「ハッピーエンドが嫌いなのかって?」
「まさか。終わり方の好き嫌いに拘るのは創作者としてナンセンスだよ」
「良い結末であれ悪い結末であれ、そこに至る過程をしっかりと組み立てているからこそ、物語は成り立つんだ」
「だから終わり方が気に食わないというだけで、物語を全て否定するような真似はしないで欲しい」
「うん?それで結局ハッピーエンドは嫌いなのか教えて欲しい?」
「今言ったばかりだけど、別に物語の結末に拘りは無いんだ。ハッピーでもバッドでも、納得のいく過程なら文句は付けないよ」
「ただそうだね……僕はハッピーエンドが嫌いとかじゃなくて」
「ハッピーエンドを信じられなくなったんだ」
◆
冴島鋼牙。
ねむを助けた白コートの剣士はそう名乗った。
第一印象は何とも無愛想な男。
幼い少女と接するのなら笑顔を作り優しい口調で話かけても良いと思うも、鋼牙にそれはない。
とはいえねむ自身、他人の愛想をとやかく言える程社交的な性格でも無いのだが。
ねむを助けた白コートの剣士はそう名乗った。
第一印象は何とも無愛想な男。
幼い少女と接するのなら笑顔を作り優しい口調で話かけても良いと思うも、鋼牙にそれはない。
とはいえねむ自身、他人の愛想をとやかく言える程社交的な性格でも無いのだが。
しかし愛想が無いからと言って悪人という訳でもない。
この世のものとは思えない汚さの男に殺されかけた所を、鋼牙に助けられたのは紛れも無い事実。
なら礼を伝えるのが筋というものだろう。
この世のものとは思えない汚さの男に殺されかけた所を、鋼牙に助けられたのは紛れも無い事実。
なら礼を伝えるのが筋というものだろう。
「助けてくれてありがとう、もう少しで殺されるところだったよ」
「礼を言うのは俺の方だ。お前が隙を作ったおかげで鎧を召喚できた」
「礼を言うのは俺の方だ。お前が隙を作ったおかげで鎧を召喚できた」
鎧。
それは黄金の狼の事か。
あれを目にした瞬間の衝撃は到底忘れられそうにない。
それは黄金の狼の事か。
あれを目にした瞬間の衝撃は到底忘れられそうにない。
「助けられておいてこんな事を言うのも何だけど、お兄さんは何者なんだい?剣術を齧ってるだけでの人間でないのは僕にも分かるよ」
抱いて当然の疑問をぶつける。
生身でありながら超人的な身体能力と剣の腕を持ち、謎の鎧を纏う。
魔法少女ではない、未知の力を持った男。
彼は自分が利用するに値する存在となり得るか、彼は自分の害になる存在なのか。
まずは鋼牙の正体を知り、それから対応を決めねばなるまい。
生身でありながら超人的な身体能力と剣の腕を持ち、謎の鎧を纏う。
魔法少女ではない、未知の力を持った男。
彼は自分が利用するに値する存在となり得るか、彼は自分の害になる存在なのか。
まずは鋼牙の正体を知り、それから対応を決めねばなるまい。
「……」
一方の鋼牙は質問を受け、暫し黙り込む。
柊ねむと名乗ったこの少女、見た目の年齢とは不釣り合いに落ち着いている。
この年頃の子供であれば、もっとパニックになるのが一般的ではないだろうか。
だがねむは取り乱す様子もなく、いやに冷静だ。
修行中の魔戒法師であるならこのような態度でも分からなくもないが、魔戒騎士の鋼牙を見て素性を尋ねた事からも違う。
元々そういう物怖じしない性格なのか、或いはただの子供とは違う何かを秘めているのか。
念の為に気にかけておいた方が良いのかもしれない。
柊ねむと名乗ったこの少女、見た目の年齢とは不釣り合いに落ち着いている。
この年頃の子供であれば、もっとパニックになるのが一般的ではないだろうか。
だがねむは取り乱す様子もなく、いやに冷静だ。
修行中の魔戒法師であるならこのような態度でも分からなくもないが、魔戒騎士の鋼牙を見て素性を尋ねた事からも違う。
元々そういう物怖じしない性格なのか、或いはただの子供とは違う何かを秘めているのか。
念の為に気にかけておいた方が良いのかもしれない。
「どうかしたのかな?話し辛いことだったかい?」
「いや……」
「いや……」
何時まで経っても返答が無い事へねむが首を傾げる。
魔戒騎士の素性をそう簡単に明かすべきではないとは重々承知だ。
しかし今は緊急事態。
檀黎斗達を倒し殺し合いを終わらせるまでねむを守る気でいるのなら、話しておくべきだろう。
そう決断し鋼牙は説明を始める。
魔界の住人ホラーと、人知れず闇を狩る魔戒騎士の長きに渡る戦いを。
魔戒騎士の素性をそう簡単に明かすべきではないとは重々承知だ。
しかし今は緊急事態。
檀黎斗達を倒し殺し合いを終わらせるまでねむを守る気でいるのなら、話しておくべきだろう。
そう決断し鋼牙は説明を始める。
魔界の住人ホラーと、人知れず闇を狩る魔戒騎士の長きに渡る戦いを。
「……何だか物語のような話だね」
「だが事実だ」
「うん、それは勿論分かっているよ。さっきのお兄さんの戦う姿を見たら、疑う気にはなれない」
「だが事実だ」
「うん、それは勿論分かっているよ。さっきのお兄さんの戦う姿を見たら、疑う気にはなれない」
驚いていると言うには何とも薄い反応。
これでもねむなりに色々と衝撃だったのは本当である。
魔戒騎士とホラー。
そのどちらも魔法少女とは関係のない、超常の存在。
インキュベーターですら、魔戒騎士の存在には一度も触れていなかった。
必要が無いから話さなかった、というよりはアレですら魔戒騎士やホラーに関しては知らなかったのか。
これでもねむなりに色々と衝撃だったのは本当である。
魔戒騎士とホラー。
そのどちらも魔法少女とは関係のない、超常の存在。
インキュベーターですら、魔戒騎士の存在には一度も触れていなかった。
必要が無いから話さなかった、というよりはアレですら魔戒騎士やホラーに関しては知らなかったのか。
(まぁキュゥべえの事は置いておくとして、だ)
脳裏に浮かんだ白い獣への疑念は後回しにし、会話を続ける。
ゲームには鋼牙以外にもう一人魔戒騎士が参加しており、実力も人間性も信頼の置ける友らしい。
流れでねむも知り合いの情報を明かす。
と言っても馬鹿正直に全てを話したりはせず、魔法少女に関する内容は伏せてある。
ゲームには鋼牙以外にもう一人魔戒騎士が参加しており、実力も人間性も信頼の置ける友らしい。
流れでねむも知り合いの情報を明かす。
と言っても馬鹿正直に全てを話したりはせず、魔法少女に関する内容は伏せてある。
話が終わると早速移動をしようという事になった。
鋼牙には逃げた汚らしい男から仮面ライダーの変身道具を取り返す、一般人を探し守る、ねむを友人と再会させるなどやるべき事が数多くある。
加えて先程の戦闘を聞きつけた良からぬ輩がやって来ないとも限らず、長居は危険。
ねむとしてもこの場に留まり続ける理由は無いので、移動には賛成だった。
都合良くねむがデイパックから出した車があり、わざわざ徒歩で移動するよりもずっと良い。
こういった車の運転は倉橋ゴンザに任せていたが、鋼牙自身が運転出来ないわけではない。
運転席には鋼牙が、助手席にはねむが乗り込んだ。
鋼牙には逃げた汚らしい男から仮面ライダーの変身道具を取り返す、一般人を探し守る、ねむを友人と再会させるなどやるべき事が数多くある。
加えて先程の戦闘を聞きつけた良からぬ輩がやって来ないとも限らず、長居は危険。
ねむとしてもこの場に留まり続ける理由は無いので、移動には賛成だった。
都合良くねむがデイパックから出した車があり、わざわざ徒歩で移動するよりもずっと良い。
こういった車の運転は倉橋ゴンザに任せていたが、鋼牙自身が運転出来ないわけではない。
運転席には鋼牙が、助手席にはねむが乗り込んだ。
逃げた男を追うか、それとも別の場所で他の参加者を探すか。
行き先候補は複数あれど、選べるのは一つのみ。
行き先候補は複数あれど、選べるのは一つのみ。
「……少し良いかな?鋼牙お兄さん」
エンジンをかける前にポツリと呟かれた言葉。
隣を見ると、ねむがじっとこちらを見上げている。
まだ何か言っておきたい事があったのか。
無言で次の言葉を待つ。
隣を見ると、ねむがじっとこちらを見上げている。
まだ何か言っておきたい事があったのか。
無言で次の言葉を待つ。
「さっき言った僕の知り合いで、環いろはという人がいただろう?」
「ああ。その子がどうかしたか?」
「あの人は……優しい人なんだ。僕たちにいつも優しくしてくれたよ。でも、自分の事はあんまり優しく出来ない人でもある」
「ああ。その子がどうかしたか?」
「あの人は……優しい人なんだ。僕たちにいつも優しくしてくれたよ。でも、自分の事はあんまり優しく出来ない人でもある」
だから、と一度区切り僅かな震えを声に乗せて伝える。
「もしいろはお姉さんを見付けたら、その時は……助けになってあげて欲しいんだ」
「分かった」
「分かった」
間髪入れずに返され、思わず目を見開く。
だが鋼牙には当たり前の事である。
少女が助けを求めた、自分の大事な人に手を差し伸べて欲しいと頼んだ。
ならば、断る理由がどこにあると言うのか。
だが鋼牙には当たり前の事である。
少女が助けを求めた、自分の大事な人に手を差し伸べて欲しいと頼んだ。
ならば、断る理由がどこにあると言うのか。
「お前も、お前の大切な者も、俺が守ると約束する」
何故なら彼は守りし者。
苦難に立たされようと、その信念を見失わない魔戒騎士なのだから。
苦難に立たされようと、その信念を見失わない魔戒騎士なのだから。
○
とりあえずは駒の確保に成功と言って良いだろう。
助手席の窓から外を眺め、ぼんやりした顔でねむは考える。
冴島鋼牙という男は善人だ。それでいてベテラン魔法少女にも匹敵する程に強い。
これなら荒事を担当する人材としての役目も期待できる。
当面は彼と共に行動しながら灯花との合流を目指す。
灯花が余計な事を言って鋼牙が不信感を抱かないだろうかという懸念はあるが、そこは自分がフォローすれば良い。
助手席の窓から外を眺め、ぼんやりした顔でねむは考える。
冴島鋼牙という男は善人だ。それでいてベテラン魔法少女にも匹敵する程に強い。
これなら荒事を担当する人材としての役目も期待できる。
当面は彼と共に行動しながら灯花との合流を目指す。
灯花が余計な事を言って鋼牙が不信感を抱かないだろうかという懸念はあるが、そこは自分がフォローすれば良い。
(それにいざとなったらお兄さんは切り捨てさせてもらう。悪く思わないでくれ)
善人であっても最終的に自分の障害となると判断した時は、迷わずその行動に移せる。
ねむにとっての一番は主催者の力を奪いいろはを救うこと。
罪悪感が微塵も無いとまでは言わないが、いろはと他の参加者の命を天秤に掛けたら圧倒的に重いのは前者。
灯花も同じ判断を下すのは間違いない。
ねむにとっての一番は主催者の力を奪いいろはを救うこと。
罪悪感が微塵も無いとまでは言わないが、いろはと他の参加者の命を天秤に掛けたら圧倒的に重いのは前者。
灯花も同じ判断を下すのは間違いない。
とはいえ今はまだゲームも序盤。
すぐに鋼牙を切り捨てるような事態にはならない筈だ。
ならその時まで表向きは友好的にしていれば良い。
すぐに鋼牙を切り捨てるような事態にはならない筈だ。
ならその時まで表向きは友好的にしていれば良い。
だけど
「……」
いろはを守ると約束した鋼牙の姿が思い出される。
口だけなら何とでも言える。
しかし不思議とあの時の鋼牙からは、疑いや捻くれた思いなど吹き飛ばすような力強さを感じた。
黄金騎士を見た時にも抱いた奇妙な感覚と似ている。
まるで本当に、鋼牙ならば自分達の希望になってくれるかもしれない。
そんな期待が浮かびかける。
口だけなら何とでも言える。
しかし不思議とあの時の鋼牙からは、疑いや捻くれた思いなど吹き飛ばすような力強さを感じた。
黄金騎士を見た時にも抱いた奇妙な感覚と似ている。
まるで本当に、鋼牙ならば自分達の希望になってくれるかもしれない。
そんな期待が浮かびかける。
(――っ!馬鹿馬鹿しい……)
またもや思考がおかしな方へと行った己へ悪態を吐く。
今更あるかどうかも分からないものに縋りついてどうなるというのだ。
自分達はハッピーエンドを信じ、そして失敗した。
同じ轍は踏めない。踏んでたまるものか。
馬鹿な事は考えるなと自分に言い聞かせ、窓の外の闇を睨み付けた。
今更あるかどうかも分からないものに縋りついてどうなるというのだ。
自分達はハッピーエンドを信じ、そして失敗した。
同じ轍は踏めない。踏んでたまるものか。
馬鹿な事は考えるなと自分に言い聞かせ、窓の外の闇を睨み付けた。
男の信念と少女の葛藤を乗せ、鉄の箱は走る。
彼らの行く先に待ち受けるのは何か、それを語るはまた次回。
彼らの行く先に待ち受けるのは何か、それを語るはまた次回。
【C-6(北部)/一日目/黎明】
【冴島鋼牙@牙狼-GARO-シリーズ】
[状態]:疲労(小)、運転中
[装備]:冴島鋼牙の魔戒剣@牙狼-GARO-、魔導火のライター@牙狼-GARO-、黒塗りの高級車@真夏の夜の淫夢
[道具]:基本支給品、ランダム支給品1~4、首輪(星合翔李)
[思考・状況]基本方針:守りし者として人々を守る。この決闘も終わらせる。
1:ねむを守り、彼女の友人を探す。
2:逃げた男(野獣先輩)から必ず仮面ライダーの力を取り戻す。
3:首輪の解析が出来そうな参加者を探し、この首輪を託す。
4:零との合流を目指す。
5:葛葉紘汰、あの男の事は忘れない。
6:あの黒い騎士(葉霧)は何者だ…?
7:ねむに僅かな疑念。気に掛けておくべきか。
[備考]
※参戦時期は牙狼-GARO- ~MAKAISENKI~終了後
【冴島鋼牙@牙狼-GARO-シリーズ】
[状態]:疲労(小)、運転中
[装備]:冴島鋼牙の魔戒剣@牙狼-GARO-、魔導火のライター@牙狼-GARO-、黒塗りの高級車@真夏の夜の淫夢
[道具]:基本支給品、ランダム支給品1~4、首輪(星合翔李)
[思考・状況]基本方針:守りし者として人々を守る。この決闘も終わらせる。
1:ねむを守り、彼女の友人を探す。
2:逃げた男(野獣先輩)から必ず仮面ライダーの力を取り戻す。
3:首輪の解析が出来そうな参加者を探し、この首輪を託す。
4:零との合流を目指す。
5:葛葉紘汰、あの男の事は忘れない。
6:あの黒い騎士(葉霧)は何者だ…?
7:ねむに僅かな疑念。気に掛けておくべきか。
[備考]
※参戦時期は牙狼-GARO- ~MAKAISENKI~終了後
【柊ねむ@マギアレコード 魔法少女まどか☆マギカ外伝(アニメ版)】
[状態]:健康、いろはの存在へ動揺、黄金騎士への複雑な感情、乗車中
[装備]:なし
[道具]:基本支給品一式、フリーザの小型ポッド@ドラゴンボール、ランダム支給品×0~1
[思考・状況]
基本方針:手段を問わずに主催者の力を奪って魔法少女を救済する。
1:鋼牙お兄さんと行動。荒事に関しては彼に書かせよう。
2:魔法少女への変身はなるべく控える。
3:灯花とも合流しておきたい。
4:七海やちよと深月フェリシアは邪魔になるなら排除。みふゆにも容赦はしない。
5:もしいろはお姉さんと会ったら僕は……。
6:希望…馬鹿馬鹿しいよ……。
[備考]
※参戦時期は死亡後。
[状態]:健康、いろはの存在へ動揺、黄金騎士への複雑な感情、乗車中
[装備]:なし
[道具]:基本支給品一式、フリーザの小型ポッド@ドラゴンボール、ランダム支給品×0~1
[思考・状況]
基本方針:手段を問わずに主催者の力を奪って魔法少女を救済する。
1:鋼牙お兄さんと行動。荒事に関しては彼に書かせよう。
2:魔法少女への変身はなるべく控える。
3:灯花とも合流しておきたい。
4:七海やちよと深月フェリシアは邪魔になるなら排除。みふゆにも容赦はしない。
5:もしいろはお姉さんと会ったら僕は……。
6:希望…馬鹿馬鹿しいよ……。
[備考]
※参戦時期は死亡後。
※どこへ走らせているかは後続の書き手に任せます。
040:デュエリスト・ランデブー | 投下順 | 042:魔王爆誕!黒白黒パーティー完成!! |
時系列順 | ||
012:邪剣 | 柊ねむ | 049:咲き誇れ、枯れ落ちるまで(前編) |
冴島鋼牙 |