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断片集 ドクター・ウェスト

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断片集 ドクター・ウェスト



ウェストは激怒した。
必ず、かの邪智暴虐(じゃちぼうぎゃく)の主催者を除かなければならぬと決意した。

ウェストには政治がわからぬ。ウェストは、ブラックロッジの科学者である。己の才能を発揮し、町を適当に破壊して暮して来た。
けれども邪悪に対しては、人一倍に鈍感であった。
きょう未明ウェストは森を出発し、野を越え山越え、十里はなれた此のスラム街にやって来た。
ウェストには父も、母も無い。女房も無い。彼が作った、エルザと二人暮らしだ。
このエルザは、ウェストが作ったにも関わらず、言うことを一切聞かないばかりか、鬼畜外道ロリコン変態探偵をダーリンと呼んでいる。
ルートも無いのにである。
ウェストは、それゆえ、無敵ロボやらブラックロッジ戦闘員やらを求めて、はるばるスラムにやって来たのだ。
先ず、その途中で凡骨リボンを拾い、それからを大通りをぶらぶら歩いた。

ウェストには永遠の宿敵があった。大十字九郎である。

普段はアーカムシティで、貧乏探偵をしている。その宿敵を、これから探してみるつもりなのだ。
知性の欠片もない輩であるから、どんな顔をしてウェストの頭脳を頼ってくるか楽しみである。
歩いているうちにウェストは、街の様子を怪しく思った。ひっそりしている。
もう既に日も昇り、殺し合いが活発な中ではあたりまえだが、
けれども、なんだか、殺し合いのせいだけでなく、市全体が、強いて言うならウェスト自身がやけに寂しい。
のんきなウェストも、だんだん不安になって来た。
路で逢った筋肉をつかまえて、何かあったのか、エルザは知らぬか、我が宿敵大十字九郎は知らぬか、
我輩は世紀の大天才ドクタァァーウェェストッッ!と質問した。
筋肉は、己の筋肉を誇示するだけで答えなかった。
隣にいた筋肉の妖精に、こんどはもっと、語勢を強くして質問した。
筋肉の妖精は答えなかった。筋肉の妖精は背中の紐で筋肉のからだを持ち上げて呼称を撤回させた。
ウェストは、無視されたことを嫌い、あたりに響く大声で、弦が切れたギターをかき鳴らし、叫んだ。

「わ、我輩を無視して話を進めるでな~~~~~~~~い!!!」



「ん、夢であるか?」

他の何よりも、己が無視される事を嫌う男、ドクター・ウェスト
魂の絶叫と共に目を覚ました彼の目前に存在したのは、一面の緑であった。

「惜しいであるな、あの後我輩の我輩による我輩の為の一大スペクタクルが展開されたのであるが……。
 それはもう川上式単行本で10部くらい無論ほとんど上下巻の一大叙事詩が繰り広げられたのである。
 マッスル☆トーニャが筋肉大帝ゴッド贅肉の手先であったのは流石に我輩にも想像できなかったのである」

そういいながら、特にあたりを見回すでもなく普通に立ち上がり、歩き始める。
まるで、確認などする必要もない、と言いたいかのように、いや、事実確認する必要など無いのだろう。
何故なら彼の居る場所こそが世界の中心であり、彼の歩む道は即ち天の道、正しい順路に他ならないのだから。

「ふむ、我輩の大事な時間を無為に浪費するなど……それはまあ罪深い事をしてしまったのである。
 これは我輩が天才であることを証明できなければ
 生きたまま地獄の業火に我輩の永遠の宿敵大十字九朗を投げ込まなければとても許されるものではないかもしれんのである。
 そう考えると別に証明しなくても良いのであるが、大十字九郎を生きたままボッコボコのミックミクのオッペケペーにするのは
 我輩の使命である以上天才であると証明しなくてはならないのであーる! うむ天才というのも疲れるものである」

例によって例のごとく、意味が無いように見えて実際意味の無い言葉を紡ぎ続けるドクターウェスト。
ただ、そこには僅かながらの元気さが足りない。
何時もの彼を夏場の台所の黒いアレだとするなら、今の彼は冬場のソレくらいの違いはある。
実際どの程度の違いがあるのか不明だがまあ一ミリくらいは元気さが陰っていると思えばよい。

「我輩らしくも無いのである。
 語る必要のないことを語ったり、過去の事を振り返るなど」

そういえば、何時以来になるのか、親しい人間の死を迎えるというのは。
アーカムシティで有象無象が毎日のようにやたら沢山死んでいたような気もするが、正直それはどうでもいい。
知り合いといえばティトゥスが死んだそうだが、あんな奴も正直どうでもよい。

「何故、勝手に死んでいくのであるか……」

思えば、いや、ウェスト自身は決して思いはしないだろうが、それでも心の奥底の何処かで感じてはいる。
大十字九郎は、ライバルである。 ウェストのライバルたりうる、相手である。
エルザはもう、死とは程遠い存在だ。 アル・アジフは元々死からは程遠いところにいる存在である。
そして、大十字九郎は死と隣り合わせのような生活をしながらも、決してウェストの手にかかり、彼の目の前から居なくなることはなかった。
ある意味では、永遠にも感じられる、変わらぬ世界。それは、此処には無い。
簡単に、失われていってしまう。
そして、それを元に戻すことなど、

「…………」

ウェストの天才性を持ってしても不可能なのだ。

「やはり、この世紀の大天才たるドクタァァァァァウェスト!!
 の天才性を持ってかのものどもを導かなければならないのであ――――――る!!」

そう、だが不可能ならば、可能なようにしてしまえばいい。

それが先達の、否、天才たる者の務め。
侮るなかれ、その程度で落ち込むなど、どうしてこの天才に許されようか。彼は、決して揺らぐ事などない。
彼はドクター・ウェスト、人は彼を人類史上最高の天才と呼ぶ。天才とは、頭が良いだけの頭でっかちでは決してない。
倒れず、屈せず、諦めず。乾かず、飢えず、無に帰れ(関係無い)。
そのような後悔など、遥か昔に済ませた。そんな事でいまさら落ち込むような弱い心臓はしていない。
故に、彼は世紀の大天才たりえたのであるから。

「そう、故にとりあえず我輩が天才であることを満天下に大きく示さねばならんのであ――る!!
 具体的にはギターを初めとした宣伝が必須! と、そうなればこうしてのんびりしている暇などどこにも存在しないのであ――――る!!」

そうして、最早後悔など存在しない。
そんなもの死ぬ間際の走馬灯のあたりで気にするぐらいで丁度良い。
何しろ彼は世紀の大天才ドクター・ウェストなのだから。
そう、揺らぐこともなく、常に変わらずそこにあり続け、騒音公害を巻きちらす。
それこそが、彼が天才であるゆえんなのだから。



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