;花見
;ヤマメメイン
;2009/04/09:書け
;タイトル未定
;序章?
;ヤマメメイン
;2009/04/09:書け
;タイトル未定
;序章?
幾度目になるだろうか、桜が咲いて散るのは。
有史以前から繰り返される自然の移ろいに、そんな問いかけなど意味を成さない。
桜は春になれば咲くし、咲けば散るし、葉が芽吹き、やがて実をつける。
そのサイクルをいち個人――妖怪が気に留めたところで、特になんら変わりは無い。
尤も、変えてしまえばそれは立派に“異変”として扱われ、解決――退治されてしまうだろう。
桜が咲く。桜が散る。今年もまた、儚く。
有史以前から繰り返される自然の移ろいに、そんな問いかけなど意味を成さない。
桜は春になれば咲くし、咲けば散るし、葉が芽吹き、やがて実をつける。
そのサイクルをいち個人――妖怪が気に留めたところで、特になんら変わりは無い。
尤も、変えてしまえばそれは立派に“異変”として扱われ、解決――退治されてしまうだろう。
桜が咲く。桜が散る。今年もまた、儚く。
;第一章?
地底に繋がる洞窟、その入り口。
春のうららかな陽射しに伸びる、丸っこいフォルムの影。
釣瓶落としのキスメと、その釣瓶桶のものだ。
普段内気で人見知りするこの娘が、わざわざ風呂敷包みなど持って来るというのは滅多に無い事である。
中身は見るまでもなく手作りのお弁当。
それもそのはず、この娘は花見に私を誘おうというのだ。
本来この娘は地底に属する者でも無いし、その気になれば宴席に紛れ込むことも難しくない。
それでも気にかけてくれているのだ――封じられた妖怪の事も。
期待混じりの視線を笑顔で受け止めつつ、頭を優しく撫でてあげる。
柔らかな髪に指を通して梳るように、私の嬉しさを伝えるように。
曇りのない、穢れのない笑顔。
向けられるだけで心がじんわりと温まるような気さえする。
桶の取っ手に手を掛け、ひょいと持ち上げる――慣れた行為。
洞窟の奥へと向かうのに、少女からの一切の抵抗は無かった……
春のうららかな陽射しに伸びる、丸っこいフォルムの影。
釣瓶落としのキスメと、その釣瓶桶のものだ。
普段内気で人見知りするこの娘が、わざわざ風呂敷包みなど持って来るというのは滅多に無い事である。
中身は見るまでもなく手作りのお弁当。
それもそのはず、この娘は花見に私を誘おうというのだ。
本来この娘は地底に属する者でも無いし、その気になれば宴席に紛れ込むことも難しくない。
それでも気にかけてくれているのだ――封じられた妖怪の事も。
期待混じりの視線を笑顔で受け止めつつ、頭を優しく撫でてあげる。
柔らかな髪に指を通して梳るように、私の嬉しさを伝えるように。
曇りのない、穢れのない笑顔。
向けられるだけで心がじんわりと温まるような気さえする。
桶の取っ手に手を掛け、ひょいと持ち上げる――慣れた行為。
洞窟の奥へと向かうのに、少女からの一切の抵抗は無かった……
;第二章?
地底と地上を結ぶ場所は幻想郷では数少ない。
その中で比較的安全かつ確実なルートが、橋姫の守る縦穴だ。
「これ見よがしに花見だなんて、自由に出歩ける奴が妬ましいわ。」
大体の用向きを察してか、開口早々嫉妬するのが守護神でもある橋姫だ。
「一日くらいサボったって罰は当たらないさ。何なら私らを嫉妬して付け回すかい?」
「……誰が。生憎私は仕事熱心なのよ。」
そう、彼女――水橋パルスィは仕事熱心だ。
冬の一件以来交流が増えた分だけ、番人としての仕事に更に身を入れている。
一途で、細かいところに気が利く、優しい側面が彼女を守護神たらしめているのだ。
尤も、変わり者である事だけは間違い無い。
「まあ、また後で誘いに来るよ。どうしても誘っておきたい人がいるんでね。」
「私より大事な人って意味かしら。聞き捨てならないわね?」
「あんたもどうしても誘っておくべき側だよ。ただ二度手間を省いてるだけさ。」
刺すような視線を投げ掛けておきながら、それでもパルスィは縦穴を通してくれた。
「帰りに誘ってくれなかったら、呪うわよ?」
炯々と輝くエメラルドの瞳は半分以上本気で呪うつもりにしか見えなかったが。
地底と地上を結ぶ場所は幻想郷では数少ない。
その中で比較的安全かつ確実なルートが、橋姫の守る縦穴だ。
「これ見よがしに花見だなんて、自由に出歩ける奴が妬ましいわ。」
大体の用向きを察してか、開口早々嫉妬するのが守護神でもある橋姫だ。
「一日くらいサボったって罰は当たらないさ。何なら私らを嫉妬して付け回すかい?」
「……誰が。生憎私は仕事熱心なのよ。」
そう、彼女――水橋パルスィは仕事熱心だ。
冬の一件以来交流が増えた分だけ、番人としての仕事に更に身を入れている。
一途で、細かいところに気が利く、優しい側面が彼女を守護神たらしめているのだ。
尤も、変わり者である事だけは間違い無い。
「まあ、また後で誘いに来るよ。どうしても誘っておきたい人がいるんでね。」
「私より大事な人って意味かしら。聞き捨てならないわね?」
「あんたもどうしても誘っておくべき側だよ。ただ二度手間を省いてるだけさ。」
刺すような視線を投げ掛けておきながら、それでもパルスィは縦穴を通してくれた。
「帰りに誘ってくれなかったら、呪うわよ?」
炯々と輝くエメラルドの瞳は半分以上本気で呪うつもりにしか見えなかったが。
;第三章
旧地獄街道はほどほどに栄えている。
旧都は地上とは隔絶されていても、独自に社会として発展してきたのだ。
その中心であり原動力でもあるのは、やはり鬼であった。
人間に愛想を尽かしたという理由が全てとは限らないのだろうが、地上との交流を鬼はよしとしなかったらしい。
旧地獄に大々的な都市を造り上げたのも、怨霊を管理するかわり地上の妖怪の進入を拒んだのも、鬼である。
とはいえ、地上に居づらい――忌み嫌われた妖怪、能力故に白眼視された妖怪を積極的に受け入れたのも鬼なのだ。
だからこそ、鬼の事を根っから嫌いな妖怪なんて地底には存在しない。
多かれ少なかれ好意的な感情を持つのが常である。
私もその例には漏れない類で、だからこそ旧都の方まで足を伸ばしたのだ。
……探していた人物は簡単に見つかった。
というより、いつだって都合よくそこらで呑んだくれている。
彼女の不思議さぶりは地底の存在の中でも群を抜いていて、首をひねることばかり経験させてくれるのだ。
探そうとして居酒屋の暖簾をくぐると偶然居合わすのが偶然でなく必然である、そんな不可思議な人物。
山の四天王、力の勇儀こと星熊勇儀と言えば、地底で知らぬ者はない。
堂々とした佇まいで杯をゆっくりと空けると、私たちに鷹揚に声をかけてくる。
「おお、今日は何だい、お弁当持ってお出かけかい?」
「ああ、お弁当持った釣瓶落とし連れて、今から鬼も連れて花見さ。あんたは花見酒に嫌だなんて言いやしないんだろう?」
額に立派な角を生やした鬼――星熊勇儀は、大きく口を開けて笑った。
「あっはっは、当然よ。倒れるまで付き合ってやるさ。」
大きな杯を手にしたままで、軽々と片手にキスメの桶を握って掲げる。
この鬼なりの愛情表現なのだろう、釣瓶桶を揺らさぬようにしながら駆けてゆく。
その後姿を眺めてから、私はもう一人を探しに旧地獄街道を更に進むのだった……
旧地獄街道はほどほどに栄えている。
旧都は地上とは隔絶されていても、独自に社会として発展してきたのだ。
その中心であり原動力でもあるのは、やはり鬼であった。
人間に愛想を尽かしたという理由が全てとは限らないのだろうが、地上との交流を鬼はよしとしなかったらしい。
旧地獄に大々的な都市を造り上げたのも、怨霊を管理するかわり地上の妖怪の進入を拒んだのも、鬼である。
とはいえ、地上に居づらい――忌み嫌われた妖怪、能力故に白眼視された妖怪を積極的に受け入れたのも鬼なのだ。
だからこそ、鬼の事を根っから嫌いな妖怪なんて地底には存在しない。
多かれ少なかれ好意的な感情を持つのが常である。
私もその例には漏れない類で、だからこそ旧都の方まで足を伸ばしたのだ。
……探していた人物は簡単に見つかった。
というより、いつだって都合よくそこらで呑んだくれている。
彼女の不思議さぶりは地底の存在の中でも群を抜いていて、首をひねることばかり経験させてくれるのだ。
探そうとして居酒屋の暖簾をくぐると偶然居合わすのが偶然でなく必然である、そんな不可思議な人物。
山の四天王、力の勇儀こと星熊勇儀と言えば、地底で知らぬ者はない。
堂々とした佇まいで杯をゆっくりと空けると、私たちに鷹揚に声をかけてくる。
「おお、今日は何だい、お弁当持ってお出かけかい?」
「ああ、お弁当持った釣瓶落とし連れて、今から鬼も連れて花見さ。あんたは花見酒に嫌だなんて言いやしないんだろう?」
額に立派な角を生やした鬼――星熊勇儀は、大きく口を開けて笑った。
「あっはっは、当然よ。倒れるまで付き合ってやるさ。」
大きな杯を手にしたままで、軽々と片手にキスメの桶を握って掲げる。
この鬼なりの愛情表現なのだろう、釣瓶桶を揺らさぬようにしながら駆けてゆく。
その後姿を眺めてから、私はもう一人を探しに旧地獄街道を更に進むのだった……
;第四章
ステンドグラスが色とりどりの影を映す、美しい建物が旧地獄にはある。
人呼んで地霊殿、怨霊をも恐れ怯ませる地底の代表者が住まう場所だ。
心ある妖怪、記憶持つ妖怪、どちらかであれば少なくとも彼女には引け目を感じざるを得ない。
嘘を嫌う鬼が彼女を祀り上げたのも納得いく存在――さとり。
その彼女を前に、私は今日の事を告げた。
「そうですか……宴は楽しいものですが、私を無理に誘う気はないのですね。」
彼女の言う通り、私は彼女を誘うつもりこそあれ、無理をさせる気は欠片もない。
だからこそ、代わりにこう持ち掛ける。
「あんたの場合、気を遣い過ぎるからね。私じゃ不足かもしれないが、後で二人きりでささやかながら桜を愛でようじゃないか。夜桜なんて如何だい?」
私の言葉を聞きながら、この妖怪は自然に心を読む。
それでいて、どれだけ非常識な事を考えていたとしても、それを普通に受け止めてしまう。
その度量の広さや器の大きさこそ彼女に風格を持たせているのだろう。
形の整った薄めの唇を僅かに緩め、さとりはそっと言葉を紡ぐ。
「夜桜の下で見れば一層美人だろうね、ですか。貴方は相変わらず私への評価が過大に思えますが。」
「なに、そう思ってしまうものは仕方ないのさ。で、如何するんだい? やんややんやの宴に混じるか、夜桜でも二人きりでゆっくり眺めるか。」
すぅっと細められた目が私の目を見つめ、そして静かに瞼が閉じられる。
僅かな時間、一呼吸の間。
「……夜桜にしましょう。お気遣い感謝します。それと、皆様方にも宜しくお伝え下さい。」
「……あと、夜桜を見るのにわざわざ水着は着ませんよ。」
しっかり私の妄想に釘を刺すさとりに軽く舌を出してみせ、私は地霊殿を後にした……
人呼んで地霊殿、怨霊をも恐れ怯ませる地底の代表者が住まう場所だ。
心ある妖怪、記憶持つ妖怪、どちらかであれば少なくとも彼女には引け目を感じざるを得ない。
嘘を嫌う鬼が彼女を祀り上げたのも納得いく存在――さとり。
その彼女を前に、私は今日の事を告げた。
「そうですか……宴は楽しいものですが、私を無理に誘う気はないのですね。」
彼女の言う通り、私は彼女を誘うつもりこそあれ、無理をさせる気は欠片もない。
だからこそ、代わりにこう持ち掛ける。
「あんたの場合、気を遣い過ぎるからね。私じゃ不足かもしれないが、後で二人きりでささやかながら桜を愛でようじゃないか。夜桜なんて如何だい?」
私の言葉を聞きながら、この妖怪は自然に心を読む。
それでいて、どれだけ非常識な事を考えていたとしても、それを普通に受け止めてしまう。
その度量の広さや器の大きさこそ彼女に風格を持たせているのだろう。
形の整った薄めの唇を僅かに緩め、さとりはそっと言葉を紡ぐ。
「夜桜の下で見れば一層美人だろうね、ですか。貴方は相変わらず私への評価が過大に思えますが。」
「なに、そう思ってしまうものは仕方ないのさ。で、如何するんだい? やんややんやの宴に混じるか、夜桜でも二人きりでゆっくり眺めるか。」
すぅっと細められた目が私の目を見つめ、そして静かに瞼が閉じられる。
僅かな時間、一呼吸の間。
「……夜桜にしましょう。お気遣い感謝します。それと、皆様方にも宜しくお伝え下さい。」
「……あと、夜桜を見るのにわざわざ水着は着ませんよ。」
しっかり私の妄想に釘を刺すさとりに軽く舌を出してみせ、私は地霊殿を後にした……
;第五章
橋姫の縦穴まで戻ると、人影が幾つも見えた。
一際大きな影には角があり、尖った耳の人影もある。
待っていたのだろうは思うが如何にも雰囲気がおかしい。
というより明らかに人影が多い、具体的には三つほど。
「つまり、あくまでも花見と言い張るのですね?」
「花見は花見だろう、それとも鬼が信じられないって言うのかい?」
「いえ信じないなんて事はありませんよ、ただ問題なのはその他の面々でして……」
「全員私の知り合いだ、それでも不満なんだね?」
「ええとその……」
よく通る声は勇儀のもの、そしてそれに答えているのはいつか聞いた声。
「誰かと思えば、いつぞやの天狗だね。如何したんだいこんな所で。」
私が尋ねてみると、渡りに船とばかりにこちらに鴉天狗が泣きついてくる。
「うぅっ、通りすがりの土蜘蛛さんじゃないですかぁ……どうしても鬼の方を誑かして地上侵略を試みる巨悪が諦めてくれないんですよぉ……」
「誰が巨悪よ、私はただ究極なだけじゃない!」
裏地が宇宙の――どうやってそんな構造になってるのかはもう理解の外だけど――マントを翻し、鴉天狗を威嚇する地獄鴉。
鴉同士の近親憎悪か何だか知らないが、いつの間にやら一触即発の気配。
「何よ私をさておいて盛り上がるだなんて、私を気にも留めないその暢気さが妬ましい……」
便乗する一人はまあ放っておくとして、取り敢えずのところは誤解を解いてやらないと話が進まないだろう。
「いいかいブン屋、特ダネってのはもっと確実なものじゃないと評価されないんだよ。」
「知ってますよ、“文々。新聞”は真実を皆様にお届けするものですから。」
「それなら食ってかかるのを止めればいいじゃないか。」
「いえ、ですが……」
どうやら鬼との友好関係やネタの楽しさとの間で、にっちもさっちもいかないらしい。
とりあえず、ネタを否定するよりも言い分を少しだけ認める方向で話を進めてやる。
「で、真実を伝えるなら、だよ? 巨悪の地上侵略って一面の見方に固執するのは如何かと思わないかい? なぁに、真実を書けば良いだけさ。」
私が自信たっぷりに――無論演技だが――言うと、天狗は食いつくように顔を寄せる。
「で、そんな手があるのですか?」
「簡単さ。地獄鴉も地上に出るほど今年の桜は見事だろう、で良いんじゃないかい?」
「さっすが土蜘蛛のお姉さん、あたいその簡潔さに参っちゃったよ。」
猫車を押したまま器用にポンと手を打つのは、増えていた影その3こと火車お燐。
呆気に取られているのは、地獄鴉の霊烏路空。
決めかねている鴉天狗の射命丸には、そっと後押しをしてやる。
「ほら、白玉楼の西行妖も見頃を迎えて、事件の予感がするんじゃないかい?」
決心がついたのか、幻想郷最速で鴉天狗が踵を返す。
「西行妖が!? あやややや、こうしてはいられません、ネタは鮮度が命ですよ! では失礼します!」
……そして去って行くその様、嵐の如し。
私が地上で得た知識の中には“あの妖怪桜が見ごろになる”だなんて例は無い。
それ故に事件なのだとしても“何故私が桜の見ごろ、それも冥界のもの”まで知っているのかというのにまでは考えが回っていないのだ。
射命丸文、自称幻想郷最速のブン屋。
最速を自負するからこそ、行動は迅速だが私なんかの虚言に引っかかりもするのだ。
一番槍は退いていては取れないし、その生き様は彼女に似合うので別に私からとやかく言う気は無いのだが。
「……巨悪……」
地底育ちの箱入りの地獄鴉が、なんだかしょげている。
その様子に気づいたらしく、釣瓶桶から手を伸ばしてキスメが慰めていた。
「うにゅ……」
空は唇を尖らせてこそいるが、先程までのぴりぴりとした刺々しさは取れているようだ。
そして、撫でる側撫でられる側を見つめて瞳をきらきらさせている猫耳娘。
多分放っておいて良さそうだ、むしろ積極的に関わると危ない気すらする。
「萌える……あたいは今、最高に萌えてるわぁっ……」
いや、多分あれは別世界に意識が飛んでる、むしろ関わると飛ばされる。
「とにかく。」
空気を察してか単に自分の性分なのか、勇儀が大きな声で音頭を取った。
「細かい事はいいんだ、今日は花見て騒いで思いっきり飲むよー!」
「おー!」
一致団結した地上の桜観賞ツアー一行は、当初の目的地である博麗神社を目指す。
白玉楼の桜は確かに見事だそうだが、知った顔を見たり騒いだりするのも目的のうちなのだ。
それに、地上では何かあるとすぐに博麗神社で宴会をするという。
そのしきたりに慣れておくのも決して悪いことではないだろう。
今までの年月を埋めるには、一日でさえ早過ぎるということは無いのだから……
一際大きな影には角があり、尖った耳の人影もある。
待っていたのだろうは思うが如何にも雰囲気がおかしい。
というより明らかに人影が多い、具体的には三つほど。
「つまり、あくまでも花見と言い張るのですね?」
「花見は花見だろう、それとも鬼が信じられないって言うのかい?」
「いえ信じないなんて事はありませんよ、ただ問題なのはその他の面々でして……」
「全員私の知り合いだ、それでも不満なんだね?」
「ええとその……」
よく通る声は勇儀のもの、そしてそれに答えているのはいつか聞いた声。
「誰かと思えば、いつぞやの天狗だね。如何したんだいこんな所で。」
私が尋ねてみると、渡りに船とばかりにこちらに鴉天狗が泣きついてくる。
「うぅっ、通りすがりの土蜘蛛さんじゃないですかぁ……どうしても鬼の方を誑かして地上侵略を試みる巨悪が諦めてくれないんですよぉ……」
「誰が巨悪よ、私はただ究極なだけじゃない!」
裏地が宇宙の――どうやってそんな構造になってるのかはもう理解の外だけど――マントを翻し、鴉天狗を威嚇する地獄鴉。
鴉同士の近親憎悪か何だか知らないが、いつの間にやら一触即発の気配。
「何よ私をさておいて盛り上がるだなんて、私を気にも留めないその暢気さが妬ましい……」
便乗する一人はまあ放っておくとして、取り敢えずのところは誤解を解いてやらないと話が進まないだろう。
「いいかいブン屋、特ダネってのはもっと確実なものじゃないと評価されないんだよ。」
「知ってますよ、“文々。新聞”は真実を皆様にお届けするものですから。」
「それなら食ってかかるのを止めればいいじゃないか。」
「いえ、ですが……」
どうやら鬼との友好関係やネタの楽しさとの間で、にっちもさっちもいかないらしい。
とりあえず、ネタを否定するよりも言い分を少しだけ認める方向で話を進めてやる。
「で、真実を伝えるなら、だよ? 巨悪の地上侵略って一面の見方に固執するのは如何かと思わないかい? なぁに、真実を書けば良いだけさ。」
私が自信たっぷりに――無論演技だが――言うと、天狗は食いつくように顔を寄せる。
「で、そんな手があるのですか?」
「簡単さ。地獄鴉も地上に出るほど今年の桜は見事だろう、で良いんじゃないかい?」
「さっすが土蜘蛛のお姉さん、あたいその簡潔さに参っちゃったよ。」
猫車を押したまま器用にポンと手を打つのは、増えていた影その3こと火車お燐。
呆気に取られているのは、地獄鴉の霊烏路空。
決めかねている鴉天狗の射命丸には、そっと後押しをしてやる。
「ほら、白玉楼の西行妖も見頃を迎えて、事件の予感がするんじゃないかい?」
決心がついたのか、幻想郷最速で鴉天狗が踵を返す。
「西行妖が!? あやややや、こうしてはいられません、ネタは鮮度が命ですよ! では失礼します!」
……そして去って行くその様、嵐の如し。
私が地上で得た知識の中には“あの妖怪桜が見ごろになる”だなんて例は無い。
それ故に事件なのだとしても“何故私が桜の見ごろ、それも冥界のもの”まで知っているのかというのにまでは考えが回っていないのだ。
射命丸文、自称幻想郷最速のブン屋。
最速を自負するからこそ、行動は迅速だが私なんかの虚言に引っかかりもするのだ。
一番槍は退いていては取れないし、その生き様は彼女に似合うので別に私からとやかく言う気は無いのだが。
「……巨悪……」
地底育ちの箱入りの地獄鴉が、なんだかしょげている。
その様子に気づいたらしく、釣瓶桶から手を伸ばしてキスメが慰めていた。
「うにゅ……」
空は唇を尖らせてこそいるが、先程までのぴりぴりとした刺々しさは取れているようだ。
そして、撫でる側撫でられる側を見つめて瞳をきらきらさせている猫耳娘。
多分放っておいて良さそうだ、むしろ積極的に関わると危ない気すらする。
「萌える……あたいは今、最高に萌えてるわぁっ……」
いや、多分あれは別世界に意識が飛んでる、むしろ関わると飛ばされる。
「とにかく。」
空気を察してか単に自分の性分なのか、勇儀が大きな声で音頭を取った。
「細かい事はいいんだ、今日は花見て騒いで思いっきり飲むよー!」
「おー!」
一致団結した地上の桜観賞ツアー一行は、当初の目的地である博麗神社を目指す。
白玉楼の桜は確かに見事だそうだが、知った顔を見たり騒いだりするのも目的のうちなのだ。
それに、地上では何かあるとすぐに博麗神社で宴会をするという。
そのしきたりに慣れておくのも決して悪いことではないだろう。
今までの年月を埋めるには、一日でさえ早過ぎるということは無いのだから……
;第六章
女三人寄れば姦しいというが、女三人が二つの六人寄ればどれだけ控えめだろうと大騒ぎだ。
地上に出るのは久し振りの面々は久し振りなりに、温泉事件で初めて地上に出たのは不慣れなりに、あれやこれやと物珍しさで騒ぎまくる。
その勢いたるや、花見で飲む分の酒が気付けば一割減っている程だ。
その主犯曰く、「酒は飲まれる為にある、足りなければ現地で調達すればいい」との事。
言っている事はともかく上機嫌なのは良い事だ。
「どうした水橋ぃ、私はここにいるよぉ!」
「きゃ、どこ掴んでるのよ、何押し付けてるのよ、意図的なら自慢ね妬ましいったらありゃしない!」
「ほーれほれそんな事言ってぇ、美人が台無しだぁ。」
「や、やめ、そんなとこくりくりしないでぇ……」
まあ、うん……上機嫌なのは良い事だ。
何をどうしたものか、こんな一行が混じっていても花見の季節には不自然でないらしい。
時々同様の集団が居たりするがまあ似たようなものだろう。
春は目覚めの季節、万物陽気に満ちて浮かれ騒ぐものだ。
そんな時に、窘めたりするのも野暮であろう。
「ああっ、あたい見てるだけで心がほえほえするよぅ、萌えるぅ……」
いや、下手に意見すると単に自身が危険にさらされかねないという側面もある。
「そうだな、草木萌え出る春だ。私のものだが。」
「あ、魔理沙! あれから私もっと究極になったのよ! せっかくだからフュージョンしましょ?」
「せっかくだから遠慮しておくぜ。今日は弾幕ごっこって感じじゃないだろうからな。」
さりげなく同行していたのは、特徴的な言葉遣いの黒白魔法使い。
春の陽気の中だからか前に見た時のショールはしていないようだ。
魔理沙はんーっと声を上げながら腕を上げ背伸びをし、それから私に視線を向けて尋ねる。
「ところで、何でまたお前達がこんなところにいるんだ? まあ花見なのは見ればわかるが。」
「ああ、今から神社で花見さ。あんただってその心算で酒甕抱える手伝いしてるんだろう?」
「ばれてしまっては仕方がないな、地底の酒を見過ごせるほど私は下戸じゃないぜ。」
まったく悪びれる様子もなく、そして自らを律する様子もない。
彼女をず太く無神経で傲慢と断じるのは簡単だが、そんな彼女と接しているのも悪くないものだ。
「あんたに飲ませる酒はあんまりない、イベントで貰えるのは一回程度のものじゃない。」
パルスィが得意げな笑顔で魔理沙を挑発する。
「それなら大丈夫だぜ、萃香がいるからな。それに霊夢だって貴重な参拝者を無碍にしたりなんかしない筈だ。」
……本当、ここまで開き直られると清々しくもある。
「ところで強い死体のお姉さん、神社までってまだ遠いんだね?」
「私は生憎死体じゃないぜ、だが神社まではもうすぐだ。」
「もうすぐってどのくらい?」
お空が首を傾げながら尋ねると、魔理沙はふふんと鼻で笑ってから答える。
「そこに見えるのが神社の石段だ――つまりもう着いてるみたいなものだな。」
一同揃って石段に視線を移すと、小さな人影がそこにあった。
尤も、頭に生えた角は大きいのだが。
「遅いじゃない、待ちくたびれてここで飲み始めてたよー。」
「萃香じゃないか! いやあ、久々だねぇ……」
地上に居る唯一の鬼という伊吹萃香の姿に、万感の思いとでも言わんばかりに勇儀が駆け寄る。
そしてそのまま――釣瓶桶を持ったまま――小鬼を豊かな胸に抱き留める。
半端な姿勢で抱かれた事に困惑を見せつつも、今は旧友との再会に萃香は喜びを隠してなどいなかった。
そんな二人の幸せムードを間近で受けたキスメも輝くような笑顔を見せている。
「ああっ、そんな、ダブルだなんて……」
そしてその様子をこれまた瞳輝かせて見つめる危険人物。
「私だって久々なのに……鬼同士でばかり楽しんでないで少しは歓迎する必要が、貴方にはある!」
こちらの要注意人物は日常的な発作なので、別段誰も気に留めていない。
「騒ぐにしろ花見するにしろ参道でやらないでよ。境内に場所とってあるから、そっちでやって。」
博麗神社の巫女、霊夢が歩きながらそう言ってまた来た道を戻っていく。
花見客団体は、親鴨を追う子鴨よろしくその後姿についていくのだった……
地上に出るのは久し振りの面々は久し振りなりに、温泉事件で初めて地上に出たのは不慣れなりに、あれやこれやと物珍しさで騒ぎまくる。
その勢いたるや、花見で飲む分の酒が気付けば一割減っている程だ。
その主犯曰く、「酒は飲まれる為にある、足りなければ現地で調達すればいい」との事。
言っている事はともかく上機嫌なのは良い事だ。
「どうした水橋ぃ、私はここにいるよぉ!」
「きゃ、どこ掴んでるのよ、何押し付けてるのよ、意図的なら自慢ね妬ましいったらありゃしない!」
「ほーれほれそんな事言ってぇ、美人が台無しだぁ。」
「や、やめ、そんなとこくりくりしないでぇ……」
まあ、うん……上機嫌なのは良い事だ。
何をどうしたものか、こんな一行が混じっていても花見の季節には不自然でないらしい。
時々同様の集団が居たりするがまあ似たようなものだろう。
春は目覚めの季節、万物陽気に満ちて浮かれ騒ぐものだ。
そんな時に、窘めたりするのも野暮であろう。
「ああっ、あたい見てるだけで心がほえほえするよぅ、萌えるぅ……」
いや、下手に意見すると単に自身が危険にさらされかねないという側面もある。
「そうだな、草木萌え出る春だ。私のものだが。」
「あ、魔理沙! あれから私もっと究極になったのよ! せっかくだからフュージョンしましょ?」
「せっかくだから遠慮しておくぜ。今日は弾幕ごっこって感じじゃないだろうからな。」
さりげなく同行していたのは、特徴的な言葉遣いの黒白魔法使い。
春の陽気の中だからか前に見た時のショールはしていないようだ。
魔理沙はんーっと声を上げながら腕を上げ背伸びをし、それから私に視線を向けて尋ねる。
「ところで、何でまたお前達がこんなところにいるんだ? まあ花見なのは見ればわかるが。」
「ああ、今から神社で花見さ。あんただってその心算で酒甕抱える手伝いしてるんだろう?」
「ばれてしまっては仕方がないな、地底の酒を見過ごせるほど私は下戸じゃないぜ。」
まったく悪びれる様子もなく、そして自らを律する様子もない。
彼女をず太く無神経で傲慢と断じるのは簡単だが、そんな彼女と接しているのも悪くないものだ。
「あんたに飲ませる酒はあんまりない、イベントで貰えるのは一回程度のものじゃない。」
パルスィが得意げな笑顔で魔理沙を挑発する。
「それなら大丈夫だぜ、萃香がいるからな。それに霊夢だって貴重な参拝者を無碍にしたりなんかしない筈だ。」
……本当、ここまで開き直られると清々しくもある。
「ところで強い死体のお姉さん、神社までってまだ遠いんだね?」
「私は生憎死体じゃないぜ、だが神社まではもうすぐだ。」
「もうすぐってどのくらい?」
お空が首を傾げながら尋ねると、魔理沙はふふんと鼻で笑ってから答える。
「そこに見えるのが神社の石段だ――つまりもう着いてるみたいなものだな。」
一同揃って石段に視線を移すと、小さな人影がそこにあった。
尤も、頭に生えた角は大きいのだが。
「遅いじゃない、待ちくたびれてここで飲み始めてたよー。」
「萃香じゃないか! いやあ、久々だねぇ……」
地上に居る唯一の鬼という伊吹萃香の姿に、万感の思いとでも言わんばかりに勇儀が駆け寄る。
そしてそのまま――釣瓶桶を持ったまま――小鬼を豊かな胸に抱き留める。
半端な姿勢で抱かれた事に困惑を見せつつも、今は旧友との再会に萃香は喜びを隠してなどいなかった。
そんな二人の幸せムードを間近で受けたキスメも輝くような笑顔を見せている。
「ああっ、そんな、ダブルだなんて……」
そしてその様子をこれまた瞳輝かせて見つめる危険人物。
「私だって久々なのに……鬼同士でばかり楽しんでないで少しは歓迎する必要が、貴方にはある!」
こちらの要注意人物は日常的な発作なので、別段誰も気に留めていない。
「騒ぐにしろ花見するにしろ参道でやらないでよ。境内に場所とってあるから、そっちでやって。」
博麗神社の巫女、霊夢が歩きながらそう言ってまた来た道を戻っていく。
花見客団体は、親鴨を追う子鴨よろしくその後姿についていくのだった……
;第七章
藁の莚を並べた席に、それぞれが思い思いに着く。
誰からとなくお弁当を並べ、酒を注いでは杯を渡す。
そんな折にまた一人、荷物と共に現れる人影――と数多の小さな影。
「なんだ、アリスか。しかもやけに準備がいいじゃないか。酒に肴に、いったいどんな風の吹き回しだ?」
アリスと呼ばれた少女は金髪を指で梳りながら、簡単に答える。
「花見って言っても、宴会でしょ。」
「便利だから萃めておいたんだよー。」
萃香が寝転がって瓢箪を呷りながら、どこか間の抜けた声で言う。
アリスは便利屋扱いされても顔色一つ変えず淡々と人形を使って準備をこなしていく。
程好く取り分けられ小皿に盛られる酒肴の数々。
既に酒を呷っている鬼と鬼はさておき、霊夢も酒をちびりちびりと舐めている。
「賑やかなくらいは構わないけど、あんた達が幾ら来たところで参拝客は増えないのよ。」
「まったくだな、賽銭も入れずに神社に来るなんて信じられないぜ。」
「あんたがその最たるものじゃないか、霊夢がかわいそうだよー。」
萃香に指摘されると、魔理沙は不思議そうな顔をする。
「おや、そうだったか? 私は善良な客だぜ。」
「贔屓目に見ても盗賊は善良とは言えないわ。」
アリスにまで指摘され、魔理沙は腕を組んでしかめっ面になり、はぁとため息をつく。
「わかった、参拝する時には賽銭を入れる。」
「じゃあ私もー!」
お空が声を発したところで、霊夢がため息をついて空の杯をお燐に差し出す。
「光ってればいいってものじゃないんだけど、ビー玉とか入れないでよね……」
「うにゅ……キラキラしてて綺麗なのにー。」
「まあまあ、お姉さんもくーっといって嫌な事忘れて、今日は花見なんだからさあ。」
注がれた酒を瞬く間に干し、霊夢はまた杯をお燐に向けてみせる。
「そうね、今日くらい楽しまないと損だわ。」
「そうそう、その意気だぜ。楽しまなくちゃ嘘だからな。」
盛り上がる一同に、酒も肴も準備完了。
広げられた色とりどりのお弁当も、早く食べてとばかりに目に腹に訴え掛ける。
「それでは皆様、乾杯しましょう。」
一同杯を掲げ、とりどりの声で唱和する。
「かんぱーい!」
……ん?
乾杯の音頭を取ったのは、何故か耳慣れない声だ。
そちらに訝しむ視線を投げ掛けると、羽衣を纏った長身の女が目で会釈する。
「まあ誰だか知らんが、駆けつけ三杯だ。干してもらうよ。」
そして眩しいくらいの笑顔の勇儀に大杯を手渡され、酒を勧められている。
実に自然な酒宴の光景。
それぞれが桜を愛で、話に花を咲かせ、酒を呷る。
発案者の頭を優しく撫でてあげると、桜に負けない程咲き誇る笑顔がその顔に浮かんだ……
誰からとなくお弁当を並べ、酒を注いでは杯を渡す。
そんな折にまた一人、荷物と共に現れる人影――と数多の小さな影。
「なんだ、アリスか。しかもやけに準備がいいじゃないか。酒に肴に、いったいどんな風の吹き回しだ?」
アリスと呼ばれた少女は金髪を指で梳りながら、簡単に答える。
「花見って言っても、宴会でしょ。」
「便利だから萃めておいたんだよー。」
萃香が寝転がって瓢箪を呷りながら、どこか間の抜けた声で言う。
アリスは便利屋扱いされても顔色一つ変えず淡々と人形を使って準備をこなしていく。
程好く取り分けられ小皿に盛られる酒肴の数々。
既に酒を呷っている鬼と鬼はさておき、霊夢も酒をちびりちびりと舐めている。
「賑やかなくらいは構わないけど、あんた達が幾ら来たところで参拝客は増えないのよ。」
「まったくだな、賽銭も入れずに神社に来るなんて信じられないぜ。」
「あんたがその最たるものじゃないか、霊夢がかわいそうだよー。」
萃香に指摘されると、魔理沙は不思議そうな顔をする。
「おや、そうだったか? 私は善良な客だぜ。」
「贔屓目に見ても盗賊は善良とは言えないわ。」
アリスにまで指摘され、魔理沙は腕を組んでしかめっ面になり、はぁとため息をつく。
「わかった、参拝する時には賽銭を入れる。」
「じゃあ私もー!」
お空が声を発したところで、霊夢がため息をついて空の杯をお燐に差し出す。
「光ってればいいってものじゃないんだけど、ビー玉とか入れないでよね……」
「うにゅ……キラキラしてて綺麗なのにー。」
「まあまあ、お姉さんもくーっといって嫌な事忘れて、今日は花見なんだからさあ。」
注がれた酒を瞬く間に干し、霊夢はまた杯をお燐に向けてみせる。
「そうね、今日くらい楽しまないと損だわ。」
「そうそう、その意気だぜ。楽しまなくちゃ嘘だからな。」
盛り上がる一同に、酒も肴も準備完了。
広げられた色とりどりのお弁当も、早く食べてとばかりに目に腹に訴え掛ける。
「それでは皆様、乾杯しましょう。」
一同杯を掲げ、とりどりの声で唱和する。
「かんぱーい!」
……ん?
乾杯の音頭を取ったのは、何故か耳慣れない声だ。
そちらに訝しむ視線を投げ掛けると、羽衣を纏った長身の女が目で会釈する。
「まあ誰だか知らんが、駆けつけ三杯だ。干してもらうよ。」
そして眩しいくらいの笑顔の勇儀に大杯を手渡され、酒を勧められている。
実に自然な酒宴の光景。
それぞれが桜を愛で、話に花を咲かせ、酒を呷る。
発案者の頭を優しく撫でてあげると、桜に負けない程咲き誇る笑顔がその顔に浮かんだ……
;第八章
飲めや騒げやの宴会は、夜に入っても終わる兆しを見せない。
先ほどの鴉天狗だとか連れて来られた河童だとか、挙句の果てには楽団だとか。
騒ぎは騒ぎを、宴は宴を呼び、いつしか大宴会になってしまっている。
名の知れた妖怪も多く、実に綺羅星の如くである。
私は釣瓶落としの頭を一度撫でると耳元で暇を告げ、席を立つ。
この賑わいでは気に留める者もない。
私は大宴会場と化した博麗神社から一人地底へと向かう。
待つのは性分でも、待たせるのはあまり性に合わない。
それに、こんな宴の賑わいの中に居れば、彼女の孤独こそ早くどうにかしたくなってしまうから……
先ほどの鴉天狗だとか連れて来られた河童だとか、挙句の果てには楽団だとか。
騒ぎは騒ぎを、宴は宴を呼び、いつしか大宴会になってしまっている。
名の知れた妖怪も多く、実に綺羅星の如くである。
私は釣瓶落としの頭を一度撫でると耳元で暇を告げ、席を立つ。
この賑わいでは気に留める者もない。
私は大宴会場と化した博麗神社から一人地底へと向かう。
待つのは性分でも、待たせるのはあまり性に合わない。
それに、こんな宴の賑わいの中に居れば、彼女の孤独こそ早くどうにかしたくなってしまうから……
;第九章
慣れた道を行き、訪れるのは地霊殿。
先程までの喧騒に比べれば静寂そのものとも言えよう。
持ち主の心を映すようにも見える、色とりどりなのに物悲しく煌くステンドグラス。
彼女に来意を知らせるのはさして難しくない。
彼女とすれば否応無しに知ってしまう、それが“さとり”の習性。
今回もそう、近付きゆくだけで彼女に私の考えている事が伝わる。
そしてそれが故に彼女の方から姿を現す事になる。
「別に待ってはいませんよ、むしろ早いとすら思っていました。」
薄く透ける紫色の髪を軽くふわりと掻き上げながら、私の言葉を待つでもなく扉を開いたさとりが告げる。
彼女としっかり話をするには、若干の慣れが必要だ。
私自身が口にする事と、考える事思う事の乖離は可能な限り避ける事。
そして、彼女が話しやすいペースで話させる事が大事となる。
それでも口さがないのが人情というもの、自然言葉は出てしまうのだけれど。
「それじゃあ、お色直しでも待った方が良いかい?」
「その必要はありませんよ。準備は出来ていますから。」
薄めの、それでいて瑞々しい唇が言葉を紡ぎ出す。
考えるより先にそこを軽く指先で撫でると、さとりは甘い声を漏らした。
「ん、ぅ……いきなり唇なんて撫でないでください。驚いてしまいますから。」
「あんたは驚いたくらいが丁度いいんだよ、どうにも普段から張り詰めてるからね。」
さとりは私の軽口に口角を僅かに持ち上げ、優しい眼差しで微笑む。
「そう言いながら、心は素直ですよ。役得だなんて、そう素直に思うものですかね。」
窘めるような言葉を投げ掛けるその顔には、むしろ慈母のような寛大さが浮かんでいる。
「ふふ、ばれちゃあ仕方がないね。この唇が好きなんだよ。」
もう一度、今度は軽く指先で唇の形をなぞる。
目蓋を閉じて、私の指を受け入れるさとり。
心に一度思い描いてから、人差し指をそっと唇の隙間に差し入れてあげる。
さとりは静かに指を唇で食み、舌の先でちょんと私に触れて来る。
軽くその舌先を撫でてやるとさとりの頬が僅かに染まり、小さな鼻息が漏れ出た。
左手で頭を撫でてやりながら、心で労い、口でちゃんと告げる。
「ありがとう、可愛いよ、さとり。」
指を咥えたままのさとりが目蓋を開き、微かな恥じらいの色を浮かべた。
かわいらしいおでこにそっと口付け、私はもう放してくれていいよと囁く。
小さな水音を立てて唇を離したさとりは、私に視線で抱擁をねだる。
一度軽く掻き抱いてあげると、満足げな猫のように咽喉を鳴らして。
そっと唇を触れ合わせるだけの口付けを交わし、そろそろ行こうかと囁く。
さとりは何も言わずに、こくりと頷いた……
先程までの喧騒に比べれば静寂そのものとも言えよう。
持ち主の心を映すようにも見える、色とりどりなのに物悲しく煌くステンドグラス。
彼女に来意を知らせるのはさして難しくない。
彼女とすれば否応無しに知ってしまう、それが“さとり”の習性。
今回もそう、近付きゆくだけで彼女に私の考えている事が伝わる。
そしてそれが故に彼女の方から姿を現す事になる。
「別に待ってはいませんよ、むしろ早いとすら思っていました。」
薄く透ける紫色の髪を軽くふわりと掻き上げながら、私の言葉を待つでもなく扉を開いたさとりが告げる。
彼女としっかり話をするには、若干の慣れが必要だ。
私自身が口にする事と、考える事思う事の乖離は可能な限り避ける事。
そして、彼女が話しやすいペースで話させる事が大事となる。
それでも口さがないのが人情というもの、自然言葉は出てしまうのだけれど。
「それじゃあ、お色直しでも待った方が良いかい?」
「その必要はありませんよ。準備は出来ていますから。」
薄めの、それでいて瑞々しい唇が言葉を紡ぎ出す。
考えるより先にそこを軽く指先で撫でると、さとりは甘い声を漏らした。
「ん、ぅ……いきなり唇なんて撫でないでください。驚いてしまいますから。」
「あんたは驚いたくらいが丁度いいんだよ、どうにも普段から張り詰めてるからね。」
さとりは私の軽口に口角を僅かに持ち上げ、優しい眼差しで微笑む。
「そう言いながら、心は素直ですよ。役得だなんて、そう素直に思うものですかね。」
窘めるような言葉を投げ掛けるその顔には、むしろ慈母のような寛大さが浮かんでいる。
「ふふ、ばれちゃあ仕方がないね。この唇が好きなんだよ。」
もう一度、今度は軽く指先で唇の形をなぞる。
目蓋を閉じて、私の指を受け入れるさとり。
心に一度思い描いてから、人差し指をそっと唇の隙間に差し入れてあげる。
さとりは静かに指を唇で食み、舌の先でちょんと私に触れて来る。
軽くその舌先を撫でてやるとさとりの頬が僅かに染まり、小さな鼻息が漏れ出た。
左手で頭を撫でてやりながら、心で労い、口でちゃんと告げる。
「ありがとう、可愛いよ、さとり。」
指を咥えたままのさとりが目蓋を開き、微かな恥じらいの色を浮かべた。
かわいらしいおでこにそっと口付け、私はもう放してくれていいよと囁く。
小さな水音を立てて唇を離したさとりは、私に視線で抱擁をねだる。
一度軽く掻き抱いてあげると、満足げな猫のように咽喉を鳴らして。
そっと唇を触れ合わせるだけの口付けを交わし、そろそろ行こうかと囁く。
さとりは何も言わずに、こくりと頷いた……
;第十章
私とさとりが向かったのは、洞窟のそばの人気のない林。
その縁のあたりに数本、まばらに桜の姿があった。
「はあ、出来るだけ他人に見つからない場所を選んだ結果、ですか。」
「まさかとは思うが、見られた方が良かったかい?」
意地悪く問い掛けてあげると、さとりは私の腕に縋り付いて震える。
「わかってるさ、わざわざ他の奴に見せやしないよ。安心して良いからね。」
怨霊も恐れ怯む少女らしからぬ、心細げな様子。
本当は彼女だってか弱い少女でもあるのだ。
優しくその背を左手で撫でてあげ、右手を腰に回し抱き寄せ、柔らかな頬に頬擦りしてあげる。
右耳に感じる、湿った呼気。
頬擦りを続けたまま、心と言葉で優しくさとりに伝えてゆく。
「精一杯の勇気を振り絞って来てくれたんだ、本当に嬉しいよ。ありがとう。」
言葉に詰まっているのか、ただ熱と吐息だけが温かく伝わる。
左手でそっと首筋を撫でて後頭部を支えてあげながら、八分咲きの桜の下で唇を啄ばむ。
ちゅ、ちゅ、何度も何度も、さとりと口付けを交わす。
私にしがみ付くように、さとりの腕が私に回される。
目蓋を閉じ、私の為すがままに任せた少女。
軽く腰を撫でてから、唇をしっかり押し付け、柔らかな感触を楽しむ。
「ん、んん……」
「んむ、んふ……」
さとりの雪のように白い肌が桜のように色づき、次第に呼気が乱れてくる。
ちゅぅっと音を立てて吸ってから唇を離すと、さとりは大きな息を吐く。
熱く、湿った、明らかに普段と異なる息。
腰に回していた右手で、ツンと上向きの引き締まったお尻を撫でてあげると、さとりは小さく身じろぎした。
そして、私は心に今日二度目の、さとりの水着姿を思い描く。
こういう時に、言葉にするのは短くていいのだ。
「見せてくれるね?」
スカートをわざと指先でお尻に擦り付けると、木綿や絹とは少し違う音が小さく立つ。
さとりは顔を桜よりも紅に染めて、消え入りそうな声で返事をする。
「……はい……」
私はさとりの項を左手でそっと愛撫し、その身体を放してあげる。
もじもじと恥じらいを見せながら、さとりは細身の身体を包む淡藤色のチュニックにまず手をかけて、私に伏し目がちの視線を送る。
私はなるだけ優しく表情を作り、さとりの目――顔の目、そして第三の目――と視線を交わす。
さとりは小さくこくりと頷き、チュニックのボタンを一つ一つ丁寧に外し始めた。
ボタンの意匠に似た触手の先端のハート型が、チュニックから離れて空を泳ぐ。
桜より薄いピンクのワンピース一枚になったさとりは、私に視線でその先を尋ねる。
「ううん、無理しないでいいんだよ。ずっと地底(あそこ)に居たあんたには、地上の風は冷た過ぎるからね。」
そう言って優しく頭を撫でてやると、さとりはふるふると首を横に振って唇を開いた。
「それでも……貴方が望んだ事ですから……できるだけ、応えたいんですよ?」
健気で、いじらしい答え。
たまらず唇を奪い、一度ぎゅっと抱きすくめる。
先程より一枚分、体温が近い。
細い身体をまた放しさとりに懇願するように先をせがむ。
「見せて、欲しい……」
「……はい……」
小さく、それでも確りとさとりは肯く。
触手と第三の目を頭の傍へと動かす様子などは、いつ見ても身体の一部ながら器用だとしか言えない不思議なもので、私はその様子をじっと見つめていた。
さとりと目が合う――第三の目となので、顔だけに慣れているとこんな表現はおかしいのだろうけれど――と、首を引き抜こうとする手が一層先を急ぐようにして素早く動く。
「焦らないで、ちゃんと待ってるよ?」
「はい……もう、すぐですから。」
ワンピースの下の方はずり上がり、既に下着とは違う布地を覗かせている。
陽光を久しく知らない雪白の肌が顕わになり、鮮やかなピンク色の水着との対比が私に生唾を飲ませる。
セパレートで二段のフリルを纏うモノカラーの水着だけが、私とさとりの秘部を隔てている。
そう実感すると、さとりが恥ずかしげに私に告げた。
「あの、できれば全体も見てくれませんか?」
そう言われてから、改めてさとりの全身を眺める。
薄い紫の髪、私とお揃いの赤い瞳、抜けるように白い肌、鮮やかな水着。
夜闇の中に浮かび上がるような、幻想的な美しさ。
夜桜に負けない、それでいてどこか控え目な姿。
表情は頼りなさげで素肌を曝す事にどこか気後れした様子が窺える。
私は左手を伸ばし、僅かな膨らみを包むトップの水着に触れて、そのまま可愛らしい乳房を包み込む。
「恥じる事はあるかも知れないけど、私が見たいのはあんたなんだよ。私の大親友で、私に一番可愛いところ見せてくれる古明地さとり。私ばっかり楽しませて貰ってて申し訳ないね、こんな格好までさせてさ。」
そのまま左手をさとりの肋骨に押し付けるようにして、小振りな胸をくにくにと愛してあげる。
羞恥にすっかり上気した肌が、多分露出の異常さに興奮してるさとりが、私の愛撫ひとつで敏感に反応する。
軽く舌を出して虚空をちろちろと舐めるのを見せ付け、さとりの左手に右手を絡めてあげると、おずおずとさとりの唇から桃色の舌が現れる。
軽く舌先で舌先をつつき、お互いに舌をそよがせながら少しずつ距離を近付けてゆき、互いに唇を重ねて、唇に舌を滑り込ませる。
「ん、ふぅっ……」
「んむぅ、んんっ……」
私はさとりの舌をしゃぶりながら、唾液を流し込む。
さとりは私の口腔を探りながら、流し込まれる唾液をこくこくと嚥下する。
さとりの手が、私の胸に伸ばされ、様子を窺うように静かに触れてくる。
私はそんなさとりに。
恋愛とは違う、でも友達関係とも違う、自分勝手な欲望をぶつける。
さとりはそんな私に。
他では多分見せないような、少女の反応を見せてくれる。
私はさとりを手ごろな桜の幹に押し付け、唇を離した。
私の唾液がさとりの唾液と混ざり合った白糸が、二人の間をつっと伸び、風に切れ落ちる。
さとりの右手を左手に捕らえると、私は目尻を下げて微笑んでみせる。
さとりの白い咽喉が僅かに上下する。
「犯したい、ですか……」
「犯されたい、かい?」
さとりは答えず、視線を私から外す。
第三の目は、私の答えを見逃さないようにしっかりと私を見据える。
さとりの手の感触を一度楽しんでから離し、私は答えを待たずに私のワンピースに手を掛ける。
さとりは答えない。
でも、応える。
「そう、私が脱ぎ終わるまで。」
私はワンピースを脱ぎ捨て、黒いブラウスのボタンを外しながら。
「おあずけ、だよ。」
目の前の少女の盗み見るような視線を、喜びとともに受け止めていた……
その縁のあたりに数本、まばらに桜の姿があった。
「はあ、出来るだけ他人に見つからない場所を選んだ結果、ですか。」
「まさかとは思うが、見られた方が良かったかい?」
意地悪く問い掛けてあげると、さとりは私の腕に縋り付いて震える。
「わかってるさ、わざわざ他の奴に見せやしないよ。安心して良いからね。」
怨霊も恐れ怯む少女らしからぬ、心細げな様子。
本当は彼女だってか弱い少女でもあるのだ。
優しくその背を左手で撫でてあげ、右手を腰に回し抱き寄せ、柔らかな頬に頬擦りしてあげる。
右耳に感じる、湿った呼気。
頬擦りを続けたまま、心と言葉で優しくさとりに伝えてゆく。
「精一杯の勇気を振り絞って来てくれたんだ、本当に嬉しいよ。ありがとう。」
言葉に詰まっているのか、ただ熱と吐息だけが温かく伝わる。
左手でそっと首筋を撫でて後頭部を支えてあげながら、八分咲きの桜の下で唇を啄ばむ。
ちゅ、ちゅ、何度も何度も、さとりと口付けを交わす。
私にしがみ付くように、さとりの腕が私に回される。
目蓋を閉じ、私の為すがままに任せた少女。
軽く腰を撫でてから、唇をしっかり押し付け、柔らかな感触を楽しむ。
「ん、んん……」
「んむ、んふ……」
さとりの雪のように白い肌が桜のように色づき、次第に呼気が乱れてくる。
ちゅぅっと音を立てて吸ってから唇を離すと、さとりは大きな息を吐く。
熱く、湿った、明らかに普段と異なる息。
腰に回していた右手で、ツンと上向きの引き締まったお尻を撫でてあげると、さとりは小さく身じろぎした。
そして、私は心に今日二度目の、さとりの水着姿を思い描く。
こういう時に、言葉にするのは短くていいのだ。
「見せてくれるね?」
スカートをわざと指先でお尻に擦り付けると、木綿や絹とは少し違う音が小さく立つ。
さとりは顔を桜よりも紅に染めて、消え入りそうな声で返事をする。
「……はい……」
私はさとりの項を左手でそっと愛撫し、その身体を放してあげる。
もじもじと恥じらいを見せながら、さとりは細身の身体を包む淡藤色のチュニックにまず手をかけて、私に伏し目がちの視線を送る。
私はなるだけ優しく表情を作り、さとりの目――顔の目、そして第三の目――と視線を交わす。
さとりは小さくこくりと頷き、チュニックのボタンを一つ一つ丁寧に外し始めた。
ボタンの意匠に似た触手の先端のハート型が、チュニックから離れて空を泳ぐ。
桜より薄いピンクのワンピース一枚になったさとりは、私に視線でその先を尋ねる。
「ううん、無理しないでいいんだよ。ずっと地底(あそこ)に居たあんたには、地上の風は冷た過ぎるからね。」
そう言って優しく頭を撫でてやると、さとりはふるふると首を横に振って唇を開いた。
「それでも……貴方が望んだ事ですから……できるだけ、応えたいんですよ?」
健気で、いじらしい答え。
たまらず唇を奪い、一度ぎゅっと抱きすくめる。
先程より一枚分、体温が近い。
細い身体をまた放しさとりに懇願するように先をせがむ。
「見せて、欲しい……」
「……はい……」
小さく、それでも確りとさとりは肯く。
触手と第三の目を頭の傍へと動かす様子などは、いつ見ても身体の一部ながら器用だとしか言えない不思議なもので、私はその様子をじっと見つめていた。
さとりと目が合う――第三の目となので、顔だけに慣れているとこんな表現はおかしいのだろうけれど――と、首を引き抜こうとする手が一層先を急ぐようにして素早く動く。
「焦らないで、ちゃんと待ってるよ?」
「はい……もう、すぐですから。」
ワンピースの下の方はずり上がり、既に下着とは違う布地を覗かせている。
陽光を久しく知らない雪白の肌が顕わになり、鮮やかなピンク色の水着との対比が私に生唾を飲ませる。
セパレートで二段のフリルを纏うモノカラーの水着だけが、私とさとりの秘部を隔てている。
そう実感すると、さとりが恥ずかしげに私に告げた。
「あの、できれば全体も見てくれませんか?」
そう言われてから、改めてさとりの全身を眺める。
薄い紫の髪、私とお揃いの赤い瞳、抜けるように白い肌、鮮やかな水着。
夜闇の中に浮かび上がるような、幻想的な美しさ。
夜桜に負けない、それでいてどこか控え目な姿。
表情は頼りなさげで素肌を曝す事にどこか気後れした様子が窺える。
私は左手を伸ばし、僅かな膨らみを包むトップの水着に触れて、そのまま可愛らしい乳房を包み込む。
「恥じる事はあるかも知れないけど、私が見たいのはあんたなんだよ。私の大親友で、私に一番可愛いところ見せてくれる古明地さとり。私ばっかり楽しませて貰ってて申し訳ないね、こんな格好までさせてさ。」
そのまま左手をさとりの肋骨に押し付けるようにして、小振りな胸をくにくにと愛してあげる。
羞恥にすっかり上気した肌が、多分露出の異常さに興奮してるさとりが、私の愛撫ひとつで敏感に反応する。
軽く舌を出して虚空をちろちろと舐めるのを見せ付け、さとりの左手に右手を絡めてあげると、おずおずとさとりの唇から桃色の舌が現れる。
軽く舌先で舌先をつつき、お互いに舌をそよがせながら少しずつ距離を近付けてゆき、互いに唇を重ねて、唇に舌を滑り込ませる。
「ん、ふぅっ……」
「んむぅ、んんっ……」
私はさとりの舌をしゃぶりながら、唾液を流し込む。
さとりは私の口腔を探りながら、流し込まれる唾液をこくこくと嚥下する。
さとりの手が、私の胸に伸ばされ、様子を窺うように静かに触れてくる。
私はそんなさとりに。
恋愛とは違う、でも友達関係とも違う、自分勝手な欲望をぶつける。
さとりはそんな私に。
他では多分見せないような、少女の反応を見せてくれる。
私はさとりを手ごろな桜の幹に押し付け、唇を離した。
私の唾液がさとりの唾液と混ざり合った白糸が、二人の間をつっと伸び、風に切れ落ちる。
さとりの右手を左手に捕らえると、私は目尻を下げて微笑んでみせる。
さとりの白い咽喉が僅かに上下する。
「犯したい、ですか……」
「犯されたい、かい?」
さとりは答えず、視線を私から外す。
第三の目は、私の答えを見逃さないようにしっかりと私を見据える。
さとりの手の感触を一度楽しんでから離し、私は答えを待たずに私のワンピースに手を掛ける。
さとりは答えない。
でも、応える。
「そう、私が脱ぎ終わるまで。」
私はワンピースを脱ぎ捨て、黒いブラウスのボタンを外しながら。
「おあずけ、だよ。」
目の前の少女の盗み見るような視線を、喜びとともに受け止めていた……
;第十一章
春の空には霞か雲か見紛うばかりの星達が煌き、二人の素肌を照らしてくれる。
月明かりよりも儚いからこそ一層夜闇と私達の境界はぼやけ、二人の距離を近付けてくれる。
素肌で抱き締めると、さとりの体温が心地良い。
私の腕の中にいるさとりはかわいい。
手弱女らしさをこう直球で表現されると、私は時々自分の事が物足りなくなる。
けどこれでいい。
きっと女同士って気楽さが私達の関係を許してくれている面もあるのだろうから。
さとりの背中に沿って中指をゆっくりと這わせて下へ下へと辿ってゆく。
私の耳に届くのは、押し殺したような甘い声。
「もっと直接がいいのかい?」
わかっておいて聞く。
きっと意地悪なんだろう。
「……はい……お願い、します……」
さとりの声は艶掛かって、上擦ってしまっている。
私の指は水着の上からさとりのお尻の谷間をなぞり、不意にその奥へと割り込んでゆく。
「ひゃぁっ!?」
「相変わらず敏感だね。」
布地を押し付けるようにぐりぐりとさとりの窄まりを楽しんでから、ゆっくりと唇を重ねる。
「んちゅ……」
「ちゅ、ぴちゃ……れろ……」
さとりから快感を求めて舌を伸ばしてくる。
拒む理由なんて何処にも無い。
唾液を混ぜ合い、水音を立て、舌を絡め合う。
私の右手はさとりの引き締まったヒップの感触を楽しみ、水着の向こうの陰間を時々つつく。
敏感なさとりはこんな行為でも拒まない。
それでも、そろそろ切ないだろうから切欠を作ってあげる。
唇をそっと離し、呼吸を整える間を与えてあげる。
さとりは可愛らしい、悩ましい吐息を私に掛ける。
「脱ぐね?」
確認の意思表示なんかじゃない、これはさとりにとっては“命令”だろう。
人気はないとしても、野外で裸を曝すように私は言っているのだ。
それでも、さとりは小さく頷く。
その手が動く前に。
「きゃぁんっ!」
私の右手が後ろから布越しに秘部を捉える。
柔らかな肉と、むんと蒸れた熱気を手に感じる。
そして、一線を越えてしまった身体の素直な反応を、さとりの愛液の水気を指先に覚えて私は微笑む。
「下だけ脱げば十分だよ。」
何も言わずにさとりはピンク色の布地をずり下げた。
膝に引っ掛かったボトムの股のところに染みが出来ていて、そこから一筋の粘液がさとりの秘所に繋がっている。
さとりの身体を軽く横に向けると、改めて舌を絡め合う。
くちゅくちゅと水音がする。
右手を前からさとりの両脚の間に差し入れて、ぷっくりと充血したラビアに沿って指を前後させてやる。
止め処なく溢れる蜜が私の指を滑らせ、いやらしい音を立てる。
中指の先だけを軽く押し込むと、さとりの膣口はきゅんと締まって私を引き込もうとする。
抗うように指先を曲げ、内側からさとりを擽る。
我慢できずにさとりは唇を離し、脱力して私に寄り掛かった。
「ヤマ、メぇ……イっちゃいそう……」
震える声に左手であやすように背を撫でて応え、訴える快感には右手の親指がクリの包皮を剥いてあげてその先を促す。
「気を遣ってしまうんだね、どうぞご遠慮なく。」
中指をもう僅かに潜らせてさとりの敏感なところを擦り上げ、親指で剥き出しのクリを軽く撫でてあげる。
「ひ、あ、あぁぁぁ、あああああああっ……」
私の中指を痛いくらいに締め付けながら、さとりは震えながら絶頂に達してしまった……
月明かりよりも儚いからこそ一層夜闇と私達の境界はぼやけ、二人の距離を近付けてくれる。
素肌で抱き締めると、さとりの体温が心地良い。
私の腕の中にいるさとりはかわいい。
手弱女らしさをこう直球で表現されると、私は時々自分の事が物足りなくなる。
けどこれでいい。
きっと女同士って気楽さが私達の関係を許してくれている面もあるのだろうから。
さとりの背中に沿って中指をゆっくりと這わせて下へ下へと辿ってゆく。
私の耳に届くのは、押し殺したような甘い声。
「もっと直接がいいのかい?」
わかっておいて聞く。
きっと意地悪なんだろう。
「……はい……お願い、します……」
さとりの声は艶掛かって、上擦ってしまっている。
私の指は水着の上からさとりのお尻の谷間をなぞり、不意にその奥へと割り込んでゆく。
「ひゃぁっ!?」
「相変わらず敏感だね。」
布地を押し付けるようにぐりぐりとさとりの窄まりを楽しんでから、ゆっくりと唇を重ねる。
「んちゅ……」
「ちゅ、ぴちゃ……れろ……」
さとりから快感を求めて舌を伸ばしてくる。
拒む理由なんて何処にも無い。
唾液を混ぜ合い、水音を立て、舌を絡め合う。
私の右手はさとりの引き締まったヒップの感触を楽しみ、水着の向こうの陰間を時々つつく。
敏感なさとりはこんな行為でも拒まない。
それでも、そろそろ切ないだろうから切欠を作ってあげる。
唇をそっと離し、呼吸を整える間を与えてあげる。
さとりは可愛らしい、悩ましい吐息を私に掛ける。
「脱ぐね?」
確認の意思表示なんかじゃない、これはさとりにとっては“命令”だろう。
人気はないとしても、野外で裸を曝すように私は言っているのだ。
それでも、さとりは小さく頷く。
その手が動く前に。
「きゃぁんっ!」
私の右手が後ろから布越しに秘部を捉える。
柔らかな肉と、むんと蒸れた熱気を手に感じる。
そして、一線を越えてしまった身体の素直な反応を、さとりの愛液の水気を指先に覚えて私は微笑む。
「下だけ脱げば十分だよ。」
何も言わずにさとりはピンク色の布地をずり下げた。
膝に引っ掛かったボトムの股のところに染みが出来ていて、そこから一筋の粘液がさとりの秘所に繋がっている。
さとりの身体を軽く横に向けると、改めて舌を絡め合う。
くちゅくちゅと水音がする。
右手を前からさとりの両脚の間に差し入れて、ぷっくりと充血したラビアに沿って指を前後させてやる。
止め処なく溢れる蜜が私の指を滑らせ、いやらしい音を立てる。
中指の先だけを軽く押し込むと、さとりの膣口はきゅんと締まって私を引き込もうとする。
抗うように指先を曲げ、内側からさとりを擽る。
我慢できずにさとりは唇を離し、脱力して私に寄り掛かった。
「ヤマ、メぇ……イっちゃいそう……」
震える声に左手であやすように背を撫でて応え、訴える快感には右手の親指がクリの包皮を剥いてあげてその先を促す。
「気を遣ってしまうんだね、どうぞご遠慮なく。」
中指をもう僅かに潜らせてさとりの敏感なところを擦り上げ、親指で剥き出しのクリを軽く撫でてあげる。
「ひ、あ、あぁぁぁ、あああああああっ……」
私の中指を痛いくらいに締め付けながら、さとりは震えながら絶頂に達してしまった……
;第十二章
まだ息が荒いさとりを腕の中に収め、私はそっとうなじに口付ける。
包み込んだついでに控えめの胸を優しく撫で、頂を指先で軽くつつく。
小さく可愛らしい声を上げるさとりのうなじにもう一度唇を押し当て、私は囁き掛ける。
「少しは落ち着いたかい?」
「……はい。」
「じゃあ、上をごらん。」
「……あ……」
幹に背を預けた私のその腕の中で、さとりは桜を見上げる。
睦み合う間に東の空から昇った下弦の月に照らされ、桜の花びらが淡く輝いていた。
「一人で見るには勿体無くてね。私はあんたとこれが見たかったんだよ。」
「……綺麗ですね。」
「美人と見ると一層だよ。」
「戯言ですか?」
「本気さ。分かってる癖に。」
「……長生きしますよ、貴方は。」
嘆息交じりに言うさとりの胸をふにりと揉んであげると、すぐに可愛らしい喘ぎ声を上げて楽しませてくれる。
手を止めてからさとりの肩に顎を乗せて、無理に頬擦りする。
「好きだよ。」
「……ありがとうございます。」
少し離れた位置から訝しげに二人を見守っているような第三の目に手を伸ばすと、そちらも優しく撫でてあげる。
気の早い桜の花びらが数枚、さぁっと吹き渡った風に流れて行った。
素肌を冷やすようなその風に、私はさとりを抱き締める。
「着ても良いよ。風邪見舞いなんか御免だからね。」
「……え、あ、はい。」
「それとも、もっとしたかった?」
「……痴れ者。」
頬を薄紅に染めて押し黙ってしまったさとりを正面から抱きなおし、唇同士を触れ合わせる。
……そしてそれからさもありなん、春の夜の朧霞に私達は優しく包まれていた。とある春の日の、とある幻想のお話。
包み込んだついでに控えめの胸を優しく撫で、頂を指先で軽くつつく。
小さく可愛らしい声を上げるさとりのうなじにもう一度唇を押し当て、私は囁き掛ける。
「少しは落ち着いたかい?」
「……はい。」
「じゃあ、上をごらん。」
「……あ……」
幹に背を預けた私のその腕の中で、さとりは桜を見上げる。
睦み合う間に東の空から昇った下弦の月に照らされ、桜の花びらが淡く輝いていた。
「一人で見るには勿体無くてね。私はあんたとこれが見たかったんだよ。」
「……綺麗ですね。」
「美人と見ると一層だよ。」
「戯言ですか?」
「本気さ。分かってる癖に。」
「……長生きしますよ、貴方は。」
嘆息交じりに言うさとりの胸をふにりと揉んであげると、すぐに可愛らしい喘ぎ声を上げて楽しませてくれる。
手を止めてからさとりの肩に顎を乗せて、無理に頬擦りする。
「好きだよ。」
「……ありがとうございます。」
少し離れた位置から訝しげに二人を見守っているような第三の目に手を伸ばすと、そちらも優しく撫でてあげる。
気の早い桜の花びらが数枚、さぁっと吹き渡った風に流れて行った。
素肌を冷やすようなその風に、私はさとりを抱き締める。
「着ても良いよ。風邪見舞いなんか御免だからね。」
「……え、あ、はい。」
「それとも、もっとしたかった?」
「……痴れ者。」
頬を薄紅に染めて押し黙ってしまったさとりを正面から抱きなおし、唇同士を触れ合わせる。
……そしてそれからさもありなん、春の夜の朧霞に私達は優しく包まれていた。とある春の日の、とある幻想のお話。