狂乱劇 第三幕 ─一人の重みと八人の重み─ ◆dGUiIvN2Nw
「お膳立てはわかった。だが、共に戦うという奴の顔すら私は知らない。そんな奴とどうやって一緒に戦えって言うんだ?」
屋敷跡に、瀬多、レミリア、アドレーヌ、キョウ、カービィが集まっていた。
千枝はこれからの攻撃を準備しているため、ここにはいない。ピカチュウが千枝の周りを巡回し、危険があれば拡声器で仲間を呼ぶ手筈となっている。
青空の下での話し合いということで、レミリアの周りは崩壊した屋敷の残骸を使って三角状の避暑地を設けてある。
レミリアはそこで、アドレーヌにチューブから出るクリームを塗ってもらっていた。
それは、キョウが持っていたアドレーヌの絵の具によって具現化した、強力な日焼け止めクリームである。それを塗ること自体、本人はひどく嫌がっていたが、瀬多が無理やり黙らせた。
屋敷跡に、瀬多、レミリア、アドレーヌ、キョウ、カービィが集まっていた。
千枝はこれからの攻撃を準備しているため、ここにはいない。ピカチュウが千枝の周りを巡回し、危険があれば拡声器で仲間を呼ぶ手筈となっている。
青空の下での話し合いということで、レミリアの周りは崩壊した屋敷の残骸を使って三角状の避暑地を設けてある。
レミリアはそこで、アドレーヌにチューブから出るクリームを塗ってもらっていた。
それは、キョウが持っていたアドレーヌの絵の具によって具現化した、強力な日焼け止めクリームである。それを塗ること自体、本人はひどく嫌がっていたが、瀬多が無理やり黙らせた。
キョウとカービィとで助け出されたレミリアは意外にもケロリとしていた。といっても、今まで気絶していたようだが、それでもまだまだ戦えるらしい。
彼女のタフさはやはり凄まじいものがある。
「協力といっても、連携を取ってくれと言ってるんじゃない。時間がくるまで足止めし、それから幽香を所定の位置まで移動させて欲しいと言ってるんだ。そう難しい話じゃないだろ?」
「はっきり言うぞ。めちゃくちゃ難しい。あの幽香を止めようと考えているならな」
プライドの高いレミリアらしからぬ発言だ。それだけ無茶な事をしようとしているということだろう。
「幽香さん……」
思わず呟き、作業を止める。
ぎゅっと拳を固めるアドレーヌの手を、そっと瀬多が握ってやる。
だが、慰めている時間はない。一刻も早く、幽香を止めなければならない。
「難しくてもやってくれ。それしか方法はないんだ。……全員、自分の役割は理解したな? 必ずこの作戦に従って動いてくれ。これは全員が生き残る為の最善の作戦だ。決して軽はずみな行動は起こさないこと。いいな?」
全員が頷く。
この中で、一体何人が生き残れるのか。そんなことを一瞬考えて、瀬多は頭を振った。
「レミリア。手加減しろとは言わない。だが……」
「そのメダルを引き剥がせってことだろ。理解してるよ。出来るかどうかは分からないけど」
顔にクリームを塗ってもらい、何とも言えない渋面を作りながらレミリアは言った。
「アドレーヌ。絵の実体化はだいたい何分くらいで解除されそうだ?」
「た、たぶん……三十分くらい」
「いけるな? レミリア」
「ま、十分でしょ。作戦通りに事が運ぶならね」
瀬多は頷いた。
全員を見回し、口を開く。
「俺達はかなり無謀なことをしようとしている。だが、今の幽香を放っておくわけにはいかない。少しでも勝機があるのなら、今ここでなんとかしなくちゃいけない。……勝つぞ。幽香も、俺達も、全員生き残って、またここで会おう」
「「「おう!!」」」
元気な声が三つ。
当然レミリアはそっぽを向いているし、アドレーヌにそんな元気はない。
「だいじょうぶだよ! 幽香って人も、ぜったいに助かる!」
カービィの明るい声に、アドレーヌは少しだけ微笑んで頷いた。
そうだ。絶対に助けてやる。こんなところで、アドレーヌと死に別れなんて、そんなこと絶対にさせない。
「……いくぞ。作戦開始だ」
彼女のタフさはやはり凄まじいものがある。
「協力といっても、連携を取ってくれと言ってるんじゃない。時間がくるまで足止めし、それから幽香を所定の位置まで移動させて欲しいと言ってるんだ。そう難しい話じゃないだろ?」
「はっきり言うぞ。めちゃくちゃ難しい。あの幽香を止めようと考えているならな」
プライドの高いレミリアらしからぬ発言だ。それだけ無茶な事をしようとしているということだろう。
「幽香さん……」
思わず呟き、作業を止める。
ぎゅっと拳を固めるアドレーヌの手を、そっと瀬多が握ってやる。
だが、慰めている時間はない。一刻も早く、幽香を止めなければならない。
「難しくてもやってくれ。それしか方法はないんだ。……全員、自分の役割は理解したな? 必ずこの作戦に従って動いてくれ。これは全員が生き残る為の最善の作戦だ。決して軽はずみな行動は起こさないこと。いいな?」
全員が頷く。
この中で、一体何人が生き残れるのか。そんなことを一瞬考えて、瀬多は頭を振った。
「レミリア。手加減しろとは言わない。だが……」
「そのメダルを引き剥がせってことだろ。理解してるよ。出来るかどうかは分からないけど」
顔にクリームを塗ってもらい、何とも言えない渋面を作りながらレミリアは言った。
「アドレーヌ。絵の実体化はだいたい何分くらいで解除されそうだ?」
「た、たぶん……三十分くらい」
「いけるな? レミリア」
「ま、十分でしょ。作戦通りに事が運ぶならね」
瀬多は頷いた。
全員を見回し、口を開く。
「俺達はかなり無謀なことをしようとしている。だが、今の幽香を放っておくわけにはいかない。少しでも勝機があるのなら、今ここでなんとかしなくちゃいけない。……勝つぞ。幽香も、俺達も、全員生き残って、またここで会おう」
「「「おう!!」」」
元気な声が三つ。
当然レミリアはそっぽを向いているし、アドレーヌにそんな元気はない。
「だいじょうぶだよ! 幽香って人も、ぜったいに助かる!」
カービィの明るい声に、アドレーヌは少しだけ微笑んで頷いた。
そうだ。絶対に助けてやる。こんなところで、アドレーヌと死に別れなんて、そんなこと絶対にさせない。
「……いくぞ。作戦開始だ」
◇◇◇
『お嬢様!! こちらは準備が整いました! 今はゼルギウスが足止めしています!! すぐに駆けつけ──って、あら』
「わざわざそんなもの使う必要ないわ。咲夜」
いつの間にここまで来たのか。まったく認知できなかった。吸血鬼の身体能力は健在といったところか。
「ま、大した怪我もないようで安心したわ」
「そちらも。まず大丈夫だとは思っていましたが」
「そうね。私もそう思ってた。咲夜が死ぬなんて私が死ぬ次の次くらいに有り得ないわ」
「ええ。お嬢様が死ぬなんて、私が死ぬ次の次の次くらいに有り得ないことです」
「減らず口を」
「そちらも」
ふっと、どちらからともなく笑う。
「さて、そろそろ行くとするか。もたもたしてると瀬多が五月蠅いからな」
「あの男はなかなか使い勝手が良さそうですね」
「まったくだ。副メイド長にしてやれば、お前の苦労も減るんじゃないか?」
「それは楽しみです。精神が摩耗するまでこき使ってやりましょう」
いつも通りだ。いつも紅魔館で繰り返す他愛のない会話。
「……お嬢様」
「あん?」
「ありがとうございます。私に名前をくださったこと。居場所をくださったこと。……口には出しませんでしたが、ずっと感謝しておりました。こんな生意気な私でも、今まで召し仕えて下さった」
「……ふん。当然だろ。お前は私のメイドなんだ。昔も今も、そしてこれからもな」
不敵にレミリアは笑ってみせる。
咲夜もつられて笑った。
レミリアが、すっと拳を出す。
「任せたぞ」
咲夜も、その拳を突き合わせる。
「任されました」
その言葉を最後に、レミリアは木々を飛び移るようにして、最大速度で林の中に入って行った。
「わざわざそんなもの使う必要ないわ。咲夜」
いつの間にここまで来たのか。まったく認知できなかった。吸血鬼の身体能力は健在といったところか。
「ま、大した怪我もないようで安心したわ」
「そちらも。まず大丈夫だとは思っていましたが」
「そうね。私もそう思ってた。咲夜が死ぬなんて私が死ぬ次の次くらいに有り得ないわ」
「ええ。お嬢様が死ぬなんて、私が死ぬ次の次の次くらいに有り得ないことです」
「減らず口を」
「そちらも」
ふっと、どちらからともなく笑う。
「さて、そろそろ行くとするか。もたもたしてると瀬多が五月蠅いからな」
「あの男はなかなか使い勝手が良さそうですね」
「まったくだ。副メイド長にしてやれば、お前の苦労も減るんじゃないか?」
「それは楽しみです。精神が摩耗するまでこき使ってやりましょう」
いつも通りだ。いつも紅魔館で繰り返す他愛のない会話。
「……お嬢様」
「あん?」
「ありがとうございます。私に名前をくださったこと。居場所をくださったこと。……口には出しませんでしたが、ずっと感謝しておりました。こんな生意気な私でも、今まで召し仕えて下さった」
「……ふん。当然だろ。お前は私のメイドなんだ。昔も今も、そしてこれからもな」
不敵にレミリアは笑ってみせる。
咲夜もつられて笑った。
レミリアが、すっと拳を出す。
「任せたぞ」
咲夜も、その拳を突き合わせる。
「任されました」
その言葉を最後に、レミリアは木々を飛び移るようにして、最大速度で林の中に入って行った。
◇◇◇
「月光!!」
拳と剣がぶつかり、互いにその衝撃で後ろへ滑る。
片や息を切らしながら剣を構える騎士。片やまったく笑みを崩さずに立つ怪物。
誰がどう見ても、どちらが優勢かは明白だった。
もう一度斬り結ぼうとゼルギウスが向かった時、幽香の頭上に少女がいた。
「バッドレディスクランブル」
途端、まるで竜巻のような紅い渦が少女を取り巻き、そのまま凄まじい勢いで幽香へと落下した。
その隕石のような攻撃を、しかし幽香は後ろに大きく跳躍することで回避していた。
「ふぅ。なんだ。けっこう俊敏じゃないか」
「貴殿がレミリア・スカーレットか?」
「そういうお前はゼルギウス?」
「いや。私は漆黒の騎士だ」
「はぁ? ……まぁ、名前なんてどうでもいいか」
漆黒の騎士が剣を構え、レミリアも槍を生成して構える。
「体力はあまり消耗しないように、というのが作戦ではなかったか?」
咲夜から聞いた瀬多の作戦では、漆黒の騎士もレミリアも、あくまで時間稼ぎが目的だ。
ならば、できるだけ力は温存しておくべきだと考えるのが当たり前で、事実咲夜にもそう言われた。
「何を抜けたことを言っている。主役の登場は派手なものだと相場が決まっているのよ」
……どうやらあまり頭を使うタイプではないらしい。
漆黒の騎士は頭を切り替えた。
「では行くぞ。レミリア・スカーレット」
「言っとくけど、発言権は私の方が強いんだ。その辺、勘違いするなよ。……というわけで、行くぞ漆黒」
「……了解した」
二人は、幽香に向けて突進した。
拳と剣がぶつかり、互いにその衝撃で後ろへ滑る。
片や息を切らしながら剣を構える騎士。片やまったく笑みを崩さずに立つ怪物。
誰がどう見ても、どちらが優勢かは明白だった。
もう一度斬り結ぼうとゼルギウスが向かった時、幽香の頭上に少女がいた。
「バッドレディスクランブル」
途端、まるで竜巻のような紅い渦が少女を取り巻き、そのまま凄まじい勢いで幽香へと落下した。
その隕石のような攻撃を、しかし幽香は後ろに大きく跳躍することで回避していた。
「ふぅ。なんだ。けっこう俊敏じゃないか」
「貴殿がレミリア・スカーレットか?」
「そういうお前はゼルギウス?」
「いや。私は漆黒の騎士だ」
「はぁ? ……まぁ、名前なんてどうでもいいか」
漆黒の騎士が剣を構え、レミリアも槍を生成して構える。
「体力はあまり消耗しないように、というのが作戦ではなかったか?」
咲夜から聞いた瀬多の作戦では、漆黒の騎士もレミリアも、あくまで時間稼ぎが目的だ。
ならば、できるだけ力は温存しておくべきだと考えるのが当たり前で、事実咲夜にもそう言われた。
「何を抜けたことを言っている。主役の登場は派手なものだと相場が決まっているのよ」
……どうやらあまり頭を使うタイプではないらしい。
漆黒の騎士は頭を切り替えた。
「では行くぞ。レミリア・スカーレット」
「言っとくけど、発言権は私の方が強いんだ。その辺、勘違いするなよ。……というわけで、行くぞ漆黒」
「……了解した」
二人は、幽香に向けて突進した。
「おおおおおっ!!!」
幽香の弾丸のような拳を剣で逸らす。
たった一人でまともに幽香の猛攻に耐えれる時間は五秒が限度だ。その限界間近で足払いをかける。
当然避けられるも、猛攻が一瞬だけ止む。
その隙を見て、大きく振り被り、幽香に迫る。それを相手取ろうと幽香が一歩足を踏み出した時
「相手は漆黒だけじゃないぞ」
真後ろからレミリアの槍が迫る。
完全な挟み撃ちが決まった。
衝撃派で大気が震える。
だが幽香に傷はない。
漆黒の騎士とレミリア、それぞれの攻撃を幽香は片手で受け止めていた。
「なっ!」
「くっ!」
身体を回転させ、二人を吹き飛ばす。レミリアはその小さな身体を活かしてくるくると回転し、遠くの方で着地する。
しかし、漆黒の騎士は元々が巨体で、しかも大剣を振るっていることもあり、決定的な隙ができる。
幽香の弾丸のような拳を剣で逸らす。
たった一人でまともに幽香の猛攻に耐えれる時間は五秒が限度だ。その限界間近で足払いをかける。
当然避けられるも、猛攻が一瞬だけ止む。
その隙を見て、大きく振り被り、幽香に迫る。それを相手取ろうと幽香が一歩足を踏み出した時
「相手は漆黒だけじゃないぞ」
真後ろからレミリアの槍が迫る。
完全な挟み撃ちが決まった。
衝撃派で大気が震える。
だが幽香に傷はない。
漆黒の騎士とレミリア、それぞれの攻撃を幽香は片手で受け止めていた。
「なっ!」
「くっ!」
身体を回転させ、二人を吹き飛ばす。レミリアはその小さな身体を活かしてくるくると回転し、遠くの方で着地する。
しかし、漆黒の騎士は元々が巨体で、しかも大剣を振るっていることもあり、決定的な隙ができる。
「かみなり!!」
が、突如現れた落雷により、幽香の攻撃はキャンセルされる。
その隙に後ろへ下がり、体勢を立て直す。
「助かった」
「お互い様よ」
かみなりをまともに受けたにも関わらず、幽香にはまったくダメージがない。増えて行く得物。誰を先に殺そうか。まるで品定めをしているかのようだ。
「咲夜殿は下がっていてくれ。かなり疲労が溜まっているはずだ。戦いはその黄色いねずみに任せて休まれよ」
「そうもいかないわ。ピカチュウがここにいる以上、絶対に幽香を足止めしておかないと瀬多の作戦が崩れる」
瀬多が駆けつけるまで、千枝は完全に無防備状態だ。千枝に近づかないように、幽香をここに留まらせておく必要がある。
そしてそれには、少しでも戦力が必要なのだ。
「しかし……私は咲夜殿を守ると誓った。貴殿を危険に曝すわけには……」
「……気持ちだけ受け取っておく」
「おいこら!!」
なんだか良い雰囲気になりつつある二人に向かって罵声が飛んだ。レミリアだ。
「ちょっと漆黒! あんた咲夜に手ぇ出そうなんて考えてるんじゃないでしょうね! 咲夜は私のものよ。下手なことしたら、一滴残らずその血を吸い尽くすぞ!!」
その言葉を契機に、幽香は得物を決めたようだ。
一番活きの良さそうな得物。当然、レミリア・スカーレットだ。
地面を抉ってスタートダッシュを切ると、そのまま一瞬でレミリアとの距離を詰める。
「っ!! お嬢様!!」
大砲のような拳がレミリアの顔を掠める。
「大振りなのは相変わらず、ね!!」
小さな身体を滑り込ませる。
「ドラキュラクレイドル!!!」
再び紅の竜巻となり、幽香を上方へと押し上げる。
「駄目押しにもう一発!! スカーレットデビル!!!!」
魔力の奔流。
空へと駆ける紅い十字架は幽香を呑みこみ、その身体を上空へと吹き飛ばす。
「はぁ。はぁ。……どうだ。……漆黒などより……よっぽど……強いだろうが」
確かに、漆黒の騎士は驚いていた。
その小さな身体のどこにこんな力が隠されているのか。そう思うくらいに、レミリアは強かった。
だが、それよりももっと強い者がここにはいた。
が、突如現れた落雷により、幽香の攻撃はキャンセルされる。
その隙に後ろへ下がり、体勢を立て直す。
「助かった」
「お互い様よ」
かみなりをまともに受けたにも関わらず、幽香にはまったくダメージがない。増えて行く得物。誰を先に殺そうか。まるで品定めをしているかのようだ。
「咲夜殿は下がっていてくれ。かなり疲労が溜まっているはずだ。戦いはその黄色いねずみに任せて休まれよ」
「そうもいかないわ。ピカチュウがここにいる以上、絶対に幽香を足止めしておかないと瀬多の作戦が崩れる」
瀬多が駆けつけるまで、千枝は完全に無防備状態だ。千枝に近づかないように、幽香をここに留まらせておく必要がある。
そしてそれには、少しでも戦力が必要なのだ。
「しかし……私は咲夜殿を守ると誓った。貴殿を危険に曝すわけには……」
「……気持ちだけ受け取っておく」
「おいこら!!」
なんだか良い雰囲気になりつつある二人に向かって罵声が飛んだ。レミリアだ。
「ちょっと漆黒! あんた咲夜に手ぇ出そうなんて考えてるんじゃないでしょうね! 咲夜は私のものよ。下手なことしたら、一滴残らずその血を吸い尽くすぞ!!」
その言葉を契機に、幽香は得物を決めたようだ。
一番活きの良さそうな得物。当然、レミリア・スカーレットだ。
地面を抉ってスタートダッシュを切ると、そのまま一瞬でレミリアとの距離を詰める。
「っ!! お嬢様!!」
大砲のような拳がレミリアの顔を掠める。
「大振りなのは相変わらず、ね!!」
小さな身体を滑り込ませる。
「ドラキュラクレイドル!!!」
再び紅の竜巻となり、幽香を上方へと押し上げる。
「駄目押しにもう一発!! スカーレットデビル!!!!」
魔力の奔流。
空へと駆ける紅い十字架は幽香を呑みこみ、その身体を上空へと吹き飛ばす。
「はぁ。はぁ。……どうだ。……漆黒などより……よっぽど……強いだろうが」
確かに、漆黒の騎士は驚いていた。
その小さな身体のどこにこんな力が隠されているのか。そう思うくらいに、レミリアは強かった。
だが、それよりももっと強い者がここにはいた。
「上だ!!」
漆黒の騎士の言葉に反応するも、一足遅れた。
幽香がレミリアの頭を掴み地面に叩き付ける。大地が割れ、鮮血と共に飛び散る。
さすがにあれほどの攻撃を直撃させれば、少しは効いているだろう。そんな甘い幻想を一気に吹き飛ばす一撃だった。
「くそっ!!!」
再びレミリアに拳を浴びせようとしていた幽香に、慌てて漆黒の騎士が横なぎの剣を振るう。
攻撃は中断されたが、最初の一撃はまともに食らった。
ただの人間なら魔理沙のように潰れている。
「お嬢様!! しっかりしてください!!」
だが、血を滴らせながらも、レミリアはなんとか無事だった。意識は飛んでしまっているが、それでも生きている。
「咲夜殿!! レミリアを連れて下がれ!!」
斬り結びながら、ゼルギウスが叫ぶ。
拳が脇を掠める。
まったく力が衰えている様子はない。
(レミリアがやられるのが早すぎる! 一人で足止めできるか!?)
そんな思いを巡らせたその時だった。
『準備完了だ!! こっちに誘導してくれ!!』
拡声器を介した瀬多の声。
それは待ちに待った言葉だった。
「こっちだ化け物!!」
漆黒の騎士が背を向けて森の中へと駆けて行く。
幽香は強者に反応する。ならばこの状況、必ずこちらを追いかけて来るはずだ。
漆黒の騎士の読みはずばり的中した。
漆黒の騎士の言葉に反応するも、一足遅れた。
幽香がレミリアの頭を掴み地面に叩き付ける。大地が割れ、鮮血と共に飛び散る。
さすがにあれほどの攻撃を直撃させれば、少しは効いているだろう。そんな甘い幻想を一気に吹き飛ばす一撃だった。
「くそっ!!!」
再びレミリアに拳を浴びせようとしていた幽香に、慌てて漆黒の騎士が横なぎの剣を振るう。
攻撃は中断されたが、最初の一撃はまともに食らった。
ただの人間なら魔理沙のように潰れている。
「お嬢様!! しっかりしてください!!」
だが、血を滴らせながらも、レミリアはなんとか無事だった。意識は飛んでしまっているが、それでも生きている。
「咲夜殿!! レミリアを連れて下がれ!!」
斬り結びながら、ゼルギウスが叫ぶ。
拳が脇を掠める。
まったく力が衰えている様子はない。
(レミリアがやられるのが早すぎる! 一人で足止めできるか!?)
そんな思いを巡らせたその時だった。
『準備完了だ!! こっちに誘導してくれ!!』
拡声器を介した瀬多の声。
それは待ちに待った言葉だった。
「こっちだ化け物!!」
漆黒の騎士が背を向けて森の中へと駆けて行く。
幽香は強者に反応する。ならばこの状況、必ずこちらを追いかけて来るはずだ。
漆黒の騎士の読みはずばり的中した。
「はっ、はっ、はぁ、……ぐおっ!!」
全速力で走る漆黒の騎士。迫って来るのは幽香……ではなく、大木の弾幕。
常人ならその光景を見るだけで足が竦む状況に、下から上までどっぷり浸かりながら、漆黒の騎士は走る。
(こんな緊張感のある徒競争があるとはな…!)
心の中で冗談を言う。余裕があるからではない。そうしないと心が保てないのだ。
一騎当千の漆黒の騎士でも、幽香の弾幕によって木々が粉砕する中を走るのは恐怖以外の何物でもなかった。
「はっ、はっ、はっ、はっ」
足元に弾幕が突き刺さる瞬間に飛びのく。胴体を貫通しようと迫る大木を、身体を逸らすことで避ける。
もはや身体中が傷だらけだ。それでも屈み、跳躍し、転がり、弾幕から逃げる。
後ろを見ている暇はない。全て直感で避けている。
一つ間違えたら即死の徒競争。
光が見える。
ゴールだ。
瞬間、ぞっとする。
第六感が凄まじい警報を鳴らす。
轟音などという単語で表すことの出来ない凄まじい音。
竜巻がそのまま突っ込んで来るような音。
幽香は、一際大きな大木を、ブーメランのように投げつけたのだ。
渾身の力で、他の木々を巻き込んで。
全速力で走る漆黒の騎士。迫って来るのは幽香……ではなく、大木の弾幕。
常人ならその光景を見るだけで足が竦む状況に、下から上までどっぷり浸かりながら、漆黒の騎士は走る。
(こんな緊張感のある徒競争があるとはな…!)
心の中で冗談を言う。余裕があるからではない。そうしないと心が保てないのだ。
一騎当千の漆黒の騎士でも、幽香の弾幕によって木々が粉砕する中を走るのは恐怖以外の何物でもなかった。
「はっ、はっ、はっ、はっ」
足元に弾幕が突き刺さる瞬間に飛びのく。胴体を貫通しようと迫る大木を、身体を逸らすことで避ける。
もはや身体中が傷だらけだ。それでも屈み、跳躍し、転がり、弾幕から逃げる。
後ろを見ている暇はない。全て直感で避けている。
一つ間違えたら即死の徒競争。
光が見える。
ゴールだ。
瞬間、ぞっとする。
第六感が凄まじい警報を鳴らす。
轟音などという単語で表すことの出来ない凄まじい音。
竜巻がそのまま突っ込んで来るような音。
幽香は、一際大きな大木を、ブーメランのように投げつけたのだ。
渾身の力で、他の木々を巻き込んで。
瀬多はこの戦いで何度となく有り得ない光景を見てきた。だが、今ほど驚愕したことはない。
瀬多の眼の前に広がる惨事。
それは、森がそのまま襲いかかって来るような光景だった。
理屈では理解できる。おそらく幽香は、大木を回転させながら投げつけたのだろう。
だが、実際に引き起こしている現象は凄まじいものだった。
嵐。森そのものが嵐となって襲いかかる。そんな状況。
回転する大木だけでなく、巻き込まれた他の木々さえも幽香の意思に従っているかのように、森から抜け出して来た漆黒の騎士に迫る。
「月光!!!」
居合のような形で、振り向き様に必殺の一撃を繰り出す。
それは強大な嵐を一瞬だけ押し返すも、しかしすぐに呑みこまれた。
滅茶苦茶に襲いかかる木々に埋もれ、もはや漆黒の騎士の姿は一切見えなかった。
だが漆黒の騎士を心配する時間もない。
ゆっくりと、幽香がその姿を現した。
瀬多は黙って前に出る。
その後ろには、薄い光を纏い、精神統一する千枝。
「……来い、幽香。それとも、取るに足らない弱者は相手にしない主義か?」
オタコンのバックから入手した一本の剣を取り出す。
「タルカジャ」
自分の力が増幅される。
「ジオ!!」
強化された雷が幽香に飛ぶ。
が、幽香は構わず突っ込んだ。
まともに攻撃を受ける。
しかし怯みもしない。
瀬多は渾身の力を込めて剣を振るった。
剣は虚空を切り、地面に突き刺さる。
瀬多は、尻もちをつき、目前の幽香を見つめる。
幽香がゆっくりとその腕を振り上げる。
一撃で人を絶命することができる拳だ。
「デカルジャ」
手を幽香に掲げ、そう呟いた。
この状況で何をしているのか、理性のない幽香でさえ首を傾げる。
「長かったが、これで終わりだ」
その言葉を理解したのかしていないのか、幽香は拳を放った。
「今だああああああああああ!!!!」
千枝の目がかっと開かれ、攻撃モーションに入る。しかしそこに幽香はいない。
幽香の拳が瀬多に迫る。
瞬間、
瀬多の眼の前に広がる惨事。
それは、森がそのまま襲いかかって来るような光景だった。
理屈では理解できる。おそらく幽香は、大木を回転させながら投げつけたのだろう。
だが、実際に引き起こしている現象は凄まじいものだった。
嵐。森そのものが嵐となって襲いかかる。そんな状況。
回転する大木だけでなく、巻き込まれた他の木々さえも幽香の意思に従っているかのように、森から抜け出して来た漆黒の騎士に迫る。
「月光!!!」
居合のような形で、振り向き様に必殺の一撃を繰り出す。
それは強大な嵐を一瞬だけ押し返すも、しかしすぐに呑みこまれた。
滅茶苦茶に襲いかかる木々に埋もれ、もはや漆黒の騎士の姿は一切見えなかった。
だが漆黒の騎士を心配する時間もない。
ゆっくりと、幽香がその姿を現した。
瀬多は黙って前に出る。
その後ろには、薄い光を纏い、精神統一する千枝。
「……来い、幽香。それとも、取るに足らない弱者は相手にしない主義か?」
オタコンのバックから入手した一本の剣を取り出す。
「タルカジャ」
自分の力が増幅される。
「ジオ!!」
強化された雷が幽香に飛ぶ。
が、幽香は構わず突っ込んだ。
まともに攻撃を受ける。
しかし怯みもしない。
瀬多は渾身の力を込めて剣を振るった。
剣は虚空を切り、地面に突き刺さる。
瀬多は、尻もちをつき、目前の幽香を見つめる。
幽香がゆっくりとその腕を振り上げる。
一撃で人を絶命することができる拳だ。
「デカルジャ」
手を幽香に掲げ、そう呟いた。
この状況で何をしているのか、理性のない幽香でさえ首を傾げる。
「長かったが、これで終わりだ」
その言葉を理解したのかしていないのか、幽香は拳を放った。
「今だああああああああああ!!!!」
千枝の目がかっと開かれ、攻撃モーションに入る。しかしそこに幽香はいない。
幽香の拳が瀬多に迫る。
瞬間、
時が止まった。
この時ばかりは五月蠅かった戦場も音がしない。
トン、と咲夜は幽香を押した。幽香の身体は、ちょうど千枝の攻撃圏内へと入った。
「食らいなさい。私達弱者の、渾身の一撃よ」
時が動きだす。
何故か身体のバランスが崩れている幽香。だがその程度のことで幽香が驚くことなどない。しかし、目の前に繰り出された千枝の攻撃を見て、……余裕の表情が消えた。
トン、と咲夜は幽香を押した。幽香の身体は、ちょうど千枝の攻撃圏内へと入った。
「食らいなさい。私達弱者の、渾身の一撃よ」
時が動きだす。
何故か身体のバランスが崩れている幽香。だがその程度のことで幽香が驚くことなどない。しかし、目の前に繰り出された千枝の攻撃を見て、……余裕の表情が消えた。
「霧 雨 昇 天 撃 !!!」
大地が割れる。地面が揺れる。
止まることのない轟音が響き渡る。
幽香はトモエの斬撃をまともに食らい、倒れ伏した。
「はぁ……はぁ……。瀬多君の…タルカジャ……三重掛け。…アンド、……いつもの三倍、……溜めに…溜めたチャージ。……正真正銘……一撃必殺の…霧雨昇天撃よ。……これで、……ちったぁ、食らったでしょ」
倒れそうになるのを瀬多が受け止める。
「大丈夫か。……悪いな。無理させ過ぎた」
「……なあに、……これくらい……へっちゃらだって」
見るからに消耗している姿で、それでも力なく笑ってみせた。
「咲夜。レミリアの状態は?」
少し離れたところで、頭から血を流してぐったりとしているレミリアを見て瀬多は言った。
「大丈夫。気絶してるだけよ」
瀬多はそれを聞いて安堵のため息をついた。
「私、漆黒を見て来る」
内心の焦りを抑えながら、咲夜は立ち上がり駆けて行った。
「……ねえ、瀬多君。……雪子の……ことだけど」
「今は言わなくていい。もう少し落ち着いてから、千枝の心の整理が出来てから、聞かせてくれ」
「……うん」
千枝は、薄く微笑んだ。
瀬多は何も変わっていない。誰にも優しくて、頼られて。そのせいでいつも苦労をしている。いつ見ても誰かと一緒にいて、その人の苦しみや悲しみを少しでも和らげてあげようとしていた。
(本当はさ。雪子と瀬多君が……くっついてくれたらって思ってたんだ)
そんなことを考えて、溢れてきそうな涙をぐっと堪える。
「……でも……これで、ようやく終わりだね」
そう。終わった。最小限の被害で、あの化け物を倒すことができた。
だから今は、泣く時じゃなく、喜ぶ時なのだ。
「……千枝」
「なあに?」
瀬多に凭れかかりながら、呂律も回らない言葉で千枝は聞いた。
「一人で歩けるか?」
「ちょっと無理かも……」
「無理でもなんでも、歩いてくれ。できるだけここから離れろ」
「……瀬多、君?」
千枝は今、瀬多に凭れかかるようにして立っている。この位置からでは幽香は見えない。
……悪い予感しかしなかった。
「どうやら、俺達は現状をきちんと理解していなかったらしい。あれだけ化け物だなんだと言っておきながら、それでも俺達は、風見幽香を過小評価していたみたいだ」
瀬多の目に映る幽香は、確かに地面に手を置いて起き上がっていた。
攻撃は効いている。肩から腹にかけて、確かに一文字の傷ができ、血を滴らせている。
が、それだけだ。
こきこきと首を鳴らし、ぐるぐると腕を回す。幽香の瞳は、闘争心で溢れていた。
千枝はそれを確認し、そして呟いた。
「……勝てない。勝てる……訳ない。元々、……無理な戦いだったんだよ」
あの咲夜でさえ立ち尽くし、震えている。
ここにいる全員に、共通の感情が芽生えた。
恐怖。
紛れもない恐怖。決して太刀打ちできない、その異常なまでの力の差。
これが妖怪。
これが、最強の妖怪の力。
止まることのない轟音が響き渡る。
幽香はトモエの斬撃をまともに食らい、倒れ伏した。
「はぁ……はぁ……。瀬多君の…タルカジャ……三重掛け。…アンド、……いつもの三倍、……溜めに…溜めたチャージ。……正真正銘……一撃必殺の…霧雨昇天撃よ。……これで、……ちったぁ、食らったでしょ」
倒れそうになるのを瀬多が受け止める。
「大丈夫か。……悪いな。無理させ過ぎた」
「……なあに、……これくらい……へっちゃらだって」
見るからに消耗している姿で、それでも力なく笑ってみせた。
「咲夜。レミリアの状態は?」
少し離れたところで、頭から血を流してぐったりとしているレミリアを見て瀬多は言った。
「大丈夫。気絶してるだけよ」
瀬多はそれを聞いて安堵のため息をついた。
「私、漆黒を見て来る」
内心の焦りを抑えながら、咲夜は立ち上がり駆けて行った。
「……ねえ、瀬多君。……雪子の……ことだけど」
「今は言わなくていい。もう少し落ち着いてから、千枝の心の整理が出来てから、聞かせてくれ」
「……うん」
千枝は、薄く微笑んだ。
瀬多は何も変わっていない。誰にも優しくて、頼られて。そのせいでいつも苦労をしている。いつ見ても誰かと一緒にいて、その人の苦しみや悲しみを少しでも和らげてあげようとしていた。
(本当はさ。雪子と瀬多君が……くっついてくれたらって思ってたんだ)
そんなことを考えて、溢れてきそうな涙をぐっと堪える。
「……でも……これで、ようやく終わりだね」
そう。終わった。最小限の被害で、あの化け物を倒すことができた。
だから今は、泣く時じゃなく、喜ぶ時なのだ。
「……千枝」
「なあに?」
瀬多に凭れかかりながら、呂律も回らない言葉で千枝は聞いた。
「一人で歩けるか?」
「ちょっと無理かも……」
「無理でもなんでも、歩いてくれ。できるだけここから離れろ」
「……瀬多、君?」
千枝は今、瀬多に凭れかかるようにして立っている。この位置からでは幽香は見えない。
……悪い予感しかしなかった。
「どうやら、俺達は現状をきちんと理解していなかったらしい。あれだけ化け物だなんだと言っておきながら、それでも俺達は、風見幽香を過小評価していたみたいだ」
瀬多の目に映る幽香は、確かに地面に手を置いて起き上がっていた。
攻撃は効いている。肩から腹にかけて、確かに一文字の傷ができ、血を滴らせている。
が、それだけだ。
こきこきと首を鳴らし、ぐるぐると腕を回す。幽香の瞳は、闘争心で溢れていた。
千枝はそれを確認し、そして呟いた。
「……勝てない。勝てる……訳ない。元々、……無理な戦いだったんだよ」
あの咲夜でさえ立ち尽くし、震えている。
ここにいる全員に、共通の感情が芽生えた。
恐怖。
紛れもない恐怖。決して太刀打ちできない、その異常なまでの力の差。
これが妖怪。
これが、最強の妖怪の力。
「……だが」
瀬多の肩に力なく手が置かれる。それはレミリア・スカーレットのものだった。
「諦めるつもりなど毛頭ない。そうだろう?」
遅れて、瀬多が頷く。続いて咲夜。そして千枝も、ぐっと意思の籠った瞳で幽香を睨みつける。
「千枝はもう休むんだ。これ以上無理をしたら本当に死んでしまう」
「でも……」
「任せろ。絶対に勝ってみせる!」
瀬多の言葉が皮切りだった。
「ピカチュウ!! 十万ボルト!!」
幽香は避ける気すらない。そして、その攻撃は足止めにすらならない。
レミリアの手に、紅く光る槍が形成される。
「ラクンダ!!」
瀬多の叫びと共に投擲。直撃したそれは幽香を下がらせることに成功する。
「ボルテッカー!!」
雷の弾丸となったピカチュウが幽香にぶつかる。
その時、確かに幽香の身体はよろめいた。
「効いてる。効いてるぞ!!」
以前まではどんな攻撃をしてもダメージがあるとは思えなかった幽香。
それが確かに今、こうして手応えというものを感じさせている。
「ラクンダ!!」
全員の攻撃で怯んでいるところに、さらに瀬多が防御力を低下させるスキルを掛けていく。
いける。
そんな希望が見えかけたとき、幽香が反撃に出た。
近くの大木を引っこ抜き、それを水平に構える。
「っ!! 全員避けろっ!!」
ブーメランのようにそれを思い切り投擲した。
咄嗟にレミリアが前に出る。だが、その攻撃は止められず、そのまま全員を巻き込んだ。
吹き飛ばされ、地面に叩きつけられる。
そのたった一撃で、全員が地に伏し、立ち上がれない。
「……くっ。レミリアと……千枝がやばい。…誰か…援護に……」
レミリアが庇ってくれたおかげで威力が軽減されているとはいえ、その当の本人は大ダメージだし、元々満身創痍だった千枝には致命的な攻撃だ。
レミリアも千枝も、完全に意識を失っている。だが、危険なのは意識を保っている二人も同じ。
幽香が目をつけたのは千枝だった。
再び近くにあった大木を引っこ抜き、その先端を千枝の顔に狙いを定める。
「や……めなさい……」
咲夜の身体は動こうとしても動かない。がくがくと痙攣し、どうしても立ち上がることができない。
ピカチュウも、もはや満身創痍で動くことができない。
「千枝……。千枝をやらせるわけには……。絶対に、……守らないと……」
瀬多も咲夜と同じだ。
身体が言う事を聞かない。それでも無理やり立とうと踏ん張る。
しかし、その試みはあまりにも時間の掛かるものだった。
幽香はそれを待ってくれない。
無情にも、狙いを定めたその大木は、まるで鐘をつくような気軽さで後ろに引かれ、そして大砲のような威力をもって、発射……
瀬多の肩に力なく手が置かれる。それはレミリア・スカーレットのものだった。
「諦めるつもりなど毛頭ない。そうだろう?」
遅れて、瀬多が頷く。続いて咲夜。そして千枝も、ぐっと意思の籠った瞳で幽香を睨みつける。
「千枝はもう休むんだ。これ以上無理をしたら本当に死んでしまう」
「でも……」
「任せろ。絶対に勝ってみせる!」
瀬多の言葉が皮切りだった。
「ピカチュウ!! 十万ボルト!!」
幽香は避ける気すらない。そして、その攻撃は足止めにすらならない。
レミリアの手に、紅く光る槍が形成される。
「ラクンダ!!」
瀬多の叫びと共に投擲。直撃したそれは幽香を下がらせることに成功する。
「ボルテッカー!!」
雷の弾丸となったピカチュウが幽香にぶつかる。
その時、確かに幽香の身体はよろめいた。
「効いてる。効いてるぞ!!」
以前まではどんな攻撃をしてもダメージがあるとは思えなかった幽香。
それが確かに今、こうして手応えというものを感じさせている。
「ラクンダ!!」
全員の攻撃で怯んでいるところに、さらに瀬多が防御力を低下させるスキルを掛けていく。
いける。
そんな希望が見えかけたとき、幽香が反撃に出た。
近くの大木を引っこ抜き、それを水平に構える。
「っ!! 全員避けろっ!!」
ブーメランのようにそれを思い切り投擲した。
咄嗟にレミリアが前に出る。だが、その攻撃は止められず、そのまま全員を巻き込んだ。
吹き飛ばされ、地面に叩きつけられる。
そのたった一撃で、全員が地に伏し、立ち上がれない。
「……くっ。レミリアと……千枝がやばい。…誰か…援護に……」
レミリアが庇ってくれたおかげで威力が軽減されているとはいえ、その当の本人は大ダメージだし、元々満身創痍だった千枝には致命的な攻撃だ。
レミリアも千枝も、完全に意識を失っている。だが、危険なのは意識を保っている二人も同じ。
幽香が目をつけたのは千枝だった。
再び近くにあった大木を引っこ抜き、その先端を千枝の顔に狙いを定める。
「や……めなさい……」
咲夜の身体は動こうとしても動かない。がくがくと痙攣し、どうしても立ち上がることができない。
ピカチュウも、もはや満身創痍で動くことができない。
「千枝……。千枝をやらせるわけには……。絶対に、……守らないと……」
瀬多も咲夜と同じだ。
身体が言う事を聞かない。それでも無理やり立とうと踏ん張る。
しかし、その試みはあまりにも時間の掛かるものだった。
幽香はそれを待ってくれない。
無情にも、狙いを定めたその大木は、まるで鐘をつくような気軽さで後ろに引かれ、そして大砲のような威力をもって、発射……
「ぬおおおっ!!!」
上空で声がした。それと同時に、巨大な剣が、幽香の肩に直撃した。血は出ない。おそらく痣にもなっていない。だが、幽香の攻撃は止まった。
「……キョウ」
そう。それはキョウだった。カービィと共に、アドレーヌの護衛をするようにと指示をしておいたキョウだった。
ただでさえ満身創痍で、漆黒の騎士ほどの力を持たない彼らを戦いの渦中に出せば一溜まりもないと瀬多が判断したのだ。
「ば、馬鹿!! 何で来た! これじゃあ……」
瀬多の恐れていたことが起きた。
大木はそのまま横なぎに払われ、キョウの横腹を直撃した。
「ごはっ!!」
吐血するキョウをまったく頓着せず、幽香は遠心力を利用してキョウもろとも大木を回転させる。
威力をのせたそれを、幽香はそのまま地面へと振り下ろした。
ボキボキ、と嫌な音が響いた。
「うがあああ!!!」
「キョウ!!!」
続いてカービィが突撃し、虹の剣でその腕を切りつける。が、手を添えただけでそれは止められ、軽く足蹴にされただけで吹き飛ばされた。
「なんで……。なんでだ!! 作戦通りに動くようにあれほど言ったのに。死にに来るようなものなのに……! 勝てるわけがないのに!!」
瀕死のキョウは、瀬多の悲鳴のような叫びを聞き、薄く笑った。
「ふぉ……ふぉ。…勝たなきゃ……いけない。……だから…戦う。……それが……男というものでござるよ」
それが、キョウの最後の言葉だった。
ぐしゃり
そんな音をたてて潰れるキョウを、瀬多は見ていることができなかった。
(これじゃあ、あの時と何も変わってない。何で俺は……いざという時に限って無力なんだ!!)
再び幽香が千枝へと狙いを済ませる。
もう駄目だ。誰もこの化け物を倒せない。このまま、死ぬしかない。
このまま……
「月光!!!」
瞬間、瀬多の後方で何かが爆ぜた。
残骸と化した木々が宙を舞い、木々に呑みこまれたはずの漆黒の騎士がそこにはいた。
「……受け取った。その想い、確かに受け取ったぞ。キョウとやら」
瀬多が思わず振り向いた。咲夜も、そして、もはや意識が途切れがちなカービィもそちらを見ていた。
立っていた。
ボロボロの身体で、ところどころに木片が刺さりながらも、漆黒の騎士が、二の足を使ってそこに立っていた。
「そうだ。私は、私達は、勝つために戦っている。勝てるからじゃない。ただ、勝つために戦っているんだ。……もう終わりだ。人生も、戦いも、負けるのは、……諦めるのは、ここで終わりだ」
ふらふらの足取りで、しかし水平に掲げられた剣は寸分違わず幽香に向けられていた。
「もう誰も殺させん。さっきの男が、私の目を覚ましてくれた。私の中の、最後の力を奮い立たせてくれた。
私は騎士だ。誇り高き騎士だ! もう誰にも罵倒はさせん。倒れたりはしない! 印付きでもなんでもない。私は……漆黒の騎士だ!!!」
漆黒の騎士が地面を弾く。千枝、レミリア、カービィ、咲夜、瀬多、誰よりも前に出て、幽香へと肉薄する。
幽香の大木が漆黒の騎士に放たれる。だが、
「うおおおおおおっっ!!!!」
それを一撃のもとに両断する。幽香は躊躇なくそれを捨て、肉弾戦へと移行する。
右の拳と剣がぶつかる。
左拳を構える。が、咄嗟に漆黒の騎士は身体を乗り出し、相手の額に頭突きを食らわせる。
全体重を乗せたそれは、幽香を仰け反らせることに成功する。
袈裟懸けに剣を振るう。堅い皮膚はそれでは斬れない。
だが構わない。
一撃、二撃、三撃と相手に攻撃を咥える暇を与えない。
が、それでも無理やり攻撃してくる。
拳が漆黒の騎士に直撃する瞬間、がくりと幽香の膝が折れ、その拳は空を切る。
カービィが幽香の片足を剣で叩いたのだ。
「……キョウ」
そう。それはキョウだった。カービィと共に、アドレーヌの護衛をするようにと指示をしておいたキョウだった。
ただでさえ満身創痍で、漆黒の騎士ほどの力を持たない彼らを戦いの渦中に出せば一溜まりもないと瀬多が判断したのだ。
「ば、馬鹿!! 何で来た! これじゃあ……」
瀬多の恐れていたことが起きた。
大木はそのまま横なぎに払われ、キョウの横腹を直撃した。
「ごはっ!!」
吐血するキョウをまったく頓着せず、幽香は遠心力を利用してキョウもろとも大木を回転させる。
威力をのせたそれを、幽香はそのまま地面へと振り下ろした。
ボキボキ、と嫌な音が響いた。
「うがあああ!!!」
「キョウ!!!」
続いてカービィが突撃し、虹の剣でその腕を切りつける。が、手を添えただけでそれは止められ、軽く足蹴にされただけで吹き飛ばされた。
「なんで……。なんでだ!! 作戦通りに動くようにあれほど言ったのに。死にに来るようなものなのに……! 勝てるわけがないのに!!」
瀕死のキョウは、瀬多の悲鳴のような叫びを聞き、薄く笑った。
「ふぉ……ふぉ。…勝たなきゃ……いけない。……だから…戦う。……それが……男というものでござるよ」
それが、キョウの最後の言葉だった。
ぐしゃり
そんな音をたてて潰れるキョウを、瀬多は見ていることができなかった。
(これじゃあ、あの時と何も変わってない。何で俺は……いざという時に限って無力なんだ!!)
再び幽香が千枝へと狙いを済ませる。
もう駄目だ。誰もこの化け物を倒せない。このまま、死ぬしかない。
このまま……
「月光!!!」
瞬間、瀬多の後方で何かが爆ぜた。
残骸と化した木々が宙を舞い、木々に呑みこまれたはずの漆黒の騎士がそこにはいた。
「……受け取った。その想い、確かに受け取ったぞ。キョウとやら」
瀬多が思わず振り向いた。咲夜も、そして、もはや意識が途切れがちなカービィもそちらを見ていた。
立っていた。
ボロボロの身体で、ところどころに木片が刺さりながらも、漆黒の騎士が、二の足を使ってそこに立っていた。
「そうだ。私は、私達は、勝つために戦っている。勝てるからじゃない。ただ、勝つために戦っているんだ。……もう終わりだ。人生も、戦いも、負けるのは、……諦めるのは、ここで終わりだ」
ふらふらの足取りで、しかし水平に掲げられた剣は寸分違わず幽香に向けられていた。
「もう誰も殺させん。さっきの男が、私の目を覚ましてくれた。私の中の、最後の力を奮い立たせてくれた。
私は騎士だ。誇り高き騎士だ! もう誰にも罵倒はさせん。倒れたりはしない! 印付きでもなんでもない。私は……漆黒の騎士だ!!!」
漆黒の騎士が地面を弾く。千枝、レミリア、カービィ、咲夜、瀬多、誰よりも前に出て、幽香へと肉薄する。
幽香の大木が漆黒の騎士に放たれる。だが、
「うおおおおおおっっ!!!!」
それを一撃のもとに両断する。幽香は躊躇なくそれを捨て、肉弾戦へと移行する。
右の拳と剣がぶつかる。
左拳を構える。が、咄嗟に漆黒の騎士は身体を乗り出し、相手の額に頭突きを食らわせる。
全体重を乗せたそれは、幽香を仰け反らせることに成功する。
袈裟懸けに剣を振るう。堅い皮膚はそれでは斬れない。
だが構わない。
一撃、二撃、三撃と相手に攻撃を咥える暇を与えない。
が、それでも無理やり攻撃してくる。
拳が漆黒の騎士に直撃する瞬間、がくりと幽香の膝が折れ、その拳は空を切る。
カービィが幽香の片足を剣で叩いたのだ。
「たおして!!」
カービィはそれだけ言い残し、幽香の裏拳で吹き飛ばされる。
カービィはそれだけ言い残し、幽香の裏拳で吹き飛ばされる。
漆黒の騎士の手に、さらに力が入る。顔面めがけて剣を振るう。
ガキイィン
凄まじい音が響き渡る。幽香はその歯で剣を受け止めていた。
音をたてて互いに押し合う。
幽香はその状態のまま漆黒の騎士を殴り付けようとする。
だが、それは突然現れた魔力の鎖によって阻まれる。
「ミゼラブル……フェイト」
レミリアだ。
漆黒の騎士は剣を引き、幽香の口による束縛から解放されると、そのまま思い切り振り下ろす。
幽香はたたらを踏んで後ろに下がる。
ガキイィン
凄まじい音が響き渡る。幽香はその歯で剣を受け止めていた。
音をたてて互いに押し合う。
幽香はその状態のまま漆黒の騎士を殴り付けようとする。
だが、それは突然現れた魔力の鎖によって阻まれる。
「ミゼラブル……フェイト」
レミリアだ。
漆黒の騎士は剣を引き、幽香の口による束縛から解放されると、そのまま思い切り振り下ろす。
幽香はたたらを踏んで後ろに下がる。
「……さっさと……やれ……」
レミリアはそれだけ言ってそのまま崩れ落ちる。
レミリアはそれだけ言ってそのまま崩れ落ちる。
漆黒の騎士は歯を食いしばる。気力が上がっていくのを肌で感じ取る。
幽香の突風のようなラッシュ。無理やり剣を振り回し、拳とぶつけ合わせる。
ぶつかる度に大気が震える。
その圧倒的な力に押され、身体が下がりそうになる。
しかし、気合で前へと乗り出す。
下がれない。
ここで下がればまた誰かが犠牲になる。
幽香の突風のようなラッシュ。無理やり剣を振り回し、拳とぶつけ合わせる。
ぶつかる度に大気が震える。
その圧倒的な力に押され、身体が下がりそうになる。
しかし、気合で前へと乗り出す。
下がれない。
ここで下がればまた誰かが犠牲になる。
「「タルカジャ!」」
漆黒の騎士に、力が宿る。
一撃が幽香と互角になり、それ以上になる。
何十回目のぶつかり合いで、とうとう幽香が下がる。
「月光!!」
その隙に、必殺の一撃。
幽香はさらに後ろへ下がるも、その闘争心は未だ健在。
身体も未だに限界はきていない。
漆黒の騎士に、力が宿る。
一撃が幽香と互角になり、それ以上になる。
何十回目のぶつかり合いで、とうとう幽香が下がる。
「月光!!」
その隙に、必殺の一撃。
幽香はさらに後ろへ下がるも、その闘争心は未だ健在。
身体も未だに限界はきていない。
「頑張って……。私達の……分まで」
「倒せ! ゼルギウス!!」
意識を回復した千枝を瀬多が支え、希望に燃えた目を漆黒の騎士にぶつける。
「倒せ! ゼルギウス!!」
意識を回復した千枝を瀬多が支え、希望に燃えた目を漆黒の騎士にぶつける。
不思議と、呼吸が整っていく。状況認識能力が高まり、周りがいつも以上によく見える。
幽香が持ち直し、弾丸のような拳が飛ぶ。
漆黒の騎士の額を掠り、血が飛び出る。
だが漆黒の騎士は気にせず攻撃の手を緩めない。
上方へと斬り上げ、伸びた両手を空へと押し上げる。
隙だらけになった腹にバッドの如く剣を叩きつける。
くの字に曲がる幽香の身体に、さらに攻撃を繰り出す。
上へ下へ、左へ右へ。
力の限り剣を振り回し、その体力を蝕んでいく。
途端、今までで一番速い拳の弾丸が飛んでくる。
それは漆黒の騎士の左頬を掠り、ただそれだけで頬骨が折れる。
怯んだ漆黒の騎士の脳天を狙った拳。
漆黒の騎士は咄嗟に地面を転がりそれを回避。
ふと、傍に大剣エタルドが置かれていることに気付く。アイクの剣。自分と凌ぎを削った、共にガウェインの元で剣を学んだ者。
理屈はなかった。ただ直感的にそれを掴み、両手で巨大な二本の剣を振るう。
その双剣を扱う姿は、人類を滅ぼしかけた邪神を封印したかつての英雄、オルティナそのものだった。
幽香が持ち直し、弾丸のような拳が飛ぶ。
漆黒の騎士の額を掠り、血が飛び出る。
だが漆黒の騎士は気にせず攻撃の手を緩めない。
上方へと斬り上げ、伸びた両手を空へと押し上げる。
隙だらけになった腹にバッドの如く剣を叩きつける。
くの字に曲がる幽香の身体に、さらに攻撃を繰り出す。
上へ下へ、左へ右へ。
力の限り剣を振り回し、その体力を蝕んでいく。
途端、今までで一番速い拳の弾丸が飛んでくる。
それは漆黒の騎士の左頬を掠り、ただそれだけで頬骨が折れる。
怯んだ漆黒の騎士の脳天を狙った拳。
漆黒の騎士は咄嗟に地面を転がりそれを回避。
ふと、傍に大剣エタルドが置かれていることに気付く。アイクの剣。自分と凌ぎを削った、共にガウェインの元で剣を学んだ者。
理屈はなかった。ただ直感的にそれを掴み、両手で巨大な二本の剣を振るう。
その双剣を扱う姿は、人類を滅ぼしかけた邪神を封印したかつての英雄、オルティナそのものだった。
剣一本に腕二本。
数で勝っていた幽香だったが、既に数は互角。
右をいなし、左をいなし、腹に蹴りをいれて怯んだところで、たんと地面を蹴って軽く宙を飛ぶ。身体を横に回転しながら二本の剣を振り下ろす。
寸分違わず同じ場所に落とされた斬撃にさすがの幽香もたたらを踏む。
先程の攻撃がアイクの必殺技である天空の簡易バージョンであることに遅ればせながら気付く。
あれはガウェインの剣の集大成だった。ならば、私にも同じ技ができるはず。
斬撃の数で幽香を押しながら漆黒の騎士は考える。
いや違う。同じじゃない。私だけの技だ。私だけの……私の過去、修練の集大成。
胸元に突きをいれ、幽香の身体がよろめく。
瞬間、幽香がその身体を踏ん張って、漆黒の騎士に頭突きを食らわす。額が裂け、血が飛び散る。
思わず後ろに下がり、蔦に足を取られる。
まずい。
そう思った時には、何故か体勢は立ち直っていた。
若干、先程までいた位置とずれている。こんな芸当が出来るのは一人しかいない。
数で勝っていた幽香だったが、既に数は互角。
右をいなし、左をいなし、腹に蹴りをいれて怯んだところで、たんと地面を蹴って軽く宙を飛ぶ。身体を横に回転しながら二本の剣を振り下ろす。
寸分違わず同じ場所に落とされた斬撃にさすがの幽香もたたらを踏む。
先程の攻撃がアイクの必殺技である天空の簡易バージョンであることに遅ればせながら気付く。
あれはガウェインの剣の集大成だった。ならば、私にも同じ技ができるはず。
斬撃の数で幽香を押しながら漆黒の騎士は考える。
いや違う。同じじゃない。私だけの技だ。私だけの……私の過去、修練の集大成。
胸元に突きをいれ、幽香の身体がよろめく。
瞬間、幽香がその身体を踏ん張って、漆黒の騎士に頭突きを食らわす。額が裂け、血が飛び散る。
思わず後ろに下がり、蔦に足を取られる。
まずい。
そう思った時には、何故か体勢は立ち直っていた。
若干、先程までいた位置とずれている。こんな芸当が出来るのは一人しかいない。
「しっかりしなさい。……あなただけが頼りなのよ」
咲夜の言葉にはっとし、剣を交差させて幽香の攻撃を防御する。
重い一撃。だが、今の漆黒の騎士には、軽過ぎるとさえ感じた。
「行きなさい。あなたなら出来る」
漆黒の騎士は双剣を振り回し、幽香を圧倒する。
そうだ。私は一人じゃない。
幽香の一撃は、一人分の重みしかない。だが自分は、ここまで幽香を追い詰めた自分の重みは、一人分ではない。
キョウの言葉があったから立ち上がれた。カービィの一撃のおかげで幽香の拳をまともに受けずに済んだ。レミリアが攻撃を防いでくれたから今も立っていられる。瀬多と千枝のスキルがなければ、ここまで幽香と肉迫することはできなかった。
そして今、
咲夜の言葉にはっとし、剣を交差させて幽香の攻撃を防御する。
重い一撃。だが、今の漆黒の騎士には、軽過ぎるとさえ感じた。
「行きなさい。あなたなら出来る」
漆黒の騎士は双剣を振り回し、幽香を圧倒する。
そうだ。私は一人じゃない。
幽香の一撃は、一人分の重みしかない。だが自分は、ここまで幽香を追い詰めた自分の重みは、一人分ではない。
キョウの言葉があったから立ち上がれた。カービィの一撃のおかげで幽香の拳をまともに受けずに済んだ。レミリアが攻撃を防いでくれたから今も立っていられる。瀬多と千枝のスキルがなければ、ここまで幽香と肉迫することはできなかった。
そして今、
自分を信じて、その命を託してくれる者がいる。
ベグニオンの将として、幾度も戦いの地に駆り出された。どんな窮地も、自分にとっては楽に捌けるものだった。仲間は大勢いたが、どれも上辺だけの関係だった。
だが、今は違う。本物の戦いで、本物の仲間がいる。
私は一人じゃない。
一人じゃないから、ここまで来れた。
(皆の想いに……応えてみせる!!)
突然幽香が回転したかと思うと、後ろ回し蹴りを漆黒の騎士の頭部目掛けて放った。今まで使ってこなかった足技。しかし、それを漆黒の騎士はぎりぎりで避けることができた。幽香は体勢を崩す。
その隙を、漆黒の騎士が逃す道理はない。
まるで龍を形作るかのように、二本の剣を構える。
「ふぅー……」
呼吸を整え、意識を集中する。この世の全ての生命を感じ取ることができるような、そんな不思議な心持ちだ。空を舞う雀から、地面に潜む鈴虫まで、その生命の全てを感じ取る。
自分が、命を生み出す地上そのものになった感覚が、漆黒の騎士の身体全体を占めていた。
その危険性を直感で感じ取り、幽香は今まで以上に素早い拳を繰り出した。
だが、今は違う。本物の戦いで、本物の仲間がいる。
私は一人じゃない。
一人じゃないから、ここまで来れた。
(皆の想いに……応えてみせる!!)
突然幽香が回転したかと思うと、後ろ回し蹴りを漆黒の騎士の頭部目掛けて放った。今まで使ってこなかった足技。しかし、それを漆黒の騎士はぎりぎりで避けることができた。幽香は体勢を崩す。
その隙を、漆黒の騎士が逃す道理はない。
まるで龍を形作るかのように、二本の剣を構える。
「ふぅー……」
呼吸を整え、意識を集中する。この世の全ての生命を感じ取ることができるような、そんな不思議な心持ちだ。空を舞う雀から、地面に潜む鈴虫まで、その生命の全てを感じ取る。
自分が、命を生み出す地上そのものになった感覚が、漆黒の騎士の身体全体を占めていた。
その危険性を直感で感じ取り、幽香は今まで以上に素早い拳を繰り出した。
「幽香さん!!」
その声は、暴走を始めた幽香が、初めて聞いた声だった。
戦場にいるはずのない声。瀬多が空へと雷を放ち、この土壇場で呼んだ最後の切り札。唯一、幽香を止められるかもしれない人物。
拳が漆黒の騎士に迫る。その距離を詰める。……しかし、その拳は、漆黒の騎士にぶつかる前にぴたりと止まった。
戦場にいるはずのない声。瀬多が空へと雷を放ち、この土壇場で呼んだ最後の切り札。唯一、幽香を止められるかもしれない人物。
拳が漆黒の騎士に迫る。その距離を詰める。……しかし、その拳は、漆黒の騎士にぶつかる前にぴたりと止まった。
「「「「「いけええええええええええ!!!!」」」」」
くるりと回転する。その回転は非常に緩慢なもの。
そっと、幽香の肌に剣が添えられた。
そっと、幽香の肌に剣が添えられた。
「大 地」
音もない閃光が走った。前を向いていた漆黒の騎士が、後ろを向いていた。
それを幽香が視認した瞬間、その身体に何かが爆発したかのような衝撃が襲った。
音速の剣。無音の回転斬り。まったく同じ箇所に、渾身の二撃を加える攻撃特化型の必殺技。
それは確かに、幽香を倒れ伏すに足る傷を与え、メダリオンをその手から放させることに成功した。
それを幽香が視認した瞬間、その身体に何かが爆発したかのような衝撃が襲った。
音速の剣。無音の回転斬り。まったく同じ箇所に、渾身の二撃を加える攻撃特化型の必殺技。
それは確かに、幽香を倒れ伏すに足る傷を与え、メダリオンをその手から放させることに成功した。