黒騎士

■黒騎士
種別:アクター 性別:男 年齢:34歳 所属:紅蓮の旅団 役職:マネージャー 職位:影のいぶし銀
種族:亜人 メイン:グラント サブ:ガーディアン マスター:ドミネーター
身長:201cm(鎧装着時) 体重:152kg(鎧含む) PL名:刃神氷雨
イメージ:バッシュ・ザ・ブラックナイト(ファイブスター物語)
+ 鎧パージ
■真名:オニキス
種別:アクター 性別:男 年齢:34歳 所属:紅蓮の旅団 役職:マネージャー 職位:影のいぶし銀
種族:亜人 メイン:グラント サブ:ガーディアン マスター:ドミネーター
身長:180cm 体重:79kg PL名:刃神氷雨
イメージ:シグルド(Fate/Grand Order)


「誰一人として死なせはせん。俺自身も含めて、な」

「賑やかなのは……苦手だった、はずだったのだがな。 変わるものだ」



外見

全身を黒ずくめの重装鎧で身を包んだ、グラント族の大柄の男性。
本来「シャインアーマー」と呼ばれる宝石の鎧が何故真っ黒に染まっているのかは不明。
刀を思わせる細身の剣と大型の盾を武器に戦闘を行う。
+ 現在の装備
吼龍剣アンサラー&光輝鎧弐式「ドラグルーラー」
後述の理由によりシャインウェポンを失った黒騎士が、新たに手にした剣(元はナイフ型だが、アタッチメントにより大型化・片手剣化している)。
「魔剣アンサラー」と「カラクリドラゴン改」の2つをハッキングを用いて合成した武器で、刀身は分厚いロングソードといった具合。
黒騎士のハッキングにより独自の機構を搭載しており、シャインウェポン召喚の要領で集中するとその機構が発動。
剣と連動してシャインアーマーに干渉しその形状を変化、鎧は"光輝鎧弐式「ドラグルーラー」"となる。
剣も更に一回り大型化、龍をモチーフとした刀身の意匠となり、これこそが吼龍剣アンサラーの本来の姿である。

魔剣アンサラーが所有していた本来の特性【戻る武器】の機能がさらに拡張され、本来の機能に加えて"武器の位置に所有者を瞬間移動させる"ことが可能。
これにより変則的かつ高低差を無視した高速移動が可能となっており、機動力が爆発的に向上している。
【ダイヤモンドカッター】及び【エターナルカッター】使用時は剣が灰色、或いは白い炎に包まれ、切れ味と破壊力を爆発的に高める。
これまでの技術による攻撃とは大きく変わり、荒々しくも力強い剣閃を見せるようになった。

一方でドラグルーラーはカラクリドラゴン改の性能を色濃く継承しており、防御面の強化に加えて機動力や反応速度を大幅に向上させている。
ゴーレムの技術を応用した【完全無欠バリアー】などの使用時には、龍の幻影が発生し、自分や仲間たちを包み込む絶対の障壁となる。
これらの装備にはさらなる機能が内蔵されており、黒騎士がその扱いに習熟していくことで機能が開放されていくだろう。

護龍剣フラガラッハ
様々な要因が重なった結果、「成長する武器」の急激な進化に武器自体が追いつききれず、機能不全となったアンサラー。
それをカーネルがエネミー時代に所有していた、大破したクロスハルバードを新たな素材として打ち直した、黒騎士の新たな相棒。
刃渡り1.5メートルほどの長大な細身の両手剣といった風貌で、これを片手で操る為にマスタークラスをエグゼキューターに転向している。
素材としたクロスハルバードの特性を受け継いでおり、極めて鋭いカウンターを繰り出せる調整が為されている。
そのほかの機能は基本的に前身となるアンサラーを継承しているが、大剣になった弊害か投擲・転移機能は失われている。
また、これ自体が擬似的なレイゲンブレードと化しており、意志や人格を持つのみならず、実体を持つことも可能。
現在は武器自体が成長を遂げたことによって軽量化が為されており、片手での取り回しに不備がないようになっている。

雷華の竜鱗
スカルドレイクシールドをベースとして黒騎士用に調整された、左手用の大型ガントレット。製作者はレイファ
黒紫色の竜鱗を幾重にも積層させた無骨な外見をしているが、強く握りしめることによって装甲が展開、竜の目を模した5つの宝石が顔を覗かせる。
そしてこの宝石こそが雷華の竜鱗の本体。5つの宝石全てが超高純度のカラーストーンであり、大気中の魔力を自動的に集積・蓄積する機能を持つ。
蓄積された魔力を解放・放出することによって、その手に持つ武器に"盾"としての特性を持たせ、更に超強力な防御フィールドを展開させる。
再使用には消費した魔力の再集積・蓄積が必要且つ、フィールドの展開に多少の生命力を要するが、再集積に要する時間はごく短時間。
極めて高い性能を有するがその性能に一切の遊びはなく、完全に黒騎士専用に作られた、鍛冶師レイファの最高傑作の一つである。

光輝鎧零式
フラガラッハの干渉によって更なる進化を遂げた黒騎士のシャインアーマー。「サードステージ」とも呼称される。



人格及び経歴

全身を黒い宝石鎧で包んだ、グラント族の戦士。本名は不詳で、「黒騎士」という名前は自己申告。
紅蓮の旅団に入団した意図は黙して語らないが、旅団の不利益になる行動は取っていないためあまり気にされていない。
寡黙で冷静、言動も基本的に素っ気無い……のだが、何故か「影があっていい」と初対面の人間からは好評を受けやすい。
当人は困惑しており、チームメンバーに何とかならないかと度々打診する姿が見受けられる。
着用している鎧を外している姿を誰も見たことがなく、食事もすべて個室で摂っているため素顔を見た者は一人も居ない。
それでも彼がチームメンバーとして在籍していられる理由は、彼がタンク役として十全の活躍を誇っている故である。

なお《真実を追う者》……つまりフィルトウィズの真実に気付いた者であり、世界への干渉、即ちハッキング能力を持つ。
それ故に彼の管理カードを見ても、"ゲスト"がプレイヤーネームを見ようとしても名前には「黒騎士」としか書いていない。
その代償として実力、つまりはキャラクターレベルが大幅に低下しており、それを経験と読みでカバーしている。

ラピスから「おじさま」と呼ばれ懐かれており、当人は最初の頃は一貫して人違いだと言い避け続けていたのだが、
一向に諦める気配がないことから半ば折れている節が見られ、今ではもう好きにさせている。
とはいえ戦闘訓練などに付き合ったり、同僚に振り回されている所をフォローしたりなど、邪険にしているわけではない様子。

過去に何かしらあったのか、幼年期の子供と接すると普段より輪をかけて寡黙になり、動きもぎこちなくなる。
当人曰く子供は苦手であるとのことだが、それ以上の何かがあるのではと彼を知るものは推察しているという。
後述の事件の後、子供に対しての態度は大幅に軟化。むしろ接する態度は父親のそれであると彼の友人達は語る。

第一子誕生に合わせて、子供達との時間を多く取るためにデスクワークの多いマネージャーへの転向を図り、成功。
現在は第一線で活躍をしつつも、マネージャーとしてチーム内の事務処理も行うようになった。
……が、確かにデスクワークと子供との時間は増えたが、デスクワークが増え過ぎだと悲鳴を上げる姿も見られるとかなんとか。

所持特異点

プラス特異点
  • 真実を追う者(一部マスクデータの情報規制解除。【ハッキング】習得可能。)
「利用できる力は、利用する」
  • 肉の鎧(防護点+2)
「頑丈な事だけが取り柄でな」
  • 人たらし→ビビッド反射×2(回避+2) ※Wish Starにより2個目を取得※
「これでも随分と鍛えなおしたものでな。 ……人誑し、などと言われた部分は流石に直せたはずだが、どうだろうか」

マイナス特異点
  • 宝石の核([命中]判定を行う攻撃に[回避]を行わなかった場合、防護点0として扱う。)
「致命打を狙われれば俺は脆い。 無論、そうさせないつもりだが」
  • トラウマ(特定のものを突きつけられるとあらゆる判定-3。GM判断で却下可能。却下時Ft-1。) ※Wish Starにより消去※
「過去に囚われるのは、もう止めにした」


PickUp

スタンダード且つ万全の防御系特技と、グラント特有の強力な攻撃特技で武装した、マルチロール寄り回避型タンクPC。
【サモンモンスター】によってCL30エネミー:オイランフラウを召喚。【マリオネットアタック】を使用して【力の手】を自身に使用する事により、
超強力なバフ効果を得た状態で高い回避能力と各種判定への対応力を獲得し、高威力の【カウンターアタック】で行動を咎める戦闘スタイルを取る。
【霊験なる力:伸縮自在】で各種特技の射程を伸ばしているため、距離を問わずに最大限の力を発揮することが可能。
【力の手】によるバフが入った後は【ディレイドアタック】+【エターナルカッター】で斬撃防護点を低下させるのが基本的な動き。
そのため前述のカウンターのダメージ増加の他に、ルシウストーリッテレイファなどの斬属性を得意とする連撃アタッカーとの相性が極めて良好。
スカルドレイクシールドの採用によりシールド回数の不足というこれまでの欠点も解消された為、タンクとしての総合的なポテンシャルは非常に高い。

2019/08/14 トーリッテと結婚。
2020/04/25 第一子誕生。
2020/05/18 マネージャーに昇格。



History Report

+ ラビット・ビビット・ナイトメア#1
突如として現れた浸食腔『髑髏甲殻』トーテンシェーデルとの戦闘に於いて、黒騎士はハッキングを行使。
当該固体の情報隠蔽を暴くために、「クラッキングデータをシャインウェポンに纏わせ、データを砕く」という荒業を敢行した。
それによりシークレットデータの開示に成功、勝利に大きく貢献するも、代償として【シャインウェポン】のデータが破損。
結果、【シャインウェポン】を永久に再取得できなくなり、彼はグラント族を象徴する宝剣を生涯失うこととなった。

その後、レイファの協力により手に入れた「魔剣アンサラー」と「カラクリドラゴン改」を、ハッキングを用いて合成。
「吼龍剣アンサラー」として再構成し、自身の新たなる剣として愛用することとなる。
使用時は、剣の形状が更に変化する他、シャインアーマーが龍の意匠を象ったものに姿を変える。
その見てくれは決して伊達ではなく、龍の如き守りと速さ、そして強さを得ることに成功している。


+ ラビット・ビビット・ナイトメア#2
5年前、グラント族の里にて、一組の男女が居た。
彼等は恋仲であり、また共に優れた武勇を誇るグラント族の戦士であった。
そんな彼等がある日、養子を迎え入れることとなった。

彼等にとっての不幸は二つ。一つは、養子が所謂"説得に応じた魔族"であったこと。
もう一つは、その養子が"浸食"されたことであった。

"浸食"された養子は女を惨殺し、男に襲いかかった。
そして男は、その養子を、その手にかけた。
「養子をこれ以上苦しめないため」ではなく。
「せめて自らの手で」という理由でもなく。
ただ、「見ず知らずの誰かを護るため」という理由で。

彼の鎧は黒く染まった。使い慣れた得物も変化させ、盾を持った。
世界の真実に追いつき、己の名前を偽り、自身を追いかけてきた少女の記憶すら奪った。
全てはあの日の悔恨と贖罪のために。

今日も彼は己が身を削って、誰かの盾となり続ける。
永遠に自身を赦せぬ日々を過ごしながら。
その果てが、己の破滅であると理解していながら。


+ 『月下之獣』
心折れた少女の姿は、黒騎士に道を選ばせるには、あまりにも十分であった。
いつからだろうか。乾ききった心が人らしくなったのは。
とうに狂い、壊れきったと思っていた心が人のそれらしくなったのは。
そう、自分を変えてくれたのは。自身を人間に戻してくれたのは誰だったか。
その答えに辿り着いた時、黒騎士に迷いはなかった。

悔恨と贖罪のみで生きてきた彼は、少女と心を通わせる事を選んだ。
決して消せぬ過去を乗り越えるための第一歩を、彼女と歩んでいく事を決めた。
全てを賭して護りたい相手が居る。自分の心を護ってくれる人が居る。
彼がそれを忘れない限り、彼はもう、自ら破滅の道を歩むことはないだろう。


+ 幕間:とある日の二人
互いの過去を曝け出し、互いに互いを知った日。
逢瀬の果てに、彼等は悠久の契りを交わした。
想い想われ、護り護られ。
最早世界の意志であろうと、彼と彼女を引き裂くことは敵わないだろう。


+ その後の彼はと言うと。
トーリッテと二人きりのときは、基本的にシャインアーマーを解除するようになった。
とはいえ第三者がいるときは基本的に鎧を解こうとしないのはいつもどおりである。
二人で静かな空間で本を読み、少ない口数ながら確かなやり取りをする時間は、彼にとってこの上ない幸福の時間である。
また、結婚後はそれ以前よりもう少しだけ、口数が増えた。
トーリッテと共に、ルミエールらをはじめとした子供達の相手をする姿も、以前より多く見られるようになった。
彼が子供に対して持っているトラウマを克服できる日も、そう遠くないのかもしれない。


+ それからまた色々あって
最近になって「マジカルクッキング以外ならばそれなりに料理が出来る」「趣味の範囲だが宝石細工ができる」の2点が明らかになった。
前者は個室に簡易的な調理台を結婚後に持込み、割と積極的に料理を行っている模様。トーリッテに合わせてのものなので味付けは極めて濃厚。
後者はバレンタインの後にトーリッテが市販されていない手製の髪飾りを付けていたことから何人かの女性陣が察したらしい。

また、最近はエリス、ヴィヴィアン、ルミエールの3名の前でも時折シャインアーマーを解除するようになった。
当人曰く「一度見られたのだから二度も三度も変わらん」との事だが、単純に子供達に対する態度が軟化しているだけだろう。
3人娘の中では、旅団内で最も付き合いが古く、肩を並べて戦った回数も多いエリスへの面倒見が特に良いそうだ。

+ 砕け逝く黒瑪瑙 / 去りゆく過去に捧ぐ

◆砕け逝く黒瑪瑙

師匠であり、かつての想い人の父親―――つまりは自身の義父であるグラント族の長老、赤銅斎のチームハウスへの来訪。
彼より告げられた以来は、グラント族を狙った襲撃・殺害事件の捜査。
そして、それにはかつて里より追放された異端児"錆"の関与が濃厚である―――つまりは同族殺しの調査・追跡であった。
以前ヴィヴィアンの件で共に戦った面々+本人と共に最も事件が多く起こっているとされる廃遺跡へ向かう黒騎士達。
現地でラピスとも合流し、戦力は万全。何が来ようとも簡単に遅れは取らないであろう。そのはずだった。

―――拭いがたき、血塗れの過去が追いかけてくるまでは。

雑音の混じる世界。歪む空間。そして、そこから産み落とされたモノは。
在りし日の自分が確かにこの手で殺した、異形と化した養子が、成長しきった先であろう姿。
『災厄の仔』ヴェルデューゴ。
動揺で動きを止めてしまった彼に放たれるのは、グラントを殺す為だけの絶殺の一撃【ジュエルブレイク】。

結果。彼は唯の一撃を以て葬られた。

同行メンバーの尽力あってヴェルデューゴを撃破することに成功するも、彼の死はトーリッテやエリスを含め、
多くの旅団員の心に深い傷を負わせる結果となった。これは彼が紅蓮の旅団初の死者となったことも起因しているだろう。
復活の祭壇により蘇生に成功したものの、深層データの一部をクラッシュさせられており、蘇生に成功しても目覚める事はなかった。

◆去りゆく過去に捧ぐ

データクラッシュにより醒めぬ夢を見ていた彼は、深層心理でとある人物の導きによりかつての想い人との再会を果たす。
対話の末自身を赦し、過去との決別を決意した彼は、前述の人物に導かれるままに現実(FWO)の世界へと帰還する。

異形と化した"錆"の絶対破壊の砲撃を【ミサイルリフレクション】により撃ち返し、【コード:アブソーブ】を爆散させ戦況を打破。
多くの仲間達の支えを受けながら、"錆"の完全撃破に大きく貢献した。
因縁の敵を討ち、異形と化した養子と完全な別れを終え、ラピスに過去自身が行った所業の謝罪と、彼女の成長への称賛。
自身の過去の因縁の全てに決着を付けた彼は、新たな家族達と共に帰路に就くのであった。
この件の後、エリスからは正式に「おとーさん」と呼ばれるようになり、彼自身もそれを笑って許容している。
もう、子供への恐れは完全に無くなったと言ってもいいだろう。

……衆人環視の中妻とキスしたことをこの後盛大にからかわれ、妻に何度も足を踏まれて真顔で「痛いぞ」と訴える事になったのはまた別の話。

+ さてここで一つ疑問が生じる
ご存知の通り、フィルトウィズオンラインはゲームの世界である。
深層心理などといったものがアクターに存在したり、またクラッシュしたはずのデータを自力で修復したりとこの件に関して疑問点は多い。
データの海に消えたはずのかつての想い人が現れた、などというのも、真っ当に聞けば眉唾ものの話だろう。
だが、これに関して彼の友人はこう語っている。
「馬ァ鹿、理屈じゃねえんだよ、こういうのは」
「この世界は"生きてる"んだ。 あいつに限らず、そこに例外はねえ。 だったら何が起こったって不思議じゃねえだろ?」
「もしそれでも理屈を付けたいってんなら、そうだな」
「これが、あいつらの『愛と勇気の物語』ってだけの話だよ」

+ 失ったモノ、欲しいモノ/そして最後に残ったモノ

◆失ったモノ、欲しいモノ

「私とあなたの幸せのために、『あの国』に行ってくる」

妻であるトーリッテのその書置きと、先日にエリス達がとある廃墟で遭遇したという、彼女のかつての国の民達の怨霊の集合体。
湧き上がる不安感と焦燥感を抑え込みながら、当時の彼女の付き人だったフィオーレというアルテミスや、
頼れるチームメンバー達と共に、彼女がかつて住んでいたという国の跡地へと赴く。
そこで遭遇したのは、前述の怨霊が、彼女の父親の鎧に憑依して具現化した姿。黒騎士に特に執着を見せるそれと交戦を開始する。
怨霊達の刃をその身に受け、彼等の痛みと苦しみ、悲しみ、そしてそれでも残っていた希望に、彼は穏やかな表情で言葉をかけた。

「———もう苦しまなくていいんだ、"義父上"」

その一言と共に放った一閃で怨霊を切り伏せ、後に残った鎧をせめてもの、という事で綺麗に片付け直し、先を急ぐ一同。
フィオーレの言に従って辿り着いた聖堂にて聞こえたのは、紛れもなく彼女の歌声。そうしてそこで見たものは。

―――自身の知らない、彼女の、"2年前の、右腕と味覚を失う前の姿"だった。

戻らなかった筈の過去を取り戻して、喜びにはしゃぐ彼女の姿。
だが、それを心から喜ぶものは、彼女自身を除いてその場に誰もいなかった。
そして、それは当然黒騎士も同じで。 喜ぶ彼女の手を引いて帰る中、もう片方の手は自身の爪が喰いこむほどに握りしめられていた。
「自分達の積み上げてきた時間は、これから先見ていた時間は、戻ってこなかった筈の過去に負けた」。その現実に叩きのめされながら。
その髪に、黒瑪瑙の髪飾りが付けられていなかったという事実も、叩きつけられながら。

◆そして最後に残ったモノ

それから四日間、彼は悩みに悩み抜いた。
ラピスとの手合わせ、ルミエール達との問答、そして親友たるルシウスと、自身の真の名を明かした上での決闘。
様々な人物との邂逅によって、ついに彼は決意する。「現実に目を背け、過去に逃げた彼女の否定」を。
その時間は身を引き裂かれる思いだった。心が砕けそうだった。だが、それでも言葉を紡いだ。「もう俺の名を呼ぶな」と。
そうして立ち去ろうとした所に現れた、大鎌を携えた女性。赤ネームのプレイヤー、ハーヴェスター。
ただ自身の愉悦の為だけに彼女を2年前から今の今まで泳がせ、今になって当時の姿に戻し、この瞬間の絶望を与えた張本人。
「助けたいなら2日以内に来てください」と愉悦の表情を浮かべながらトーリッテと共に消える彼女を、その場は見送った。
だがこの時点でハーヴェスターは知らない。
自身が、虎ならぬ「龍」の尾を踏み抜いた事を。
三人娘にイーハ、イツキを交えた万全の態勢で、先日の聖堂を舞台にハーヴェスターとの決戦が始まる。
トラウマを想起させるような初手を軽々といなし、放つ自身の必殺の一撃を、ハーヴェスターはトーリッテを盾に凌ごうとし。
―――だが黒騎士は、躊躇わずにその一撃を振り抜き、ハーヴェスターに有効打を与えると共にトーリッテの右腕を切り落とした。
余裕をなくし始めたハーヴェスターは【完全飛行状態】をコードにて獲得し、一方的に彼等を嬲り殺しにしようと画策する。
……が、それは黒騎士のハッキングとルミエールの【不死なる炎】の二重効果によって完全に右腕を取り戻した、
他ならぬトーリッテによる全霊の一撃によって目論見は完全に破砕された。

形勢は完全に紅蓮の旅団側に傾き、スペック頼りの戦い方を完全に捌かれたハーヴェスターは、エリスの渾身の一撃によって消し飛ばされる。
ここでハーヴェスターは事前に仕込んでいた種(ハッキング)を用いて、トーリッテの身体を乗っ取ることで死を免れようとしていた。
だが、そうは問屋が卸さない。先程も言った通り、こいつは「龍の尾を踏んだ」のだ。精神世界に入り込んだ彼の者を待ち受けていたのは。
レオンハルトとヴェルーリヤの助言を事前に受け、万全の態勢で犯罪者を待ち受け、断罪せんと佇む黒き龍騎士の姿であった。
そして閉鎖空間故にログに残らないからこそ出来る禁じ手中の禁じ手、【コード:オールデリート】を発動・行使。
ハーヴェスターと呼ばれた赤ネームのプレイヤーは、完全にFWOの世界から消滅することとなった。

なんやかんやあって2年分若返ったトーリッテ(味覚・嗅覚障害は健在)と共にその後、彼女の父と完全に別れを告げ、帰路に就く。
その直前に彼女が見せた笑顔は、これまでで一番のものであったと彼は語る。
そしてその夜、お互いに過去を乗り越えた二人は、ついに身体を重ねた。

……のだが、後に「加減が効かなかった」と彼が語るようにそれはもう激しい様子だった模様。
翌日、グラント族の頑強な肉体何するものぞと言わんばかりに足に包帯を巻いている、負傷した彼の姿が目撃されたという。

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最終更新:2020年10月17日 19:02