休息
外ではサイレンが鳴っている。
建物達の外観は、見ただけで異変が起きている事がわかる変貌を遂げていた。
そんな中に、人の気配のする建物が1つ。
「現実的で残酷な話と、楽しい自己紹介。圭一、お前どっちがいい?」
新藤は席に付くなりこう切り出した。
現在彼等はバブルヘッドナースの群れから逃れ、近くのカフェで一休みしているのだった。
アレ等に見つかる訳にはいかなかったため、適当に椅子を持って厨房に移動した次第である。
(この状況での情報収集は必要不可欠よ、彼らから話を聞きましょうミク)
霊体であるヨーコ・スズキが口を出す。
傍目から見ると異様だが雛咲深紅にとっては普通な事だ。
「あ…あの…新藤さん…達の事、教えてもらえないでしょうか、その…。」
「あぁ?俺はお前には聞いてねぇぞ。俺はまだ、お前を信用した訳じゃねぇからな。」
「……。」
妙な気配もするしな。
新藤誠は心の中でそう付け加える。
霊感があったり見えたりする訳ではないが、それなりに存在を感じることのできる新藤は深紅に対して少なからず不信感を持っていた。
「やめようぜ新藤さん、雛咲さん怖がってるじゃないですか。」
圭一が止めに入る。
何故か一人が周囲から攻め立てられる光景を、前にも見た気がしていても立ってもいられなかったのだ。
年下に気遣われるのも情けない話なのだが、新藤の見ただけで人を殺せる様な睨みに対して引っ込み思案な深紅がここまで話せたのはかなり頑張っている方だ。
「で、結局どっちにするんだ?」
「…雛咲さんもこう言ってるし、自己紹介からにしませんか。」
「へっ、そうかよ…。」
多少ぎすぎすしながらも自己紹介は始まった。
圭一は過去の経験から話したくない事は話さず、主にいつもの部活の事を面白おかしく話した。
口先の魔術師を自称するだけはあり、先程までとは打って変わった明るいムードを作り出すことに成功した。
しかし新藤の胸中は深紅や圭一とは異なる盛り上がりを見せていた。
「へぇ、トラップマスター…ね。強いのか?その北条って奴はよ。」
意外にも新藤が最も興味を持ったのは沙都子についてだった。
新藤にとって他の4人は自身の所属する『殺人クラブ』のメンバーとほとんど変わらないように感じた。
密かに漁夫の利を狙う奴なら福沢や荒井がいる。
恐ろしくポテンシャルを秘めた女なら岩下がそうだろう。
リーダーシップで日野に勝てる奴なぞ思い浮かばない。
しかしトラップ使いなんてものは聞いた事も見た事も無い、全くの未知数。
小学生とはいえ大人でも引っ掛かるトラップを使う相手。
一度戦ってみたい。
新藤はそう感じた。
「ああ、強いぜ沙都子は。きっと軍隊だって相手できるんじゃないかって位にな。」
「あはは、そうか。なら俺も一度会ってみたいもんだな。」
『殺ってみたいもんだな』
とは、流石に言わなかった。
さっきも圭一が居なければ確実に死んでいた所だ。
まさかこの状況ですすんで孤立を選ぶ奴などいまい。
一方、圭一は『ロリコンか?』
と思ったがそれは口には出さず、胸の奥にしまうことにした。
次は深紅の番だった。
彼女は氷室邸での事は口には出さなかった。
さすがに会ったばかりの人を信用することは出来なかったのだ。
その代わりこの地に来て会った人、その目的を引き継いだ事を話した。
「で、その薬品ってのは何に効くんだよ?」
「えっと、それは…え?………そんな!!」
深紅はヨーコにT-ウィルスの概要を聞かされ、この薬は人間が化け物にならないために必要な物だと分かり驚愕する。
そして完成しなければ自分がゾンビと化す事も…。
端から見れば突然うろたえ始めたように見えるだろう。
圭一が声を掛けても
「大丈夫、大丈夫ですから。」
の一点張りである。
そんな中放送が始まった。
チラシで大体の事を知らされている新藤と違い、二人は大いに驚く。
「なっ…なんだよこれ…!今の放送、最後の問題ってもしかして…。」
「…ヨーコさん。私、どうしたら…。」
「はっ、俺が言う前に、なんだかよく分からねぇ奴に言われちまったな。」
新藤はチラシを出し二人の中央に置く。
「これがこの町のルールなんだそうだ。ま、よく読んどく事だな。」
二人はチラシに目を落とし放送の信憑性を確かめる。
「なんでこんな、クソっ!」
「……そんなっ!」
新藤は険しい表情でポケットから何かを取り出し、ヒラヒラと空中に泳がせる。それは地図だった。
「さっき見つけたこの地図にも同じ事が書いてあった。だがそんなことは正直どうでもいい。」
「どうでもいい?それはどういう…。」
「問題は、今の放送で確実に殺り始める奴らがここに来てるってことさ。裏を見てみろ。」
呆気にとられながらも置かれた地図の裏を見ると名簿のようなものが見てとれた。
『呼ばれし者』という名目で連なる名前の中には圭一や深紅の見覚えのある人物もいた。
新藤は休まず続ける。
「さて、そういう訳で足手纏いはできるだけ減らしたいからな。お前、覚悟がないならここに残れ。」
それは深紅に対して途方もなく辛辣な一言だった。
「待ってくれ新藤さん!何もそこまで言うこと無いだろ!?三人で一緒に…。」
「うるせぇ、緊急事態なんだよ。こいつ等と闘うってことは、命を懸けなきゃいけねぇって事なのさ。」
もちろん新藤に部員同士で争うつもりなど毛頭無い(もちろん相手から向かってきたら別だが)、つまるところ深紅を試しているのだ。
圭一がどう新藤を説得したものかと考えていると、その横で立ち上がり声をあげた者がいた。
その顔はかつて兄を救おうと苦心した時のような、覚悟を決めた顔だった。
「お願いします、この薬は…ここに書いてある全ての人に必要な物かもしれないんです。協力してください!」
その鬼気迫る表情に、新藤も少し見直したような素振りを見せる。
「へぇ…。思ったより根性あるじゃねぇか、……悪かったな、置いてく云々は冗談だ。薬については考えといてやるよ。」
こいつらが危険なのは冗談じゃないがなと念を押し、話を進める。
「さて、闇雲に動き回ってもしょうがねぇからよ、トランプでもやりながら気楽に行き先を決めようぜ。」
ポケットからさっきどさくさに紛れてカフェのカウンターから取ったトランプを取り出す。
しかし地図といいトランプといいさっきから手癖の悪い事この上ない。拾えるものは何でも拾う主義だとでもいうのだろうか?
トランプを見た深紅は小さい悲鳴をあげる。
「それ……!何だか、嫌な感じが…。」
その様子を見てニヤリとする。
ちょうど次の七不思議の集会ルールで狩る時のために用意してたネタがカード絡みだった事を思い出したからだ。
丁寧にシャッフルをしながら語り出す。
「このトランプは曰く付きなのさ。これのジョーカーは男の顔だけどよ…ま、やりながら話してやるよ。学校であった怖い話を……。」
【D-6バー/一日目夜】
【新堂誠@学校であった恐い話】
[状態]銃撃による軽症、殺人クラブ部員
[装備]ボロボロの木製バット
[道具]学生証、ギャンブル・トランプ(男)、地図、その他
[思考・状況]
基本行動方針:殺人クラブメンバーとして化物を殺す
1:目的地を決めて少し休む
2:それにしても名簿の人数増えてねぇか?
3:ひとまずこの状況を楽しむ
4:他に殺人クラブメンバーがいれば合流して一緒に殺しまくる(化け物を)
【前原圭一@ひぐらしのなく頃に】
[状態]銃撃による軽症、赤い炎のような強い意思、L1
[装備]悟史のバット
[道具]特に無し
[思考・状況]
基本行動方針:部活メンバーを探しだし安全を確保する
1:目的地を決める
2:新藤さんとこの5人の間に何が……
3:やっぱりみんなここに来てたのか!
4:部活メンバーがいれば連携して事態を解決する
【雛咲深紅@零~zero~】
[状態]T-ウィルス感染、右腕に軽い裂傷
[装備]アリッサのスタンガン@バイオハザードアウトブレイク(使用可能回数7/8)
[道具]携帯ライト、ヨーコのリュックサック@バイオハザードアウトブレイク
[思考・状況]
基本行動方針:ヨーコの意思を引き継ぐ
1:あのトランプはいったい…
2:ヨーコから意見を聞き目的地を決める
3:ヨーコさんの仲間は皆死んでしまったの?それとも…
【ギャンブル・トランプ@学校であった怖い話】
外見は普通のトランプだが、カード背面のイラスト部分が半分人間半分骸骨の絵柄になっている。
男女対になっており、分岐によって効果が変わるがこれは『骨董品屋』で買った使っても『特に実力の変わらなかった』時のトランプとしてください。
その際のトランプの効果は女の方は『幸運を呼び込む』
男の方は『単体では普通のトランプだが、女の方と一緒に持つとこれまでトランプで得た幸運をそれ相応の不幸をもって支払わなければならない』
というものです。