救いの女 ◆gry038wOvE





 涼村暁は、ひとり────森の中で、上空に現れたホログラフに戦慄する。
 シルクハットを被った、おそらく長身の胡散臭い男が、上から見下ろすように薄く笑みを浮かべ、放送の一声を飛ばす。
 暁は、ついこの瞬間まで放送のことを忘れかけていた。
 ここに来てから起きた様々な出来事に押しつぶされ、加頭が始めに告げた放送のことなど、記憶の外に投げ出されていたのだ。
 だが、サラマンダー男爵がなにやらダラダラと御託を並べている隙に、暁は名簿とマップを用意した。乱雑に入れていたわりには、その用紙は綺麗に纏まっている。
 筆記用具を持ったとき、ちょうど死者の名前が告げられ始めた。


 相羽ミユキ、暁美ほむら……。


 さすがに、名前に線を引くのは暁も躊躇った。正直言えば、相羽ミユキの名前が呼ばれたときに、名前の上に線を引きそうになったが、すぐ近くにあったほむらの名前を見て、できなくなったのだ。
 ここに来て、暁が一番楽しかったのは彼女といた時だったかもしれない。
 彼女がいなくなって、暁が感じた感情はどうしようもない「悲しみ」だった。今も、暁の胸の奥には、「寂しさ」の残滓が振り払えず残っている。


 速水克彦。


 これまで呼ばれた名前の大半は、まるで記号のようで、ほぼ頭に入っていなかったが、不意にその名前で思い出す。
 速水。少なくとも、暁はその男の名字しか知らなかった。ただ、あの広間に速水はいたし、名簿の上に速水という参加者は彼しかいない。
 つまり、暁の知り合いはもう一人死んでいたということだ。
 速水という男は、確かシャンゼリオンになるはずの男だった……あの結構綺麗なおねーさん(暁は知らないが、名前は南エリという)からそう聞いた。
 彼には力がなかったわけだ。────シャンゼリオンを得られなかったことによって。
 あのパンスト野郎や銀ピカ野郎、白い怪人、あるいはシャンゼリオンや魔法少女のような強力な力を持つ者たちが跋扈するこのバトルロワイアルで、勝ち残るには条件が厳しすぎたのだろう。
 たとえ、シャンゼリオンの条件に合致するほどの体躯の持主であったとしてもそうだ。



(ま、男の死なんて俺には関係ない……もんな)



 ミユキとか、まどかとか、えりかとか、サエコとか、なのはとか、マミとか、女性の名前も山ほど呼ばれた。……まあ、ミユキあたりは男性の名前かもしれないが、その辺りはわからない。
 一応、暁の頭脳はミユキは女だと、自分に都合よく解釈した。……ならば、会いたかったなぁ、などと考えつつも。
 まあ彼も、男の死が100パーセントどうでも良いものと考えているわけではない。
 何にせよ、人が死んでいるのだ。
 見えない場所で知らない人間が死ぬのなら、暁にとっては何の関係もない話なので、完全な他人事として飲み込める。彼は正義漢や熱血漢ではないから、人の死自体はそうやってすぐに割り切れた。
 しかし、この場で死んだ十八人は、自分と同じようにここに連れて来られた者たちで、この島のどこかで死んだのである。だから、これから死体に遭遇する可能性も、彼らを殺した人間に遭遇する可能性も、十二分に存在する。
 暁自身が、これから放送で呼ばれる人間を殺す引き金を引く可能性だってある────ほむらだって、厳密に言えば暁の手によって殺されたのだし。



 そんなことを考えているうちに、放送は進んでいく。名簿を観ると、呼ばれた全ての名前の横に黒い○が描かれていた。
 一応、全部は聞き取ったらしい。



(禁止エリアか……)



 禁止エリアが発表され、暁は地図上にそれをマークする。
 だが、自分がいまいる場所は何となくしかわからないし、森林エリアが呼ばれたらヤバい……という程度にしか考えてはいなかった。
 この男の真にどうしようもない点は、こういう時に自分がいるエリアが全くわからないことだろう。基本的に頭が悪いし、大雑把なのだ。自分は平気だと思い切っている。
 例によって、彼は山登りが面倒で、既に山沿いの道を歩き始めていた。────その結果、彼が現在いるエリアはG-6。つまるところ、一時間後の禁止エリアだったのである。
 川近辺の山道である時点で、充分危ういのだが、先述のとおり彼は、「自分が大丈夫」だと信じ込んでいた。

 その後も、サラマンダー男爵の言ってることは漠然としか聞いていなかった。
 午前十一時の特殊ボーナスの話だが、一瞬だけ「ボーナス」という言葉に反応した後、移動手段だと聞いて膝を落としたのだ。
 金じゃないなら、意味もない。まあ、移動が楽になるのなら、今の暁としても面白いだろうが、十一時まで待つくらいなら、そんなものは無視すべきだ。



『……それでは参加者の諸君、健闘を祈る」

(なんだ、放送終わりかぁ……)



 上空のホログラフが消えると、暁はしょんぼりとし始めた。
 放送が終わり、先ほどまでの光景に戻っただけのはずなのに、どうしてだろう。暁は寂しくなったのである。先ほどまで誰かの声が聞こえていただけに、誰の声も聞こえなくなると急に寂しくなる。


 静寂の森。


 ここでは、女の子を呼び込んでこれから遊ぶこともできないし、銀行からお金を借りて派手に遊ぶ事も出来ない。
 そのうえ、ここで出会った絶好のパートナーはもうこの世にいないのだから……。



(この際、あのパンスト野郎でもいい……誰か傍に居てくれ……)



 ほむらがいなくなってからというもの、暁はだんだんやる気がなくなってきた。ほむらを間接的に死へと近づけた、パンスト太郎や丈瑠でさえも、暁は欲していた。
 ……孤独だと、彼は何もできなくなってしまう。大切な人がいなくなってしまうと、特にそれを感じるのだ。

 ほむらは死んでしまった。唯一の知り合い・速水克彦も知らないうちに死んだ。
 ここから先は、知っている人間が誰もいない孤独のバトルロワイアル。
 寂しく、惨めで、なんだか上の空になってしまう。放送がもう少し長く続いていれば、人の気配を聴覚や視覚で感じることができて寂しくなかったのだが、何もなくなるとダメダメだった。



「…………」



 この森で、カブトムシでも採ろうと思ったのだが、蚊トンボさえもいないこの森に、どうしてカブトムシがいるのだろうか。
 そう、ここには生物の気配も何もない。
 あるのは無機質な木々の冷たい眼差しだ。
 だから、暁はやっていられなくなった。
 寂しさを紛らすものが、ここには一切なく、ただほむらが旅立っていく姿がぼんやりと暁を支えている。まるで森の迷子だった。



「おーい、誰かー」



 悲しくも、反応がない。……いや、下手に反応があれば、それはそれでまずいのだが、彼は特にそんなこと考えても居なかった。
 声を張り上げる気力さえもない。
 もう、この際ぐっすり寝てしまおうか。でも、ここは少し寝心地が悪そうかもしれない。



(あ、でもまあいいか……)



 意識が少しずつ遠のく。全てがぼんやりとし始める。
 眠りたくないという意思を無視して、ただひたすらに脱力感から来る睡魔が、暁を眠りにいざない続ける。
 何も考えられず、瞼が少し閉じてきた。
 眼前の光景が見えなくなってきて、ただ意識が薄れていき、怠惰という欲の赴くまま、彼は地面に座り込み、…………寝た。
 首輪が自分に警告を告げていることなど知らずに。




★ ★ ★ ★ ★




 ドスン! という音が、暁の頭に鳴り響く。周囲を見渡せば、暁は地面に転げ伏していた。
 ……もう朝か。どうやら事務所で寝てしまったらしい。
 ここは涼村探偵事務所。────まあ、いつもドンチャン騒ぎが行われる場所で、彼の職場でもある場所だ。
 それにしても、妙な夢を見たものだと、彼は頭をボリボリ掻いた。



(俺が殺し合い? ……なんてするわけないっしょ。なんたって俺は正義のスーパーヒーロー・超光戦士シャンゼリオン様だぜ!)



 その夢こそが現実であることに、夢の中の彼はまだ気づいていない。
 だから、自分のことを棚にあげてこんな思考になれるのだろう。
 或いは、これは異世界の話なのかもしれないが、少なくともこのバトルロワイアルにおける暁にとっては、この夢は現実とは一切関係のない夢の話である。



「暁っ! 何寝てるの! さっき仕事の依頼を受けたばっかりでしょ!」



 秘書の橘朱美の声で、暁はこの自分がどういう状況にあるのか思い出す。
 夢の中の彼は、少なくとも依頼を受けた探偵であり、殺し合いに呼ばれた超人ではない。
 だから、いま自分が仕事の依頼を受けていることさえ忘れていた。
 ただ、どんな依頼なのか、彼は覚えていない。



「依頼……?」

「そう、犬探し」



 朱美が、笑顔で犬の写真を見せてきた。
 何度となく見覚えのある犬だ。それを見た瞬間、暁は面倒臭くなって……再び眠りにつく。


 朱美────その言葉の響きに、何か引っ掛かるものを感じながら────。





★ ★ ★ ★ ★




「って、……寝てる場合じゃない!」



 現実の────殺し合いの世界で眠っていた暁は、ぱっと目を覚ました。
 思ったよりも、長くは寝ていなかったらしい。
 時計を見てはっきりしたが、眠っていたのは、僅か数分。よくこんなにも早く目が覚めたものだ。眠ったというより、一度眠りかけて、一瞬で何かがそれを制止したような感覚だった。
 しかし、眠りから覚めた暁の頭が、意外にもはっきりとしていて、寂しさなど打ち消されたかのような冴えを見せている。
 殺し合いの最中で眠っていた、数分前の自分がいかに愚かしいかさえ、今の彼にははっきりとわかった。



(ま、命があるだけウルトラハッピー! 神が俺に味方してるぜ。さっさと、ほむらのための戦いをやってやらないとな!)



 暁は、再び立ち上がり、歩き出した。
 荷物にも誰かに動かされたような形跡はなく、はっきり言って、この状態は非常に好ましかったのだ。一歩間違えば、殺し合いに乗った人間に殺されていただろう(当人はここが禁止エリアであり、二重に危うかったことには気づいていない)。
 いや、ある意味暁も殺し合いに乗っているし、それは暁だって同じだ。
 暁だって、この殺し合いの状況の中、寝ている人間を見れば、生き残るために──────いや、そういう時どうするのかは、まだ、彼自身にもわからない。
 何にせよ、力がない人間は食われる。
 速水のように。だから、それをよく肝に銘じて行動せねばなるまい。



(ところで、さっきの夢の続き……一体どうなったっけ……)


 暁は、冴え渡る意識の中で、なんとなくあの夢の続きを思い出しながら南に向けて歩き出した。



★ ★ ★ ★ ★



 探偵事務所で犬の写真を見つめる涼村暁の頬は右手の形に腫れあがっていた。
 この手形は、ちょうど秘書の橘朱美のものと一致する。


「いてててて…………何もたたき起こさなくても」

「だって暁! あの犬探さないと……」

「はいはいばい。んで、何か手がかりでもあるの?」


 暁と朱美が話を続けた。
 今回もおなじみの犬探し。まずは手がかりを収集しなければならないだろう。
 暁は、犬の写真を見ながら、この犬の居場所を熟考する。
 とはいえ、そんなものを見てもわかるはずはない。
 朱美が口を挟む。


「馬鹿ねぇ。あの犬ならあそこに決まってるじゃない。探すまでもないでしょ?」

「あ、そうか!」


 暁は、朱美の一言で、あの犬がいつもどこに逃げているのかを思い出した。
 ────そうだ、あの犬はいつもあの倉庫にいる。
 十数回捕まっても、懲りずにあの倉庫に隠れている。
 それをいつも、二人で見つけて捕まえて、依頼料を手に入れるわけだ。
 そのうえ、金持ちの家の犬なので、良いカモだった。


「じゃ、早速行くぞ! 朱美!」



★ ★ ★ ★ ★



 バトルロワイアルの中で、暁は森を走り出していた。先ほどまで歩いていたのだが、今は額に汗を浮かべ、彼の精一杯の走りを見せている。スポ根は彼の趣味ではなかったが、今は仕方ない状況だった。
 理由は単純である。
 のんびり歩いていた時、道が分かれ道になったことで、自分がどのエリアにいるのかを、彼は地図と照らし合わせた。そして、その道と同じ構造をするエリアが、なんとなく黒くマークされていることに気づいたのである。
 ────禁止エリアだった。
 それまで気づかなかったのは間抜けだが、彼ならば(あと良牙なら)仕方がないとも言える。
 タイムリミットは、僅か一時間であった。一応、歩いても充分な時間とはいえ、彼も焦りを感じ始める。
 広間で見たあの首無しグロ死体のようになりたくない。あれは、さすがの暁でも吐きそうになるレベルだった。
 ……それが、この禁止エリアにいたら自分に降りかかる────


(うかうかしてらんねえな)


 彼自身、なかなかの全力ダッシュのつもりだったし、既に彼は自分でも気づかぬうちに禁止エリアを抜けていた。
 ただ、彼がそれを実感するのは、F-5から流れる川を目の前にするときなのである。そこで、自分がどのエリアにいるのかが明確にわかる。それに、禁止エリアからはなるべく遠ざかった方が良いだろう。
 このまま進んでいけば、放送で呼ばれた三つの禁止エリアに近付いていくことはない。

 その時────


(お……! あれってもしかして……!)



 暁はついに、眼前に輝く水流を目にしたのだった。全身の疲労感が抜けていく。これを目にした瞬間、汗が目に入って少し痛みを感じた。
 もう禁止エリアではないだろうが、喉が渇いてきたので、川に向かってまだ走った。
 暁は別の川で、ほむらの死体を流しているので、下手をすれば死体の流れている川かもしれないが、そんなことに注意を払うのも面倒だった。
 ラストスパートをかけ、川のほとりにたどり着く。向こうの川とは、また少し違った雰囲気だった。


 …………と同時に、数キロメートルを荷物を抱え、己の掲げる全力で走りぬいた彼は、ちょっとしたランナーズハイに陥った。
 視界が朦朧としはじめ、意識もぼんやりしたのである。
 だが、意識は逃げゆくのに、先ほど見た夢の、はっきりしなかった部分がはっきりと現れ始めた────。


 意識の外に忘れてしまったはずの、あの夢の続きが、今ははっきりと思い出せる。



★ ★ ★ ★ ★



 …………ハードボイルドを体現したような格好で、銃を構える男女が二人。
 探偵・涼村暁と、その秘書・橘朱美。
 獲物を捕まえるため、倉庫の近くで、二人は綿密に作戦を練っていた。


「奴は逃げ足が速いから油断するなよ」


 朱美がコクリと頷き、二人は銃を持って警戒を持ったまま、倉庫の中へと突入した。
 人の気配は……ない。しかし、そこには彼らしか気づき得ないキーワードが幾つも眠っていた。


「いつもあそこよ」


 朱美は、その獲物が毎回潜んでいる場所を指差した。
 そこには、生暖かい液体が湯気を発していた。


「ちびった痕よ」

「ホヤホヤだな……。奴はこの近くにいる」



 その手がかりが、獲物の居場所を二人に確信させたのである。
 そう、奴はこの倉庫の中にいる────と。


 ガタン!


 刹那、背後からドラム缶が倒れる轟音が鳴った。
 それが耳を打っても、ひるまずにそちらを向いて、銃を構える。
 そこには、獲物の姿があった──。


 その牙を人の体に向ける、獰猛な獣────犬。


 そう、彼らが捕らえるべき獲物は犬だったのである。
 彼らは、金持ちの家の犬探しを依頼され、こうしてはるばる倉庫まで、犬を捕らえに来たのだ。
 朱美が、暁をせかす。


「暁、早く!」


 バヒュッ!


 せかされても、精密な射撃力を使い、暁はその犬に発砲した。
 発砲とは言っても、何も弾丸が出てくるわけではない。
 そこから出て来たのは、犬を捕獲するための小さな網である。


「よっしゃー!」


 暁と朱美は途端、ハードボイルドを崩し、笑顔で犬に向かっていき、抱き上げた。
 暁は何気に、小動物────主にこの犬とじゃれあう一面を持っていた。
 小動物や女性を虐める者を、彼は許さない男だった。


「お前な、これで16回目だぞ! 17回目もよろしくな~!」

「任務完了~………………と行きたいところだけど」

「ん? どうした、朱美?」


 犬が捕まり、依頼料も手に入り、大団円と見えたが、それを迎える直前、朱美の様子が少しばかりおかしくなった。
 どういうことだろう。
 朱美の表情がだんだんと曇り、変わっていく。その様子が、なんだか暁は怖かった。
 その歪み方が人間のものではないからとかではなく、そこから何かこの日常が崩されてしまうような気がした。
 そして、そのままこの楽しい毎日の全てが、自分自身の手の届かないところに遠ざかっていくような気がして……ただ、それが怖かったのである。



「……あなたの秘書って、随分と大変そうね。でも、結構楽しそうだわ」



 朱美の顔は、見知らぬ少女の顔へと変わっていったのだ。ただ、暁にしてみれば、その少女に会いたかったような気もする。
 長い黒髪が靡いている。背丈などから想定される齢は中学生ほど。暁のストライクゾーンからしてみれば、やや幼い。だが、その凛とした目や顔立ちから醸し出される雰囲気は、朱美よりもはるかに大人びていた。
 まるで実年齢に十歳上乗せしたようにも見える。



「お、お前は!?」

「暁、あなたはこんなところで寝ていては駄目」



 少女は暁の言葉を無視して、脈絡のない話をし始めた。
 まあ、少女は本当は暁のこの夢を妨害したいだけなのかもしれない。
 だから、先ほどの一言はただのお世辞であり、ここから先が本題なのである。



「いつまでも、自分が今までいた世界のことに縛られては前に進めない。私は誰よりもそれを知ってるつもりよ。だから……」

「いや、そんなことはいいからさぁ。ねぇ、名前くらい教えてくれたっていいでしょ」

「だから、早くこの夢から醒めて……」

「君って、クラスとかでよく可愛いって言われない?」

「そして、この先にある、もっと幸せな未来を目指して……」

「俺も、君があと十年早く生まれていれば……あ、でもまあ、今から俺のところで勉強すればあと五年くらいで」

「ちょっ……もういいから、さっさと起きなさい!!」


 少女は、そのまま、暁の頭上に銃を突きつけた。先ほどまでこんなものを持っている気配がなかっただけに、その行動は恐ろしかった。
 長々と理屈をこねるよりも、こうした方が暁には効きやすいのだと、少女は改めて気づいたのだ。
 当然、暁はその銃口に怯え…………


「ぎゃーーーーっ!!!」



 夢の世界から逃げ出すように全力で走り出した。





★ ★ ★ ★ ★





 不幸のバトルロワイアルの中で、先ほど禁止エリアで見ていた夢の全てを思い出した。
 思い出してみると、それはとても、おかしな夢だったように思える。だって、何てことのない日常を夢に見ただけなのだから。
 夢というのは、だいたいは非現実的なことを見るものだと思っていた。現実で叶えられないような幸福、あるいは不幸を。
 だから、暁はよくパラダイスの夢を見ていた。そして、それを叶えるために戦っている。



「そっか……お前が俺を助けてくれたんだな、ほむら」



 禁止エリアでの睡眠を覚ましてくれたのは、ほむらだった。
 暁の心の中にいたほむらの存在が、なかなか大きかったのだろう。
 ほむらと出会い、ほむらと一緒に戦って、こうしてほむらに助けられた。
 彼女には銃を突きつけられたり、怒鳴られることもあったが、何だかんだで助けられてばかりだったような気もする。



「やっぱり、俺って女の子を惹きつける魅力があるのかな……」



 そう言って薄ら笑いつつも、彼はほむらが夢の中で暁に放った言葉を思い出す。


 ──この先にある、もっと幸せな未来を目指して


 その通り、暁は自分が思い描くパラダイスを、優勝して叶えたい。ただそれだけだから、深いことは考えず前を向いていける。



「そうそう、俺には幸せな未来があるんだよね♪」



 ほむらのことも忘れず、彼女の想いを心の片隅に背負い────しかし、あくまで自分のために、彼は突き進んでいく。
 速水やほむらの死に、深く何かを思うこともなく、これからも自分のために────どこかで彼女たちの生き方を心に刻みながら、真っ直ぐに進んで行く。



(川を渡ったし、このまま教会に行ってみるか……)


【1日目・朝】
【G-5/道・川のほとり】

【涼村暁@超光戦士シャンゼリオン】
[状態]:ダメージ(中)、疲労(大)、汗だく
[装備]:シャンバイザー@超光戦士シャンゼリオン、スカルメモリ&ロストドライバー@仮面ライダーW
[道具]:支給品一式、首輪(ほむら)
[思考]
基本:願いを叶えるために優勝する………………(?)
1:このまま教会に向かう。
2:可愛い女の子を見つけたらまずはナンパ。
[備考]
※第2話「ノーテンキラキラ」途中(橘朱美と喧嘩になる前)からの参戦です。
 つまりまだ黒岩省吾とは面識がありません(リクシンキ、ホウジンキ、クウレツキのことも知らない)
※ほむら経由で魔法少女の事についてある程度聞きました。但し、まどかの名前等知り合いの事については全く聞いていません。


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最終更新:2013年03月15日 00:02