平日の夜。一人きりの家の中でパソコンの電源をつける。

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作者:ugEsWG9J0

311 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です)(千葉県)[sage] 投稿日:2011/11/26(土) 04:37:26.38 ID:ugEsWG9J0




 平日の夜。一人きりの家の中でパソコンの電源をつける。
 傍らに置いた缶ビールをちびりと飲みながら、立ち上げたブラウザのブックマークの中からとある掲示板を選択する。
 目的は、そう、日々の孤独を紛らわせるために――

「ホム! ホムゥホムッ!」

「いたたたたた」

 右耳を引っ張られて痛みが走る。犯人の正体は肩に乗ったほむほむだ。

「ホムホム!」

「ほむほむさん? なんで怒って、――いたっ、痛いってば。
 いやごめん、なんかこう無意味に哀愁を漂わせてみたかっただけで、別にほむほむを蔑ろにしたわけじゃないって!」

「ホムッ、ホムホーム!」

「ちょっ、耳噛まないで噛まないで!
 ああもうごめんってば。ほら、今日のおつまみちょっと分けてあげるから!」

 ピーナッツを一つつまんでほむほむに差し出す。塩などはかかってないため、ほむほむに食べさせても問題ない。

「……ホムン」

 渋々といった感じだが、ピーナッツを受け取ると耳を苛めるのをやめてくれた。
 カリカリポリポリと早速お召し上がりになられてようでその様子は非常に和むが、耳に痕が付いてないかが心配だ。

 このほむほむとは一人暮らしを始めて間もない頃から一緒に暮らしており、もうそれなりに長い付き合いだ。
 今となってはかけがえのない家族であり、一人の寂しさを感じずにいられるのはほむほむのおかげである。

 ――それはきっと、ほむほむにとっても同じことなのだろうと思う。

「まぁ、そりゃ、怒るか……ごめんな」

 食べるのを邪魔しないようにそっとなでる。
 ピーナッツを両手で抱えながらこちらに鋭い視線を向けてくるが、一回、二回となでる度にそれも和らいでいく。

 気難しい性格してるように見えて、わりと簡単に許してくれたりする。やっぱり根っこの部分は優しいのだ。

「じゃ、ほむほむも機嫌直してくれたことだし、改めてーっと」

 カチカチとマウスを操作して掲示板と文書ツールを開く。
 目的は、そう、日々の孤独を紛らわせるために――ではなく普通に創作意欲とか、そういう理由からSSスレを立てるのだ。

 ずばり、魔法少女まどか☆マギカの二次創作である!

 内容は“暁美ほむら”のループ中のお話。つまり失敗した時間軸を書こうと思っている。
 やはり原作者の虚淵氏を彷彿とさせるようなどろどろとした絶望感のあるダーク系な


 ――カチリ。


「ホムホムホムホムホム!」

 ぺしぺしぺしぺしぺし。

「いたたたたた」

 なにこれデジャヴ。
 いつのまにか食事を終えて頭の上に乗っていたほむほむが叩きまくってくる。
 一瞬前までは確かに肩の上に居たと思ったのに。

「ホムゥゥゥ……ホムッ!」

 こーん。
 いい音が鳴った。なんだこれマジで痛い。

 近くにあった鏡で見てみると、どこから取り出したのか小さな盾のようなものを腕に付けていた。

「凶器禁止! ていうかなんだ、なにが不満なんだー!?」


 ――カチリ。

 そう言った瞬間、頭がやや軽くなったと思ったらいつのまにかモニターの前にほむほむが移動していた。
 しかもいつキーボードに触ったのか画面にはいくつかの文字が打ち込まれている。

「……本編再構成で暁美ほむらを始めとする魔法少女たちの救済SS? 終わり方はハッピーエンド?」

「ホム」

 なにやら満足げに頷いて、髪の毛をファサッとしてらっしゃる。これを書けということだろうか。
 しかし、この内容だとまどマギっぽくないというか原作者の風味が出せないというか、なぁ。

「――ホムホム?」

 風切り音を残して高速物体が頬を掠めて飛んでいった。
 具体的に言えば、ほむほむの手に握られた拳銃のようなものから放たれた弾丸のようなものが通り過ぎていったのだ。

 ていうかなんだそれ、盾といいまさか自作の品なのか?

「ホムホム?」

 ほむほむがまったく同じ調子で再び問いかけてくる。何と言いたいのかはわからないが、その意図ははっきりわかる。
 俺の額から汗が流れ落ちていったのも、俺に拒否権がないのも、はっきりわかる。

「誠心誠意この内容で書かせていただきます……」

 今ならどんなに小さな相手に頭を下げることにも抵抗はないッ!

「ホムゥ、ホムン」

 ほむほむは納得したらしく、盾の中に銃をしまい込んだ。
 大きさ的にあんなすんなりと収まるものじゃないと思うんだが、追求するのはやめた方が良さそうである。




「ホーム、ホーム、ホムー♪」

 ――こうして。予定とは正反対のSSを書くことになったが、頭の上のほむほむが嬉しそうなので良しとしている。
 これはこれで幸せな結末にどう持っていくかを考えるのが面白いというのもある。

 それにしてもうちのほむほむは、他の人から聞くほむほむとは何か違う気がする。
 希少種というやつなのだろうか? 少し気になりはするが……、

「ま、いいか」

「ホムゥ?」

 大切な家族。ただそれだけの事実があればそれで充分だ。

「これからもよろしくな、ほむほむ」

「ホム!」





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