森をゴーです! 仲間捜しすすみません!! ◆7pf62HiyTE
キュアブロッサムこと
花咲つぼみが記憶する限りの話だが――
サラマンダー男爵は元々砂漠の使徒の王デューンが生み出した幹部の1人だった。
だが、彼は自身の存在意義やデューンの心を知りたいと願っていた。砂漠の使徒としては異端の考えを持つ彼をデューンは追放した。
その後最初のプリキュアともいわれるキュアエンジェによって長き時の間封印された――
故に彼の心は砂漠の使徒やプリキュアへの復讐心に満ちており、砂漠の使徒の本来の目的である砂漠化ではなく、世界の破壊を目的と――
――していたのだろう。だが、彼の封印を解いた1人の少年――名前すら無い彼との出会いが彼を変えた――
サラマンダー男爵の力はキュアエンジェによって世界各地によって分散されていた。それ故に、数年間本来の力を取り戻す為、少年――男爵はルー・ガルー(狼男)と名付けた彼と共に旅を続けていた――
ルー・ガルーいや、以後は彼のこころの花からつぼみが名付けたオリヴィエとでも呼ぼうか、
オリヴィエは親を求めていた、それ故にサラマンダー男爵にそれを願い2人は旅をした。サラマンダー男爵の目的を踏まえるならば、男爵はあくまでも彼を利用していただけだったのだろう。
だが、最初はそうであっても、何時までも同じだったのだろうか?
いや、きっと違うだろう。それはサラマンダー男爵自身が証明してくれた――
彼自身の肉体は長きに渡る封印によってボロボロになっていた。それ故そう遠くない未来限界を迎えると考えて良い。
『どうせ一人に戻るんだ、わざわざ知らせてやる事もないさ……』
直接聞いたわけではないがそう口にしていたらしい――本当に利用していただけならばそういう風に口に出来るだろうか?
つぼみはそうは思えなかった。彼はきっと、彼なりにオリヴィエの事を想っていたのだろう――それ故の不器用な発言だったのだろう。
サラマンダー男爵は『変わった』のだ――オリヴィエとの出会いによって――
つぼみの記憶する限りでは、あの戦いの後オリヴィエと再び旅をしている筈であり、力の源ももう失われている以上、大した事は出来ない筈。
とはいえ、
一文字隼人や
石堀光彦によって偽物、再び心変わり、そもそもプリキュアとの戦いの前から連れてこられている等、考えられる可能性は幾つか存在する事は触れられていた。
だが、つぼみとしてはやはり一番に考えられる理由はオリヴィエを人質に取られている――それしかないと考えていた。
これならば、プリキュアとの戦いの前から連れてこられていようとも協力する理由付けとしては十分だ。つぼみ達と出会うよりもずっと前から2人は旅を続けていたのだから――
勿論、その前提を否定して偽物、心変わり、オリヴィエが封印を解く前から連れてこられた可能性も否定できない。だがそれは主催陣がそれだけ強い力を持っている事を意味している事に違いはない。
そもそもの前提として主催側がわざわざサラマンダー男爵を組み込んだ事自体が疑問ではある。
前述の通り、封印されていたせいで殆ど力を発揮できず、肉体的にも限界が近い者を組み込んでも仕方ないだろう。それならばそれこそ見せしめのクモジャキーの方が都合が良い。
主催側がわざわざ力を集めておいた、取り戻してくれたとしてもそこまでしてやる理由がいまいち不明瞭だ、というより高確率でオリヴィエが必要になるのに少々面倒ではないのか?
何にせよ、キュアブロッサムとしては一度宣言しておくべきだろう。
下手に抵抗すれば首輪が爆発される事から考えて盗聴の可能性はある。しかし、多少の抵抗の意志を示した所で反応しない辺り、核心に触れた発言をしない限りはまず問題は無いと考えて良い。
故に――
「サラマンダー男爵、貴方が私達の事を知っているかはわかりません……だけど貴方の大切なオリヴィエは必ず助け出します、だから諦めず私達の事を信じて待っていて下さい」
明確な宣言である。
勿論、この仮説自体絶対の保証は無い。しかし、オリヴィエ人質説自体は既に口にしている為、今更それを前提とした宣言をした所で影響は無いだろう。
これはキュアブロッサムなりのサラマンダー男爵への配慮なのだ。
状況的にサラマンダー男爵は敵にならざるを得ない。恐らくは彼を敵視している参加者は数多くいるだろう。
色々な意味で追い詰められているサラマンダー男爵の支えになれば――そう考えての事である。
勿論、全く違う真相だったらこの宣言自体道化でしかないのだが――考えても仕方なかろう。
「はぁ……はぁ……」
プリキュアの力ならば数キロ程度を短時間で走り抜ける事もそこまで難しいわけではない。C-2を出発して数十分でC-3に辿り着いた。
「ここは……」
その場所は川岸――だが、何も無い川岸では無く、戦いの痕跡があった。
地面は荒れ、木々は折れ、川も所々溢れている始末だ。
この場所でも戦いが起こっていたという事だ。
周囲を見回したが死体といったものは見受けられない。川に落ちて流されたというものでない限りは高い確率でこの戦いで死者は出なかった――そう信じたい所だ。
とはいえ、自身が駆けつけていたならば違う結果もあったのだろうと思うと少々やりきれない。
実際、この地に来てから最初の放送までつぼみ自身、プリキュアの正体を一切隠し、関係する情報についても全部伏せていた。
そのお陰で最初に遭遇した石堀からは何の力も無い普通の女子中学生として扱われ実質彼に保護される形で何も出来ないでいた。
それ故に、D-3辺りで巻き起こった気柱を目の当たりにしても何も出来ず黙認せざるをえず、一文字が
三影英介にトドメを刺そうとした時も説得しきれずそのまま仕留められる結果となった。
無論、正体を明かし何の力も無い少女ではなく力を持った戦える少女である事を明かしたからといって結果が好転したとは言いがたい。
例えばD-3に向かうとしても逆に石堀を1人放置するわけにもいかなかっただろうし、三影の件についても一文字の方が彼について詳しかった以上はこれまたどうにもならなかっただろう。
とはいえ、どちらにしても最善を尽くしていなかった事に違いは無い。最善を尽くした上での結果ならともかく、最善を尽くしていなくてこの体たらく、その責任が全く無いとは言いがたいだろう。
しかし悔やんでいても仕方あるまい。悔しさがあるとはいえ、俯いてばかりでは状況が好転することもない。
行動を起こさなければ何も変える事など出来ないのだ――
「あ、そういえば……」
今更な話ではあったが、キュアブロッサムの手元には三影の所持していたデイパックがあった。
鯖だけでは心許ないという一文字の配慮なのだがよくよく考えてみれば中身を確認していない。
今後の事も考え確認をしておいた方が良いだろう。
とはいえ、物によっては考え物ではある。
殺し合いに乗っていないキュアブロッサムにしてみれば殺傷能力の高い武器はかえって困りもの、使い様の無い道具をもっていても仕方なく、下手に危険人物の手に奪われても困る。
ガイアメモリの様な道具にしても得体の知れない物を使いたくはないし、そもそもプリキュアに変身できるならそれで十分だろう。
かといって自身の支給品の様に鯖を支給されても扱いに困る。予備の食料にしても調理すらしていない生ものを支給してどうしろというのだ?
「男爵……多分違うと思いますけど、これ貴方が考えたわけじゃないですよね?」
念の為、サラマンダー男爵に確認を取る様に口にした。流石にサラマンダー男爵が『よし、キュアブロッサムには鯖を支給してやろう』なんてやっていたら本気で堪忍袋の緒が切れそうだ。
当然と言えば当然だが確認取った所で反応があるわけも無い。というか実際にその通りであってもわざわざ教えてくれる程親切でもなかろう。
ともかくどうするにせよ一度確認せねばなるまい。
だが、1つ懸念があった――使える道具であれば既に三影が使用済みだったのではなかろうか――
何にせよ開けてみれば全てはわかるだろう。そう考えてデイパックを開ける――
「ナイフ……ですか?」
そうリアクションを取りながら取り出したるは6本のナイフ的なもの。
ナイフ的――という言い方になるのはそのナイフの形状が通常のものと異なっていたからだ。
正直な所、ナイフ自体は武器となるだけではなく使い所が割とあるので有り難――いと言えるのか?
まず形状が特殊だから普通のナイフ同様に使えと言われても困る(それ以前につぼみ自身ナイフ技能を持っているわけではない)。
しかも(使うつもりは無いが)武器として使うには少々心許ないにも程がある。
三影がわざわざこれを使わなかったのも頷けるだろう。普通に殴った方が早い。
一応、説明書きが付属していたので確認した所、スティンガーというものでチンクという人物が使用していたとある。
妙な名前――といえばそれまでだが、キュアブロッサムには微妙に聞き覚えがあった。
「確かフランス語で5がcinq(サンク)だった筈ですよね、スペイン語やイタリア語も似た様なものだった筈です……もしかしてそっちの人……ですか? でも数字を名前にするのは……」
疑問は晴れないもののキュアブロッサムの推測は実に正しくチンクの名前自体5を意味している。とはいえ、今の所それについてはこれ以上意味は無い為これ以上は触れない。
ちなみにチンクは自身の固有技能により金属を爆発物に変化させる能力を持ち、このスティンガーはその力を有効に生かす為の武器である。
効率的に目標を仕留めるのに都合の良い爆弾、こう言えばそれがどれだけ有効か素人目にもわかりやすいだろう。
とはいえ、その能力が無い限りは変わった形状のナイフ以上の意味は無い。
続いて取り出したのは――
「眼鏡……ですよね?」
今度は何の変哲も無い眼鏡である。いや、それは外見だけの話で何か特殊な力を持っているのかも知れない。例えば透視能力を持っているとかレーダー機能を備えているとかと言った――
というわけで試しにかけてみる。
「うっ……」
あまりにも視界が歪んで見えて少々気持ち悪くなっただけだった。
いや、別にかけた者を不調にするという力があるというわけではなかろう。
要するに――
「これ、只の度がきついだけの眼鏡じゃないですか!!」
キュアブロッサムことつぼみ自身も眼鏡を使用しているからわかるのだが、眼鏡というものは視力を矯正する為のものだ。
それ故に、使用者の視力に合わせて眼鏡の度も異なり、合わない眼鏡をかけたところで歪んだ光景しか見えないのである。
だが、手元にある眼鏡を懸けた時、想像を絶する程に歪んだ光景が見えた。それはそれだけその眼鏡の度がきついという事だろう。
言い換えれば、それを使用しなければならない人物の視力は想像を絶するまでに悪いという事、眼鏡無しにマトモにものを見る事など出来ないだろう。
幸いこちらも説明書きがあった。それによると――『ムースの眼鏡』――ただそれだけである。
ちょっと待て、要するにムースという人物が使っている眼鏡以外の情報は無いという事ではないか。
「ムースって一体誰なんですか? お菓子の事ですか? それとも整髪料の事ですか?」
こう口にせずにはいられない。そう言えば
シャンプーという変わった名前の人物もいたからその関係者――という都合の良い話も無いだろう。
それ以前に参加者ではない人物の眼鏡を支給した所で何の意味があるのだ? というかこんなもの三影じゃなくても持て余すだろう。そこまで視力のきつい人物がいるとも思えない。
何となく本気で堪忍袋の緒が切れそうになるがまだ全て確認したわけではない。全てはそれが終わってからだ。最後の1つは――
結論から言えば明らかにハズレであった――三影にしてみてもそうであり、それは恐らく殆どの全ての参加者にとって意味のあるものではないだろう。
始末の悪い事にこちらに関しては他2つと違い説明書きすら存在していない。真面目に主催者の正気を疑いたい所だ。
だが、キュアブロッサムはその支給品に関しては悪くいうつもりは全く無かった――
その支給品とは――
花である、アマリリスの――
「花言葉は『誇り』……それと『内気の美しさ』……」
その花はある参加者が好きな花である。とはいえ、この地においてはそれ以上の意味を持たないし何故支給されたのか理解に苦しむとしか言い様が無い。
それでもその美しさに違いは無く、キュアブロッサムはその花を悪く言うつもりなど無かった――
長々と留まっても仕方あるまい。川の上流に向かった痕跡があった。このまま痕跡を辿り上流に向かえば問題の人物に会えるかもしれない。
キュアブロッサムはそう考え再び走り出す――
可能であれば同じプリキュアであるキュアサンシャインこと
明堂院いつき、キュアムーンライトこと
月影ゆりと合流したいところだ。
彼女達と力を合わせればどんな敵が相手であっても――
他にボトムと戦った時に共闘した
桃園ラブ他4人自分達とは違うプリキュアとも合流し――
「あれ……?」
ちょっと待て、何か引っかからないか?
そうだ、確かサラマンダー男爵の事について話した時、一文字から気になる事を聞いていた筈だ。
『沖みたく過去から連れてこられたって可能性もあるぜ?』
詳しくは知らないが、一文字のいた世界ではBADANという悪の組織が存在していて、一文字は彼等との戦いの真っ最中らしい、だが仲間である
沖一也はそれより数ヶ月前BADANが現れたタイミングで連れてこられたらしい。
それが自分達にも適応されるとしたら?
「駄目ですよそれじゃ……いつきやゆりさんをアテにする事が出来ないかもしれないって事じゃないですか……!」
そう、いつきがプリキュアになったのはつぼみがプリキュアになってから数ヶ月経った頃でありそれまでは普通の友人でしかなかった筈だ。
またゆりに関しては
ダークプリキュアとの戦いに敗れたことで長い間プリキュアの力を失っており、その力を取り戻して復帰したのは比較的最近の事である。
彼等がタイミング悪くプリキュアの力が無い時期から連れてこられた可能性を何故想定しない? 幾らなんでもその時期の彼女達をアテにするつもりなど全く無い。
問題はそれだけではない。一文字から仲間の情報は聞いているがその中に
村雨良という人物がいる。
だが、一文字視点では仮面ライダー10号仮面ライダーZXであるという風に語られていたが、沖視点ではまだBADANの尖兵ゼクロスであったらしい。
つまり、村雨がBADAN時代から連れてこられている可能性もある事だ。一文字からはそうなっていたらぶん殴ってでも止めてやれという風に言っていたわけだが――
が、実はこれに関してもつぼみ達が無関係とも言えないのだ。正確にはつぼみ達とは別のプリキュア、つまりラブ達の事である。
「聞いた話じゃせつなって昔……」
そう、ラブ達の仲間である
東せつながかつてラブ達の戦っていたラビリンスの幹部イースだったのだ(むしろイースが本名)。
紆余曲折を経てプリキュアになったらしいのは聞いたが彼女がイース時代から連れてこられている可能性も無いわけじゃない。最悪の場合は彼女と戦う羽目になるのかも知れない――
とはいえ、そんな最悪なケースを今から考えても仕方あるまい。ただ、それでなくてもラブ達が必ずしも自分達を知っているわけではないという事は忘れてはならない。
要するにボトムと戦う前から連れてこられているならばそうなっているわけなのだから。
いきなり『私は貴方と同じプリキュアです』なんて言われて素直に信じてくれるとも限らない。驚いてくれるだけで済めば良いが過度な期待は出来ないだろう。
それでも同じプリキュアならば信頼には値する事に違いは無い。可能ならば合流したい所ではある。
また、仮にいつきやゆりがプリキュアの力を持っていない時期から来たとしても過剰に心配する事も無いだろう。
かつてのボトム戦の時、両名もあの場にいて自分達の戦いを応援してくれた事は確かであり。
それで無くても元々自分達よりもしっかりしているのだ、無茶する事無く彼女達に出来る範囲でこの殺し合いを止めるべく動いていく事だろう――
それなのに――
拭いきれない違和感を覚えていた――
それは、無意識の内に最初の場にいたゆりの顔が微妙に焼き付いていたからだろう――
この世の全てが終わったかの様な顔をした彼女の――
そして――
「ガバババァァ……ボボボボボァァァ……!!」
気が付いたらキュアブロッサムは川の中にいた。
急いで岸に上がり口の中に入った水を吐き出しつつ息を切らす。
「はぁ……はぁ……」
事のいきさつを簡単に説明しておこう。
痕跡を追ったは良いが途中でそれは途切れていた。それでも進行方向に間違いはないとそのまま進んでいたが――
いきなり穴に落ちてそのまま藻掻いている内に――川まで出てしまったのだろう。
「私……堪忍袋の緒が切れました!!」
思わずそう口にしてしまった。
それもそうだろう、川に繋がる落とし穴だったのかも知れないが、それにしては随分と無駄に手が込んでいる。
というか罠のつもりじゃないのだとしたらそれこそ何の為に掘ったのか理解に苦しむ。
嫌がらせにしてももうちょっとやり方があるだろう。
読者諸兄はもうお気づきかもしれないが先の気柱にしろ戦いの痕跡にしろ川に繋がる穴にしろ、これらは全て1人の参加者によって引き起こされたものである。(ついでに前者2つには村雨も関わっている)
そう、ムースの仲間(?)である
響良牙である。つまり、彼女は図らずも彼の痕跡を追ってしまっていたのである。
だが、このまま進んだ所で良牙に会える可能性は低い。というのも良牙は結局全く違う方向に進んでしまったのだ。
それ故に、幾ら堪忍袋の緒が切れようともそれをぶつける相手はいないというお話なのだ。
とはいえ、良牙の痕跡を追う形になったお陰で幸運か不運かどうかは不明瞭ではあるもののある偶然に恵まれた。
実はキュアブロッサムの進行方向次第ではD-3にて危険人物である
溝呂木眞也がいたのだ。更に、キュアブロッサムの進行ルートを横切る形でノーザによって殺戮人形と化した
スバル・ナカジマがD-3へと向かっていた。
つまり、結果的に彼等との遭遇を避ける事が出来たというわけだ。危険人物を放置する事になったのは不運かもしれないが、キュアブロッサム単独では分の悪い相手との戦いを避ける事が出来たのはある意味幸運とも言える。
幸いな事に溝呂木(及び操り人形にされた
美樹さやか)もスバルもキュアブロッサムが通り抜けた事には一切気付いていない。キュアブロッサムの進行があまりにも早かった、精神的な動揺等といった理由である。
当然のことながらキュアブロッサムの方も彼等の存在には一切気付いていない。
だが、逆に冷静に考えて見て欲しい、これは少しおかしくないだろうか?
キュアブロッサムはC-2から川の上流に向かう形でD-4までやって来た。ここまで約1時間強程度でだ。
勿論、プリキュアの能力があればそれだけの時間で10キロ近くを走り抜ける事は十分可能だ。
しかし出来るからそのままやって大丈夫という問題では無い。そもそもキュアブロッサムは何が目的で走っていたのだ?
それは森の中にいるであろう参加者達と接触する為である。
そう、参加者と接触する事が目的なのに、溝呂木達の存在に気付かず走り抜けた事が問題なのだ。別に彼等は自分達の存在を隠そうとしていたわけではない。
それなのに気付かないという事は探索をおろそかにしていたと言わざるを得ないだろう。実際、もう少し冷静にD-4を集中的に探索していれば
冴島鋼牙、及び
一条薫と接触できた可能性もあったのだ。
とはいえ、それもある意味では仕方ないだろう。何しろ6時間も何もせずにいたのだから、それを取り戻す為に焦燥していたとしても不思議はあるまい。
目先の事に若干視野が狭くなってついつい見落としてしまったという事だ。
そしてそれが穴に落ちてそのまま川に流されそうになるというお粗末なミスに繋げてしまったのだ。笑えない話である。
そんなキュアブロッサムではあったが、流石に落ち着いて歩きながら考えている内に自身が少々熱くなりすぎてしまっていたと思い直した。
「もしかしたらえりかが少し頭を冷やさせる為にしてくれたのかもしれません……」
考えすぎかもしれないが、
来海えりかが死してなおつぼみ達を助ける為に力を貸してくれたのではと思うことにした。
「でも危ない所でした、プリキュアに変身してなかったらあのまま溺れ……て……?」
ここに来て、1つ気になる事があった。
何故自分達はプリキュアに『変身』出来るのだろうか?
いや、そもそもそれ自体がある意味おかしいのだ。
元々自分達はパートナーの妖精(つぼみの場合はシプレ)がプリキュアの種を生み出し、それをココロパフューム等に装填する事で変身を行っていた。
現在ゆりはパートナーコロンを失ってはいるが、いた当時は彼が種を生み出していた筈である。
つまり、本来の流れならばパートナーがいなければならない筈なのだ。そうしなければプリキュアの種を用意できないわけなのだから。
だが、この場では最初から相当数のプリキュアの種が手元にあり、現在のゆり同様パートナー無しでもプリキュアへの変身が可能となっている。
冷静に考えてみればおかしくないか? これではまるで最初からプリキュアに変身して戦えと言っている様なものではなかろうか?
それ以前に、一文字達にしても皆仮面ライダーや怪人への変身能力を持っていた。
自分達は変身する事で戦う力を得ている――だがそれは主催陣にとっては喜ばしい事では無い。
殺し合いに反逆するであろう戦力をそのまま放置するのはリスクが大きい、サラマンダー男爵からプリキュアの情報は聞き出せる筈だから、障害にしかならないのは予想がつくはずだ。
その抑止力としてダークプリキュアなど危険人物も参加させたのだろうがそれにしても変身させるメリットが薄い。
勿論、中には石堀の様に変身能力を持たない物もいる(勿論、つぼみ達同様何かしらの理由で隠しているのも否定できない)だろうが――
だが、連中は更にガイアメモリを使えば超人に『変身』出来ると説明したが妙に『変身』というキーワードを強調していた様な気がする――
まるで、変身能力を駆使して戦えと言わんばかりに――
「どうしてあの人達は『変身』に拘るん……ですか?」
無論、改造人間である一文字達の存在を踏まえるならば変身出来る事が必ずしも良い事では無いし、中にはデメリットしか無い変身もあるかも知れない。
ガイアメモリによるドーパントへの変身にしても良いものとはどうしても思えなかった。
わかっている事は、『変身』出来る参加者を中心に集め、『変身』能力を駆使して戦え、という事である。
何故、主催者は『変身』に拘――
「違います……『変わる』事に何か意味があるのではないんですか……?」
『変身』、それは結局の所、身を変える事である。言葉を変えるならば『変貌』、『変態』と言っても良いがどちらにしてもその意味は『自身を変える』事である。
連中の口ぶりから考えて――この殺し合いにおいては『変身』あるいは『変わる事』に意味があるのではなかろうか?
キュアブロッサムがその事に気付いたのは、彼女自身が元々自身の内気な性格を変えたいと考えていたからだろう。外見にしろ中身にしろ変わる事である事に違いはない。
『変わる事』、それがこの殺し合いのキーワードではなかろうか?
勿論、これは何の確証も無い只の仮説でしか無く、仮に仮説通りであったとしてもそれが何の意味を持っているのかは不明。
これについては他の参加者にも聞いた上で判断したい所ではある。
そもそもこの推測自体全くの的外れである事も否定できないのだ。それでも頭には入れておいた方が良いだろう。
そうして考えつつ周囲を見回しながら進んでいく内にD-5まで辿り着いた様だ。
時計を確認したがまだ7時50分ぐらい。思っていた以上にハイペースで進みすぎた気がする。
待ち合わせが18時である事を考えると急ぎすぎても仕方あるまい、当面はこの周囲を探索すべきであろう。
丁度都合良く川沿いを進行している。今はこの辺りを中心に――
「あれ……?」
そんな時だった――比較的遠くに白い何かが見えたのは――
その白い何かは川岸へとふらつきながら歩いている様に見えた――
「アヒルさん……ですか?」
遠目故に断言は出来ないが、それはアヒルの様に見えた。
だが何故こんな所にアヒルがいるのだろうか?
キュアブロッサムは知らない、そのアヒルが例の眼鏡の持ち主であるムース同様水を被るとアヒルに変身する体質となっていた事を――
キュアブロッサムは知らない、そのアヒルがその体質になる原因に例の花を好きだった少女の兄が関わっている事を――
キュアブロッサムは知らない、そのアヒルは今はまだ自身の身に起こった事を把握しきれずその事を知り数分後に悲しみの鳴き声をあげる事を――
キュアブロッサムは知らない、そのアヒルが自身の全てを失い絶望している事を――
キュアブロッサムは知らない、この状況に対する最善手を――
「……どうしたらいいですか?」
【1日目/朝】
【D-5/川岸】
【花咲つぼみ@ハートキャッチプリキュア!】
[状態]:健康、加頭に怒りと恐怖、強い決意、キュアブロッサムに変身中
[装備]:プリキュアの種&ココロパフューム
[道具]:支給品一式×2、鯖(@超光戦士シャンゼリオン?)、スティンガー×6@魔法少女リリカルなのは、ムースの眼鏡@らんま1/2、アマリリスの花@宇宙の騎士テッカマンブレード
[思考]
基本:殺し合いはさせない!
0:遠くに見えるアヒルさん(丈瑠)に対しどうする?
1:仲間を捜す、当面はD-5辺りを中心に探してみる。
2:南東へ進む、18時までに一文字たちと市街地で合流する
[備考]
※参戦時期は本編後半(ゆりが仲間になった後)。DX2および劇場版『花の都でファッションショー…ですか!? 』経験済み
そのためフレプリ勢と面識があります
※溝呂木眞也の名前を聞きましたが、悪人であることは聞いていません。
※良牙が発した気柱を目撃しています。
※プリキュアとしての正体を明かすことに迷いは無くなりました。
※サラマンダー男爵が主催側にいるのはオリヴィエが人質に取られているからだと考えています。
※参加者の時間軸が異なる可能性があることに気付きました。
※この殺し合いにおいて『変身』あるいは『変わる事』が重要な意味を持っているのではないのかと考えています。
【支給品紹介】
スティンガー@魔法少女リリカルなのは
三影英介に支給、
チンクの固有武装、ただの金属製ナイフではあるが彼女は自身の固有技能を使い強力な武器として運用している。
勿論、チンク以外にとっては変わった形状のナイフでしか無い。今回は6本セットで支給。
ムースの眼鏡@らんま1/2
三影英介に支給、
ムースの眼鏡、彼は眼鏡が無ければすぐ近くにいるものすら見分けられない程のド近眼である為、非常に度のキツイ眼鏡である。
無論、それ以外に特別な機能など無い。
アマリリスの花@宇宙の騎士テッカマンブレード
三影英介に支給、
相羽ミユキの好きな花
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最終更新:2013年03月15日 00:15