The Raven Chaser ◆7pf62HiyTE
完全にありえないことを取り除けば、残ったものは、いかにありそうにないことでも、事実に間違いないということです――
――――――シャーロック・ホームズ
「18人か――」
漆黒の衣を纏いし少女がそう呟く――
少女には人間で言う所の名前を持たない――
何故なら彼女はキュアムーンライトを倒す為に生み出された存在なのだから――
光のプリキュアに相対する闇のプリキュア――
ダークプリキュア、それが彼女を識別する呼称である――
放送が終わり彼女は思考する――
66人に上る参加者の内6時間で18人――単純計算で4分の1以上が退場した事になる。
これが多いか少ないか、それを簡単に判断する事は出来ない。
ダークプリキュア自身は結局この6時間で誰1人仕留める事は出来ていない。
とはいえ、彼女自身は別にキルスコアを挙げるつもりで戦っているわけではないのでそこまで気にしていない。
というより、烏合の衆を十何人仕留めた所で意味などない。彼等の持っている所持品を確保できるかどうかの違いしか無いだろう。
脱線したようだが、この18人という数字は予測よりは若干多い――と考えていた。
自身が結局1人も仕留められなかったのもあったし、プリキュア共や仮面ライダーといった連中が数多くいるならばそうそう簡単にはいかないだろうと考えていたからだ。
にもかかわらずこの人数という事は、恐らくは殺し合いに乗った強者が数多くいるという事なのだろう。プリキュア共が守ろうとも追いつかない程の――
そういえばあの場で真っ先に対抗を宣言した仮面ライダー1号
本郷猛の名前も呼ばれていた――
先に交戦した仮面ライダースーパー1の仲間と思われるその男、どれほどの強さだったのか?
最初はキュアサンシャインを率先して守ろうとした辺り、少なく見積もってもキュアサンシャイン並の強さはあったと考えて良い。
それを踏まえて考えれば本郷の強さも同等――それだけの強さであっても生き残れないという事だ。
が、実の所ダークプリキュアは自身の実力には自信を持っている為、それについてはあまり気にしていない。
先に述べたとおり、自分の知らない所で何人退場しても気に留める事も無い。潰し合いして勝手に自滅してくれるのであればこちらとしては都合が良い。
元の世界に戻る為に優勝するつもりではあるが、無駄に力を使う必要も無かろう。1人で65人仕留めようが、最後に残った1人だけを仕留めようが、最後に優勝できるのであれば過程には意味はない。
言ってしまえば、このまま隠れ続けて最後の漁夫の利を得ても構わないのだ。
とはいえこれまた先に述べたとおり、倒れた奴の所持品で強化されると厄介なので全く動かないというわけにはいかないだろうが、それについては臨機応変に考えれば良い。
但し、ある人物だけはダークプリキュア自身の手で仕留めねばならない――
言うまでも無くその人物はキュアムーンライト、
月影ゆりである――
それこそがダークプリキュアの存在意義なのだ、彼女を打倒し。優勝しサバーク博士の下に戻る、他の事などこの際どうだって良いという事だ。
放送で彼女の名前が呼ばれる事は無かったが、それ自体はむしろ当然の事、故に全く気に留めていない。
とはいえ、思ったよりも速いペースである事を踏まえるとキュアムーンライトすら危ないとは僅かに思う。
何しろ、一度は倒しているわけなので、絶対に倒せない相手というわけではないのだ。
勿論、それは自分も同じ事、復活した奴には一度はしてやられている。
それを踏まえて考えれば急ぎ彼女との決着を着ける為に動いた方が良いだろう。
何しろ、下手をすればキュアムーンライトとキュアサンシャインが合流しかねない状況なのだ。
キュアマリンと合流されただけでも若干は面倒なのに余計な
オマケがこれ以上増えても厄介なだ――
「……なんだ、この違和感は?」
しかしダークプリキュアは妙な違和感を覚えていた。だが、彼女はその違和感の正体に気付かない――
「気のせいか……馬鹿馬鹿しい……」
故に気にせずC-8の森を進む――そして、
「確かこの辺りだったな」
辿り着いた場所は先にキュアムーンライト(とついでにキュアマリン)と交戦した場所、その痕跡は確かに残っている。
キュアマリンを餌にしてキュアムーンライトをおびき寄せようとしたが結局は2人を相手にする結果となり撤退を余儀なくされた。
キュアムーンライトだけならば勝てただろうが、オマケであってもキュアマリンが加わった事で実質的には敗北したという事だ。
しかもその原因の一端にはキュアマリンを餌にする為野放しにした自身も関わっているのだから笑えない。
「全く……腕の一本や二本折っておくべきだったか」
今更ながらに反省するダークプリキュアだった。どうせキュアムーンライトを仕留めれば用済みなのだからあらかじめ瀕死にしておいても問題は全く無い筈だ。
だが今更悔やんでも仕方ない。オマケだと侮りすぎていた自身の甘さを反省するだけだ。
ともかく今はこの辺りを調べキュアムーンライト達の行方の手がかりを――
「なんだ――?」
そんな中、ふと不自然に盛られた土の山を見つけた――あの辺りにいた自身がよく知っている。あの時にはそんなものは無かった筈だ――
「……!」
調べるべきか? どうするべきか? それを即決する事は出来なかった――
何故即決できない? 何も無いと断ずるなら捨て置けば良い、何かあると思うのなら調べれば良い、悩む所では無い筈だ――
何故迷う? 何故迷わなければならないのだ――
まさかあそこに埋まっているものがわかったというのか――?
いや、そんな筈は無い、何故なら名前が呼ばれなかったのだから――
大体、そもそも何故そんな予感を感じたというのだ――
「まさか……な」
動揺を振り切りその山を掘り返し始める――
掘り進める内に胸が高鳴っていくのを感じる――
そこに埋まっているのが『奴』ではない事を願い――
「なっ……」
そして少し掘り返して『それ』は現れた――
「こいつは……キュアマリン……」
それはキュアマリンこと
来海えりかの死体だったのだ――
「ふっ……」
そして胸の高鳴りが静まるのを感じつつ落ち着き払う――
全く、馬鹿馬鹿しい話だ、こんな所にキュアムーンライトが埋まっているわけもないだろうが。
幾らこの場所がキュアムーンライトと戦った場所だからと言って考えすぎにも程がある。
ああ、そういえばこいつの名前も呼ばれていた様な気がするな。どうやら違和感の正体はそれだったか。
何にせよ、キュアムーンライトで無いならばどうでも良い、全く無駄な力を使った――
そう考え足早に立ち去ろうとしたが――
何故かその場から立ち去れない――
いや、それ所か再び鼓動が高鳴ってくる――
違う――
「待て……何故だ?」
そう、明らかにおかしいのだ。
「何故、ここにキュアマリンが埋葬されている? いや……それ以上に不可解なのは……」
おそらくこの疑問はこのタイミングでキュアマリンを見つけたダークプリキュアだから気づけた事だろう――
「誰がキュアマリンを仕留めた――?」
さて――読者諸兄にもわかりやすく状況を整理しておこう、
ダークプリキュアは運良くキュアマリンを捕獲し彼女を餌にキュアムーンライトをおびき寄せようとした。
そして大体午前4時より少し前、C-8の森にてキュアムーンライトと交戦、キュアマリンが加わった事でダークプリキュアはこの場から待避――
そして午前6時過ぎ、殆ど同じ場所にキュアマリンが埋葬されているのをダークプリキュアが発見した。
以上の事から分かるとおり、午前4時より少し前の段階ではキュアマリンは生存していた。だが、それから2時間強の間に彼女は何者かに殺されそのまま所持品を奪われこの場所に死体を埋葬された事になる。
真面目な話、ダークプリキュアは警察でも探偵でも無い為、別にキュアマリンが何処でのたれ死のうがどうだって良い。
その為本来ならばこのまま捨て置いても構わない――にもかかわらず彼女は真剣に彼女の死の理由を推理しようとしている――
恐らく、その時点で彼女は気付いていたのだろう――キュアマリンを仕留めた人物の正体に――
だが、彼女は無意識の内にそれを認められないでいた――だからこそ、その事について考え始めたのだ――
勿論、危険人物の数多いこの舞台、戦いの果てに敗れ去り死する事など別段珍しくも何ともない――
――だが、この場所を調べた所、自分達が戦った以上の戦いがあったとは到底思えない。
それを踏まえるならばこの場所で戦いがあったとは考えにくい。
ならば別の場所で戦いが起こり、殺された彼女をこの場所に移して埋葬した――
――それも可能性は低いだろう、周辺を探ったがそんな痕跡は無かったし、それ以前にここまで死体を移動させる理由が無い。
「それ以前に……キュアムーンライトがそうそう簡単にキュアマリンを殺させるわけもない……」
そもそもの前提として、キュアムーンライトがいる状況でキュアマリンをやすやすと仕留めさせるとは思えないのだ。
「ならば、キュアムーンライトとキュアマリンが別行動をしている間に……いや、これもないか」
別行動をしたとも思えない。プリキュアは基本的に単身よりも複数組んで戦う事で力を増す。
手分けして事に当たる――という可能性も無くは無いが、あの状況から即刻別行動を取るとは思えない。
何よりキュアマリンは元々仲間を探していた筈だから、あそこから即刻別行動をとるのもまず考えにくい。
また単身で戦う事が厳しいと考えるならばなおのこと別行動を取る事も無いだろう。
それ以前にこの場所で埋葬されている以上、殆ど動いていないと考えるのが自然だ。まさか別行動をとったけど片方は動かなかったなんてお粗末な話もあるまい。
だが、そうなると難しくなってくる。
キュアマリンが殺されたのはこの場所だ、しかし戦いが起こった痕跡は無い。
更に言えばキュアムーンライトの存在から単純に仕留めること自体厳しい。
そこで今一度キュアマリンの死体を確認して見る。
だが、思ったよりも損傷は見受けられない――
「私との戦い以上のダメージはない……いや……これは……」
そんな中、鋭利な刃物で刺された痕を見つけた。恐らくはこれが致命傷になったと考えて良い。
刺し傷1つで殺せるかが少々疑問だが毒か何かの類を使えば不可能では無い。
それ以上の負傷の痕跡が見えなかったことから戦いでは無く完全な不意打ち、あるいは奇襲によって仕留められたという事だろう。
「だが、あのキュアムーンライトが見落とすだろうか……?」
しかしやはりキュアムーンライトの存在がネックになってくる。キュアマリン如きならば自分でも簡単に出来るがキュアムーンライトのいる状態で不意打ちなんて至難の業だろう。
「何だ……何かが引っかかる……」
それでもダークプリキュアはもう1つ引っかかりを感じていた。
「何だ……何を見落としている……」
ダークプリキュアは今一度考える。
そもそも何故、キュアマリンは埋葬されていた? それは誰かが埋葬したのだろう。
先程キュアサンシャイン達か? いや、もし彼女達がキュアマリンを埋葬したのならば先の戦いではまずこういう言葉が出るだろう。
『ダークプリキュア、お前がキュアマリンを?』
キュアマリンの死を知れば確実に動揺する。その上で敵対している自分が現れれば真っ先にこういう言葉が出なければおかしい。
にもかかわらずキュアサンシャインはその類の発言を一切せず、それどころか敵対しているにしては奇妙な発言を繰り出してきた。
その発言についてはこの場では置いておくが、何にせよキュアサンシャイン達は彼女の死を知らない。つまりは埋葬していない事になる。
「それ以前に一番に考えられるのはキュアムーンライト……待て」
ここでキュアムーンライト視点で考えてみよう。
何かしらに奇襲を受けキュアマリンが致命傷を負ったのであればまずどうするのであろうか?
最初に行うのは襲撃者への対処、そして――負傷したキュアマリンを――
改めて、キュアマリンの死体を確かめる――そして――あるべき筈のものがない事が分かった。
「手当てした痕跡が全く無い……どういう事だ?」
そう、キュアマリンの死体には応急処置を行った痕跡が無かったのだ。
奇襲された時点で既に助からなかった?
いや、それにしても自分との戦いで消耗した時点である程度の応急処置は必要だろう。それすら行わなかったのは不可解としか言い様が無い。
大体、キュアムーンライトの性格を考えるならば、例え治療の見込みが無くとも最善を尽くすだろう。なのに最善を尽くさなかったという事は――
「最初から治療を行ってはいなかった……つまり、キュアムーンライトはキュアマリンを見捨てた……」
いや、見捨てたというのは少し違うだろう、恐らくは――
「違う……キュアマリンを殺したのは……キュアムーンライトだという事か……」
導き出されたのは――たった1つの真実――
だが、キュアムーンライトが下手人だとするならばつじつまはあう。
あの戦いの直後で安堵したキュアマリンを不意打ちで殺すのは容易い、
死体を埋めてすぐに立ち去ればキュアムーンライトが殺した事などまず気付かない。
殺し合いに乗った参加者が襲撃してきて殺されたよりもよっぽど可能性が高い、というよりキュアムーンライトが存在する以上はまず不可能に近い。
しかしこれならばその問題はクリアだ、何しろ一番の障害と思われたキュアムーンライト自身が下手人なのだからだ。
手当ての跡が無くて当然だ、キュアムーンライトは最初からキュアマリンを殺すつもりだったのだ、そんなことする必要も無い。
分かってしまえばなんてことの無い話だ、キュアムーンライトがキュアマリンを裏切って殺したというお話だ。
ダークプリキュアは急速に頭が冷めていくのを感じた。そう、別になんてことない話なのだ、キュアマリンが誰に殺されたってどうだって良いのだ、
キュアマリンがキュアムーンライトに裏切られ殺された所で――
「……けるな……!」
内から何かが湧き上がってくる気がした――
「巫山戯るな……! キュアムーンライト……!! 何故貴様が仲間を殺すのだ!!」
感じていた苛立ちは頂点に達した。
憤っていたのだろう――キュアムーンライトが信頼する仲間を裏切り惨殺した事を――
最初見た時点でそれに薄々気付いていた――ある意味では直感に近いものだったのかも知れない。
だが、それを認めたく無かったのだ。だからこそ、あらゆる可能性を考えそれを否定しようとした。
しかし考えれば考える程それが一番可能性が高い事を認めざるを得なくなってしまうのだ。
それがどんなに信じがたい真実であったとしても――
ある意味で言えばダークプリキュアにとってキュアムーンライトは絶対的な存在とも言える。
ダークプリキュアが闇、そして悪の象徴であるのならば、キュアムーンライトは光、そして善の象徴なのだ。
故にキュアムーンライトは自身を中心に仲間を集め闇を打ち払う光となるのは至極当然のことだ、
だが、その彼女がそれに背き仲間を惨殺する――それがキュアムーンライトの光なのか? 違うだろう、そんなのは光ではない! 断じてない!
ダークプリキュアが打倒したかったキュアムーンライトはそんな奴だったのか? そんな筈無いだろう?
サバーク博士が自身を生み出してまで打倒したかったキュアムーンライトはそんな愚かな行いをする人物だったのか? そんな事は絶対に無い。
言ってしまえばキュアムーンライトはダークプリキュアだけでは無くサバーク博士まで裏切ったという事なのだ。
「許さんぞ……キュアムーンライト、サバーク博士は仲間を裏切り惨殺する様な奴を倒す為に私を産みだしたわけではない!! そんな奴の為に……サバーク博士は……!!」
最早怒りは留まらなかった――キュアムーンライトに対する憎悪や憤怒は最高潮に達していた。
このまま怒りに任せ全てを破壊し尽くそうか――そう考えたが――
『あなたがゆりさんの『妹』だっていうことも! あなたのお父さんがあなたを愛していたことも知ってる!』
『サバーク博士は、あなたを本当の娘だと思って愛してた! あの人の愛は、ゆりさん一人のものじゃなかった!』
脳裏に響くキュアサンシャインの言葉がそれを踏みとどまらせた――
そうだ何故自分はここまで怒りを感じているのだ?
サバーク博士を裏切った事が許せない? これではまるでキュアムーンライトも自分と同じサバーク博士の『娘』で自分の『姉』だから怒っているみたいではないか。
馬鹿馬鹿しいではないか、奴と自分は『光』と『闇』、どちらかがどちらかを消し去るまで戦うだけのものでしか無いか。
「何をやっているんだ……私は……奴と私が姉妹であるわけがないのに……」
怒りは急速に冷め、何時もの冷静な面持ちに戻る。
そう、例えキュアムーンライトが仲間を殺そうと関係は無いのだ――どちらにしても自分が倒すべき相手なのだから――
「そう……真実はたった1つ……私と奴は光と影、光が影を消し去る、あるいは影が光を飲み込み月が1つになるまで戦うしかないのだ……そして最後に勝つのは私だ!」
気が付けばキュアマリンの死体は元の様に埋葬されていた。無論、ダークプリキュアが行ったわけだが彼女にしては些か不可解な行動だろう――
「……なんだ、死んだのではないのか?」
ふと振り向くと、キュアマリンことえりかが立っているのが見える。どうせ只の幻なのだろうがダークプリキュアにとってはどうでも良い話だ。
そんな中、彼女は口を開き何か言おうとしている――
「何故、埋葬したのかだと……? ふん……只の気まぐれだ」
その行動の理由はダークプリキュア自身も実の所わかっていなかった。気が付いたら元の様に埋葬していたとしか言い様が無い。
案外、キュアマリンを惨殺したキュアムーンライトに対する意趣返しなのかも知れない。
どちらにしてもキュアマリンを哀れんでという事ではないのは確かだ。
「安心しろ……すぐに貴様の仲間……キュアブロッサムとキュアサンシャインも同じ所に送ってやる……もっとも、私に出会う前に殺されているかも知れんがな……大人しくその様を見物しているんだな」
これ以上、死人と話す趣味など無い。故にこれ以上は振り返らず歩き出す。
結局の所すべき事は変わらない。キュアムーンライトを倒し、この殺し合いに優勝しサバーク博士の所に戻る――それだけだ。
だが――本当に何も変わらなかったのだろうか?
なぜ、キュアマリンに対し『キュアムーンライトも同じ所に――』とは言わなかったのだろうか?
やはり、どんなに認めずとも、キュアムーンライトに対する憤りは完全には収まらなかったのだろう。
勿論、キュアサンシャインが語った通り自分と彼女が姉妹である事を認めるつもりなど全く無い。
普通に人間として生まれた彼女と人形として作られた自分では生まれ方が全く違う。
だが、こういう考え方もあるのではないか? 生まれ方が違う以外に違いはあるのかと――
自身が生まれた事にサバーク博士と彼女が関係した事は揺るぎない事実なのだ。勿論、それを親子とか姉妹と呼んで良いのかは全く別問題ではあるが――
そうでなければここまで強くキュアムーンライトを意識するわけもないし、彼女の凶行にここまで憤る事も無い。
とはいえ、今ここでそれを言った所でダークプリキュア自身決して認めはしないだろう。
どちらにしても、ダークプリキュアのすべきことに変わりはない。
そう、今すぐにでもキュアムーンライトを追跡せねばならない。
だが、問題は何処に向かったかだ――
まず、キュアムーンライトがキュアマリンを殺した理由は不明(というかダークプリキュア的に考えたくも無い)だが、殺し合いに乗っている事は確実。
それ故、このまま仲間を探すという可能性は低いだろう。現状でキュアサンシャイン達と合流していないことからも単独で動いていると考えて良い。
とはいえ、何も知らないキュアサンシャイン達と合流されればどちらにしても面倒である事に違いは無い為それは避けるべく急いだ方が良い。
「まず南方面には向かってはいない筈だ」
先の戦いの後ダークプリキュアはE-8まで移動し、それから戻る形でC-8まで移動した。その道中で遭遇していないのならば南方向に移動したとは考えにくいだろう。
となれば、それ以外の方向――
では、何処に向かう?
ここで彼女の視点に立って考えてみよう。彼女が優勝狙いであるならば、参加者を可能な限り迅速に仕留めに向かう筈だ。あのタイミングでキュアマリンを仕留めたことから考えても、積極的に動くだろう。
となると一番に考えられるのは人通りが多く人が集まりそうな場所――
「B-7のホテル……あの辺りか?」
他の参加者の動きを踏まえて考えても、参加者は隅にある灯台よりも道中にあるホテルに集結しやすい。
参加者を一網打尽にする場所としては相応しい場所だろう。
ダークプリキュア的に人が沢山いる場所に向かいたくはないがキュアムーンライトが向かうならば話は別。例えどんな障害があろうとも向かうべきだろう。
とはいえ絶対的な確証があるわけではない。
「あれがあればこんな苦労はなかったのだがな……」
それはキュアムーンライトが所持していたプリキュアの種の片割れである。彼女を一度倒した時に確保していたもので、互いに共鳴し合うのを利用して場所を探し出した事もあった。
だが、どういう理由か今はそれはない。とはいえないものをねだっても仕方ないだろう。
例えそれが無くても関係は無い、必ず見つけ出す事に違いは無いのだ。
主催者共はその代わりにパラシュートらしきものを支給してはくれたが正直何故こんなものを自分に支給したのか理解に苦しむ。何しろ自分が使う状況が想定できないのだ。
というか、説明書きでは『天道なびきが火車王金之介に10円で売りつけようとした』と書いているがそもそも天道なびきは誰なのだと言わずにはいられない(注.貴方が最初に襲撃した少女(
天道あかね)のお姉さんです)。
そうして足早に歩を進めていく――そうしていく内に
「!!」
何かを感じ目を閉じて耳に全神経を集中させる――そして、
「聞こえるぞ、戦いの音が――」
方向はB-8の辺り、そこで何者かが戦っている音がかすかに聞こえた――
誰が――いや、理由はわからないが確信していた――
「あの近くにキュアムーンライトがいる――」
そして程なくして戦いの音は止んだ、決着がついたのだろう。
だが、あの戦いでキュアムーンライトが負けるわけもない。恐らくはすぐさまホテルに向かうのだろう。
ならば自身も急がねばならない、翼を展開し足を速める――
漆黒の追跡者(チェイサー)は走る――月光をこの手に掴む為に――
自身と彼女の関係がどのようなものであっても関係は無い。互いが健在である限り、その戦いの行く末にそのたった1つの真実は現れる事だろう――
だからこそダークプリキュアは彼女を何処までも追い続ける――
「追い続けてやる……奴をこの手で倒すまでな……!!」
【1日目/朝】
【C-8/森】
【ダークプリキュア@ハートキャッチプリキュア!】
[状態]:疲労(中)、ダメージ(小)、キュアムーンライトに対し強い憤り
[装備]:無し
[道具]:支給品一式、10円パラシュート@らんま1/2、ランダムアイテム0~2個
[思考]
基本:キュアムーンライトを倒し、優勝してサバーク博士のもとへ帰る
0:ホテル方向に向かう。
1:キュアムーンライトは次こそ倒す。
2:キュアサンシャインの言葉が気にかかる。
3:キュアムーンライト以外の参加者については現状能動的に襲撃するつもりはない。
[備考]
※参戦時期は46話終了時です
※いつきの「少し未来から来た」という発言や「ゆりの妹」などのキーワードに少なからず動揺しています
【支給品紹介】
10円パラシュート@らんま1/2
ダークプリキュアに支給、
勿論、何の変哲も無い普通のパラシュート。
作中においては10円を使わせる勝負においてなびきが落下中の火車王金之介に対し10円で売りつけようとした。
但し、金之介は結局買う事は無くかった。それを見ていた2人の反応。
あかね「恐ろしい男…ついに10円パラシュートを買わなかった…」
乱馬「おれはタダで渡さなかったなびきの方がコワい」
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最終更新:2013年03月15日 00:16