「うーん、どうしよっかなー」
数多の世界から呼び出された決闘者が集う会場のどこかに、一人の少女が立っている。
小学生程の体格に紫の長髪とサイドテールが目立つが、やはり一番目を引くのは彼女が持つ一振りの刀だろう。
彼女の名前は燕結芽。
折神家親衛隊第四席の、刀使である。
小学生程の体格に紫の長髪とサイドテールが目立つが、やはり一番目を引くのは彼女が持つ一振りの刀だろう。
彼女の名前は燕結芽。
折神家親衛隊第四席の、刀使である。
そんな彼女は今、惑っていた。
彼女を知るものならば珍しいと目をむくであろう、本気の困惑だった。
彼女を知るものならば珍しいと目をむくであろう、本気の困惑だった。
「結芽、死んじゃったよね?」
そう、結芽は自身の生存に戸惑っていた。
ここに来る前、彼女は親衛隊として、反逆者と戦っていた。
中で一番強いであろう少女、衛藤可奈美との戦闘を楽しんでいた。
ここに来る前、彼女は親衛隊として、反逆者と戦っていた。
中で一番強いであろう少女、衛藤可奈美との戦闘を楽しんでいた。
しかし、その最中に結芽の持病が出る。
それでも戦い続けたが敗北。
そして最後には彼女は、自身が所属する学校の学長に看取られてこの世を去った。
それでも戦い続けたが敗北。
そして最後には彼女は、自身が所属する学校の学長に看取られてこの世を去った。
だが結芽はここに生きている。
別に死にたいわけでは無い。
こうして生きている以上、彼女はまた同じように生きる。
彼女には欲しいものもやりたいこともあるのだから。
それでも――
こうして生きている以上、彼女はまた同じように生きる。
彼女には欲しいものもやりたいこともあるのだから。
それでも――
『……結芽……楽しかった……か?』
『――うんっ』
『――うんっ』
結芽の一番の望みは、きっともう叶っている。
彼女の願いとは、誰かに覚えていてもらうことだ。
七歳の頃に不治の病に侵され、ただ病室で弱り続けていく日々。
次第には両親すら来なくなって、自分は見捨てられたのかとすら思った。
七歳の頃に不治の病に侵され、ただ病室で弱り続けていく日々。
次第には両親すら来なくなって、自分は見捨てられたのかとすら思った。
実際は弱っていく結芽を、彼女を愛する両親が見ていられなかったという方が正しいのだが、その事実を彼女は知らない。
しかし、折神家の頂点折神紫が結芽に施したものは、病気こそ解決しなかったが、彼女に戦う力を与えた。
それからの日々は、彼女にとって幸せと言ってもよかった。
だからこそ、死からの蘇生という非現実を許容しかねているのだが。
すると、特に前触れもなく――
それからの日々は、彼女にとって幸せと言ってもよかった。
だからこそ、死からの蘇生という非現実を許容しかねているのだが。
すると、特に前触れもなく――
「本田ぁぁぁああああ!!」
と誰かの叫び声が聞こえたので、結芽はとりあえずその方へ行ってみることにした。
刀使の能力を使えば、声のした場所にたどり着くのはあっという間だった。
そこには、結芽より年上、高校生くらいの金髪の男が、拳を地面に叩きつけながら嘆き悲しむ姿を見せていた。
刀使の能力を使えば、声のした場所にたどり着くのはあっという間だった。
そこには、結芽より年上、高校生くらいの金髪の男が、拳を地面に叩きつけながら嘆き悲しむ姿を見せていた。
ここで結芽は思い至る。
最初の場で爆破されたおにーさんは、別のおにーさんに『本田くん』と呼ばれていたことに。
そして目の前のこのおにーさんも本田っておにーさんの仲間で、その死を悲しんでいるのだと。
最初の場で爆破されたおにーさんは、別のおにーさんに『本田くん』と呼ばれていたことに。
そして目の前のこのおにーさんも本田っておにーさんの仲間で、その死を悲しんでいるのだと。
そうだとすれば結芽にできることはない。
茶化すつもりは全くないが、だからと言って慰めてあげられるほど言葉を尽くせるタイプでもない。
そしてそこまでする義理もない。
なので気付かれないようにこの場を去ろうとしたが、次の言葉は聞き逃せなかった。
茶化すつもりは全くないが、だからと言って慰めてあげられるほど言葉を尽くせるタイプでもない。
そしてそこまでする義理もない。
なので気付かれないようにこの場を去ろうとしたが、次の言葉は聞き逃せなかった。
「何で死んだ俺が生きてて、生きてたお前が死んじまうんだよ!!」
「――おにーさんも死んだの?」
「――おにーさんも死んだの?」
結芽が思わず出した声に驚いた男は、ここで彼女の存在に気付いたのか大仰に彼女の方へ振り向く。
男は彼女が持つ刀に一瞬目を奪われるも、すぐに相手が殺し合いに乗っていないと判断したのか、少々言葉を選びつつ返答する。
男は彼女が持つ刀に一瞬目を奪われるも、すぐに相手が殺し合いに乗っていないと判断したのか、少々言葉を選びつつ返答する。
「……ああ。まあ、信じられねえかもしれないけどさ」
「いや信じるよ。だって結芽もだからね」
「いや信じるよ。だって結芽もだからね」
結芽の言葉に驚く男。
とてもそうとは思えない彼女の振る舞いに、彼は半信半疑だ。
しかし――
とてもそうとは思えない彼女の振る舞いに、彼は半信半疑だ。
しかし――
「ゴホッゴホッ!!」
「お、おい大丈夫かよ」
「お、おい大丈夫かよ」
急に咽る結芽を心配する男。
更に彼は目を見開く羽目になる。
なぜなら、彼女の咳には吐血が混じっていたからだ。
更に彼は目を見開く羽目になる。
なぜなら、彼女の咳には吐血が混じっていたからだ。
「えっと、結芽は病気でね。それで死んじゃった。まあ今も罹ってるけど」
「びょ、病院とか行かなかったのかよ?」
「行ってたよ。入院もしてた。でも治らなかったよ」
「びょ、病院とか行かなかったのかよ?」
「行ってたよ。入院もしてた。でも治らなかったよ」
それ以上は語る気はない、とばかりに目を逸らし、代わりに話を促す結芽。
男は応じ、話し始めるが、その内容は更に信じられないものだった。
男は応じ、話し始めるが、その内容は更に信じられないものだった。
「闇のゲームに古代エジプトの千年アイテム……
そしてカードゲームって、ゲームで人が死ぬわけないじゃん」
「いや普通は死なねえけど、そのゲームは普通じゃねえんだって」
そしてカードゲームって、ゲームで人が死ぬわけないじゃん」
「いや普通は死なねえけど、そのゲームは普通じゃねえんだって」
男の言葉を胡散臭そうにする結芽。
事実、信じられないことを言っている自覚のある男は、食い下がろうにも心情に食い下がりにくい。
事実、信じられないことを言っている自覚のある男は、食い下がろうにも心情に食い下がりにくい。
そうして結芽は男への興味をなくした。
信じられないことを言っているとは思っているが、こんな状況で嘘をつく理由もない。
ならば、彼女が男に興味を持つ理由がない。
いくらカードゲームが殺し合いの体を擁することがあっても、それは彼女が望む戦場ではない。
だから彼女は踵を返そうとするのだが、その前にふとこんなことを呟いた。
信じられないことを言っているとは思っているが、こんな状況で嘘をつく理由もない。
ならば、彼女が男に興味を持つ理由がない。
いくらカードゲームが殺し合いの体を擁することがあっても、それは彼女が望む戦場ではない。
だから彼女は踵を返そうとするのだが、その前にふとこんなことを呟いた。
「思ったんだけどさ」
「何だよ?」
「あの冥王ハ・デスって奴、人を生き返らせることができるんじゃない?」
「何だよ?」
「あの冥王ハ・デスって奴、人を生き返らせることができるんじゃない?」
結芽の言葉を聞いて、男は目を見開く。
それを見て彼女は、余計なことを言ったかも、と少し焦る。
普通に考えれば、この言葉は殺し合いに肯定的な発言だ。
さっきの発言は彼女にしては珍しく、何の意図も隔意もない。
思い付きをつい口に出してしまったようなものだ。
彼女にも、そのせいで人を殺し合いに駆り立てるのは流石にどうかと思う程度の善性はある。
しかし、男の言葉は彼女の予想を裏切るものだった。
それを見て彼女は、余計なことを言ったかも、と少し焦る。
普通に考えれば、この言葉は殺し合いに肯定的な発言だ。
さっきの発言は彼女にしては珍しく、何の意図も隔意もない。
思い付きをつい口に出してしまったようなものだ。
彼女にも、そのせいで人を殺し合いに駆り立てるのは流石にどうかと思う程度の善性はある。
しかし、男の言葉は彼女の予想を裏切るものだった。
「……なら、あいつをぶっ倒して、生き返す方法を手に入れれば本田が蘇るってことかよ」
男は、戦意を滾らせていた。
殺し合いに乗るのではなく、反ることで目的を果たそうとしていた。
殺し合いに乗るのではなく、反ることで目的を果たそうとしていた。
一瞬呆ける結芽とは対照的に、男はデイパックの中身を検め始める。
最初に出てきたのはデュエルディスクとデッキ。彼女は知らないが、それは男の私物だ。
最初に出てきたのはデュエルディスクとデッキ。彼女は知らないが、それは男の私物だ。
「へっ。やっぱこいつがねえとな」
満足気な顔で腕にデュエルディスクを装着する男を見て、結芽は今度こそこの場を去ろうとする。
だが男は思わず呼び止めていた。
だが男は思わず呼び止めていた。
「いや、いきなりどっか行こうとすんなよ!?
お前も一緒にあのハ・デスと戦おうぜ!!」
「戦うのはいいけどさあ。結芽、人とつるむの嫌いなんだよね。
仲間は好きだけど、理由もなく一緒に戦うとかはしたくないの」
「そーかよ……」
お前も一緒にあのハ・デスと戦おうぜ!!」
「戦うのはいいけどさあ。結芽、人とつるむの嫌いなんだよね。
仲間は好きだけど、理由もなく一緒に戦うとかはしたくないの」
「そーかよ……」
結芽の勝手な発言に、思わず呆れる男。
しかし引き留めるような真似はせず、代わりに何らかの錠剤を一錠を手渡した。
しかし引き留めるような真似はせず、代わりに何らかの錠剤を一錠を手渡した。
「……なにこれ?」
「支給品にあった万病薬だってよ。飲めばどんな病気でも治るらしいぜ」
「支給品にあった万病薬だってよ。飲めばどんな病気でも治るらしいぜ」
男の説明を胡散臭く思う結芽だったが、まあいいかとばかりに薬を飲んだ。
そして結芽は男から離れていくのだが、ここで彼女は己の体に起こった以上に気付く。
そして結芽は男から離れていくのだが、ここで彼女は己の体に起こった以上に気付く。
体の調子がいつもよりいいのだ。
否、これほど調子がいいのはいつぶりだろうか。
まるで体から病気がなくなったかのように。
否、これほど調子がいいのはいつぶりだろうか。
まるで体から病気がなくなったかのように。
それもそのはず。なぜなら結芽が飲んだのは万病薬。
結芽の世界でも男の世界でもない別の世界の二十二世紀に存在する、どんな病気でも治す薬なのだから。
二十一世紀前半では不治の病でも、二十二世紀では治る病気だったのだ。
結芽の世界でも男の世界でもない別の世界の二十二世紀に存在する、どんな病気でも治す薬なのだから。
二十一世紀前半では不治の病でも、二十二世紀では治る病気だったのだ。
とはいえ、結芽はいきなり病気が治ったとは思っていない。
長年苦しめられた病魔がいきなり消えたと思うほど、彼女は楽天家ではなかった。
しかし調子が良くなったことは事実。
自身の死因を弱めてくれたお礼ぐらいはするべきだろう。
そう思った彼女は男の元へ戻った。
長年苦しめられた病魔がいきなり消えたと思うほど、彼女は楽天家ではなかった。
しかし調子が良くなったことは事実。
自身の死因を弱めてくれたお礼ぐらいはするべきだろう。
そう思った彼女は男の元へ戻った。
「うーん……」
戻って結芽が見た光景は、タブレット片手に唸る男の姿だった。
どうやらどこへ行くのか考えているらしい。そこに彼女は声をかける。
どうやらどこへ行くのか考えているらしい。そこに彼女は声をかける。
「とりあえず、近くの建物でいいんじゃない?」
「ああそうだな……ってお前!?」
「ああそうだな……ってお前!?」
いつの間に戻ってきていた結芽に驚く男。
そんな彼に彼女は簡単に理由を説明する。
そんな彼に彼女は簡単に理由を説明する。
「おにーさんがくれた薬のおかげで調子いいから、そのお礼。
しばらくは結芽が守ってあげる」
「守ってあげるってお前な……」
しばらくは結芽が守ってあげる」
「守ってあげるってお前な……」
結芽の守ってあげるという発言に拒否感を示す男。
確かに彼女の実力を知らなければ、いや知っていたとしても、少女に守られるというのは抵抗があるだろう。
しかし、そんな感情は知ったことではないとばかりに、彼女は無理矢理話を進めた。
確かに彼女の実力を知らなければ、いや知っていたとしても、少女に守られるというのは抵抗があるだろう。
しかし、そんな感情は知ったことではないとばかりに、彼女は無理矢理話を進めた。
「折神家親衛隊第四席、燕結芽。おにーさんは?」
「……あ、あぁ。城之内克也だ」
「そう。じゃあよろしくね、城之内おにーさん」
「……あ、あぁ。城之内克也だ」
「そう。じゃあよろしくね、城之内おにーさん」
これ、何を言ってもついてくる気の奴だ。と城之内は諦めの境地になる。
だが元々彼の周りには我が強い人間が多いので、気にはするもののある程度はスルーできた。
そんな彼の反応をどう見たのか、結芽は安心させるように言う。
だが元々彼の周りには我が強い人間が多いので、気にはするもののある程度はスルーできた。
そんな彼の反応をどう見たのか、結芽は安心させるように言う。
「大丈夫。結芽は強いよ。刀使の中でもね」
「刀使ってなんだ?」
「刀使ってなんだ?」
安心させるために行った言葉に対する、城之内の反応に信じられないと言わんばかりに驚きを見せる結芽。
そう。二人はまだ、世界観の違いに気付いていない。
そう。二人はまだ、世界観の違いに気付いていない。
【城之内克也@遊☆戯☆王】
[状態]:健康
[装備]:城之内のデッキとデュエルディスク@遊☆戯☆王
[道具]:基本支給品、ランダム支給品0~1(確認済み)
[思考・状況]基本方針:主催者を倒し、本田を生き返らせる。
1:まずは遊戯や他の参加者を探す
2:刀使ってなんだ?
[備考]
※参戦時期はバトルシティ準決勝一回戦にて敗北した後から蘇生するまでの間です。
[状態]:健康
[装備]:城之内のデッキとデュエルディスク@遊☆戯☆王
[道具]:基本支給品、ランダム支給品0~1(確認済み)
[思考・状況]基本方針:主催者を倒し、本田を生き返らせる。
1:まずは遊戯や他の参加者を探す
2:刀使ってなんだ?
[備考]
※参戦時期はバトルシティ準決勝一回戦にて敗北した後から蘇生するまでの間です。
【燕結芽@刀使ノ巫女(漫画版)】
[状態]:健康
[装備]:九字兼定@刀使ノ巫女
[道具]:基本支給品、ランダム支給品0~2(確認済み)
[思考・状況]基本方針:生きて帰る。
1:体の調子がいいお礼に、しばらくは城之内おにーさんに付き合う
2:刀使を知らない?
3:強い人とは戦いたいけど、場合によっては我慢してもいいかな
[備考]
※参戦時期は死亡後です。
※九字兼定でも写シなどは使えます。
※万病薬@ドラえもん の効果で病気が治りました。が、半信半疑です。
荒魂がどうなっているかは当選した場合、次の書き手氏にお任せします
[状態]:健康
[装備]:九字兼定@刀使ノ巫女
[道具]:基本支給品、ランダム支給品0~2(確認済み)
[思考・状況]基本方針:生きて帰る。
1:体の調子がいいお礼に、しばらくは城之内おにーさんに付き合う
2:刀使を知らない?
3:強い人とは戦いたいけど、場合によっては我慢してもいいかな
[備考]
※参戦時期は死亡後です。
※九字兼定でも写シなどは使えます。
※万病薬@ドラえもん の効果で病気が治りました。が、半信半疑です。
荒魂がどうなっているかは当選した場合、次の書き手氏にお任せします
【万病薬@ドラえもん】
城之内克也に支給。なお、支給されたのは一個だけ。
飲めばたちまちどんな病気でも治せる薬。
22世紀の技術では治せない病気はないらしいが、裏を返せば病気以外、老衰や怪我には効かない。と思われる。
城之内克也に支給。なお、支給されたのは一個だけ。
飲めばたちまちどんな病気でも治せる薬。
22世紀の技術では治せない病気はないらしいが、裏を返せば病気以外、老衰や怪我には効かない。と思われる。
【城之内のデッキとデュエルディスク@遊☆戯☆王】
城之内克也に支給。
ギャンブルカードが多めな城之内構築デッキ。
エースは真紅眼の黒竜(レッドアイズ・ブラックドラゴン)、時の魔術師、サイコショッカーなどなど。
城之内克也に支給。
ギャンブルカードが多めな城之内構築デッキ。
エースは真紅眼の黒竜(レッドアイズ・ブラックドラゴン)、時の魔術師、サイコショッカーなどなど。
【九字兼定@刀使ノ巫女】
燕結芽に支給。
元々は彼女の仲間である此花寿々花の御刀。
本来なら刀使にしか力を引き出せないが、このロワではそれ以外の存在でも使用可能。
燕結芽に支給。
元々は彼女の仲間である此花寿々花の御刀。
本来なら刀使にしか力を引き出せないが、このロワではそれ以外の存在でも使用可能。