Doppelganger




思えば、私の人生は災難続きだったような気がする。

長い黒髪が完全に溶け込んでしまう暗闇の中、ブーツの足音を響かせながら、ジェニファー・シンプソンはこれまでの人生を振り返ってふとそう思った。
幼い頃に両親が他界し、人生のほとんどを孤児院で過ごし、それでも先生曰く“とても良い所”らしい家に引き取られると、そこで体験したのは幸せな家庭などではなく、友人たちの凄惨な死、恩師の裏切り、怪物との遭遇。
たった一人で地獄から脱出し、ヘレンに引き取られてようやく平和な暮らしができると安心していたら、またしても怪物がそれをぶち壊した。
それでも、周りの人々の協力で怪物を次元の彼方に追放し、やっと恐怖から開放されたと思っていたのに――

――今度は、いきなり見たことのない街に迷い込んでしまった。
なぜ現実というものは、こうも私に休息を与えてくれないのだろうか。


「Tsukasa of Jilldoll…変わった名前ね」

暗闇に唯一彩りを添えるのは、先ほど出会ったシェパード“ツカサ”のみ。
彼女(どうやらメスのようだ)のドッグタグを確認しながら、ジェニファーは繰り返しその名前を呟き、硬い毛皮を撫でた。
しかしそれもつかの間、ツカサはすぐジェニファーの手から離れ、何かを探すようにあちこちに鼻を寄せる。

「あ、待って!」

ツカサのお尻を追いかけながら、ジェニファーは暗闇を迷走する。
来たばかりの時は霧に包まれていた街は、ついさっき、背筋が凍るような不愉快極まるサイレンと共に、ブラインドをさっと下ろすような早さで夜になってしまった。
暗闇の中は腐った血肉や錆びた鉄の臭いが充満し、否が応にもあの悪夢に彩られた屋敷を彷彿とさせ、ジェニファーは思わず身震いした。

一体ここはどうなっているのだろう。
もしや、あのおぞましい“怪物”が再びジェニファーに影響を及ぼしているのではないかという恐怖が浮かんだが、もしそうならとっくの昔に襲われていてもおかしくないだろうと思い直す。
いや、そもそもアレはジェニファーが“扉の向こう”に追放したのだ。ここにいるはずがない。
ジェニファーは鞄をぎゅっと胸に抱え込み、頭を左右に振って大きなハサミを持った小男のビジョンを頭の隅に追いやり、改めてツカサを見つめた。


「ねえ、何か探してるの?」

当然ながらツカサから返事はない。彼女はひたすら鼻をせわしなくふんふんいわせながら、暗闇を突き進んでいく。
彼女が探しているものはだいたい検討がつく。飼い主だ。
立派な体格と躾の行き届いた様子から、飼い主との関係が窺い知れる。彼女をとても可愛がっているはずである。
そして彼女もまた、家に帰って主人に頭を撫でてもらいたいに違いない。

ぼんやりとそんなことを考えていると、ツカサの足がぴたりと止まった。

「どうしたの?」

すぐ追いついたジェニファーは、ツカサが真っ直ぐ見据えている暗闇の奥に目をやったが、何も見えない。
代わりに音が聞こえた。多分足音だ。ゆっくりと慎重な足取りで、遠くの方を歩いている。
次第にそれははっきりと聞こえてくるようになり、暗闇の中に人影のようなものが蠢くのがジェニファーの双眸に映った。
人間がいることに安堵したジェニファーとは対照的に、ツカサが鼻にしわを寄せて唸る。彼女はこちらに向かってくる“何か”が敵であると判断したようである。

唸り続けるツカサを大丈夫よと宥め、ジェニファーは人影へ声をかけた。

「あの、すみません」

声をかけたジェニファーに気がついた人影が、踵を返して真っ直ぐこちらに向かってくる。
暗闇の中ではあるが、その人影はジェニファーとそう変わらない若者であることが見て取れた。恐らく同年代。

「ここはどこなんでしょうか?私、道に迷ってしまって…」

顔が判別できるくらいに近づくと、アジア系の少年であることが分かった。
白いカッターシャツに黒いスラックスを身につけたその姿は、さしずめどこかの学校に通う真面目な学生であろうか。
ただ、顔や衣服には黒っぽい汚れがべっとり付いており、あどけない顔立ちは人形のように無機質で、まるで生気が感じられない。
彫りの浅い、アジア系特有の童顔をさらに幼く見せる丸っこい目は白く濁っており、ジェニファーに一抹の不安を抱かせた。

「あの、大丈夫で…キャッ!?」

突然、少年がジェニファーに掴みかかった。
その力たるや、背格好はジェニファーとどっこいどっこいなのに、痛みすら感じるほどの握力である。冬服でなければ爪が皮膚に食い込んでいるところだ。
ツカサが矢のように飛び出して少年の太股に噛みつくが、少年はかけらほども痛がる様子もなく、大口を開けてジェニファーの喉笛に喰らいつこうとする。

「やっ、やめて!痛いっ、放して!!」

かつて殺人鬼の恐怖に怯えていた少女の生存本能に火が点いた。
噛まれる寸前に両腕で少年の体を突っぱね、その反動を利用して渾身のショルダータックルを見舞う。
威力のほどは期待できなかったが、ツカサのサポートもあって少年の華奢な体をぐらつかせる程度には役立った。
その僅かな隙を見逃さず、普段は頭痛の種でしかない辞書や参考書が詰まった鞄を、少年の頬っ面めがけてありったけの筋力でもって振り下ろす。
ジェニファーの絹を引き裂くような怒号と、砂袋を落とすような重々しい衝撃音が暗闇に木霊した。


思えば、私の人生は災難続きだったような気がする。

アップにした黒髪が完全に溶け込んでしまう暗闇の中、ブーツの足音を響かせながら、雛咲深紅はこれまでの人生を振り返ってふとそう思った。
幼い頃に両親が他界し、生まれ持った“力”のせいで他者に心を開くことができず、唯一の心の支えだった最愛の兄は、私を残して冥界の門を守る巫女と共にいなくなってしまった。
紆余曲折ののち、兄の友人の婚約者である女性の所で働かせてもらうことになったが、この気が狂いそうな喪失感と孤独感は一生拭い去れないであろう。
挙句の果てには、怪物が跋扈する見知らぬ街に迷い込み、じきに彼らの仲間入りを果たそうとしている――

「雛咲さん、大丈夫か?」

深紅がよっぽど悲壮感溢れる顔をしていたのか、横にいた前原圭一が心配そうに声をかけてきた。

「研究所まではまだ遠いぞ、しっかりしろよ」

続いて、先行する新堂誠が前を見据えたまま檄を飛ばす。
現実に引き戻された深紅はハッとして首を横に振り、問題ないことをアピールするために力強く「いえ、大丈夫です」と即答し、大丈夫だと繰り返し自分にも言い聞かせた。
しかしどれだけ自分を励まそうとも、普段ならどうとも思わない些細な内臓の動きだけでも思い出してしまう、己の体を蝕んでいるであろうウイルスの恐怖を忘れることは、到底難しかった。

――気をしっかり持って。とにかく研究所に急ぐの。

背後から囁くヨーコの励ましに、深紅は「分かってる、分かってる。私は大丈夫…」と心の中で呟くしかなかった。

バーでの暇潰しを兼ねた話し合いの中、次の目的地を決定付けたのは、新堂が持っていた禍々しいトランプであった。
今後の行動方針を決める際、三人がそれぞれ別方向の意見を出したため、公平な手段で決を取ろうということになり、そこで白羽の矢が立ったのが、新堂のトランプというわけである。
まず真っ先に圭一が意気揚々と身を乗り出し、「よし、ここは公平にトランプで次の行き先を決めようぜ!」と提案した。
それを受けて新堂がにやりと口角をつり上げ、「面白い。ルールは俺が決めさせてもらうぜ。勝った奴に目的地の決定権をやる」と答える。
こんなやりとりを経て、三人は半刻ほどゲームに興じることとなった。

幸運にも、新堂が提案したゲームはババ抜きであった。
深紅は背後のヨーコの助けを借り、圭一にイカサマを疑われたり、新堂に脅迫まがいの心理戦を仕掛けられつつも、何とか勝利を勝ち取った。
ちなみにゲームの後、新堂の指摘で圭一がカードにさりげなく傷をつけて記憶していたことを知り、まったくもって油断ならない男だと感心させられたものである。
あのいわくありげなカードに傷などつけて、大丈夫なのかと心配でもあったが。

深紅はヨーコのアドバイスにより、北へ――ショッピングモールへ続く道を提案した。
というのも、この街の地図にはショッピングモールへ続く道の途中に研究所なる施設が記されており、もしかしたらT-ウイルスのワクチンを作る材料があるかもしれない、と彼女が囁いたからだ。
ヨーコの遺言であると言い置いてから、罪悪感を感じつつもウイルスについてはぼかしてそれを説明すると、新堂に「何だそれなら早く言え」と呆れられたが、結局二人はゲームに負けたことを理由に付き合ってくれることとなったのである。
深紅が恐縮しないようにさり気なく配慮してくれた二人に、深紅は心の底から感謝した。

不安と興奮であまり眠れなかったが、深紅達は交代で一時間ほど仮眠をとってからバーを出発した。
そこから北へ上った先にある、駅付近のT字路に差しかかったところで、前を歩いていた新堂が何か見つけたのか声を漏らした。

「…何だアレ」

深紅も新堂が指す方をじっと凝視してみると、暗闇であまりはっきりとは見えないが、何か長い物体がT字路のど真ん中につっ立っているのが見えた。

「…ひょっとして人間?」

隣にいる圭一の呟きが、冷水となって深紅の背筋を冷やした。
生死の確認――つまりゾンビか否かを確かめるかお互い視線を合わせて相談しあうが、このT字路を抜けないと研究所には行けず、どちらに転んでも謎の物体を間近に見るのは避けられないわけなので、結局謎の物体が立っているT字路まで進むことにした。

T字路に到着すると、謎の物体は圭一の呟き通り人間であることが判った。
暗闇で顔はよく見えないが、背格好は圭一とほぼ同じで、闇にぼんやりと浮かび上がる白いシャツの胸元は赤黒く染まっており、血色がすっかり失せて青ざめた白い腕が、ぴくぴくと小刻みに痙攣している。
まず間違いなくゾンビである。

新堂と圭一に物陰へ隠れるよう指示され、深紅は隠れるのに丁度良さそうな駅の出入口の壁に身を潜め、二人を見守る。
さすが何体ものクリーチャーと戦って来た二人だけあって、背後からバットで頭を打ち据えることによってあっけなく戦闘は終了した。
しかし、路上に横たわったゾンビを前に、圭一はまるでビデオデッキの一時停止ボタンを押したかのように硬直してしまった。
新堂はしゃがみ込んでゾンビをしげしげと観察しており、何やらただのゾンビではないことが感じ取れる。
とにかくもう危険はないようなので、深紅は出入口の影から出て二人のもとへ駆け寄った。

「お前、双子の兄弟とかいるか?」
「いないよ、俺一人っ子だし」
「なら、顔がそっくりな親戚とか知り合いは?」
「いないって。っていうか、こいつ何で着てる服まで同じなんだ!?」

声を荒げる圭一の後ろから、深紅も恐る恐る件のゾンビの顔を覗き込む。

「嘘っ!」

深紅が思わず声を上げてしまったので、新堂と圭一が同時に振り返って気まずそうにするが、それどころではない。
何せそのゾンビの顔ときたら、新堂が尋ねた通り圭一の生き別れの双子かと一瞬でも考えてしまうほど瓜二つだったのである。
さらに驚かされたのは、シャツや靴の色やデザインまでが全く同じであり、唯一違う点といえば、ゾンビの胸部に銃創と思しき穴が空いていることくらいだ。
今の圭一をまるっと引き写したような姿。この街ではこんなことすらあり得るのだろうか?

「圭一さんが二人…どういうことでしょうか?」
「生き別れの双子説とかどうだ?」
「…それじゃ服装まで同じにはならねえだろ」
「分からんぜ?別々に育った双子が食い物の好みから異性の趣味まで丸被りってケースは意外にあるもんだ」

げんなりする圭一とは裏腹に、新堂は楽しそうに見える。圭一そっくりのゾンビを殴り倒した後とは思えない気軽さである。
とにかくこれ以上ゾンビの前にいても収穫はなさそうなので、深紅達はT字路からさらに北へ向かおうと歩き出した――その時だった。

「駄目よツカサ、戻って!」

西の方から少女の声が耳に飛び込んできた。
反射的に深紅達が声のする方へ顔を向けると、犬らしきシルエットが物陰から伸びた手によって引き戻されるのが一瞬だけ見えた。

「誰だ!?」

新堂が刺々しい声を暗闇へぶつけるが、物陰に潜む者が動く気配はない。明らかにこちらを警戒している。
怯えている相手に向かってそれはまずかろうと、(恐らく)同じ女性である深紅が声をかけることになった。

「あ…あの、あなたもこの街に迷い込んでしまったんですか?」

返事はない。が、深紅はそのまま声をかけ続ける。

「私達もそうなんです。大丈夫です、あなたを攻撃したりはしません。ただお話がしたいだけなんです」

しばらくの沈黙を経て、物陰に潜む気配が動いた。姿を表したのは、最初に見た犬のシルエット。大型犬だ。
それに続いて、ロングヘアーのシルエットが躊躇うように物陰からこちらを覗き込むのが見えた。
犬のシルエットがこちらへ近付いて来たので、深紅がしゃがみ込んで招き入れると、やはり立派な毛並みのシェパードであると判った。
そしてシェパードが物陰の気配に向かってひと吠えすると、それを安全の合図と判断したのか、物陰に隠れていた人物がようやっと姿を表した。

物陰に隠れていたのは、立派な眉が印象的な、アメリカの白黒映画で微笑んでいそうな美貌の持ち主であった。
白人特有の零れ落ちそうな大きな瞳でじっと見つめられ、深紅はちょっと気恥ずかしさを感じてしまう。
そこへ、もう出てきても良いだろうと判断したらしく、新堂と圭一が深紅の後ろからひょっこり顔を出した。

「へえ、どんな奴かと思ったら外人か」
「すっげー!日本語通じるかな?ハロー!コンニチワー」

二人の登場は――正確には圭一の登場は――まだ早かったようだ。
女性は圭一の顔を見た途端に悪魔を見たような形相で悲鳴を上げ、あろうことか抱えていた分厚い鞄を振り下ろしたのである。

「うわ!?ま、待った!落ち着け、冷静になれ、話せば分かる!」

間一髪のところでそれを回避した圭一は、手の平を前に出して害意がないことをアピールするが、それでも女性の警戒は解かれない。
恐らく彼女を襲ったのは、先ほど新堂と圭一が叩きのめした、圭一そっくりのゾンビなのであろう。
それに気づいた深紅は、鞄を盾に「来ないで!」と叫びながら遠ざかろうとする女性を慌てて宥めにかかった。

「怖がらないで、彼は違うの!お願いだから落ち着いて!」
「近寄らないで!その人、さっきの変な人と同じ…」
「姿は同じだけど別人です。あなたも街を歩いていておかしいと思いませんでしたか?この街は普通じゃないんです。私達の常識では測り切れないことが当たり前のように起きるんです。だから落ち着いて、私達の話を聞いて下さい。お願いします…!」

深紅はなるべく声音を低く抑え、女性の神経を刺激しないよう慎重に語りかける。
それが功を奏したのか、女性は少しずつ落ち着きを取り戻し、圭一と深紅を交互に見て、そしてシェパードの様子を窺ってから、戸惑いつつも鞄の盾を下ろしてくれた。
自殺志願者の説得のような張り詰めた緊張から解放され、深紅は胸を撫で下ろした。


こうして新たな出会いを果たした四人と一匹は、ひとまず駅の出入口付近に陣取り、お互いについて自己紹介しあった。

「声をかけたらいきなり襲われて、慌ててあそこに隠れたんだけど、他にも化け物がいたからそのまま動けなくなって…本当に助かったわ、ありがとう」

これまでの経緯を語ったジェニファーは、自分を拾ってくれた三人に改めて感謝し、そして「あなたもね、ツカサ」と、隣で尻尾を揺らしているもう一人の命の恩人の頭を撫でた。
あのゾンビを振り切れたのも、ツカサがゾンビの足に食らいついて動きを鈍らせてくれたお陰なのだ。

なお、ジェニファーがゾンビに襲われていたのもあり、深紅が真っ先に怪我がないか確認したところ、幸い彼女の服は厚手の生地で仕立てられており、ウイルスに感染するような負傷は見受けられなかった。
自分と同じ運命を辿るかもしれない犠牲者が増えなかったことが分かり、深紅は全身からどっと力が抜けていくのを感じて深く溜め息を吐いた。

「それと、ごめんなさい。あなたの顔、さっきの…ゾンビ?っていうのかしら?それとそっくりだったから、つい…」
「ははは…気にすんなよ、アレは間違えてもしょうがないさ。っていうか、俺も正直ちょっとビビってるから」

ゾンビと勘違いして攻撃してしまったことを丁寧に詫びるジェニファーに、圭一は頬を気まずそうに掻きながら苦笑を返した。
先ほど確認したゾンビの顔を思い出した圭一は、腹の中にボウリングの玉を抱えたようなだるさを感じて溜め息を吐く。
青ざめた顔、胸にぽっかり空いた穴、そして白く濁った目――自分が死んだらああなるのかと思うと、生きた心地がしない。
自分そっくりの姿をしたゾンビという不気味極まる存在は、圭一の脳裏に決して小さくはない痼を作っていた。

「よォ圭一、お前マジで双子の兄弟とかいねえの?」

その圭一そっくりのゾンビの頭を容赦なく打ちのめした新堂は、まるでコーヒーブレイクで喋る世間話のような軽さで圭一に訪ねる。

「いない、はず、だけどなあ…」
「そうか。なら、ありゃあドッペルゲンガーって奴かもな」
「ドッペル…ゲンガー?」
「聞いたことねえか?ドッペルはドイツ語で“二重”、ゲンガーは“歩く者”。日本語では“自己像幻視”だったっけな」

怖がらせるつもりでわざとらしくニヤリと笑みを見せた新堂に、圭一が困ったような顔をした。

「あー…俺オカルトとかはよく知らないんだ」
「要するにもう一人の自分さ。まあ考えてもみろよ、映画でしかお目にかかれねえような化け物がうようよしてる街だぜ?自分のソックリさんがいたって不思議じゃねえ」

今まで数々のクリーチャーを撃破してきた新堂にとって、PC(プレイヤーキャラ)とそっくりな顔をしたクリーチャーには最初こそ驚いたが、これも街が生み出した怪異の一つと解釈し、早々に割り切っていた。
この切り替えの早さも、生き残るために必要な要素の一つであると新堂は考えている。

「お前のドッペルゲンガーがいたってことは、そのうち俺や雛咲のドッペルゲンガーとも会えるかもな」
「おいおい、新堂さんが二人なんて物騒にもほどがあるって。俺としてはオカルト談義よりか、ジェニファーと情報交換したが有益だと思うんだけどな?」
「…ま、そうだな」

うんざりと言いたげに肩を竦める圭一の提案には、新堂も反対はしなかった。面白い反応が得られない以上、これ以上は時間の無駄だ。
それに彼の言う通り、新たに現れたジェニファー・シンプソンという人間は興味深い存在である。
新たな第三者というのもあるが、日本人ではないにもかかわらずこうして新堂たちと自然に会話を交わしていることで、やはりこの街がただの“クリーチャーがうろつくゴーストタウン”などではないことが確信できたのだ。
彼女と共にいるシェパード――ツカサもなかなか面白そうだ。参加者名簿には載っていないため、恐らくゲームの“備品”もしくは“付属品”に近い存在ではないかと新堂は推測している。

その考えに至ったのは圭一も同じのようで、新堂に向けて自信ありげに口角を持ち上げて見せた。
根っこと言わず葉っぱと言わず、役に立ちそうな情報を掘れるだけ掘ってやろうじゃないか――というわけである。

「さてジェニファー、俺としてはもっと君について知りたいな。趣味とか家族構成とか異性の好みとか…」
「…圭一さん?」
「あ!いや、雛咲さん、これはほんの世間話だよ。そう、会話を円滑に進めるための!決してやましい気持ちとかじゃないんだ、だからその軽蔑に満ちた眼差しは…」

くすくすと二人のやりとりに微笑むジェニファー。勘弁しろよと言わんばかりに明後日の方を見る新堂。そして何を考えているのか解らない円な瞳で四人を見守るツカサ。
血と錆に塗れた悪夢の世界に流れる、儚いくらいにつかの間の、穏やかな空気であった。



【D-5駅前/一日目夜】

【新堂誠@学校であった恐い話】
[状態]銃撃による軽症、殺人クラブ部員
[装備]ボロボロの木製バット
[道具]学生証、ギャンブル・トランプ(男)、地図、その他
[思考・状況]
基本行動方針:殺人クラブメンバーとして化物を殺す
1:研究所へ向かう
2:ジェニファーから情報を得る
3:痴話喧嘩は他所でやれよ
4:他に殺人クラブメンバーがいれば合流して一緒に殺しまくる(化け物を)

【前原圭一@ひぐらしのなく頃に】
[状態]銃撃による軽症、赤い炎のような強い意思、L1
[装備]悟史のバット
[道具]特に無し
[思考・状況]
基本行動方針:部活メンバーを探しだし安全を確保する
1:研究所へ向かう
2:ジェニファーから情報を得る
3:雛咲さん、誤解だ!
4:部活メンバーがいれば連携して事態を解決する

【雛咲深紅@零~zero~】
[状態]T-ウィルス感染、右腕に軽い裂傷
[装備]アリッサのスタンガン@バイオハザードアウトブレイク(使用可能回数7/8)
[道具]携帯ライト、ヨーコのリュックサック@バイオハザードアウトブレイク
[思考・状況]
基本行動方針:ヨーコの意思を引き継ぐ
1:研究所へ向かう
2:ジェニファーから情報を得る
3:男の人って…
4:何だか兄さんが近くにいる気がする

【ジェニファー・シンプソン@クロックタワー2】
[状態]健康
[装備]私服
[道具]丈夫な手提げ鞄(分厚い参考書と辞書、筆記用具入り)
[思考・状況]
基本方針:ここが何処なのか知りたい
1:頼れそうな人がいて良かった!
2:三人から情報を得る
3:ここは普通の街ではないみたい…
4:ヘレン、心配してるかしら

<オマケ>
【ツカサ・オブ・ジルドール@SIREN2】
[状態]T-ウィルス感染
[装備]首輪
[道具]なし
[思考・状況]
基本方針:主人を探す
1:人間は守る
2:西の方から主人の匂いを感じる
3:ちょっと空腹
※ゾンビを噛んだため、T-ウイルスに感染したようです
※オマケなので、参加者として扱う必要はありません




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噛み合わない「世界」 時系列順・目次 Deadly Belief
咆哮 投下順・目次 彷徨える大罪
 
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休息 新堂誠 エレル――ELEL――
休息 前原圭一 エレル――ELEL――
休息 雛咲深紅 エレル――ELEL――
When? Where? Why? ジェニファー・シンプソン エレル――ELEL――

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最終更新:2012年06月22日 23:26