その2

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homuhomu_tabetai

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ほむほむたちは何がなんだかわかりません。
なんだかとても恐ろしいことが起こっているのだけは分かって、食卓の上で家族で集まってブルブルと震えていました。

「ん?なんだこれは?」
「ああ、それが顧客名簿に載っていた特注品のようですね」

知らない人間が、大切にしまっていたホウキとチリトリを手に取っています。

「ホムゥ!」
ほむほむは思わず叫んでいました。
ホウキとチリトリはご主人が用意してくれたものの中でも、一番大切なものです。
これでご主人のお部屋を綺麗にして、ご主人に褒めてもらう。
それがほむほむの幸せです。

お掃除を頑張っていたからこそ、まどまどに会え、そしてこどもたちも産まれたのです。
ほむほむは怖いのも震えるのも忘れました。食卓から飛び降りると、ホウキとチリトリを持った人間の足元に駆け寄りました。

「ホムホムゥ!」 ソレヲ カエシテ!
でも人間は聞こえているのかいないのか、ほむほむの方を見向きもしません。

「ホムゥゥゥゥー!」
ほむほむは人間の足を殴りました。
でも人間はホウキとチリトリを持ったままです。
ほむほむは人間の足を蹴りました。
でも人間はほむほむたちのおうちに手をつっこんで中の物をひっぱり出しています。

「ホムホムゥッ!!」
それでもほむほむは人間の足を殴ったり、蹴ったりをやめません。

そのうち人間がやっとほむほむの方を振り向いてくれました。
「さっきからホムホムうるさいな」
「このままここで処分しましょうか?」
人間たちは何やら話し合い始めました。

するとそこにまた、別の人間がやって来て言いました。
「ちょっと待ってください」
この人間は他の人間たちと違って、真っ白くて長い服を着ています。
「このほむほむは、なかなか面白い飼われ方をしていたようです」
白い服の人間は、ほむほむと、それから食卓の上でまだ震えているまどまどとこどもたちをチラリと見て言いました。
「興味深い観察対象です」

「私のほむほむたちに何をする気だ!ほむほむが何をしたというんだ!」
ご主人がまた叫びます。
取り押さえていた人間たちが力を加えたようで、ご主人はとうとう床に押さえ込まれてしまいました。

「ホムゥ!」 ゴシュジンサマ!
大好きなご主人が痛そうな顔をしています。
この人間たちは悪い人たちに違いありません。

ほむほむは勇気を出してご主人の方へ走り出しました。

「ほむほむ!来るな!危ないよ!」
ご主人の声にほむほむは足を止めました。
「うう…ほむほむ…ほむほむ…」
ご主人は顔も床に押し付けられ、もううめき声しか出せなくなってしまいました。
「ホムゥ…」 ゴシュジンサマ…

白い服の人間がご主人を見下ろして言います。
「これは重症ですね…きっと更正施設送りでしょう」

白い服の人間は、他の人間たちに指示して、お部屋の隅に背が高くて黒い機械を取り付けました。

ほむほむはまどまどとこどもたちと一緒にただ見ていることしかできません。

やがてその作業が終わると、人間たちはご主人を引きずるようにしてお部屋から出て行ってしまいました。

ほむほむたちはご主人を追いかけようとしました。でも
「ほむほむ…まどまど…大丈夫だよ…すぐ戻るからね…待っていてね」
とご主人が最後に言っていたので、言うとおりに待つことにしました。



ほむほむたちはしばらく身を寄せ合って待っていましたが、ご主人は戻ってきません。
もう夜も遅くなってきたので、おうちで眠ることにしました。

悪い人間たちがおうちのなかをごちゃごちゃにしていったので、まずはそれをまどまどと一緒に元通りに片付けました。
ベットもテーブルもひっくり返っていましたが、幸いにも壊れていませんでした。
そしてホウキとチリトリも、床の上に乱暴に放り出されていましたが無事でした。

「ホムゥ…」
ほむほむは一安心して、まどまどとこどもたちと一緒にベッドに入ります。
こどもたちはまだ怯えていてなかなか眠れないようでしたが、ほむほむとまどまどが撫でてあげると、ようやく眠ってくれました。
ほむほむとまどまども、その夜はなかなか眠れませんでした。

次の日の朝、ほむほむが起きたとき、まだご主人は帰ってきていませんでした。

それでもほむほむはお掃除の仕事を始めます。

ご主人のことが心配で堪りませんでしたが、帰ってきたときに部屋が汚れていたら、きっとご主人は悲しみます。
なのでほむほむはいつも以上に頑張ってお掃除をしました。

夕方、ほむほむがお掃除を終えても、ご主人は帰ってきません。

ほむほむはおうちに戻って、まどまどとこどもたちと一緒に待ち続けることしかできません。

「ホミュホミュー」 「ミャドミャドー」 オナカ スイタヨー

こどもたちがお腹を空かせています。
昨日の晩ご飯から何も食べていません。
ほむほむとまどまども同じです。
ふたりは一緒に部屋の中を探しましたが、ほむほむたちの手の届くところには食べ物は見つかりませんでした。

「ホムゥー…」
「マドォー…」
ほむほむとまどまどはとても不安になりました。
このままずっと食べ物がなければ、こどもたちもほむほむもまどまどもお腹が減って死んでしまいます。

そのときです。
ガシャ!と大きな音を立てて、玄関のドアが開きました。

「ホムゥ!」 ゴシュジンサマ!

ほむほむは思わず叫んでいました。
でも、入ってきたのはご主人ではありません。

白くて長い服を着た人間です。でも昨日ご主人を連れて行った人とは違うようです。

その人はほむほむを冷たい目で見下ろしています。
「ほら、エサだぞ」
そう言いながら、ほむほむに向かって、ドサリと紙袋を投げてきました。
ほむほむは危うく下敷きになるところでした。
「ああ、面倒な仕事だな」
人間はそう呟くと、またドアをバタンと閉めて行ってしまいました。

「マドォー、ホムラチャーン」
まどまどが心配してしりもちを突いているほむほむに駆け寄ります。
「ホムホムゥ、マドカァー」
まどまどに無事なことを伝えて、一緒に紙袋の中を見てみます。
中には小さな粒がたくさん入っていました。
ほむほむは試しに一粒口に入れてみます。
「ホムホムゥ!」
どうやら食べ物のようです。
「マドマドォ!」
これで食べ物の心配はしばらくしなくて済みそうです。
こどもたちの分もおうちに持って帰って、一緒に食べることにしました。

「ホミャーホミャー!」 「ミャドミャドー!」
この食べ物は、ご主人が用意してくれるものと比べると、冷たくて良い香りも全然しなくて、あまりおいしいものではありせんでした。
でもお腹を空かせたこどもたちは喜んで食べてくれて、お腹がいっぱいになるとスヤスヤと眠り始めました。
ほむほむとまどまどもベッドに入ります。
不安でいっぱいでしたが、きっと明日はご主人が帰ってきてくれる、そう信じてほむほむは眠りました。

でも、ご主人は帰ってきませんでした。
次の日も、その次の日も、そのまた次の日も帰ってきません。

それでもほむほむは、一日も欠かさずにお掃除をします。
そうすれば、帰ってきたご主人はきっとほむほむをとっても褒めてくれるはずです。
今まで以上にたくさん撫でてくれるはずです。
ほむほむは一生懸命お掃除をします。

何日かに一度、玄関のドアが開きます。
そのたびにほむほむは玄関まで走って迎えにいきます。
でもそれは、いつも白くて長い服をきた人間で、いつも紙袋に入った食べ物を置いていくだけです。
ちょうど前に置いていった紙袋が空になるころに来るので、食べ物に困ることはありません。

ほむほむはお掃除を欠かしません。
ご主人から貰った大切なホウキとチリトリでせっせと部屋をきれいにします。
ご主人がいつ帰ってきても喜んでくれるように。
お掃除を頑張っていれば、きっとご主人が帰ってきてくれると信じて。




そんな毎日が、当たり前になってきたある日…

ほむほむがお掃除をしていると、ガシャ!と玄関のドアが開きました。
ほむほむはいつものように、玄関に駆け寄ります。
でも、入ってきたのは白くて長い服の人間ではありませんでした。

「ホムゥ!!」 ゴシュジンサマ!

とうとうご主人が帰ってきました。
待ちに待ったご主人です。
ほむほむは嬉しくて嬉しくて、跳ね回ります。
まどまどとこどもたちも、おうちから出てきて、一緒にご主人を迎えます。
「ホムホムゥ♪」
「マドマドォ♪」
「ミャドミャドー♪」
「ホミュウホミュウ♪」
みんな、満面の笑みでご主人の足元に集まります。

でも、ご主人はそんなほむほむたちが目に入らないのか、スタスタと部屋の奥に進んでいきます。
そして、ほむほむたちのおうちの前で立ち止まります。
それからゆっくりと足を持ち上げると、おうちを踏みつけました。
バキ! グシャ!
ほむほむたちのおうちは、あっという間に潰れてしまいました。

「ホ…ホムゥ?」
ほむほむはびっくりして、動くことができません。
ご主人は潰れたおうちを、ゴミ箱の中に放り込んでいきます。
ほむほむたちのおうちは跡形もなく、なくなってしまいました。

そしてご主人は、ようやくほむほむたちの方を振り向いてくれました。
でも既に暗くなり始めているお部屋では、ご主人の顔はよく見えません。
ご主人がほむほむを褒めてくれるときの、あの笑顔は見えません。
そして何も言わずに手を伸ばしてきます。
ほむほむは思いました。
そうだ、きっと頭を撫でてくれるんだ。
ご主人のいない間にも頑張っていたから、褒めてもらえるんだ。
でも、ご主人の手は、すっかり怯えているこどもたちの方へ向かいます。
そして、目に涙をいっぱいに浮かべている仔ほむを手に取りました。

「ホムゥ…?」
ご主人はこどもに一体何をするんだろう?
ほむほむがそう思うのと同時に、仔ほむの悲鳴が聞こえました。
「ホミャアアアァァ!」
ほむほむが驚いてご主人の手元を見ると、仔ほむの腕が引きちぎれています。
「ホムホムゥ!」
「マドォォォ!」
ほむほむもまどまどもあまりの事にオロオロするばかりです。
ご主人はそれに構わず、仔ほむのもう一方の腕と、両方の脚も次々と引きちぎっていきます。
その度に仔ほむは悲鳴をあげましたが、最後の右脚がちぎれたときには、もうなんとか聞こえるくらいの声しか出ていませんでした。
「ホ…ホ…ホミャ…ア…」
ご主人は、仔ほむと、それからちぎれた手足をゴミ箱にポイっと放り込みました。

そして次にブルブルと震えて、まどまどに抱きついていた仔まどを振り向きました。
ご主人は仔まどを掴むと、まどまどから引き剥がします。
「ミャドミャドォー」 オカアサーン
「マドマドー!」 コマドチャン!
仔まどの涙でグシャグシャの顔がどんどん離れていきます。
でもほむほむもまどまども、脚がガクガクして、頭が真っ白になって全然動けないのです。

そしてご主人は、仔ほむと同じように仔まどの手足を引きちぎっていきます。
「ミャデャアアアアァァァァ」
そして、全ての手足をちぎり終わると、ゴミ箱に放り込みました。
「ミ…ド…ミャド…オ…」
ゴミ箱の中から微かな声が漏れていましたが、すぐに聞こえなくなりました。




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