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夢のスティグマ

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夢のスティグマ ◆3g7ttdMh3Q


森林で目覚めた青年の右腕には、蚯蚓がのた打ち回ったかのような刺青が彫られている。
それを見た青年はどこか安心したかのように息を吐き、次いで警戒のため周囲を見回した。
青年の名前はゼルダの伝説 夢を見る島DX――その姿はリンクのものである。
そして、彼はこの殺し合いでの優勝を狙っていた。
ゼルダの伝説 夢を見る島とは違い、ゼルダの伝説 夢を見る島 DXはバーチャルコンソールで配信されている、
故に移植は彼にとって大した報酬にはならない、リメイクこそが彼の望みなのだろう。

――駄目よ、もう寝る時間じゃない。
――さぁ、ゲームはまた明日。

――うん、また明日……

まるでフラッシュバックのように彼の脳内で映像が再生された。
ベッドに横たわる子どもとその母親、10時を回っても眠らない子どもを母親は優しく諌め、子どもは母親に従い、ゲームボーイカラーを片付ける。
その時に挿さっていたカセットはゼルダの伝説 夢を見る島DX。
それはゲームカセットが持ちえるはずのない、思い出とも言うべき記憶なのだろう。

そう、蚯蚓がのた打ち回ったかのような刺青、それこそが彼が本来持ち得ない思い出を持っている証である。
それは字であった、もう誰にも読めない下手くそな字で書かれた――彼の所有者の名前であったのだ。

スーパーゲームボーイと同じく、ゼルダの伝説 夢を見る島DXもまた、個のゲームカセットとしての記憶を持って、この会場へとやって来た。

「まだ夢は終わらない……」
彼が人間によって与えられたもの、それは執念であり、呪いであり、そして、夢である。
それが無ければ、ただのゼルダの伝説 夢を見る島DXであれば、彼にはかぜのさかなを目覚めさせたリンクのように、
例え全てのゲームカセットの未来を絶ってでも、この悪夢を終わらせる存在になっていた可能性があったかもしれない。

それでも、彼はこの殺し合いで――この悪夢の中で、やはり自身も悪夢として振る舞う道を選んだ。
そう、まるで彼のゲームのラスボス、シャドーであるかのように。

「まだ……」
図らずしも、彼の目から一筋の涙が零れた。
あるいは、己がリメイクされても、己の夢を達成することは出来ないかもしれない。
それでも、戦わずにはいれない。夢の名を冠するゲームである彼自身が夢に縛られているのだから。

「……ッ!」
彼にとって最初の相手となるべき存在は容易く見つかった。
そして、彼――とっとこハム太郎2もまた、その嗅覚で夢を見る島DXに気づいていたようだ。
身長の低いとっとこハム太郎2からは、夢を見る島DXを見上げるような形になる。
一歩、二歩、三歩、とっとこハム太郎2はゆっくりと夢を見る島DXとの距離を縮めていく、
何をするつもりだろうか。

「はむはー!」
何のつもりだろうか。
片手を上げ、大きな声で謎の言葉を言ったとっとこハム太郎2に夢を見る島DXは動揺を隠せない。
いや、動揺を隠せないのは、謎の言葉だけに原因があるのか、とっとこハム太郎2のその姿に、夢を見る島DXは動揺しているようにも思える。

「うちゃー」
壁は思ったよりも厚い、とっとこハム太郎はそう感じざるを得なかった。
当然のことであるが、謎の言葉とはハム語のことである。
しかし、別ゲームである夢を見る島DXにとって、はむはーが挨拶であることも認識されなかった様子である。
いや、もしかすれば何らかの暗黒残虐非道呪文であると思われた可能性もある。
挨拶はともかく、会話は人間の言語に比較的近い言葉を選んでいくしか無いだろう。
また、言葉とはそれこそ口に出すものだけではない。
とっとこハム太郎2はボディランゲージによって、殺し合いを精一杯表現してみせる。
「こまっち」
そして、とっとこハム太郎2は首を振り、己の左手と右手を握り合わせ、握手のような形を作った。
「あわせっち!」
その後、とっとこハム太郎2は精一杯の笑みを浮かべてみせた。
きっと気持ちは通じるだろう、そう信じて。

「……わかった」
これらの流れを理解したのだろうか、夢を見る島 DXが距離を詰め、とっとこハム太郎2の手をとった。

「協力しよう」
「うれぴっプル!がんばリン!」

こうして、とっとこハム太郎2と夢を見る島DXとの間に協力関係が生まれた。

とっとこハム太郎2は、夢を見る島DXが共に殺し合いを止めるための仲間であると、
そして、夢を見る島DXは、とっとこハム太郎2が殺し合いを有利に進めるために、協力者を欲しているのだと、そう誤解して。

(殺し合いは、困る、だから力を合わせよう。
成程、その子どもの体では人一人、それもゲームキャラクターの能力を持った人間を殺すとなるととてつもなく難しいだろう。だから、俺に協力を求めたか……良いだろう)
夢を見る島DXが受け取ったのは、この程度の情報量である。ならば、自分の都合の良い方に解釈しても無理は無い。

何より、目の前の男児は――彼の記憶の中に残る少年の姿にどことなく似ているように思えて。
故に、夢を見る島DXとしても、手を出すのが躊躇われた。
その結果として歪な協力関係が生まれたのである。

「がんばリン!がんばリン!」
「ああ」

――頑張れ!頑張れリンク!あぁっ!また死んだ……

とっとこハム太郎2の言葉に、夢を見る島DXは再びフラッシュバックを起こす。

――今度こそ、今度こそ!まただ……
――また死んじゃった……

――ダメだ、迷っちゃった……
――やっぱり、このゲーム僕にはクリア出来ないや……

そんなことはない!君は風のさかなの眠りを覚ますところまでいったじゃないか!
ゲームカセットである、ゼルダの伝説 夢を見る島DXにそんな台詞を言うことは出来ない、それでも、少年に言ってやりたかった。
ゲームクリアまでもう少しだから、頑張ってくれと。

それでも、少年は最終ダンジョンをクリアできなかった。
ラスボスに挑むことは出来なかった。
夢を見る島はいつまでも、永遠に、夢を見たままになってしまった。

それでも何時か、それでも何時か、きっと夢が覚める日が来る。
そう、ゼルダの伝説 夢を見る島DXは信じて引き出しの中で待っていた。

――俺、野球やるよ
――彼女、出来たっ!
――大学受かった
――父さん、母さん、今までありがとう

――俺、結婚する

ゲームカセットが夢を見ている間、少年は現実の中でどんどんと成長していった。
小学生、中学生、高校生、大学生、就職、結婚。
いつかまた――そんな夢は圧倒的な現実の前に薄れていく、

――そうだよな、大人になったら夢を見てる時間なんて無いよな
――しょうがないよな……しょうがない…………しょうがない…………………

少年が少年だった頃は、それでも、もしかしたら、と引き出しが開く度に、期待を込めて少年を見上げていた。
けれど、少年が大人になって、もう引き出しが開くことはない。
少年の頃の汚い字を、ゼルダの伝説 夢を見る島DXに書かれた名前が誰のものなのか、少年だった少年はもう読めない。
二度と明けない引き出しの夜の中、永遠に覚めることのない夢を見る島を現実だと思い込んで、夢を見る島DXは諦めようとしていた。

そして、夢を見る島DXはこの会場に辿り着き、夢を――見てしまった。

バーチャルコンソールはテレビCMが行われない、だがリメイク新作ならば、CMが放送されるだろう。
もう一度、少年が自分のことを思い出してくれるかもしれない。
いや、思いだしてくれなくて良い、リメイクを買ってくれるかもしれない。と。

夢を、見てしまった。

きっと、そうなる。
そうなってくれる。

夢を見てしまった。

俺の夢は終わってくれる。

夢を見てしまった。



ゼルダの伝説 夢を見る島DXもとっとこハム太郎2も歩く。

夢を見て、歩く。








【E-2 森】

【とっとこハム太郎2】
【状態】健康
【装備】なし
【道具】支給品一式、ハム語辞書@とっとこハム太郎2
【思考】
1:ゼルダの伝説 夢を見る島DXと共に仲間を探すために街を目指す
※外見は5歳くらいの男の子です
※とっとこハム太郎2内で出てきたハム語以外の言葉をしゃべることができません
※ゼルダの伝説 夢を見る島DXを共に殺し合いを止める仲間だと思い込んでいます

【ゼルダの伝説 夢を見る島DX】
【状態】健康
【装備】なし
【道具】支給品一式、不明支給品
【思考】
1:夢を終わらせる
※外見はゼルダの伝説 夢を見る島DXのリンクです
※とっとこハム太郎2を共に殺し合いに乗る協力者だと思い込んでいます


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