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●オニール・ステーションの戦い

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欧州宇宙機関(ESC)は 「我々は宇宙への扉を開く」、「太陽系――すべての人の故郷」などと、いかにも高尚なキャンペーンを打ち出している。

しかしこうしたキャッチフレーズのメッキはすぐに剥がれた。立派なお題目の裏にある真実は、植民地支配計画だったのだ。オニール1の建設作業員にして最初の住人である我々は、その推移をこの目で見ている。ESCは新たな生活と明るい未来を約束し、我々を宇宙に送り出した。しかし、そこで待っていたのは極めて危険な環境での過酷な強制労働であり、我々には一切の自由がなかったのだ。

大義のためと思えば、耐えることもできたかもしれない。だがそれは、きちんと人間らしい扱いを受け、十分な情報が与えられ、我々の懸念や要請に耳を傾けてくれる体制があればの話だ。しかしESCは… 我々を一切無視した。

その弊害は当然あらわれる。2022年、ステーションが完成する頃までに、事態は限界を迎えていた。ステーション管理部は我々に対し、年中無休、1日18時間の労働を要求した。それも、年齢や健康状態に関係なく、全員に対してだ。平和的に抗議した我々を待っていたのは、スタンガンを使用した不当な暴力的鎮圧だった。そうすれば我々の心が折れると思ったのだろう。これまで地球で踏み潰してきた、数々の抗議と同じように。

だがステーションにおいては、状況が違った。労働者と警備員の比率は40対1、増援をすぐに呼べる場所でもなく、スタンガンは1チャージで15発しか撃てない。ESCの管理部は墓穴を掘った。戦いはものの7時間で終わり、オニール1およびオニール2は独立を宣言した。こうして、地球外初の国家が誕生したのだ…

●ヴードゥー・ボーイズ:その謎と真実

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…ナイトシティのハイチ人たちは、パシフィカを自分たちの領土だと考えている。その地が彼らの血と汗で築かれたことを考えれば、ごく自然なことだろう。2060年代、企業はパシフィカを街一番の娯楽地区にすべく、ハイチ難民を安価な労働力として雇い、ホテルやアミューズメントパーク、プールやその他様々な観光施設、高級施設の建設に従事させたのだ。
パシフィカがハイチ人たちの新たな故郷となったのは、2069年のことである。統一戦争によって地区の将来を不安視した投資家たちが資金を引き上げ、労働者たちは仕事も、社会保障も、明るい未来への希望もないまま取り残されたのだ。しかしハイチ人コミュニティには、これと似たような危機を耐え抜いた過去があった。祖国である島が自然災害で壊滅的打撃を受けたその時も、人道支援を求める彼らの声に応える者は誰もいなかったのだ。こうしてパシフィカは、彼らの新たなハイチ――外部から隔絶された、自給自足の地区となった。

…ヴードゥー・ボーイズについてわかっていることは非常に少ない。断片的な情報しか出回ることがなく、そういった情報から往々にして、都市伝説やさらなるデマが生まれる始末である。その一例に、ヴードゥー・ボーイズがハイチ難民のナイトシティ移住後に組織されたという話がある。これは全くの誤りであり、ヴードゥー・ボーイズは呼び名こそ違えど、2062年の災害よりずっと以前から何らかの形で存在していた(便宜上、ここではナイトシティとハイチ時代の双方の集団をヴードゥー・ボーイズと呼ぶ)。また、当時の組織の役割も現在の彼らとは異なるものだった。ハイチ時代のヴードゥー・ボーイズはネットランナー集団でしかなかったが、ナイトシティでの彼らは社会的役割も果たしている。パシフィカ地区において習慣法を確立させ、それを司ることで、住民の暮らしを守っているのだ。彼らの“仲間”に対する忠誠心は固い。だが、“よそ者”に対する軽蔑の感情もまた揺るぎないものだ。

●ヴィラ―計画、振り出しに戻る

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ヴァラー計画が失敗したことにより、系外惑星群9726-O9を調査するリーゼル3.0プログラムの進捗に支障が出るのは避けられない。これは現在の宇宙開発競争が各国間の“気高き競争”を促すものではなく、宇宙探査全体の妨げにしかなっていないことを示す、決定的証拠と言えるだろう。

2060年にラガレッタは、当時の技術進歩のペースなら、15年のうちにホワイトホールの存在確認や量子重力理論の発見が為されるだろうと予測した。しかしその15年はとうに過ぎてしまった。欧州宇宙機関、SRC、オービタル・エアーの三者が互いを出し抜くことばかりに精を出さず、科学を尊ぶ精神をもって協力し合い、情報共有していれば、状況は違っていたかもしれない。

私は自分のことを、ラガレッタのような先見者だとは考えていない。だがそれでも、確信がある。次の大規模な宇宙計画は、地球ではなくオニール1から開始されることになるだろう。

●『LIBERUM ARBITRIUM』--レビュー

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カッコだけで中身のない陳腐な音に、薄っぺらいシンフォニーで味付けしたのがこのアルバム。悪く言えばクロマチックロックの真似事、良く言ってパロディだ。ヘビーなリフ、個性的なボーカルのうなり、60年代のエッセンスはいいとして、“ザ・ダークサウンド”とでも言わんばかりの使い古されたトーンで全てが台無し。このクドさときたら、ネオキッチュ世代のファンもげんなりするレベルで、パンチもなければエッジのかけらもない。ハッキリ言って、このジャンルのスタンダードからすればまるで子守唄だ。

こんなレビューは早く切り上げたい(あるいはそこらへんに埋めたい)が、一応歌詞にも触れておく。その内容は、あまりの酷さに目玉がぐるぐる回って視神経を痛めたほどだ。なかでも最悪なのはタイトルトラックの『Liberum Arbitrium』。自由の侵害についての彼らなりのアンセムだが、人にとって最も大切なそれを奪う、ミステリアスな悪の正体は? ご想像の通り、もちろん企業だ。退屈すぎてボーカルをかき消すほどデカいあくびが出る。

Tainted Overlordの最新アルバムをわざわざ買うくらいなら、10年前に自宅で作ったクロマチックロックのミックステープを聞けばいい。忘れた頃にソファの下で埃まみれのカールソン・バーガーと一緒に見つかるヤツだ。大ファンには待望の音かもしれないが、そうでないならスタングレネードでも爆発させた方がよっぽどフレッシュなサウンドが楽しめるだろう。

●TINNITUS--ミュージック(?)レビュー--ひとつの試み

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実に不可解である。メイルストロームのお気に入りバンドTinnitus… 彼らの“音楽”を、メイルストロームは一般的なリスナーとは違った形で受けとめているらしい。連中は、Tinnitusの“曲”を“複雑”で“幅広く”、“奥深いサウンド”だと表現するが… うーん、私にはそうは思えない。音楽にノイズを取り入れることは可能だが、Tinnitusの場合は… 音楽性を取り入れていないノイズ。そうとしか説明のしようがないのだ…

これについては2つの仮説がある:

仮説#1: Tinnitusはトーテンタンツでしか演奏しないため、音響の違いが原因かもしれない。

問題: メイルストロームは極めて凶暴なサイコ集団だ。私は彼らのライブに出向いて自分の評判に傷をつけるつもりはない。となれば実証もできないわけで、この仮説の真偽を確かめることはできない。

仮説#2: 幻覚剤。Tinnitusは自家製のケミカルカクテルを使い、音楽との相乗効果で初めて成立する一種の… “体験”を提供しているのかもしれない。

が、正直、真相を知りたいとも思わない。なぜなら、もし仮説#2が正しければ、私は音楽系科学ジャーナリズムの発展のために、ドラッグによる神経破壊の危険を冒さなくてはならないからだ。

まったく… 音楽はこんなにも複雑じゃないはずなのに…

●ネオンの台風がアメリカに接近中!衝撃的なUS CRACKSシングルの裏事情に迫る!

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スーパーヒーローのような名を持つメンバーたち。映像、ステージを問わずファンを圧巻する強烈なイメージ。それがUs Cracks――今という時代の熱狂に完璧にマッチしたバンドだ。この世界で目立ちたいなら、他の誰よりも派手に、明るく、騒がしくなくてはならない。彼女たちはそれをよくわかっており、それ故に、今や世界規模のレーザーポップムーブメントとなった。Us Cracksは見事なプロモーションで日本に社会現象を巻き起こし、アジアを席捲。カラフルな光でヨーロッパを呑み込み、そしてついに、アメリカに上陸しようとしている。

私たちもまた、その凶暴なまでのキュートさと魅力にやられてしまうのだろうか? パープル・フォースと“カワイイ”仲間たちが、反抗精神とセンチメンタルな面をあわせ持つアメリカ人のハートと財布を掴み取ろうとしているのは間違いない。ケリー・ユーロダインのヒット曲 『User Friendly』のカバーがアメリカツアーのプロモーション用シングルに選ばれたのも、まさにそんな理由だろう。観客が喜ぶのは確かだが、少々疑問を感じる選曲でもある。Us Cracksはアメリカのオーディエンスに“ユーザーフレンドリー”なキャラクターとして受け入れられたいのか? それとも、アメリカの消費者を無邪気に皮肉っているのだろうか? そして真意がどうであれ、より興味深いのは、世代と文化の架け橋の一端に立つこととなったユーロダイン自身が、今回のコラボをどう思っているのかということだ。現在のところ、ユーロダインは沈黙を貫いている。それが何を意味するかは、皆さんにもおわかりだろう… ユーロダイン、そしてUs Cracksの双方とも、世間をあっと言わせる切り札を隠しているに違いない。

●皇帝一家

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アラサカが築き上げたレガシーに説明の必要などないだろう。世界で最も強大な力を持つ企業の一つであるアラサカ社は、世界各国の主要都市にオフィスを構え、長年、世界の経済と社会に変革をもたらし続けてきた。ナイトシティにおける社の歴史はそれだけで記事を書くに値するが、とにかくこの街のメディア業界はこの大企業を率いる一家について、株価の動向と同じくらいに詳しく報じている。

アラサカ家の物語はまるで帝国の歴史であり、家長サブロウ・アラサカが君臨する一族は、まさに皇帝一家だ。世間では偉大なるサブロウの引退について、また経営権(および厳重に守られてきた秘密)を娘ハナコと息子ヨリノブのどちらに継がせるかについて、近年、幾度となく取り沙汰されてきた。しかし、そのようなゴシップが、ついに信憑性を持つ時がやってきたのかもしれない。

情報筋によると、ヨリノブ・アラサカは現在ナイトシティに滞在しているが、これは表敬訪問のためではないようだ。ヨリノブが皇帝の座を狙って戦略を練っているのだとすれば、ハナコはどうなる? 一家について詳しい専門家は口を揃えてサブロウとヨリノブの“思想”の違いを指摘し、ハナコこそアラサカ家が持つ巨大な富と権力の後継者となるだろうと予測している。しかし、家族内の力関係は瞬時に変わることがあり、そう簡単に予測できるものではない。たとえば仮に、ヨリノブが父親に話を聞いてもらう機会を得たときに、ハナコがお気に入りではなくなっていたとしら?

全ての家族には秘密がある。それはアラサカ家も同じだ。「聞いて極楽見て地獄」(日本のことわざ)というのが、お家事情の典型なのだ。

●ネットのシャーマンたち

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パシフィカにはその悪評から連想される、ありとあらゆるものが揃っている。胡散臭い住人、いかがわしい店… そして極めつきは、謎めいたヴードゥー・ボーイズの存在だ。“謎めいた”とはどういうことか。結束の固いギャング組織なら、外部には決して知られることのない秘密があっても珍しくない。ヴードゥー・ボーイズも、他のギャングとさして変わらないはず… だが果たしてそうだろうか?

考えてみてほしい。ギャングの銃撃戦を目撃したことのある人は多いだろう。回数は両手で余るほどかもしれない。その時、争いに関わっていた組織はどこだったか。ヴァレンティーノズ、タイガークロウズ、メイルストローム、シックス・ストリート… だが決してヴードゥー・ボーイズではなかったはずだ。

彼らについては、聞く人ごとに様々なエピソードやイメージが出てくる――ハイチ人難民コミュニティの事実上のリーダー。血の生贄として黒い雄鶏を捧げる(それをどこで調達しているのかは神のみぞ知るところだ)。祈りを通じて祖先と交流する。霊を呼び寄せ、人の体に憑依させる。ヴードゥー人形を使って敵対者に病や苦痛をもたらす… なるほど、すべて噂に過ぎないと思うかもしれないが、本当にそう言い切れるだろうか?

ヴードゥー・ボーイズのネットランナーを深層ネットで見かけたという証言もある。彼らはヴァンパイアとリバイアサンに囲まれ、現実界では想像もできないほど美しく、かつ危険な、サイバー空間の未知の深部を渡り歩いているのだ。その目的は彼らにしかわからない。

結局、彼らは何者なのか? 何を探し求めているのか? 何を企んでいるのか? だが、そうした疑問は追求すべきでないのかもしれない。この世には、明らかにすべきでない秘密というものがあるのだ。

●リフ&フラフ

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…フィッシー・グラウルズが死亡――クランクコア・ラップのジャンルで広く評価され、特に昨年のヒット曲『Coma Blues』で知られるラッパーのフィッシー・グラウルズ(21歳)が、ニューヨークの自宅で意識を失っているところを発見された。彼の喉と手首には切り傷があり、現場の捜査員は建物にも相当な被害があったと報告している。グラウルズは血まみれの状態で発見され、右手には自身の気管と、彼の代名詞とも言えるオーディオヴォックスの音声ディストーションテックを握りしめていた。なおフィッシー・グラウルズの代理人は、彼がサイバーサイコシスを発症したという疑いを裏付けるコメントは出していない…

…スペクトラム・ディジーやゴースト・チェイサー、AI-VS-AIといったアーティストの出現は、チップチューン再興の前触れなのだろうか? チップチューンは1980年代中頃、8-bitコンピューターと最初期のテレビゲームが登場した時代に生まれたものだ。2030年代に再流行したが(レトロチップの大流行を覚えているだろうか?)、またしても大規模な再流行の真っただ中にあるようだ。しかしこれはただの偶然ではないのかもしれない。これもまた、去年巻き起こったAIベースのスピリチュアルブームのように、企業の後押しによる促進活動なのだろうか?

…議論を避けられない話題がある。ブレインダンスにおけるサウンドトラックについてだ。最高か、悪夢か? バーチャの感情の渦に環境音が加えられることについてどう思うか、是非アンケートにご協力を。インパクトを加えてくれるのか、それともただの雑音なのか? この話題については専門家でも意見が分かれるところだ。アンケートの結果は次の号で! いいコメントは掲載される可能性もあるので奮って参加してくれ!

●シックス・ストリートの愛国者たち

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新合衆国を最もよく体現している存在は何か――そう考えた時に思い浮かぶのはシックス・ストリートだ。その名はナイトシティ市民の誰もが知っているが、最も多く恩恵を受けているのはビスタ・デル・レイの住人であり、彼らの関係は非常に密接だ。昔は多くの者が成功を夢見てさまざまな商売に挑戦したものだが、第四次企業戦争の煽りを受け、そのほとんどは一文無しになるという悲惨な結末を迎えた。タクシードライバーに整備士、商店経営者… 地元で商売を行っていた者の多くは、アラサカ社のような巨大企業が進出してきたことで、客を奪われた。ストリートは次々に生まれたギャング組織に乗っ取られ、警察の介入もむなしく、住民の暮らしは困難を極めた。

そんな時、彼らは現れた。戦争からビスタ・デル・レイに帰還した兵士たちだ。通りに響き渡る子供たちの笑い声や、スコップバーガーの香ばしい匂い… そんな懐かしい風景を夢見て帰った彼らは、変わり果てた故郷の姿に心を痛めた。しかし心が折られたわけではない。彼らは真のアメリカ人らしく、自らの手で困難に立ち向かったのだ。彼らはミリテク社の兵器を集め、軍隊で受けてきた訓練を他の住人たちに施し、故郷を荒らした凶暴なギャングに片端から復讐した。

こうして結成されたのが民兵組織シックス・ストリートである。白人、黒人、ラテン系、アメリカ先住民らが一丸となって武器を取り、ナイトシティの街をパトロールする――まさに愛国者と呼ぶにふさわしい者たちだ。窃盗や密輸への関与など、根も葉もないうわさを広められることもあるが、持前の結束力と信念で跳ね返す。若く、誇り高く、熱意に満ちた彼らは、この国が再び団結する未来を信じている。自分たちがビスタ・デル・レイを救ったように、いつか誰かがアメリカの復活を実現してくれると信じているのだ。

●グラウンド・ゼロのノーマッド

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…ナイト・コープはアラサカ社爆破事件のクレーターから放射性がれきの撤去作業を行う人員を募集し、志願者に多額の報酬を支払った。この事実は広く知られており、サイバーウェアや生体モニターのアップグレードが無償提供されることさえあった。実際に作業を行った者の証言によれば、現場ではガイガーカウンターが鳴り止まず、まるで夏のセミのようだったという。今となっては、どれだけの“クレーター掃除人”が作業後に放射線障害で死亡したか正確に把握する術はない。市もナイト・コープも、犠牲者は最小限に抑えられたと主張しているが、それを裏付ける統計的情報は一切公表されていないのだ。そもそも彼らに、そうした数字を公表する義務はなかった。救助活動やがれき撤去に関わった人員のほとんどは、ナイトシティ市民ではなくノーマッドだったからだ。初耳の情報だとしても、何も驚くことではない。歴史の授業では滅多に取り上げられない隠された事実だ。

市は何百というノーマッドの傭兵を雇い、その多くはアルデカルドス族だった。彼らは儲けのいい仕事を求めており、市は豊富な経験と命知らずの度胸を備えた人材を求めていた――全てはアラサカ社の新たなタワーを建てるために… しかし歴史というものは、皮肉を忘れない。我々の言う“システム”の外で生きようと必死になっているノーマッドが、それを救いにやって来たのだ。これが初めてだったわけではない。そして、今後も歴史は繰り返されるだろう。

●インタビュー:メトロジャングルの女王

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ナイトシティの暗部が気になって仕方ないあなたに、ぴったりの記事をお届けしよう! 数々の脅迫を受けながら数ヶ月に渡って接触を試みた結果、我々はついにアニマルズの一員へのインタビューに成功した。インタビューが行われたのはパシフィカ西端のとあるバー。彼女の細長い瞳孔が私の目を鋭く射貫いた時、脳裏に浮かんだのは、昔よく見た野生動物のドキュメンタリー映像だ。ライオンの群れに襲いかかられるガゼルは、きっとこんな気分だったに違いない。

記者: インタビューに応じてくれて、ありがとうございます。その… “群れ”の仲間はインタビューを了承してるんですか?
匿名メンバー: (急に笑いだす)誰も気にするもんか! 私はやりたい時にやりたいことをする。文句を言う奴がいたら、サシで話をつけるまでだ。ま、ビビって何も言えないだろうけど。
記者: アニマルズの全員が“適者生存”の信条に従っているんでしょうか?
匿名メンバー: もちろんだ! ひ弱な奴はすぐに死んじまう。だから体を鍛えるのさ。ステロイド、改良型馬成長ホルモン、最低半日のトレーニング――(記者がさえぎる)
記者: ちょっと待って… (混乱した間)今、馬と言いました?
匿名メンバー: (笑う)何を驚く? だから“アニマルズ”なんだ。人間ってのは弱い動物さ。でもカバはどうだ? あんたはカバみたいに、ワニをまるごと食い尽くせるかい? それに虎は? 4インチの牙に、700ポンドを超える神々しい体。つまりそれが私たち… ナイトシティの頂点に立つ獣。生と死を支配する王者ってわけさ。
記者: ずいぶんと詩的な表現ですね。
匿名メンバー: (笑う)もう一度言ってみな? 顎の骨を頭の飾りにしてやるよ。
記者: (引きつった笑い)いやあ、それは… (咳払い)ところで、サイバネティクスを使用しないというのは本当なんですか?
匿名メンバー: どちらとも言えない。コプロセッサはハックされる危険があるから使わないようにしてる。だが格納式ブレードやメタルクロー、チタン製の顎にヒョウ柄のテックレザーなんかは話が別さ。
記者: なるほど… (間)では、あまり長引かせては悪いので、この辺りで。今日は本当にありがとうございました。読者に向けて、何か言っておきたいことは?
匿名メンバー: ナイトシティの人間に警告する。体を引き裂かれ、骨まで食い尽くされたくなけりゃ――アニマルズに刃向かうな。

●アラサカと鳥類学:重要な3つの日本語

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アラサカの社内派閥に関する議論が過熱していく中、業界の人間の多くが、アラサカの今後に興味を示している。世界最大級の兵器メーカーの複雑な内幕を上手く理解できないという場合は、鳥類学を参考にするといい。そう、鳥についての知識が理解の助けになるのだ――少なくともある部分においては。企業人であれば誰もが知っているであろう、3つの日本語がある。「キジ」、「ハト」、「タカ」だ。

日本において「キジ」は、古くから文化的・象徴的に重要な存在とされてきた。生存する世界最後の1羽は、四国にあるハナコ・アラサカの私有区で保護されている。だが「キジ」という言葉は、アラサカ社内の派閥を指す名でもある。ハナコを中心に据えるこの一派は、主に保守的な技術系幹部で構成され、サブロウ・アラサカに忠実に従おうとする。彼らはサブロウの娘であるハナコを導き手と見ており、その力によって旧体制と社の安定性が維持されると考えているのだ。

「ハト」の象徴性は日本に限らず広く知られるところだろう。そしてこのシンボルには、ミチコ・アラサカ率いるより小規模な社内派閥の特徴がよく表れている(ミチコは故ケイ・アラサカの娘でありハナコの姪にあたる*)。リベラルなこの一派には、大きな変革を求める者たちが集っている。現在のところ大きな影響力は持っていないが、一部の政治家やメディア関係者の間に支持者を獲得し、成長を続けている。

「タカ」もまた、ハト同様に象徴的な存在だ。ヨリノブ・アラサカ率いるこの派閥は、直接的で強硬な手段を好む傾向にある。ヨリノブの頑固で気難しい性格はサブロウを思わせるところもあり、アラサカ社内の武闘派エリート層から広く支持を集めている。しかし彼の親欧米的な傾向や、革新的ながらも物議を醸す思想により、役員会の忠実な伝統主義者からは支持を失いつつある。

アラサカ家の系譜については、間もなく発売の全8巻シリーズ『クローバーの影の二世紀』で詳しく知ることができる。

●レビュー『ブラッディ・バウドVII』--失敗の原因は

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中途半端な出来のゲームを数々世に出してきたマクロウェア。いい加減学んだかと思いきや、またしても問題だらけのゲームを発売した。はっきり言って、何をレビューすればいいかわからない。「ストーリーモード」は別々の国に住むライターたちのバラバラな思いつきを寄せ集めたかのような出来で、チュートリアルも全く直感的ではない。ラグはあまりにもひどく、1回パンチするごとにコーヒーを淹れにいったほどだ。極めつきはローカライズで、これも実にお粗末なものだった。どの言語でも会話は意味不明… いったい何語がベースなんだ? スイス語か?

●『ブシドー』とネオポストモダニズム

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『ブシドー』シリーズは現代の試金石と言っても過言ではない。アメリカ社会全体を描き、ネオモダン時代が抱える問題を巧みに指摘している。「生き急げ、でも死ぬな」というキャッチフレーズは、命の肯定に向けたマニフェストだ。鮮やかな色使い、手ブレ感を演出したカメラワーク、あちこちに挿入される流血エフェクトや飛び散る脳は、かつてインタビューで自分がいかに「セクシーな女が悪者をバラバラに切り刻むシーンが大好き」かを明かした監督の、驚くべき自己認識の証である。そしてこのコンセプトは、『ブシドー3』公開当時、水面下にあった社会的精神をこれ以上なく適切に表現している。

特筆すべきは、シリーズに繰り返し登場するインプラント爆弾のモチーフだ。これを通して主人公は現実を再解釈することになる。この演出を見事なまでに組み込んだ一例が、シリーズ最新作『ブシドーX - フェードアウト』だ。「ゴリラ」が、時代を超越する俳優ティム・ケリー演じる「ジェイク」の腕を引きちぎる場面は、人間の二重性を見事に表している。ジェイクは自身の悲劇的な過去と、彼の内側で巻き起こるテクノ存在論の衝突を象徴するサイバネティクスの腕を失うことになる。その一方で、腕が切断されたからこそ、ゴリラはドラマチックな爆発で吹き飛ばされ、肉片と化すのである。そして、ラストでゴリラが血しぶきとともに粉砕されるシーンを、どう解釈するかも重要だ。これは根深い絶望の比喩であり、個人の罪の現れだと考えるべきだろう。体が断片化されることは、すなわち個々の精神が断片化されることだと解釈できる。するとまた疑問がわき上がる。それは、誰の精神かという問題だ。観客が見てきたジェイクの奮闘は全て、実は具現化された恐怖そのものだったのかもしれない。彼が壮大な戦いを繰り広げた相手は、卑しい怪物ではなく自分自身だったのだろうか? ジェイクの物語自体、サイバーサイコシスによって引き起こされた夢想に過ぎないのだろうか?

シリーズ1作目からの特徴である深みと含みのある演出の中で、確かなことはただ一つ。『ブシドー』は映画史の歴史を変えた傑作である。

●スラボイ・マカリスター、再びニュースを騒がせる

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思い上がったクソ野郎? それともエキセントリックな天才? 名高いロッカーボーイ、スラボイ・マカリスターがナイトクラブ“トーテンタンツ”でのライブ後にまたしても騒動を起こした。ロックコンサートでの乱闘騒ぎは決して珍しいことではないが、非公式の情報源によると、今回の一件ではマカリスター自身が騒ぎの発端となったらしく、どうやら群衆に紛れたパパラッチに向かって催涙弾を投げつけたようだ。

Cartesian Duelistsは乱闘騒ぎの前に新曲の『Cybernetic Soul』、『Mind Is Freedom』、『Cogito Ergo Sum』を披露。新曲の歌詞は肉体と精神の内的葛藤や人の感覚の限界、絶対的真理の探究といったテーマに触れており、これをインテリぶった戯言と評する意見がある一方、ジャンルに対するフレッシュで革新的なアプローチだと考える評論家もいる。

今回の騒動はさておき、マカリスターの音楽自体も十分な話題を呼んでいる。N54ニュースのインタビューで『Cogito Ergo Sum』という謎めいた曲名の意味をたずねられた彼は、「間抜けな詐欺師どもの質問には答えない… 何様のつもりだ?」と答えた。

しかしCartesian Duelistsのフロントマンは、幾多の騒動を起こしながらも(あるいはそのおかげで?)人気を集め続けている。新アルバムの発売を間近に控えている彼らだが、ネットの噂を信じるならば、そのタイトルは『War of Truths』とのことだ。

●NCナイトライフ-ドリンク、ダンス、イベント

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…BD好きなら「リジーズ」には絶対行った方がいい。文句なしで、この街一番のブレインダンスクラブだ。モダンなボックスに高品質な機材も魅力だが、何より注目すべきはそのカタログだろう。充実のラインナップには、利用者が考えつくありとあらゆる体験が網羅されている。手っ取り早く、あるいはゆっくりと… とびきり下品なものから上品なものまで… さまざまな好みに合わせたさじ加減が選べるのだ。入口の女の子たちにビビるかもしれないが、気後れする必要はない。初見の客には慎重なだけだ。ひとたび中に入れば、仲間のように接してくれる。リジーズを一度体験すれば、他のクラブに行く気になどならないだろう。

「アフターライフ」はどうかって? あそこはまた違うタイプの店だ。羽目を外して楽しむこともできなくはないが、アフターライフは第一にビジネスの場だ。フィクサーに会って仕事の話をしたい、クライアントと酒を飲みながら大事な仕事の詳細を確認したい、リラックスして人間観察をしつつ、ナイトシティの地下社会を牛耳る大物傭兵やフィクサーの姿を拝みたい――アフターライフは、そういうことにうってつけの場所だ。と言うより、それができる唯一の場所だろう。

派手なイベントがお望みなら、「ライオット」がおすすめだ。流行りの曲が満載のプレイリスト、国内はもちろん、海外からも豪華スターが登場するライブパフォーマンス、DJバトル、ユニークなミュージックショー、メディアが押しかけるアルバム発売イベント… そういうのが好みなら、ライオットは外せない…

●フットボール界にサイバーウェア論争?

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いまだかつて一晩の試合で、これほど劇的に、そして何度も、熱狂的な歓声と沈黙が交互に訪れることがあっただろうか。

前回のNCコルセアーズ対サンディエゴ・シュレッダーズ戦はナイトシティの圧倒的勝利に終わったが、スポットライトを浴びたのは別の“チーム”だった。試合では実に7名もの選手が致命的重症を負い、トラウマ・チームの救急隊員が記録的な数の選手を搬送することとなった。うち3人の容体は安定したものの、予断を許さない状況が続いている。

両チームはこの1ヶ月にわたり、互いに敵意を募らせてきた。それがついに沸点に達したのだ。シュレッダーズのヘッドコーチ、ダーネル・アービングは、コルセアーズが選手に軍用サイバーウェアを使わせ、リーグ規則を破っていると繰り返し訴えていた。コルセアーズ代表はこれに対し、ガイドラインにそのようなルールは明記されていないと反論。さらにコルセアーズのヘッドコーチは、「負けるたびに泣き喚くぐらいなら、シュレッダーズも同じアップグレードをしたらいいじゃないか」と挑発した。しかし実のところ、NCコルセアーズはナイト・コープとスポンサー契約を結び、同社極秘の“フットボール科学研究所”で開発された装備を独占的に提供されているのだ。

当然納得のいかないシュレッダーズはリーグに対し、軍用テクノロジーの使用は競技の品位と未来を傷つけると主張。しかしその一方で、フットボール・アナリストやコメンテーターたちは、スポーツでの“軍備競争”はもはや普遍的なものだと片付けた。ここで引き合いに出されたのが、2064年のナイトシティ・マラソンである。オーストリアのドミニク・ボーム選手はチェコやフランスの強豪選手を抜き去り、新記録樹立とともに圧倒的勝利を収めた。その勝利の影には首都ウィーンとゼータテク社の緊密なパートナーシップがあったのだ。

●観光時のご注意:街の外へ出ないこと!

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…安全のため、市の中心地から離れないでください。残念ながら、ナイトシティの周辺地域は旅行者にとって未だ危険な状態です。街は北および南カリフォルニアの境界地帯に位置しており、政治的断層線と言えるこの場所では、日夜銃声が鳴り止みません。市境警備隊が勇敢かつ懸命に不法移住者のキャラバンを追跡し、市民をつけ狙う危険なノーマッド集団に対処していますが、周辺地域の大部分はそれでもなお安全とは言いきれません。なお複数の企業が街の境界防衛に人員を充てています。検問所では特別な通行許可証が必要となり、許可証なしに越境を試みた者は容赦なく攻撃を受けることになります。不運な事故に遭わないよう、法の順守を徹底してください。

ナイトシティ上空は安全に通行可能です。地上経路は、企業や軍の同行がない限り推奨できません。ナイトシティを訪れる際は、空路のご利用をおすすめします。ナイトシティとアメリカ主要都市および軌道を結ぶ便は毎日運航しています。スペースポートは環状道路をスペースポート大通りで降りた先、モーロ・ロックに位置しています。島からは最高の景色をお楽しみいただけますので、フライトの予定がなくても、写真撮影に訪れてみてはいかがでしょうか。

●あんしんシティライフ:ナイトシティのギャング組織

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”やあ! みんなの味方、ドブズ警部だ! このガイドでは、ナイトシティの主要なギャングについて重要な情報を紹介していくぞ!

注意が必要な地区

ギャングメンバーの見分け方

危険を避ける方法


アニマルズ: アニマルズは動物じゃない――ケダモノだ! 強化ホルモンを乱用し、人間離れした体格と力の強さを持ってるぞ。アニマルズは動物をモチーフにした外見の改造を除けば、サイバーウェアは基本的に使用しない。極めて攻撃的な性格をしていて、問答無用で喧嘩を始める連中だ。ただし、アニマルズという名前とは裏腹に縄張りを作る習性はないから、街中のいたるところで、獰猛な群れに出くわす可能性があるぞ。

シックス・ストリート・ギャング: 一見は帰還兵士に見えるかもしれない――軍服にコンバットブーツ、髪はミリタリーカットで何かにつけて「ウラー!」と叫んでるからね。しかし見た目にだまされてはいけない! 奴らは容赦なく人の喉を切り裂く危険な連中だ。ビスタ・デル・レイでは特に警戒しよう。

モックス: ハンサムな女の子に美しい男たち… いや、そいつは罠だ! モックスは相手を誘惑し、油断しきったところで身ぐるみを剥がすんだ(それで済めばマシかもしれない)。奴らの拠点はリジーズ・バー。遠くから眺めるだけにして、決して入ってはいけないぞ。

メイルストローム: そもそもワトソンの工業エリアには立ち寄らないほうがいい。それでも万が一迷い込んでしまったら、不気味なフェイスプレートをつけたギャング、メイルストロームには十分気をつけよう。目と鼻を切除して、赤く輝くおぞましいオプティクスを装着してるのが特徴だ。うう、痛そう! 自分にそんな真似ができるなら、他人には何をするかわかったもんじゃない!! そして知らずにいた方が賢明だ。

タイガークロウズ: アジア風の派手なネオンタトゥー、カタナに手裏剣、 レーシングバイク。これらはみんな、ジャパンタウンを拠点とするタイガークロウズのトレードマークだ。こちらからちょっかいを出さない限り、向こうから手を出してくることはないが… ひとたび怒らせるとSAYONARAだ!

ヴァレンティーノズ: 金の歯、金のインプラント、金の十字架に金のマチェット… とにかく派手好きなのがヴァレンティーノズだ! カトリックのシンボルを使いたがるが、決して“隣人を愛す”タイプではない。奴らに逆らった者は細かく切り刻まれ、デルコロナドに捨てられるのがお決まりのパターンだ。

ヴードゥー・ボーイズ: メンバーは主にハイチ出身者でパシフィカを拠点にしているが、連中の真の縄張りは別の場所――ネットの中だ。ナイトシティ随一のネットランナー集団であるヴードゥー・ボーイズだが、だからと言ってリアルでも危険なことには変わりない! 不用意に近づくと、闇市場で売られるニワトリみたいに首を切り落とされるぞ。

●グラム・ナウ!-あなたの"好き"を詰め合わせ

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効果抜群の最新ブレインダンスダイエットをご存知ですか? 2078年に流行間違いなしの、おすすめダイエットをご紹介! BDダイエットの提唱者にして世界的ファッショニスタ、アンバー・デイジーは、グラムでもお馴染みの存在。今回の独占インタビューでは、彼女の肉体がたどった変遷と、その秘密について語ってもらいました。アンバーはこの数ヶ月、人工・自然を問わず食品の摂取を最小限に抑えて生活しています。そしてその代わりに、BDを通して食事を行っているのです。アンバーによれば、適切に設定されたBDを使えば、すっかり空腹の状態でダイブを開始したとしても、現実へ戻った時にはパーティーのごちそうをお腹いっぱい食べたような感覚になっているとのこと! 果たしてアンバーは、この最新ブームを推し進めるべくアメリカに戻ってきてくれるのでしょうか? そうなることを祈っています!

ケリー・ユーロダインのファンに悲しいお報せです。数日前にネットに流出した彼のヌード写真は、フェイクだったことが判明しました。画像はディルドンツによる捏造だということが、彼のマネージャーによって確認されたとのこと。決定的な証拠となったのは、ケリーのアイコニックなフィリピノ・タトゥーに細かな違いがあったことと、“ごく小さな”身体的特徴の差異とのことです(おっと!)…

●『呼吸と細胞間空間』B・A・グセイノフ著

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(1)危険に関わるこの理論も過度に単純化され、近代科学研究に求められる様式に則って築かれたものではないが、一般原則としては有用である。昨今の科学者は前時代の夢想家たちを安易に軽視し、歴史のゴミ箱に葬り去ろうとする。スピリチュアルな問題を扱っているというだけで、現代的理論にはそぐわないと決めつけているのだ。
(2)人の自我が間違いなく実在するとしたら、その自我が肉体に影響を与えるという点に疑う余地があるだろうか。実在するのなら、影響して当然である。そしてこのことは、つい数週間前にトリード大学の科学者チームによって証明されている。実験用マウスを用いた研究の結果、定期的な瞑想によって寿命が20%伸びるという相関関係が認められたのだ。

参考文献:
『近代シャーマニズムの重大な効果』I・E・グラント著、オックスブリッジ大学出版局、p. 15~37
『トリードの驚異のマウス』J・J・ブラヴァツキー著、代替科学ジャーナル、p. 2~4

●SAMURAI、あれから30年:事実、伝説、さらなる伝説

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Samurai結成時、シルヴァーハンドは既に成熟したアーティストだった。彼には自分の求めるものがはっきり見えており、バンドのカリスマ的リーダーとして、そのビジョンをメンバーにどう実現させるべきかを心得ていたのだ。

メンバーの役割は明確に分かれている。ジョニーとケリー・ユーロダインは情熱に満ちたアジテーターであり、対立を繰り返す2人はバンドの中核的存在だった。一方、ベースのヘンリーは独自の世界を生きており、それは珍しく正気を保っている時でさえ変わらない。自分がどれほどの才能の持ち主か、本人は理解していなかった可能性もある。そんなヘンリーをバンドに繋ぎ止めるため、シルヴァーハンドは彼と寝ていたと噂されている。さらにはケリーを鼓舞するため、彼とも寝ていたと言われているが、実のところ、ジョニーは誰とでも寝ていたのだ。とは言え、そこに心が通っていたとは限らない。

Samuraiの解散後すぐ、ヘンリーは事故で文字通り“ショック”状態に陥り、それ以降、彼の言動は奇怪さを増していく。そしてあたかもその時を待ち望んでいたかのように、彼はどん底へと落ちていった。

キーボードのナンシーはバンド内で唯一、理性ある常識人だった。ライブに現れては持てる技術の限りで演奏し、それが終われば家に帰る。ただし、その家には暴力的なクズ夫がいた。束縛があまりにも酷く、一度はバンドを抜ける事態になったほどだ。その後、彼がさらに首輪をきつく締めようとした時、ナンシーはついに怒りを爆発させた。彼女はギャング時代の自分を取り戻し、夫を80階の高さから突き落とした。ナンシーは刑務所で7ヶ月を過ごした後、Samuraiに復帰する。だがその時のバンドはすでに、何かが変わってしまっていた。彼女は結局脱退し、N54ニュースのベス・アイシスとして新たなキャリアをスタートさせる。

ドラム担当のデニーは、妄想を含む様々な強迫観念に苛まれており、彼女が自分自身でいられるのはステージの上だけだった。ステージを降りた後の彼女はいつも、「自分は周りが思っているより普通だ」と自分に言い聞かせるのに必死だった。ヘンリーと交際したのも、それが理由かもしれない。彼に比べれば、デニーは誰が見ても“普通”だった。

シルヴァーハンドのマネージャー嫌いは有名だった。いつ、何を言うべきか。どこで演奏し、誰にゴマをするべきか。そんな指図に耐えられなかったのだ。もし彼がその点を我慢できていたなら、Samuraiはもっと大きな成功をつかんでいたかもしれない。しかし彼は反抗的態度を貫き、妥協のないクールな反逆者の象徴的存在となった。ある時はチケットを完売させるスーパースターでも、次の日には酔い潰れて川辺で嘔吐している。それこそが真の自由だと言って、人の靴にゲロをぶちまける――それがシルヴァーハンドという男だ。

そのシルヴァーハンドの死によって、Samuraiはとうとう現実世界を飛び出し、伝説のバンドへと昇華したのだ。

●最後のロッカーボーイ:ケリー・ユーロダインのソロキャリア

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Samuraiに何が起きたのか? その真実は、ジョニー・シルヴァーハンドとケリー・ユーロダインの友情、そしてジョニーの謎の失踪が残した傷により、長年に渡ってベールに包まれてきた。ユーロダインは頑なに沈黙を守り続けているばかりか、彼は自身のキャリアに悪影響が出ようともシルヴァーハンドに敬意を示し、バンドの楽曲の権利もすべてシルヴァーハンドに捧げているのだ。

Samuraiの解散後、フィリピンに移り住んだユーロダインは、そこで創作上のルーツを新たに見出した。そして過去との繋がりを断ち、キャリアの新たな一章を開始する。その後の彼の成功はSamuraiのそれに並ぶどころか、凌駕することも度々あった。気取らない自然体のカリスマ性と、ステージでの圧倒的存在感によって、ケリーは観客を確実に魅了する。それと比べれば、シルヴァーハンドの攻撃的なシャウトや政治的スタンドプレーは、才能の凡庸さを隠すためのパフォーマンスでしかなかったようにも思える。

●ケリー・ユーロダイン-『Second Conflict』--最新アルバム・レビュー

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Samuraiはジョニーの失踪と共に消滅したとよく言われるが、私はさらにこう付け加えたい。Samuraiの終焉と共に、ケリー・ユーロダインも終焉を迎えたのだ。彼の最新アルバムはユーロダインの音楽がSamuraiのエピゴーネン、あるいはウロボロスにしかなり得ない、惨めな亜流だということを証明した…

…ユーロダインはシルヴァーハンドの影から抜け出せずにいるようだが、率直に言って、彼にはその気もないようだ。今や自分でニュースになるような話題を提供できないために、何十年も前のスキャンダルにしがみつき、思い出に浸っている…

…ケリー・ユーロダインの黄金期はとうに過ぎた。沈みゆくこの船に、レーベルは果たしてどれだけの金をつぎ込んで体裁を保つのか、興味があるのはその点に尽きる…

●(ある意味)ブッ飛んだアシッド・トリップ!

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酸のプールに飛び込んだらどうなるのか? そんな疑問を解消する絶好のチャンス!
『キングス・オブ・アシッド』が“そっち”のアシッドを扱ったものじゃないと知った時、このタイトルに対する私の興味は一気に失われた。長い伝統を持つボディホラーというジャンルにおいて、新鮮さなどもはや期待できないと思っていたからだ。ところがなんと、本作の開発陣はまさにそれをやってのけた!

主人公は不器用なロッカーボーイ、アルトゥール・カー。メイルストロームと一悶着があった後、彼らから謎めいた荷物――瞬間的な再生能力を持つ原虫の配達を託される。企業の科学研究所まで荷物を運んだカーだったが、思わぬ不運に見舞われ(この主人公にはよくあることだが)、ライバルギャングに奇襲された結果、突然変異を誘発する酸のタンクに落ちてしまうのだ。こうして“アシッド・トリップ”が始まった。カーの体はたちまち変異してしまう――カニのように目が飛び出し、皮膚の色は変化し、喉から触手が伸びるが、本当に恐ろしい変異はまだその先に待っているのだ!

カーは戦闘に勝利すると敵の血液から遺伝子コードを吸収することができる。ただでさえ爽快なハック&スラッシュスタイルの戦闘に、奥深さを加える画期的なシステムだ。成長するにつれて使用可能な変異の選択肢もどんどん増えていくため、経験値稼ぎだけでなく周回プレイの大きなモチベーションとなっている。

カーの最終的な目標は、高額なアルバム契約を反故にし、ボーイフレンドの命を奪った音楽プロデューサーに復讐を果たすことだ。このストーリーがゲームプレイと見事に融合しており、さらにパッケージ同梱の疑似ブレインダンス・インプラントのおかげで、猛烈な痛みが快感へと変貌する、ブッ飛んだ変異体験にどっぷり没入することができる。この作品は絶対に見逃せないぞ!

●リズィー・ウィズィーは誰になろうとしているのか?

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「人は誰もがなりたい自分を演じてる。私は全てになろうとした――そうやって真実にたどりついたの」

リズィー・ウィズィーは“圧倒的才能”の持ち主だ。彼女の活動は数々の受賞歴を誇るアルバムの製作、コンサートツアーに映画出演、さらには(陳腐な言葉ではあるが)コンセプチュアルなパフォーマンスアートと幅広い。最近の活動では媒体としてのブレインダンスに高い関心を示しており、インタビューでも現実を記録することと形作っていくことの境界線について語っていた。もしかして、リズィー・ウィズィーは自らのBD製作を考えているのだろうか? これは期待するしかない! 彼女のクロームスキンに身を包み、1日だけでも過ごすことができるなら… ファンは大喜び間違いなしだ!

●長い帰路:ノーマッドの悲劇が生んだ余波

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…ペルー、ブラジル、チリの3国が、いわゆる“ノーマッド問題”に対する解決策を打ち出した。南アメリカ大陸におけるノーマッドクランの不法な国境間移動および(多くは一時的な)居留を防ぐべく、“出自の疑わしい越境者”に対して全ての国境を封鎖する計画が浮上している。学者や人権団体、さらには企業からも異議の声があがっているものの、今のところ彼らの声は無視され続けているようだ。一部の企業は、出稼ぎ労働者の流れを抑制することが経済低迷および予測のつかない社会不安に繋がるとの懸念を表明――また、ブラジルの現地労働力人口は、農業系企業が現在進行中の大規模新事業に必要とされる雇用規模に対して少なすぎると専門家は予測している。

南アメリカ諸政府はこれまでもノーマッドらに対して厳しい規制を敷いてきたが、今回推し進めている移住対策でさらなる追い打ちをかける形となった。いわゆる「長い帰路」問題については、次々と新たな情報が明るみに出ている。これは何十万という数のノーマッドが事前通告なしに職を失い、所持品(大部分は個人の持ち物で、会社の所有物ではない)を政府当局によって不法に押収されたことに端を発する。そもそも、彼らの多くはその職のために北アメリカから移住してきた者たちだった。それが失業と共に、元はアマゾン熱帯雨林であった危険なエリアから、1週間以内に自力で立ち退くことを余儀なくされたのだ。唯一のライフラインを突然断ち切られ、その場に留まる法的根拠も持たない多数の労働者たちは、結局、故郷を目指して途方もない距離を歩くことになった。

この集団大移動の結果、恐ろしい数の死者が出ていることが報告されている。「なぜそんなことに?」と問う声は未だに多い。こうした反ノーマッド政策および国境封鎖で、南アメリカ諸国や企業以外の誰が得をするというのだろうか? 多くは、オービタル・エアーのロビイストや、その他の月面コロニー関係者の関連を推測している。労働者の仕事を減らし、選択肢を奪えば、路頭に迷った彼らは、劣悪な労働環境で知られる地球低軌道や月面での仕事も受けざるを得なくなるというわけだ。

●メイルストロームの巣くう場所

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俺はトーテンタンツの真ん中で、アキレスM179eライフルを拳が白くなるほど強く握りしめ、立ち尽くしていた。銃はついさっき持たされたものだ。俺の顔や腕、合皮のジャケットは、たった今撃ち殺したサイコ野郎の血と、飛び散った脳みそにまみれている。仲介役の男が俺の肩を叩いた。緑色のモヒカン頭をした、30代のメイルストロームメンバーだ。

「やるじゃねえか、フィル」。奴は満足げにそう告げた。「腰抜けだと思ってたが、思い違いだったらしい。大したもんだ。それと、後始末の心配はしなくていい。死体が20個はねえと、メイルストロームのパーティーとは呼べねえからな!」

他のメイルストロームメンバーたちは俺をからかい続けたが、歪んだ声のトーンに変化を感じる。認められたという感触だ。モヒカン男はさらに、メイルストローム自慢の定番インプラントを俺につけてやると言った。幸いにも、つけられるのは例のオプティクス一式ではないとわかって承諾すると、奴らはますます俺を気に入ったようだった。

「そう簡単にメイルストロームの顔にしてやるかよ」と奴は笑う。「あのテックを入れるのは入団儀式の時だけだ。目玉をえぐり、皮膚を剥がす。麻酔なしでな。そいつに耐え抜けば、晴れてメンバー入りだ」。

雰囲気が落ち着いてきたのを見計らって、俺は噂の真相を尋ねてみた――本当に殺しの仕事を請け負ってるのか? モヒカン男は上機嫌に頷いた。

「もちろんよ! いい金になるし、仲間の士気を上げるのにもうってつけだからな。機械は感情に振り回されない。俺たちが目指してるのはその境地さ。殺しの仕事ってのは、捨てきれてない感情の残りかすを絞り出すのにちょうどいい。こないだも、ちょっとガキを殺ったぐらいで取り乱したフヌケ野郎がいて、せっかく俺が「おい、さっさと抑制BDでも見ろ。ボスに頭を吹っ飛ばされるぞ!」って忠告してやったのに、聞かねえから!」。

奴の話をあれこれ聞きながら、俺は気づいた。“楽しい”という感情は、奴らにとって排除すべき対象ではないようだ。そしてこう思わずにはいられなかった――機械は笑うことができるのか?

●ナイトシティ 働きたい企業ベスト5-2077年版

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さあ、今年もこの時期がやって来ました。働くならここ、というナイトシティの大企業・優良企業リストを大発表! 有給休暇を取れるのはどこ? 従業員のトラウマ・チーム保険料を支払ってくれる企業は? デイケアや子供向けボディガードサービスに割引が適用されるのは? それでは、ランキングをご覧ください!

1. アラサカ - 今年も1位に輝いたのは日本の巨大財閥。従業員には最新のサイバーウェア技術が提供され、忠実義務はたったの20年!

2. ミリテク - アメリカの超巨大軍事企業。従業員はミリテク製武器を最大50%引きで購入可能。それだけお買い得なら、クリスマスに家族全員にMk.31ヘビーマシンガンをプレゼントすることもできますね!

3. バイオテクニカ - 銅メダルはバイオテクニカ。1年に6日間(すごい!)もの有給休暇を取ることができます!

4. カン・タオ - 中国最大のテック・兵器メーカーでは、従業員にトラウマ・チームのゴールドメンバーシップが提供されます。50年の忠誠誓約期間中、医療保険費の心配は一切要りません!

5. ナイト・コープ - 経営規模や野心においては世界の強豪に後れを取る地元企業ですが、従業員への思いやりあふれる待遇では引けを取りません。1週間の最低労働時間を80時間に削減するという先日の発表により、トップ5入りを果たすことになりました! 家族との時間を大切にしたい方におすすめです!

●NCPD-治安崩壊の裏事情

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ここに記すのは、雄弁な語り口や巧みなメタファーに満ちた文章ではない。なぜなら私は物書きではないからだ。私は警官だ――いや、正確に言うと大量解雇で職を追われた元警官だ。

これを書き記すのは金や名誉のためではない。書くのは腹が立っているからだ。NCPDが崩壊するまで、黙っているつもりは毛頭ない。

まず先に言っておこう。わかっている。私たちは決して完璧ではなかった。ナイトシティが安全な街だったことなど一度もない。だが努力はしていた。本当だ。私たちは街の安全を守ろうと身を砕いた。必要な資金、人員、装備も揃わない中で、必死に働いていたのだ。

ところが市長は全くの無関心で、経費削減のことしか考えていなかった。ビスタ・デル・レイでサイバーサイコが暴れ、7人の仲間が殺された翌日、市長は記者会見でこんなことを言った。NCPDは「利益にならない」から、民営化をしてはどうか? そしてその日のうちに、NCPDは民間の手に渡った。全て市長の思惑通りだ。

新しい署長(元データ・ターム社販売局長)の関心事はただ一つ、金だ。奴は警官の半数を解雇し、巡回の数を減らし、街では違反切符を切ることだけに集中するよう命じた。

結果はすぐに出た。街の犯罪率は大幅に上昇し、路地には死体が積み重なり、通りは血で赤く染まった。その一方で、コーポ・プラザのスーツどもはシャンパンを開けてお祝いさ。なぜかって? 民間警備サービスの需要が、1000%跳ね上がったからだ。

●ノーライフ3--レビュー

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50年の時を経て、「ノーライフ」シリーズ第3弾にして最終章がついに明日リリース! 事前の情報通り、主人公に関して大きな変化はない。プレイヤーは引き続き、屈強で無口な科学者バロン・フレイメンチを操作する。今回のバロンは北極圏に向かい… いや、24時間後にはプレイできるのだからネタバレはやめておこう! アリスに支えられ、バロンがお馴染み武器のバールでエイリアンたちを滅多打ちにする――それさえわかっていれば十分だ!

●壁

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…カリフォルニアの南北はなぜ壁によって隔てられているのか。新合衆国の役人に聞けば、自由と安全を守るためだと答えるだろう。“北カリフォルニア”と聞いた時、人々の脳裏に浮かぶのは狡猾なノーマッドファミリーや不法移民、凶悪な犯罪者たちだ。税関で密輸を防ぐためにも、壁の存在は必要不可欠である。これはドラッグの密輸に限った話ではない。近ごろは、どこかの古い格納庫で組み立てられた違法サイバーウェアやバイオテクノロジー機器、そして軌道ステーションや月面コロニーから持ち込まれた高価な品なども増えている。

壁の必要性は理解できる。壁を越えるその時、プライバシー権を自ら放棄しなければならないのも仕方ない。通過する際は顔のスキャンと登録が必須だ。車は重装備ドローンに追跡され、その位置情報はリアルタイムに軌道上の即応防衛システムに送信される。それらが全て、越境者にテロリストが紛れているかもしれないという僅かな可能性のために行われているのだ。セキュリティゲートを抜けるほんの一瞬に見るミリテク(あるいは壁の警備任務を入札で勝ち取った他の企業)の存在は、そこがともすれば戦場と化す場所なのだということを改めて思い知らせてくれる。人々に街の平和と独立がいかに脆いものであるかを思い知らせること――それこそが壁の役割なのだ。ナイトシティ市民である私は、比較的頻繁に壁を目にしている。あの巨大なコンクリートのかたまり(他に書き表しようがない)があるおかげで、平和の対価を忘れずにいることができるのだ。それは果たして良いことなのか? 悪いことなのか? 答えはそれぞれが決めることだ。

●嘆願書の署名にご協力を!

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チラシ - 2021年4月23日

環境に深刻な被害をもたらしかねない新油田開発が、街中の抗議の声にも関わらず推し進められています!

この身勝手かつ違法な土地開発に反対の方は、嘆願書にご署名を!

私たちと一緒に環境を守りましょう!

あなたの参加が大きな力に!

バッドランズを荒らす犯罪行為に終止符を!

●新作ブレインダンス情報

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やあ、BDマニアのみんな! 新たなエモ・ラッシュを求めてウズウズしてる君に、新発売のフレッシュなBDをご紹介しよう。

『異物反応』
体は人の全て。それ以外に何もない。体はその人自身だが、精神が世界と関わりを持つための単なる道具だとも言える。しかし、その道具に生命としての意識が芽生えたら? もしも体が… その主を殺そうとしたら?
ルーク・ポーラー出演の本作は、スリラーのジャンルではありきたりとも言えるが、それでも十分楽しめる内容となっている。インプラントの反乱にまつわる恐怖は、海賊が義足をつけていた時代から存在していた(いや、それは言いすぎか)。おかげで映画、ブレインダンス、都市伝説に至るまで、似たようなテーマの話は山とある。しかしこの『異物反応』は、ジャンル的お約束を押さえつつも、新要素を適度に盛り込み、面白い作品に仕上がっている。そもそも、“意識を持った腕”の視点から世界を見るなんて、滅多に体験できることじゃない。

『マクスウェルズ・リハブ』
今シーズンはホラータイトルが目白押しだが、中でも傑出しているのがこちら。本作では名優マクスウェル・ラミレスがサイバーサイコシス発症寸前まで追い込まれ、そこから再生する道のりを体験させてくれる。「リハブ(更生)」というタイトルから前向きな展開を想像しがちだが、騙されてはいけない。病魔に襲われる恐怖、妻の苦しみ、異質なものと化してしまった世界への再帰。今シーズン絶対に逃せないBD体験だが、心臓の弱い方はご注意を。

『バッドランズの襲撃』
最後は比較的ライトな体験が味わえる一作。『バッドランズの襲撃』は2023年にその革新性で話題を呼んだ名作のリメイクだ。ご存じない方のために簡単に紹介すると、ゼータテク社のコンボイを狙ったノーマッドの奇襲攻撃に、ごく平凡な男が巻き込まれてしまうという筋書き。54年前の作品とは言え、近頃は結末を知らない方も多いと思うので、この先の展開は伏せておこう。作品のポイントは、ストーリーにリメイクならではの新しいひねりが加えられていること。オリジナル版のファンも初めて体験する人も、きっと同じように楽しめるはずだ。

●"危難の海"を襲う嵐

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軌道上で繰り広げられる政治闘争は、今や大人気のリアリティショーと化した。ただし、これは現実の出来事であり、そこで起きたことは地上の私たちに直接的な影響を与えるのである。最近大きな話題となったのは、アースラ・コレイラ襲撃事件だ。彼女は結局、下半身を全く動かせない体になってしまった。メディアは弟のヴァグナーのコメントを延々と流し続けるか、ヤラ・アヨアデが記者会見で着ていた服装の賛否を論じている。なお、ヤラはこの会見で、コレイラの家族がアースラの“事故”に関与していたとの噂を否定した。

「軌道上で起きたことは軌道上に留まる」などとよく言うが、昨今、これが危険なほどお気楽な考え方のように思えてきたのは私だけだろうか。

●アラサカ・タワーで何が起きたのか

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…2023年のアラサカ・タワー襲撃事件が仮にミリテクの仕業だったとして、しかも確たる証拠があるのだとしたら、なぜアラサカはミリテクに報復しないのだろうか?

使用された爆弾がミリテク製であったことに疑う余地はないが、それが彼らの犯行であるという証拠にはならない。正直に言って、お騒がせロッカーボーイのジョニー・シルヴァーハンドが犯人であるという説はどうも好きじゃない。そもそもシルヴァーハンドのことだってあまり好きじゃない。奴はうわっつらだけの偽物だ。大げさなハッタリをかますだけで、実際には何一つやり通せない(はっきり言ってやる。シルヴァーハンドにはそんなことをする度胸はなかった)。

よく考えてみるといい。企業を誰より憎んでるのはどんな連中か。

答えはもちろんノーマッドだ。20年代に大流行したBD「バッドランズの襲撃」を覚えてるか? ノーマッド集団がミリテクのコンボイを襲うやつだ。あれがリリースされたのはいつだと思う? そう。タワー襲撃の当日だ。これは偶然か? そうは思えない。

もちろん、シルヴァーハンドがカメオ出演してるのは知っている。そんなのはマーケティング戦略の一環だ。どこぞのサボテン野郎が撮ったBDなんて、客寄せパンダがいなければ売れるわけがない。しかしそれより興味を惹かれるのは、あの主演女優だ。BDはあんなにヒットしたっていうのに、どうして「バッドランズの襲撃」以外に出演作がない? あの襲撃事件の時、彼女はどこにいたんだ?

●RELIC-その革新性とは?

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長年に渡り、サイバネティクス、神経学、心理学の専門家たちは人間の意識とシリコンを融合させようとしてきた。しかしその努力は現在に至るまで実を結んでいない。人間の知能に匹敵し、あるいはそれを凌駕する人工知能の開発にこそ成功したが、人間のような“意識”を生み出すまでには至っていないのだ。よくできた会話ボットがせいぜいであり、人間の言動を模倣するだけのデジタルな存在に自我はない。

しかし今日、アラサカ社の専門家チームが画期的な技術を発表した。「Relic」と呼ばれる彼らの最新プロジェクトでは、クレジットチップ程度の大きさの媒体に人間の意識をコピーすることができ、そのチップを神経ポートに挿入すれば、使用者はデジタル化された人格コンストラクトの声を“聞き”、姿を“見る”ことができるというのだ。

残念ながら筆者は、この驚異的テクノロジーを個人的に調べる機会に恵まれていない。Relicへのアクセスはアラサカ社によって厳重に制限されており、プログラムへの参加はごく限られたテスターにしか許されていないのだ。そしてこのテスターというのは当然、世界有数の大金持ちや影響力を持つ者たちで構成されている。即ち、アラサカ社が手中に収めておきたい者たちだ。 これを読んでいる一般消費者は、Relicが大衆向けに流通することは当分ないと思っておいた方がいいだろう。

●転職を考えているなら、ネットウォッチへ!

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危険ネットランナーの特定、デーモンの駆除、アメリカのネット再建… これらはネットウォッチのスペシャルエージェントが日々行う任務のごく一部に過ぎません。デッキを失うぐらいなら目を失う方がマシだという方、メフィストフェレスの相手など朝飯前だという方は、我々と共に働きませんか?

ネットウォッチエージェントの仕事には次のようなものがあります:

Ø ネットのパブリックアクセスレベル全域の巡回
Ø ネットランナーによる違法行為の発見・根絶
Ø 危険な不良AIの捕獲
Ø 深層ネットにおける最古エリアの探索および脅威の排除
Ø ブラックウォールを越えようとする人間およびAIの取り締まり
Ø 公衆のための安全なネット空間を拡張する活動

ネットウォッチの働きによって、大勢の人々が恐ろしいデーモンの脅威に怯えることなく、承認済み検索エンジンや様々なネットサービスを自由に利用することができています。私たちは365日、24時間休むことなく、破損したデータ要塞の排除や、情報の保護、危険なサイバー犯罪者の逮捕に取り組んでいます。

我こそはという方は、今すぐご応募を。

●吸血鬼のプリンスが帰ってくる!

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モンスターハンターをハントせよ!

戦慄のダークアクションゲーム『ターボ・ドラキュラ』が新登場。プレイヤーが操るのは、血に飢えたドラキュラ… もっと正確に言うと、クロームの体に移植されたドラキュラのデジタルクローンだ! だが、そんな体でも血への渇望は尽きることがない。いにしえの血脈を受け継ぐ末裔たちの助けを借り、マンチェスター兄弟が率いるヘルシングコープ――遺伝子操作で生み出した人狼ゾンビを使い、世界征服を企んでいる組織に戦いを挑め。かつての友、ヴィアゴを蘇らせるべきか、自ら宿敵の姿に変身すべきか… ドラキュラは様々な場面で決断を迫られることになる。

洗練されたリアルタイム戦闘システムと自由度の高いストーリーが楽しめるシングルプレイでは、最高の没入感を味わうことが可能。一方マルチプレイでは、チューマと一緒に協力プレイを楽しめる。陰気なヴァーニーや金髪の人気キャラクター、ハーバートなど、複数のキャラクターが用意されているぞ。いずれのエンディングについてもネタバレはしないが(そう、エンディングは複数!)、ひとつだけ言わせてくれ… カーミラ・ルスベン=バトリー婦人は、100年のビデオゲーム史上、最も魅力的なキャラクターだ。

●モックス

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…聞く相手によって、単純にも複雑にもなる話だ。ジャニスにとっては両方だった。「モックスは生まれるべくして生まれた。味方も、私たちの代わりに正義を執行する存在もいなかった。だから自分たちでやるしかなかったの。」

モックスを構成するメンバーは、明日街から消えても気づかれないような人たちだ。セックスワーカー、文なしのアーティスト、目標のない反逆者、そして公平なチャンスを与えられなかった、安らぐ場を持たない者たち。現在のモックスは、リジーズ・バーの繁盛からも見て取れるように、ぐんぐんと力をつけている。リジーズはもはやナイトシティ随一のブレインダンスクラブと言っても過言ではない。企業社員、ギャング、ポップスター、そして地元の人々が、リラックスし、酒を飲み、極上のBDに浸るためにリジーズに集まる。ただし、ほとんどの客はクラブを所有し経営しているのがギャングであること、そしてモックスが店を仕切り、仲間たちの世話をしていることを知らない――かつて、伝説のリジーがそうしたように。

こんな話を知っているだろうか? 「リジーは昔、ここがただのストリップバーだった頃に働いてたの」とジャニスは誇らしげに説明してくれた。「彼女は女の子たちの面倒を見ていた。お金がちゃんともらえるように… そして殴られたりしないようにね。そんななか、とあるバカ男(編集者注: タイガークロウズのギャングメンバーのこと)が女の子と“楽しみ”すぎてるのを見て、リジーの堪忍袋の緒が切れたのよ。そいつのタマをぶち抜いてさ、血やゲロを掃除するのに2日かかったって聞いてる。もちろん、すぐにタイガークロウズにバレて、彼女は速攻で始末されたけどね。でも、彼女に何らかの形で世話になった人たちはたくさんいたから。みんなで団結して、戦った結果――(間)まあ… あとはもう知ってのとおり」

●レフト・ジャブ:ボクシング月刊誌

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カズオ・カノウ - 大阪から来た武士

ライトヘビー級の新星ファイター、カズオ・カノウの名は、ボクシング界のいたるところで話題を呼んでいる。プロの公式試合で連続20戦の不敗記録を更新し続けており、うち17試合はTKOで勝利している。
そんなカノウだが、一部でドーピング疑惑やヤクザとの繋がりが囁かれている。ナイトシティでのトレーニング中、彼のジムに日本からの“客人”がやって来たとの目撃証言があるが、彼らはその後、意識を失った状態でジムから運び出されたという。ここ最近の3試合では、カノウのあばら付近に大きな傷が見てとれた。地元のリパードクによれば、どう見ても盲腸の手術跡ではないとのことだ。
果たしてカノウは、ライトヘビー級世界チャンピオンの座を勝ち取れるのか? その答えは、マローンとヘルナンデスの再戦後に明らかになるだろう。

●救命ビジネス

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なぜこんなことになったのか? 私たちの社会はいつから、そしてなぜ、人間の命をぜいたく品として扱うようになったのか。

私の母は45歳で他界した。数十年あったはずの余生は、ごく一般的な肺炎によって奪い去られたのだ。最低ランクのプランでもいい――もし母がトラウマ・チームの契約者だったら、1時間もせずに治せたはずなのに。しかし母にはその金がなかった。母は一般医の診療を予約し、その日の5カ月前に息を引き取ったのだ…

民間保険制度は我々の社会に深く根付いている。トラウマ・チームの保険契約にかかる月額500ユーロドルという額は、2020年には既に妥当なものとして広く受け入れられていた。健康は保障されるものではなく、対価を払って手に入れるものなのだ。民間制度は完璧なものとは言えないかもしれないが、他に方法はないというのが一般的な考えだった。

大ウソだ。

太平洋の向こうのUSSRを見てみろ。高度な訓練を受けた医療技術者に精密なナノ手術システム、特化型抗体も静脈プローブも揃っている。冷却チャンバーを搭載した最新型AVによる緊急搬送? もちろん利用可能だ。では何が違うのか。彼らは道端や店、家の中で倒れた人々を見殺しにしたりしない。命がまるで企業の所有物であるかのように、人々に買わせようとしたりしない。

公的医療保険は非現実的な夢物語ではない。現実に存在するのだ。

一方、トラウマ・チームはその保険契約者たちを、ケアすべき患者候補であると同時に、販売可能な商品候補として見ている。彼らが人命を救うのは、そこに利益があるからに過ぎない。今日、命を救った患者は、明日、再び利用してくれる客だ。客が死亡すれば、今度は臓器やインプラントを売って儲けることができる。もちろん、目先の利益のために救急隊員が故意に顧客を殺すようなことがないよう、少額でしか販売できないよう規制されてはいるが。

あなたはこう思うかもしれない。そうした医療の“プロフェッショナル”たちも、ヒポクラテスの誓いに従っているだろう、と。

答えは言うまでもないだろう…

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