きっと世界は君のもの きっと世界は僕のもの ◆PatdvIjTFg
◇
「君、そうそこな君、すこし待ちなさい。そこは瘴気が充満している」
これからどうするか――つまるところ、このさいはて町から脱出するために、
チェーンソー殺人鬼と再遭遇するリスクを犯して、おそらく辿っていけば外に出られる可能性が高いであろう線路の跡へと行くか、
あるいは、リスクを抑えて今自分がいるまんなか区を探索することで脱出方法を探るか。
結局のところ、アサシン――ウォルターは後者の選択肢を選んだ。
つまり、チェーンソー殺人鬼との戦闘をなるべく回避するため、
そして、用意した以上は少なくともこの世界のサーヴァントは――あるいは、また別の何か、は
少なくとも、自分ごと町人を巻き込んで攻撃する可能性は低いだろうという判断のもと
(もちろん、聖杯戦争に勝利するためならば町人のことなぞ無視することが一番だが、無視するぐらいならば最初から呼び出さなければ良い)
町人に話を聞きながら、まんなか区を探索して回ることを決めた。
おそらく、この町で唯一の学校――ヒノモト学園が、まず最初に探索を開始した場所だった。
小中高一貫であり、あるいはマスターにとっては最大のカモフラージュになるかもしれない場所。
だが、部外者の侵入に特に制限は無いし、特に授業が行われている様子もない。
しかし部活動は熱心に行われている様子であり、特に科学部に関しては人体模型が恐ろしいという噂を聴くことが出来た。物理的に。
また、視聴覚室前に『ブリッジ男』なる怪異が出現するようだが、話を聞くにただの変質者としか思えない。
一人で視聴覚室前を歩いているとブリッジのまま超高速で近づいてくるらしいが、
女子相手だと下半身を向けて近寄ってくる辺りまさしく変態のソレであろう。
聖杯戦争とは無関係の存在であると位置づける――聖杯戦争と関係ある存在であっても、少なくとも今、戦うつもりはないが。
次に赴いたのは銀貨橋、ヒノモト学園由来の購買部や、その他商人が常駐している。
如何にも怪しげな商人の売っているミリタリーグッズの中に複合装甲が混ざっているのは悪い冗談としか思えないが、
実際マスター同士の戦いならばともかく、サーヴァント同士での戦いでは役には立たないし、
マスター同士の戦いにしても、複合装甲は防具としては過剰すぎるし、そもそも行動不能になるだろう。
実際に悪い冗談でしかないのだ。
「人体は瘴気に晒されることで次第に蝕まれていく、実際危険だからね、
どうしても行かなければならない場合があるかもしれないけど、気をつけたほうがいいよ」
そして、住宅地、神社と探索を重ね、
そして如何にも怪しげな場所に足を踏み入れんとしたウォルターは見ず知らずのおじさんに忠告を受けている。
(……親切な話だ)
礼を言って、先へと進む。
瘴気の言葉通り、この先から雰囲気は実に厄いものがある。
その場所だけが夜になったかのように、外からは様子を窺えない。
だが、だからこそ行かなければならないだろう。
町があり、町人があり、そして、その町人がいる町のど真ん中貫いて危険の存在する場所がある。
考えるべきは、何故、わざわざ町中に存在しなければならないかだ。
何度も言うが、町人の安全を度外視するのならばそもそも町人が存在する必要は存在しない。
そして、町人が勝手に召喚される場合でも、危険地帯で勝手に死なれるよりも、自分で殺して魂喰らいを行ったほうが良い。
よほどのサディストでもない限り、自分の預かり知らぬ場所で無為に殺す必要はないのだ。
もちろん、自動的に魔力に還元されるような設置罠の可能性もあるが、
だとしても、一般人にすら理解できるようなあからさまな罠に誰が引っかかるというのだ。
故に、ウォルターは判断する。
目の前の場所は町中に存在しなければならないのではなく、町中に存在してしまった場所ではないか。
つまり、この世界そのものに生じてしまった綻びではないかと。
この広大な固有結界を長時間維持し続けて、何の問題が出ないかと言えば――その可能性は十分に有り得る、
だがサーヴァントの枠組みの中にある英霊がそれを出来るかと言えば、可能性は低い。
もう一つの世界を展開できるのならば、表の街で主従が最後の一組になるまで引き篭もっていた方が勝算は高いだろう。
それが出来なかったとしたら、どうだ。
チェーンソー殺人鬼を押し付けてきたあのサーヴァントや、それを追ってこの町へと入り込んだ自分のように、
この世界には完全に閉じることの出来なかった綻びがあるとしたら、どうだ。
全ては仮定だが、危険性の高い既知よりは、可能性の高い未知の方が良い。
まんなか区:近付いてはいけない場所 へとウォルターは足を踏み入れた。
◇
「おっかしーなー」
玲が外出してから、エンブリオ――
ある少女は、さいはての守護者の"そうぞう"を開始した。
先のチェーンソー殺人鬼のように、強力なものを創るのならば、それなりにそうぞう力を働かせなければならない。
しかし、ここで問題が発生する。
創造出来る者もいれば、創造出来ない者もいるのだ。
紳士の昼食会に関しては――誰一人として成功しなかった。
紳士の昼食会に所属しないマホウ使い、金に汚い天使に関しては成功した。
制限と言うには、チェーンソー殺人鬼も金に汚い天使も強すぎるということは無いが、少なくとも紳士の昼食会よりも制限されるべきだ。
「……うーむ、全然わからん」
「逆に考えてみるとか、どうですか?」
「逆?」
宝箱の側に立つ、如何にも天使然とした金に汚い天使が話しかける。
「ここから先はクリエイティブでハイパーメディアなオピニオンになりますので有料ですが」
「……」
「持ってるでしょ、おぜぜ」
宝箱の中から放り投げるようにして放った小銭を、金に汚い天使は餌に群がる鯉のように必死こいて拾い集めてみせた。
その姿はまさしく金に汚い天使であった、天使ではなかった。
「何故、紳士の昼食会はそうぞう出来なかったのではなく、何故、私をそうぞう出来たか、で考えるべきでしょう。
つまり、私が必要だった理由を考えてみるなど……もちろん、私はお金のある人の味方です、それなりに」
「うーーーむ」
何故、金に汚い天使を召喚できたのか。
ある少女には全くもって、如何ともし難い疑問であった。
そもそも、さいはての番人と言うのならば、紳士の昼食会の方が相応しいが、彼女はそういうわけではない。
付き合いがあるかと言えば、まぁ知っている程度であってそれほど深い付き合いがあるわけでもない。
かつてのさいはて町の最果てを守護していたが、だとしても紳士の昼食会でいけない理由はない。
「紳士の昼食会は既にこの町に存在している……?」
可能性は低いし、既に存在しているというのならば、それを把握できてもおかしくはないとは思うが、
それでも一応の道理は立つ――最も、既にあるものを再度創造できないかと言えば、
かつてのさいはて町に商店街の番人というあるマホウ使いのコピーがいたために、疑問が残る。
「そうぞうはいつだって、自分の枠組みから飛び立って行くものです」
「まぁ、そうだね……してやられたからね……うん……?自分の枠組み……?」
その時、ある少女に電撃が走った。
そもそもがおかしいのではないか、開拓者の権限が3分の1になるのはただのサーヴァント化による制限だと思っていた。
だが、それならば――さいはて町は存在しうるのだろうか?
私一人だけで、あるいは他の開拓者が一人だけの力でさいはて町をそうぞうできるのか?
三人の開拓者による共同のそうぞうであるのならば、そもそもいまこの町がさいはて町という形のままでいられるのか?
権限は委譲されてしかるべきではないか?
いや、全てが勘違いだとしたら?
この町がさいはてならば、
ありえないことはありえない。
「開拓者は……本当に私一人しかいないのか?」
【???/さいはて町/1日目 午前】
【エンブリオ(ある少女)@さいはてHOSPITAL】
[状態] 魔力消費(中)
[装備]
[道具]
[所持金]
[思考・状況]
基本行動方針:引きこもりながら玲を見守る。
1.さいはて町の守護者を作り、さいはて町を破壊から守る。
2.玲が緊急事態に陥った場合はさいはて町から出るのもやぶさかではない。
[備考]
※『チェーンソー殺人鬼@さいはてHOSPITAL』を召喚しました。さいはて町内の人気のない場所に現れます。強さは平均的なサーヴァントには劣る程度です。
※『金に汚い天使@さいはてHOSPITAL』を召喚しました。現在、特に指示は出していません。強さはチェーンソー殺人鬼よりも弱いぐらいです。
※紳士の昼食会を召喚することは出来ませんでした、原因は不明です。
◇
さいはて町と表の街を繋ぐ門は至るところに存在する。
門に辿り着いてさえしまえば、認識阻害が簡素な事も相まって出入りは容易い。
ただし、出入り口を発見するにはちょっとしたコツが必要となる。
誰かの家の玄関口、寂れた市街地の裏通り、雑木林を抜けた先、門はどこにでも存在するが、それ故に法則性が存在しない。
だから、どこに門があって欲しいか、それを考える。
きっとここにあったら素敵だろうな、という場所に不思議と門は存在している。
玲はそうやって、さいはて町と表の街の出入りを繰り返している。
世界は素敵だ、と玲は思う。
伸ばした自分の両腕よりも、両方の『町/街』はずっと広い。
スカートをふうわりとはためかせて、くるりと一回り。
特に意味もなく走ってみたり、特に意味もなく跳んでみたりする。
体の調子はばっちりだ。
ヒノモト学園の女子トイレの三番目の個室は門の一つだ。
さいはて町から出てすぐに高校ならば、遅刻することはない。
じゃあ、高校に繋がる門はどこにあるんだろう――きっと、ヒノモト学園にある。
思った通り、高校に繋がる門はヒノモト学園にあった。
唯一当てが外れたのは、今から高校に向かっても遅刻するということだけだ。
そして、実際――今日の玲は授業を受けるつもりはなかった。
授業そのものは受けたり、受けなかったりしている。
記憶を奪われた影響か、授業の難易度が凄まじいということもあるが、そもそも高校に通う必要性は存在しないのだ。
それでも、なんとなく教室に行くのは――やはり、好きだから、なのだろう。高校の雰囲気そのものが。
街をふらふらとしていても、昼食時には引き寄せられるように学食に寄ってしまう。
そして今日も、とりあえず高校に寄ってから――街の散歩を始めようと思う。
どうしても、なんとなく、好きなようで、高校に引き寄せられるのだ。
女子トイレの扉をノックする。返事はないだろうが、念のためだ。
コツン、コツン。案の定返事はない。
扉を軽く引く、音もなくゆるやかに開く。
「…………」
まっすぐと歩く、それだけで本来ならばトイレがあるべきこの小さな小部屋は――高校への通路となる。
途中にあるべき標識も、妖精も、玲は見なかった。
ただ、途中で蜘蛛の巣のようなものを見た気がした。
【D-2/高等学校/1日目 午前】
【玲@ペルソナQ シャドウ オブ ザ ラビリンス】
[状態] 健康
[令呪]残り三画
[装備]
[道具]
[所持金]
[思考・状況]
基本行動方針:街で日常生活を楽しむ。聖杯戦争を終わらせたくない。
1.街に出て散歩する。
[備考]
※聖杯戦争についてはある程度認識していますが、戦うつもりが殆どありません。というか、永遠に聖杯戦争が続いたまま生活が終わらなければいいとすら思っています。
◇
EXダンジョンLv1:不思議の国のアナタ
注:この場所には瘴気が充満しています
瘴気の渦巻く空間、そこにウォルターが足を踏み入れると、世界そのものががらりと姿を変えてしまった。
周囲に広がるのは、先程までの牧歌的な町の光景ではない。
バネ足ジャックより数十年後に描かれた児童小説――ふしぎの国のアリス。
その幻想的な世界が現実に再現されたかのように、
不思議な国の挿絵に登場する植物が、トランプが、あるいは――ふしぎの国のアリスという本そのものが、壁を作っている。
バネ足ジャックよりも高い壁だ――もちろん飛び越せぬことはないだろうが。
誰もが確信するであろう、これがさいはて町の出口であるはずがない。
あるいはキャスターの陣地のように、よりたちの悪いものである、と。
己の推測は間違っていたのだろうか、ウォルターはさいはて町へと引き返す。
何の障壁もなく、元のしらぬい通りへと戻る。
今のところは、危ない橋を渡るつもりはない。
だが、どうしても気になってしょうがない。
先程の場所は、どうしようもなく雰囲気が違う。
無くしたピースの代わりに、他の絵から持ってきて無理やりはめ込んで完成させたジグソーパズルのような、そんな違和感。
ただの勘だ。
そもそもこの空間に関しては何もわからない以上、推測にもほとんど意味は無い。
まだ、まんなか区の探索も途中だ。
出口を探し、この町からすぐに抜け出すべきだ。
ウォルターは跳ねるように移動を再開した。
【???/さいはて町・まんなか区/午前】
【アサシン(ウォルター・デ・ラ・ボア・ストレイド)@黒博物館スプリンガルド】
[状態] 健康、スキル「阻まれた顔貌」発現中
[装備] バネ足ジャック(バラした状態でトランクに入っていますが、あくまで生前のイメージの具現であって、装着を念ずれば即座にバネ足ジャックに「戻れ」ます)
[道具] なし
[所持金]一般人として動き回るに不自由のない程度の金額
[思考・状況]
基本行動方針:マスター(ララ)のやりたいことに付き合う。
1. この陣地(さいはて町)から脱出する。
2. 街で情報収集をしながら、他の組の出方を見る。
3. 夜までには帰ってきて、ララの歌を聴く。
4. 『
チェーンソー男』『包帯男』に興味。
[備考]
※「
フェイト・テスタロッサ」の名前および顔、捕獲ミッションを確認しました。
※「バーサーカー(チェーンソー男)」及び「バーサーカー(
ジェノサイド)」の噂を聴取しました。サーヴァントに関連する何かであろうと見当をつけています。
※街の地理を、おおむね把握しました。
※劇場の関係者には、ララの「伯父」であると言ってあります。
※キャスター(
木原マサキ)の外見を確認しました。
※さいはて町の存在を認知しました。
※さいはて町の番人、『チェーンソー殺人鬼』を確認しました。『チェーンソー男』との類似を考えていますが、違う点がある事もわかっています。
※さいはて町・まんなか区の中心部にEXダンジョンを確認しました。
最終更新:2020年06月28日 00:18