生きる意味を求めて ◆eQhlNH2BMs



志葉丈瑠。
志葉家18代目当主。
その肩書きは嘘であり偽りである。
なぜなら彼は、影武者なのである。
いや、影武者『だった』のだ。
彼は、父との誓いを守り、志葉家当主として振る舞ってきた。
外道衆との戦いに身を投じた。
本物の当主である志葉薫に代わって。

そしてその日が来た。
志葉薫が、外道衆の長である血祭ドウコクを封印するためのモヂカラを完成させて、表舞台に現れたのだ。
本物の当主が現れたことで影武者の役目は終わった。
殿としての生を失った丈瑠に残されたもの…それは剣だけだった。

彼は唯一残ったそれにすがるように、はぐれ外道の腑破十臓と戦った。
志葉丈瑠がこの殺し合いに呼び出されたのは、その戦いのさなかである。



「……殺し合いか」

ぼそりとつぶやく。
十臓との戦いをいきなり中断されて、彼は少し不機嫌であった。

「なるほどな、どうやら俺は試されているらしい」

もしも神という存在がいるのなら、きっとこれは試練なのだろう。
剣に生きるのなら、その覚悟を示してみろというわけだ。


『お前のするべきことは戦いのみ。あるのは…剣のみだ!』


「そうだな十臓。俺には戦いしか…剣しかない」

もしもこれが試練だというなら受けて立ってやる。
参加者は全て斬る。
誰が相手だろうが全て斬る。
自分には…他に何もないのだから。




「くっそあの野郎、偉そうにしやがって…」

早乙女乱馬は怒っていた。
自分たちをこんなところへ連れてきた加頭順に対して。
彼の行動方針はすでに決まっている。


「覚悟しやがれ!この殺し合いの舞台からとっとと抜け出して、そのすかした顔面に一発ぶち込んでやるよ!」


乱馬はひとまず地図を取り出す。
現在彼がいるのは市街地の手前の平原、H-7である。

「呪泉郷!?」

名簿に書かれた施設のひとつに、驚きの声を上げる。
一瞬、「男溺泉で元の体に戻れる!」という歓喜がわかないでもなかったが、すぐにそれを引っ込める。
仮に元の体に戻れたとして、ここで死んでしまっては無意味だ。
ここから脱出するのが最優先だ。

とはいえ、知り合いがここを目指している可能性も十分にある。
ここを目指してみる価値はあるかもしれない。

「ん?」

ふと、人の気配を感じ、乱馬は顔を上げる。
目の前には、男が一人立っていた。

「何もんだてめえ」

乱馬は男に警戒しながら戦闘の構えを取る。
だが、対する男は構えようともしない。
そして代わりに、口を開いた。

「俺は志葉丈瑠、一介の剣客といったところだ」
「剣客ねえ…」

ふと、高校の剣道部主将の顔が思い浮かび、苦虫を潰したような表情になる。
だが、すぐにそれを振り払う。
目の前の人物の素性は知れないとはいえ、さすがにあの変態と一緒にするのは失礼だ。

「俺は早乙女乱馬だ」
「乱馬か…お前はこの殺し合いに乗っているのか?」
「へ、誰があんなやつの言うこと聞くかよ!」

丈瑠の問いを、乱馬は迷いなく突っぱねる。


「そうか…それなら頼みたいことがある」


そういうと丈瑠は、携帯電話のようなものと紙切れを取り出した。

「これを池波流之介か梅盛源太に渡してほしい。このメモと一緒にな」
「なんで俺がそんなことしないといけねーんだよ!自分で渡せばいいだろうが」
「頼む…!」

拒否の意を示す乱馬に対し、丈瑠は何度も頼み続けた。
しばらくのやりとりの後、やがて乱馬の方が折れた。

「分かったよ。もしそいつらに出会うことがあったら、渡しといてやるよ」
「すまない…」

丈瑠は乱馬がそれを受け取り、デイバックにしまうのを見届けると別れの言葉も残さずそのまま森の中へと去って行った。

「なんだったんだいったい…」

志葉丈瑠が去った後、早乙女乱馬は具体的な行動方針を決定した。
とりあえずまずは、すぐそこの市街地で知り合いを探す。
そして一通り探したのち、見つからなければ北にある呪泉郷へ向かう。

「よっし、それじゃあ行くか!」

デイバックを背負い、乱馬は市街地へと歩を進めた。


「あかね…死ぬんじゃねえぞ」



丈瑠のメモ
『流ノ介、源太、俺にこれを持つ資格はない。
 このショドウフォンは、お前たちに預ける』


【1日目/未明 H-7 平原】

【早乙女乱馬@らんま1/2】
[状態]:健康
[装備]:無し
[道具]:支給品一式、ランダム支給品1~3、水とお湯の入ったポット1つずつ、ショドウフォン、丈瑠のメモ
[思考]
基本:殺し合いからの脱出
1:市街地で知り合いを探す
2:1の後、呪泉郷へ向かう
3:池波流ノ介か梅盛源太に出会ったらショドウフォンとメモを渡す


志葉丈瑠が早乙女乱馬に戦いを挑まず、それどころかショドウフォンを渡したのは彼が心を改めて殺し合いに乗ることを止めたからというわけではない。
というよりそれならショドウフォンを手放す必要はない。
彼がこの場で戦うのに、ショドウフォンは邪魔だったのだ。
それはなぜか。


『殿…じいは嬉しく思っておりましたぞ。たとえ偽りの殿と家臣ではあっても、流ノ介達と心を通じ合っていく様子が』


「………」

それは迷いを断ち切るため。
殺し合いに乗るということは、すなわち流ノ介や源太とも戦うということだ。
そんな時、彼らとの絆の証ともいっていいアレを持っていて、せっかくの決意が鈍ってしまうことを恐れたのだ。


「だが…俺もまだまだ甘いようだ」


本当に迷いを断ち切りたかったのなら、破壊してしまえばよかったのだ。
だが、それをすることは出来なかった。
また、破壊することができないならどこかに放置するなり地面に埋めるなりすればよかったのだ。
にもかかわらず流ノ介達に届けることを先ほど出会った早乙女乱馬という少年に頼んだ。
これは、彼らとの関係を断ち切ることを拒む願望が無意識のうちに働いてしまった証拠だ。
彼らとの関係を無かったことにすることが、出来なかったのだ


「こんなことでは…駄目だ!」


彼らとの関係はあくまで嘘であり偽りに過ぎないのだ。
そして、もはやその関係も過去のものに過ぎない。
殿という役目を失った自分にあるのは、剣だけ。
これだけは、けっして嘘も偽りもない本物だ。
これを失ってしまえば、自分は生きる意味を持たない。死人も同然だ。

「俺は戦う!唯一残された生きる意味のために!」


「とりあえずまずは、この森で試し切りをしてみないとな」

そういうと、丈瑠は刀を構える。
幸いなことに、彼の支給品はかなりの当たりであった。

一つは腑破十臓の愛刀『裏正』。
そしてもう一つは…

「ガイアメモリ…だったか?」

最初の場所で、加頭という男が変身した異形の怪物。
自分もこれを使えば、あのような姿になるということか。


「はは……はははは…」


思わず乾いた笑い声を漏らす。
はぐれ外道である十臓の妖刀。
異形の怪物に姿を変えるメモリ。
ある意味、今の堕ちた自分には似合いの武器だ。


ともかく、ガイアメモリ―――メタルメモリというらしい、をポケットにしまい、裏正を構えた丈瑠は…


「はあっ!」


気合の掛け声とともに、目の前の木を刀で斬りつける。
斬られた木は、真っ二つになり、ドスンと音を立てて倒れた。



「志葉丈瑠……参る!」


続・丈瑠のメモ
『追記
 もしこの場でお前たちに出会うことがあれば、俺はお前たちの敵だ
 遠慮なく斬ってくれ

                           志葉丈瑠』



【1日目/未明 H-7 森】

【志葉丈瑠@侍戦隊シンケンジャー】
[状態]:健康
[装備]:裏正@侍戦隊シンケンジャー、T2メタルメモリ@仮面ライダーW
[道具]:支給品一式
[思考]
基本:殺し合いに乗り、戦う
1:ひとまず裏正に慣れる
2:十臓は最優先に探し出し、決着を着けたい
3:流ノ介や源太が相手でも容赦はしない
[備考]
※参戦時期は、第四十六、四十七幕での十臓との戦闘中です
※流ノ介や源太と戦うことに、迷いがあります




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早乙女乱馬 Next:街(Nasca Version)
志葉丈瑠 Next:「Eternal Flame」(前編)



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最終更新:2013年04月01日 01:08