リグルハード
客もまばらな場末のバーに、それは入ってきた。
全身を覆う黒いロングコート。高い襟に隠され素顔は見えないが、肩幅や背丈から察するに若い女性であろうか。
女が一人の酔っ払いの前に立つ。
痩せこけた頬に亡者のような虚ろな瞳。
かつて「錬金術師」としてその名を馳せた男であるが、今の彼にかつての面影は無かった。
・・・ただ一つ、瞳の奥で陰惨にギラつく光を覗いては。
全身を覆う黒いロングコート。高い襟に隠され素顔は見えないが、肩幅や背丈から察するに若い女性であろうか。
女が一人の酔っ払いの前に立つ。
痩せこけた頬に亡者のような虚ろな瞳。
かつて「錬金術師」としてその名を馳せた男であるが、今の彼にかつての面影は無かった。
・・・ただ一つ、瞳の奥で陰惨にギラつく光を覗いては。
「―――、だな」
「あァ? そりゃ確かに俺の名前だが・・」
「リグル・ナイトバグという名前を覚えているか?」
「リグル・・? 知らねぇなぁ、アンタのツレか?」
「あァ? そりゃ確かに俺の名前だが・・」
「リグル・ナイトバグという名前を覚えているか?」
「リグル・・? 知らねぇなぁ、アンタのツレか?」
女の質問に男が堪える。
刹那、コートの中から白い膝が伸び、男の顎を跳ね上げた。
刹那、コートの中から白い膝が伸び、男の顎を跳ね上げた。
「ごァァッ!?」
「思い出せ。8年前、森の奥の小さな村落だ・・」
「思い出せ。8年前、森の奥の小さな村落だ・・」
「思い出せ・・あの時お前が私から奪ったモノの痛みを・・右腕」
「げっ」
「右足、左腕」
「うぐっ、がっ」
「最後はこの胸の傷の分だッ!」
「ごぼぉっ」
踵で踏み付け、抉り、蹴り飛ばす。
もんどりうって反吐を吐く男。それでも尚蹴りは止む事は無い。
「こんな、こんなヤク中のクサレ野郎に・・!」
男が動かなくなった頃、ようやくその蹂躙が収まる。
「そこに跪け、命乞いをしろ。そうすれば・・命だけは助けてやる」
「ククッ-アァッハァッハァッハァッ」
「・・何がおかしい!」
「がぁっ」
反吐を撒き散らし、男が再び蹴り飛ばされる。
「何がおかしい? そりゃあ、おかしいに決まってるだろ・・」
男がよろよろと立ち上がる。
「ようやく思い出したよ、リグル・ナイトバグ・・」
左右にフラつきながらも、徐々に女性・・リグルへと近付いてゆく。
「私に近付くなッ!」
振り上げた足先を男が掴む。
細く美しい足を目の前に、男は目を細め嘆息を漏らした。
「ぐっ・・クク。そうだ、一本だけ残したんだったなぁ、この左足・・」
「は、離せ、下種野郎ッ」
「誰が離すかよ、このあばずれがッ」
倒れた時に取り出したのだろうか、もう片手に持った複数のアンプル剤をリグルの足へ叩きつける。
刹那、まるで泥団子同士をぶつけあわせたかのように足にアンプルが沈み込み、溶けるように消えていった。
――融合を操る程度の能力。彼が「錬金術師」と呼ばれる所以でもある、彼の特異能力だ。
「げっ」
「右足、左腕」
「うぐっ、がっ」
「最後はこの胸の傷の分だッ!」
「ごぼぉっ」
踵で踏み付け、抉り、蹴り飛ばす。
もんどりうって反吐を吐く男。それでも尚蹴りは止む事は無い。
「こんな、こんなヤク中のクサレ野郎に・・!」
男が動かなくなった頃、ようやくその蹂躙が収まる。
「そこに跪け、命乞いをしろ。そうすれば・・命だけは助けてやる」
「ククッ-アァッハァッハァッハァッ」
「・・何がおかしい!」
「がぁっ」
反吐を撒き散らし、男が再び蹴り飛ばされる。
「何がおかしい? そりゃあ、おかしいに決まってるだろ・・」
男がよろよろと立ち上がる。
「ようやく思い出したよ、リグル・ナイトバグ・・」
左右にフラつきながらも、徐々に女性・・リグルへと近付いてゆく。
「私に近付くなッ!」
振り上げた足先を男が掴む。
細く美しい足を目の前に、男は目を細め嘆息を漏らした。
「ぐっ・・クク。そうだ、一本だけ残したんだったなぁ、この左足・・」
「は、離せ、下種野郎ッ」
「誰が離すかよ、このあばずれがッ」
倒れた時に取り出したのだろうか、もう片手に持った複数のアンプル剤をリグルの足へ叩きつける。
刹那、まるで泥団子同士をぶつけあわせたかのように足にアンプルが沈み込み、溶けるように消えていった。
――融合を操る程度の能力。彼が「錬金術師」と呼ばれる所以でもある、彼の特異能力だ。
「な、何を・・うぐ、ぐ、ぅぅぅっ!」
「なぁに、ただの妖怪用の特性麻酔だよ・・三日は起きないだろうけどな」
「なぁに、ただの妖怪用の特性麻酔だよ・・三日は起きないだろうけどな」
「残念だったなぁ。そんな左足(モノ)ばっさり切って義足にしてりゃ、今頃復讐を果たせたのによ」
耳障りな男の高笑いが頭に響く。
しかし麻酔のせいであろうか・・彼女は何処か安らかな気持ちを抱いていた。
炎のような憎しみも切断された四肢の痛みも、塩が水に溶けるように薄れ消えていく。
そして意識もまた、深い闇へと堕ちて行った。
しかし麻酔のせいであろうか・・彼女は何処か安らかな気持ちを抱いていた。
炎のような憎しみも切断された四肢の痛みも、塩が水に溶けるように薄れ消えていく。
そして意識もまた、深い闇へと堕ちて行った。
「今度はあの時みたいに、惨めな命乞いなんてしてくれるなよ・・?」