「うおおおおッ!!」
「……。」
声を張り上げて攻撃する悠と、発声による気合いという概念を持たないロボ。
「ジオ!!」
「……。」
小技を使いこなして適度に攻め続ける悠と、単発の威力で勝負を決めようとするロボ。
様々な点で彼らの戦闘スタイルは異なっていた。
悠はジオで一瞬動きが停止したロボの隙をついてマシンガンパンチを回避する。
イザナギのスラッシュで相殺できない以上、回避以外にロボの攻撃を防ぐ方法は無い。
小技を駆使して大技をやり過ごす。
そんなマジシャン顔負けの芸当がこなせるのは悠が使うペルソナがイザナギであるからだ。使用時期の長さや愛着が物差しであればイザナギに適うペルソナは無い。
反面、そんな芸当をこなさなくてはならないのもペルソナが初期ペルソナのイザナギであるからである。
普通のパンチと普通の斬撃であれば互角。
この地点で悠とロボの実力差はそれほど大きくないはずであった。
そしてロケットパンチとスラッシュであれば互角。
互いの小技を以てしても、その威力較べに影響は無い。
だが、今の悠はそのスラッシュが限界なのだ。
対するロボにはロケットパンチを超える大技はいくつもある。
よって消去法的に、悠がロボに対して優位を取るには、ロボに代用となる技の無い魔法攻撃が主となる。
もちろんロボも一方的に魔法攻撃を受け続けるわけにはいかないため、何とか悠との距離を詰めようと接近を試みる。
だがイザナギの剣技がそれを許さない。
マシンガンパンチで牽制すればイザナギを引かせることは出来る。だがMP消費の激しい技であるため、牽制に用いるには勿体無いと判断しているようだ。
「うおおッ!」
接近出来ないロボに対し魔法を放つ。
初期魔法ながらにそれなりの威力を持つ雷を前に魔法に弱いロボは一瞬怯み、悠が魔法を使った後の隙を突くことは出来ない。
しかし、それでもじわじわとロボは悠に接近していく。
ガシャン、ガシャンとロボが歩みを進める度に聞こえる廊下と金属の接触音は悠に的確に焦りを与えていく。
それに合わせて悠は後ずさりをするも、いずれ行き止まりがやってくる。
悠にとっての安全と危険のボーダーラインは、マシンガンパンチの射程距離から即座に離れられるかどうかだ。
行き止まりに達するまでその距離を保ちながら、ジオのみでロボを撃破できるのならそれが理想ではある。
無言のまま、ゴリラか何かのようにロボは胸を叩く。可愛らしい所作だとは思うがその意味は全く可愛げがなく、ロケットパンチかマシンガンパンチか、そのどちらかが飛んでくるサインである。
だがどちらが来ても問題ない。
距離は充分に離れており、どちらが来ても目視で回避できる。
飛んできた拳は一撃のみ。
つまりはロケットパンチの方である。
1歩引いてその一撃を回避。
ロボはその腕を即座に引っ込め、再び悠に接近を始める。
距離を詰められればイザナギでも受けきれないマシンガンパンチの射程内。
接近されたのと同じ距離だけ後ずさりして、距離を保ちながらジオで攻撃する。
そして悠は、ロケットパンチを回避して下がりながらジオ。そんな攻防を3回繰り返した。
その間に悠は、未だ無傷ではあるものの壁際に追い詰められてしまった。
もう下がって避けることは出来ない。
ロボが中距離まで近付き、マシンガンパンチの構えを取る。
それに対し、逃げ道の無い悠は壁を蹴って駆け出した。
「接近ヲ確認。」
悠の新たな動きを認識し、無言だったロボにも反応の変化が見られた。同時に、お互いが接近を図ることでロボとの距離が一気に詰められる。
ところで3回に渡る同じような攻防では、ロケットパンチを回避する瞬間とロボが接近してくる瞬間に二度ずつ、悠の行動の余地があった。
前述の通りその内の片方はどれもジオに費やしたのだが、それでは残った3回の行動余地に悠は何をしていたのか。
実は、それぞれラクカジャ、タルンダ、タルカジャの3つの補助魔法を悠は使っていた。
それにより悠の攻撃力と防御力が上昇、そしてロボの防御力が低下している。
「斬り開く……『スラッシュ』!!」
悠の出せる最高打点を用いてロボのマシンガンパンチとぶつかり合う。
ロボに打ち勝つことこそ叶わないものの、見事にほぼ相殺の形に持ち込むことに成功した。
「道を……開けろおおおぉ!!!」
さらにロボは素早さが低く、次の行動に移るまでに時間がかかる。
その隙をついてジオを唱え、ロボの次の動作を更に遅らせる。
悠の叫びは実現し、ロボの真横を通り過ぎることに成功する。
ロボが次の攻撃を放てる頃には、既に悠とロボの位置関係は当初の逆となっていた。
前衛でも後衛でも無い、悪く言えば器用貧乏である悠に求められるのは、戦局に応じてどちらをカバーするかを決める咄嗟の判断力。
それは当然、独りでの戦いであっても武器となる。
ここではマシンガンパンチを放った直後の隙、その一点に着目してロボを出し抜いた。
ところで、そんな判断力を武器にする悠の弱点とは何か。
──ロボは身を屈め、肩を前方に向ける。
それは判断のつかない『未知』、そして判断の暇を与えない『速度』である。
──次の瞬間、病院の床から最も激しい金属音が響き渡ると同時に、ロボの巨体が悠へ向かって突撃を始めた。
「!?…………速──」
ロボタックル。
マシンガンパンチほどの威力こそないものの、速度、そして接近に特化したロボの特技である。
やられた、と悠は思った。
ジオもスラッシュも……それどころか、イザナギを顕現させるためにカードを割る所作すら間に合わない。
ロボはAIであるため、その場その場の最善策と思われる行動を常に取り続ける。そう判断したのが悠の誤りだった。
自分が補助を最大まで掛けたスラッシュを切り札として持っていたのと同じように、接近のための切り札をロボも隠し持っていたのだ。
微かに、女神の杖を前方に構える。
突撃してくる鋼鉄の塊に対しての防御手段としては全くもって頼りない。
それでも致命傷だけはギリギリ避けながら、タックルを受けて吹き飛ぶ悠。
冷たい、無機質な床を転がり回って全身を打撲する。これでは素早い立ち回りは不可能だろう。
そしてロボは倒れた悠の所までゆっくりと歩みを進める。
悠は立ち上がるも、全身の痛みが邪魔をして離れられない。
イザナギを前方に押し出すが、マシンガンパンチを防ぐことは出来ないだろう。
ガシャン、ガシャンという足音が死までのカウントダウンにさえ思えてくる。
(アイツはまだ病院の外で待ってるんだろうな……。)
ふと、自分が逃がしたピカチュウのことを思い出した。
自分も後から逃げると息巻いておいてこのザマだ。
浮かんだ感情は自嘲とは違う。恐怖ともまた異なる。
言うなれば、虚無。
自らの死を看取る者もいない。
自らの生を語り継ぐ者もいない。
こんな場所でただ一人、静かに息を引き取ることへの虚無感。
隣で戦ってくれる者がいない戦いは、何て虚しいのだろう。
──虚無が、怖かった。
(完二が死んだ。他の仲間たちだって、どこにいるかも分からない。)
──孤独が、怖かった。
(どうせピカチュウもとっくに逃げ出して、次の相方を探してるに決まってるさ。)
──隣に誰もいないことが、怖かった。
(なあ、そうなんだろう?)
そんな思考に陥っている、そんな時。
「………………う。」
微かに、されど確かに。
声が、聴こえた気がした。
「悠ーーーー!!」
「!!……ピカチュウ!どうして──! 」
「助けに来たに決まってんだろ!待ってろ!」
それは確かに、逃げたはずのピカチュウだった。
──仲間の居ない戦いが、怖かった。
そう、怖かったんだ。
だけど、もう怖くはない。
──俺は、もう独りじゃないのだから。
「ペルソナチェンジ!!」
悠を護るように立ち塞がっていた影が消える。
そして歴史上の武将を思わせる、武装や旗に身を包んだ影が新たに立ち塞がる。
影は、その名を『ネコショウグン』といった。ピカチュウと紡いだ新たな絆──『
星のアルカナ』のチカラにより顕現された星の力を持つペルソナの一体である。
対するロボはペルソナが変わったことなど関係無しに、マシンガンパンチを放つ構えに移る。
「ジオンガ!!」
そんなロボを、悠の放ったジオよりも強力な電撃が包み込んだ。
イザナギの放つジオに比べて魔法の階級が上がっているというだけではない。
『電撃ブースタ』のスキルを持つネコショウグンは、雷魔法の威力自体が高いのである。
高火力の電気魔法を受け、ジオを受けた時以上の硬直を余儀なくされるロボ。
その間に、悠の下へ駆けつけたティファが悠を庇うように前に立つ。
「悠!無事か!?」
「ああ、平気だ……来てくれたんだな、ピカチュウ。」
「当たり前さ。だって──」
ポカポカに乗ったピカチュウが悠と握手を交わす。
この世界で生まれた確かな絆を悠は感じていた。
「俺たちは固い絆で繋がってる……そうだろ?悠。」
「……ああ!」
「新たなシンニュウシャ、確認しまシタ。」
さて、硬直が終わり、悠の前に立ち塞がるティファに向けてロボはマシンガンパンチを放つ。
「……はああああああ!!」
その全てに対してティファも拳で応戦する。
格闘戦ではラヴォスを倒したロボにも劣らないティファ。
ロボのマシンガンパンチを完全に無力化した。
グレンには何が起こっているのか分からなかった。
ピカチュウの話によると、ロボットが参加者を襲っているとのことだった。
そして今助けられていた青年が、ピカチュウの言う『悠』なのは間違いないだろう。
だが悠を襲っていたロボットを、グレンは知っている。
「──ロボ!?」
気付いた時には声を上げていた。
幸いか不幸か、ロボの名前は固有名詞には聞こえなかったようで、ロボットと戦うことを分かった上で来ているピカチュウとティファが何を今さらと顔にクエスチョンマークを浮かべていた。
「ロボではナイ。私はプロメテス。アナタたちをハイジョします。」
ルッカにもロボと呼ばれたプロメテスは、ロボという単語を固有名詞であると認識している。
理由は分からないが、ロボはプロメテスを名乗り参加者の排除に回っている。数時間前まで共に旅をしていたはずの自分に気付いている様子もない。
かといってクロノたちと出会う前の時代から連れてこられたというわけでもないようだ。
元々使えなかったマシンガンパンチを修得して喜んでいたロボを自分は見たことがある。マシンガンパンチを放ってきた地点で自分との面識が無いのはおかしい。
魔王との決闘直前にこの世界に連れてこられたグレンはプロメテスの名を知らない。
そのため、ロボが参加者を排除している理由について推測の材料が無いのである。
そこの考察を諦めたカエルは、この場での立ち回りについて考え始める。
前衛に出てロボと戦うか?
論外だ。怪我を負っており、武器もない自分が今のロボに勝てるとは思えない。
これらの要因からグレンは自然と後衛の位置に立っており、今は悠にケアルガをかけている。
この場を放って逃げ出すか?
これもまた論外だ。ティファ達が生き残った時に信頼を損なうような真似は出来ない。ステルスマーダーの立場を貫くのに、信頼を持っておくことは必要不可欠。
それならば──その先を考えた瞬間、悪魔がそっとグレンに囁いた。
(──ここで『ウォータガ』を使えば一網打尽に出来るのでは……?)
ここは狭い病院の廊下──ウォータガの津波から逃げる場所は存在しない閉鎖空間。
命の恩人のティファを、過去の仲間のロボを葬るのは気が引けるが、どうせ優勝のためには避けて通れない道である。
──人道など、捨ててしまえ。
仲間のフリをし、ここぞという場面で裏切る。騎士として……否、騎士でなくとも外道の行いだ。
だからといってそれがどうしたというのだ。
人の道に縋ってはサイラスを蘇らせることなど出来ない。
サイラスの蘇生を決めたあの時から既に人としての生き方など棄てたのだ。
──グレンの名誉など、捨ててしまえ。
そんなもの、元より守るつもりもない。
失った友を取り戻すために悪へと走った愚かな男。しかしチカラが足りずこれまで3度にわたって敗北を重ねた男。
それがグレンの現状だ。
今さらその名を穢すことに躊躇などしない。
(そうさ、俺に戻る場所なんて無い。守りたいものなんてもう無いのさ……。)
何もかもかなぐり捨てたグレンは、腕に魔力を込める。
その場の全てを水泡に帰す、その時を待ちながら……。
✼••┈┈┈┈••✼••┈┈┈┈••✼••┈┈┈┈••✼••┈┈┈┈••✼
「さて、コイツだけど……人を襲うロボットならぶっ壊しちゃっても構わないわよね?」
ロボがグレンの仲間だと知らないティファは尋ねる。
ただしそれは合意を前提とした最終確認のようなものだ。
その返事を待つまでもなくロボはティファに攻撃し、ティファがそれをいなす攻防が繰り広げられる。
本来はロボとティファの間に決定的な実力差は無いのだろうが、ルッカのメガトンボムを受けた傷、悠のジオ系魔法を受け続けた傷が蓄積しており、もうMPもほとんど残っていないロボは既に戦闘能力が落ちている。
よってティファに有利な攻防となっているのである。
「ああ、壊すのは少し気が引けるが……仕方ないと思う。」
悠もティファの提案には反対しない。
様々な人物とコミュニティを築いてきた悠も、この状態のロボと仲良くなれるとは考えない。
ティファも悠も、ルッカの修理によって優しさが生まれたロボを知らないからこその思考である。だがグレンはロボについて伝えようとしない。
「分かったわ。グレン、悠……怪我人たちは下がっててちょうだい。」
そういうとティファはロボと対峙する。
今度は、ロボを破壊するために。
「はああああああ……」
腰を落として構え、いったん目を閉じて集中力を高める。
その身から溢れる闘気を前にすれば、どんな獣も気圧されるだろう。
「いくわよっ!」
刹那、地を蹴りロボへと肉迫する。
瞬速の勢いで放たれた膝がロボの胴に命中する。
ロボは右ストレートで応戦しようとするも、間に合わない。
既にティファの姿はロボの背後にある。
そしてロボの巨体を抱え上げ、病院の床に叩き付ける。
重力を味方につけた攻撃により、ロボは多大なダメージを受ける。ポケモンの居る世界にも受け手の体重に比例してダメージが大きくなるワザがあるが、それと同じ理屈だ。
「これで…………」
ロボから手を離したティファは再び悠の前に降り立つ。
そして壁をバネに、ロボに向かって飛び掛かった。
「終わりよッ!!」
勢いのまま、蹴りを放つ。
当たれば致命傷を避けられない一撃がロボに迫る。
──ガァン!!
鈍い音が聴こえた。
機械の身体に大きな衝撃が与えられた音とは微妙に異なる、鈍い音が。
ティファの身体は、ロボを攻撃した瞬間磁石が反発するかのように反対側へ投げ出されていた。
ロボを蹴ったはずの華麗な脚からは、血が吹き出している。
「何だ、どうした!?」
その事態に真っ先に気付いた悠は投げ出されたティファの身体を受け止める。
「わから……ない……何が……」
ロボがティファの攻撃を反射したその理由は、ロボの扱う武器、ベアークローにあった。
稀に物理攻撃を反射する特殊効果を持つ武器。
悠の居た世界に存在する武器ではあるが、悠自身が使う武器ではなかったため、悠もそれを把握していなかった。
ダメージを受けたのは主に攻撃に使った脚の周りだけだが、必殺の一撃を反射されたのもありダメージは大きい。
何より、脚の負傷で移動が困難になればロボの格好の狙いの的だ。
「一体何が……!」
ネコショウグンが扱える回復魔法、メディラマでティファの傷を治療する。ネコショウグンでは単体回復魔法を使えないためやむを得ずの全体回復魔法だが、悠自身の傷も深いのでむしろ都合は良いかもしれない。
それでも、この殺し合いの舞台そのものにかけられた回復制限のせいで治りが悪い。
「カエルショウグン!回復魔法か何か使えないか?」
まだ名前を聞いていないが、グレンに声をかける。
だが、どこか様子がおかしい。
「おい、どうしたカエル男?」
同じく心配するピカチュウに対し、グレンは返事を返す。
「ウォータガ!!」
魔法という、最悪の形の返事を。
✼••┈┈┈┈••✼••┈┈┈┈••✼••┈┈┈┈••✼••┈┈┈┈••✼
ウォータガ。
水の波動が周囲を包み込み、多くの敵を一掃できる水属性の魔法である。
ところで周囲を一掃できる水の波動がクロノたちを巻き込まない理由は何故か?
それは難しい理屈ではない。
ただ波動が押し寄せる範囲をグレン自身がコントロールしているからに過ぎないのだ。
「ウォータガ!!」
高らかにグレンは魔法名を叫ぶ。
その声を聞き、ティファは青ざめる。
魔法の名は体を表す。
グレンの叫んだ魔法名は聞いた事の無い名前であったが、名前から水の魔法──それもファイガやブリザガといった高等魔法に並ぶ魔法であることは容易に想像出来た。
ティファの世界とグレンの世界の魔法名は何の偶然かある程度一致している。
よってその脅威を共有するのに時間はかからなかった。
「悠、逃げて──」
しかし、暫しの時間が経ってもティファたちを水の波動が襲うことはなかった。
グレンは、水の波動が襲う範囲にティファたちを含めていなかった。
人道など、捨ててしまえ。
グレンの名誉など、捨ててしまえ。
勝利への渇望からそれらへの拘りを捨てたグレン。
だがそれでも、それでもだ。
どうしても超えられない一線が彼にはあった。
どうしても捨てられないものが彼にはあった。
グレンは、水の波動が襲う範囲にロボを含めていなかった。
「うおおおおッ!!」
ウォータガを放ったのは、ロボの背後の壁。
そして放つと同時に、ロボに向かって駆け出す。
「我が名はカエル!!サイラスの意志を継ぐ勇者にして、英雄クロノの仲間なり!!」
人道を捨てても名誉を捨ててもなお、友との絆だけは捨てられなかった。
絶望の未来を変えるために共に戦い、疲れを癒すために共に休み、その果てに訪れたクロノの死を共に悲しんだ者たち。
ロボを含む彼らもまた、サイラスと同じくかけがえのない絆で結ばれた者たちだ。
壁に向けて放たれたウォータガは、跳ね返って真下に降り注ぐ。
対象の壁を攻撃したことで魔力が霧散し、魔法としての殺傷力を持たないただの水へと変わった水が、ロボとカエルの全身を濡らす。
「頭は冷えたか?さあ、お前の名前を言ってみろ!!」
「ワタシ……の……名……?」
「クロノから貰った仲間の証を……お前の名前を、言ってみろぉぉぉ!!!」
ああ、そうだ。
これが『カエル』だ。
『グレン』がサイラスを失った悲しみから立ち直れなくなっても。
聖剣グランドリオンが失われ、『グレン』がやる気を失っても。
『カエル』として、そしてアイツの戦友として戦っている内にそのような感情から立ち直ることが出来た。
「ワタシ……ワタシの名は……」
さあ、もう覚悟は決まった。
『カエル』として殺し合いをぶち壊して、ロボと共に元の世界に戻ってやる。
そして今度こそ、あの魔王と決着を──
「──ワタシの名前はプロメテス。アナタの敵デス。」
カエルの想いは、ロボには通じなかった。
ロボはカエルの胸ぐらをガシッと掴む。
「なっ……!おい、ロボ──ぐっぐああああああああああああああぁぁぁ!!!!!」
直後、カエルの身体に電流がほとばしった。
エレキアタック──皮肉にも自らの放った水を被っていたせいで、電流は瞬時に身体中に回る。
「ちく……しょ…………う…………」
元々傷だらけの身体に、カエルよりも後の時期からやってきたロボの大技は致命傷だった。
──ドサッ
終わった命を放り捨てるには、あまりにもか細い音が響く。
ロボがその手を離した時、カエルは既に息絶えていた。
怪我人のティファも、彼女を介抱していた悠も、戦いのレベルについて行っていないピカチュウもポカポカも、その場の誰もが息を飲んでカエルの末路を看取ることしか出来なかった。
だけどただ一人、その惨状の中で声を発した者がいた。
「ワタシ……ワタシは……!カエル……ごめんなサイ……こんなハズでは……こんな……ハズ……では……!!」
それは確かに、先ほどまで戦っていたロボと同じ者であるはずだ。だがカエルの死体を前にして、何かが変わったようであった。
ロボはゆっくりと、悠たちの方へ向き直る。
「シンニュウシャ、ハイジョ……したくナイ……ガガ……ピー……ハイジョ、しマス……」
それはまるで、壊れたラジオのようであった。
支離滅裂な思考を、定まらない音声で吐き捨てる。
「なあ、俺たちは……アイツを殺すのか?」
たまらず口にしたピカチュウの問いかけに、悠もティファもYESとは答えられなかった。
「逃げよう。」
「……ええ。」
悠がそう言うのを待っていたかのように、2人と2匹は病院から出て行き始める。
悠の回復魔法で何とか早歩きができるくらいまでには回復したティファも、打撲が酷くてまだ全力疾走できるほど癒えていない悠も、それぞれの最高速度でロボの元を離れる。
ロボの中では、アトロポスとロボが戦っているのだろうか。
ロボは、彼らを追うことはなかった。
【カエル@クロノトリガー 死亡確認】
【残り60名】
【D-5/病院外(南側)/一日目 早朝】
【鳴上悠@ペルソナ4】
[状態]:ダメージ(中) 全身打撲 SP消費(中)
[装備]:女神の杖@ドラゴンクエストⅪ 過ぎ去りし時を求めて
[道具]:基本支給品、ルッカの工具箱@クロノ・トリガー
[思考・状況]
基本行動方針:リーダーとして相応しい行動をする。
1.とりあえず放送を待つ
2.もし仲間がいるなら探したい。
3.完二の意志を継ぐ。
※事件解決後、バスに乗り込んだ直後からの参戦です。
※ピカチュウと絆を深めたことで"星"のペルソナを発現しました。『ネコショウグン』以外の星のペルソナを扱えるかどうかは以降の書き手さんにお任せします。
※誰とも特別な関係(恋人)ではありません。
※全ステータスMAXの状態です。
【ピカチュウ@名探偵ピカチュウ】
[状態]:健康
[装備]:モンスターボール(ポカブ)@ポケットモンスター ブラック・ホワイト
[道具]:基本支給品、ランダム支給品(確認済み、1~3個)
[思考・状況]
基本行動方針:殺し合いを止める。
1.とりあえず放送を待つ
2.ティムやポカブのパートナーを探す。
※本編終了後からの参戦です。
※電気技は基本使えません。
【ティファ・ロックハート@FF7】
[状態]:ダメージ(中) 脚に怪我(走るのが難しい程度) 疲労
[装備]: パワー手袋@クロノトリガー+マテリア・スピード(マテリアレベル3)@FF7
[道具]:基本支給品、ランダム支給品(0~1個)
[思考・状況]
基本行動方針:マーダーから参加者を救う
1.とりあえず放送を待つ
2.セフィロス@FF7の元へ向かいたい
※ED後からの参戦です。
※ティファ・ロックハートのコミュニティ属性は"戦車"です。
【支給モンスター状態表】
【ポカポカ(ポカブ ♂)@ポケットモンスター ブラック・ホワイト】
[状態]:健康
[特性]:もうか
[持ち物]:なし
[わざ]:たいあたり、しっぽをふる、ひのこ
[思考・状況]
基本行動方針:ベルを探す
1.ピカチュウ達について行き、ベルを探す。
2.強くなってベルを喜ばせたい。
「カエルのナカまは、逃げマシたか……?」
さて、ここでロボの現状を一度整理しよう。
このロボはクロノたちとの旅を経験し、ラヴォスを倒した後の世界からやってきている。
しかしこの世界に呼ばれた際、主催者たちによってプログラムを書き換えられ、行動方針が変えられたのである。
人類を滅亡させるロボットとして作られた、記憶の中の『アトロポス』の名前。それに加えて病院への侵入者を排除するという後天的な任務を行動方針としてプログラムされている。
「良かっタ……それデハ……次のシンニュウシャを、待たなくテハ………………」
ところで、だ。
主催者によって参加者排除の命令を受けた者は、ロボ以外にも存在する。
イウヴァルト、ネメシス-T型、そしてホメロス。
住む世界の異なる彼らだが、【ジョーカー】と呼ばれる彼らはこの世界において共通の扱いを受けている。
「エネルギー……チャージ開始……」
それは、特別優遇された支給品が配られているという点。
ロボに与えられた優遇支給品のひとつは、『たべのこし』
さすがにロボがもぐもぐリンゴの芯を食べることは無いが、体内に取り付けられたこのアイテムは無限にロボにHPを供給し続ける永久機関となる。
しかし、ガルディア王国歴2300年の技術が用いられたロボのプログラムを書き換えたり、その体内にたべのこしを応用した永久機関を取り付けたりといった芸当が、まともな教育も受けていない子供のマナに可能だろうか?
あるいは、魔法が文明を代用する世界に住むウルノーガに可能だろうか?
マナとウルノーガによって開かれたと思われているこの殺し合い。
だがその裏には、まだ見ぬ何者かが隠れているのかもしれない…………。
【D-5/病院/一日目 早朝】
【ロボ@クロノ・トリガー】
[状態]:ダメージ(中)、MP消費(大)
[装備]:ベアークロー@ペルソナ4 、たべのこし@ポケットモンスター ブラック・ホワイト
[道具]:基本支給品、ランダム支給品0~1個
[思考・状況]
基本行動方針:病院内に侵入した敵を排除する
1.ワタシの名前はプロメテス。
2.カエル、ごめンなサい。
※ED No.01 "時の向こうへ"後からの参戦です。
【
支給品紹介】
【たべのこし@ポケットモンスター ブラック・ホワイト】
ロボに支給品された道具。
ポケモンに持たせると、毎ターンHPが最大の1/16回復するどうぐ。ロボはこれを体内に装備しており、HPを供給し続ける永久機関の動力源となっている。
最終更新:2021年06月25日 04:43