その他幕間その5

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dangerousss3

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姫将軍と偽名探偵のファントムルージュ感想戦

 ザ・キングオブトワイライト、緊急治療室。
 がらがらがら、と運び込まれるストレッチャーが二つ。
 【洗浄上映中】のランプが灯る。

「駄目です、FR映像が海馬から大脳全体にまで及んでいます! パターン赤(ルージュ)! 危険域です!」
「こまねさん! 意識はありますか! こまねさん!」
「あ、あ、ファ、ファントム……」
「……測定結果出ました! 冒涜単位――980pg(ピコ剛力)!?
 どうかしている、人間が一年間に摂取できる原作レイプ量の約一千倍です……!」
「魔人とはいえ、こんな子供になんてものを……!」
「早く中和しろ! 『ドラゴンボール~神と神~』の映像はまだか! この際だ、原作を尊重してるなら変態仮面でも構わん!
 ――おい、そちらの子はどうだ!」
「う、うぅぅ、アメ……」
「ハレルア・トップライトさん……冒涜単位278pg! FR深度は比較的軽度ですが、外傷が酷いです! 輸血を! 彼女の登録票はどこですか!」
「ワン・ターレン様が来るまで保たせろ! 医療班の誇りに掛けて、傷跡一つ残させるな!」
「イエス、ドクター!」


「すいません、急患です! 同じ症状です、エルフの元女騎士――」
「だめよぉ! もっと! もっと見せて! もっとわたしをドッキリテクスチャーをチェーンジェイルして大事な所にビックバンインパクトちょうだいいいいい!!」

「「「それは放っておけェ!!!」」」


◆       ◆


 ――数日後。
 ザ・キングオブトワイライト闘技場にほど近い大病院。その一室。

「あ~、やっほー、お姫さま~」

 銀髪の癖毛を揺らすこまねが、へにゃんとした笑みと共に、入ってきたハレルに小さく手を上げた。

「こんにちわ……こまね、さん」
「呼び捨てでいいってー。年も近いしね~」

 もぞもぞとベッドの中で上体を起こすこまね。まだ体は本調子じゃないのだろう。
 ――ハレルと彼女は、試合の中で共通の『呪い』に晒された。
 その治療過程で知り合った二人は、年齢が近いこともあり、それなりに親交を築いていた。
 今では、やや症状が軽いハレルがこまねの病室を訪ねるのが日課のようになっている。

「二回戦の進出者が決まったらしいね~」
「あ、うん」
「流石にそうそうたる面子だけど……アレに勝てるヒトはいるかなぁ?
 ……偽原、光義……あの『ファントムルージュ』に」
「……私も、サバンナの試合、見たけど……」

 ファントムルージュ。それが、彼女たちを襲った悪夢の名である。
 しかし、その存在は、一回戦が全て終わった現在でも、あまり知られてはいない。
 こまねを堕としたあの男の能力は「対戦相手を性狂いにする洗脳能力」と誤解されているし、
 ハレルが見させられたのは、彼女自身の眼球の中に投影された幻覚だ。

(『い、いやっ……。いやああぁぁぁ。もうだめぇ。もうだめだよぉぉ~~。死ぬぅ!死ぬじゃぅぅ~~~^!』)
「う」
「あ……あはは~。これは、お恥ずかしいね~」

 ハレルは慌てて頭を振って、思い浮かんでしまった淫猥な映像を脳裏から追い出す。
 お前サバンナでも同じこと言えんの、とはよくも言ったものだ。
 あのおぞましい有様。自分が置かれた美術館は、アレに比べれば天国だとすら思えた……。

「実際……ひどかったよね~。ハレルちゃん、原作は読んでないんだよね~?」
「あ、……うん。……でも、分かるよ……お芝居くらいは、私の世界にもあったし」
『ところがどっこい……アメちゃんはね……知ってたんだな……原作……』

 けぷっ、と嗚咽のようなものが、ハレルが腰元に帯びた日本刀から漏れた。
 霊刀アメノハバキリ。ダンジョンでハレルに拾われる前に、既に千年以上生きていた彼女は、意外なほどに知識が広い。
 もっとも、今回はそれが仇となってしまったようだが。
 リハビリ課程を速やかにこなしたハレルが立って歩けるようになった現在でも、未だに元気がない。

「……え、そうなの?」「そうなんだ~?」
『まさか……あのメーサクをあそこまでゲスに出来る人がいるなんて……』
「でもノブナガは格好良かったけどね~」
『んー、まー、キャラクター目当てのファンサービスとしてはアリ……なのかな~?』
「うーん、どうせ良さを全部再現出来ないんなら、そのうちの一つに特化させて、あとは投げ捨てるってのも、選択としては十分アリだと思うよ~?」
『投げた先に地雷原と肥溜と有毒ガスでもたまってたってくらいのダメダメ具合じゃん……』
「確かに、取捨選択の結果じゃあないよね~。……ああ、『脚本』そのものを投げたってのはあるかもしれないけど~」
『あの脚本家、有名らしいねー? 魔人?』
「さあ、どーだろー?」
『もうちょい調べようカナー……ってあだだだだだ! ハレっち! いきなり何するのさ!』
「アメ。……ずるい。私、おいてきぼり」

 じとっとした目つきでかりかり鍔を引っ掻くハレルであった。
 また今度、読ませて貰おう。原作の方。精神空間にあるのだ。アメの読書遍歴(ほんだな)が。

『神聖なる霊刀の空間を漫喫代わり使わないでよネー!』
「マンキツ? アメが変な情報入れてるのが悪いんじゃない……」
『ギクゥッ! そ、それにしても、アレ専用の魔人までいるなんてね……大変だったね、こまっち』
「そうだね~。まあ、結果的には良かったんじゃないかな~。
 私の仕事はこの大会への『参加』だったし~。しばらくは療養するよー」

 そう言いながらも、探偵の性か、こまねは目ざとく動いていたりする。
 何せここは“目高機関御用達の病院”だ。無数の『危険な噂話』は、既に幾千のシャボンとなって収集されている。

「それに、なんとなくだけど、勝った方が酷い目に遭う気がするしね~」
「え?」
「なんでだろうね~?」

 首を傾げるハレアメこまね。その言葉の真意は誰にも分からないだろう。
 紅蓮寺工藤あたりなら分かるかもしれない。


◆       ◆


「そうそう、勝ったと言えば、あのチャラ男くんは、どうなの~? 仮に当たったとして、
 あの上映(うんめい)に、もう一度抗えると思う~?」
「…………わからないよ。私たちはファントムルージュ自体に勝ったわけじゃないし」

 黄樺地セニオ。チャラ男の王。
 彼が破ったのはファントムルージュではなく雨弓の能力であり、そこからはハレルとの共闘だ。
 それでも、二回戦の進出者を大方見ていると、彼が勝った理由も分かる気がした。

「でも……偽原、さん以外も、二回戦に行った人たちは、違う。魔人とか、そういう区別じゃなくて」
「それには……同意かな~……。みんな、どこかしらね~……」

 試合データを照覧したのはこまねも同じだ。そして彼女の洞察力ならば、嫌でも分かる。
 『一般的な魔人』の範疇に収まっているのは、せいぜいが二、三人だろう。
 あの、忌まわしきサバンナの緋い幻影を初めとして、精神か肉体かに異形を抱えた者ばかりだ。
 あるいは、ハレルやこまねが、一回戦で負けたことは幸運だったと思えるほどの地獄が、きっとこの先に待っている。

「ま、私は外から楽しませて貰うとするかな~。シャボン玉みたいに~」
「ん?」

 ううん、と首をゆらりと振る、こまね。
 ふと、手を叩いて、傍らに積み上げられたディスクの数々を漁る。
 リモコンを操作して、病室に相応しくない大きなスクリーンを下ろす。

「あ、そうだ、リハビリ用の映画、何か見る~?」
「……るろうにケンシン! 実写版! 見たい!」
『またソレ!? アメちゃんもう飽きたよ! ベッドで寝てた頃から何百回見たと思ってるの!?』
「全部、覚える。あとで原作も読ませて。中で」
『えええ~! 漫画は一日一時間までにしようよ~!』
「……今さら聞くのもアレだけど~、なんで異世界の霊刀が、こっちの世界の情報にそんな詳しいのかな~?」


【姫将軍と偽名探偵のファントムルージュ感想戦】fin.







 ガラッ(扉が開く音)

「うふふふふふふ、そんなくだらないものよりも、こっちの原作レイプ作品を観ましょう!
 実写版デビルマン!! 実写版ドラゴンボール!! ビブリア古書堂の事件手帖ドラマ版!!
 アイドルマスターゼノグラシア……に関しては諸説あるので今回はおいておくわ!!
 ……ああ、はぁぁん! だめえ! わたし原作と一緒にレイプされちゃうう!! 大事な所に剛力ねじ込まれちゃうのぉ!! すごひいいいいいい!!」

「いやああああ!! 助け、助けて、ハレルちゃん助けてぇえぇ!! あああああだめ!! だめぇぅ!! だめだよぅ~~~!! こわい、死ぬじゃう~~!!」
「うん、大丈夫、大丈夫だからね、こまねちゃん! 気をしっかり持って!
 ――アメ、行くぞォ!!(CV:姫将軍ただし姫:将軍=1:9比)」
「がってんしょうちのすけェ!! 吹き飛べゴラァ!!」

「いやーん、まいっちんぐぅぅぅぅぅぅ……(ドップラー効果)」

 なお、おいはぎの曲刀の効果もあり、ハレルはゾルテリアに特攻である。


こまね「うう、いやだ、いやだよぅ、ファントムいやあ、エルフこわい、エルフェンルージュには勝てないよぉ……ハレルぢゃあん……」
ハレル「うん、だいじょうぶ、だいじょうぶだからね、ファントム怖かったよね、わたしがいるからね……」

 ……こまねがエルフェンルージュ恐怖症から回復するのに、ハレルは大きく貢献していた。


【ハレこまは俺達の百合色の幻影】 fin.

【まあ】【裏トナメもあるので】【細かい所はパラレルに】【しよう】【しよう】【しよう】
【勝手にお借りしたキャラクターの中の人、ごめんなさい】