の生活を送っていたころのように、権力による抑圧から自由になれるだろう。
仮に25年で1世代の交代があり、1人当たりの経済生産が年間1%ずつ伸びるとすると、合計特殊出生率が1.6程度でも経済は破綻しない。これで250年後には、人類の個体数を現在の1/10程度に減らせていることになる。