R Death13



俺は自分が選ばれた人類だと信じている。

選ばれた自分は殺す側の人間、他の奴らは殺される側の人間。この世界でもそれは変わらないはずだ。


生まれてこの方、自分が殺されるなど考えたこともなかったが…。

あの化け物に吊し上げられた時はこれは夢か幻なのだと思いたかった。思い出しただけで冷や汗が出る。

我ながら情けない。屈辱だ。


だが俺は生き返った。やはり俺は選ばれた人類なのだ。

いや…生き返ったのか…?
化物に捕まり、意識が途切れるまでの瞬間、あの数秒に感じた痛みは紛れもない現実だったはず。
首が裂けるような感覚だってあった。あれ程のことになっておきながら死なないはずが無い。
だが俺は今こうして立っている。首を触ってみても、間違いなく繋がっている。

しかし間違いなく。霊体やゾンビなどというくだらない存在ではない。確かな実体で、日野貞夫として立っている。

これは一体どういうことか。

化物は痛覚を伴う幻だった、もしくは化物は現実で、殺された後に蘇ったかのどちらかのはずだが…どちらにしても非現実的だ。
考えるだけ無駄かもしれない。

幸いなことに体に変調は無い。
特に不調も感じない、あの怪物に出会う前との体と変わらない。
言ってしまえばもっと前だ。屋敷で女に会う前と変わらない。
屋敷で放り投げられたおかげで体の節々にあった痛みも治っている。
ただ、女と会った後に手首にできた妙な痣はまだある。ケガが全て治っているわけではないのか、それともこの痣はまた違う何かなのか。
ふざけた話だが、そんなことはどうでもいい。ここからどうするかを考えるほうが重要だ。


あの化物が現実ならば迂闊に近づかないようにする必要がある。不愉快極まりないが、あの化物はそう簡単に殺せる相手じゃない。

これからは奴を警戒する必要があるだろう。
人を殺すつもりでまたあいつに近づいてしまうのでは困る。

クソッ…あの化物…俺の狩りの邪魔をしやがって…腹立たしい…。

いずれはあの化物も殺すつもりだが、化物には化物用の殺り方がいる。
それを練るためには武器と情報が必要だ。
人間を獲物とするならアイスピックがあれば十分だが、あの化物相手となるとさすがに役不足。
目の前にある雑貨屋に何か無いか、一応目を通しておいて損はないだろう。
所詮雑貨屋、強力な武器は期待はできないが。
情報は雑貨屋を出てから集めればいい。

雑貨屋の中は薄暗く埃っぽい。
あまり長居したい場所では無いがここは我慢をするしかない。

雑貨屋というだけあって棚から床までごちゃごちゃと物が置いてある。
これは散らかっていると言うよりも荒らされたと言った感じか。
並んでいるのはガラクタばかり。

薄暗くてよく見えないのではっきりとはわからないがあれは人影ではないだろうか。
と、思ったがよく見れば何のことはない。ただのマネキンだ。

このマネキンには日本刀が刺さっている。切り口から赤黒い液体が流れているが…これは血か?
この暗さじゃどうとも判断できないが、そもそもマネキンから血が出るわけがない。
馬鹿馬鹿しいな。せっかく日本刀があるんだ、ありがたくいただいていこうじゃないか。マネキンに興味はねぇ。
日本刀も見つけたし早いところ探索に見切りをつけて打ち切ろうかとも思ったが一つ見慣れないが、見覚えのある物を見つけた。
この世界に来て最初に見つけたラジオにはめる石。
最初に見つけた石は面白いことを教えてくれた。この石にも期待はできる。

ラジオを取り出そうと鞄を開けてみれば中がガチャついている。
投げるのにちょうどよさそうだと屋敷で拾ったガラス玉が割れていた。
投げれば陽動に使えそうだと一つ鞄に入れておいたのだが、割れてしまっては投げるのに適しているとは言い難い。これはここに置いてしまってかまわないだろう。
邪魔なガラス玉を棚に置きラジオを取り出す。
バーでやったのと同じようにラジオに石を嵌め、音が流れるのを待つ。
このラジオの待ち時間はなんともいいものだ。思わず表情が緩んでしまう。
この顔を獲物に見られたら騙すのは難しくなっちまうだろうなあ。

だがラジオから流れてきた言葉を聞いた俺の表情は緩むなんてもんじゃない。笑いが止まらなかった。

「クッ…クククッ…。素晴らしい!どうやらこの世界の神は俺の味方のようだ!」

ラジオは教えてくれた。やはり俺はあの化物に殺されちまったらしい。殺され、蘇った。
殺された俺がなぜこうして生き返れたのか。
俺がただのガラス玉と思って鞄に入れておいたブツは鏡石。
こいつのおかげで俺は今笑っている。こいつが俺を蘇らせた。

こんな素晴らしい物を無意識のうちに手に入れちまうのだから面白い。
効果は一つにつき一度きり。

『一つ』につき一度きり。

『一人』につき一度きりじゃあないんだぜ!?なぁんて素晴らしいんだ!
あの屋敷を探索しているとき、似たようなガラス玉がいくつも転がっていた。
つまり…つまり!!

この世界は素晴らしい。感謝するぜ、イカした神様!!

◆ ◇

俺は屋敷に戻ってきた。
雑貨屋で得た情報に心踊らせながら。

この興奮を隠しきれなければ獲物を油断させるのも難しくなるだろうと密かに困っていたのだがどこまで追い風が吹いているのか、隠す必要のある獲物には遭遇せずに屋敷に到着してしまった。
日本刀の切れ味も上々だ。ヌトヌトと糸を引く犬の血液を不気味なウサギのハンカチで拭き取りながら階段を登り門を開く。
どうも元居た住人は化け物含め全て出払っているように見える、居るにしては気配も無ければ音もない。
実際、屋敷中を回ったが何にも出くわさなかった。

記憶を頼りに屋敷の中を見てみると鏡石が出てくる出てくる。その数や13個。


純粋に大量の鏡石が見つかるだけで興奮するというのに、その数は13。

死刑台への階段、タロットにおける死神のカード、忌み数。13…。どこまで俺は興奮すればいいのだろう。

だがこのイカした世界は、俺にさらなる感動と興奮をくれるらしい。

屋敷の一室。着物が垣根のように群れをなす部屋。
鏡石は無いかと着物を探っていると外から凄まじい爆発音が聞こえてきた。殺人クラブでは機密保持の為にまず聞こえては来ない愉快な音につられて学生鞄の中にあった双眼鏡を取りだしその方角に目を向けてみると

無数の化物が殺し合いをしてやがる。

炎上する車。その炎に包まれる人型の化物。
刃物を持った化物が単身突っ込めば数体の看護婦がそいつを囲みマシンガンをぶちこむ。
化物を蜂の巣にした化物共がその場を離れようとすればまた別の化物がグレネードランチャーを発射する。
それが着弾すると先程のように愉快な爆発音を轟かせマシンガンを持つ化物含め近くにいた化物を皆吹き飛ばす。
しかしそのグレネードランチャーを持つ化物もすぐさま後ろから迫っていたゾンビに食い散らかされる。


奴等はここに投げ入れられた時に見た幽霊の群れの青白い光と紅蓮の炎に照らされながら。
どの化物も次から次へと増援が来ては肉片に化けていく。



これは…こいつは…。

「ヒッ…ヒヒヒヒッ!!素晴らしい…素晴らしいぜ!こいつはまるで戦場じゃないか!!この世界は、どこまで俺を楽しませてくれるんだ!?」


【C-3/氷室邸内/一日目夜中】

【日野貞夫@学校であった怖い話】
 [状態]:健康、興奮状態、殺人クラブ部長、縄の呪い
 [装備]:学生服
 [道具]:学生鞄(中身は不明)、アイスピック数本@現実、日本刀@現実、霊石ラジオ@零~赤い蝶~ 鏡石×13@零~赤い蝶~、双眼鏡@現実
     薄赤茶色に光る鉱石×2@オリジナル、チラシ
 [思考・状況]
 基本方針:殺人クラブ部長として、殺人を思う存分楽しむ。
 1:皆殺し
 2:危険を避けて細心の注意をはらい行動する
 3:霧絵と化物に復讐

※名簿には生き返りが反映されません
※復活にはやや時間がかかります
※鏡石を複数持つリスクは幻覚を見る等々がある…かもしれません(他の書き手さんにまかせます)


「……縄がh…って………彼等のよう………死んd…………」
「…!?」
今確かに何か聞こえた。部屋をしかし見回しても誰もいない。
「気のせいか…?」
興奮し過ぎて、幻聴でも聞こえてきちまったかな…。



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最終更新:2012年06月23日 17:33