鑑賞
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homuhomu_tabetai
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作者:z/SYOaUz0
938 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage] 投稿日:2012/03/31(土) 15:05:13.30 ID:z/SYOaUz0
「はぁぁ……」
週間予報で今日の雨に関しては、数日から前から諦めていた私だったが、
窓に激しく打ち付けられる雨粒を見ていると、溜息を漏らさずにはいられない。
多少の雨ならば、傘を差してでも出かける所だが、こうも横殴りの風が強くては出かける勇気はない。
おろし立ての靴を水びたしにするのも気が引けるし、今日は一日、家で過ごすとしよう。
「えっと……確か、この辺りに……」
私はぶつぶつと漏らしながら、ポータブルBDプレイヤーと、
お気に入りの……だが最早見飽きて暇つぶしの役にしか立たない世界遺産のBDを引っ張り出す。
いつもなら居間の50インチ液晶テレビとサラウンドシステムで大画面かつ大音量の大迫力映像体験をしたい所だが、
如何せん、居間は下の妹と彼女のほむほむ達に占拠されてしまっているのでそうもいかない。
出先やアウトドアで使う程度、なんて軽い考えで買って来た安物PBDP(19800円・税込み)は、
画面こそ12.1インチとそれなり以上だが、安物故に外部出力端子も外部入力端子もないと来た。
しかも、この値段で大画面………嗚呼、お察しの通り赤とオレンジの識別すら難しい、海外産で三級品未満のハンパモノだ。
安物買いの銭失い……とまでは言わない、と言うより言いたくないが、よく見ずに買うのは失敗の元である。
…………夏のボーナスは、自室用BDプレイヤーに注ぎ込もう。
「ホムゥ」ジーッ
「おや、君も見るかい?」
いつの間にか傍らにいたほむほむに、私はお誘いをかける。
「ホム、ホムッホムッ!」コクコクッ
「よし、それじゃあコチラへどうぞ……」
嬉しそうに頷くほむほむを、私は頭の上に乗せた。
「ホムッ」ヒシッ
ほむほむが髪留めにしがみついたのを確認した私は、ベッドの枕元にPBDPを設置し、
枕を胸の下で抱え込むようにして俯せに寝転がる。
「ホムホム、ホムホム」ワクワク テカテカ
「ハハハ……BDとは言え、コイツは画質が荒いから勘弁しておくれよ」
私は苦笑いを交りに言って、プレイヤーを操作する。
すぐに壮大なクラシックなイントロとベテラン声優のアナウンスによるオープニングが始まった。
(しかし、画質もだが音質も悪いな………)
買い物で金をケチるのはいけないな。
次からは、ちゃんと国産のモノを買うように心がけよう。
「ホミャァァァ……!」オメメキラキラ
しかし、画と音の悪さに辟易する私に比べて、頭の上のほむほむには好評のようだ。
枕元に置かれた鏡には、目を輝かせ、昂奮で頬を紅潮させるほむほむの姿が映り込んでいる。
何をそんなに楽しんで………っと、そうか、彼女にとっては、
この12.1インチ程度の画面も、200インチ超の大画面に見えているんだったか。
街頭の大型ディスプレイの前に陣取っているのと同じ気分と考えれば、画質や音質の悪さも気にもならないだろう。
いや、しかし、何だ………
「ホミャミャァァ……」ハフゥゥ…… オメメキラキラ
嬉々として映像に食い入る彼女の姿は………
「ホム、ホムゥゥ!」キャッキャッ オメメキラキラ
暇つぶし代わりの映像体験よりは、よっぽど楽しいじゃないか。
「ホミャァァ……!」ワァァ……! オメメキラキラ
「ふふふ……」
結局その日の私は、未体験の映像に目を輝かせて昂奮するほむほむ見て、一日を過ごす事にした。
~おしまい~