ラーメン探偵・真野事実幕間その1

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dangerousss3

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インタビュー・ウィズ・スズハラ


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その男は高みにいた。
戦いの舞台となる場所よりもはるか上空に、そして直立不動で眼下の喧噪を感じとっていた。

彼が動いたのはザ・キングオブトワイライト1回戦第一試合の決着がついたときであった。
モニター越しに確認した後、ゆっくりと彼は眼下にある標的に眼をやった。

我々は、彼を知っている。
空高く舞うVTOL(垂直離着機)の上、直立に立つその男の名を知っている。
その男の名は―

「第1試合の勝敗を確認した。
敗退者は速やかにXXX…問題ないこのまま業務に当たる。」

男は感情を感じさせぬ声で呟くとエンジン音を響かせるVTOLの機体から、
ゆらりと身を踊らし虚空へと踏み出したのだ。

その男の名はモリタ・イチロ―。またの名をダーク・シュゲイシャという。


――
そして時は僅かばかり遡る。

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【幕間SS】
”クロックタワーインフレイム・エピローグ”
         ~インタビュー・ウィズ・スズハラ~


(注意事項)
このエピソードは小説「飛行迷宮学園ダンゲロス」のトテモ重要どころかもしれないネタばれを含みます。
未読の方は実際危険、回避というか、そういってる時点で既読者にはもうオチが見え…(察し
貴方方は何も気づかない。そこは大人の対応が必要。イイネ。


†††


―都内、某所のラーメン屋―

時刻は正午を少し回ったお昼時。カウンターの席の前に一杯のラーメンがおかれた。
対象は女性の客だ。

かき入れ時にも関わらず、店に客はその一人のみ。閑散とした有様だった。
女性はこちらからは顔はうかがい知れないか、赤いスカーフに黒のスーツという後ろ姿。
その井出達からかなりスタイリッシュな性分であろうことが伺える。
TVではトーナメント・トワイライト第一試合「時計塔」のゴングが打ち鳴らされ、
対戦結果が表示されているところだった。女が感想を口に出す。

「ふむ、そういう結末になりましたか。丁度組織のアンプルが手元にあったので、
本家をまねてコピー&ペースト、混ぜ合わせて代理の人工魔人くんを作成してみたのですが、
なかなか上手くいかないものです。」

―いや逆に上手く嵌りすぎたというべきか、成長すれば面白いことになったんですが。
女は軽く肩をすくめる。
そのどこか人を喰ったような動きは先ほどまでTVに映っていた試合の男と被るところがあった。
雰囲気も、どことはいえないが似ている。

パリッ。箸を割る音。

ずるずる、そしてラーメンをすする音。
似た雰囲気?を喰ったような?ラーメン?
そうこの女性は画面に映るラーメン探偵と同類の、どこか同じ匂いを漂わせていたのだ。

そして今この場はラーメン屋と言う舞台設定である。
まさか、彼女もまたラーメン屋だと言うのか…!

ラーメンをすする音が止まる。
はぁと、謎の女性は一息おくと
「DA-MA-RASSHAI(何時までもパロネタ引っ張ってると殺しますよという意味の英語)」
地の文にくぎを刺しにきた。ア、ハイ。どーもスイマセン、コウケツ=サン。実際コワイ。
謎の女性は続ける。
「ん、ああシツレイ。わが社は組織ぐるみで”世界転覆屋”や”世界の敵”をこなしてまして、
僕はそこのトップセールスのような位置づけなんですよ。
今回の不幸な事件、そもそも発端はうちの会社に目高から招待状が来たところから始まりました。」

え、なんでこの人、いきなり自己紹介や解説し始めてるんですか。え、いいんですか
名探偵特典?しかも今さっきこっち干渉してきましたよね。この人。

「そうそれは極めて不幸な偶然の重なりから発生した悲劇。」

構わず続ける謎の女性。まず人差し指を一本立てる。

1:目高組織からヒール役としてか否か”組織”にも世界大会の招待状を送られてくる。
2:世界最強を決めるというこの世界大会に組織も当然、参加を前向きに検討したのだが
3:組織の主力戦士総がかりで行う期間イベントに運悪く期間がバッテング、参加を断念(注1
4:それで名探偵という特殊性故、単独行動が多い自分にお鉢がまわってきた(注2
5:自分は参加者名簿を一目見るなり『重要な懸念事項』を発見し放り出すことに決定(注3

後ろ向きのまま人さし指から一本づつ順番に指を立てていき最後で手をひらひらとやる。
「最後。なので組織の『代理』が必要だった。」

あとは調達だった。
彼女は希望崎学園に向かい適当な人材を発見・登用・虐殺。そして現在に至る。
三姉弟が予選もなく決勝に即出られたのも『ズズハラ機関の戦士(代理)』という位置づけが
あったからということなのだろうか。

ずるずる、ラーメンをすする音。

「しかし、義理で第一試合、最後まで見ましたが。興行的にはこれ大失敗、大空振りですね。
内実を知ってる僕達のような人間ならともかく
一般人にとっては単にしょっぱい試合以外の何物でもないでしょうから」

しょっぱい=つまらない という意味の業界用語だ。さり気なく衝撃の事実が明かされた瞬間であった。

「黒田くんやミツゴ君達はそれぞれいい仕事していました。
問題があるのは受け側の某探偵のほう。TV生で見てれば誰だって気がつきます。
、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、
彼が結局この試合1回も対戦相手を攻撃していないこと
相手にラーメン作って食べさせただけで試合を終わらせたことに。

しかも後半は温泉回でもないのに湯気で非常に試合が見ずらくなっているときている。
ラストの黒田くんの機転はそういう意味では非常によかったですね、あれはよい仕事(リカバー)でした。」

ハイそんな謎試合、見せられたら視聴者怒りますね。
女は慣れた手つきでスタイリッシュホンを嬲る。

「やはり。時計塔の試合に関して、ネットでかなり炎上していますネ。煽りがいがあります」

各方面からのクレーム

炎上。

……クロックタワー・炎上。

ここでまさかの題名回収である。なんと戯言遣い滅いた詐欺師的逃げ口上論法であることか。
近年まれにみるほどの酷いオチの付け方であった。

「しかも真野くん、―真実の配達人―とかカッコつけてますけど。
ある意味相当、事実ネジ曲げてますからね。
本来、光吾くん、精神的にも肉体的にも助からないはずでしたのに。無理やり存命にしてしまいました」

犯人の自滅や自殺といった展開は彼女の(もっといえばミステリーが)良く使う常套手段だ。
そして、その時点で真の黒幕である彼女へと繋がる糸が、論理能力によってぷつりと立ちきられる。
論理的にではない論理能力的にだ。

今回、彼女はミツゴ達に自らの『登場人物を殺し物語を改変する能力』のアンプルを与えた。
そして同時に偽名を名乗り、彼らに一つの方向性をも与えていた。

それは優しく諭して3匹の子ブタ達を崖下に転がるトロッコにのせる様な
僕と契約して魔法少女になってよと次々勧誘する淫獣のような
「世界の敵」であることを自覚した彼らが最終的には自らの能力「世界の敵の敵」を
発動し、自らを消し去り、自滅するような

そんな方向性を。

そんな方向性を、あの場、
誰かさんが適度に都合のいい真実を伝え、自らが敵意の矛先になることで
誰かさん達が毒素と瘴気のほとんどを引き受け、無言の覚悟で愛する者元から立ち去ることで
そして誰かさんが「ドンと来いコイツ引き受けるぜ」というほどの底抜けのお人好しであることで
捻じ曲げた。

あの場で行われていたのは三つ巴の戦いだけではなかったのだ。
ただ一人の少年の命を救うための、皆が皆、綱渡りめいた無言のバトンリレーを実施していたのだ。

「曲がりなりにも論理能力である僕の能力を”打ち破った”わけですから、寧ろ見事でしたと
称賛するべきでしょうか。奇跡と評してもいいレベルで」

蠍座の名探偵は冷たく微笑む
「なにせそもそも“La Amen”とは―――――――アレこない――少しタイ…」

“La Amen”とは――意味深な言葉の続きは、突如巻き起こった轟音にかき消された


― 轟 ―― 轟 ―― 轟 ―


店内に巻き起こる塵煙。上から降ってきた『ソレ』により。
遥か上空「VTOL」より飛来した『ソレ』は、見事、目標を捉え、屋上から内部一階まで
轟着陸。建物の天上に群青色めいた青空を提供していた。

まさに自らの一手(一足)によって。

―ダイナミック・お邪魔します―

「3姉弟の一回戦敗退を受け、事後処理にお邪魔しました。子の責は親が担うが道理。
潔く保護者同伴してもらおうか、スズハラの赤ネズミめ。」

男は空手の構えを取る。
そのネズミの尻尾を掴むのがどれほどのことなのか。ましては捕縛など。
その困難さを知ってか知らずか捕縛宣言を行う男。
男の名はモリタ・イチロ―、またの名をダーク・シュゲイシャ。

周囲は完全包囲、退路も封じてある
そして、この時点で彼と女性との間、即ちカウンター席の距離は僅か畳一枚半。
まさに袋のねずみだ。
だが謎の女性はこの状況下にあってまだ振りむかない。口を尖らせたような声でクレームを入れる。
「流石に子持ち扱いは酷い。」
「Foo!」

シュゲイシャが、その一枚半の間合いを詰めるのに要した時間は、僅か0.4秒。
20cmの鋼鉄板をも貫く電撃的な手刀が謎の女性を席毎、後ろ向きに貫通する。
背から胸にかけ飛び出るモリタの手。そして彼女のその胸は平坦であった。

その一撃に女性は大きくぐらつき、衝撃でじゅるりと音を立てて首が落ちる。
カランコロンと乾いた音を立てて転がる首。乾いた? イヤというか捕縛するのではかったのか。

「…クグツか」
パチパチパチ。
そう呟くモリタの呟きに、応えるようにカウンターに置かれたスタイリッシュホンから拍手が
聞こえてきた。端から彼女本人はここにはいなかったのだ。
恐らくは彼を引きつけ、その間に逃走を図るためのトラップなのだ。

「ムチャンコ・ツヲイ級手芸者である貴方とまともにやり合う気はないですよ。
ただ、この未来探偵(ボク)の尻尾を捕まえかけたことは事実ですし、ご褒美に
今回のスズハラ側の事情をお伝えしましょう。
上層に伝えれば貴方へのお咎めはないはずですよ。
ただ、お約束で暗号文は機ごと自動消滅しますから、解析するのならお早めに
それでは~」

BOMB!

女の形をした傀儡はその言葉を合図とするかのように紅色の薔薇の塊と化し、
バラの花弁は咽るほどの香りと共に火の粉のように舞い上がり
男を包み込む。

「…」
モリタは、いまだTVに映ったままの時計塔を一瞬だけ見やると携帯を掴み、
素早くラーメン屋を後にした。

†††

―時計塔1km付近の丘―

紅いシャツに黒のスーツの女は、『虐・殺』と裏にデザインされたスマホを
くるりと回すと華麗にポケットに仕舞いこんだ。

「登場人物は皆、殺すべし。イヤー、なんちゃって」

そう冗談めかして言い放つ”5人目”の探偵、未来探偵・紅蠍は軽やかに
時計塔へと至る道を歩み出す、いや、歩み出すはず予定だったのだが…

「…嘘でしょ。」
その足が信じがたいモノを見たように僅か数歩で止まった。彼女をしての驚愕。

「”彼”…こっちに一直線に向かって来てますよ。ひょとして、
あれだけの情報で、
今、僕がどこにいるのか―当たり付けてきましたか。地獄の猟犬ですか。本当に怖いヒトだ。

やれやれ、これでは時間も充分にとれないようなので。今回はこれにて勘弁を」

彼女はそういうと時計塔に自前の携帯を向けると包み込むようなアングルで一輪の薔薇を差し出した。
まるで炎に包まれているような時計塔がフレームに収まる。

僅かなシャッター音。
クロックタワー・イン・フレーム。

「それでは。今度こそ御機嫌よう。いやーここまで熱烈なアプローチは久しぶり。大変。大変。、」

女は帽子を押さえると言葉とは裏腹にどこか楽しそうに疾走しはじめた。
彼女の名は未来探偵・紅蠍。
十三の殺害属性の一つ「虐殺」を司る上級戦士。遅れてきた名探偵であり、諸悪の根源でもあり、
トムとジェリーでいえば明らかにジェリー側の存在である。







(ザ・キングオブトワイライト1回戦・第一試合終了結果追記)

「真犯人」未来探偵・紅蠍   (喰い逃げ成功。後、最終的にも喰い逃げ、ギリ成功)
「闇手芸者」モリタ・イチロー(信じがたいことにインタビュー失敗。)



(注釈)
注1:スズハラ恒例の『温泉旅行』のこと。世界の命運と測りにかけた結果、彼らは社内行事を優先した。
注2:彼女は団体行動・集団行動がまるで出来ない。実際2回に1回は社内行事をバックレル。
注3:探偵四天王問題のこと。探偵が既に3名エントリーしていたため、これはキャラ被りしかねない
  と逃げの一手を打った。「この状況でノコノコ(赤)でていくわけにはいけない。ノコノコ(赤)と(キリ」。