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その3

最終更新:

homuhomu_tabetai

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あっという間でした。ほむほむとまどまどの、とっても大切で大好きなこどもたちがいなくなってしまいました。
ほむほむは突然の出来事に顔を真っ青にして立ち尽くすばかりです。
と、隣にいたまどまどが急に駆け出しました。
そしてご主人の足をポカポカと殴り始めました。
「マド! マドォ! マドォォォォォォ!」
ほむほむもびっくりするほどの大きな声で叫びます。
「マドォォォォォォ!」
顔を真っ赤にして涙をボロボロ流しながら、精一杯拳を叩きつけます。
「マドォ! マドォ! マドォォォォ!」
でも、ご主人は何も言わずにまどまどを見下ろすばかりです。

「マド…マドォ…」
やがて、まどまどはすっかりくたびれて、叫ぶのも殴るのもできなくなってしまいました。
ご主人はフラフラになったまどまどを掴みました。
そして、まどまどの髪の毛を摘むとグイっと引っ張りました。
「マデャアアアアアアア!」
ブチィ!と嫌な音がして、まどまどの髪の毛が何本も抜けました。
ご主人は抜いた髪の毛をゴミ箱に捨てました。
まどまどは今度は痛みで涙をポロポロ流しています。
「マドォ…マド…ホムラチャーン…」
まどまどが助けを求めるようにほむほむの方へ手を伸ばしてきます。
「ホムゥ…マドカァー…」
ご主人はそれには構わず、まどまどの髪の毛を次々と抜いては捨てていきます。
「マデャアアアアアア!」
その度にまどまどが悲鳴を上げます。

ほむほむは考えました。
なぜご主人はこんな恐ろしいことをしているのだろう?
どうすればご主人はこんなひどいことをやめてくれるのだろう?

ほむほむは気付きました。
ほむほむは今、ホウキとチリトリを抱えています。
お掃除の途中だったからです。
きっと、ご主人は帰ってきたときにお掃除が終わっていなかったから怒っているのです!

ほむほむはお掃除を始めました。
「ホムゥ! ホムホムゥ!」
ハキハキ シャカシャカ
そしてご主人を呼びます。
でもご主人は全然こっちを見てくれません。
ブチィ!
「マデャァァァアア!」
まどまどの髪の毛がどんどん減っていきます。
ブチィ!
「マデャアアアア!」

「ホムゥ! ホムホムホムゥ!」
ハキハキ シャカシャカ
ほむほむはお掃除をしながらご主人を呼び続けます。

ブチィ!
「マデャアアア!」
まどまどの頭は髪の毛の代わりに、血がにじんでいます。

「ホムゥゥゥゥゥゥ! ホムホムウウゥゥゥゥ!」
ハキハキ シャカシャカ
ほむほむは涙をポロポロ流しながら、お掃除を続けます。

ブチィ!
「マ…ド…」
まどまどの髪の毛は全部なくなってしまいました。

ご主人はポイっとまどまどを床に放り出しました。
ほむほむはお掃除をやめて、まどまどに駆け寄ります。
まどまどのピンク色のかわいくてフワフワした髪の毛は1本も残っていません。
血まみれになった顔が、弱々しくほむほむに向けられました。
「ホム…ラチャー…」
まどまどはあまりの痛みに気を失ってしまったようです。
「マドカァー…」

ほむほむは変わり果てたまどまどを抱きかかえて、泣きました。
「ホムゥ…ホムゥ…」


でもほむほむはすぐにまどまどから引き離されてしまいました。
ご主人がほむほむを掴んで持ち上げたのです。
「ホムゥ…」
ほむほむはとても怖くなりました。

ほむほむがお掃除を終わらせなかったせいで、こどもたちもまどまどもひどい目に遭いました。
全部ほむほむのせいです。
だからご主人はほむほむにはこどもたちやまどまど以上に恐ろしいことをするに違いありません。
きっとご主人は、とても怒って、とても怖い顔をしているに違いありません。

持ち上げられたほむほむは、この日初めて、ご主人の顔をはっきりと見ました。
ご主人は全然怖い顔なんてしていません。
「ホムゥ?」
それどころか、とても楽しそうな顔をしています。
ニコニコと楽しそうに笑っています。

ほむほむは混乱しました。
なんでご主人はこんなに楽しそうなんだろう?
ご主人が酷いことをしたのは、怒っているからじゃないの?

ご主人は、ほむほむのホウキとチリトリをもう一方の手に取りました。
そして、ほむほむの目の前で、グシャリと握り潰しました。
「ホムゥ!」
手を開くと、ホウキとチリトリはバラバラに壊れていました。
「ホムゥ…」
ほむほむはまたポロポロと泣きます。
ご主人がくれたものの中で、一番大切なホウキとチリトリを、そのご主人が自分で壊したのです。

ほむほむは理解しました。
自分はもう要らないのだと。
もうお掃除をしなくていいのだと。

ほむほむは悲しくて寂しくて、更に涙を流します。
ご主人はそんなほむほむを、心から嬉しそうに眺めます。

ご主人はしばらくそうしていた後、ほむほむの体を掴んでいた手を離して、代わりに髪の毛を掴んでブランとぶら下げました。
そしてそのまま、グルグルと振り回し始めました。

「ホォォォォギャァァァァァ!」
引っ張られた髪の毛が痛くて、気持ちが悪くて、ほむほむは叫びます。
ご主人は変わらず楽しそうにグルングルンと振り回し続けます。
縦に横に斜めに、色々な方向へ力一杯振り回します。
そしていきなり手を離しました。
ほむほむはヒューンと飛んでいって、お部屋の壁にベシャ!とぶつかりました。
そしてズルズルと床に落ちて、動かなくなりました。


・・・・・・
部屋のドアを開けて、白衣の人物が入ってきた。
「経過は良好のようですね」

ほむほむの元飼い主は答えた。
「ええ、おかげさまで」
動かないほむほむに目をやりながら続けた。
「こんな訳の分からない生き物に情を抱いていたなんて、ほんとに恥ずかしい限りです」

「いや、それがこの生物のやり方ですから。自分の姿が人間に愛着を抱かせると分かっていて、人間に近付き、寄生するのです。そんな方々の更正をお手伝いするのも我々の仕事です」
白衣の人物は誇らしげだ。

「それに、こちらとしても珍しいほむほむの生態を撮影できましたから」
ドアが再び開いて、入ってきたスーツ姿の男たちが、部屋の隅に取り付けられたカメラを取り外して持って行った。

「それにあの最後の映像があれば、更正されたことは一目瞭然です。飼育と繁殖の罪にも問われないでしょう」

「何から何までお世話になります。」
元飼い主は丁寧に頭を下げた。

白衣の人物はまどまどとほむほむを指して尋ねる。
「ところで、そのまどまど…それとほむほむの方もまだ生きているようですが、どうするおつもりですか?」

「ああ、まどまどの方は早めに殺すつもりです。ほむほむの目の前で、生かしたまま少しずつ体を切り刻んでいこうかと。どんな形になるまで自分のつがいと認識するのか、ちょっとした実験ですね」
元飼い主は顔を綻ばせて、心から楽しみにしているようだ。

「ほむほむの方は?」

今度は眉をひそめた。
「そっちは無知な私に媚を売って騙したやつですからね。そう簡単には殺しません」
その声からは、確固たる決意が窺えた。
「生き地獄を味わわせてやります」

白衣の男は安心した顔をして、部屋から出て行った。


・・・・・・

ご主人は、床に倒れたまま動かないほむほむに歩み寄ります。
「ほむほむ!ほむほむ!起きてくれ!」
指先でちょんちょんとほむほむの顔をつつきました。
「ホ…ム…」
「私にはほむほむが必要なんだ!」
「ホム…!」
ほむほむは痛む体を動かして、なんとか起き上がります。
自分はご主人にとって要らなくなんてないんだ!
絶望していた心が、温かくなってきます。
「ホ…ホムゥ!」
やっぱり自分はこれからもご主人のためにお掃除をするんだ!
ほむほむは嬉しくなって、痛いのを我慢してご主人を見上げます。
ご主人の顔も、とても嬉しそうです。
そして痛みで引きつった笑顔のほむほむを掴みあげると、足を摘んでプチっと潰しました。
「ホ…ホビャアアアア!」
もう一方の足も潰されました。
「ホビャビャアアアアア!」
これではもう、お掃除はできません。
「ホムゥ…ホムゥ…?」
ほむほむにはもうご主人のことが何も分からなくなってしまいました。

「私にはほむほむが必要なんだ。まずは逃げられないようにさせてもらったよ」
ご主人はやっぱり嬉しそうです。
「とりあえずまどまどに死んでもらうとして、それからどうしようかな」
でも、お掃除を褒めてくれるときの顔とは違います。
「そうだな…手の指を順番に切り落とそうかな…それともまどまどと同じように髪の毛を引っこ抜こうかな…」
ご主人は目をつぶって、考え事を始めました。
「ホム…ホムゥ…」
ほむほむは逃げ出したくて堪りませんでしたが、痛みと恐怖でポロポロと涙を流すことしかできません。
「いずれにしろ…」
ご主人はほむほむをしっかり見つめて言いました。
「ほむほむにハッピーエンドなんてありえないよ!」
ご主人はとっても嬉しそうでした。

おわり



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