かけがえのない想いを乗り越えて ◆UcWYhusQhw
「もう……何もいらへん。何も……何も……」
「シズル……哀しまないで……そんなんじゃ……」
「なつきがいないんや……何も……もう何もいらへん」
「シズル……哀しまないで……そんなんじゃ……」
「なつきがいないんや……何も……もう何もいらへん」
シズルは泣いて。
何もないとただ喚いて。
何もないとただ喚いて。
僕は……
僕は……
僕は……
何も出来ないちっぽけな存在でしかないのだろうか。
ナツキを守る事もできず。
シズルを救う事も出来ず。
シズルを救う事も出来ず。
僕はなんて駄目なんだろう。
「こんなん……いらん。夢や……唯の夢や。壊れてしまえ……こんな世界いらへん」
「シズル……駄目」
「クリスはん……堪忍なぁ」
「……え?……っぅ!?」
「シズル……駄目」
「クリスはん……堪忍なぁ」
「……え?……っぅ!?」
疑問に思った瞬間、鞭により吹っ飛ばされる。
そのシズルの目はとても虚ろで虚空を見ていた。
自棄になっている。
……悲しみに耐えられなくて。
そのシズルの目はとても虚ろで虚空を見ていた。
自棄になっている。
……悲しみに耐えられなくて。
ああ。
僕は何もできないのだろうか。
シズルが壊れていくのに。
シズルが壊れていくのに。
僕は何もできないのだろうか。
「シズル……僕を殺してどうするの?」
「しらへんよ……もう何も残ってないんや……目に映るもの全て壊して……そして死ぬんや」
「シズル……」
「もう……いいんや……もう」
「しらへんよ……もう何も残ってないんや……目に映るもの全て壊して……そして死ぬんや」
「シズル……」
「もう……いいんや……もう」
壊れていくシズル。
僕はやっぱりちっぽけだ。
何も。
何も。
何も。
出来ない。
そんな訳無い!
こんなんじゃリセに。
トルタに。
ユイコに。
ナツキに。
トルタに。
ユイコに。
ナツキに。
笑われる。
皆はきっと頑張っていた。
僕はこんな所で立ち止まるわけにはいかない。
哀しみの連鎖を止める為にも。
皆に頑張ったと胸をはれる為にも。
ここで諦めるわけにはいかないんだ。
皆はきっと頑張っていた。
僕はこんな所で立ち止まるわけにはいかない。
哀しみの連鎖を止める為にも。
皆に頑張ったと胸をはれる為にも。
ここで諦めるわけにはいかないんだ。
「シズル!……駄目だよ!……投げちゃ駄目だ!……そんなじゃナツキが喜ばない!……苦しむだけだよ!」
「……それでも、うちはつらいんや……なつきを殺した……なつきがいない……」
「シズル! シズルはナツキに生きて欲しいといったでしょ!」
「……それでも、うちはつらいんや……なつきを殺した……なつきがいない……」
「シズル! シズルはナツキに生きて欲しいといったでしょ!」
そう、きっとそれは皆一緒。
ナツキは絶対そう想ってるはずだから。
ナツキは絶対そう想ってるはずだから。
だから。
「それはナツキも一緒だよ! 生きて欲しいと願ってる! だからナツキの事を誰よりも想ってるなら!……誰よりも好きなら! こんな所で投げちゃ駄目だ! シズル!」
僕は言葉は重ねる。
これ以上を誰かが悲しまない為に。
こんな哀しい事起きちゃいけないから。
これ以上を誰かが悲しまない為に。
こんな哀しい事起きちゃいけないから。
ねぇシズル。
そうでしょう?
ナツキはそういう子なんだから。
「……うちは……」
シズルの目に光がともり始める。
お願い、希望をもって。
明日はどんなに辛くてもやってくる。
希望の明日が。
だからシズルも頑張って。
お願い、希望をもって。
明日はどんなに辛くてもやってくる。
希望の明日が。
だからシズルも頑張って。
「シズル……ナツキの事想うなら……生きて、生きて。振り止まない雨などここには無いから。その涙をもう拭いて……大丈夫、生きて」
そう、止まない雨なんて無い。
きっとその先に光があるから。
だから涙を拭いて。
前を向いて。
きっとその先に光があるから。
だから涙を拭いて。
前を向いて。
ねえ……生きて。
「せやな……クリスはん」
シズルの目に意志が宿る。
うん、大丈夫。
大丈夫だから。
うん、大丈夫。
大丈夫だから。
でも答えは違って。
「うちは……それでも……つらいんや。なつきのいない世界なんて。殺した罪が重いんや……だからせめての罪滅ぼし……皆殺してなつきとその拠り所であるあんたを蘇らせる……
……死者蘇生なんて意味はあらへん……解ってる……解ってる……せやけど……せやけど生きるんやったら……それしか……それしかないんやぁあ!」
……死者蘇生なんて意味はあらへん……解ってる……解ってる……せやけど……せやけど生きるんやったら……それしか……それしかないんやぁあ!」
シズルが泣きながら言う。
ああ。
生きる希望を持たせて結果そっちに……
でも……
それでも……僕は。
それでも……僕は。
間違ってないと想う。
生きる。
その意思に間違いなんて無いから。
無いはずなんだから。
だから。
「堪忍なぁ……クリスはん……そしてアリガトウ」
振りあがるシズルの手。
御免ね。
ナツキ。
ユイコ。
トルタ。
リセ。
ユイコ。
トルタ。
リセ。
ここまでだったよ。
目をつぶる。
それでも。
僕は。
僕は。
頑張った。
明日は希望はあると想ったから。
だから
――満足だった。
訪れる終焉。
それを受け入れようとする。
だけど響いた音は違った。
パンという軽い音。
とてもとても軽い音。
恐る恐る開ける目。
目の前に移るのは
「……え?」
「……あ」
「……あ」
白い服をを真っ赤に染めるシズルと。
生きていたナツキが青ざめた顔で銃を向けた姿だった。
「あ……ああ……ぁぁ」
ナツキの掠れた声が聞こえる。
ナツキは哀しみ。
そして絶望し。
「あぁ……あぁあぁあああああああああああああ」
唯、泣いていた。
哀しみは止まらなかった。
唯加速し。
そして終焉と向かい始めただけだったんだ。
――哀しみに終わりなんて無い……終末へ向かい……でも、それでも明日に希望はあるのだろうか?―――
「っ!? 銃声」
俺は唯響いた銃声を聞いていた。
今まで続いてた大蛇との戦闘。
ぶっちゃけ唯回避するだけで精一杯で俺はクリス達が説得するのをせつに願っていただけだった。
今まで続いてた大蛇との戦闘。
ぶっちゃけ唯回避するだけで精一杯で俺はクリス達が説得するのをせつに願っていただけだった。
勝てる気がしなかったんだもん。
だが今響いた銃声。
クリスの方向だった。
何か決着がついたんだろうか?
クリスの方向だった。
何か決着がついたんだろうか?
それと同時にあれだけ暴れまわっていた大蛇の動きがピッタリ止まった。
何か戸惑うようなそんな風に。
何か戸惑うようなそんな風に。
だが都合がいい。
攻撃してこないならクリスの方に行くしかない。
攻撃してこないならクリスの方に行くしかない。
守ると決めたんだ。
だから守りきってやらなきゃ。
だから守りきってやらなきゃ。
そう想いクリスの方に駆け出す。
不安を抑えながら唯、走った。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇
「……っ……静留……」
私は痛む頭を押さえ立ち上がる。
私は鞭に打ち付けられた後、頭を打って気絶してたらしい。
静留は……?
私は鞭に打ち付けられた後、頭を打って気絶してたらしい。
静留は……?
振り向くと静留がクリスを殺そうとしていた。
え……どうして。
何か話している声が聞こえる。
ここからは良く聞こえない。
「……つ……クリス、静留……ぅ……くぅ」
未だに頭を強く打ったショックか体を上手く動かせなかった。
静留の方にいけない。
静留の方にいけない。
止めろ。
静留、止めてくれ。
静留、止めてくれ。
何があったか分からない。
でも静留がクリスを殺そうとしているのは確かだ。
止めろ、止めてくれ。
止めろ、止めてくれ。
やっと気付いたんだ。
やっと解ったんだ。
やっと解ったんだ。
クリスが「かけがえのないもの」になっているって。
やっと。
やっと。
やっと。
クリスの言葉で気付いたんだ。
静留……奪わないで。
止めろととめにいきたいのに。
声を上げてとめたいのに。
声を上げてとめたいのに。
それが出来ない。
体が上手く動かない。
体が上手く動かない。
クリスを失いたくない。
やっと気付いたのに。
失いたくないんだ。
止めて……
大切なんだ……
奪わないで。
もう……私から。
私から大切なものを奪わないで。
何にも無い私から大切なものを奪わないで。
やめろ。
やめてくれ。
奪わないで。
ああ。
静留が手を振り上げる。
もう、間に合わない。
やめて
やめて
やめて
私から大切な物を奪わないで
奪わないで
ああ
奪わないで
奪わないで
あああ
「……ああ!」
何がおきたかわからなかった。
気がついた時には私の手にエレメントが握られていて。
気がついた時には私の手にエレメントが握られていて。
静留の服が紅く染まっていた。
……え?
私が撃ったのか。
静留を?
私が。
クリスを護りたいが為に。
もう一人の『大切な人』を。
自分で。
……撃ったのか?
ああ。
そんな。
静留に生きて欲しいのに。
なんで。
私が撃ったんだ?
クリスに生きて欲しい。
それは確かなのに。
「あ……ああ……ぁぁ」
私は……
静留とクリスを天秤にかけてたというのか。
それで静留を撃ったのか。
私は……
ああああぁ
わたしはなんてこと……
ああ
「あぁ……あぁあぁあああああああああああああ」
唯、泣いた。
クリスを守りたかった。
静留を救いたかった。
静留を救いたかった。
なのに私は……
私は
ああ嫌だ。
嫌だ。
嫌だ。
嫌だ。
私は……
私はなんて事……
「御免なさい……御免なさい」
謝っても仕方ないのに。
戻ってくるわけ無いのに。
戻ってくるわけ無いのに。
私はどうすればいいんだ。
ああ私はなんて事……を。
『いずれ……なっちゃんも俺みたいになるぜ。絶対』
ふと伊達の言葉を思い出す。
ああ私は……そうなってしまった。
大切な人の為に大切な人を傷つけてしまった。
私は……
私は
……なんて
「うわ……ぁあ……あああああああああぁぁあ」
ただ、ただ座り込んで慟哭するしかなかった。
御免なさい。
私は居ない方がいい。
こんな私はきっと……いらない。
そうに決まってる。
ああ私は……
わたし……
「なつき……泣かんでええよ……謝らんでええよ……アリガトウ」
静留の声が聞こえる。
頬に暖かい温もりが感じる。
目を開ける。
頬に暖かい温もりが感じる。
目を開ける。
そこには
「……静留?」
優しく微笑んでいた静留が私の顔に手を当てていた。
クリスも傍に来て後ろから抱きしめていた。
クリスも傍に来て後ろから抱きしめていた。
私は大切な人に囲まれ抱きしめられていた。
暖かい……
暖かいよ。
何故だろう。
とても暖かい。
私が悪いのに。
私が駄目なのに。
私が駄目なのに。
赦され。
唯温もりを与えられていた。
私は……
私は沢山の哀しみの中で。
小さな……小さな。
幸せを感じていた。
―――悲しみは巡り繋がって……それでもそこに幸せがあるというのなら……―――
「かふっ……なつき?」
静留は唯、なつきに撃たれた事実を直ぐに気付く事ができた。
死んでいないことも。
気付かない方がおかしかったのだ。
だってエレメントである鞭を出せていたのだから。
冷静になれば直ぐにわかったというのに。
……唯、馬鹿だった。
死んでいないことも。
気付かない方がおかしかったのだ。
だってエレメントである鞭を出せていたのだから。
冷静になれば直ぐにわかったというのに。
……唯、馬鹿だった。
「シズル! 大丈夫!?……そんな」
クリスは慌てて静留に聞く。
白い服は真っ赤に染まっていて。
誰が見ても取り返しのつかないものになっているのに。
白い服は真っ赤に染まっていて。
誰が見ても取り返しのつかないものになっているのに。
「ええんや……クリスはん……なつきが生きてた……それだけで充分や」
それでも静留は微笑んで。
修羅の面影など全く無くて。
優しく微笑んでいた、まるで死ぬのは解っているように。
修羅の面影など全く無くて。
優しく微笑んでいた、まるで死ぬのは解っているように。
それでも静留はなつきが生きていた事だけで充分だった。
そしてなつきが凶行を止めてくれていたことも。
唯それだけで、充分だった。
まるで憑き物が落ちたかのように穏やかで。
それでも……なつきが生きていた。
この事実が唯、唯嬉しかった。
そしてなつきが凶行を止めてくれていたことも。
唯それだけで、充分だった。
まるで憑き物が落ちたかのように穏やかで。
それでも……なつきが生きていた。
この事実が唯、唯嬉しかった。
「御免なさい……御免なさい」
なつきの声が響く。
謝りの声が。
謝りの声が。
「あぁ……謝らんでええのに……うちは嬉しいのに……謝らんでええよ……なつき」
静留はなつきに謝って欲しくなかった。
例え方法がどうであれ自分を止めてくれた。
そしてなつきの手で、逝く事ができるなら……
例え方法がどうであれ自分を止めてくれた。
そしてなつきの手で、逝く事ができるなら……
それだけでよかった。
でも
「なつきをこのまま哀しませたらあかんね……クリスはん……はこんでや」
「うん……」
「うん……」
なつきを哀しませるわけにはいかない。
自分を撃った事を傷にしたら絶対にいけない。
なつきに幸せを。
なつきに笑顔を。
なつきに喜びを。
それでなければ死ぬにしねない。
その一念だった。
自分を撃った事を傷にしたら絶対にいけない。
なつきに幸せを。
なつきに笑顔を。
なつきに喜びを。
それでなければ死ぬにしねない。
その一念だった。
静留はクリスにおぶってもらってなつきの下にいく。
なつきにこのことを絶対傷にさせてはならない。
なつきにこのことを絶対傷にさせてはならない。
「うわ……ぁあ……あああああああああぁぁあ」
なつきの慟哭。
「泣いてはあかんよ……なつき」
そしてなつきの元に。
クリスにおろしてもらいはってなつきに近づく。
クリスにおろしてもらいはってなつきに近づく。
そして
「なつき……泣かんでええよ……謝らんでええよ……アリガトウ」
「……静留?」
「……静留?」
そっとなつきの顔に手を当てる。
唯、暖かった。
静留は笑う。
阿修羅ではなく優しいヒトとして。
笑っている。
唯、暖かった。
静留は笑う。
阿修羅ではなく優しいヒトとして。
笑っている。
クリスも後ろから抱きしめる。
二人の思いは一緒。
二人の思いは一緒。
なつきを哀しませない。
なつきをここに留まらせる。
それだけだった。
なつきをここに留まらせる。
それだけだった。
そこは確かに温かいものだった。
「なんでだ……私は静留に酷い事をした。私は……静留を撃ったんだぞ」
「ええんや……ええんよ……なつきはクリスはんを護りたかった……そうなんやろ」
「でも……!……私は!……静留を……うぅ」
「ちがうんよ……なつきは護りたかっただけ。そこに罪なんてあらへん」
「ええんや……ええんよ……なつきはクリスはんを護りたかった……そうなんやろ」
「でも……!……私は!……静留を……うぅ」
「ちがうんよ……なつきは護りたかっただけ。そこに罪なんてあらへん」
唯、静留は言葉を重ねる。
どうかなつきが幸せで居られるように。
なつきが自分の事で重荷にならない様に。
どうかなつきが幸せで居られるように。
なつきが自分の事で重荷にならない様に。
どうか、この子に幸あらんと。
「なつき……それにうちは嬉しいんや」
「……え?」
「……え?」
まるで泣く赤子をあやす様に。
優しい言葉を紡ぐ。
優しい言葉を紡ぐ。
「修羅になっていたうちをとめてくれて……アリガトウ」
「でも……それで静留が死んだら……意味が無いだろう!」
「ええんよ……なつきがうちをとめて……それで死ねるなら……うちは幸せや……この島で最も幸せな死に方やもの」
「でも……それで静留が死んだら……意味が無いだろう!」
「ええんよ……なつきがうちをとめて……それで死ねるなら……うちは幸せや……この島で最も幸せな死に方やもの」
修羅ではない静留はただ、なつきに礼を言う。
この島で最も幸せな死に方「愛する人の元で死ねる」という死に方で。
唯、唯、幸せだった。
「だからなつきはこのことで苦しんだらあかんえ?……幸せに絶対なるんやで?……うちはもうたくさん幸せをもらえたから……約束や」
「……でも」
「約束や」
「……うん」
「せや、……指きりげんまん……嘘ついたら……ハリセンボン……飲ます……指切った……や……絶対幸せになるんやで」
「……うん……うん」
「ええ子や……ええ子」
「うわ……ぁああぁああぁあぁあぁ」
この島で最も幸せな死に方「愛する人の元で死ねる」という死に方で。
唯、唯、幸せだった。
「だからなつきはこのことで苦しんだらあかんえ?……幸せに絶対なるんやで?……うちはもうたくさん幸せをもらえたから……約束や」
「……でも」
「約束や」
「……うん」
「せや、……指きりげんまん……嘘ついたら……ハリセンボン……飲ます……指切った……や……絶対幸せになるんやで」
「……うん……うん」
「ええ子や……ええ子」
「うわ……ぁああぁああぁあぁあぁ」
なつきには絶対の幸せを。
静留の願いはなつきが幸せになること。
それが叶えられるなら……どれだけ幸せだろうか。
静留の願いはなつきが幸せになること。
それが叶えられるなら……どれだけ幸せだろうか。
なつきは静留の暖かさを唯感じ。
唯……泣くしかなかった。
唯……泣くしかなかった。
「クリスはん……悔しいけどお願いや」
「……何?」
「……何?」
クリスに問う。
自分の死後、愛するものの隣に居る彼に。
悔しいけど。
嫌だけど。
それでも。
自分の死後、愛するものの隣に居る彼に。
悔しいけど。
嫌だけど。
それでも。
「なつきを幸せにしてや……不幸にするなんて絶対赦しませんえ?……不幸にしたら地獄からおってきますさかい」
「うん……幸せにする」
「なら、ええ……ああ、くやしいなあ……くやしい……ほんまくやしい」
「シズル……」
「クリスはん、その手で哀しみを止めるなら……諦めんといてや……絶対、絶対幸せにするんやで
その手で……この島の哀しみ止めてや……なつきと一緒に絶対」
「……うん。するよ絶対」
「なら……」
「うん……幸せにする」
「なら、ええ……ああ、くやしいなあ……くやしい……ほんまくやしい」
「シズル……」
「クリスはん、その手で哀しみを止めるなら……諦めんといてや……絶対、絶対幸せにするんやで
その手で……この島の哀しみ止めてや……なつきと一緒に絶対」
「……うん。するよ絶対」
「なら……」
そっとクリスの方をしっかりと向いて。
凛とした表情で。
凛とした表情で。
「―――――なつきの事、お願いします」
礼をした。
なつきを託すものに。
そっと。
礼をした。
なつきを託すものに。
そっと。
礼をした。
「さて……心残りは後一つだけや」
「……静留?」
「……静留?」
心残りはそう、一つだけ。
静留はなつきを見つめる。
このままでは自分を殺すという罪をなつきに負わせてしまう。
そんな事させたくは無い。
静留はなつきを見つめる。
このままでは自分を殺すという罪をなつきに負わせてしまう。
そんな事させたくは無い。
愛するなつきに。
そんな事。
絶対させない。
そんな事。
絶対させない。
その一心だった。
だから。
だから。
「なつき……さよならや……アリガトウ」
ふと仕舞っていたカプセルを一気に飲み込む。
それはシアン化カリウム入りカプセル。
それはシアン化カリウム入りカプセル。
そう、毒だった。
「かふっ!」
途端に吐血する。
死へとの階段をゆっくりと進む為に。
「これは毒……!?……なんで静留!?」
「だって……なつきに殺人なんて罪背負わせたくないもの。せやから……ほんの我侭や」
「静留……そんな……そんなぁ」
「だって……なつきに殺人なんて罪背負わせたくないもの。せやから……ほんの我侭や」
「静留……そんな……そんなぁ」
なつきは泣く。
これからただしにいく親友に何もできないのだ。
唯抱きしめる事ぐらいしか。
失われていく命に何も……何も出来ない。
これからただしにいく親友に何もできないのだ。
唯抱きしめる事ぐらいしか。
失われていく命に何も……何も出来ない。
でも、静留はそれでよかった。
「あぁ……なつきの胸で死ねる……かなうと想わなかったのに……想わなかったのに……幸せや……」
叶わないものが叶うというのだから。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇
ああ、幸せや。
こんなにも幸せなことは無い。
なつき。
なつき。
愛しとるから。
「静留……嫌だ……逝くな!……静留!……大好きだから!……最高の親友だから!……逝くな!……逝くな!……静留!……うわぁぁあ」
泣かないで欲しい。
うちは幸せやから。
アリガトウ。
ほんまに
アリガトウ。
せやけど。
うちはな
「うちは……親友とは想ってへんよ」
「……え?」
「……え?」
「返事は……これや」
「……え?」
「……え?」
「返事は……これや」
驚くなつきにそっとキスをする。
だって。
愛してるんやもん。
心の底から。
ふふ。
奪ってしもうた。
なつきの初めて。
クリスはん……堪忍なぁ。
ふふ。
ああ
幸せや。
哀しみの溢れる島で。
うちは
うち……は
「こんな……にも……愛に……かこまれて……なつき……アリガトウ……あぁ…………幸……せ……や」
【藤乃静留@舞-HiME運命の系統樹 死亡】
――――1つの宿命に終わりを……哀しみだけではなく……幸せを持って―――
「これは……」
九郎が辿り着いた時には全てが終わっていた。
そう、静留は逝っていた。
なつきは静留を唯抱きしめ泣いていて。
クリスは唯空を見上げていた。
そう、静留は逝っていた。
なつきは静留を唯抱きしめ泣いていて。
クリスは唯空を見上げていた。
「あぁあああぁぁぁあぁ……」
「……なつき」
「……クロウ……終わったよ……全部……うん、終わった」
「……そうか……後悔だけだったか」
「……いや、ちゃんと残ったよ。それ以外にも……うん」
「……そうか。ならいいんだ」
「……なつき」
「……クロウ……終わったよ……全部……うん、終わった」
「……そうか……後悔だけだったか」
「……いや、ちゃんと残ったよ。それ以外にも……うん」
「……そうか。ならいいんだ」
九郎は今は言葉はをかけることをしない。
時間が解決する事もある事を知っているから。
悲しみや後悔だけじゃないなら……きっとそれをステップにして前に進めるから。
だから……今は時間をと。
時間が解決する事もある事を知っているから。
悲しみや後悔だけじゃないなら……きっとそれをステップにして前に進めるから。
だから……今は時間をと。
そう、時間が解決できるなら。
それでいい。
それでいい。
そう想ったから。
「とりあえず、山小屋で休もう。無事な所があるはず……ん?」
九郎がそういった瞬間。
地響きが聞こえてきた。
疑問に想う中、それがやったきた。
地響きが聞こえてきた。
疑問に想う中、それがやったきた。
「……な!?……あの蛇!?」
静留のチャイルド、清姫が。
黒く変色し、瘴気さえ出している。
黒く変色し、瘴気さえ出している。
九郎達が知る由もないがHiMEが死亡した場合、チャイルドはオーファン――思いを食らう化け物――になる。
つまり、静留の死にあわせ忠臣だった清姫はそのままオーファンとなった。
そして、まず近くに居るクリス達を狙ったのだ。
つまり、静留の死にあわせ忠臣だった清姫はそのままオーファンとなった。
そして、まず近くに居るクリス達を狙ったのだ。
「ちっ……何とかするしかないか! クリス、なつき!」
「……」
「……」
「……」
「……」
九郎が応戦の為に呼びかけるもなつきとクリスは放心したかのように動かない。
無理もない。
大切な人を失ってしまったのだから。
無理もない。
大切な人を失ってしまったのだから。
「……く……ええい、大十字九郎! こんなとこで引けるか! 守りきってみせる!……って、ひゃい!?」
九郎は舌打ちしつつも応戦する構えをとる。
なつきとクリスは守ると決めたからここで退くわけにはいかない。
……が、その瞬間九郎の脇を清姫が襲う。
避けるも俄然不利は変わらない。
なつきとクリスは守ると決めたからここで退くわけにはいかない。
……が、その瞬間九郎の脇を清姫が襲う。
避けるも俄然不利は変わらない。
「……くっ……退けるか……退けるかよ!……護るんだ! 絶対に! 護るんだぁああ!!!」
九郎の咆哮。
退けない。
唯一心で。
護る。
クリスとなつきを。
そう決めたから。
退けない。
唯一心で。
護る。
クリスとなつきを。
そう決めたから。
退けるわけが無かった。
その決意の咆哮は確かに仲間にも響いた。
「クロウ……僕は……」
クリスは咆哮を聞いて想う。
護るという言葉を。
自分は何を託されたと。
護るという言葉を。
自分は何を託されたと。
―――静留に何を?
なつきをだ。
今ここで何故立ち止まっている?
護るんじゃないかと?
護るんじゃないかと?
大切な人を。
暖かい場所を。
暖かい場所を。
自分の手で。
護らないといけないんじゃないか?と。
「僕は……護らなきゃ。ナツキを」
立ち上がる。
哀しみを広げない為にも。
幸せでいるために。
哀しみを広げない為にも。
幸せでいるために。
ここで挫けるわけにはいかない!
「ナツキ……護ろう」
「……え?」
「……え?」
隣に放心していたなつきに声をかける。
静留の思いも無駄にしないためにも。
なつきの為にも。
静留の思いも無駄にしないためにも。
なつきの為にも。
ここで立ち止まる事なんて許されない。
許してはいけない。
許してはいけない。
「……シズルは幸せにといった」
「……うん」
「なら……護らならなきゃ、シズルの思いを。ここで挫けちゃ駄目だよ……ナツキ!」
「でも……怖いんだ……私は……」
「大丈夫……」
「……うん」
「なら……護らならなきゃ、シズルの思いを。ここで挫けちゃ駄目だよ……ナツキ!」
「でも……怖いんだ……私は……」
「大丈夫……」
怯えるなつきにぽふっとクリスは抱きしめる。
どうかこの子が不安にならないように。
怖がらないように。
どうかこの子が不安にならないように。
怖がらないように。
「僕が居るから……」
「クリス……」
「護ろう? シズルの想い。シズルの願い。シズルの事。一緒に護ろう?」
「クリス……」
「護ろう? シズルの想い。シズルの願い。シズルの事。一緒に護ろう?」
クリスの言葉。
それは確かになつきの心に灯り。
なつきは前を向いて。
それは確かになつきの心に灯り。
なつきは前を向いて。
そして。
223:阿修羅姫 | 投下順 | 223:かけがえのない想い……すぐそばに |
時系列順 | ||
クリス・ヴェルティン | ||
玖我なつき | ||
大十字九郎 | ||
藤乃静留 |