神が待ってる



殺す!

何としても、誰であろうと、どんな手段を使っても!

神のために!

殺す!皆殺しだ!

そうと決まればいつまでもこんな部屋にはいられない!


殺すの!参加者を見つけて!一人残らず!

神が待ってる!!

◆ ◇

八尾は部屋を飛び出す。
他の参加者を殺すために。
殺し尽くして、神を降臨させるために。

飛び出した。

飛び出した先は通路。

一面に大量のストレッチャーが放置されており全てのストレッチャーに布が張り付けられていて、どれも人型に膨らんでいる。
実際に見てみないとわからないが布の下には人間だったモノがあると推測される。
だが死体だとすれば赤い水や屍人の気配を感じないことや、いくらなんでも多すぎるストレッチャーが気になったがそれはそういうものなのだろうと割り切ることにした。
必要なのは行動であり、推理ではないのだ。

通路の片側は金網になっているがこれもただの行き止まり。興味の対象にはならない。

そして金網の反対側。

奇妙な程規則正しく並べられたストレッチャーの中には、一体のゾンビがいた。



囲われているゾンビなど倒す必要も逃げる必要もない。

外側から見れば囲いは容易に崩す事ができそうだが内側からでは難しいのか、それともゾンビにそれほどの知恵は無いのかその場から進むことができずに足踏みを続ける形になっていた。

足踏みのスピードを見るに全体的に動きは早くはない。
この程度の早さならば苦もなく倒すことができると踏んだが。

「時間の無駄ね…。」
時間などは腐る程あるが、神の降臨を目前にしてこの試練の…神への生け贄以外に構う必要など無い。

足踏みを続けるゾンビを無視して八尾は研究所からの脱出を試みた。


◆ ◇

結果から言えば八尾は元の通路に戻ってきた。
研究所からの脱出に失敗したのだ。

神降臨を望む強い意志。
それを叶えるチャンス。

その二つを胸に研究所の探索を開始した。
しかし八尾は文字通り壁に突き当たってしまった。

どの通路を進んでも最終的には行き止まりに辿り着いてしまう。

元々行き止まりになっている通路、瓦礫や器具などの障害物が積み重なって行き止まりを構成している通路。
通路は全てこのどちらに属していた。

後者は障害物をどかす事ができれば先に進むこともできたのだろうが、八尾にそのような腕力は無くおとなしくUターンするしかない。

一ヶ所壁ヒビが入っている箇所があったため骨を拾いそれで叩いてみたものの、少し崩れ中からいやに短い鉄の筒一本出てきただけであった。
どちらも一応回収したものの収穫があったとは言えない。

意気消沈した八尾が通路に戻ってきてもゾンビは足踏みを続けている。

研究所から出ることができなければ誰も殺せない。
殺すことができなければ神の降臨も叶わない。

念願が手の届くところにぶら下がっているのに、足踏みをするしかない現状。

目の前の間抜けなゾンビと同じ。
八尾の心に怒りが満ちる。


満ちて、溜まって。

八尾はゾンビを囲うストレッチャーを一つ掴み乱暴にはね除ける。
ストレッチャーの檻に穴ができるとゾンビは目標に向かって前進する。

八尾は身構え、ゾンビが近付くのを待つ。

溜めて、溜めて、溜めて。

射程圏内に入った瞬間。

爆発する。


先程拾った骨がゾンビの顔面にめり込む。


顔面を殴られたゾンビは仰向けに倒れ、そこに八尾が馬乗りになる。

そして。

殴る。殴る。殴る。殴る。殴る。
上から、横から、斜めから。
何度も何度も。
殴る。殴る。殴る。殴る。殴る。。殴る。殴る。殴る。殴る。殴る。殴る。殴る。殴る。殴る。殴る。殴る。殴る。殴る。殴る。殴る。殴る。殴る。殴る。殴る。殴る。

止まることなく振り続けられる骨は、ゾンビの崩れかけた肉、その下に残る骨、全てを砕いていく。

ゾンビも反撃を試みるものの、その緩慢な動きは全て潰されてしまう。
すぐにゾンビの動きは止まった。全身が潰された今動くことなど叶わない。

それでも八尾の攻撃は止まらない。
人の形を砕いていく白髪の老婆。

その姿は、誰かが見ていれば怪談として語り継がれたことだろう。

◆ ◇

ゾンビの上半身が飛び散り、跡形も無くなるとビン底でわずかに残った肉片を潰して腕を止める。
骨は殴っている途中に砕けてしまったため、研究室で拾った薄い黄色の液体の入ったビンに持ちかえていた。


よろよろと立ち上がり、目を閉じる。
再び目を開いたとき、その目は別人のそれであった。

閉じる前には神の降臨という希望に目を輝かせていたが、今の目にその輝きは無い。


上半身の砕け散ったゾンビの残骸。
そのゾンビの肉片を浴びている自分。

全てはが自分で行ったことだが人格が交代してしまっために事態が理解できなかった。

神の降臨という目的の無い人格が出ることにより非現実的な惨状に取り残される白髪の老婆。
肉片を全身に纏い目を丸くするその様は、また一つの怪談となれる姿であった。


【Dー3/研究所地下/一日目夜】


【八尾比沙子@SIREN】
[状態]半不死身、健康、人格が変わったことによる混乱、???
[装備]白ワイン(?)の入った瓶(サイレントヒル4)
[道具]ルールのチラシ、サイレンサー
[思考・状況]
基本行動方針:神が提示した『殺し合い』という『試練』を乗り越える。
1:???
2:???
3:???
※須田恭也が呼ばれている事を知りません



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最終更新:2012年06月23日 17:25