春のある日 31KB
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「春のある日」
羽付きあき
あのまりさつむり親子がいなくなってから結構な日が経った。
季節はすでに春にまで足を伸ばしているが、ゆっくりが住み着いたという事はなかった。
そもそも冬やそこらにホイホイと流れ着くこと自体珍しいそうだが、二回来たゆっくりは両方とも恐らくは「捨てゆっくり」であるため偶然が重なれば迷い込むことも十分にありうると知ったのはつい最近の事であった。
コーヒーを飲みながら窓越しに小さな庭に目を向けると、花壇で何かがモソモソと動いていた。
大きい丸いのが一つ、そしてテニスボールほどの丸いのが二つ・・・
昼寝から明けて靄がかかった頭が急激に冴えわたった。驚いて窓を開けるとそこには。
「ゆ!ゆ!おちびちゃんたち!おぼうしさんにはなさんをつめてね!」
「ゆっくりわかったよ!」
「ゆゆ~・・・ゆっ!おはなさんがくささんごとぬけたよ!」
そこにはバスケットボール大ほどのまりさが一体。そしてテニスボールほどの子まりさが二体、私の庭の花壇の花を引きちぎり、底部で土を踏み荒らし、挙句の果てには根っこごと掘り返してグシャグシャにしていた。
街ゆっくりなら花壇をここまでめちゃくちゃになどしない。すればそれがどういう事になるか容易に想像が付くし、何より一部の街ゆっくりは「おうち宣言」を行うからだ。
窓を開けようとドタドタと走り寄った私に気付いたのか、まりさは子まりさ二体をひきつれてパンパンに膨れた帽子を舌で直しながら叫ぶ。
「ゆゆ!おちびちゃんたち!ゆっくりしないでにげるよ!」
「「ゆっくりわかったよ!」」
そして大きく体をつぶすとかなりの速さと高さを伴って飛び跳ねる。
私が窓を開けて頃にはすでに室外機を踏み台にして柵を飛び越えてどこかへ行ってしまった。
鈍重なゆっくりからは到底想像ができないスピードだ。
まりさ達が去っていった後、私は途方にくれながら庭を眺めた。
花壇の花々は花と草だけがむしり取られて茎が踏み折られてボッキリと斜めに傾いている。
茎が残っていればまだいい方だ。根元から根っこごと引き抜かれて根っこ近くの部分以外をむしり取ってそこらにほうり捨てられている。
当然根から引き抜かれたため土は穿り返され、グシャグシャになってしまった地面に折れた茎や花だけむしり取られた植物が無残に横たわっている。
「・・・山から下りてきたゆっくりか」
溜息をつきながらそうつぶやいた。
そう、春になると山から下りてきたゆっくり達がこの様に「豊富な食糧」を求めて花壇を食い荒らす事がよくある。
・・・ゆっくりに「固有」と言う概念は薄い。
狩り場は共有するという山野のルールがあるからだそうだ。
だがそれはゆっくりに対して余りあるほどの豊富な山や森の恵みがあるから成り立つ事である。
「かざり」「おうち」等は自身のものと区別できるが、食料に関しては結構いい加減な所があるのだ。
少なくとも街ゆっくりはテリトリーを共有する事がないため、これに関しては単なる環境の違いと言うべきだろう。
そして山や森を抜けてくるゆっくりの種類は大方限られている。
私の想像ではあのまりさの番は・・・
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・・・田畑の脇の用水路。
冬から春の少しの間は水位が下がっており、通常のゆっくりでも「ぼうし」や板切れを使えば簡単にわたる事が出来るほどに水位が下がってしまっている。
底が簡単に見えるので、2~3cm程の水位と言った所か。
さてその横には結構大きな導水管の穴があちこちに出来ており、「おうち」と言えば穴を掘るか洞窟の山野のゆっくり達にとって格好の住処ともなる。
3段程の階段があり、その脇には盛り上がって「岸」の様になった水底の上にそれなりの大きさの木の板がかかっている。
そこにつながる先は大きめの導水管。
そしてその中に居るのは、前述に登場したまりさ達の番である「ありす」だ。
導水管の少し奥に大きな葉っぱが3~4枚敷かれている。
その上にどっかりと座ったバスケットボール程のありすが一体。そしてその周りにはまだピンポン玉程の赤ありすが五体程小麦粉の皮を寄せ合って暮らしていた。
「みゃみゃ~、ありちゅもあたらしいおはなしゃんをちゅけちゃよ!」
五体の中では一番目に蔓から落ちた赤ありすが小さな花を飾りの脇につけてにっこりとほほ笑んでいる。
「きょれはぴかぴかひかっちぇちょっちぇもちょかいはにゃいししゃんぢゃわ!」
「きょにょひらちゃいいししゃんもぴかぴかにひかっちぇるわ!ちょかいはにぇ!」
二番目と三番目の赤ありす二対は恐らく山野からここまで来る道中で拾ったであろう「とかいはなたからもの」を見せ合っていかに「とかいは」であるか自慢をし合っている。
丸くて透明なビー玉と平たいガラスのおはじきが一番のお気に入りだ。
「みゃみゃ!しゅーりしゅーり!」
「ありちゅもみゃみゃにしゅーりしゅーりしゅるわ!しゅーりしゅーり!」
四番目と五番目の赤ありす二対はまだまだ甘えん坊でいつも親ありすにくっついて離れない。
それを見た親ありすは心底満足そうに笑顔を見せて
「ゆゆ!おちびちゃんたち!とってもゆっくりしてとかいはね!」といっている。
やがて聞き慣れた音を聞いたと思いきやいっせいにありす達が入り口のほうへと向いた。
その先には二体の子まりさがひょっこりと飛び出してきて、送れて大黒柱である親まりさがパンパンになった帽子を窮屈そうにとってこういった。
「ゆっくりただいま!ありす!」
「まま!ゆっくりただいま!」
「ゆゆ!きょうはおはなさんがいっぱいとれたよ!みんなでゆっくりたべようね!」
赤ありすたちが一斉に親まりさ達の元へと近寄る。
取り払った帽子の中にぎっしりと詰まれた花や柔らかくみずみずしい葉などを目をキラキラさせながら覗いていた。
「ゆゆ!おねえしゃんしゅごーい!」
「ちょっちぇもおいししょうぢぇちょかいはにぇ!」
「ありしゅおなかすいちゃよ…!おはなさんがちゃべちゃいわ!」
「「ゆぅ~!ちょっちぇもちょかいはにぇ!」」
口々に言葉を発しながらご飯のときを待っている。
それを見て親ありすが困ったような笑顔でこういった。
「ゆ!みんなでごはんさんをむ~しゃむ~しゃしないととはいはじゃないわ!いまからみんなでおさらさんにもりつけましょうね!」
「「「「ゆっきゅりわかっちゃよ!」」」」
そしてしばらくの間、親ありす達が小さな葉っぱのお皿に取ってきた花や葉を綺麗に盛り付けていく。
「とかいはなこーでぃねいと」を勉強中の赤ありすたちも重そうに花や葉を口にくわえて盛り付けの手伝いをしているようだ。
「ゆゆ!ここにはおなさんをこういうふうにかざるととってもとはいはなのよ!」
「ゆゆ~!みゃみゃはもにょしりぢゃね!」
「ありしゅもがんびゃりゅわ!ゆ!ゆ!」
親ありすを中心にせっせと動き回る赤ありすたちを見て子まりさ達とまりさは顔を見合わせて可笑しそう笑った。
「ゆふふ!おとーさん!まりさのいもうとたちはとっても"とかいは"でゆっくりしてるね!」
「がんばってね!おかーさんのおてつだいをするとゆっくりできるよ!」
「ゆ!ありすがもりつけるだけでもっとおいしそうでゆっくりしてみえるね!」
十分もするとそれぞれの葉っぱの上にはとかいは(?)に盛り付けられた草花がおいしそうに並んでいた。
「「「「「ゆっくりいただきます」」」」」
そういうと一斉に草や花をぱくりと食べるまりさ一家。
「「「「む~しゃむ~しゃ!しあわせー♪」」」」
瑞々しい葉っぱは親まりさと子まりさ達の大好物だ。む~しゃむ~しゃと咀嚼し幸せそうに声を上げる
対照にやわらかい花は親ありすと赤ありすたちの大好物だ。ぱくりと食べてはもそもそと口を動かして食べていく。
街に比較的近いこの場所で、まりさ一家は信じられないほどのゆっくりした生活を満喫していた。
みんなで揃ってのご飯が終わればその日は一日中みんなでおうたを歌ったりおどりを踊ったりしてすごしているが、今日は少し帰りが遅かった様子で、「お布団」の準備を始めている。
といっても先ほどに「お皿」となんら変わりない葉っぱの切れであったが、各々に口で運んでは下に敷いてその上にどっかりと底部をおろす。
「ゆ・・・!ゆ・・・!」
「ゆぅ~・・・おみょいわぁ・・・!」
「おちびちゃんたち!ゆっくりむりしないで!ありすがてつだうわ!」
四番目と五番目の赤ありすがもそもそと動いている。まだ上手に移動が出来ないため、てこずっている様だ。
何度もころりと転びながらも底部をぷりんぷりんと動かして一生懸命葉っぱを敷こうとする。
親ありすが手伝ってようやくしくことに成功し、その上にころりと転がった。
そして互いに今日あったことを眠りに付く少しの間だけにぎやかに話し合う。
「ゆゆ!きょうははねをおぼうしさんにつけたまりさをみかけたよ!とおくからみただけだけどとってもゆっくりしてたよ!」
「まりさもみたよ!にんげんさんとおはなししてたよ!」
「にんげんさんとなかよくしてるなんてとってもゆっくりしてるね!まりさもいつかあんなゆっくりになりたいよ!」
今日の話を親まりさ達がすると親ありすたちは興味心身に聞き取っている。
「ゆ!とりさんのはねをつけるなんてとかいはなこーでぃねいとをこころえてるまりさね!きっととってもとかいはでゆっくりしてるにちがいないわ!」
「ありしゅもあっちぇみちゃいわ!」
「ゆゆ!でもおきゃあしゃんのこーでぃねーちょのほうぎゃっすぎょいわ!」
「かじゃりのうえにかじゃりをちゅけりゅにょはちょかいはにょあかしにぇ!」
「ゆぴー・・・ゆぴー・・・」
「まりしゃもいちゅかおねーしゃんんみちゃいにおかじゃりしゃんをちゅけちゃいよ!」
・・・日が暮れてあたりが暗くなってもまりさ一家の談笑は続いた。
導水管からは微かに楽しそうな声が漏れている・・・
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次の日・・・
空はカラッと晴れ渡り、暖かい日差しと風が心地よく吹いていた。
導水管の入口に朝日が差し込んで着た頃、ご飯を終えた親まりさと子まりさ達が帽子をかぶり直して狩りの準備を整えている。
「きょうもおいしいごはんさんをいっぱいとってくるからね!ありす!」
「まりさもおとーさんにまけないようにがんばるよ!」
「いもうとたち!ゆっくりいってくるからね!」
そう言い残して元気よく外へと飛び跳ねる親まりさ達。今日も多くの食料をとってくるのだろう。
暫くするとありすは赤ありす達に向けてこういった。
「ゆ!きょうはてんきさんもぽかぽかだからおそとにでましょうね!」
「「「「「ゆゆ!おしょと!?」」」」」
赤ありす達の寒天の目がきらきらと輝いた。
この赤ありす達は山の風景も外の風景も知らない。
山からここまで降りて来た時はずっと親まりさの帽子の中に居たし、ここに引っ越してきてからも眺めるのは外の灰色の壁とそこから微かに見える青空だけであった。
なので外に出るのは実質今日が初めてだ。帽子や口の中に入っているのではない。「とかいは」な外の正解を見る事が出来るのだ。
そうときまれば禅は急げであった。
小さなお花を飾りの横につけ直したり、親ありすが使っている花の粉を使ってお化粧をしたりして準備をしている。
「ぱふぱふ・・・ちょかいはにゃかっこうをしなくっちゃ!」
「ありしゅ!おはなしゃんがまがっちぇるわ!」
「ゆゆ!ゆっきゅりありがちょう!」
「ありしゅもはなのこなさんでおけしょうしちゃいわ!」
「ゆ~ん・・・ありしゅにはまだはやいわにぇ・・・おはなしゃんがちょかいはよ!」
花の粉を小麦粉の皮につけたり、小さな花を飾りの横につけたり、「とかいはなひがさ」と称して葉っぱを頭に載せたりと様々な「とかいはなこーでぃねーと」を施している。
準備が終わる頃には少し背伸びした赤ありす達が、固まって互いの「こーでぃねーと」を讃えあっていた。
「おちびちゃんたち!ありすのあたまにのってね!」
舌で低調に赤ありすたちを頭に載せる親ありす。「やまいちばんのとかいは」と呼ばれたお洒落っぷりは伊達ではなく、花の粉や花の飾り、そして丁重に手入れされたサラサラの砂糖細工の髪はそこらの街ゆっくりとは天と地ほどの差があった。(飼いゆっくりと比べるとどうなのかはともかく)
外へ出て、階段を上がる。
「「「「「ゆわぁ~・・・ちょっちぇもちょかいはぢゃわ!」」」」」
「ゆふふ!おちびちゃんたちのほうがとかいはよ!」
ぽかぽかの太陽が降り注ぎ風が優しく撫でていた。
始めてみる外の景色に見とれる赤ありす達ピンク色の綺麗な花が木々に咲き、まるで雪の様にキラキラと落ちては流れていく。
あの花びらを飾りにすればどれだけ「とかいは」だろうか・・・そう思いながら青空を見渡す。
「おきゃあしゃん!あにおはにゃしゃんはちょっちぇもきれいぢぇちょかいはぢゃわ!」
「ありしゅありぇがほしいわ!」
「ありしゅも!」
「ちょかいはにゃちゃからもにょにしゅるわ!」
「ゆゆ!ちょっちょもきりぇいぢゃわ!」
口々に花の事をしゃべるのは流石は「やまいちばんのとかいは」である親ありすの子ゆっくりだ。
親ありすは頬笑みながら諭すようにこう言った。
「ゆゆ!そんなにあわてなくてもいっぱいあるわ!まずはぽかぽかさんにあたってとかいはなきぶんになってからおはなさんをあつめましょうね!」
舞う桜を見上げるありす達。街ゆっくりから見ればなんとまぁ呑気の光景だろうか。
(そうだわ!まりさのためにこのはっぱさんでとかいはなあくせさりーをつくればきっとよろこんでくれるわ!おちびちゃんたちのこーでぃねいとのれんしゅうにもなるし、とってもとかいはなあいでぃあだわ!)
・・・・・・・・・
・・・・・・
・・・
「ゆ!ゆ!おちびちゃんたち!ゆっくりついてきてね!」
「「ゆっくりわかったよ!ゆ!ゆ!」」
一方その頃親まりさと子まりさ達は春の日差しのもとをボヨンボヨンと幾度も飛び跳ねて移動している真っ最中であった。
昨日の所はもう当分何も生えてこないだろうからもっと別の場所に行く様だ。
山野のゆっくりにテリトリーの概念は薄く、そして何より(ゆっくりから見れば)それなりに遠くに見える「銀色の森」にはもっとゆっくりした食料があると思い込んでいた。
なんせ、近づくごとにとても四角い大きな山の下に色とりどりの花が勝手に生えているのだ。あの中心部にはもっとゆっくりとした場所があるに違いない。
赤ありす達が子ありす程に成長すればあの「銀色の森」まで引っ越しをしようと親まりさは思っていた。
・・・親まりさ達は知らなかった。あの銀色の森の下では日々街ゆっくり達がゆっくりできない毎日を過ごしているという事を。
春の風から微かにありすの匂いを感じ取った。
厳密にいえばありすが「おけしょう」とやらに使っている花粉の匂いだ。
「ゆゆ!おちびちゃんたち!こっちだよ!」
親まりさが子まりさ達を誘導しながら跳ねていく。灰色の壁を飛び越えてその先には、今まで見た事のないような光景が広がっていた。
「「「ゆわあ~!」」」
そこには色とりどりの花に良いにおいのする草が所せましと咲き乱れ、そこに隠れる様にイチゴがたっぷりとみのっていた。
「おいしそうなおはなさんやくささんがいっぱいあるよ!」
「ゆゆ!おかあさんのおけしょうさんのはなもあるよ!とってもゆっくりしてるね!」
子まりさ達が一斉に感嘆の声を上げる。
それを見て親まりさが先陣を切って飛び跳ねると後ろを振り向いてこう言った。
「おちびちゃんたち!いっぱいおぼうしさんにつめてね!きょうはとってもゆっくりしたごはんさんになるよ!」
「「ゆっくり!ゆっくり!」」
子まりさ達が負けじと飛び跳ねる。
親まりさはそれを見ると手ごろな花に舌を伸ばした・・・その時であった。
「ゆ!?」
突如何かに砂糖細工のおさげを引っ張られたよな感覚が襲った。
すんでの所で舌は花に届かない。
次の瞬間。急に青空が視界に映ったかと思うとまた急に一瞬にして地面が見えた。
グシャッと音がする。
最初に見えたのは真っ暗闇だ。地面が壁になっている?そう感じた瞬間にパキパキと音がして砂糖細工の歯が砕けた。
「っいだいいいいいいいいい!!までぃざのおがおがああああああ!!」
口から餡子と砂糖細工の歯を飛ばしながら寒天の両目から砂糖水の涙を流して叫んだ。
「「おどおおおおおじゃああああああん!?」」
子まりさ達の声が聞こえる。
そしてぼやけた視界が鮮明になるとそこに映っていたのは、頭に金の丸い飾りをつけたれみりゃであった。
「れびりゃだああああ!おぢびぢゃんだぢ!ゆっぐりにげでええええええ!」
親まりさが叫ぶ。次の瞬間子まりさ達は元来た道を一直線に跳ねようと後ろを振り向いた。
だが結果的にンげられることはかなわなかった。
れみりゃは親まりさの砂糖細工のおさげをつかんだまま子まりさ達に向かって猛然と突き進んだのだ。
鈍重なれみりゃとは思えないほどのスピードで親まりさをひっつかんで走るれみりゃ。
いくら跳ねるのが早いと言っても所詮は子ゆっくり程度である子まりさ達とでは基本的なポテンシャルが違いすぎた。
「いだいいいいい!ばでぃざのおざげざんびっばらないでねえええええ!!」
何度も地面に当たっては小刻みに跳ねながら引っ張られる親まりさ。
れみりゃが腕を振り上げた途端にその視界が宙に浮いた。
グルンと周りが一周する。その先にあったのは
「ゆ!?ゆ”ん”や”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”びゅっ!!」
子まりさが振り返って、どんどん自分に向けて近づいてきた。そしてその声を最後に親まりさは目の前が真っ暗になる。
「あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”!?おねえぢゃああああああああああああん!?」
二番目の子まりさの声が聞こえる。
れみりゃが腕を離したのかふっと体が軽くなった。
「ゆ”!?ゆゆ!?おぢびぢゃん!?までぃざのがわいいおぢびぢゃんはっ!?」
辺りをキョロキョロと伺い、そして遂には泣き叫ぶ二番目の子まりさの向いている方向へと目を向けた。
そこは丁度、自分の真下。
「ゅ”・・・ゅ”・・・」
「おぢびぢゃんんんんんんんんんんん!?どぼじでえええええええええええええええええ!?」
そこには子むきこの皮の半分以上が潰れ、餡子をぶちまけて潰れ饅頭となっている子まりさがいた。
微かに動いているが潰れ饅頭になるのは時間の問題だ。
親まりさはなぜこうなったのかを理解できていないようだ。
何のことは無い。れみりゃが親まりさのおさげを掴んで逃げる一番目の子れいむに向けて振り下ろしたというだけの話である。
「おぢびぢゃん!おぼうじざんだよ!?おぢびぢゃん!?」
親まりさが潰れて動かなくなった子まりさの帽子を舌で指し示して叫ぶ。
この帽子を肌身離さず大事にしていた一番目の子まりさなら、取り返そうと動くはずだからだ。
当然のごとく反応が無く、あたりには唯叫ぶ親まりさの声がこだましているだけであった。
「おぢびぢゃん!おぼうじざんをおどーざんがどっぢゃうよ!?ぼら!ぼら!だがらゆっぐりどりがえじでね!ゆっぐり!ゆっぐりいいいっ!」
叫ぶ親まりさの目の前で帽子がぐしゃっと潰れた。れみりゃが帽子を踏みつけたのだ。
「あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”!!おぼうじざんにいじわるじないでえええええええ!」
親まりさが泣き叫びながら哀願するが、れみりゃはただ無表情に帽子をグシャグシャに踏みにじる。
子まりさがあれだけ形を気にして常日頃の手入れを怠らなかった「ゆっくりとしたおぼうしさん」はあっという間に泥まみれで形も崩れたグシャグシャの布切れになってしまったのだ。
「おぢびぢゃんのゆっぐりじだおぼうじざんがあああああああああっゆぶごぉっ!?」
親まりさがたてにゴロゴロと転がって横たわる。れみりゃが蹴り上げたのだ。
れみりゃは次におそろしーしーを花にぶちまけてカタカタと震えている二番目の子まりさに目を向けた。
子まりさの足早に歩み寄っていく。
「ゆ”・・・!ゆ”・・・!」
寒天の両目から砂糖水がダバダバと流れた、砂糖細工の歯がカチカチとなり、水あめの脂汗が小麦粉の皮から噴出す。
れみりゃが手を伸ばしておさげを引っつかむとぐいっと子まりさを持ち上げた。
「ゆんやああああああ!おどおおおおおじゃあああああん!だづげでえええええええええええええええええええ!!」
子まりさがぐーねぐーねしながら動き、親まりさに助けを求めるが親まりさは地面に突っ伏し、「おぢびぢゃん・・・おぢびぢゃん・・・」とつぶやくだけで一向に動かない。
れみりゃが手を上げておさげをぶんぶんと振り回す。ミチミチと音を立てて砂糖細工のおさげを中心にぐるぐると回転を始める子まりさ
「いだいいいいいいいい!ばりざのおざげざんんんんんんんっ!いだいいいいいいいい!いだいいいいいいいいいいっ!」
「うー!」
れみりゃが声を上げて手を振り下ろした。遠心力で帽子は吹っ飛び、そのまま地面に向けて真っ逆さまに落ちる子まりさ。
「ゆびゅっ!」
グシャという音がして落ちたと同時に小麦粉の皮がへこみ、上にバウンドをした。
れみりゃが砂糖細工の髪を掴んで引き立て、子まりさの顔を覗き込む。
「ゆびゅふぅぅ・・・・ゆびゅぶふぅぅ・・・」
寒天の両目が飛び出し、小麦粉の皮の口腔に砂糖細工の歯が突き刺さって餡子が口の周りにびっちりと付いている。
れみりゃはそれを見ると小麦粉の皮の底部から手を差し込んで持ち上げた。
ゆっくりのあにゃるに両手をかけると一気に広げるようにこじ開ける。
「っゆぎぃいいぃぃいいぃっぃいいぃぃぃ!!ゆぎょおおおおおおおっ!?」
ミチミチと音を立てて穴が縦に裂けていく。
子まりさは上側の小麦粉の体をきめぇ丸のごとく左右に振りながら、あらん限り口をあけて泣き叫んだ。
「ううううーっ!」
れみりゃが叫んで一気にこじ開ける。
音を立てて縦に裂けた小麦粉の皮から餡子がドバッと餡子が流れ込んだ。
「ゆぎっ・・・!ゅ”っ・・・!ゅ”ぎっ・・・!」
口をパクパクとさせていた子まりさだったが、餡子が流れていくと同時にやがて裂け饅頭と化してしまった
れみりゃは子まりさだったゆっくりを投げ捨てると突っ伏したままの親まりさを引っ張りあげる。
「ゆ”・・・!どぼじで・・・ごんなごどずるのぉぉ・・・?」
「かってにれみりゃのかいぬしのこーまかんをあらしたからだど」
れみりゃの手が上に上がる。
その瞬間、親まりさの顔が凍りついた。
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「「「「「おきゃあしゃん!ゆっきゅりできちゃよ!」」」」」
赤ありす達が固まって誇らしげに何かを見せる。
それは桜の花びらや他の花で編み込んだ冠であった。
「ゆゆ!おちびちゃんたち!すごいとかいはねできね!まりさもきっとよろこんでくれるわ!」
そう、これは親まりさの為の「とかいはなあくせさりー」
とかいはなゆっくりになるための練習も兼ねて赤ありす達が一生懸命作ったのだ。
さて、そろそろ親まりさ達も狩りから戻るだろうし、一端「おうち」に戻ってびっくりさせてあげようと思ったその時であった。
丸い影が向こうからやってきたのだ。
「ゆゆ!?」
親ありすは首をかしげた。よく見えないがトンガリ帽子がないし、子まりさの様な影も見当たらない。
だが少しづつ近づいてくるにつれて、姿が見えてきた。
完全な姿を見た時、ありすが叫んだ。
「ゆうううううううう!?なんなのあれええええええええ!?」
親ありすが目にしたものそれは・・・ゆっくりであった。
何種かも判別できない。小麦粉の皮は全体がまんべんなく真っ黒でパサパサになっており、飾りどころか砂糖細工の髪もなかった。
砂糖細工の歯もすべてなくなっており、口だけがぽっかりと空いている。
そんな丸っこい何かがずーりずーりと近づいてきたのだ
「おちびちゃんたち!ありすのうしろにかくれるのよ!」
ありすが大声で叫ぶ。ただならぬ気配を感じた赤ありす達は不安そうに急いでありすの後部へと跳ねて行った。
「ぷくぅーっ!」
ありすは口をつぐんで大きく空気を入れ膨らんで丸っこい何かに威嚇を開始する。
丸っこい何かが何かを呟きながらこちらに向かってきた。
「ゅ・・・ぁ…り・・・す・・・ゅ”・・・ぐ・・・」
聞き覚えのあるその声、絹の擦れるようなか細い声を確かにありすは聞いた
「・・・ま、まりさ?まりさなの!?」
ありすが問いただすと
「ゅ・・・あ・・・り・・・す・・・ご・・・べん・・・ね・・・ご・・・べ・・・ん・・・・・・ね」
と再び帰ってきた。
「までぃざああああああああああああああああああああああああああああああ!?」
ありすが声を上げた。親まりさの変わり果てた姿に驚きそして声をあげて悲しんでいる。
モチモチだったあの小麦粉の皮は真っ黒になっており、パサパサと触れれば崩れてしまいそうな程に水分が無くなっていた。
「あ・・・り・・・ゆぶっ!ゆぐぶぶぶぼぼぼぼぼぉぉぉおおおぉぉぉおおおおおおぶぇげえええええええええええええええええええええ!!!」
「までぃざあああああああああああああ!?」
突如親まりさの小麦粉の皮がグネグネと動き始めた。
通常ゆっくりが小麦粉の皮の内部にある餡子を動かす時は何らかのアクションを起こす時だ。
その場を動かずに小麦粉の皮だけを動かす。これはつまり「のーびのーび」なのだろうが親まりさのそれは違った。
縦だけではない。まるで何か、そう「何かが内側で暴れている」様な動き方だ。
親まりさも餡子を吐き出しながら寒天の両目を見開いてぐーねぐーねしながらこーろこーろして地面を転がりまわっている。
「ゆっぎいいいいいいいいいいいいい!!ぶげぇっぇぇえええええええええおぼごおおおおおおおおおおおおおおお!?」
「までぃざああああ!どがいばっ!どがいばあああああああっ!」
ありすの呼びかけに対しても答えず餡子をどんどんと吐きだす親まりさ。
やがて小麦粉の皮が伸びたかと思うと丸く「千切れた」
外からではない。内側から何かに噛み切られた様だ。
「ゆびょおおおおおおぼぎゅげえええええええええがががっががががががああああああああおぎょおおおおおおお!!」
「どがいばっ!どがいばっ!までぃざっ!どがいばっ!」
ミチミチと小麦粉の皮を食い破り親まりさの四方八方から現れたのは赤ゆっくりほどの「ゆっくりりぐる」であった。
それも、一体や二体ではない。どんどんと親まりさの餡子を、小麦粉の皮を食い破って出てきている。
ざっと数えるだけでも20~30体ほどのりぐるが一斉に現れたのだ。
「ゆ”・・・!ゆ”・・・!」
親まりさは穴だらけになりながら体を潰して倒れ伏した。
既に流れる餡子も殆どなく、辺りにはりぐるが跳ねまわった後に就いた餡子の跡しかなかった。
「どがいばああああああああ!までぃざああああああああ!あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”!!!!」
寒天の両目から涙を流し叫ぶありす。
山一番の勇気あるゆっくりと讃えられた親まりさの現在の姿に対してなのか、番であるゆっくりを失った悲しみであるかは定かではない
だがありすに余裕などなかった。今度は後ろで悲鳴が聞こえたからだ。
「「「「「ゆんやああああああ!だぢゅげぢぇええええええええ!」」」」」
「ゆゆ!?」
ありすが振り返るとそこには、大量のりぐるに囲まれ小麦粉の皮をくっつけて震えている赤ありす達であった。
赤りぐる達は隙をうかがいながら取り囲んで今にも飛びかかってきそうな気配さえ感じられる。
ありすが飛びかかろうとしたその時、赤りぐるの群れが一斉に赤ありす達に群がった。
「おぢびぢゃんんんんんんんんん!ごのいながぼのっ!ばやぐどぎなざいいいいいいい!!」
ありすが跳ねて近づくと波が引いた様に下がる赤りぐる達。
ありすは赤ありす達をかばう様に前に連れてきた。いったん集めて口の中に入れるというわけだ。
「おぢびぢゃんだいじょう・・・ゆうううううう!?」
ありすが声を上げた。そう目の前には五体居たはずの赤ありすはたったの2体しかいない。
それも4番目の赤ありすと5番目の赤ありすだけ。ありすは周りを見渡した。そこで信じられない光景を目にする。
「いぢゃいいいいいいい!ゆびぃっ!ゆ!ありぢゅのぐりーむじゃんぢょらないぢぇええええゆびっ!」
三番目の赤ありすが一斉に数体の赤りぐる達にかわるがわる小麦粉の皮を食いちぎられていた。
上部左側、底部の右側を食いちぎられ、グネグネと動くたびにカスタードクリームがボトボトと落ちて赤りぐる達がせっせと口に運んでいる。
「びっばらないぢぇえええええ!ゆぎぃぃぃ・・・!ゆびっ!ゆびぃっ!ぢょがいばっ!ぢょがいばぁぁぁっ!」
二番目の赤ありすは三体の赤りぐる達に一斉に噛まれてぐいぐいと三方向に引っ張られている。
小麦粉の皮の形が変わり、ミチミチと音を立てる度に何度もに「とかいは」と叫んでいる。
「ぷきゅーっ!いにゃかもにょはちゃっちゃちょどきにゃしゃい!ありしゅおきょるわよ!?・・・ゆ!?ゆ”ぎっ!ゆびゃああああ!!いぢゃいいいいいいい!おぎゃあじゃああああん!ぢょがいばっ!ぢょがいばっ!ぢょがいばあああああ・・・っ!」
一番目の赤ありすは果敢にも威嚇を繰り返していたものの、あっという間に複数の赤りぐるに同時に小麦粉の皮を食いちぎられ、そのまま赤りぐるが群がり、声が掻き消えている。
「おぢびぢゃん!いばだずげるわっ!ゆゆ!?」
ありすは赤りぐる達の中に飛び込もうとしたが躊躇した。
りぐるだから怖気づいたわけではない。
口の中に残った赤ありす二体を入れる間に残りの赤ありす達は食べられてしまうだろう。
だが今あの中に飛び込んだとしても残った赤ありす二体を別の赤りぐるが虎視眈々と狙っているのだ。あっという間に引きずりこまれてしまう。
ありすは悩んだ。既に小麦粉の皮を半分以上持って行かれた赤ありす達は助からない。
ならば・・・
「ゆぅぅ・・・ぷくぅぅぅうううううーーーーっ!!」
大きく膨れて残った四番目と五番目の赤ありす達を守るために威嚇を始める。
つまりそれは残りの赤ありす達を見捨てたに等しい行動であった。
(おちびちゃんたち・・・ごめんなさい・・・!でもありすはのこったおちびちゃんをまもるわ!)
「おぎゃあじゃん!おねえぢゃんぢゃぢいぢゃがっぢぇるわ!ゆっぎゅりだぢゅげぢぇあげぢぇ!」
「そうぢゃわ!おにぇがい!」
残った赤ありす達がありすに叫ぶ。だがありすは何も答えない。
口に入れる隙も与えない赤りぐる達の視線にありすは唯何も言わず膨れる事しかできなかった。
既に三番目の子ありすはその飾りと地面に落ちたほんの少しのカスタードクリームしか残っていなかった。
二番目の赤ありすも三方向に千切られてからは一斉に赤りぐる達が群がり飾り以外残っていない。
一番目の赤ありすは未だりぐるの群れの中で微かに声が聞こえていた。
「・・・ぢょがいばっ・・・!ぢょが・・・ゆぎぃっ!ぢょが・・・ぢょ・・・!」
しかしその声もあっという間に聞こえなくなり、赤りぐる達が引いた頃には飾りの一欠けらしか残っていなかった。
赤りぐる達は暫くありすとにらみ合いを続けたが、膨れ続けるありすを見て、やがて諦めて四方八方に蜘蛛の子を散らす様に去っていった。
「あでぃぃぃずのおおおおおぢびぢゃああああああああんがあああああああああ!!ごんなのおおおおおおおおどがああああああああああいばじゃあああああああああなああああああああああああああいいいいいいいいいいいいいいいい!!」
「ゆびぇえええええん!おねえぢゃあああああああああん!」
「ゆんやあああああああああああ!ぢょがいばじゃにゃいいいいいいいいいい!」
泣き叫ぶありすと子ありす達。
帰ったら親まりさにプレゼントするはずだった「とかいはなあくせさりー」は赤りぐるたちに食べつくされ芯の丸く束ねた茎しか残っていない。
・・・・・・・・・
・・・・・・
・・・
暫く立った頃、ありす達は親まりさが貯め込んだ食料で暫く「おうち」のなかでいた。
そして無くなったので取りに行ったのだが、「狩り」など一回もした事のないありす達がそう簡単に食料がとれるほど甘くはなかった。
くたくたになって戻ってきた時、おうちから「ゴォォ」と言う音がするので急いで跳ねて行ってみると・・・
「どぼぢでおうぢざんがらみずがながれでるのおおおおおおおおおおおおお!?」
「「ゆびゃあああああああああ!?なんぢぇええええええええええ!?」」
そう、季節はすでに春。冬の間は休耕していた田畑も水を入れたりする時がやってきた。
冬の間は確かに水位が下がってゆっくりにとっては格好に「おうち」になるのかもしれない。だがそれは冬までの話。
あっという間にありす達の全てが水に流された「とかいはなべっど」「とかいはないし」「とかいはなおさら」・・・数え切ればきりがない膨大な「こーでぃねいと」した物が水に流れて行ってしまったのだ。
ある意味運がいいかもしれない。おうちの中に入っていればそれこそ排泄物を水洗トイレで流すがごとくありす達は流されていたのだから・・・
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あのまりさ達が現れて今日から一週間ほどが経った・・・
何とか荒らされた花壇の片付けも終わり、花の種などを買い込んだ帰りのことだった。
家の前に何か丸っこい物が塀際に落ちている。
何だろうと思ってスクーターから降りて近づいてみると・・・
「うおっ!?」
私はあまりの光景に驚いた。
そう、それは「ゆっくり」である。
微かに見える髪飾りから恐らく「ありす種」と判断できるのだが・・・問題はそこじゃなかった。
脇に二つほど丸っこいピンポン玉程度の赤ありすらしきものが転がっている。
そして、その姿は汚いを通り越していた。
親ありすは飾りが色すらくすむほどに黄土色の泥がついており、解れているどころか右半分が崩壊している。
砂糖細工の髪は油粘土の様な感触で解れた枝毛やら何やらが時折ピンと出てしまっている。
巻き付くどころかくっつく様に枯葉やほこり、何かの切れや挙句の果てにガムが頭頂部を中心にビッシリとこびりついており、冠の様になっていた。
小麦粉の皮は生傷だらけどころの騒ぎでなく、色がススや泥でくすんで鼠色に近いほどになってしまっている。
底部は鏡餅の様にガチガチでひび割れており、日々の間に枝や枯葉のきれを挟んでいて底部を上に向ける度にそれが見える。
砂糖水の涙を流した場所は寒天の両目から下にかけてナメクジが張った後に様にキラキラと光ったまま乾いており、それが一層不気味さを増していた。
口のまわりも例外でなく、白く乾いた砂糖水の涎がこびりついており、灰色っぽい色の中にぽっかりと白い何かが塗しつけられる様に現れていた。
寒天の両目の周りには砂糖水が結晶化した「目糞」がビッチリとこびりついており、親ありすが目を見開くたびに粉を吹く様に白い何かが舞っている。
口を開ければ歯茎をむき出しにしてそこからのぞく砂糖細工の歯は白茶色を通り越して完全に枯葉の様な色にまで変色していた。
口を閉じる度に「ジャリ、ジャリ」と音が聞こえる。これは砂だらけの草だけを食べていた上に、水もあまり飲まなかったせいでいつまでも口の中まで砂が残っているのだ。
時折のぞかせるあにゃるは餡子が乾燥して周りにこびり付いており、ひと際アクセントとして目立っていた。
赤ありす二体も同様だ。親ありすと比べてましではあるが汚い事に変わりはない。何より驚いたのは・・・
「ゆひゅー・・・ゆひゅー・・・おながずいだわぁぁ・・・」
なんとこのありす。まだゆっくりとしての機能を失っていなかった。
時折グネグネと動いては薄く濁り始めた寒天の両目をぼんやりとどこかに中空に見据えている。
赤ありす二体の方はよくわからない。
一体は小麦粉の皮がパサパサに乾いて口をあんぐりと開けたまま乾き饅頭となってしまっていたが、もういったの方は地面に突っ伏していたため確認はできなかった。
私が気味悪がって足早に去ろうとした時、足音に気付いたのか、突如親ありすがグネグネと激しく動いて赤ありす二体の砂糖細工の髪を口でくわえて持ち上げるとどこかへとずーりずーりを始めた。
「おぢびぢゃんだぢ・・・!にんげんざんだわ・・!どがいばじゃないがらにげるわよ・・・!」
バスケットボール程の異臭を放つ何かがグネグネと動いてどこかへと行ってしまうのだ。後姿だけでも夢に出てきそうな光景であった。
「なんだ・・・なんで俺の家だけにゆっくりがあつまるんだ・・・?」
独り言のようにつぶやくが当然答えは返って来ない。私はそのまま足早にスクーターを押して家へと帰って行った。
どの道今日の夜から明け方まで雨が降るのだ。どこかへ行ってしまうかそのまま溶けてしまうだろう。
ありすらしきゆっくりは既にかなり遠いところまでグネグネと動いていってしまっていた・・・
・・・それからあのありす達を見かけてはいない。何処へ行ったのかは全くわからなかった。
あの風貌から察するに街の中心部にいた街ゆっくりか何かだろうか。それとも山野からここに下ってくるありす種が「とかいは」と言う言葉にひかれて街の中心部に行って弾き出されてきたのか今となっては定かではない。
あのありすがいた塀の壁には薄くうんうん(餡子)の跡がまるで無機質な灰色の塀のアクセントの様に広がっていた。
挿絵 by嘆きあき
過去に書いたもの
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このSSへの感想
※他人が不快になる発言はゆっくりできないよ!よく考えて投稿してね!
- 善良なゆっくりは酷い目にあってないじゃないか -- 2014-03-11 01:56:38
- ゆっくりによる花壇荒らしは本当に不愉快な気分になるな
それだけに一家そろって惨たらしい目にあったのはゆっくりできる -- 2013-11-03 03:17:28
- 狩りもしないありすざまぁww
男の人もゆっくりが集まって大変だな。
こういうのが多いとゆっくり対策グッズが売れそうだ -- 2011-01-13 12:34:44
- 幸せそうなゆっくりはぐちゃぐちゃに生き地獄を味あわせたいな。 -- 2010-09-18 12:29:10
- こういう自業自得の自滅はすっきりできるな。
-- 2010-09-04 13:43:06
- イラストの赤ゆ共目玉くりぬいて歯をへし折たいな。 -- 2010-09-04 10:52:25
- ざまぁ
こういう身の丈以上の夢を持つバカの自滅はゲスへの制裁と同じくらい好きだ -- 2010-08-09 07:07:55
- イラスト見て思うんだがなんで幸せそうなゆっくりってものすごくムカつくっつーかいらつくのかな。ゆっくりなんてのはいつ何時でもあわれな泣き顔さらしてりゃいいんだよ。 -- 2010-08-03 23:25:32
- この羽付きシリーズ面白すぎだろ、、
俺が現代、元飼いゆ設定大好きなのもあるけど。
堕ちる姿っていいね -- 2010-07-24 16:33:58
- とりあえず誤字がひどすぎる -- 2010-07-21 13:04:09
- 飼い主の人の家だろ、たぶん -- 2010-07-13 21:16:14
- ・・・・れみりゃが襲った理由のこーまかんって誰の家?? -- 2010-07-04 22:04:59
最終更新:2010年05月25日 15:22