過ぐる日の憧憬 ◆2lsK9hNTNE
「知世……ちゃん?」
さくらは呆然と呟いた。
考えなかったわけじゃない。自分の知っている誰かがマスターなのではないかという思いはずっとあった。
そんなはずはないとずっと言い聞かせていた。こんな戦いに駆りだされているのは自分だけなのだと信じた。
でも、ならばどうして今このタイミングで知世は屋上にいるのか。
「さくらちゃん?」
今まで聞いたことのない弱々しい声。目元は涙で濡れていた。封印の杖を握りしめていた手に思わず力がこもる。
壊れたフェンスを見ていたあいが振り向いて言った。
「なにがあったのか聞かせてくれる?」
その言葉が知世に言ったものだったのか、セイバーに言ったものだったのかはわからなかった。
だがどちらに言ったとしても意味はなかった。なぜなら――
「逃げてください!」
セイバーば叫び、そこから先はなにが起きたのかわからない。
気がつけばセイバーが白い服を着たサーヴァントに吹き飛ばされていた。
サーヴァントはあいの目前まで迫り、その手に持った槍を振り下ろした。
◇
腕の力が緩み、きらりが身体を離す。それでも両手を杏の肩に載せたままだ。
その顔は涙と鼻水に濡れていて、アイドルとしてはちょっとどうかと思うくらいにあれだった。
――やっぱり、全部が嘘ってわけじゃないんだね。
杏はできればあのスレッドに書かれていること全てが嘘であってほしいと願っていた。
きらりが人を殺したことはもちろん、サーヴァントを持っていることも、いじめられていることも、もっといえばこの街にいるということも。
でもやっぱりそう甘くはないらしい。きらりはこの街にいた。様子からして相当つらい目にあってきたのも間違いないようだ。
本当ならこんな状態のきらりにはなにもして欲しくない。二人で――たぶんランサーもいるけど――家に帰ってだらだらと過ごしたい。
だけどそういうわけにもいかない。今は聖杯戦争の真最中だ。
杏だけならともかくきらりも関わっているなら、だらだらする暇はない。
確認しなければいけない。きらりはマスターなのか。
それから奥にいる「よかったねえきらりちゃん」と言いながら涙ぐむギャルと、なにかのコスプレのような格好のサーヴァントはなんなのかも。
さっきから通行人がこっちを見ている。道の真ん中で少し目立ちすぎた。
杏は視界の端に捉えたオシャレな喫茶店を指差して言った。
「取りあえずあの店に入らない?」
◇
「杏ちゃんも……マスターなの?」
オシャレなのは外観だけだった喫茶店の中、四人掛けのボックス席に座って杏は頷いた。
チラッと真横の様子を伺う。そこに座るコスプレランサーはなんの反応も示さない。正直ホッとした。
きらりが座ったあと即座に隣りを陣取ったギャルに「あなたマスターなんですよね? 私もそうなんです」と言われて、
きらりの手前、嘘をつくわけにもいかず、頷いたがこれでいきなり襲いかかられたりしたら、うちのランサーではどうしようもなかった。
きらりはショックを受けている――のだと思う。俯いている。
当たり前だ。誰だって友達に戦場にいてほしくはない。杏だってそうだし、優しいきらりは特にだろう。
なんとなくきらりの雰囲気に違和感を感じるが、たぶん気のせいだ。
そんなきらりの沈んでいるのを知ってか知らずか、ギャルが元気よく声を上げた。
「そういえば自己紹介がまだでしたね。
私はきらりちゃんの同級生の
江ノ島盾子っていいます。そっちの超絶かわいい子がサーヴァントのランサー。二人共きらりちゃんの友達です」
悪人ではなさそうだが、どうにも間が抜けている感じがする。
やっぱりこの少女が掲示板に『今からきらりちゃんと一緒に小学校に行きます』と書き込んだのだろうか。
最初に見たときも三人は小学校の方向に向かっていた。それならきらりの知り合いだった杏をマスターと判断したも納得がいく。
「初めまして」
優しげな笑みを浮かべるコスプレランサーはマスターに反して、只者ではないオーラがにじみ出ている。
「もう友達がいたなら焦って探す必要もなかったにゃー」とか念話で言っているうちのランサーとはえらい違いだ。
(まだあの二人が信用できるかわかんないよ)
杏も念話で自らのサーヴァントに釘を刺す。
(あの二人、嘘ついてるのかにゃ?)
(それがわかんないから、信用できるかわかんないって言ってんの)
印象でいえばどちらもいい人そうだが、人を見る目に自信があるわけでもない。
「初めまして。きらりと同じ事務所に所属してる杏だよ」
「事務所?」
杏が口にした単語に盾子が首を傾げた。
まるでそれを待っていたかのようにきらりが突然顔を上げた。
「そ、そうだにぃ。杏ちゃんときらりはぁ、同じ事務所に所属してるアイドルなんだにぃ☆」
「アイドル!? すごーい!」
盾子は無邪気に驚きながら拍手をしている。
きらりはいつもテンションが高いが今は少し無理に上げているような気がした。
そのままにしておくのも嫌だったので杏は先ほどの疑問を口にする。
「ところでさあ、あの掲示板に書き込みしたのって盾子ちゃん?」
盾子の表情が凍りついた。きらりはなんの話かわかっていないようだ。
こっちを向いて「杏ちゃん、掲示板ってなんのお話?」と聞いてきた。
盾子は人差し指を口に当てて、杏に所謂『しーっ』をした。それで彼女の表情が凍りついた理由がわかった。
きらりは掲示板のことをなにも知らないのだ。そして盾子も話していない。知ればきらりが傷つくと思って――少なくとも表向きの理由としては。
その予想は間違っていないだろう。だけど本当に隠しておくのがきらりのためになるんだろうか。杏は考えた。
どのみち聖杯戦争が続けばいずれ知ることだ。もしかしたらそれは致命的なタイミングで訪れるかもしれない。
今のうちに教えた方がきらりのためにはいいではないだろうか。
杏が話題にしたのは『きらりさん、見てますか』スレッドの方だ。
しかし説明するには『みんなのアイドル
諸星きらりだにぃ☆』の方も見せなければいけないだろう。
杏は悩んだ末、全てきらりに話すことにした。
自分のケータイで『みんなのアイドル 諸星きらりだにぃ☆』スレッドを開いた。
「このスレッドを立てたのが盾子ちゃんって言ってるわけじゃないけど」
と前置きしてきらりに渡す。
ディスプレイを見るきらりの顔がみるみるうちに青ざめていく。杏は胸がチクチク痛んだが、きらりのために必要なことだと自分に言い聞かせた。
そのとき、横からディスプレイを覗いていた盾子が呟いた。
「改めて見るとこれってきらりちゃんがアイドルって知ってる人が書いたみたい」
自然に口に出たといったふうな、特別な意図を感じさせない声だった。実際そうだったのだと思う。
スレッド内での使い方はどうあれ、きらりをアイドルと称しているのだから、知っているのは間違いないだろう。
しかしそんなことはきらりの知り合いやファンじゃなくても、テレビか何かできらりを見た人ならわかることだ。
だから杏は気にしていなかったし、盾子も気にして言ったわけではないと思う。
だが――
杏は確かに見た。その言葉を聞いた一瞬、きらりが怯えたような表情でこちらに目を向けたのを。
――ああ、そっか。
自分がマスターであることをきらりに告げたとき、なぜ違和感を感じたのか今わかった。
きらりは心のどこかで喜んでいたのだ。
傷ついてほしくない友達がいることに喜びを感じてしまいながら、その相手すら完全に信じることはできない。
それほどまできらりの心は擦り切れてしまったのだ。
杏にきらりを攻める気は毛頭ない。むしろきらりがそんな状態になるまでなにもしなかった自分が不甲斐なかった。
きらりがそんな状態になってしまった現状が悲しかった。
◇
(ねえねえ、二人の友情が私に壊されないよう頑張るつもりだったんだよね?
私がなにかしでかさないか注意してたんだよね?
私はほとんどなにもしてないのに、早速亀裂が入っちゃったよ(笑)。ねえ今どんな気持ちどんな気持ち?)
表では心底きらりを心配するような素振りをしながら、江ノ島盾子が念話で言った。(笑)まで音にして。
心を読める魔法なんて持っていないはずなのに、まるできらりの考えていることが全てわかっているかのように。
(諸星きらりがアイドルだって知ってたの?)
無視して自分の疑問だけをぶつける。
(知ってたわけじゃないよ。予想しただけ。なんとなくそんな気がしたんだよねえ。
ほら私クラスメイトの一人がアイドルだし、超高校級のギャルとして知り合ったアイドルも多いし)
そんな情報は初めて聞いた。しかしそれだけで会ったこともない人間の職業を予想できるものだろうか。
できるかもしれない。江ノ島盾子なら。
ランサーには今もきらりの心の声が聞こえいる。
友達を疑ってしまったことへの罪悪感。そのせいで嫌われてしまうのではないかという怯え。そして疑いを捨てきれない恐怖。
きらりだってスレッドを立てたのが杏だと本気で思っているわけではないだろう。ただ信じきることができない。
信じられるはずの友達が相手であっても、もしかしたという思いが拭い切れないのだ。
不安を必死で隠そうとしているきらりの姿は痛々しくてたまらなかった。
(あ、先に言っとくけど、この件に関してアタシを恨むのは筋違いだから
きらりちゃんのメンタルボッコボコにしたのはアタシじゃなくて苛めっ子だから。恨むんならそっち恨んでね)
人から恨まれて嫌がるような性格でもないだろうに。
相手にするのも面倒でランサーは無視したが、江ノ島盾子は構わず続けた。
(ねえどう思ってんのランサー。アンタは当初きらりはクロだと判断して、アタシがスレッド立てんのを見逃した。
今はシロに鞍替えしたみたいだけど、もし本当にクロだったとしたらアンタはきらりを攻めんの? それだけの価値が苛めっ子の命にあったの?)
(……なにが言いたいの?)
ランサーは聞いたが今度は江ノ島盾子が無視した。
(苛めっ子だけじゃない。小学生の連中もそう。
アンタは
蜂屋あいだけが悪いと思ってるみたいだけど、死神様を使ってんのも、使ったやつを処刑してんのも他の生徒だよ。誘導はあるにしろね)
(……まだ子供でしょ)
(だから更生の余地はあるって?
じゃあ蜂屋はどうなの?
アンタできるならアイツを殺したいって考えてるよね?
なんで蜂屋だけ例外なの?
放っておくて犠牲が増えるから?
犠牲を減らすためなら子供でも殺していいってこと?
まさかたった一度あっただけで更生の余地なしってわかったわけじゃないよね?
いやむしろそう思いたかったのかな?
そりゃそうだよね。ただでさえマスターなせいで私を殺せないのに、他の奴の面倒まで見る暇ないもんね。
でもそれって自分の都合で蜂屋あいの命を軽く見てるってことじゃない?)
(違う、私はっ……)
「なに……あれ」
江ノ島盾子の声。念話ではない。肉声だ。
窓の外を見ている。空高く、小学校の屋上の辺り。ランサーには見えた。誰かが宙に浮き、光る槍のようなものを屋上へ撃っている。
「あそこって小学校の辺りだよね? もしかしてなにかあったのかな?」
江ノ島盾子が心配そうに言った。
(噂をすればなんとやら。どうするランサー?
様子を見に行って私を野放しにする? それともどんな酷いことになってるかわからない小学校を放置して私を見張る?)
挑発的な言葉には惑わされない。
こういう場面での長考は手遅れな事態を招く。ランサーは二秒で結論を出した。
「私が様子を見てきます。あなたたちはここを動かないでください」
なにか言おうとした杏を待たず、直ちに霊体化する。壁をすり抜け宙を進み小学校を目指す。
(あの場所には留まるよう言っておいた。すぐに戻れば江ノ島盾子にも大したことはできないはずだ。……とか思ってる?)
相変わらず心を読んだかのような江ノ島盾子の念話が聞こえた。
(確かにアンタの思惑通り大したことにならずにすむかもしれない。
でも本当はこう考えたんじゃない?
小学校ではなにが起こっているかわからない。もしかした人が死ぬかもしれない。
だけどきらりちゃんは放っておいても、最悪メンタルがボロボロになるだけで済む、って。
さっきの話と同じ。なんかのために別のなんかの優先順位を低くしてる。
いや別にいいと思うよ? どのみち両方助けるなんてできるわけないし。蜂屋だって生きる価値ない屑だと思うし。
ウダウダ悩んでるよりキッパリどっちか捨てるほうが楽だもんねえ。でもさ、それって魔法少女としてはどうなわけ?)
――うるさい。
念話で言ったわけではない。心の中で思っただけだ。だがそれ以降江ノ島盾子からの念話はなくなった。
◇
先ほど槍の影響か、屋上はあちこちが砕け、破片が飛び散っていた。フェンスも何箇所も壊れている。
事はすでにランサーが来る前に終わっていた。ここにいるのは戦いの心得はまったくなさそうな少女と戦う気がなさそうなサーヴァントだけ。
霊体なので心の声は聞こえないが、争いを起こす気配はない。
巻き込まれて怪我をした一般人もいないようだった。
少女が悲しそうにしているのが気がかりだが、ランサーが出張るような場面ではないだろう。
――長居は無用。急いで江ノ島盾子たちのところに。
そう考えたとき、、ギイィ、と扉の開く音がした。何気なく視線を向けて、ランサーの動きが止まった。
出てきたのは玩具の杖のような物を持った、見知らぬ少女。ともう一人。
蜂屋あい。
予測しておくべきだった。小学校で騒ぎが起きたのならその場に彼女がやってくることは考えて然るべきだった。
いやむしろ彼女が騒ぎの元凶という事態を想定してもいいくらいだ。
冷静さを失っていた。認めたくないが江ノ島盾子に心をかき乱されていた。しかしこの状況はチャンスでもある。
もとより蜂屋あいはどうにかするつもりだった。
江ノ島盾子との会合のときを予定していたが、江ノ島盾子の手に令呪がある以上、容易でないのは明らかだ。今ならそれはない。
いくら心の声が聞こえるかのようにこちらの考えを見透かすあいつでも、見えないところで、どの時間に、なにが起こっているかまではわからないはずだ。
危険は大きい。だがやる価値はある。
杖の少女と屋上にいた少女は互いの存在に驚いているようだった。
蜂屋あいはその二人に気を使っているかのように、屋上の変わりようを確認している。
今ならフェンスが敗れて空いた隙間の前に立っている。逃げ道もない。
やるならここしかない。
『自分の都合で蜂屋あいの命を軽く見てるってことじゃない?』
江ノ島盾子の言葉が頭に浮ぶ。違う。そんなつもりはない。
どんな悪人だろうと命は命だ。殺さなくて済むならその方がいい。
だけど世の中にはなにがあろうと絶対に変わらない悪というものがある。ランサーはそれを嫌になるほど見てきた。
蜂屋あいは間違いなくその手合だ。一度あっただけだがわかる。経験でわかる。
脳裏に占い師の姿をした魔法少女の姿が過る。
――生かしてもおいても犠牲が増えるだけだっ。
ランサーは実体化すると同時、蜂屋あい目掛けて駆けた。周りにいる者の心の声が聞こえる。
袴を着たサーヴァントが逃げろと叫んだ。ランサーの前方に立ち刀を抜く。彼女は自身よりもマスターである杖の少女が傷つくことを恐れている。
蜂屋あいのサーヴァントは現れない。なぜ? 今はどうでもいい。とにかく障害は袴のサーヴァントだけ。
ランサーは速度を緩めることなく、地面に散らばる破片の一つを杖の少女狙って――正確には僅か上を狙って――蹴った。
一瞬で正確な起動を見切ることはできない。袴のサーヴァントは杖の少女を守るために移動。
ランサーは視線を飛ばしながら空いた道を走る。
右手にルーラを出現させ、蜂屋あいを――
――いや。
想定よりもセイバーの動きが速い。破片を弾き終え、背後からこちらに来ているのが心の声でわかる。
ランサーは進行方向は変えずに振り向く。左手に四次元袋を持ち、袴のサーヴァントが攻撃しようしている場所――首に前に構える。
放たれたのは瞬速の突き。ランサーでも反応できるか怪しい凄まじい速度。だが来る場所がわかっていればどうということはない。
突きは四次元の中に吸い込まれる。ランサーは相手の腰にルーラの峰を掬い上げるようにぶつけた。
思ったよりも軽い。そのまま振りぬき屋上の外へと殴り飛ばす。
再び振り向いて蜂屋あいを視界に捉える。
ルーラの射程圏内。今更サーヴァントを出しても間に合わない。後ろには地面がない。
彼女にしてみれば絶体絶命の状況。なのに相変わらず心の声は聞こえない。
グリムハートのように何らかの能力を使っているのか、江ノ島盾子のように全てを受け入れているのか、あるいはよほど感情が希薄なのか。
いずれにせよ終わりだ。
蜂屋あいは、ここで死ぬ。
ランサーは両手でルーラを握り、振り下ろした。
――しかし、蜂屋あいは死ななかった。
特別なことが起きたわけではない。ただ蜂屋あいが一歩後ろに下がっただけだ。
当然の帰結して彼女はルーラに切り裂かれることを免れる。そして当然に帰結として屋上から後者の裏へと落下した。
予想外の事態にランサーの動きがほんの僅かに硬直する。その瞬間、一人の少女がランサーの横を駆け抜けた。
「あいちゃん!」
杖の少女が蜂屋あいの後を追って飛び降りる。ランサーは慌てて手を伸ばすが届かなかった。
少女は地面へと向かいながら高らかに叫んだ。
「翔(フライ)!」
少女の叫びに呼応するように杖から魔力が迸り、翼の形を成した。少女は杖の上に跨がり、急降下。
蜂屋あいに追いつき、彼女を抱きとめる。そして、翼をはためかせて宙を舞った。
光る翼に乗って空を飛び、消え行く命を助ける。その姿はランサーが昔みたアニメのキャラクターのようだった。
かわいくて、優しくて、強くて、勇気があって、絶対に諦めない少女。
姫川小雪が憧れ、目指し、実現させ、だけど遠い存在になってしまったもの。
「魔法少女……」
呟いた。
数秒。ランサーは、少女が地面に蜂屋あいを下ろすのを見て、自分が動きを止めていることに気づいた。
――なにをぼうっとしているの、私は。
屋上から飛び上空から蜂屋あいを強襲する。だがこちらを狙う声が聞こえた。
横から飛来物が来ていることに気づき、弾く。それは拷問や処刑などに使われる、持ち手が二つついたノコギリだ。
息をつく暇もなく次々と飛来する。金髪の少女が生み出し、袴のサーヴァントが投合している。
ランサーはノコギリを弾き続けなら着地。衝撃で蜂屋あいからは大分ずれた。
背後にアイアンメイデンが現れる。跳躍して後ろに回りこむ。
ルーラを使って二体のサーヴァントに向かって打った。軽々と避けられたが、もとから当たるとも思っていない。
攻撃が止んだ隙にランサーは霊体化して、この場を離れた。
相手はサーヴァント二人に魔術らしきものを使うマスター一人。最初の襲撃で倒せなかった以上、戦いを続けるのは分が悪い。
◇
「さくらちゃん、また助けて……」
「ごめん、待って!」
襲ってきたサーヴァントが消えてすぐ、さくらは杖に乗って屋上へ向かった。
気がかりなのはたった一人の大切な親友。さくらは知世があんな風に泣くのを初めて見た。
本当は一秒だって放っておきたくなかった。どうして泣いているのかも、自分になにかできるのかもわからなかったが、何かしてあげたかった。
「知世ちゃん!」
さくらが屋上についたとき、そこには
大道寺知世の姿はなかった。
◇
セイバーには自分がこうして無事でいることが不思議だった。
屋上での戦い。渾身の突きがまるで予めわかっていたかのように完璧に防がれたとき、自分の命は終わると思った。
実際あのサーヴァントにはそれができたはずだ。だがしなかった。必殺の機会を得ながらセイバーを斬ることなく峰打ちに止めた。
思い返してみればあのサーヴァントは蜂屋あいだけを殺そうとしていた節がある。
さくらへ破片を蹴ったのも前に立ちはだかっていた自分を動かすためのものではなかったか?
あいは屋上へいったさくらの姿を眺めている。
なんとなく、本当になんとなくだが――不愉快そうに見えた。
◇
(サーヴァントを失ったマスター、無事確保したよ)
(そう。ありがとう)
アサシンからの報告を聞いて、なぎさは教室でひとり息を吐いた。
小学校の屋上に光が見えてすぐなぎさはアサシンを向かわせていた。与えた指示は二つ。
チャンスがあればサーヴァントを殺すこと。サーヴァントを失ったマスターがいたら連れてくること。
どちらも自分の安全の最優先を前提としてだ。アサシンは後者に成功した。
聖杯戦争もまだ序盤。この段階でサーヴァントを失ったマスターなら令呪を持て余している可能性が高い。
それを貰うことができれば
フェイト・テスタロッサを捉えるよりも遥かに安全、かつより多くの令呪の手に入れることができる。
ただ、相手はまだ小学生だという。もし交渉しても渡してくれなかったとき、小さな子供相手に自分は強引な手段に出れるのだろうか?
いや、出なければならない。令呪は絶対命令権だけでなく、サーヴァントの力を高める効果も持っている。数が多ければあるだけ有利になる。
なぎさはどんなことをしても
海野藻屑を生き返らせると決めた。素直に渡さなければ脅迫や拷問をしてでも奪うだけだ。
敵は甘くない。アサシンが見た白いサーヴァントなんて、気配を消しているアサシンの方を睨んで牽制したきたという。
情に流されている余裕なんてない。あの過ぎ去った日々を取り戻すために。
◇
本当にこれでよかったのか。ランサーにはわからなかった。
屋上にいた少女のことだ。彼女を一人にすればアサシン――気配を消していたのだからおそらくそうだろう――に連れ去られることはわかっていた。
わかっていたのに放置した。
蜂屋あいのサーヴァントらしき金髪の少女は屋上の少女に興味を持っていた。
蜂屋あいや江ノ島盾子ほどではないが心が読みにくく、イマイチ要領を得なかったがそれは間違いない。屋上で姿を表さなかったのもその辺が関係しているのだろう。
二人を会わせないためにはアサシンに連れて行かせるしかなかった。だがそれが理由ではない。
それがわかったのは屋上を降りてからだ。
ランサーは蜂屋あいを殺すことを優先するために少女を見捨てた。
アサシンの目的が令呪だけだったから。大人しく渡さなかったらどうなるかわからないのに。
あの杖をもった少女は屋上の少女と親しいようだった。屋上から友達の姿がなくなっているのを見たらなんと思うだろう。
彼女は蜂屋あいが落ちたとき、救う方法を考えるよりも先に飛び降りた。計算や打算などなにもなくただ助けたい一心で。
今の自分にあれほどただ純粋に人を助けたいと思っているだろうか。
蜂屋あいを殺すのは正しいことだと思い、ランサーはそのために別のものを切り捨てた。
本当にそれだけだったか。あのとき蜂屋あいと他の誰かを重ねなかったか。
正しいからではなく、自分の中の怒りや憎しみをぶつけるために蜂屋あいを殺そうとしたのではないか。
ランサーはいま江ノ島盾子たちのところに戻ろうとしている。本当にそれでいいのだろうか。
『それって魔法少女としてはどうなわけ?』
江ノ島盾子の言葉が頭に響く。
【D-3/汚い喫茶店/1日目 午後】
【
双葉杏@アイドルマスターシンデレラガールズ】
[状態]健康
[令呪]残り三画
[装備]
[道具]携帯ゲーム機×2
[所持金]高校生にしては大金持ち
[思考・状況]
基本行動方針:なるべく聖杯戦争とは関わりたくなかったが
1.諸星きらりたちとこれからどうするかを話し合う
2.江ノ島盾子とそのサーヴァントのことは信用していないが特別疑っているわけでもない
3.少女(大井)を警戒。どうするべきか。
[備考]
※大井と出会いました。大井を危険人物(≒きらりスレの>>1)ではないかと疑っています。
※『今からきらりちゃんと一緒に小学校に行きます』と書き込んだのは江ノ島盾子ではないかと考えています
【ランサー(
ジバニャン)@妖怪ウォッチ】
[状態]健康
[装備]のろい札
[道具]なし
[所持金]なし
[思考・状況]
基本行動方針:なんとなく頑張る
1.双葉杏に付いて行く
【諸星きらり@アイドルマスターシンデレラガールズ(アニメ版)】
[状態]精神的疲労(微)、魔力消費(中)
[令呪]残り二画
[装備]なし
[道具]なし
[所持金]不明
[思考・状況]
基本行動方針:バーサーカーを元に戻し、元の世界へと戻りたい
[備考]
※D-4に諸星きらりの家があります。
※
江ノ島盾子&ランサー(姫河小雪)を確認しました。そして、江ノ島盾子を信用しています。
※三画以上の令呪による命令によって狂化を解除できる可能性を知りました(真実とは限りません)
※フェイト・テスタロッサの捕獲による聖杯戦争中断の可能性を知りました(真実とは限りません)
※
ルーラーの姿を確認しました
※掲示板が自分の話題で賑わっていることをしりました
【
悠久山安慈@るろうに剣心(旧漫画版)】
[状態]霊体化
[装備]なし
[道具]なし
[思考・状況]
基本行動方針:
???
[備考]
※
雪華綺晶の存在を確認しました、再会時には再び襲いに行く可能性があります。
※江ノ島盾子&ランサー(姫河小雪)を確認しました。
スキル『こころやさしいひと』の効果できらりの精神の安定に江ノ島盾子&ランサーが役に立っていると察知しイレギュラーが発生。狂化中ですが敵意を向けられない限りこの二人を襲いません。
【江ノ島盾子@ダンガンロンパシリーズ】
[状態]健康、涙で化粧が流れてる、小雪ちゃん(魔法少女育成計画最序盤)の真似中
[令呪]残り三画
[装備]なし
[道具]なし
[所持金]大金+5000円分の電子マネー(電子マネーは携帯を取り戻すまで使用できません)
[思考・状況]
基本行動方針:絶望を振りまく
1.小雪ちゃんを待とっかどうしよっか
2.諸星きらりをプロデュース!
3.放課後になったら、蜂屋あいと会う
4.ケータイ欲しい……ケータイ欲しくない?
[備考]
※諸星きらりを確認しました。彼女の自宅の位置・電話番号・性格なども事前確認済みです。
※自身の最後の書き込み以降のスレは確認できません。
※数十分、もしくは数時間、あるいは数日、ひょっとしたら数年は同じキャラを演じ続けられるかもしれませんし、続けられないかもしれません。
※ランサーのスキル『困った人の声が聞こえるよ』に対して順応しています。順応に気付いているかいないかは不明です。動揺しない限り尻尾を掴まれることはないかもしれません。あるかもしれません。
【D-2/小学校・校舎裏/1日目 午後】
【セイバー(
沖田総司)@Fate/KOHA-ACE 帝都聖杯奇譚】
[状態] 疲労(中)、ダメージ(中)
[装備] 乞食清光
[道具] なし
[思考・状況]
基本行動方針: さくらのために
1.白いサーヴァントのことが気になる。
2.余裕があれば鞘を取りに行く
[備考]
※使わない間は刀を消しておけるので、鞘がなくてもさほど困りません
【
木之本桜@カードキャプターさくら(漫画)】
[状態] 疲労(中)、魔力消費(中)
[令呪]残り三画
[装備] 封印の杖、
[道具] クロウカード
[所持金] お小遣いと5000円分の電子マネー
[思考・状況]
基本行動方針: わからない
1.……知世ちゃん?
[備考]
【蜂屋あい@校舎のうらには天使が埋められている】
[状態] 疲労(小)
[令呪]残り三画
[装備] なし
[道具] なし
[所持金] 小学生としてはかなり多めの金額
[思考・状況]
基本行動方針: 色を見る
1.さくらの色をもっと見たい
2.江ノ島盾子に強い興味
[備考]
【キャスター(
アリス)@デビルサマナー葛葉ライドウ対コドクノマレビト(及び、アバドン王の一部)】
[状態] 魔力消費(小)、作っておいたトランプ兵は全滅
[装備] なし
[道具] なし
[思考・状況]
基本行動方針: オトモダチを探す
1.知世をオトモダチにしたい
2.さくらに興味
3.サーヴァントのオトモダチが欲しい
[備考]
※学校には何人か、彼女と視界を共有できる屍鬼が存在します
※学校の至る所に『不思議の国のアリス』への入口が存在しています
※不思議の国のアリス内部では、二人のアリスが遊園地の完成を目指して働いています
【D-2/小学校近く/1日目 午後】
【ランサー(姫河小雪)@魔法少女育成計画】
[状態]疲労(小)、絶望(微)、ストレス
[装備]ルーラ
[道具]四次元袋
[所持金]なし
[思考・状況]
基本行動方針:出来る限り犠牲を出さずに聖杯戦争を終わらせる。
1.江ノ島盾子たちのところに戻るべきか否か
2.江ノ島盾子と蜂屋あいの再会時に蜂屋あいのサーヴァントを仕留める。
3.出来ることなら、諸星きらりに手を貸してあげたい。
[備考]
※江ノ島盾子がスキル『困った人の声が聞こえるよ』に対応していることに気づきました。
※諸星きらりの声(『バーサーカーを助けたい』『元いた世界に帰りたい』)を聞きました。
彼女が善人であることを確信しました。
【D-2/中学校・教室/一日目 午後】
【
山田なぎさ@砂糖菓子の弾丸は撃ちぬけない】
[状態]健康、若干憂鬱(すぐに切り替え可能)
[令呪]残り三画
[装備]携帯電話、通学カバン
[道具]
[所持金]中学生のお小遣い程度+5000円分の電子マネー
[思考・状況]
基本行動方針:聖杯を手に入れて、海野藻屑に会う。
1.
クロメが戻ってくるのを待つ
2.お人好しな主従と協調するふりをして、隙あらばクロメに襲わせる。
3.ただし油断せず、慎重に。手に負えないことに首を突っ込まないし、強敵ならば上手く利用して消耗させる。
[備考]
※掲示板を確認しましたが、過度な干渉はしないつもりです。
【D-2/小学校と中学校の間/一日目 午後】
【アサシン(クロメ)@アカメが斬る!】
[状態]実体化(気配遮断)中
[装備]
[道具]
[所持金]
[思考・状況]
基本行動方針:聖杯を取る。
1.マスターのところに戻る
2.アサシンらしく暗殺といった搦手で攻める。その為にも、骸人形が欲しい。
3.とりあえずおとなしく索敵。使えそうな主従を探す。
【大道寺知世@カードキャプターさくら(漫画)】
[状態] 気絶 アサシンに抱えられている
[令呪]残り三画
[装備] なし
[道具] なし
[所持金] たくさん
[思考・状況]
基本行動方針: 街の人達を守る
[備考]
※死神様について調べていますが、あまり成果は出ていません
※サーヴァントを失ったため、ルーラー雪華綺晶に狙われています
最終更新:2016年05月07日 20:32