同じドストエフスキーもまた死の門口まで引き摺られながら、辛うじて後戻りをする事のできた幸福な人である。
けれども彼の命を危めにかかった災は、余の場合におけるがごとき悪辣な病気ではなかった。
彼は人の手に作り上げられた法と云う器械の敵となって、どんと心臓を打ち貫かれようとしたのである。
『思い出す事など』
最終更新:2021年04月05日 14:42