MachRider HighWaaaaay!!



あの巨人から付かず離れず移動し、置き去りにする。

アレがハーレーをぶつけても然程効かない硬くて強い存在だとしても、ガソリン残量や相手の速さから見て油断しなければ簡単な作業に思えた。

しかし、この時点ではシビルは考慮出来ていない。以前サイレントヒルに跋扈していた知恵の働かないモノ達と
若干といえど知性のある、本物の化け物の所業の違いを……


―――――――――――


「だけど、全く……とんだツーリングね!」

毒づきながらフィニー通りに入り、バイクの位置を追って来ていることを確認できるように調節しながらこれからの方針について考える。

(希望的観測だけど。後ろの奴より早い化け物が他にいなくて、克つこの先に大穴が無ければ…多分レビン通り経由でUターンすればもう追っては来れない、そこで一気に…!)

『GUUOOOOO!!』

しかし、思考は突然の破壊音に中断される。
バックミラーを確認するとどうやら巨人は道端に停めてあった車に飛び乗ったようだ、ボンネットはひしゃげフロントガラスは粉々である。

(……どういう事?)

思わずスピードを緩めてそれを見つめる。サイレントヒルの怪物達は姿形は違えど皆一様に獲物に対して一直線に向かって行く習性だったはず。シビルにはそこが疑問に思えた、だがその疑問は氷解する事となる。

『GHAAAAAAA!!』

グシャアッ!!と、音を発てながらボンネットを投げ捨て、運転席に両腕を突っ込み体を固定。背中から伸びる触手で地面の金網を引き寄せようと(つまり車を引きずり前へ進もうと)していた。

(まさかそんな………っ!動いた!!)

車にはサイドブレーキがかかっていないのか凄まじい力によって車輪は動いた。
更に悪いことに体を固定した時に機械が壊れたらしくエンジンは動きアクセルも押し潰され車本体も動き出している。


「ははっ……なるほど、動かしたければ乱暴に扱えばよかったワケね…」

呟きながら内心舌打ちをする。

もはや撒いて放置等とは言ってられない。周囲に順応する知能を持ち、数本の伸縮する触手は車を動かす程の力を発揮し、途方もないタフネスも持っている。きっと見過ごせば犠牲者はどんどんと増えていくだろう。
しかし今の武器でやれるのかは不安が残る。


アレはきっと此処の怪物じゃない。直感…警察官の勘でしかないけど、でもアレには『らしさ』が無い気がする、ダリアの言う『楽園』とやらの力を感じないような…。じゃあ何処から来たのかと聞かれたら、答える事はできないけど。
だからコレ以外の弾も使わなければ倒しきる事は無理だろう、かなり勿体無いし効くかどうか微妙だけど…最後の手段を使うしかない---

「アグラオフォテス入り弾薬装備グレネードランチャーHPカスタム……、力押ししかない坊やにはワインはまだ早すぎるかしら?」


まず一発目を叩き込むため背後の旅行者用バッグからランチャーを取りだし構え、器用にバランスを取りながら慎重に狙いを定める。が、その作業は目の前にいたゾンビ犬を轢いた衝撃によって失敗に終わった。
それだけならシビルの思考は人でなくてよかったとかチャンスを逃したとかだっただろう。

『DIEEEEEEEEEE!!』

体制を建て直しバックミラー越しに見たものは、車のライトによって映し出される弾き飛んだモノがエンジンがかかったことで使う必要の無くなった触手でズタズタに引き裂かれる光景だった。

そんなものを見ては幾ら覚悟してきた百戦錬磨の警官でも冷や汗が出る。動揺する。警戒を強め同時に犬を轢いたおかげで弱まった速度を元に戻すともう一度しっかりと思考を巡らす。

(………ここから町の端まで約3分強…いや、3分ちょうどぐらいかしら?この奴を狙えるギリギリの距離を維持しながらなら、多分2回連続で事故したら追い付かれるわね……ッ)


前にいた巨大な顔の化け物と血色の悪い老女をギリギリの所で避け、それが肉片と化す瞬間を狙って爆破する。赤い液体が掛かり、より不気味な様相になるも案の定暴君は健在であった。

(やっぱりこれで一撃って訳にはいかないか……)

『カァ゙ァーーー』

掠れた鳴き声と共に眼前に迫る怪鳥の爪の一撃に対し身を翻しサイドボックスに手を突っ込み炸裂弾を込め、一拍置いた後もう一発。それに対し上げられた蠢く触手を弾けさせる。

(それならそれでこの数年間何もしてこなかった訳じゃないことを見せてあげるわ!)

エンジンが唸りをあげ一人と一個体はサーキットを駆け抜ける―――


◇ ▲ ◇ ▲ ◇ ▲



(流石に…マズイかもしれない……
これまで放った17発、全弾命中した訳じゃないけど何発かは入った。その証拠にスーツも所々破けてきているのに。なのにまだ倒せてない……なんなのアレは、なんなのあの化け物は…)


撤退戦開始3分が経とうという頃シビルの心にだんだんと焦りが生まれ始めていた(対爆スーツに炸裂弾を撃っている訳だから当然といえば当然なのだが)。しかしその一方で彼女には一つの希望が見えていた。

(もうそろそろ道の終わりが見える。あの乗り方なら良くて一度しか曲がれないはず、私は二度曲がって不意を突き通りに入った所を後ろにまわって倒せばいい。
そこさえ越えれば後ろから一方的に攻撃出来る…少し気が引けるけど、アレを相手に卑怯とか騎士道精神どうこうは言ってられないもの、仕方ないわね。)

「見えたっ…!」

(曲がり角が…!アレの力が及ばなければそのまま崖に衝突して終わり。そうでなくても二度も曲がりきれるわけはないわ……きっと!)


期待と不安に苛まれながらシビルは一つ目の角を曲がった。対して暴君は電柱に掴まり回転、支柱がボキリとネジ切れる音と共に追跡を続行、ここまではシビルの計算通りの展開。後は歩道ギリギリで左に曲がれば作戦は完了する――――


「やったわ!これで………ッ!!そんな、曲がっ…」
『INNNNNVAITEEEEEED!!』


と、思われたが。
待っていたのはまたも電柱を利用され壁に激突する衝撃は反射的に出された触手によって半減、嘲笑うように咆哮する巨人に追われ続ける現実である。彼女は混乱と共に頭の内に様々な情報の波が渦を巻く中意識を手放さないようにするのが精一杯、ここで打開策を出せねば死ぬというのに。

(どうする、どうすれば?冷静に、クールになるのよシビル・ベネット。奴の機動力は尋常じゃない、そもそもあの曲がり方でよくパンクしないで……パンク?)

背後に迫る驚異を今一度よく見て、ようやく答えを導きだし銃を正しい方向へ向ける。暴君を直接狙うのではない、走る脚へと狙いを定めた―――

「これで地獄行きね、あの男のように」


射出された弾丸が車の内部に突き刺さる。これまでの攻防で焼けて墜ちた欠片と共に怪物は紅蓮の炎の中へと溶けて逝った。


◆ ▽ ▲ ◆ ▽ ▲


結果から言えばシビルは勝った。しかし彼女は暫らく動けなかった、動悸が高まって顔も青褪めている。それほどまでにさっき見た光景は衝撃だったのだ。

車を爆発させてまず目についたのは、炎上する車体から飛び出た既にかなりのダメージを与えていたのと爆破地点から遠くなかった為か頭と腕が消し飛んだ暴君の姿だった。足と胴が残っていようと最早再起不能は確実に思え、シビルは歓喜に震えていた。
その震えは次の瞬間戦慄の意味へ転じたのだが…。


「……襲いかかられてたら、確実にヤバかったわね」


許容範囲を遥かに越えるダメージを与えられたからなのか、それともこの異様な街の魔力の賜物なのかは定かではないが。タイラントの姿は通常の過程を超越した異形の形態変貌を遂げて君臨した。

しかし何故ソレを前にしてシビルは生きていられたのか。

それは幸いにも動き出す前にその重みと爆発のダメージで金網が外れ、前述の宣言通り過去のカウフマン同様タイラントは下へと墜ち、事なきを得たからであった。

先のカーチェイスを経て精神的疲労感はあったが。どれ程疲れていてもこの非常時、警察官に休みは無いとばかりに移動しようとすると、あるものが目に入った。

「人形と、これは手紙?」

タイラントの墜ちていった穴の前にさっきまでなかった筈の異物が置いてあった。前回の経験上こういった物には何かある、置かれていた手紙を広げ読み進めてみる。


“まさか君のような野蛮な人間に頼ることになるなんて、災難だな。まあいい、愛する彼女の為なら仕方のない事だ。ああヘザー、私の女神。私の恋人。それが今はとても不味い状況にある、あの忌々しいレナードの娘に人の皮を被った厄介な糞餓鬼、極めつけはやたら馴れ馴れしい東洋人の男。奴等のせいでせっかく自由になったっていうのに愛しい彼女を抱き締めてやることも出来ない。いや、それよりも彼女が奴等に殺されてしまわないかの方が重要だ。君は警官だろ、今当に死ぬかもしれない善良な市民は助けるべきだ。そうだろう?”


ここまで読んで妙な違和感を覚えた。『君のような』『警官だろ』から推測するにこの手紙はさっきまでここにはいなかった自分宛、『ヘザー』という名前は名簿に記載されていたあのヘザーだろうか?しかし『レナード』という名前に見覚えはない。
『人の皮を被った糞餓鬼』?『自由になった』?『殺されそう』?
疑問は尽きないがともかく更に読み進める。

“頼みというのは他でもなくヘザーの保護だ、彼女は今南側から教会に向かってるから迎えに行ってやってくれ。その後に気を効かせて二人きりにしてくれれば尚いいんだけどね。その人形はその時彼女に届けてくれ、間違っても君の物じゃない。やってくれるならこの狂った街について少し喋ってあげよう、何なら先払いしてもいい。請け負わないなら人形を置いてさっさと行け、良心が咎めないならな。
どちらがより良い意味を持つか考えてごらんよ、全ては意味を持たなくては存在する理由がないんだから。君はどうかな?
スタンレー・コールマン”


シビルは大いに困惑した。

【B-2/『元』T字路/一日目夜中】

【シビル・ベネット@サイレントヒル】
[状態]精神疲労(中~大)、肉体疲労(小)
[装備]グレネードランチャーHP LV4(炸裂弾5/6)@バイオハザードアンブレラクロニクルズ、白バイ
[道具]旅行者用バッグ(武器、食料他不明)、SIG P226(3/15)、白バイのサイドボックス(炸裂弾:14、アグラオフォテス弾@オリジナル:23、他不明)
[思考・状況]
基本行動方針:要救助者及び行方不明者の捜索
1:スタンレーの手紙を―――
2:キリサキ、ユカリと合流する
3:前回の原因である病院に行く

※名簿に記載されている霧崎、ユカリの知人の情報を把握しました。

※白バイのサイドボックスに道具が入っているようです。サイドボックスの容量が普通だとは限りません



【タイラントNEMESISーT型(追跡者)第?形態@バイオハザード3】
[状態]腕部及び頭部完全破壊、体前面に火傷と裂傷
[装備]耐弾耐爆スーツ(損傷率87%)
[道具]無し

[思考・状況]
基本行動方針:『呼ばれし者』の皆殺し
1:???


※タイラントは下に落ちていきました。どうなったかは後の書き手さんにお任せします。

※タイラントの形態が変化しました、第3形態なのか、もしくは全く別の変化を遂げたのかは後の書き手さんにお任せします。

※2ーB右上のT字路は崩落したため犬小屋からは侵入出来なくなりました

※1ーE~1ーAにかけてのクリーチャーは一掃されました。肉片が飛び散っているだけで何もいません。

【グレネードランチャーHP@バイオハザードアンブレラクロニクルズ】

グレネードランチャー(以下GL)系武器の中でも最高の威力を持ち改造によってロケットランチャー並みになるが代わりに爆発範囲が通常より狭く、リロードは普通のGLと同様遅め。素人にはオススメ出来ない。

シビルが持っているのは改造LV4※のもの、弾数は6、マガジンは2個、威力はSである

※アンブレラクロニクルズの武器は改造によって弾数、マガジン、威力を強化することができLV5まで改造する事ができる。
ただしLV5までいくと弾数無限になりパワーバランスが崩壊するため本ロワでは使えないものとする。


【アグラオフォテス入りGL弾@オリジナル】

アグラオフォテスの入ったグレネードランチャーの弾。ゾンビ等にはほとんどダメージを与えられないが霊的なもの、魔力等には絶大な威力を発揮する


【スタンレー・コールマン@サイレントヒル3】

サイレントヒルの精神病院『ブルックヘブン病院』(ロワ内ではアルケミラ病院になっている場所)の患者。ヘザー・モリスに対して『自分の事を助けに来た愛すべき人』として異常な愛情を抱いておりヘザーが病院にいる間幾度となく日記と自分の好きな人形を渡そうとした。
最後にはクローディア・ウルフの父、レナードの宗教を貶した事によって恨みを買い殺される。新しい名前は7番。



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最終更新:2012年06月23日 17:36